JP2009208712A - 車両用サスペンションシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】実用性の高い車両用サスペンションシステムを提供する。
【解決手段】ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力を発生させるとともに、その減衰力の大きさの基準となる減衰係数を制御可能に変更する液圧式のアブソーバと、アクチュエータ力を制御可能に発生する電磁式のアクチュエータとが、互いに並列的に配設されたサスペンションシステムにおいて、アブソーバの減衰係数CAを、アクチュエータ力F*がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となる場合(S15)に、第1減衰係数CHMAXとし、推進力となる場合(S14)に、その第1減衰係数より小さい第2減衰係数CLMAXとする。このシステムによれば、アブソーバが発生させる減衰力が、アクチュエータ力の助けとなる場合と、妨げとなる場合とで、アブソーバの減衰係数が変更され、アクチュエータとアブソーバとを適切に協働させることが可能となる。
【選択図】図8

Description

本発明は、電磁モータの力に依拠してばね上部とばね下部との相対動作に対する力を発生させる電磁式アクチュエータを含んで構成される車両用サスペンションシステムに関する。
近年では、車両用サスペンションシステムとして、電磁モータの力に依拠してばね上部とばね下部との相対動作に対する力(以下、「アクチュエータ力」という場合がある)を発生させる電磁式のアクチュエータを含んで構成されるいわゆる電磁式サスペンションシステムが検討されており、例えば、下記特許文献に記載のサスペンションシステムが存在する。この電磁式サスペンションシステムは、ばね上部とばね下部との相対移動に対する推進力をも発生させ得ることから、いわゆるスカイフック理論に基づくサスペンション特性を容易に実現できる等の利点を有し、高性能なサスペンションシステムとして期待されている。
特開2001−180244号公報
上記特許文献に記載のサスペンションシステムは、電磁式のアクチュエータとともに液圧式のショックアブソーバ(以下、「アブソーバ」と略す場合がある)を備えており、様々な周波数域の振動に対処することが可能とされている。ただし、そのような構造のシステムでは、液圧式のアブソーバが発生させる減衰力がアクチュエータ力に影響を及ぼすことから、アブソーバとアクチュエータとを適切に協働させる必要がある。電磁式のアクチュエータと液圧式のアブソーバとを備えた電磁式のサスペンションシステムは、未だ開発途上にあるため、アクチュエータとアブソーバとの適切な協働といった問題を始め、種々の問題を抱えており、実用性を向上させるための改良の余地を多分に残すものとなっている。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い車両用サスペンションシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の車両用サスペンションシステムは、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力を発生させるとともに、その減衰力の大きさの基準となる減衰係数を制御可能に変更する液圧式のアブソーバと、アクチュエータ力を制御可能に発生する電磁式のアクチュエータとが、互いに並列的に配設されたシステムであって、アブソーバの減衰係数が、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となる場合に、第1減衰係数とされ、推進力となる場合に、その第1減衰係数より小さい第2減衰係数とされるように構成される。
本発明の車両用サスペンションシステムにおいては、ばね上部とばね下部との接近離間動作の方向によって、アブソーバが発生させる減衰力であるアブソーバ力の発生方向が定まる。したがって、本発明のシステムによれば、アクチュエータ力の発生方向とアブソーバ力の発生方向とが同じ場合と異なる場合とで、つまり、アブソーバ力がアクチュエータ力の助けとなる場合と妨げとなる場合とで、アブソーバの減衰係数が変更されるため、例えば、電磁式のアクチュエータと液圧式のアブソーバとを適切に協働させることが可能となる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項ないし(10)項が、それぞれ、請求項1ないし請求項10に相当する。
(1)ばね上部とばね下部との間に配設さればね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力を発生させるとともに、その減衰力の発生能力であってその減衰力の基準となる減衰係数を変更する減衰係数変更機構を有する液圧式のショックアブソーバと、
(a)ばね上部に支持されるばね上部側ユニットと、(b)ばね下部に支持され、ばね上部とばね下部との接近離間動作に伴って前記ばね上部側ユニットと相対動作するばね下部側ユニットと、(c)電磁モータとを有し、その電磁モータの発生させる力に依拠して、前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作に対する力であるアクチュエータ力を発生させる電磁式のアクチュエータと、
(A)前記減衰係数変更機構の作動を制御することで、前記ショックアブソーバの減衰係数を制御する減衰係数制御部と、(B)前記電磁モータの作動を制御することで、前記アクチュエータが発生させるアクチュエータ力を制御するアクチュエータ力制御部とを有する制御装置と、
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
前記減衰係数制御部が、前記ショックアブソーバの減衰係数を、前記アクチュエータが発生させるアクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となる場合に、第1減衰係数とし、推進力となる場合に、その第1減衰係数より小さい第2減衰係数とするように、前記減衰係数変更機構を制御する車両用サスペンションシステム。
電磁式のアクチュエータと液圧式のアブソーバとが並列的に配設される車両用サスペンションシステムにおいては、液圧式のアブソーバがばね上部とばね下部との接近離間動作に対しての減衰力であるアブソーバ力を発生させることから、アクチュエータの発生させるアクチュエータ力にアブソーバ力が影響する場合がある。具体的に言えば、例えば、アクチュエータ力を利用してばね上部の振動を減衰する制御、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づく振動減衰制御を実行するような場合には、アブソーバ力がアクチュエータ力の助けとなったり妨げとなったりする。詳しく言えば、アクチュエータがアクチュエータ力を発生させる方向(以下、「アクチュエータ力方向」という場合がある)が、アブソーバがアブソーバ力を発生させる方向(以下、「アブソーバ力方向」という場合がある)と同じ場合には、アブソーバ力はアクチュエータ力の助けとなり、アクチュエータ力方向がアブソーバ力方向と異なる場合には、アブソーバ力はアクチュエータ力の妨げとなる。
また、アブソーバ力は、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対しての減衰力であることから、アブソーバ力発生方向は、ばね上部とばね下部とが接近離間動作する方向とは反対の方向となる。つまり、アクチュエータ力方向がばね上部とばね下部とが接近離間動作する方向とは反対の方向となる場合、言い換えれば、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となる場合には、アブソーバ力はアクチュエータ力の助けとなる。したがって、そのような場合に、アブソーバ力を大きくすれば、例えば、アクチュエータ力を小さくすることができるため、アクチュエータによる電力消費を低減することが可能となる。一方、アクチュエータ力方向がばね上部とばね下部とが接近離間動作する方向と同じ方向となる場合、言い換えれば、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する推進力となる場合には、アブソーバ力はアクチュエータ力の妨げとなる。したがって、そのような場合には、アクチュエータ力への影響を低減させるべく、アブソーバ力は小さいほうが望ましい。
以上のことに鑑み、本項に記載の態様のサスペンションシステムにおいては、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となる場合には、アブソーバの減衰係数を第1減衰係数とし、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する推進力となる場合には、アブソーバの減衰係数を第1減衰係数より小さな第2減衰係数とするようにされている。本項に記載の態様のシステムによれば、アクチュエータ力方向とアブソーバ力方向とが同じ場合には、例えば、アクチュエータによる電力消費を低減することが可能となり、アクチュエータ力方向とアブソーバ力方向とが異なる場合には、アブソーバ力によるアクチュエータ力への影響を小さくすることが可能となり得る。つまり、本項に記載の態様では、アクチュエータ力方向とアブソーバ力方向とが同じ場合と、異なる場合とで、アブソーバの減衰特性を変化させることで、アブソーバとアクチュエータとを適切に協働させることが可能とされているのである。
本項に記載の「ショックアブソーバ」は、それの具体的構造が特に限定されるものではなく、例えば、従来から一般的に用いられている油圧式のものを採用することが可能である。また、アクチュエータによってばね上部の振動に対処することが可能であることから、本項に記載の「ショックアブソーバ」は、例えば、それの機能をばね下部の振動への対処に特化させることができ、ばね下部の振動のばね上部への伝達、あるいは、ばね下部の振動の抑制等に適した減衰係数を有するように構成することが可能である。特に、ばね下共振周波数およびそれの近傍の周波数の振動に対処するためのアブソーバとして機能させることにより、具体的に言えば、例えば、アブソーバの減衰係数を比較的低めに設定することにより、車両の乗り心地性能,操縦安定性等の特性を効果的に改善することが可能である。
本項に記載の「減衰係数変更機構」は、減衰係数を連続的に変更可能なものであってもよく、減衰係数を、段階的に設定された2以上の値の間で変更可能なものであってもよい。本項に記載の「第1減衰係数」および「第2減衰係数」は、固定的な値、つまり、変化しない一定の値に設定されていてもよく、その値が変化させられるものであってもよい。
本項に記載の「ばね上部」は、例えば、サスペンションスプリングによって支持される車体の部分を広く意味し、「ばね下部」は、例えば、サスペンションアーム等、車輪軸とともに上下動する車両の構成要素を広く意味する。また、本項に記載の「支持」という文言は、直接的に支持されることのみを意味するものではなく、何らかの部品,部材,ユニット等を介し、間接的に支持されることをも意味する。例えば、ばね上部側ユニット,ばね下部側ユニットがばね上部,ばね下部に支持されるとは、それらが直接的に支持される場合の他、それらの間に弾性体,液圧式ダンパ等を介して支持されるような場合も含まれる。
(2)当該車両用サスペンションシステムが、さらに、
前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの一方を、その一方が支持されるばね上部とばね下部との一方に弾性的に支持させるための支持スプリングと、
ばね上部とばね下部との他方と、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方、若しくは、ばね上部とばね下部との一方とを弾性的に連結する連結スプリングと
を備えた(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様のシステムは、ばね上部とばね下部とを連結するスプリング、すなわち、サスペンションスプリングに関して限定を加えたシステムである。連結スプリングがばね上部とばね下部とを連結する場合には、連結スプリングは、サスペンションスプリングとして機能し、支持スプリングと並列的に設けられる。一方、連結スプリングがばね上部とばね下部との他方とアクチュエータとを連結する場合には、連結スプリングは、支持スプリングと直列的に設けらされ、それら2つのスプリングがサスペンションスプリングとして機能する。
本項に記載のシステムにおいては、支持スプリングとアクチュエータとが直列的に設けられたことから、本システムによれば、例えば、ばね上部とばね下部との相対動作に対してアクチュエータの動作が追従し得ない場合、具体的に言えば、例えば、ばね下共振周波数域の振動が生じるような場合であっても、ばね上部とばね下部との相対動作が支持スプリングによって許容されることから、車両の乗り心地を担保することが可能となる。
(3)前記アクチュエータ力制御部が、
前記アクチュエータが発生させるアクチュエータ力の少なくとも一成分が、ばね上部の動作に対するその動作の速度に応じて発生させるべき大きさの抵抗力と前記ショックアブソーバが発生させる減衰力との差に相当する力となるようにそのアクチュエータ力を制御する(1)項または(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
電磁式のアクチュエータと液圧式のアブソーバとが並列的に配設されるサスペンションシステムにおいて、ばね上部の振動を減衰する制御、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づく振動減衰制御を実行する場合には、その振動を減衰するために必要とされる減衰力、つまり、ばね上絶対速度に応じた大きさの減衰力(以下、「必要減衰力」という場合がある)に相当するアクチュエータ力を、アクチュエータが発生させることが可能である。ただし、液圧式のアブソーバの発生させるアブソーバ力は、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力であるため、ばね上部の振動に対して作用する。このため、アクチュエータが必要減衰力に相当するアクチュエータ力を発生させても、ばね上部の振動に対して実際に作用する力は必要減衰力より大きくなったり、小さくなったりする。そこで、本項に記載のシステムにおいては、必要減衰力とアブソーバ力との差に相当するアクチュエータ力を発生させる制御(以下、「差分力発生制御」という場合がある)が実行される。本項の態様によれば、アブソーバ力を考慮したアクチュエータとアブソーバとの協調の下、ばね上部の振動を減衰させることが可能となり、例えば、ばね上部の振動に対して必要減衰力を過不足なく発生させることが可能となる。
(4)前記減衰係数制御部が、前記ショックアブソーバの減衰係数を、前記第2減衰係数から前記第1減衰係数へ変更する際に、漸変させるように前記減衰係数変更機構を制御する(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
(5)前記減衰係数制御部が、前記ショックアブソーバの減衰係数の前記第2減衰係数から前記第1減衰係数へ変更する際の変化勾配を、前記第1減衰係数から前記第2減衰係数へ変更する際の変化勾配に比較して緩やかにするように前記減衰係数変更機構を制御する(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
液圧式のアブソーバは、一般に、ばね上部とばね下部との接近離間動作に伴うアブソーバ内の作動液の流通を制限することによって、アブソーバ力を発生させる構造とされており、減衰係数を変更するための機構を有する場合、その機構は、通常、作動液の流れに抵抗を与える部分の流路面積を変更するような構造とされる。そのような構造では、減衰係数を増大させる際に流路面積が小さくされるため、作動液の流通が急激な制限を受ける場合には、アブソーバは衝撃を受け、その衝撃に起因して異音,異常振動が発生する。このような異音,異常振動は、運転の快適性を損なうことになる。
そこで、上記2つの項に記載の態様のシステムにおいては、第2減衰係数から第1減衰係数に変更する際、つまり、減衰係数を増大させる際に、アブソーバの減衰係数を急変させるのではなく、穏やかに変化させるようにされている。具体的には、例えば、減衰係数変更機構が減衰係数を連続的に変更する構造である場合には、減衰係数が第2減衰係数から第1減衰係数に変更するまでに要する時間が、第1減衰係数から第2減衰係数に変更するまでに要する時間より長くなるように、具体的な数値で言えば、例えば、数十〜数百msecとなるように、減衰係数変更機構を制御することが可能である。また、例えば、減衰係数変更機構が減衰係数を段階的に設定された複数の値の間で変更する構造である場合には、後に詳しく説明するように、アブソーバの減衰係数が、第1減衰係数と第2減衰係数とそれら2つの減衰係数の間の1以上の減衰係数とに設定されるとともに、アブソーバの減衰係数を第2減衰係数から第1減衰係数へ変更する際に、その減衰係数がそれら2つの減衰係数の間の1以上の減衰係数を順次経るように、減衰係数変更機構を制御をすることが可能である。
(6)前記減衰係数変更機構が、前記ショックアブソーバの減衰係数を段階的に設定された複数の値のいずれか1つとなるように変更する構造とされた(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載のシステムは、減衰係数変更機構の構造に関する限定を加えたシステムである。減衰係数を段階的に変更する構造の減衰係数変更機構は、減衰係数を連続的に変更する構造の減衰係数変更機構に比較して、作動制御に関して簡便であることから、本項の態様のシステムによれば、例えば、減衰係数変更機構の制御を簡素化することができる。
本項の態様の減衰係数変更機構は、アブソーバの減衰係数が段階的に設定されていることから、減衰係数を連続的に変更する構造の減衰係数変更機構に比較して、第2減衰係数から第1減衰係数に変更される際に、アブソーバ内の作動液の流路面積が急減し、アブソーバの衝撃,異音等が生じ易くなる。そのことに鑑みれば、本項の態様は、前項の態様および2つ前の項の態様に特に有効な態様であるといえる。
(7)前記減衰係数制御部が、前記ショックアブソーバの減衰係数を前記第2減衰係数とする場合に、その減衰係数が前記複数の値のうちの最も小さい値となるように前記減衰係数変更機構を制御する(6)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する推進力となる場合、つまり、アブソーバ力がアクチュエータ力の妨げとなる場合のアブソーバの減衰係数を限定する態様である。アブソーバ力がアクチュエータ力の妨げとなる場合において、例えば、必要減衰力とアブソーバ力との差に相当するアクチュエータ力を発生させる制御、つまり、上記差分力発生制御が実行される場合には、アブソーバ力が小さいほど、アクチュエータ力を低減することができる。したがって、本項の態様によれば、例えば、差分力発生制御時に、効果的にシステムの省電力化を実現することが可能となる。
(8)前記減衰係数制御部が、前記ショックアブソーバの減衰係数を前記第2減衰係数とする場合の前記複数の値のうちの1つと、前記第1減衰係数とする場合の前記複数の値のうちの別の1つのとの間に、さらに別の1以上の値が存在するように前記減衰係数変更機構を制御し、かつ、前記ショックアブソーバの減衰係数を前記第2減衰係数から前記第1減衰係数へ変更する際に、その減衰係数が前記別の1以上の値の各々を順次経るように前記減衰係数変更機構を制御する(6)項または(7)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、減衰係数変更機構が減衰係数を段階的に設定された複数の値の間で変更する構造である場合の第2減衰係数から第1減衰係数への変更手法に限定を加えた態様である。本項に記載のシステムによれば、減衰係数を第2減衰係数から第1減衰係数に変更する際に、例えば、アブソーバ内の作動液の流路面積を段階的に減少させることが可能となり、アブソーバの衝撃,異音等を効果的に抑制することが可能となる。
(9)前記減衰係数制御部が、前記ショックアブソーバの減衰係数を前記第1減衰係数とする場合に、前記ショックアブソーバの減衰係数が前記複数の値のうちの前記ショックアブソーバがばね上部の動作に対するその動作の速度に応じた大きさの抵抗力に最も近い減衰力を発生させる値になるように前記減衰係数変更機構を制御する(6)項または(7)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となる場合、つまり、アブソーバ力がアクチュエータ力の助けとなる場合のアブソーバの減衰係数を限定する態様である。アブソーバ力がアクチュエータ力の助けとなる場合において、例えば、上記差分力発生制御が実行される場合には、アブソーバ力が必要減衰力に近い大きさとなるほど、アクチュエータ力を低減することができる。したがって、本項の態様によれば、例えば、差分力発生制御時に、効果的にシステムの省電力化を図ることが可能となる。
また、本項に記載のシステムでは、アブソーバ力が必要減衰力に最も近い大きさになるような制御が実行されているため、アブソーバ力が必要減衰力より大きくなったり小さくなったりする。このため、本システムにおいて、差分力発生制御を実行する場合には、アクチュエータ力の発生方向が頻繁に切り換わる虞がある。そこで、アブソーバ力が必要減衰力を超えず、かつ、必要減衰力に最も近い大きさになるような制御が実行されてもよい。このように制御することで、システムの省電力化を実行するとともに、アクチュエータ力の発生方向の頻繁な切り換わりを抑制することが可能となる。
(10)前記アクチュエータが、
互いに螺合するねじロッドおよびナットを有し、それらねじロッドとナットとの一方が前記ばね上部側ユニットに設けられ他方が前記ばね下部側ユニットに設けられて、それらねじロッドとナットとが前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作に伴って相対回転するように構成されたねじ機構を有し、
前記電磁モータが前記ねじロッドと前記ナットとのいずれかにそれらの相対回転に対する力を付与する構造とされた(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、ねじ機構を採用したアブソーバに限定した態様であり、本項に記載の態様によれば、電磁モータに回転モータを採用した場合において、そのモータの回転力を、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対動作に対する力に容易に変換することが可能となる。本項の態様においては、ばね上部側ユニット,ばね下部側ユニットのいずれにねじロッドを設け、いずれにナットを設けるかは、任意である。さらに、ねじロッドを回転不能とし、ナットを回転可能とするような構成としてもよく、逆に、ナットを回転不能とし、ねじロッドを回転可能とするような構成としてもよい。また、ばね上部側ユニット,ばね下部側ユニットは、それぞれ、ねじロッドとナットとのうちの自身に設けられたものを自身の構成要素として含むように構成することができる。
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
(A)第1実施例
<車両用サスペンションシステムの構成>
第1実施例の車両用サスペンションシステムは、図1に示すように、前後左右4つの車輪12に対応して設けられた4つのサスペンション装置20と、それらサスペンション装置20の制御を担う制御装置とを含んで構成されている。転舵輪である前輪のサスペンション装置20と非転舵輪である後輪のサスペンション装置20とは、車輪を転舵可能とする機構を除き略同様の構成とみなせるため、サスペンション装置20の構成の説明は、後輪のサスペンション装置20を代表して説明する。
i)サスペンション装置の構成
図2に示すように、サスペンション装置20は、独立懸架式のものであり、マルチリンク式サスペンション装置とされている。サスペンション装置20は、それぞれがサスペンションアームである第1アッパアーム30,第2アッパアーム32,第1ロアアーム34,第2ロアアーム36,トーコントロールアーム38を備えている。5本のアーム30,32,34,36,38のそれぞれの一端部は、車体に回動可能に連結され、他端部は、車輪12を回転可能に保持するアクスルキャリア40に回動可能に連結されている。それら5本のアーム30,32,34,36,38により、アクスルキャリア40は、車体に対して一定の軌跡に沿った上下動が許容されている。
サスペンション装置20は、直列に配置された2つの圧縮コイルスプリング46,48と、電磁式のアクチュエータ50と、液圧式のショックアブソーバ52(以下、単にアブソーバ52という場合がある)とを備えている。それら2つのコイルスプリング46,48は、互いに協働して、ばね上部とばね下部とを弾性的に連結するサスペンションスプリングとして機能する。また、アクチュエータ50とアブソーバ52とは、ばね上部の一構成部分であるタイヤハウジングに設けられたマウント部54と、ばね下部の一構成部分である第2ロアアーム36との間に並列的に配設されている。
ii)電磁式アクチュエータの構成
各サスペンション装置20が備えるアクチュエータ50は、図3に示すように、アウタチューブ60と、そのアウタチューブ60に嵌入してアウタチューブの上端部から上方に突出するインナチューブ62とを含んで構成されている。後に詳しく説明するが、アウタチューブ60は、圧縮コイルスプリング48を介して、第2ロアアーム36に弾性的に連結され、また、インナチューブ62は、それの上端部において、マウント部54に連結されている。
アウタチューブ60には、それの内面において、アクチュエータ50の軸方向に延びる1対のガイド溝66が設けられおり、その一方で、インナチューブ62には、それの下端部に、1対のキー68が付設されている。それら1対のキーが1対のガイド溝66にそれぞれ嵌められており、それらキー68およびガイド溝66によって、アウタチューブ60とインナチューブ62とは、相対回転不能、かつ、軸方向に相対動作可能とされている。ちなみに、アウタチューブ60の上端部には、ダストシール70が設けられ、外部からの塵埃,泥等の侵入を防止するようにされている。
また、アクチュエータ50は、雄ねじが形成された中空のねじロッド72と、ベアリングボールを保持してねじロッド72と螺合するナット74と、電磁モータ76(後述するもう1つの電磁モータと区別すべく、以下、「第1モータ76」という場合がある)とを有している。
第1モータ76は、モータケース78内の下方に固定して収容され、そのモータケース78の鍔部がマウント部54の上面に固定されることでマウント部54に対して固定される。なお、モータケース78の鍔部には、鍔状に形成されたアウターチューブ60の上端部も固定されており、そのような構造によって、アウターチューブ60が、マウント部54に固定的に連結される。
第1モータ76の回転軸であるモータ軸80は、中空軸とされ、ねじロッド72の上端部と一体的に接続されている。つまり、ねじロッド72は、モータ軸80を延長する状態でインナチューブ32内に配設され、第1モータ76によって回転力が付与される。一方、アウタチューブ60の底部には、支持筒82が、ねじロッド72を内部に収容する状態で固定されており、ナット74は、支持筒82の上端部に固定されている。ねじロッド72は、支持筒82に固定された状態のナット74と螺合させられており、それらねじロッド72とナット74とによってねじ機構84が構成されている。
以上のような構造から、アクチュエータ50は、インナチューブ62,モータケース78等を含んで構成されるばね上部側ユニット86と、アウタチューブ60,支持筒82,等を含んで構成されるばね下部側ユニット88とを備えるものとされている。アクチュエータ50は、ばね上部とばね下部との相対動作に伴って、ばね上部側ユニット86とばね下部側ユニット88とが相対動作し、ねじロッド72およびモータ76が回転するようにされている。さらに、アクチュエータ50は、第1モータ76がねじロッド72に回転力を付与することでばね上部側ユニット86とばね下部側ユニット88との相対動作に対する力であるアクチュエータ力を発生させるようになっている。ちなみに、このアクチュエータ力は、圧縮コイルスプリング48を介して、ばね上部とばね下部とに作用することになる。
iii)液圧式アブソーバの構成
各サスペンション装置20が備えるアブソーバ52は、シリンダ装置として構成されており、アクチュエータ50と第2ロアアーム36との間に配置されている。アブソーバ52は、概して円筒状のハウジング90を有している。このハウジング90は、それの下端部に固定的に設けられた連結部92において、第2ロアアーム36に連結されており、内部に作動液を収容している。ハウジング90の内部には、ピストン94が配設されており、そのピストン94は、ハウジング90の内部を、2つの液室である上液室96と下液室98とに区画するとともに、ハウジング90に対して摺動可能とされている。
また、アブソーバ52は、ピストンロッド100を有しており、そのピストンロッド100は、下端部においてピストン94に連結されるとともに、ハウジング90の蓋部から延び出している。ピストンロッド100は、アウタチューブ60の底部に設けられた穴を貫通し、かつ、ねじロッド72およびモータ軸80をも貫通しており、上端部においてモータケース78内の上方に固定的に設けられたアブソーバ52の電磁モータ101(上記第1モータ76と区別すべく、以下、「第2モータ101」という場合がある)に連結されている。詳しく言えば、第2モータ101の下方には、そのモータ101の回転を軸線方向への移動に変換する動作変換機構102が設けられており、その動作変換機構102にピストンロッド100の上端部が連結されている。このような構造により、ピストンロッド100がマウント部54に固定的に連結される。
そのピストンロッド100は、中空状とされており、それの内部を貫通する貫通穴103を有している。その貫通穴103には、後に詳しく説明するように、調整ロッド104が、軸線方向に移動可能に挿入されており、それの上端部において、上記動作連結機構102に連結されている。このような構造により、第2モータ101が作動させられると、調整ロッド104が軸線方向に移動するようにされている。
また、ハウジング90は、図4に示すように、外筒105と内筒106と有する二重構造とされており、外筒105と内筒106との間には、バッファ室107が形成されている。また、ハウジング90内の底部付近には、仕切壁108が設けられ、連通穴110を介してバッファ室107と通じる補助液室112が形成されている。つまり、下液室98とバッファ室107とは、補助液室112を介して連通している。
ピストン94には、それを軸方向に貫通し、上液室96と下液室98とを連通させる複数の連通路114,116(図4にはそれぞれ2つ図示されている)が設けられている。また、ピストン94には、それの下面および上面のそれぞれに、弾性材製の円板状をなす弁部材118,120が設けられており、弁部材118によって連通路114の下液室98側の開口が塞がれ、弁部材120によって連通路116の上液室96側の開口が塞がれている。
また、仕切壁108には、ピストン94と同様に、下液室98と補助液室112とを連通させる複数の連通路122,124(図4にはそれぞれ2つ図示されている)が設けられている。また、仕切壁108には、それの下面および上面のそれぞれに、弾性材製の円板状をなす弁部材126,128が設けられており、弁部材126によって連通路122の補助液室112側の開口が塞がれ、弁部材128によって連通路124の下液室98側の開口が塞がれている。
ピストンロッド100の内部の貫通穴103は、大径部130と、大径部130の下方に延びる小径部132とを有しており、その貫通穴103の大径部130と小径部132との境界部分には、段差面134が形成されている。その段差面134の上方には、上液室96と貫通穴103とを接続させる接続通路136が設けられている。この接続通路136と貫通穴103とによって、上液室96と下液室98とは連通させられている。また、貫通穴103の大径部130には、上記調整ロッド104が、ピストンロッド100の上端部から挿入されている。その調整ロッド104の下端部は、円錐状に形成された円錐部137とされており、その円錐部137の先端部が貫通穴103の小径部132に進入可能とされており、円錐部137と貫通穴103の段差面134との間には、クリアランス138が形成されている。ちなみに、調整ロッド104の外径は、貫通穴103の小径部132の内径より大きくされている。なお、貫通穴103内の接続通路136より上方において、貫通穴103の内周面と調整ロッド104の外周面との間にはシール139が設けられており、作動液が貫通穴103上方には流出しないようにされている。
上記のような構造により、例えば、ばね上部とばね下部とが離間し、ピストン94が上方に移動させられる場合には、上液室96内の作動液の一部が連通路114および貫通穴103のクリアランス138を通って下液室98へ流れるとともに、バッファ室107の作動液の一部が連通路124を通って下液室98に流入する。その際、作動液が弁板118,128を撓ませて下液室98内へ流入することと、作動液が貫通穴103内のクリアランス138を通過することとによって、ピストン94の上方への移動に抵抗力が付与され、その抵抗力によってその移動に対する減衰力が発生させられる。また、逆に、ばね上部とばね下部とが接近し、ピストン94がハウジング90内を下方に移動させられる場合には、下液室98内の作動液の一部が、連通路116および貫通穴103内のクリアランス138を通って上液室96へ流れるとともに、連通路122を通ってバッファ室107に流出することになる。その際、作動液が弁板120を撓ませて上液室96内に流入することと、作動液が弁板126を撓ませてバッファ室107内へ流入することと、作動液が貫通穴103内のクリアランス138を通過することとによって、ピストン94の下方への移動に抵抗力が付与され、その抵抗力によってその移動に対する減衰力が発生させられる。つまり、アブソーバ52は、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対して減衰力を発生させる構造とされている。
また、調整ロッド104は、上述のように、第2モータ101の作動によって軸線方向に移動可能とされており、貫通穴103のクリアランス138の大きさ(断面積)を変化させることが可能となっている。作動液がそのクリアランス138を通過する際には、上述のように、ピストン94の上下方向への動作に対する抵抗力が付与されるが、その抵抗力の大きさは、クリアランス138の大きさに応じて変化する。したがって、アブソーバ52は、第2モータ101の作動により調整ロッド104を軸線方向に移動させて、そのクリアランス138を変更することで、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰特性、言い換えれば、いわゆる減衰係数を変更することが可能な構造とされている。より詳しく言えば、第2モータ101が、それの回転角度がアブソーバ52の有すべき減衰係数に応じた回転角度となるように制御され、アブソーバ52の減衰係数が変更される。ちなみに、第2モータ101はステッピングモータとされており、それが停止させられる回転角度位置は段階的に設定された複数の位置とされている。第2モータ101の回転角度位置を変更する場合には、所定のステップ数だけ回転させるための指令に基づき、第2モータ101が回転駆動させられることになる。本システムにおいては、アブソーバ52の減衰係数として、5つの値が設定されており、アブソーバ52は、減衰係数を5段階に変更することが可能な構造とされている。具体的には、アブソーバ52の減衰係数は、標準的な減衰係数である設定標準減衰係数CM,設定標準減衰係数CMより大きい減衰係数として設定された設定高減衰係数CH,設定高減衰係数CHより大きい減衰係数として設定された設定最高減衰係数CHMAX,設定標準減衰係数CMより小さい減衰係数として設定された設定低減衰係数CL,設定低減衰係数CLより小さい減衰係数として設定された設定最低減衰係数CLMAXの5つが設定されており、制御によって、アブソーバ52の減衰係数は、それらの5つの設定減衰係数CLMAX,CL,CM,CH,CHMAXから選択されるようにして変更される。なお、アブソーバ52は、上記構成とされたことで、第2モータ101,貫通穴103,調整ロッド104,接続通路136等で構成される減衰係数変更機構を備えるものとされている。
iv)サスペンションスプリングの構成
アブソーバ52のハウジング90には、それの外周部において、下部スプリング座140が鍔状に付設されている。一方、アウタチューブ60には、それの外周部において、中間スプリング座142が鍔状に付設されている。圧縮コイルスプリング48は、それら下部スプリング座140と中間スプリング座142とに挟まれるようにして、圧縮状態で配設されている。さらに、マウント部54の下面には、防振ゴム144を介して、上部スプリング座146が付設されている。圧縮コイルスプリング46は、中間スプリング座142と上部スプリング座146とに挟まれるようにして、圧縮状態で配設されている。
このような構造から、圧縮コイルスプリング46は、ばね上部とばね下部側ユニット88とを弾性的に連結する連結スプリングとして機能するものとなっており、圧縮コイルスプリング48は、ばね下部側ユニット88をばね下部に弾性的に支持させる支持スプリングとして機能するものとなっている。したがって、圧縮コイルスプリング46と圧縮コイルスプリング48とは、それらが協働することで、ばね上部とばね下部とを弾性的に連結するサスペンションスプリングとして機能している。
v)制御装置の構成
本システムでは、図1に示すように、4つのアクチュエータ50についての制御を実行するアクチュエータ電子制御ユニット(アクチュエータECU)160と、4つのアブソーバ52についての制御を実行するアブソーバ電子制御ユニット(アブソーバECU)162とが設けられている。これら2つのECU160,162を含んで、本サスペンションシステムの制御装置が構成されている。
アクチュエータECU160は、各アクチュエータ50の備える各第1モータ76の作動を制御する制御装置であり、各第1モータ76に対応する駆動回路としての4つのインバータ164と、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体とするアクチュエータコントローラ166とを備えている。一方、アブソーバECU162は、アブソーバ52の備える第2モータ101の作動を制御する制御装置であり、駆動回路としての4つのモータ駆動回路168と、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体とするアブソーバコントローラ170とを備えている(図9参照)。各インバータ164および各モータ駆動回路168は、コンバータ172を介してバッテリ174に接続されており、各インバータ164は、対応するアクチュエータ50の第1モータ76に接続され、各モータ駆動回路168は、対応するアブソーバ52の第2モータ101に接続されている。
アクチュエータ50の有する第1モータ76は、DCブラシレスモータであり、定電圧駆動される。各アクチュエータ50のアクチュエータ力の制御は、各第1モータ76に流れる電流を制御することによって行われる。その電流の制御は、PWM(Pulse Width Modulation)におけるパルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することによって行われる。ちなみに、第1モータ76の回転角θは、モータ回転角センサ178によって検出されており、インバータ164は、その検出されたモータ回転角θに基づいて第1モータ76の作動を制御する。
アクチュエータコントローラ166には、4つのサスペンション装置20に対応して設けられた各種のセンサ、詳しくは、ばね上部の縦加速度であるばね上縦加速度Guを検出するばね上縦加速度センサ180,ばね上部とばね下部との距離であるばね上ばね下間距離Xを検出するためのストロークセンサ182が接続されている。さらに、アクチュエータコントローラ166は、各インバータ164にも接続され、それらを制御することで、各アクチュエータ50の第1モータ76を制御する。なお、アクチュエータコントローラ166のコンピュータが備えるROMには、後に説明する各アクチュエータ50の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。
一方、アブソーバコントローラ170には、上記ばね上縦加速度センサ180とストロークセンサ182とが接続されている。さらに、アブソーバコントローラ170は、各モータ駆動回路168にも接続され、それらを制御することで、各アブソーバ52の第2モータ101を制御する。なお、アブソーバコントローラ170のコンピュータが備えるROMには、後に説明する各アブソーバ52の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。ちなみに、アクチュエータコントローラ166とアブソーバコントローラ170とは、互いに接続されて通信可能とされており、必要に応じて、当該サスペンションシステムの制御に関する情報,指令等が通信される。
<車両用サスペンションシステムの制御>
本システムでは、車体の振動を減衰するべく、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づいた減衰制御が実行される。詳しくいえば、ばね上振動を減衰するために必要とされる減衰力(以下、「必要減衰力」という場合がある)、つまり、ばね上絶対速度に応じた大きさの減衰力を、ばね上振動に対して作用させる制御が実行される。
上記液圧式のアブソーバ52は、自身が発生させる力(以下、アブソーバ力という場合がある)をばね上振動に対して作用させることが可能である。ただし、アブソーバ力は、ばね上部とばね下部との相対動作に対する抵抗力であることから、アブソーバ力を発生させる方向とアブソーバ力の大きさとを任意に変更することができない。このため、アブソーバ力を必要減衰力として発生させることは困難である。
一方、アクチュエータ50は、任意の方向に、任意の大きさのアクチュエータ力を発生させることが可能であることから、アクチュエータ力を必要減衰力として発生させることが考えられる。ところが、アブソーバ力は、上述のように、ばね上振動に対して影響を及ぼすことから、アクチュエータ50が必要減衰力に相当するアクチュエータ力を発生させても、ばね上振動に対して実際に生じる力は、必要減衰力より大きくなったり、小さくなったりする。そこで、本システムでは、アブソーバ52が発生させるアブソーバ力を考慮した上で、アクチュエータ50とアブソーバ52とを協調させて、ばね上部の振動を減衰するための制御が実行される。詳しくいえば、必要減衰力とアブソーバ力との差に相当するアクチュエータ力を、アクチュエータ50が発生させるのである。つまり、本システムにおいては、アブソーバ力とアクチュエータ力とによって、ばね上振動を減衰するのである。
i)アクチュエータの制御
アクチュエータ52が発生させるべきアクチュエータ力である目標アクチュエータ力F*は、ばね上絶対速度に基づいて決定される減衰力である必要減衰力とアブソーバ52が発生させるアブソーバ力とによって決定される。詳しくいえば、ばね上絶対速度Vuに基づいて、必要減衰力FHが、次式に従って決定され、
H=CS・Vu(CS:スカイフック理論に基づく減衰係数)
ばね上部とばね下部との接近離間動作速度、つまり、ばね上部とばね下部との相対速度Vsに基づいて、アブソーバ力FAが、次式に従って決定される。
A=CA・Vs(CA:アブソーバの減衰係数)
そして、必要減衰力FHとアブソーバ力FAとの差に相当するアクチュエータ力を発生させるべく、目標アクチュエータ力F*が、次式に従って決定される。
*=FH−FA
そして、この決定された目標アクチュエータ力FAを発生させるようにアクチュエータ50の第1モータ76の作動が制御される。具体的には、アクチュエータ50の発生させるべき目標アクチュエータ力F*に基づいて、アクチュエータ50の第1モータ76についてのデューティ比が決定され、その決定されたデューティ比に関する指令が、対応するインバータ164に送信される。インバータ164は、そのデューティ比に基づいて、対応するアクチュエータ50の第1モータ76の作動制御を実行する。
ii)アブソーバの制御
また、アクチュエータ50がアクチュエータ力を発生させる方向と、アブソーバ52がアブソーバ力を発生させる方向とが同じ場合には、アブソーバ力がアクチュエータ力の助けとなることから、アブソーバ力は大きいほうが望ましい。アブソーバ52がアブソーバ力を発生させる方向は、ばね上部とばね下部とが接近離間する方向とは反対であることから、アクチュエータ力を発生させる方向と反対の方向にばね上部とばね下部とが接近離間する場合、つまり、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となる場合には、アブソーバ力は大きいほうが望ましい。一方、アクチュエータ50がアクチュエータ力を発生させる方向と、アブソーバ52がアブソーバ力を発生させる方向とが反対の場合には、アブソーバ力はアクチュエータ力の妨げとなることから、アブソーバ力は小さいほうが望ましい。つまり、アクチュエータ力を発生させる方向にばね上部とばね下部とが接近離間する場合、言い換えれば、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する推進力となる場合には、アブソーバ力は小さいほうが望ましい。
以上のことに鑑み、本システムでは、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となる場合には、アブソーバ力を大きくすべく、アブソーバ52の減衰係数が大きな値の減衰係数としての第1減衰係数とされ、一方、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する推進力となる場合には、アブソーバ力を小さくするべく、アブソーバ52の減衰係数が第1減衰係数より小さい第2減衰係数とされる。
具体的に説明すれば、本システムにおいては、ばね上部が上方に移動している場合には、ばね上絶対速度Vuは+、ばね上部が下方に移動している場合には、ばね上絶対速度Vuは−としており、ばね上部とばね下部とが離間する場合には、ばね上部とばね下部との相対速度Vsは+、ばね上部とばね下部とが接近する場合には、相対速度Vsは−としている。また、アクチュエータ50がアクチュエータ力を発生させる方向(以下、「アクチュエータ力方向」という場合がある)がばね上部とばね下部とを接近させる方向(以下、「バウンド方向」という場合がある)である場合には、アクチュエータ力は+,アクチュエータ力方向がばね上部とばね下部とを離間させる方向(以下、「リバウンド方向」という場合がある)である場合には、アクチュエータ力は−としている。
上記のことから、アクチュエータ力方向がバウンド方向であり、ばね上部とばね下部とが接近する場合、若しくは、アクチュエータ力方向がリバウンド方向であり、ばね上部とばね下部とが離間する場合、つまり、アクチュエータ力方向にばね上部とばね下部とが接近離間する場合には、アクチュエータ力の符号と相対速度Vsの符号とが異なる。したがって、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する推進力となる場合には、アクチュエータ力の符号と相対速度Vsの符号とが異なる。一方、アクチュエータ力方向がバウンド方向であり、ばね上部とばね下部とが離間する場合、若しくは、アクチュエータ力方向がリバウンド方向であり、ばね上部とばね下部とが接近する場合、つまり、アクチュエータ力方向とは反対の方向にばね上部とばね下部とが接近離間する場合には、アクチュエータ力の符号と相対速度Vsの符号とが同じとなる。したがって、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となる場合には、アクチュエータ力の符号と相対速度Vsの符号とが同じとなる。
したがって、本システムにおいては、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となる場合、つまり、目標アクチュエータ力F*の符号と相対速度Vsの符号とが同じとなる場合には、アブソーバ力をできるだけ大きくすべく、アブソーバ52の減衰係数CAを最も大きい減衰係数である設定最高減衰係数CHMAXとし、一方、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する推進力となる場合、つまり、目標アクチュエータ力F*の符号と相対速度Vsの符号とが異なる場合には、アブソーバ力をできるだけ小さくすべく、アブソーバ52の減衰係数CAを最も小さい減衰係数である設定最低減衰係数CLMAXとしている。
また、アブソーバ52は、ばね上部とばね下部との相対速度Vsに応じた大きさのアブソーバ力FAを発生させることから、アブソーバ力FAと相対速度Vsとの関係は、図5に示すようになる。図では、設定されている5種の減衰係数CLMAX,CL,CM,CH,CHMAXの各々に対応したアブソーバ力と相対速度との関係を示している。本システムにおいては、上述のように、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となる場合と推進力となる場合とで、アブソーバ52の減衰係数CAが設定最高減衰係数CHMAXと設定最低減衰係数CLMAXとの間で切換えられる。アブソーバ52の減衰係数CAが、相対速度VsがVs1の際に設定最低減衰係数CLMAXから設定最高減衰係数CHMAXに変更される場合には、図に示すように、アブソーバ力FAがFA1からFA2に急増することになり(実線矢印)、アブソーバ52に比較的大きな衝撃が生じ、それに伴って、異音,異常振動等が発生する虞がある。
アブソーバ52の減衰係数の制御においては、目標とする減衰係数に応じて第2モータ101が制御され、調整ロッド104の円錐部137の上下方向の位置が調整されることで、貫通穴103内のクリアラス138の大きさ(幅)が調整される。詳しく言えば、アブソーバ52の減衰係数が大きくなるほど、そのクリアランス138は小さくされる。つまり、アブソーバ52の減衰係数を増大させる際には、貫通穴103内のクリアランス138が大きい状態から、小さい状態に変更されるのである。このため、アブソーバ52の減衰係数CAが、設定最低減衰係数CLMAXから設定最高減衰係数CHMAXに変更される場合には、アブソーバ52に比較的大きな衝撃が生じ、それに伴って、異音,異常振動等が発生する虞がある。
そこで、本システムでは、アブソーバ力の急増を防止すべく、アブソーバ52の減衰係数CAを設定最低減衰係数CLMAXから設定最高減衰係数CHMAXへ変更する際には、設定低減衰係数CL,設定標準減衰係数CM,設定高減衰係数CHを順次経るように(点線矢印)、アブソーバ52の減衰係数CAが変更される。つまり、アブソーバ52の減衰係数CAを、設定最低減衰係数CLMAXから設定最高減衰係数CHMAXへ変更する際に、漸変させているのである。具体的には、アブソーバ52の減衰係数を設定最低減衰係数CLMAXから設定最高減衰係数CHMAXへ変更する際には、図6に示すように、減衰係数を設定時間t1(例えば、数十〜数百msec)毎に順次変更させているのである(実線矢印)。ちなみに、アブソーバ52の減衰係数CAを設定最高減衰係数CHMAXから設定最低減衰係数CLMAXへ変更する際には、アブソーバ52内の貫通穴103のクリアランス138が小さい状態から大きい状態に変更されることから、異音,異常振動等が発生する虞が少ないため、図6の点線矢印に示すように、アブソーバ52の減衰係数CAが変更される。つまり、図から解るように、アブソーバ52の減衰係数CAを、設定最低減衰係数CLMAXから設定最高減衰係数CHMAXへ変更する際の変化勾配(実線矢印)は、アブソーバ52の減衰係数CAを設定最高減衰係数CHMAXから設定最低減衰係数CLMAXへ変更する際の変化勾配(点線矢印)に比較して穏やかにされているのである。
<制御プログラム>
本システムにおいてアクチュエータ50の発生させるアクチュエータ力の制御は、図7にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムがアクチュエータコントローラ166によって実行されることで行われる。一方、アブソーバ52の減衰係数の制御は、図8にフローチャートを示すアブソーバ制御プログラムがアブソーバコントローラ170によって実行されることで行われる。それら2つのプログラムは、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec)をおいて繰り返し実行されており、並行して実行されている。以下に、それぞれの制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。なお、アクチュエータ制御プログラムは、4つのアクチュエータ50毎に実行され、アブソーバ制御プログラムは、4つのアブソーバ52毎に実行される。以降の説明においては、説明の簡略化に配慮して、1つのアクチュエータ52に対しての制御処理、1つのアブソーバ52に対しての制御処理について説明することとする。
i)アクチュエータ制御プログラム
本プログラムに従う処理では、まず、ステップ1(以下、単に「S1」と略す。他のステップについても同様とする)において、ばね上縦加速度センサ180に基づいて、ばね上部の縦加速度Guが検出され、S2において、その検出されたばね上縦加速度Guに基づいて、ばね上絶対速度Vuが演算される。続いて、S3において、ストロークセンサ182に基づいて、ばね上ばね下間距離Xが検出され、S4において、その検出されたばね上ばね下間距離Xに基づいて、ばね上部とばね下部との相対速度Vsが演算される。
次に、S5において、相対速度Vsに応じて、アブソーバ力FAが決定される。アブソーバ力FAを決定する際に使用されるアブソーバ52の減衰係数CAに関する情報は、アクチュエータコントローラ166がアブソーバコントローラ170から必要に応じて取得する。続いて、S6において、ばね上絶対速度Vuに応じて、必要減衰力FHが決定され、S7において、アブソーバ力FAと必要減衰力FHとに基づいて、目標アクチュエータ力F*が決定される。そして、S8において、目標アクチュエータ力F*に基づく制御信号がインバータ164に送信された後、本プログラムの1回の実行が終了する。
ii)アブソーバ制御プログラム
本プログラムに従う処理では、まず、S11において、ストロークセンサ182に基づいて、ばね上ばね下間距離Xが検出され、S12において、その検出されたばね上ばね下間距離Xに基づいて、ばね上部とばね下部との相対速度Vsが演算される。次に、S13において、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となるか推進力になるかが判定される。具体的に言えば、その演算された相対速度Vsの符号と、上記アクチュエータ制御プログラムにおいて決定されている目標アクチュエータ力F*の符号とが同じであるか否かが判定される。目標アクチュエータ力F*に関する情報は、アブソーバコントローラ170がアクチュエータコントローラ166から必要に応じて取得する。
相対速度Vsの符号と目標アクチュエータ力F*の符号とが異なっていると判定された場合、つまり、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する推進力となると判定された場合には、S14において、減衰係数フラグGのフラグ値が1にされる。減衰係数フラグGは、アブソーバ52の減衰係数CAを示すものであり、そのフラグGのフラグ値が1とされる場合には、アブソーバ52の減衰係数CAが設定最低減衰係数CLMAXであることを示している。また、そのフラグGのフラグ値が2とされる場合には減衰係数CAが設定低減衰係数CLであり、フラグ値が3とされる場合には設定標準減衰係数CLであることを示している。さらに、フラグ値が4とされる場合には減衰係数CAが設定高減衰係数CHであり、フラグ値が5とされる場合には設定最高減衰係数CHMAXであることを示している。
また、S13において相対速度Vsの符号と目標アクチュエータ力F*の符号とが同じであると判定された場合、つまり、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となると判定された場合には、S15において、減衰係数フラグGのフラグ値が5であるか否かが判定される。つまり、アブソーバ52の減衰係数CAが設定最高減衰係数CHMAXであるか否かが判定される。アブソーバ52の減衰係数CAが設定最高減衰係数CHMAXでないと判定された場合には、S16において、減衰係数CAの切換時間を計測するための計測時間tに特定時間Δtが加算され、S17において、計測時間tが設定時間t1となっているか否かが判定される。計測時間tが設定時間t1となっていると判定された場合には、S18において、アブソーバ52の減衰係数CAを漸増させるべく、減衰係数フラグGのフラグ値に1が加算され、S19において、計測時間tが0にリセットされる。減衰係数フラグGのフラグ値がいずれかの値に決定されると、S20において、その決定された減衰係数フラグGのフラグ値に基づいて、アブソーバ52の減衰係数CAが決定される。そして、S21において、決定された減衰係数CAに基づく制御信号がモータ駆動回路168に送信された後、本プログラムの1回の実行が終了する。
<コントローラの機能構成>
上記アクチュエータ制御プログラムを実行するアクチュエータコントローラ166は、それの実行処理に鑑みれば、図9に示すような機能構成を有するものと考えることができる。図から解るように、アクチュエータコントローラ166は、アクチュエータ制御プログラムの処理を実行する機能部、つまり、アクチュエータ力を制御する機能部として、アクチュエータ力制御部200を有している。そのアクチュエータ力制御部200は、S1〜S7の処理を実行する機能部、つまり、目標アクチュエータ力F*を決定する機能部として、目標アクチュエータ力決定部202を有している。なお、目標アクチュエータ力決定部202は、S6の処理を実行する機能部、つまり、必要減衰力FHを決定する機能部として、必要減衰力決定部204を、S5の処理を実行する機能部、つまり、アブソーバ力FAを決定する機能部として、アブソーバ力決定部206を、それぞれ有している。
また、上記アブソーバ制御プログラムを実行するアブソーバコントローラ170も、それの実行処理に鑑みれば、図9に示すような機能構成を有するものと考えることができる。図から解るように、アブソーバコントローラ170は、アブソーバ制御プログラムの処理を実行する機能部、つまり、アブソーバ52の減衰係数CAを制御する機能部として、減衰係数制御部208を有している。その減衰係数制御部208は、S13の処理を実行する機能部、つまり、減衰係数CAを第1減衰係数と第2減衰係数とのいずれに切換えるかを判定する機能部として、減衰係数切換判定部210を、S14〜20の処理を実行する機能部、つまり、減衰係数CAを変更する機能部として、減衰係数変更部212を、それぞれ有している。なお、減衰係数変更部212は、S16〜S18の処理を実行する機能部、つまり、減衰係数CAを漸増させる機能部として、減衰係数漸増部214を有している。
(B)第2実施例
<車両用サスペンションシステムの構成>
第2実施例のサスペンションシステムの構成は、先の実施例のサスペンションシステムの構成と同様であることから、以下の説明において、先のシステムと共通する構成要素については、同じ符号を用い、それらの説明は省略あるいは簡略に行うものとする。
<車両用サスペンションシステムの制御>
本システムにおいても、先のシステムと同様に、アブソーバ52が発生させるアブソーバ力を考慮した上で、アクチュエータ50とアブソーバ52とを協調させて、ばね上部の振動を減衰するための制御が実行される。つまり、必要減衰力FHとアブソーバ力FAとの差に相当するアクチュエータ力を発生させるように、アクチュエータ50の第1モータ76の作動が制御される。
また、本システムにおいても、先のシステムと同様に、アブソーバ力がアクチュエータ力の妨げとなる場合には、アブソーバの減衰係数CAを低いものに変更し、アブソーバ力がアクチュエータ力の助けとなる場合には、アブソーバの減衰係数CAを高いものに変更するように、アブソーバ52の第2モータ101の作動が制御される。ただし、アブソーバ力がアクチュエータ力の助けとなる場合に、先のシステムにおいては、アブソーバ力の急増を抑制しつつできるだけ大きなアブソーバ力を発生させるべく、アブソーバの減衰係数CAを設定最高減衰係数CHMAXに段階的に変更するようにされていたが、本システムでは、アブソーバ52ができるだけ必要減衰力FHに近い大きさのアブソーバ力を発生させるように、アブソーバの減衰係数CAが変更される。なお、アブソーバ力がアクチュエータ力の妨げとなる場合には、本システムにおいても、アブソーバの減衰係数CAは設定最低減衰係数CLMAXにされる。
詳しく言えば、アブソーバ52が必要減衰力FHに相当する大きさのアブソーバ力を発生させることが可能な減衰係数、つまり、アブソーバ52の目標とする目標減衰係数C*が、必要減衰力FHと相対速度Vsとに基づいて、次式に従って決定される。
*=FH/Vs
そして、アブソーバ52に設定されている減衰係数のうちの設定最低減衰係数CLMAXを除いた減衰係数CL,CM,CH,CHMAXのうちから、その決定された目標減衰係数C*に最も近いものが選択され、その選択された減衰係数になるようにアブソーバ52の第2モータ101が制御される。このように制御されることで、アブソーバ52が必要減衰力FHに最も近いアブソーバ力FAを発生させることが可能となる。つまり、必要減衰力FHとアブソーバ力FAとの差に相当するアクチュエータ力を可及的に小さくすることが可能となり、アクチュエータ52への負担を軽減することが可能となる。
また、本システムでは、アブソーバ力FAが必要減衰力FHに最も近い大きさとなるように、アブソーバの減衰係数CAが決定されているが、アブソーバ力FAが必要減衰力FHを超えず、かつ、最も近い大きさとなるように、アブソーバの減衰係数CAが決定されてもよい。具体的に言えば、アブソーバ52に設定されている減衰係数のうちの設定最低減衰係数CLMAXを除いた減衰係数CL,CM,CH,CHMAXのうちから、目標減衰係数C*を超えず、かつ、目標減衰係数C*に最も近いものが選択され、その選択された減衰係数になるようにアブソーバ52の第2モータ101が制御されてもよい。なお、目標減衰係数C*が設定低減衰係数CLより小さい場合には、アブソーバの減衰係数CAとして設定低減衰係数CLが選択される。
<制御プログラム>
本システムにおいて、先のシステムにおいて実行されているアクチュエータ50の制御と同様の制御が、図7にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムがアクチュエータコントローラ166によって実行されることで行われる。一方、アブソーバ52の減衰係数の制御が、図10にフローチャートを示す第2アブソーバ制御プログラムがアブソーバコントローラ170によって実行されることで行われる。それら2つのプログラムは、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec)をおいて繰り返し実行されており、並行して実行されている。以下に、アブソーバ52の制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。また、アクチュエータ50の制御のフローは先の実施例において説明されていることから、アクチュエータの制御のフローの説明は省略する。また、本システムの第2アブソーバ制御プログラムに従う処理は、先のシステムのアブソーバ制御プログラムに従う処理と多くが共通するため、第2アブソーバ制御プログラムの説明において、先のシステムと共通する処理に関する説明は省略あるいは簡略に行うものとする。
第2アブソーバ制御プログラムに従う処理では、S31〜S33において、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となるか推進力になるかが判定される。具体的に言えば、相対速度Vsの符号と目標アクチュエータ力F*の符号とが同じであるか否かが判定される。相対速度Vsの符号と目標アクチュエータ力F*の符号とが異なっていると判定された場合、つまり、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する推進力となると判定された場合には、S34において、アブソーバ52の減衰係数CAが設定最低減衰係数CLMAXに決定される。
また、相対速度Vsの符号と目標アクチュエータ力F*の符号とが同じであると判定された場合、つまり、アクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となると判定された場合には、S35において、ばね上縦加速度センサ180に基づいて、ばね上部の縦加速度Guが検出され、S36において、その検出されたばね上縦加速度Guに基づいて、ばね上絶対速度Vuが演算される。次に、S37において、その演算されたばね上絶対速度Vuに応じて、必要減衰力FHが決定され、S38において、必要減衰力FHと相対速度Vsとに基づいて、目標減衰係数C*が決定される。そして、S39において、アブソーバ52に設定されている減衰係数のうちの設定最低減衰係数CLMAXを除いた減衰係数CL,CM,CH,CHMAXのうちから目標減衰係数C*に最も近いものが選択され、S40において、その選択された減衰係数に基づく制御信号がモータ駆動回路168に送信された後、本プログラムの1回の実行が終了する。
<コントローラの機能構成>
上記第2アブソーバ制御プログラムを実行するアブソーバECU162のアブソーバコントローラ170、および、アクチュエータ制御プログラムを実行するアクチュエータECU160のアクチュエータコントローラ166は、それらの実行処理に鑑みれば、図11に示すような機能構成を有するものと考えることができる。アクチュエータECU160のアクチュエータコントローラ166の機能構成の説明は、先の実施例において説明されていることから省略するものとする。また、アブソーバECU162のアブソーバコントローラ170の機能構成は、先のシステムと略同様であることから、アブソーバコントローラ170の機能構成の説明は、簡略して行うものとする。
アブソーバコントローラ170は、第2アブソーバ制御プログラムの処理を実行する機能部として、減衰係数制御部220を有している。その減衰係数制御部220は、S33の処理を実行する機能部、つまり、減衰係数CAを第1減衰係数と第2減衰係数とのいずれに切換えるかを判定する機能部として、減衰係数切換判定部222を、S35〜39の処理を実行する機能部、つまり、第2減衰係数を決定する機能部として、第2減衰係数決定部224を、それぞれ有している。
第1実施例の車両用サスペンションシステムの全体構成を示す模式図である。 図1の車両用サスペンションシステムの備えるサスペンション装置を示す模式図である。 サスペンション装置の備える電磁式のアクチュエータと液圧式のショックアブソーバとを示す概略断面図である。 図3のショックアブソーバの概略断面図の拡大図である。 ばね上部とばね下部との相対速度とアブソーバが発生させるアブソーバ力との関係を概念的に示すグラフである。 アブソーバの減衰係数の時間経過に対する変化を概略的に示すチャートである。 アクチュエータ制御プログラムを示すフローチャートである。 アブソーバ制御プログラムを示すフローチャートである。 第1実施例のサスペンションシステムの制御を司る制御装置の機能を示すブロック図である。 第2実施例の車両用サスペンションシステムにおける第2アブソーバ制御プログラムを示すフローチャートである。 第2実施例のサスペンションシステムの制御を司る制御装置の機能を示すブロック図である。
符号の説明
36:第2ロアアーム(ばね下部) 46:圧縮コイルスプリング(連結スプリング) 48:圧縮コイルスプリング(支持スプリング) 50:アクチュエータ 52:ショックアブソーバ 54:マウント部(ばね上部) 72:ねじロッド 74:ナット 76:電磁モータ 84:ねじ機構 86:ばね上部側ユニット 88:ばね下部側ユニット 101:電磁モータ(減衰係数変更機構) 102:動作変換機構(減衰係数変更機構) 104:調整ロッド(減衰係数変更機構) 160:アクチュエータ電子制御ユニット(制御装置) 162:アブソーバ電子制御ユニット(制御装置) 200:アクチュエータ力制御部 208:減衰係数制御部 220:減衰係数制御部

Claims (10)

  1. ばね上部とばね下部との間に配設さればね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力を発生させるとともに、その減衰力の発生能力であってその減衰力の基準となる減衰係数を変更する減衰係数変更機構を有する液圧式のショックアブソーバと、
    (a)ばね上部に支持されるばね上部側ユニットと、(b)ばね下部に支持され、ばね上部とばね下部との接近離間動作に伴って前記ばね上部側ユニットと相対動作するばね下部側ユニットと、(c)電磁モータとを有し、その電磁モータの発生させる力に依拠して、前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作に対する力であるアクチュエータ力を発生させる電磁式のアクチュエータと、
    (A)前記減衰係数変更機構の作動を制御することで、前記ショックアブソーバの減衰係数を制御する減衰係数制御部と、(B)前記電磁モータの作動を制御することで、前記アクチュエータが発生させるアクチュエータ力を制御するアクチュエータ力制御部とを有する制御装置と、
    を備えた車両用サスペンションシステムであって、
    前記減衰係数制御部が、前記ショックアブソーバの減衰係数を、前記アクチュエータが発生させるアクチュエータ力がばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力となる場合に、第1減衰係数とし、推進力となる場合に、その第1減衰係数より小さい第2減衰係数とするように、前記減衰係数変更機構を制御する車両用サスペンションシステム。
  2. 当該車両用サスペンションシステムが、さらに、
    前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの一方を、その一方が支持されるばね上部とばね下部との一方に弾性的に支持させるための支持スプリングと、
    ばね上部とばね下部との他方と、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの一方、若しくは、ばね上部とばね下部との一方とを弾性的に連結する連結スプリングと
    を備えた請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
  3. 前記アクチュエータ力制御部が、
    前記アクチュエータが発生させるアクチュエータ力の少なくとも一成分が、ばね上部の動作に対するその動作の速度に応じて発生させるべき大きさの抵抗力と前記ショックアブソーバが発生させる減衰力との差に相当する力となるようにそのアクチュエータ力を制御する請求項1または請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
  4. 前記減衰係数制御部が、前記ショックアブソーバの減衰係数を、前記第2減衰係数から前記第1減衰係数へ変更する際に、漸変させるように前記減衰係数変更機構を制御する請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  5. 前記減衰係数制御部が、前記ショックアブソーバの減衰係数の前記第2減衰係数から前記第1減衰係数へ変更する際の変化勾配を、前記第1減衰係数から前記第2減衰係数へ変更する際の変化勾配に比較して緩やかにするように前記減衰係数変更機構を制御する請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  6. 前記減衰係数変更機構が、前記ショックアブソーバの減衰係数を段階的に設定された複数の値のいずれか1つとなるように変更する構造とされた請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  7. 前記減衰係数制御部が、前記ショックアブソーバの減衰係数を前記第2減衰係数とする場合に、その減衰係数が前記複数の値のうちの最も小さい値となるように前記減衰係数変更機構を制御する請求項6に記載の車両用サスペンションシステム。
  8. 前記減衰係数制御部が、前記ショックアブソーバの減衰係数を前記第2減衰係数とする場合の前記複数の値のうちの1つと、前記第1減衰係数とする場合の前記複数の値のうちの別の1つのとの間に、さらに別の1以上の値が存在するように前記減衰係数変更機構を制御し、かつ、前記ショックアブソーバの減衰係数を前記第2減衰係数から前記第1減衰係数へ変更する際に、その減衰係数が前記別の1以上の値の各々を順次経るように前記減衰係数変更機構を制御する請求項6または請求項7に記載の車両用サスペンションシステム。
  9. 前記減衰係数制御部が、前記ショックアブソーバの減衰係数を前記第1減衰係数とする場合に、前記ショックアブソーバの減衰係数が前記複数の値のうちの前記ショックアブソーバがばね上部の動作に対するその動作の速度に応じた大きさの抵抗力に最も近い減衰力を発生させる値になるように前記減衰係数変更機構を制御する請求項6または請求項7に記載の車両用サスペンションシステム。
  10. 前記アクチュエータが、
    互いに螺合するねじロッドおよびナットを有し、それらねじロッドとナットとの一方が前記ばね上部側ユニットに設けられ他方が前記ばね下部側ユニットに設けられて、それらねじロッドとナットとが前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対動作に伴って相対回転するように構成されたねじ機構を有し、
    前記電磁モータが前記ねじロッドと前記ナットとのいずれかにそれらの相対回転に対する力を付与する構造とされた請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020139545A (ja) * 2019-02-27 2020-09-03 トヨタ自動車株式会社 車両用サスペンション装置

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