JP2004352037A - 後席用エアバッグ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車両に前方から所定の大きさ以上の衝撃が加わる可能性があると判断すると、コントローラはモジュール移動用アクチュエータ17を制御し、前席10に設けられたエアバッグモジュール12と後席乗員Pの膝Pkとの間隔が予め設定されている所定の大きさとなるようにエアバッグモジュール12の前席10に対する位置を調節する。また、反力板作動用アクチュエータ24を制御して、背もたれ部13の背面に設けられた反力板14を後方に傾動させ、反力板14と膝Pkとの間隔を所定の大きさに調節する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝突等による衝撃が車両に加わったときに、前席と後席乗員との間において展開膨張するエアバッグを備えた後席用エアバッグ装置に関するものである。なお、本明細書において、「前席」とは、後方に他の座席がある座席を意味し、運転席及び助手席に限らない。また、「後席」とは、「前席」の後方にある座席を意味する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の後席用エアバッグ装置には、前席のシートベースフレームに設けられたエアバッグモジュールから後席乗員に向かってエアバッグを展開させるものがある。このエアバッグは、前席背もたれ部の背面に沿って上方に展開した後、後席乗員の胸部あるいは頭部の前方で展開する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特表2002−542100号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載のエアバッグ装置では、前席と後席乗員との間隔に関係なく、前席のシートベースフレームに設けられたエアバッグモジュールからエアバッグを一定の大きさまで展開膨張させる。このため、前席の調節位置や、後席乗員の着座状態等の要因によって前席と後席乗員との間隔が変化すると、展開膨張するエアバッグと後席乗員との間隔が変化することになり、後席乗員に対する保護機能が低下する可能性がある。特に、後席乗員の膝や膝下と前席の背もたれ部の背面との間隔は、前記要因によって大きな割合で変化するため、これらの要因に関係なく後席乗員の膝及び膝下を効果的に保護することは容易でない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、後席の前方に設けられたエアバッグモジュールと後席乗員との相対位置に関係なく、後席乗員の膝部をより効果的に保護することができる後席用エアバッグ装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記目的を達成するための手段及びその作用・効果を記載する。
請求項1に記載の発明は、後席の前方に設けられたエアバッグモジュールから展開膨張するエアバッグが、前席の背もたれ部と後席乗員の膝部との間に配置される後席用エアバッグ装置であって、車両に対して前方から後方に向かって所定の大きさ以上の衝撃が加わる可能性を検出する衝撃予測手段と、前記エアバッグモジュールの前記後席に対する相対位置を変更可能な位置変更手段と、車両に衝撃が加わる可能性が検出されたときに、前記後席乗員の膝部と前記エアバッグモジュールとの車両前後方向における相対位置が予め設定されている状態となるように、前記位置変更手段を作動させてエアバッグモジュールと後席との相対位置を調節する調節手段とを備えたことを特徴とする。なお、車両に対して前方から加わる衝撃は、他車両への衝突、固定物への衝突等によって生成されるものを含む。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、車両衝突時におけるエアバッグモジュールと後席乗員の膝部との相対位置に関係なく、後席乗員の膝部から所定間隔だけ前方に離れた位置でエアバッグを展開膨張させることができる。従って、後席の前方に設けられたエアバッグモジュールと後席乗員との相対位置に関係なく、後席乗員の膝部をより効果的に保護することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記位置変更手段は、前記前席に対し車両前後方向に相対移動可能に支持されたエアバッグモジュールの同方向における相対位置を変更するものであって、前記前席に対しその背もたれ部から後方に変位可能に支持され、展開膨張した前記エアバッグの前面を支持する反力板と、前記背もたれ部に対する車両前後方向での前記反力板の相対位置を変更可能な反力板操作手段と、車両に衝撃が加わる可能性が検出されたときに、前記反力板と後席乗員の膝部との間隔が予め設定されている大きさとなるように、前記反力板操作手段を作動させて、背もたれ部に対する反力板の相対位置を調節する反力板調節手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、エアバッグモジュールの前席に対する相対位置の調節によって後席乗員の膝部から前方に所定間隔だけ離れた位置で展開膨張したエアバッグがその位置で反力板によって前方から支持される。従って、車両に衝撃が加わって展開膨張したエアバッグが、後席乗員の膝部に対する十分な反力を発生して拘束する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記位置変更手段は、前記エアバッグモジュールが固定された前記前席の車体に対する車両前後方向での相対位置を変更することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、エアバッグモジュールの車体に対する相対位置が前席と共に調節され、後席乗員の膝部から前方に所定間隔だけ離れた位置で展開膨張したエアバッグがその位置で前席の背もたれ部によって前方から支持される。従って、車両に前方から衝撃が加わったときに展開膨張したエアバッグが、後席乗員の膝部に対する十分な反力を発生して拘束する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記調節手段は、車両に衝撃が加わる可能性が消失したときに、前記位置変更手段を制御して、前記エアバッグモジュールと前記後席との車両前後方向における相対位置を調節前の状態に戻すことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、車両に衝撃が加わる可能性が消失したときに、エアバッグモジュールが後席側に配置されたままの状態とならないようにすることができるので、後席乗員の邪魔にならないようにすることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記エアバッグモジュールのケースからエアバッグを飛び出させる開口部を塞ぐ扉を開閉する扉開閉手段と、車両に衝撃が加わる可能性が検出されたときに、前記扉開閉手段を制御して前記扉を閉状態から開状態に切り換える扉制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、車両に衝撃が加わったときに、より低いガス圧でエアバッグを迅速に展開膨張させることができるので、後席乗員をエアバッグでより柔らかく受け止めることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記扉制御手段は、車両に衝撃が加わる可能性が消失したときに、前記扉を閉位置まで戻すことを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明の作用に加えて、車両に衝撃が加わる可能性が消失したときに、人間が自分で扉を閉じる必要がない。
【0018】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図6に従って説明する。
【0019】
図2に示すように、本実施形態の後席用エアバッグ装置は、前席10の座部11の下面に設けられたエアバッグモジュール12と、前席10の背もたれ部13の背面に設けられた反力板14とを備えている。
【0020】
エアバッグモジュール12は、後席15に着座した後席乗員Pの膝部である膝Pkや膝下を保護するためのものである。エアバッグモジュール12は、座部11に内蔵されたレール16によって座部11に対し車両前後方向に相対移動可能に支持され、座部11の下面に設けられた電動リニア式のモジュール移動用アクチュエータ17が作動制御されることによってその位置が変更される。エアバッグモジュール12は、図2に実線で示すように、座部11に対し最も前寄りに配置された状態では座部11の下方に配置される。また、図2に2点鎖線で示すように、座部11に対し最も後寄りに配置された状態では座部11の下方から後側に飛び出した位置に配置される。エアバッグモジュール12は、この移動範囲内のどの位置においても作動するようになっている。
【0021】
図3に示すように、エアバッグモジュール12のケース18には、インフレータ19及びエアバッグ20が収容され、エアバッグ20が飛び出す開口部18aは、開閉可能な扉21で覆われている。扉21は、ケース18の左右両側面に対して回動可能に支持され、図2に示すように、ケース18の側面に設けられた電動ロータリ式の扉開閉用アクチュエータ22が作動制御されることによって開口部18aを開閉する。なお、エアバッグ20は、インフレータ19からエアバッグ20に供給されるガス圧によって容易に破断する紐あるいはシートによって折り畳まれた状態で保持されており、扉21が開いてもインフレータ19からガスが供給されない限りはケース18から飛び出さない。
【0022】
反力板14は、図1に示すように、エアバッグモジュール12から展開膨張したエアバッグ20の前面を支持するために設けられている。反力板14は、前席10のフレーム23に支持された下部を回動中心としてほぼ車両前後方向に傾動可能に設けられ、背もたれ部13に内蔵された電動リニア式の反力板作動用アクチュエータ24が作動制御されることによって傾動する。反力板作動用アクチュエータ24は、リニア動作する出力軸25の先端に連結されたレバー26を介して反力板14を傾動させる。
【0023】
次に、後席用エアバッグ装置の電気的な構成について説明する。
後席用エアバッグ装置は、図4に示すように、前席位置センサ30、前席倒れ角センサ31、後席位置センサ32、後席倒れ角センサ33、後席着座センサ34、後席シートベルトセンサ35、プリクラッシュセンサ36、クラッシュセンサ37及びコントローラ38を備えている。
【0024】
コントローラ38は、各センサ30〜37から入力する検出信号に基づき、モジュール移動用アクチュエータ17、インフレータ19、扉開閉用アクチュエータ22及び反力板作動用アクチュエータ24を作動制御する。また、コントローラ38は、モジュール移動用アクチュエータ17に内蔵された図示しないポジションセンサから入力する検出信号に基づき、エアバッグモジュール12が最も前方寄りに配置された原点位置と、この原点位置から後方への移動位置を検出する。同様に、扉開閉用アクチュエータ22に内蔵されたポジションセンサから入力する検出信号に基づき、扉21の閉位置、及び、開位置を検出する。また、反力板作動用アクチュエータ24に内蔵された図示しないポジションセンサから入力する検出信号に基づき、反力板14が最も背もたれ部13側に配置された原点位置と、この原点位置から後方への傾動位置を検出する。
【0025】
本実施形態では、プリクラッシュセンサ36及びコントローラ38が衝撃予測手段を構成する。また、モジュール移動用アクチュエータ17が位置変更手段である。また、モジュール移動用アクチュエータ17、前席位置センサ30、前席倒れ角センサ31、後席位置センサ32、後席倒れ角センサ33、後席着座センサ34及びコントローラ38が調節手段を構成する。また、反力板作動用アクチュエータ24が反力板調節手段である。また、反力板作動用アクチュエータ24、前席位置センサ30、前席倒れ角センサ31、後席位置センサ32、後席倒れ角センサ33、後席着座センサ34及びコントローラ38が反力板調節手段を構成する。また、扉開閉用アクチュエータ22が扉開閉手段であり、扉開閉用アクチュエータ22及びコントローラ38が扉制御手段を構成する。
【0026】
前席位置センサ30、前席倒れ角センサ31、後席位置センサ32、後席倒れ角センサ33、後席着座センサ34は、前席10の背もたれ部13と後席乗員Pの膝Pkとの間隔を検出するための各種データを検出する。前席位置センサ30は、前席10を車両前後方向に移動させる駆動モータ(図示しない)の回転量から前席10の車両に対する位置を検出し、前席倒れ角センサ31は、背もたれ部13を前後方向に傾動させる駆動モータ(図示しない)の回転量から背もたれ部13の倒れ角を検出する。後席位置センサ32は、後席15を車両前後方向に移動させる駆動モータ(図示しない)の回転量から後席15の位置を検出し、後席倒れ角センサ33は、後席15の背もたれ部39を前後方向に傾動させる駆動モータ(図示しない)の回転量から背もたれ部39の倒れ角を検出する。
【0027】
後席着座センサ34は、例えば後席15の座部40の前部、中央部及び後部にそれぞれ設けられている。各後席着座センサ34は、後席乗員Pの着座状態、すなわち、後席乗員Pが座部40の正しい位置に着座しているか否かを推定可能な、座部40の前部、中央部及び後部における着座状態を検出する。後席乗員Pが座部40の正しい位置に着座している状態は、前部、中央部及び後部の各後席着座センサ34がいずれも後席乗員Pの着座を検出する。一方、例えば、後席乗員Pである子供が座部40から立ち上がっているときには、いずれの後席着座センサ34も後席乗員Pの着座を検出しない。また、後席乗員Pが座部40に浅く腰掛けているときには、前部の後席着座センサ34のみが着座を検出する。
【0028】
コントローラ38は、前席10の位置と、背もたれ部13の倒れ角とから、背もたれ部13の位置を推定する。また、後席15の位置と、背もたれ部39の倒れ角と、後席乗員Pの着座状態とから、後席乗員Pの膝Pkの位置を推定する。さらに、コントローラ38は、前席10の背もたれ部13の背面と、後席乗員Pの膝Pkとの間隔を推定する。
【0029】
また、コントローラ38は、図示しない後席シートベルトのバックルに付設された後席シートベルトセンサ35から入力する検出信号に基づき、後席乗員Pがシートベルトを着用しているか否かを検出する。
【0030】
プリクラッシュセンサ36は、電波、超音波、光等を用いて、車両の走行方向に存在する他車両、建物等の障害物を検出する。コントローラ38は、プリクラッシュセンサ36から入力する検出信号に基づき、車両が所定の車速以上で走行中のときに、車両に対して前方から後方に向かって所定の大きさ以上の衝撃が加わる可能性を予測する。また、コントローラ38は、クラッシュセンサ37から入力する検出信号に基づき、車両に所定の大きさ以上の衝撃が加わったことを検出する。
【0031】
コントローラ38は、図5にフローチャートで示すプログラムを所定周期で繰り返し実行し、エアバッグモジュール12の作動制御を行う。
コントローラ38は、先ずステップ(以下、Sと略記する。)100で、プリクラッシュセンサ36から入力した検出信号に基づき、車両に所定の大きさ以上の衝撃が加わる可能性があるか否かを判断する。衝撃が加わる可能性があると判断すると、次にS110で、後席シートベルトセンサ35から入力した検出信号に基づき、後席乗員Pがシートベルトを着用しているか否かを判断する。そして、後席乗員Pがシートベルトを着用していないと判断したときには、本処理を終了する。
【0032】
一方、S110で、後席乗員Pがシートベルトを着用していると判断したときには、次に、S120で、後席着座センサ34から入力した検出信号に基づき、後席乗員Pが正しく後席15に着座しているか否かを判断する。そして、後席乗員Pが正しく着座していないと判断したときには、本処理を終了する。一方、S120で後席乗員Pが正しく着座していると判断したときには、次にS130を実行する。
【0033】
S130では、各センサ30〜34から入力した検出信号から、前席10の背もたれ部13の背面と、後席乗員Pの膝Pkとの間隔推定値を求める。
S130を実行した後、S140で、モジュール移動用アクチュエータ17を制御して、エアバッグモジュール12を原点位置から間隔推定値に対応した所定位置(相対位置)まで移動させる。コントローラ38には、所定範囲の間隔推定値に対して設定する所定位置が予め記憶されている。これにより、エアバッグモジュール12と後席乗員Pの膝Pkとの間隔を、予め設定されている所定の大きさに調節する。
【0034】
S140を実行した後、S150で、反力板作動用アクチュエータ24を制御して、反力板14を原点位置から間隔推定値に対応した所定位置(相対位置)まで後傾させる。コントローラ38には、所定範囲内の間隔推定値に対して設定する所定位置が予め記憶されている。これにより、反力板14と膝Pkとの間隔を、予め設定されている所定の大きさに調節する。
【0035】
S150を実行した後、S160で、扉開閉用アクチュエータ22を制御して、扉21を閉状態から開状態に切り換える。これにより、エアバッグモジュール12の作動時に、エアバッグ20が即座に展開膨張できるようにする。
【0036】
次に、S170で、クラッシュセンサ37から入力した検出信号に基づき、車両に対し前方から所定の大きさ以上の衝撃が加わったか否かを判断する。そして、車両に衝撃が加わらない状態が所定時間継続しない内に衝撃を検出したときには、S180でインフレータ19を作動させた後に本処理を終了する。一方、車両に衝撃が加わらない状態が所定時間継続したときには、エアバッグモジュール12を作動させることなく本処理を終了する。
【0037】
また、S100で衝撃が加わる可能性がないと判断したときには、次にS190〜S210を実行する。そして、エアバッグモジュール12及び反力板14を原点位置まで戻し、また、扉を閉位置に戻した後に本処理を終了する。
【0038】
次に、以上のように構成された本実施形態の作用について説明する。
後席乗員Pがシートベルトを装着していないときや着座状態が正しくないときには、車両に衝撃が加わってもコントローラ38がエアバッグモジュール12を作動させない。従って、車両に前方から衝撃が加わってもエアバッグ20によって後席乗員Pの膝Pkや膝下を効果的に保護できない可能性があるときには、その作動が禁止される。
【0039】
また、前席10が後席15寄りに位置決めされているとき、あるいは、図6に示すように、後席乗員Pの体格が大きいときには、背もたれ部13の背面と、後席乗員Pの膝Pkとの間隔が相対的に小さくなる。この状態で車両に衝撃が加わる可能性があると判断すると、コントローラ38が前記間隔に応じてエアバッグモジュール12を座部11に対し前方寄りの所定位置に配置するとともに反力板14を背もたれ部13寄りの所定位置に配置する。これにより、エアバッグモジュール12と後席乗員Pの膝Pkとの間隔、及び、反力板14と膝Pkとの間隔を予め設定された所定の大きさに調節する。このため、車両に前方から衝撃が加わったときに、エアバッグ20が、後席乗員Pの膝Pkの所定間隔だけ前方で展開膨張するとともにその位置で反力板14に支持される。
【0040】
一方、前席10が前方寄りに位置決めされているとき、あるいは、図1に示すように、後席乗員Pの体格が小さいときには、背もたれ部13の背面と、後席乗員Pの膝Pkとの間隔が相対的に大きくなる。この状態で車両に衝撃が加わる可能性があると判断すると、コントローラ38がこの間隔に応じてエアバッグモジュール12を座部11に対し後方寄りの所定位置に配置するとともに反力板14を背もたれ部13から後方側に離れた所定位置まで傾動させる。これにより、エアバッグモジュール12と後席乗員Pの膝Pkとの間隔、及び、反力板14と膝Pkとの間隔を予め設定された所定の大きさに調節する。このため、車両に前方から衝撃が加わったときに、エアバッグ20が、後席乗員Pの膝Pkの所定間隔だけ前方で展開膨張するとともにその位置で反力板14に支持される。
【0041】
従って、エアバッグモジュール12が設けられた前席10と、後席乗員Pの膝Pkとの間隔に拘らず、エアバッグ20を後席乗員Pの膝Pkに対してほぼ所定間隔だけ前方で展開膨張させるとともに反力板14によってその位置に支持することができる。その結果、車両衝突時の前席10の調節位置や、後席乗員Pの体格あるいは着座状態によらず、後席乗員Pの膝Pkや膝下をより適正な反力で拘束し、衝撃からより効果的に保護することができる。
【0042】
次に、以上詳述した本実施形態が有する効果を列記する。
(1) プリクラッシュセンサ36の検出結果から車両に前方から衝撃が加わる可能性があると判断すると、コントローラ38は、前席10に設けられたエアバッグモジュール12と後席乗員Pの膝Pkとの間隔が予め設定されている所定の大きさとなるようにエアバッグモジュール12の前席10に対する位置を調節する。このため、車両衝突時の前席10と後席乗員Pの膝Pkとの間隔に関係なく、エアバッグ20が後席乗員Pの膝Pkの前方に所定の大きさだけ離れた位置で展開膨張する。従って、前席10に設けられたエアバッグモジュール12と後席乗員Pの膝Pkとの相対位置に関係なく、後席乗員Pの膝Pk及び膝下をより効果的に保護することができる。
【0043】
(2) 前席10の背もたれ部13の背面側に、展開膨張したエアバッグ20の前面を支持する反力板14を設ける。そして、コントローラ38は、反力板14と後席乗員Pの膝Pkとの間隔が予め設定されている適正な大きさとなるように、反力板作動用アクチュエータ24を制御して反力板14を背もたれ部13の背面から後方に傾動させる。このため、エアバッグモジュール12の前席10に対する相対位置の調節によって、後席乗員Pの膝Pkから前方に所定間隔だけ離れた位置で展開膨張したエアバッグ20がその位置で反力板14によって前方に移動不能に保持される。従って、車両に前方から衝撃が加わったときに展開膨張したエアバッグ20が、後席乗員Pの膝Pk及び膝下に対する十分な反力を発生して拘束する。
【0044】
(3) 車両に衝撃が加わる可能性が消失したと判断すると、コントローラ38は、モジュール移動用アクチュエータ17を制御して、エアバッグモジュール12を原点位置まで復帰させる。このため、エアバッグモジュール12が前席10に対して後席15側に配置されたままの状態とならないので、後席乗員Pの足の邪魔にならない。
【0045】
(4) 車両に衝撃が加わる可能性があると判断すると、コントローラ38は、エアバッグモジュール12のケース18の開口部18aを塞ぐ扉21を、扉開閉用アクチュエータ22を制御して閉状態から開状態に切り換える。このため、車両に衝撃が加わったときに、エアバッグ20がケース18から迅速に展開膨張する。従って、従来のようにインフレータから供給するガス圧でケースの蓋を押し破ってエアバッグを展開膨張させるものに比較してより低出力のインフレータ19を用いても展開膨張に要する時間が長くならない。その結果、より低い展開速度で展開膨張させたエアバッグ20により、後席乗員Pをより柔らかく受け止めることができる。
【0046】
また、車両に衝撃が加わる可能性が消失したと判断すると、コントローラ38は扉開閉用アクチュエータ22を制御して扉21を開位置から閉位置に復帰させる。このため、使用者が自分で扉21を閉じる必要がない。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図7〜図10に従って説明する。尚、第1実施形態と同じ構成については、符号を同じにしてその説明を省略する。
【0048】
本実施形態の後席用エアバッグ装置は、第1実施形態と異なり、エアバッグモジュール12が前席10の座部11に固定されており、前席10の車体に対する車両前後方向での相対位置を変更することによって、エアバッグモジュール12と後席15との間隔を変更する。また、展開膨張させたエアバッグ20の前面を、前席10の背もたれ部13の背面で支持する。
【0049】
図7及び図8に示すように、エアバッグモジュール12が固定された前席10は、車室の床面上に設けられた前席移動用アクチュエータ50により、後席15に着座する後席乗員Pの体格に応じて、車両前後方向における位置が変更される。
【0050】
図9に示すように、コントローラ38は、各センサ30〜34から入力する検出情報に基づき、インフレータ19、扉開閉用アクチュエータ22及び前席移動用アクチュエータ50を作動制御する。また、コントローラ38は、前席移動用アクチュエータ50に内蔵された図示しないポジションセンサから入力する検出信号に基づき、前席10が所定調節範囲の最も前寄りに配置された原点位置と、この原点位置から後方への移動位置とを検出する。
【0051】
コントローラ38は、図10にフローチャートで示すプログラムを所定周期で繰り返し実行し、エアバッグモジュール12の作動制御を行う。本実施形態では、第1実施形態のS140,S150,S190,S200の処理に代えて、S340,S380の処理を行う。
【0052】
コントローラ38は、S130に相当するS330で間隔推定値を求めた後、S340で、前席移動用アクチュエータ50を制御して、前席10をそのときに設定されている位置から、間隔推定値に対応した位置まで移動させる。コントローラ38には、所定範囲の間隔推定値に対して設定する前席の位置が予め記憶されている。これにより、エアバッグモジュール12と後席乗員Pの膝Pkとの間隔を、予め設定されている所定の大きさに調節する。
【0053】
また、S100に相当するS300で車両に衝撃が加わる可能性がないと判断したときには、次にS380を実行し、前席10を調節前の位置に戻す。
以上のように構成された本実施形態も、第1実施形態と同様の作用をなす。
【0054】
例えば、図7に示すように、後席乗員Pの体格が大きいときに、車両に衝撃が加わる可能性があると判断すると、コントローラ38が前席10をそのときの調節位置から、エアバッグモジュール12と後席乗員Pの膝Pkとの間隔が所定の間隔となる位置に移動させる。このため、車両に衝撃が加わったときに、エアバッグ20が後席乗員Pの膝Pkの所定距離だけ前方で展開膨張するとともにその位置で背もたれ部13に支持される。
【0055】
一方、図8に示すように、後席乗員Pの体格が小さいときに、車両に衝撃が加わる可能性があると判断すると、コントローラ38が前席10をそのときの調節位置から、エアバッグモジュール12と後席乗員Pの膝Pkとの間隔が所定の大きさとなる位置に移動させる。
【0056】
従って、エアバッグモジュール12が固定された前席10と、後席乗員Pの膝Pkとの相対位置に関係なく、エアバッグ20を後席乗員Pの膝Pkに対してほぼ所定間隔だけ前方で展開膨張させるとともに背もたれ部13によってその位置に支持することができる。
【0057】
以上のように構成された本実施形態も、第1実施形態の(1)〜(4)に記載の各効果を有する。
(他の実施形態)
次に、上記第1及び第2実施形態以外の実施形態を列記する。
【0058】
・ 前記第1実施形態で、反力板14を、背もたれ部13の背面にほぼ平行な状態で後方に変位可能に支持した構成とする。この場合には、展開膨張したエアバッグ20の前面をより適切な姿勢で支持することができ、後席乗員Pの膝Pkに対する保護性能が向上する。
【0059】
・ 前記第1実施形態で、反力板14を座部11の下側まで延長してエアバッグモジュール12と共に座部11の下面に支持し、共通のアクチュエータによって前席10に対する位置を変更する構成としてもよい。この場合には、アクチュエータの数が少なくなるとともに、コントローラ38が行う処理が簡素となる。
【0060】
・ 前記第1実施形態で、エアバッグモジュール12を前席10に対して移動させるために用いるアクチュエータは、エアシリンダ、リニアモータ、回転型モータ等であってもよい。反力板14を傾動させるために用いるアクチュエータも同じである。同様に、第2実施形態で前席10を移動させるために用いるアクチュエータも、エアシリンダ、リニアモータ、回転型モータ等であってよい。
【0061】
・ 前記第2実施形態で、前席10に乗員が着座しているときには、車両に前方から衝撃が加わる可能性があると判断しても、エアバッグモジュール12の前席10に対する位置を調節せず、エアバッグモジュール12を作動させない構成としてもよい。
【0062】
・ 前記各実施形態で、図11に示すように、エアバッグモジュール12のケース18に、その開口部18aの下端に回動可能に支持された蓋60を設ける。そして、この蓋60を後方斜め上向きとなるように開き、展開膨張するエアバッグ20の下側に当接させることで、エアバッグ20を後方上向きに展開膨張させる補助を行う構成としてもよい。
【0063】
・ 車体に対する後席15の車両前後方向での相対位置を調節することによって、前席10に固定されているエアバッグモジュール12と、後席乗員Pの膝Pkとの相対位置を所定の状態に調節する構成としてよい。このような構成によれば、前席10に乗員が着座した状態であっても、後席用エアバッグ装置を作動させることができる。
【0064】
・ 前席10の下方において車室の床面上に設けられたエアバッグモジュール12の位置を変更する位置変更手段を設け、コントローラ38がエアバッグモジュール12の車両に対する位置を調節することで、エアバッグモジュール12と後席乗員Pの膝Pkとの間隔を調節する構成としてもよい。このとき、第1実施形態と同様に、前席10の背もたれ部13の背面に設けた反力板14と、後席乗員Pの膝Pkとの間隔との間隔を調節する構成としてもよい。
【0065】
・ 前席10又は後席15の位置と、前席10に支持されたエアバッグモジュール12の前席10に対する相対位置とを共に調節することによって、エアバッグモジュール12と後席乗員Pの膝Pkとの間隔を適切に調節する構成としてもよい。この場合に、第1実施形態と同様に、前席10の背もたれ部13の背面に反力板14を設け、この反力板14と後席乗員Pの膝Pkとの間隔をも適切に調節する構成としてもよい。
【0066】
・ 各実施形態で、車両に前方から衝撃が加わる可能性を、例えばブレーキペダルに対する踏み力が所定の大きさ以上であることをもって推定してもよい。
以下、前記各実施形態から把握される技術的思想をその効果とともに列記する。
【0067】
(1) 請求項1に記載の後席用エアバッグ装置において、前記位置変更手段は、前記前席に対し車両前後方向に相対移動可能に支持された前記エアバッグモジュールの前席に対する相対位置を変更することで、エアバッグモジュールと前記後席との相対位置を調節することを特徴とする後席用エアバッグ装置。このような構成によれば、前席に乗員が着座していても、後席用エアバッグ装置を作動させることができる。
【0068】
(2) 請求項1に記載の後席用エアバッグ装置において、前記位置変更手段は、車室の床上に設けられた前記エアバッグモジュールの車両前後方向における位置を変更することで、前記エアバッグモジュールと前記後席との相対位置を調節することを特徴とする後席用エアバッグ装置。
【0069】
(3) 請求項1に記載の後席用エアバッグ装置において、前記位置変更手段は、前記エアバッグモジュールの車両に対する車両前後方向での位置を変更することで、エアバッグモジュールと前記後席との相対位置を調節することを特徴とする後席用エアバッグ装置。
【0070】
(4) 請求項1に記載の後席用エアバッグ装置において、前記位置変更手段は、前記後席の車両前後方向における位置を変更することで、前記前席に固定されたエアバッグモジュールと後席との相対位置を調節することを特徴とする後席用エアバッグ装置。このような構成によれば、前席に乗員が着座していても、後席用エアバッグ装置を作動させることができる。
【0071】
(5) 請求項5又は請求項6に記載の後席用エアバッグ装置において、前記扉は、開状態において前記エアバッグの展開方向を補助することを特徴とする後席用エアバッグ装置。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の後席用エアバッグ装置を示す模式側面図。
【図2】同じく要部を示す模式側面図。
【図3】エアバッグモジュールを示す模式縦断面図。
【図4】後席用エアバッグ装置の電気的構成を示すブロック図。
【図5】エアバッグモジュールの作動制御を示すフローチャート。
【図6】後席用エアバッグ装置の作動状態を示す模式側面図。
【図7】第2実施形態の後席用エアバッグ装置を示す模式側面図。
【図8】後席用エアバッグ装置の作動状態を示す模式側面図。
【図9】後席用エアバッグ装置の電気的構成を示すブロック図。
【図10】エアバッグモジュールの作動制御を示すフローチャート。
【図11】他のエアバッグモジュールを示す模式縦断面図。
【符号の説明】
10…前席、11…座部、12…エアバッグモジュール、13…背もたれ部、14…反力板、15…後席、17…調節手段を構成する位置変更手段としてのモジュール移動用アクチュエータ、18…ケース、18a…開口部、20…エアバッグ、21…扉、22…扉制御手段を構成する扉開閉手段としての扉開閉用アクチュエータ、24…反力板調節手段を構成する反力板操作手段としての反力板作動用アクチュエータ、30…調節手段、反力板調節手段を構成する前席位置センサ、31…前席倒れ角センサ、32…後席位置センサ、33…後席倒れ角センサ、34…後席着座センサ、36…衝撃予測手段を構成するプリクラッシュセンサ、38…衝撃予測手段、調節手段、反力板調節手段、扉制御手段を構成するコントローラ、60…蓋、P…後席乗員、Pk…膝部としての膝。
Claims (6)
- 後席の前方に設けられたエアバッグモジュールから展開膨張するエアバッグが、前席の背もたれ部と後席乗員の膝部との間に配置される後席用エアバッグ装置であって、
車両に対して前方から後方に向かって所定の大きさ以上の衝撃が加わる可能性を検出する衝撃予測手段と、
前記エアバッグモジュールの前記後席に対する相対位置を変更可能な位置変更手段と、
車両に衝撃が加わる可能性が検出されたときに、前記後席乗員の膝部と前記エアバッグモジュールとの車両前後方向における相対位置が予め設定されている状態となるように、前記位置変更手段を作動させてエアバッグモジュールと後席との相対位置を調節する調節手段とを備えたことを特徴とする後席用エアバッグ装置。 - 前記位置変更手段は、前記前席に対し車両前後方向に相対移動可能に支持されたエアバッグモジュールの同方向における相対位置を変更するものであって、
前記前席に対しその背もたれ部から後方に変位可能に支持され、展開膨張した前記エアバッグの前面を支持する反力板と、
前記背もたれ部に対する車両前後方向での前記反力板の相対位置を変更可能な反力板操作手段と、
車両に衝撃が加わる可能性が検出されたときに、前記反力板と後席乗員の膝部との相対位置が予め設定されている状態となるように、前記反力板操作手段を作動させて、背もたれ部に対する反力板の相対位置を調節する反力板調節手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の後席用エアバッグ装置。 - 前記位置変更手段は、前記エアバッグモジュールが固定された前記前席の車体に対する車両前後方向での相対位置を変更することを特徴とする請求項1に記載の後席用エアバッグ装置。
- 前記調節手段は、車両に衝撃が加わる可能性が消失したときに、前記位置変更手段を制御して、前記エアバッグモジュールと前記後席との車両前後方向における相対位置を調節前の状態に戻すことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の後席用エアバッグ装置。
- 前記エアバッグモジュールのケースからエアバッグを飛び出させる開口部を塞ぐ扉を開閉する扉開閉手段と、
車両に衝撃が加わる可能性が検出されたときに、前記扉開閉手段を制御して前記扉を閉状態から開状態に切り換える扉制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の後席用エアバッグ装置。 - 前記扉制御手段は、車両に衝撃が加わる可能性が消失したときに、前記扉を閉位置まで戻すことを特徴とする請求項5に記載の後席用エアバッグ装置。
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