本発明は、車両に衝突が発生した際に乗員の下肢を効果的に保護することができるニープロテクタ構造に関する。
従来の自動車には、不測の事態に起因して車両に衝突が生じた際に乗員の下肢(特に膝)を保護するためにニープロテクタを設けることが考えられている(例えば、特許文献1参照)。このニープロテクタは、通常の状態ではインストルメントパネルの下部に隠れるように設けられたニープロテクタ本体が、車両全面衝突が検知されると膨張されるエアバッグの膨張力により付勢されて所定の位置まで移動されて固定される構造とされている。この所定の位置は、基準位置とされたシートに着座した乗員の膝の位置との相対的な位置が適切なものとなるように、すなわちニープロテクタ本体が乗員の膝を適切に受け止めることができるように、車両毎に設定されている。
特開2000−118438
しかしながら、上記した従来のニープロテクタ構造では、車両全面衝突時にニープロテクタ本体が固定される位置が、基準位置とされたシートに着座した乗員の膝の位置に基づいて設定されているものであるため、シートが移動可能とされている(所謂可動型シート)場合には、シートの変位位置により当該シートに着座した乗員の膝と所定の位置とされたニープロテクタ本体との位置関係が変化してしまうので、乗員の膝をより有効に保護する観点から改良の余地がある。
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたもので、可動型シートの変位位置に拘らず乗員の下肢をより有効に保護することができるニープロテクタ構造を提供することを目的としている。
上記した課題を解決するために、本発明に係るニープロテクタ構造は、車両に設けられた可動型シートに着座した乗員の下肢を保護すべく当該下肢を受け止めるニープロテクタ本体が前記可動型シートに対応されて設けられたニープロテクタ構造であって、前記車両における衝突発生時に前記ニープロテクタ本体が位置される保護設定位置が、前記可動型シートの変位位置に応じて変動されることを特徴とする。
本発明に係るニープロテクタ構造によれば、可動型シートの変位位置に応じてプロテクタ本体の保護設定位置が変動されることから、可動型シートが変位された場合であっても、当該可動型シートに着座した乗員の下肢(膝)とニープロテクタ本体との位置関係を所望のものとすることができ、当該乗員の下肢(膝)をより適切に受け止めることができるので、乗員の下肢をより有効に保護することができる。
本発明を図1ないし図14に示した各実施例に沿って詳細に説明する。
図1は、本発明に係る実施例1のニープロテクタ装置10の構成を模式的に示す説明図であり、図2は、ニープロテクタ装置10におけるニープロテクタ本体14およびその駆動機構15の構成を模式的に示す斜視図である。なお、以下では、ニープロテクタ装置10が設けられた車両11の車室内から見た前後(矢印F、B参照)、左右(幅方向)(矢印L、R参照)、上下(矢印U、D参照)方向を用いて説明している。また、図3は、ニープロテクタ装置10の構成および動作を説明するための説明図であり、図4は、図3と同様の説明図であり、可動型シート13が後方へと移動された様子を示している。
ニープロテクタ装置10は、図1に示すように、車両11のインストルメントパネル12の内方に設けられており、当該車両11に不測の事態に起因して衝突事故が生じたとき、可動型シート13に着座した乗員Cの下肢L、特に膝kを保護するものである。
このニープロテクタ装置10は、ニープロテクタ本体14が一対の駆動機構15に取り付けられて構成されている。一対の駆動機構15は、実施例1では、図2に示すように、車両11のステアリングサポートメンバ16に固定され、幅方向で間隔を置いて並列するように設けられている。
ニープロテクタ本体14は、一対の駆動機構15に保持された一対のアーム17と、この一対のアーム17に取り付けられたプロテクタ板18とを有する。プロテクタ板18は、全体に板形状を呈し、両アーム17を架け渡すように設けられている。このプロテクタ板18は、不慮の衝突事故が生じたとき乗員Cの膝kを受け止めるものであり、乗員Cの下肢L、特に膝kの適切な保護が可能とされている。
このプロテクタ板18が取り付けられた一対のアーム17は、底部17aで屈曲された全体にV字形状を呈し、一端部17bがプロテクタ板18の取り付け箇所となり、他端部17cが駆動機構15に保持されている。この他端部17cには、幅方向に突出するガイド突起19と、後述する拘束部30の嵌合突起31を支承するための軸受部分20と(図5参照)、この軸受部分20に接続された連結箱部21とが設けられている。このアーム17は、底部17aの折れ線が緩やかに屈曲されており、プロテクタ板18を介して入力を受けると先ず底部17aが屈曲し始めることで、入力された力を吸収する構成とされている。アーム17は、実施例1では、全体に逆ハット型の断面形状とされている。
このニープロテクタ本体14では、衝突事故が生じ、可動型シート13に着座した乗員Cとその前方に位置するインストルメントパネル12との間隔が小さくなるように相対的に乗員Cがインストルメントパネル12に近づくと、乗員Cの膝kをプロテクタ板18で受け止めつつ一対のアーム17が適切に変形することで、当該衝突事故によりインストルメントパネル12に対する乗員Cに作用した力を適切に吸収することができ、乗員Cの下肢L(特に膝k)を適切に保護することができる。このため、ニープロテクタ本体14は、駆動機構15に保持された姿勢、すなわちプロテクタ板18がインストルメントパネル12を介して可動型シート13(そこに着座した乗員Cの膝k)に対向された姿勢が、乗員Cの膝kを適切に受け止めることを可能とする保護姿勢P(図1等参照)となる。
ニープロテクタ本体14に対応されて設けられた可動型シート13は、実施例1では、前後方向に段階的にスライド移動可能とされている。このため、可動型シート13に着座する乗員Cは、可動型シート13を適宜変位させる。すると、前方に変位された可動型シート13に着座した乗員C1の膝kと、後方に変位された可動型シート13に着座した乗員C2の膝k(一点鎖線で示す)とでは、ニープロテクタ本体14のプロテクタ板18との間隔(相対的な位置関係)が変化してしまう。このニープロテクタ本体14のプロテクタ板18との相対的な位置関係は、乗員Cの膝kを適切に保護する観点で非常に重要である。本発明に係るニープロテクタ装置10では、可動型シート13の変位位置に拘らず乗員Cの膝kを適切に保護するために、上述したように、ニープロテクタ本体14が一対の駆動機構15を介してステアリングサポートメンバ16に固定されている。
駆動機構15は、保護姿勢Pを保ちつつニープロテクタ本体14を移動させるものであり、ガイド部22を有する。ガイド部22は、図5に示すように、前後方向に延在しつつ下端が開放された箱形状を呈し、両側壁に前後方向に延在するガイド孔23が設けられ、上壁に前後方向に延在する挿通孔24が設けられている。このガイド部22では、開放された下端側からアーム17の他端部17cを受け入れており、アーム17の他端部17cに設けられた一対のガイド突起19が両ガイド孔23に挿入されかつ軸受部分20が挿通孔24に挿入されている。このため、ガイド部22は、ガイド孔23および挿通孔24の延在方向に沿ってスライド移動自在にアーム17の他端部17cを保持している。このガイド孔23および挿通孔24は、当該ニープロテクタ装置10が対応された可動型シート13の変位可能な方向、詳細には、可動型シート13の変位に伴って当該可動型シート13に着座している乗員Cの膝kの位置が変位される方向に沿って延在されていればよく、実施例1に限定されるものではない。
また、ガイド部22には、図4に示すように、アーム17の他端部17cに設けられた連結箱部21を前方へと付勢するガイド部引張ばね25が設けられている。ガイド部引張ばね25は、一端25aが連結箱部21(アーム17の他端部17c)に取り付けられており、他端25bが車両11において固定された箇所(実施例1では、ステアリングサポートメンバ16(図2参照))に固定されている。このため、アーム17は、他の力が与えられない限り、ガイド部22の保持によるスライド移動可能な範囲の最前側に位置される。このガイド部引張ばね25は、可動型シート13が変動される力よりも小さな付勢力に設定されている。
このアーム17をスライド移動させるために、駆動機構15には、伝達部26が設けられている。伝達部26は、可動型シート13の変動に応じてアーム17をスライド移動させるものであり、実施例1では、ワイヤ27と、この延在方向を変更すべくワイヤ27がかけられる4つのプーリ28(以下では、個別に示す場合には、可動型シート13側から順に28a、28b、28c、28dとする。)とを有する。この実施例1では、ワイヤ27は車体パネル29の外側で延在され(図1参照)、図示は略すがプーリ28a、28b、28cは車体パネル29に設けられ、プーリ28dはインストルメントパネル12に設けられ、車体パネル29の外側となる箇所が、水や埃の付着を防止するためのカバー部材により覆われている。なお、ワイヤ27は車体パネル29の内側で延在する構成としてもよい。この場合であっても、ワイヤ27の保護、車室の利便性および車室の見栄えの観点からカバー部材により覆うことが望ましい。
ワイヤ27は、一端27aがアーム17の他端部17cの連結箱部21に固定されており、他端27bが可動型シート13の座部13aの後端部13bに固定されている。4つのプーリ28は、プーリ28aが可動型シート13の前方斜め下側に設けられ、プーリ28bがプーリ28aの前方に設けられ、プーリ28cがプーリ28bの上方に設けられ、プーリ28dがアーム17の他端部17cの後方に設けられている。このため、ワイヤ27は、可動型シート13の他端部13bからプーリ28aへ向けて前方斜め下側へと向かい、プーリ28aからプーリ28bへ向けて前方へと向かい、プーリ28bからプーリ28cへ向けて上方へと向かい、プーリ28cからプーリ28dへ向けて後方へと向かい、プーリ28dにより折り返されてアーム17に設けられた連結箱部21へ向けて前方へと向かう。
この伝達部26では、可動型シート13が後方へとスライド移動されることによりワイヤ27の他端27bが引っ張られる力を、アーム17(に設けられた連結箱部21)を後方へと引っ張る方向に変換する。このため、可動型シート13が後方へとスライド移動されると、ガイド部引張ばね25の付勢力に抗してアーム17が後方へとスライド移動されて、可動型シート13のスライド移動によりワイヤ27が変位した量だけアーム17が後方へと移動される。また、可動型シート13が前方へとスライド移動されると、このスライド移動された範囲内ではワイヤ27によりアーム17を後方へと引っ張る力が解除されることから、ガイド部引張ばね25の付勢力によりアーム17が前方へとスライド移動されて、可動型シート13のスライド移動によりワイヤ27が変位した量だけアーム17が前方へと移動される。ここで、実施例1のニープロテクタ装置10では、上述したように、駆動機構15が、乗員Cの膝kを適切に受け止めることを可能とする保護姿勢Pを保ちつつニープロテクタ本体14を移動させるものであることから、駆動機構15によりアーム17すなわちニープロテクタ本体14の移動される各位置が保護設定位置となる。
また、駆動機構15には、アーム17のスライド移動を拘束するための拘束部30が設けられている。拘束部30は、実施例1では、図5に示すように、連結箱部21の内方においてアーム17の他端部17cに設けられた嵌合突起31および可動モータ32と、ガイド部22に設けられた挿通孔24および複数の嵌合溝部分33とを有する。嵌合突起31は、可動モータ32の回動軸32a回りに回動可能とされた基部31aと、そこよりも両側に幅広とされた頭部31bとを有し、全体にT字形状を呈している。
可動モータ32は、図示は略すが衝突事故が生じたことを検知する車両11に設けられた衝突検知機構からの検知信号を受信可能とされており、この検知信号を受信すると、嵌合突起31を回動させるべく駆動されて回動軸32aを回動させる。この衝突検知機構は、例えば、図示は略すが車両11に搭載されたエアバッグ装置を駆動させるために衝突事故が生じたことを検知するものを利用することができる。
ガイド部22の上壁を切り欠く挿通孔24には、この延在方向(前後方向)と直行するようにガイド部22の上壁を切り欠く複数の嵌合溝部分33が連通されている。各嵌合溝部分33は、ガイド孔23の延在方向で見て間隔を置いて並列するように設けられており、実施例1では、段階的にスライド移動可能とされている可動型シート13の変位位置、すなわち駆動機構15により移動されるニープロテクタ本体14の各保護設定位置に対応するように設定されている。
この拘束部30は、図示が略す衝突検知機構からの検知信号を可動モータ32が受信すると、この可動モータ32が駆動されることにより嵌合突起31が回動軸32a回りに回動され、この嵌合突起31の頭部31bが挿通孔24の嵌合溝部分33に嵌合される(図5(b)、(c)参照)。これにより、アーム17は、ガイド部22の内方で挿通孔24に沿ってスライド移動すること、すなわちガイド孔23に沿ってスライド移動することが阻止されることとなり、ニープロテクタ本体14が、各保護設定位置のうちの可動型シート13の変位位置に対応する保護設定位置で固定されることとなる。このため、この拘束部30がニープロテクタ本体14を保護設定位置で固定する本体固定手段として機能することとなる。
このように、ニープロテクタ装置10では、段階的にスライド移動可能とされている可動型シート13の変位位置に応じて、駆動機構15によりアーム17が前後方向へスライド移動されることにより、ニープロテクタ本体14の位置すなわち保護設定位置が変化される。このため、ニープロテクタ装置10では、対応する可動型シート13が各変位位置の何れとされている場合であっても、可動型シート13に着座した乗員Cの膝kと、ニープロテクタ本体14のプロテクタ板18との間隔(相対的な位置関係)を所望のものとすることができるので、可動型シート13の変位位置に拘らず乗員Cの膝kを適切に保護することができる。このことは、例えば、可動型シート13に着座する乗員は、自らの身体が周囲の空間に調和するように自らの体格に応じて可動型シート13の位置を変位させることが考えられることから、乗員の快適性を高めつつより安全性を高める観点から特に有効である。
また、ニープロテクタ装置10では、可動型シート13に連結されたワイヤ27を介してニープロテクタ本体14がスライド移動されるものであることから、可動型シート13が前後方向にスライド移動されるとこの移動量に応じてニープロテクタ本体14の保護設定位置が変化されるので、可動型シート13の変位位置に拘らず、可動型シート13に着座した乗員Cの膝kと、ニープロテクタ本体14のプロテクタ板18との間隔(相対的な位置関係)を常に所望のものとすることができる。特に、実施例1のニープロテクタ装置10では、変化される保護設定位置が、前後方向に沿ってスライド移動可能とされている可動型シート13の移動方向に合致されていることから、この可動型シート13に着座した乗員Cの下肢L、特に膝kを適切に保護することができる。
さらに、ニープロテクタ装置10では、拘束部30(固定手段)が設けられていることから、車両11に不慮の衝突事故が生じた際、ニープロテクタ本体14を各保護設定位置のうちの可動型シート13の変位位置に対応する保護設定位置で固定することができる。このことは、当該衝突事故により可動型シート13が車両11に対して移動してしまった場合であっても、この可動型シート13の移動とともにニープロテクタ本体14が移動することを防止することができることから、可動型シート13に着座した乗員Cの膝kを適切に保護する観点で特に有効である。
したがって、本発明に係るニープロテクタ装置10では、可動型シート13の変位位置に拘らず乗員Cの膝kをより有効に保護することができる。
このように、実施例1のニープロテクタ装置10は、乗員Cが着座する可動型シート13の変位位置から当該乗員Cの膝kの位置(膝kが存在し得る領域)を予測し、この予測された膝kの位置に適合するようにニープロテクタ本体14を位置させる(保護設定位置を変位させる)ものである。
<変形例>
次に、実施例1のニープロテクタ装置10の変形例(ニープロテクタ装置10´)について説明する。ニープロテクタ装置10´の特徴部分は、図6に示すように、駆動機構15´がアーム17´(ニープロテクタ本体14´)を揺動軸34回りに揺動させることである。なお、ニープロテクタ装置10´では、駆動機構15´の構成が変わったこと以外は、実施例1のニープロテクタ装置10と同様の構成であるので、その他の構成の説明は省略する。
駆動機構15´では、アーム17´の他端部17c´が、揺動軸34により揺動自在に支承されている。この揺動軸34は、幅方向に延在され、図示は略すが、車両11における固定された箇所(例えば、ステアリングサポートメンバ16)に設けられている。また、駆動機構15´では、ワイヤ27が、プーリ28cにかけられた後にアーム17´の他端部17c´´に固定されている。さらに、駆動機構15´では、ガイド部引張ばね25´の一端25a´がアーム17´の他端部17c´´に固定されている。
この駆動機構15´では、可動型シート13の変位位置に応じて、アーム17´(ニープロテクタ本体14´)を揺動軸34回りに揺動させることとなるので、可動型シート13(図1等参照)が後方へと移動されると、図6(b)に示すように、ガイド部引張ばね25´の付勢力に抗してアーム17´の他端部17c´がプーリ28c側へと引っ張られて、可動型シート13の移動によりワイヤ27が変位した量だけアーム17´が揺動軸34回りに後方側(図6を正面視して右側)へと移動される。また、可動型シート13が前方へと移動されると、この移動された範囲内ではワイヤ27によりアーム17´を後方へと引っ張る力が解除されることから、ガイド部引張ばね25の付勢力によりアーム17´の他端部17c´がプーリ28cから離間する方向へと引っ張られて、可動型シート13の移動によりワイヤ27が変位した量だけアーム17´が揺動軸34回りに前方側(図6を正面視して右側)へと移動される。
この変形例のニープロテクタ装置10´では、ニープロテクタ本体14´の位置すなわち保護設定位置を、揺動軸34の下方と当該揺動軸34回りに上側斜め後方との間で変位させることができる。このため、可動型シートが、前方に向かうほど低くなりかつ後方に向かうほど高くなるように、移動可能とされているものである場合に特に有効である。
なお、実施例1では、対応する可動型シート13が前後方向にスライド移動可能とされていることから、駆動機構15が可動型シート13のスライド移動方向である前後方向にニープロテクタ本体14を動かすことにより、当該ニープロテクタ本体14を各保護設定位置のうちの可動型シート13の変位位置に対応する保護設定位置へと移動させる構成とされていたが、可動型シート13の変位位置に応じてニープロテクタ本体14を移動させる(保護設定位置を変動させる)ものであればよく、実施例1に限定されるものではない。例えば、各保護設定位置のうちの可動型シートの変位位置に対応する保護設定位置へと移動させるために、可動型シートの移動方向とニープロテクタ本体(保護設定位置)の移動方向とを一致させる、具体的には、可動型シートが上下方向に移動可能とされている場合には、ニープロテクタ本体(保護設定位置)を当該可動型シートに合わせて上下方向に移動させることで、可動型シートの変位位置に拘らず当該可動型シートの各変位位置に着座した乗員の膝とニープロテクタ本体のプロテクタ板との位置関係を所定のものとすることができ、可動型シートの変位位置に拘らず乗員Cの膝kをより有効に保護することができる。
また、実施例1では、伝達部26にワイヤ27が用いられていたが、可動型シート13が移動された力を利用して、ニープロテクタ本体14(アーム17)を移動させることができるものであれば、例えば、ベルトやチェーンであってもよく、上記した実施例1に限定されるものではない。なお、ワイヤ27に代えてチェーンを用いる場合、各プーリ28に代えてスプロケットを用いればよい。
さらに、実施例1では、駆動機構15が、可動型シート13の移動によりワイヤ27が変位した量だけアーム17の他端部17cを移動させる構成とされていたが、可動型シート13の移動によりワイヤ27が変位した量に対するアーム17の他端部17cの移動量は適宜設定すればよく、上記した実施例1に限定されるものではない。なお、可動型シート13の移動によりワイヤ27が変位した量に対するアーム17の他端部17cの移動量の比は、例えば、ギアを介在させることにより簡易な構成で実現することができる。
次に、実施例2のニープロテクタ装置10Aについて説明する。ニープロテクタ装置10Aは、図7および図8に示すように、駆動機構15Aの伝達部26Aが、実施例1のニープロテクタ装置10とは異なる構成とされている。なお、ニープロテクタ装置10Aでは、駆動機構15Aの構成が変わったこと以外は、実施例1のニープロテクタ装置10と同様の構成であるので、等しい箇所には同じ符号を付してその構成の説明は省略する。
駆動機構15Aの伝達部26Aは、リンク機構として構成されている。詳細には、伝達部26Aは、シート側揺動棒40と、プロテクタ側揺動棒41と、両揺動棒40、41を架け渡す伝動棒42と、アーム17を動かすための駆動棒43とを有する。
シート側揺動棒40は、中間位置においてシート側揺動軸44により揺動自在に軸支され、一端40aが可動型シート13の座部13aの後端部13bに揺動自在に接続され、他端40bが伝動棒42の一端42aに揺動自在に接続されている。シート側揺動軸44は、車両11において固定された箇所(例えば、車体パネル29)に設けられている。
この他端40bに一端42aが接続された伝動棒42は、他端42bがプロテクタ側揺動棒41の一端41aに揺動自在に接続されている。
この他端42bに一端41aが接続されたプロテクタ側揺動棒41は、中間位置においてプロテクタ側揺動軸45により揺動自在に軸支され、他端41bが駆動棒43の一端43aに揺動自在に接続されている。プロテクタ側揺動軸45は、車両11において固定された箇所(例えば、車体パネル29)に設けられている。
この他端41bに一端43aが接続された駆動棒43は、アーム17の他端部17cの連結箱部21に揺動自在に接続されている。ここで、各棒40、41、42、43の両端部は、幅方向に沿う軸回りに揺動自在に接続されている。
この伝達部26Aでは、可動型シート13が前後方向に移動されることにより、シート側揺動棒40がシート側揺動軸44回りに揺動される力を、伝動棒42、プロテクタ側揺動棒41および駆動棒43を介してアーム17(に設けられた連結箱部21)を前後方向に引っ張る力に変換する。このため、可動型シート13が後方へと移動されると、アーム17が後方へと移動されて、可動型シート13のスライド移動により変位した量だけシート側揺動棒40の一端40aが変位し、伝動棒42を介してこの変位したプロテクタ側揺動棒41の一端41aが変位し、このプロテクタ側揺動棒41の一端41a(他端41bの変位量に等しい)の変位量だけアーム17が後方へと移動される。可動型シート13が前方へとスライド移動される場合も同様である。
このニープロテクタ装置10Aでは、実施例1のニープロテクタ装置10と同様に、可動型シート13の変位位置に拘らず乗員Cの膝kをより有効に保護することができる。
特に、ニープロテクタ装置10Aでは、シート側揺動棒40におけるシート側揺動軸44の位置、プロテクタ側揺動棒41におけるプロテクタ側揺動軸45の位置、およびシート側揺動棒40とプロテクタ側揺動棒41との長さ寸法を適宜調節することにより、可動型シート13の移動量に対するアーム17の他端部17c(ニープロテクタ本体14の位置であり保護設定位置となる。)の移動量を適宜調整することができる。
このように、実施例2のニープロテクタ装置10Aは、乗員Cが着座する可動型シート13の変位位置から当該乗員Cの膝kの位置(膝kが存在し得る領域)を予測し、この予測された膝kの位置に適合するようにニープロテクタ本体14を位置させる(保護設定位置を変位させる)ものである。
次に、実施例3のニープロテクタ装置10Bについて説明する。ニープロテクタ装置10Bは、図9および図10に示すように、駆動機構15Bの伝達部26Bが、実施例1のニープロテクタ装置10とは異なる構成とされている。なお、ニープロテクタ装置10Bでは、搭載される車両11Bにフットレスト50が設けられかつ駆動機構15Bの構成が変わったこと以外は、実施例1のニープロテクタ装置10と同様の構成であるので、等しい箇所には同じ符号を付してその構成の説明は省略する。
ニープロテクタ装置10Bでは、伝達部26Bにおいてワイヤ27の代わりにベルト(以下、位置設定ベルト51という)が用いられている。
ニープロテクタ装置10Bが搭載された車両11Bには、位置設定ベルト51がかけられるプーリ28aとプーリ28bの間にフットレスト50が設けられている。フットレスト50は、脚載置部50aと、この脚載置部50aを支持する支持部50bとを有する。フットレスト50では、支持部50bが上下方向に移動可能とされており、その移動範囲での上端位置(使用時(図10参照))と下端位置(未使用時(図9参照))とのそれぞれで固定可能とされている。この支持部50bは、図示を略す駆動部により上端位置(使用時)と下端位置(未使用時)との間を移動される構成とされている。なお、この上端位置(使用時)での固定は、図示を略す駆動部が、衝突事故が生じたことを検知すべく車両11Bに設けられた衝突検知機構(図示せず)からの検知信号を受信すると、解除する構成とされている。フットレスト50は、支持部50bが移動されることにより、未使用時には、脚載置部50aが車体パネル29のフロア面29aと面一もしくは当該フロア面29aよりも下方に収容され(図9参照)、使用時には、脚載置部50aが車体パネル29のフロア面29aから上方に突出される(図10参照)ように構成されている。この支持部50bには、プーリ28eが設けられている。このため、プーリ28eは、他のプーリ28と異なり、支持部50b(フットレスト50)の移動に合わせて移動されることとなる。
駆動機構15Bの伝達部26Bでは、位置設定ベルト51がプーリ28aとプーリ28bの間でフットレスト50の支持部50bに設けられたプーリ28eにかけられている。位置設定ベルト51は、プーリ28aおよびプーリ28bには下方からかけられているのに対し、プーリ28eには上方からかけられている。このため、駆動機構15Bの伝達部26Bでは、フットレスト50が使用状態とされると、図10に示すように、上方へと移動されるプーリ28eにより位置設定ベルト51が引っ張られ、その変位量に応じてアーム17が後方へと移動される。すなわち、実施例3のニープロテクタ装置10Bでは、フットレスト50が使用状態とされると、その未使用時(図9参照)と比較して、ニープロテクタ本体14(プロテクタ板18)が可動型シート13に着座した乗員Cの膝kに近接されることとなる。このように、フットレスト50が使用状態であるときと未使用状態であるときとでニープロテクタ本体14(プロテクタ板18)の位置すなわち保護設定位置を変位させるのは、フットレスト50が使用されている場合、この脚載置部50aに可動型シート13に着座した乗員Cの足f(足首から先の箇所をいう)が載置されていることから、フットレスト50が未使用状態であるときに比較して、フットレスト50と可動型シート13との位置から当該乗員Cの膝kの位置をより高い精度で判断することができる(より狭い領域に絞り込むことができる)ので、この判断された膝kの位置に適切に対応させるためである。
このフットレスト50は、使用状態であるときに衝突事故が生じた場合、上述したように使用位置での固定が解除されるので、自重とプーリ28eにかけられた位置設定ベルト51の張力とにより下方へと移動されて未使用位置に至る。この場合であっても、ニープロテクタ本体14(プロテクタ板18)は、拘束部30(本体固定手段)により、各保護設定位置のうちのフットレスト50の使用状態における可動型シート13の変位位置に対応する保護設定位置で固定されているので、当該可動型シート13に着座している乗員Cの膝kをより有効に保護することができる。
このように、実施例3のニープロテクタ装置10Bでは、フットレスト50が使用状態とされた場合と未使用状態とされた場合とでは、可動型シート13が固定されていても駆動機構15Bにおけるニープロテクタ本体14の位置が変化することから、フットレスト50が使用状態とされた場合と未使用状態とされた場合とでは、ニープロテクタ本体14の変動領域を変化させることができる。
実施例3のニープロテクタ装置10Bでは、実施例1のニープロテクタ装置10と同様に、可動型シート13の変位位置に拘らず乗員Cの膝kをより有効に保護することができる。
特に、ニープロテクタ装置10Bでは、フットレスト50を使用している場合、可動型シート13に着座している乗員Cの膝kに対してより適切な位置関係となるようニープロテクタ本体14(プロテクタ板18)を位置させることができるので、当該乗員Cの膝kをより有効に保護することができる。
また、ニープロテクタ装置10Bでは、フットレスト50が使用状態であるときに衝突事故が生じると、フットレスト50が未使用位置に移動されるので、当該フットレスト50が設けられていない場合と同様に、乗員Cの膝kをより有効に保護することができる。
このように、実施例3のニープロテクタ装置10Bは、フットレスト50が使用状態の場合、乗員Cが着座する可動型シート13の変位位置とフットレスト50の設定位置とから当該乗員Cの膝kの位置(膝kが存在し得る領域)を予測し、かつフットレスト50が未使用状態の場合、乗員Cが着座する可動型シート13の変位位置から当該乗員Cの膝kの位置(膝kが存在し得る領域)を予測し、この予測された膝kの位置に適合するようにニープロテクタ本体14を位置させる(保護設定位置を変位させる)ものである。
次に、実施例4のニープロテクタ装置10Cについて説明する。ニープロテクタ装置10Cは、図11および図12に示すように、駆動機構15Cの伝達部26Cが、実施例3のニープロテクタ装置10Bとは異なる構成とされている。なお、ニープロテクタ装置10Cでは、駆動機構15Cの構成が変わったこと以外は、実施例3のニープロテクタ装置10Bと同様の構成であるので、等しい箇所には同じ符号を付してその構成の説明は省略する。
駆動機構15Cでは、ガイド部22Cおよびプーリ28dが駆動筐体60内に収容されて固定されている。駆動筐体60は、ガイドレール61に前後方向に移動可能に保持されており、このガイドレール61は、図示は略すが車両11において固定された箇所(実施例4では、ステアリングサポートメンバ16(図2参照))に固定されている。このため、ガイド部22Cおよびプーリ28dは、駆動筐体60の前後方向の移動とともに、車体11内ですなわち可動型シート13に対して前後方向の移動することとなる。
また、駆動筐体60は、その後端60aに後方へと付勢する筐体引張ばね62の一端62aが固定されている。この筐体引張ばね62の他端62bは、ガイドレール61の後端部61aに固定されている。このため、駆動筐体60は、他の力が与えられない限り、ガイドレール61上のスライド移動可能な範囲の最後側に位置される。この筐体引張ばね62は、フットレスト50が変動される力よりも小さな付勢力に設定されている。
さらに、駆動筐体60には、その前端60bに筐体用ベルト63の一端63aが固定されている。この筐体用ベルト63は、他端63bがフットレスト50の脚載置部50aに固定されており、未使用状態のフットレスト50の前方に位置するプーリ28fと、その上方でかつ駆動筐体60の前方に位置するプーリ28gとにかけられている。このプーリ28f、28gは、図示は略すが、車両11の固定された箇所に取り付けられており、実施例4では、車体パネル29に設けられている。このため、筐体用ベルト63は、フットレスト50が未使用状態の場合、フットレスト50の脚載置部50aからプーリ28fへ向けて前方へと向かい、プーリ28fからプーリ28gへ向けて上方へと向かい、プーリ28fから駆動筐体60へ向けて後方へと向かう。
この伝達部26Cでは、フットレスト50が使用状態へと上方に移動されることにより筐体用ベルト63の他端63bが引っ張られる力を、駆動筐体60を前方へと引っ張る方向に変換する。このため、フットレスト50が使用状態へと上方に移動されると、筐体引張ばね62の付勢力に抗して駆動筐体60が前方へとスライド移動される。また、フットレスト50が未使用状態へと下方に移動されると、筐体用ベルト63により駆動筐体60を前方へと引っ張る力が解除されることから、筐体引張ばね62の付勢力により駆動筐体60が後方へと移動される。
このように、実施例4のニープロテクタ装置10Cでは、フットレスト50が使用状態とされた場合と未使用状態とされた場合とでは、車両11における駆動筐体60の位置、すなわち可動型シート13に対する駆動筐体60の位置が変化され、かつニープロテクタ本体14を移動可能に保持する駆動機構15Cが駆動筐体60の内方に固定されていることから、フットレスト50が使用状態とされた場合と未使用状態とされた場合とでは、ニープロテクタ本体14の変動領域が変化することとなる。
実施例4のニープロテクタ装置10Cでは、実施例3のニープロテクタ装置10Bと同様に、可動型シート13の変位位置に拘らず乗員Cの膝kをより有効に保護することができる。
特に、ニープロテクタ装置10Cでは、フットレスト50の変位に伴うプーリ28eに変位による位置設定ベルト51の変位量と、フットレスト50の変位に伴うプーリ28fの変位による筐体用ベルト63の変位量とを調整することで、フットレスト50が使用状態とされた場合と未使用状態とされた場合とで、一定位置の可動型シート13に対するニープロテクタ本体14の位置が変化することを防止しつつニープロテクタ本体14の変動領域を変更することができる。また、フットレスト50が使用状態とされた場合と未使用状態とされた場合とで、一定位置の可動型シート13に対するニープロテクタ本体14の位置が変化する方向と、ニープロテクタ本体14の変動領域が変更される方向とを相反するものとすることもできる。
このように、実施例4のニープロテクタ装置10Cは、フットレスト50が使用状態の場合、乗員Cが着座する可動型シート13の変位位置とフットレスト50の設定位置とから当該乗員Cの膝kの位置(膝kが存在し得る領域)を予測し、かつフットレスト50が未使用状態の場合、乗員Cが着座する可動型シート13の変位位置から当該乗員Cの膝kの位置(膝kが存在し得る領域)を予測し、この予測された膝kの位置に適合するようにニープロテクタ本体14を位置させる(保護設定位置を変位させる)ものである。
次に、実施例5のニープロテクタ装置10Dについて説明する。ニープロテクタ装置10Dは、図13および図14に示すように、駆動機構15Dの伝達部26Dが、実施例3のニープロテクタ装置10Bとは異なる構成とされている。なお、ニープロテクタ装置10Dでは、駆動機構15Dの構成が変わったこと以外は、実施例3のニープロテクタ装置10Bと同様の構成であるので、等しい箇所には同じ符号を付してその構成の説明は省略する。
駆動機構15Dの伝達部26Dでは、位置設定ベルト51の他端51bが、可動型シート13(その座部13aの後端部13b)に固定されることに変えて、固定部64に固定されている。この固定部64は、実施例5では、実施例3のニープロテクタ装置10Bにおいてプーリ28aが設けられていた箇所とされている。
ニープロテクタ装置10Dでは、可動型シート13が変位されてもニープロテクタ本体14の位置(保護設定位置)が変位することはないが、フットレスト50が使用状態である場合と未使用状態である場合とで、ニープロテクタ本体14の位置(保護設定位置)を変位させることができる。
実施例5のニープロテクタ装置10Dでは、フットレスト50が未使用状態である場合には、従来のニープロテクタ装置と同様に乗員Cの膝kを保護することができ、フットレスト50が使用状態である場合には、当該フットレスト50(脚載置部50a)の設定位置に適合するようにニープロテクタ本体14の位置(保護設定位置)が変位されることから、乗員Cの膝kをより有効に保護することができる。
また、ニープロテクタ装置10Dでは、拘束部30(固定手段)が設けられていることから、車両11に不慮の衝突事故が生じた際、ニープロテクタ本体14を各保護設定位置のうちの可動型シート13の変位位置に対応する保護設定位置で固定することができる。
さらに、ニープロテクタ装置10Dでは、フットレスト50が使用状態であるときに衝突事故が生じると、フットレスト50が未使用位置に移動されるので、当該フットレスト50が設けられていない場合と同様に、乗員Cの膝kをより有効に保護することができる。
したがって、本発明に係るニープロテクタ装置10Dでは、フットレスト50を利用して乗員Cの膝kをより有効に保護することができる。
このように、実施例5のニープロテクタ装置10Dは、フットレスト50が使用状態の場合、フットレスト50の設定位置から当該乗員Cの膝kの位置(膝kが存在し得る領域)を予測し、この予測された膝kの位置に適合するようにニープロテクタ本体14を位置させる(保護設定位置を変位させる)ものである。
なお、上記した実施例1ないし実施例4では、駆動機構15が、可動型シート13のスライド移動方向である前後方向にニープロテクタ本体14を動かすことで、当該ニープロテクタ本体14を、各保護設定位置のうちの可動型シート13の変位位置に対応する保護設定位置へと移動させる構成とされていたが、可動型シート13の変位位置に応じてニープロテクタ本体14を移動させる(保護設定位置を変動させる)ものであればよく、実施例1ないし実施例4に限定されるものではない。ここで、可動型シート13の変位位置に応じてニープロテクタ本体14を移動させる(保護設定位置を変動させる)とは、可動型シート13に着座した乗員Cの下肢L(特に膝k)を効果的に保護するために、各変位位置とされた可動型シート13乗員Cの膝kに対して、ニープロテクタ本体14のプロテクタ板18が所望の位置関係となるように、ニープロテクタ本体を移動させることをいう。このことから、可動型シート13の移動方向とニープロテクタ本体14の移動方向(保護設定位置の変動方向)とは一致していなくてもよく、上記した実施例1ないし実施例4に限定されるものではない。
また、上記した実施例1ないし実施例4では、可動型シート13の変位位置に拘らず、変位された可動型シート13とニープロテクタ本体14(プロテクタ板18)とが所望の位置関係を保つように、可動型シート13の変位位置に適合するようにニープロテクタ本体14(プロテクタ板18)を変位させていたが、上述したように、可動型シート13の変位位置に応じてニープロテクタ本体14を移動させる(保護設定位置を変動させる)ものであればよく、実施例1ないし実施例4に限定されるものではない。例えば、乗員は、自らの身体が周囲の空間に調和するように自らの体格に応じて可動型シート13の位置を変位させることが考えられることから、可動型シート13の変位位置から可動型シート13に着座した乗員Cの体格を判断することができるので、乗員Cの体格に応じて当該乗員Cの膝kを適切に保護することができるようにニープロテクタ本体14(プロテクタ板18)を移動させる(保護設定位置を変動させる)構成であってもよい。これは、例えば、図1に示すように、小さな体格の乗員C1が可動型シート13に着座する場合、乗員C1は、可動型シート13を前方側(インストルメントパネル12に近づく方向)に変位する傾向があり、大きな体格の乗員C2が可動型シート13に着座する場合、乗員C2は、可動型シート13を後方側(インストルメントパネル12から離間する方向)に変位する傾向があることによる。特に、実施例3および実施例4のように、フットレスト50の設定位置と可動型シート13の変位位置とに基づいて、ニープロテクタ本体14(プロテクタ板18)を移動させる(保護設定位置を変動させる)構成の場合、フットレスト50を利用しつつ可動型シート13に着座した乗員Cの体格(この場合は特に身長)を極めて高い精度で予測することができるので、乗員Cの体格に応じてニープロテクタ本体14(プロテクタ板18)を移動させる(保護設定位置を変動させる)と、当該乗員Cの膝kをより適切に保護することができる。このように、乗員Cの体格に応じて当該乗員Cの膝kを適切に保護することができるようにニープロテクタ本体14(プロテクタ板18)を移動させる(保護設定位置を変動させる)場合、可動型シート13が変位位置に拘らず等しい座面高さとされている(前後方向に移動可能とされている)場合であっても、乗員Cの体格に応じてその膝kの高さ位置が変わることが考えられることから、ニープロテクタ本体14(プロテクタ板18)の移動方向(保護設定位置の変動方向)を上下成分を含むものとすると、より適切に乗員Cの膝kを保護することができる。
さらに、上記した各実施例では、駆動機構15が保護姿勢Pを保ちつつニープロテクタ本体14を移動させる構成とされていることから、ニープロテクタ本体14が移動された位置がそのまま保護設定位置とされていたが、この保護設定位置は、車両11に衝突事故が生じた際に乗員Cの膝kを保護すべく適切に受け止めることができるようにニープロテクタ本体14が配置される位置であればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。例えば、ニープロテクタ本体を、通常の状態ではプロテクタ板が収納された収納姿勢であり、かつ衝突事故が生じたことが検知されるとプロテクタ板が突出されることにより収納姿勢から保護姿勢へと変更される構成とし、駆動手段は、可動型シートの変位位置に応じて保護姿勢とされた際のニープロテクタ本体の位置である保護設定位置を変動すべく収納姿勢のニープロテクタ本体を変位させる構成とすることができる。
上記した実施例3ないし実施例5では、フットレスト50の使用状態と未使用状態とで、ニープロテクタ本体14の位置を移動させる(保護設定位置を変動させる)構成とされていたが、当該ニープロテクタ装置が対応された可動型シートに着座した乗員が足fを載置するものであって当該可動型シートとの間隔が調整可能なものであれば、例えば、運転操作のための各種ペダルであってもよく、上記した実施例3ないし実施例5(フットレスト50)に限定されるものではない。
上記した実施例1ないし実施例4では、ニープロテクタ本体14の位置の変位(保護設定位置の変動)が、段階的なスライド移動が可能とされた可動型シート13に合致された段階的なものとされていたが、可動型シート13の変位位置に応じてニープロテクタ本体14の位置が変位される(保護設定位置が変動される)ものであれば、例えば、2段階や3段階といった少ない段数であってもよく無段階的なものであってもよく、上記した実施例1ないし実施例4に限定されるものではない。
上記した各実施例では、可動型シート13(フットレスト50)の変位位置に応じてニープロテクタ本体14を移動させる(保護設定位置を変動させる)ために、可動型シート13(フットレスト50)とニープロテクタ本体14とを伝達部材(ワイヤ27、位置設定ベルト51等)で連結させていたが、可動型シート13の変位位置に応じてニープロテクタ本体14の位置が変位される(保護設定位置が変動される)ものであればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。例えば、可動型シート13(フットレスト50)とは直接関連しないニープロテクタ本体14のための駆動手段(例えば、モータ等)を設けるとともに、可動型シート13(フットレスト50)の位置を検知する検知手段を設け、当該検知手段からの検知信号に応じて駆動手段を駆動することにより、ニープロテクタ本体14を移動させるものとすることができる。しかしながら、上記した各実施例のような構成とすると、簡易な構成でありながら確実にニープロテクタ本体14を移動させることができる。
本発明に係る実施例1のニープロテクタ装置の構成を模式的に示す説明図である。
実施例1のニープロテクタ装置におけるニープロテクタ本体およびその駆動機構の構成を模式的に示す斜視図である。
実施例1のニープロテクタ装置の構成および動作を説明するための説明図である。
図3と同様の説明図であり、可動型シートが後方へと移動された様子を示している。
実施例1のニープロテクタ装置の拘束部の構成および動作を説明するための説明図であり、(a)はニープロテクタ本体を移動可能とする状態を示し、(b)はニープロテクタ本体を保護設定位置で固定した状態を示し、(c)は(b)とは異なる保護設定位置でニープロテクタ本体を固定した状態を示している。
実施例1のニープロテクタ装置の変形例の駆動機構の構成および動作を説明するための説明図であり、(a)は可動型シートが前方側にある状態を示し、(b)は可動型シートが後方側にある状態を示している。
実施例2のニープロテクタ装置の構成および動作を説明するための説明図である。
図7と同様の説明図であり、可動型シートが後方へと移動された様子を示している。
実施例3のニープロテクタ装置の構成および動作を説明するための説明図である。
図9と同様の説明図であり、可動型シートが後方へと移動された様子を示している。
実施例4のニープロテクタ装置の構成および動作を説明するための説明図である。
図11と同様の説明図であり、可動型シートが後方へと移動された様子を示している。
実施例5のニープロテクタ装置の構成および動作を説明するための説明図である。
図13と同様の説明図であり、可動型シートが後方へと移動された様子を示している。
符号の説明
10 ニープロテクタ構造
13 可動型シート
14 ニープロテクタ本体
30 (本体固定手段としての)拘束部
50 フットレスト
C(C1、C2) 乗員
L 下肢