JP2009206629A - オーディオ出力装置、オーディオ出力方法 - Google Patents

オーディオ出力装置、オーディオ出力方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ロードノイズなどによるマスキングが発生する状況で好適な音楽等の再生を実現する。
【解決手段】ノイズによってマスキングされる帯域の信号成分についてピッチシフトを行い、少なくとも2倍の周波数の信号成分を含むピッチシフト信号とし、そのピッチシフト信号成分を含むオーディオ信号をスピーカ出力させることで、マスキング効果によって聞こえなくなる帯域の音を、マスキングされにくい倍音成分でユーザに聴感させ、ミッシングファンダメンタル現象によってマスキングされた帯域の音を知覚させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、特に外来ノイズの多い環境において好適なオーディオ出力装置、オーディオ出力方法に関するものである。
特開2006−222670号公報 特開2007−53432号公報
例えば自動車内などノイズの多い環境では、音楽等を快適に楽しめない場合が多い。
図10は、走行時の自動車の車室内のノイズレベルを測定した例を示している。図からわかるように、走行時の車内は、特に低周波数帯域において高いレベルの騒音が発生している。
車載用のオーディオシステムで音楽等を聴取する場合においては、このようなノイズによって音楽における特に低域がマスキングされることが多い。
このため車載用のオーディオシステムで音楽等を聴取する場合において、走行中などで外部騒音が大きくなった場合には、ユーザは、音楽のボリューム(音量)を騒音に負けない程度にまで上げたり、また機器の機能によってイコライザによる低域周波数のブースト、を行ったり、或いはコンプレッション処理による小信号レベルのブースト等を行うことで対応している。
しかしながら、車室内では走行スピードによりノイズレベルも上昇するため、マスキングを防ぐためには、ノイズのレベル以上に音楽信号をブーストする必要が出てくる。
このため搭乗者の意図しないままに、非常に大きな音量レベルになったりする可能性があり、なかなか快適なリスニング環境が得られない。
そこで本発明は、自動車内等のノイズの多い環境であっても、音楽等を快適に楽しめるようにするオーディオ出力装置、オーディオ出力方法を提供することを目的とする。
本発明のオーディオ出力装置は、オーディオ信号出力音に対しての、環境音によるマスキングの発生が見込まれる周波数帯域を判定して対象周波数帯域とするマスキング帯域判定部と、入力されるオーディオ信号から上記マスキング帯域判定部で判定された対象周波数帯域の信号成分を抽出する帯域成分抽出部と、上記帯域成分抽出部で抽出された対象周波数帯域の信号成分のピッチシフトを行い少なくとも2倍の周波数の信号成分を含むピッチシフト信号を生成するピッチシフト部と、上記ピッチシフト部で得られた上記ピッチシフト信号を含むオーディオ信号を接続されたスピーカに供給するオーディオ信号とする信号出力部とを備える。
また上記帯域成分抽出部は、上記対象周波数帯域の信号成分と、他の周波数帯域の信号成分とを分離して、上記対象周波数帯域の信号成分を上記ピッチシフト部に供給し、上記信号出力部は、上記他の周波数帯域の信号成分と、上記ピッチシフト信号とを合成したオーディオ信号を、スピーカに供給するオーディオ信号とする。
或いは、上記帯域成分抽出部は、入力されたオーディオ信号から、上記対象周波数帯域の信号成分を抽出して上記ピッチシフト部に供給し、上記信号出力部は、上記入力されたオーディオ信号と、上記ピッチシフト信号とを合成したオーディオ信号を、スピーカに供給するオーディオ信号とする。
また上記マスキング帯域判定部は、マイクロホンで集音された環境音について周波数解析を行って、各周波数帯域毎の環境音レベルに基づいて、上記対象周波数帯域の判定を行う。
また上記ピッチシフト部は、上記対象周波数帯域の信号成分についての2倍の周波数の信号成分と、さらに他の倍音成分を含む上記ピッチシフト信号を生成する。
本発明の他のオーディオ出力装置は、オーディオ信号出力音に対しての環境音によるマスキングの発生の有無を判定するマスキング判定部と、上記マスキング判定部でマスキング発生有りと判定されることに応じて、入力されるオーディオ信号から特定周波数帯域の信号成分を抽出する帯域成分抽出部と、上記帯域成分抽出部で抽出された対象周波数帯域の信号成分のピッチシフトを行い、少なくとも2倍の周波数の信号成分を含むピッチシフト信号を生成するピッチシフト部と、上記ピッチシフト部で得られた上記ピッチシフト信号を含むオーディオ信号を、接続されたスピーカに供給するオーディオ信号とする信号出力部とを備える。
本発明のオーディオ出力方法は、オーディオ信号出力音に対しての、環境音によるマスキングの発生が見込まれる周波数帯域を判定して対象周波数帯域とするステップと、入力されるオーディオ信号から、上記対象周波数帯域の信号成分を抽出するステップと、抽出された対象周波数帯域の信号成分のピッチシフトを行い、少なくとも2倍の周波数の信号成分を含むピッチシフト信号を生成するステップと、上記ピッチシフト信号を含むオーディオ信号を、接続されたスピーカに供給するオーディオ信号として出力するステップとを備える。
これらの本発明では、オーディオ信号において、ノイズによってマスキングされる帯域の信号成分をピッチシフトする。
例えば音楽を車の中で聴く場合、エンジン音や走行中のロードノイズ等の騒音によって、特に低域周波数がマスキングされる傾向にある。このためノイズの状況、即ちノイズのレベルや帯域に応じて、マスキングされる音楽等のオーディオ信号の周波数成分を、マスキングされにくい周波数帯域へピッチシフトにより移動させることで、ノイズ環境下でも明瞭な再生を可能にする。
オーディオ信号をピッチシフトすることによっては音程が変わってしまうが、本発明の場合はミッシングファンダメンタル現象を利用する。ミッシングファンダメンタル現象とは、或る基本周波数の音の整数倍音を含む音声については、基本周波数の音が含まれていなくても、人間が基本周波数の音を知覚する現象である。そこで本発明では、マスキングされる周波数帯域の信号成分のピッチシフトを行い、少なくとも2倍の周波数の信号成分を含むピッチシフト信号とする。即ちノイズにマスキングされる帯域成分を、マスキングされにくい帯域に移動させるとともに、ユーザには、そのピッチシフト信号成分による出力音によって基本周波数成分を知覚させる。
本発明によれば、ノイズによってマスキングされる帯域の信号成分についてピッチシフトを行い、少なくとも2倍の周波数の信号成分を含むピッチシフト信号とし、そのピッチシフト信号成分を含むオーディオ信号をスピーカ出力させることで、マスキング効果によって聞こえなくなる帯域の音を、マスキングされにくい倍音成分でユーザに聴感させ、ミッシングファンダメンタル現象によってマスキングされた帯域の音を知覚させる。
これによってノイズによるマスキングの影響を低減でき、ノイズ環境下において、むやみに音量を上げたり、マスキングされる帯域をブーストしたりしなくとも、音楽等を快適に楽しめる状況を創出できるという効果がある。
以下、本発明の第1,第2,第3の実施の形態として、車載用オーディオ装置に本発明を採用した例を説明する。
[第1の実施の形態]
図1に第1の実施の形態の車載用のオーディオ装置1の構成を示す。
このオーディオ装置1は、マイクロホン2、マイクアンプ3、スペクトラム解析/制御部4、オーディオ再生部5、帯域分割部6、ピッチシフト部7、合成部8、D/A変換器9、パワーアンプ10、スピーカ15を備える。
マイクロホン2は、車内で感じる騒音、いわゆるロードノイズを集音するために用いられるものであって、自動車内の適切な場所に設置される。
マイクロホン2で得られるノイズ音声信号は、マイクアンプ3を経てスペクトラム解析/制御部4に供給される。
スペクトラム解析/制御部4は、入力されたノイズ音声信号についてスペクトラム解析を行い、周波数帯域毎のレベルを検出する。また、後述するように、その検出結果に応じて帯域分割部6やピッチシフト部7に対する動作制御を行う。
オーディオ再生部5は、例えば光ディスク再生部、HDD(Hard Disk Drive)、メモリカードドライブ、磁気テーププレーヤなどとされる。つまり光ディスク、ハードディスク、メモリカード、磁気テープ等の記録媒体から音楽コンテンツ等のオーディオ信号SA1を再生する部位として示している。
説明上、オーディオ再生部5から出力されるオーディオ信号SA1は、デジタルオーディオ信号であるとする。但し、アナログオーディオ信号であっても構わない。
なお、この例ではオーディオ信号SA1の音源部としてオーディオ再生部5を挙げているが、これは一例であり、この音源部としてはオーディオ信号SA1を出力する部位であれば、記録媒体に対する再生部として構成されなくてもよい。例えばラジオチューナ部や、テレビジョンチューナ部やビデオ再生部などのオーディオ出力系などを、オーディオ再生部5に置き換える構成例も考えられる。
また説明の簡略化のため、オーディオ信号SAに対応する回路系(帯域分割部6、ピッチシフト部7、合成部8、D/A変換器9、パワーアンプ10、スピーカ15)を1系統のみ示しているが、ステレオシステムの場合は、これらが2系統となることは言うまでもない。もちろんより多チャンネルのシステムの場合、各チャンネルに対応して同様の構成が設けられればよい。もしくは多チャンネルのうちの一部のチャンネルに関して、この図1の構成が設けられるようにしてもよい。
帯域分割部6は、オーディオ再生部5からのオーディオ信号SA1について帯域分割を行い、帯域分割したオーディオ信号SA2、SA3を出力する。分割した一方の帯域を、ピッチシフト処理の対象周波数帯域のオーディオ信号SA3として、ピッチシフト部7に供給する。
この帯域分割部6は、一例として図2のように、スイッチSW1,SW2、通過帯域可変LPF(ローパスフィルタ)30、通過帯域可変HPF(ハイパスフィルタ)31により構成することができる。
スイッチSW1,SW2は、スペクトラム解析/制御部4からの制御信号C1によってオン/オフされる。この場合、いずれか一方がオンとされる構成となっている。
通過帯域可変LPF30、通過帯域可変HPF31は、それぞれカットオフ周波数がスペクトラム解析/制御部4からの制御信号C2によって連動的に制御される。
この図2の構成において、図のようにスイッチSW1がオン,スイッチSW2がオフの場合は、オーディオ信号SA1は、通過帯域可変LPF30、通過帯域可変HPF31に供給される。そして通過帯域可変LPF30、通過帯域可変HPF31が制御信号C2によって、例えばカットオフ周波数=100Hzに制御されているとすると、通過帯域可変LPF30で100Hz以下の周波数帯域の信号成分が抽出され、これがピッチシフト処理の対象周波数帯域のオーディオ信号SA3として、ピッチシフト部7に出力される。また通過帯域可変HPF31では100Hz以上の周波数帯域の信号成分が通過し、これがオーディオ信号SA2として出力され、合成部8に供給される。
一方、スイッチSW1がオフ,スイッチSW2がオンの場合は、オーディオ信号SA1は、そのまま帯域分割されずにオーディオ信号SA2として出力される。この場合、ピッチシフト部7に対するオーディオ信号SA2は出力されない。
例えばこのような構成で、帯域分割部6は図1に示すようにオーディオ信号SA2,SA3を出力する。
帯域分割部6から出力されるオーディオSA3は、ピッチシフト部7に入力される。ピッチシフト部7は、オーディオ信号SA3のピッチシフトを行い、少なくとも2倍の周波数の信号成分を含むピッチシフト信号SA3’を出力する。
このピッチシフト部7の構成の一例を図3に示す。例えばメモリ20、メモリコントローラ21、逓倍器22で構成できる。
メモリ20は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)、或いはDRAMの一種であるSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)、或いはSRAM(Static Random Access Memory)などとすればよい。
メモリコントローラ21には書込用のクロックとして周波数fsのクロックCK1が供給される。また、クロックCK1が逓倍器22で2倍の周波数(2fs)とされたクロックCK2が、読出用のクロックとしてメモリコントローラ21に供給される。
メモリコントローラ21は、入力されるオーディオ信号SA3を、クロックCK1に従ってメモリ20に書き込んでいく。またメモリコントローラ21は、メモリ20に書き込んだオーディオ信号SA3を、所定単位毎に2倍の周波数のクロックCK2に従って2回連続して読み出しを行う。この読み出した信号を連続的に出力することで、オーディオ信号SA3を、2倍の周波数のピッチシフト信号SA3’として出力することができる。つまりオーディオ信号SA3として含まれる基音成分が2倍音とされたピッチシフト信号SA3’が出力される。
メモリコントローラ21は、スペクトラム解析/制御部4からの制御信号C3に基づいて、このようなピッチシフト動作を実行する。
図1のように、ピッチシフト部7から出力されるピッチシフト信号SA3’と、帯域分割部6からのオーディオ信号SA2は、合成部8に供給される。
合成部8はピッチシフト信号SA3’とオーディオ信号SA2を加算合成して、スピーカ15に供給するためのオーディオ信号SA4を生成する。
このオーディオ信号SA4は、D/A変換器9でアナログオーディオ信号に変換された後、パワーアンプ10で増幅され、スピーカ15から音声、即ち音楽等の再生音声として出力される。
なお、この図1の構成において、本発明請求項の構成要件との対応は次のようになる。
マスキング帯域判定部:スペクトラム解析/制御部4
帯域成分抽出部:帯域分割部6
ピッチシフト部:ピッチシフト部7
信号出力部:合成部8
このようなオーディオ装置1の動作を説明する。
図10に示したように、走行時の車室内ノイズは、高域に比べ低域で大きなレベルとなっている。このため、低域の音楽信号成分はこ走行時ノイズでマスキングされる傾向となる。本例では、このマスキングを防止するため、車室内のノイズをマイクロホン2で集音し、低域のノイズレベルの状況に応じて、低域周波数を適宜マスキングされにくい帯域にシフトさせるものである。
このためのスペクトラム解析/制御部4の処理を図4に示す。また、図4の処理に応じた動作処理のイメージを、図5に模式的に示す。
図4の処理は、オーディオ装置1によってオーディオ再生部5からの音楽等の再生を実行している期間に、スペクトラム解析/制御部4が繰り返し継続的に実行するものである。
スペクトラム解析/制御部4は、ステップF101で、ノイズ音を入力する。即ちマイクロホン2、マイクアンプ3を介して入力されるノイズ音声信号を取り込む。
スペクトラム解析/制御部4は、ステップF101で所定期間単位で取り込んだノイズ音声信号に対してスペクトラム解析を実行する。そしてステップF103で、スペクトラム解析結果として各帯域毎のレベル検出を行い、再生音楽等に対するマスキングが発生する可能性の高い周波数帯域の判定を行う。
例えば各帯域のノイズレベルを所定のスレッショルドレベルthと比較して、マスキングの可能性を判定すればよい。
図5(a)(b)は、ノイズ音のスペクトラム解析結果の例を示している。図5(a)の場合、ノイズ音は、低域であってもスレッショルドレベルth未満でさほど大きなレベルとはなっておらず、マスキングは発生しないと判断する。例えば自動車の停車時などであってノイズが低い場合などがこれに該当する。
一方、図5(b)は、走行スピードが増してロードノイズが増えたような場合であって、ノイズ音が、その低域においてスレッショルドレベルthを越えている状況を示している。このようにスレッショルドレベルthを越えたノイズレベルが検出された場合は、スピーカ出力音についてのマスキング発生が見込まれると判定する。
判定結果として、図5(a)のようにノイズレベルが小さく、マスキング発生は見込まれないとした場合、スペクトラム解析/制御部4はステップF104からF107に進み、ピッチシフト不実行制御を行う。
即ちこの場合は、制御信号C1によって、図2の帯域分割部6のスイッチSW1をオフ、スイッチSW2をオンとし、またピッチシフト部7に対して制御信号C3によってピッチシフト動作を実行させないようにする。
従ってこの場合は、オーディオ再生部5からのオーディオ信号SA1は、帯域分割部6で特に帯域分割されない状態で、そのままオーディオ信号SA2として合成部8に供給され、一方ピッチシフト信号SA3’は合成部8に入力されない。
合成部8は、オーディオ信号SA2(=SA1)を、そのままスピーカ出力用のオーディオ信号SA4として(つまりSA4=SA1)出力する。従って、この場合はオーディオ再生部5からのオーディオ信号SA1は、そのままスピーカ出力されることになる。
ところが図5(b)のように、ロードノイズが大きくなり、マスキング発生が見込まれる場合は、スペクトラム解析/制御部4は処理をステップF104からF105に進める。ステップF105では、ピッチシフトを行う対象の帯域を決定する。例えば図5(b)において、スレッショルドレベルthを越えたノイズレベルが周波数fx以下の帯域で観測されていたのあれば、この周波数fx以下の帯域を、ピッチシフトを行う対象の帯域とする。
そしてその決定した帯域についてステップF106でピッチシフト実行制御を行う。
即ちこの場合は、制御信号C1によって、図2の帯域分割部6のスイッチSW1をオン、スイッチSW2をオフとし、また制御信号C2によってカットオフ周波数=fxを指示する。さらにピッチシフト部7に対して制御信号C3によってピッチシフト動作の実行を指示する。
この場合のオーディオ信号のイメージを図5(c)(d)(e)(f)に示している。
オーディオ再生部5からのオーディオ信号SA1が、周波数軸上で図5(c)のようであったとする。
この場合、帯域分割部6からは、図5(d)の周波数fx以上の帯域の信号成分がオーディオ信号SA2として出力され、また図5(e)の周波数fx未満の帯域の信号成分が、オーディオ信号SA3としてピッチシフト部7に供給される。
ピッチシフト部7ではオーディオ信号SA3に対してピッチシフト処理を行い、図5(f)のような信号成分からなるピッチシフト信号SA3’を出力する。
そして合成部8では、図5(d)のオーディオ信号SA2と、図5(f)のピッチシフト信号SA3’が加算合成され、その結果がオーディオ信号SA4(SA4=SA2+SA3’)としてスピーカ出力に供されることになる。
例えばfx=100Hzであったとすると、100Hz以下の帯域の信号成分が2倍の周波数にピッチシフトされ、それが100Hz以上の帯域の信号成分に加算されてスピーカ出力されるものとなる。
このような本例の処理によって、ノイズによるマスキングの影響を低減でき、走行中の車内のようにノイズの大きい環境下において、オーディオ再生部5で再生される音楽等の出力音量を上げたり、マスキングされる帯域をブーストしたりしなくとも、音楽等を快適に楽しめる状況を創出できる。
即ち、オーディオ信号SA1内において、ノイズによってマスキングされる帯域の信号成分をピッチシフトすることは、当該帯域の信号成分、つまりマスキングでユーザが聴感できない信号成分を、マスキングされにくい帯域にシフトすることとなり、つまりピッチシフト後の音声出力をユーザに聴感させるものとなる。
ここで、オーディオ信号成分、例えば100Hzの信号成分を200Hzにピッチシフトさせると、マスキングはされなくとも音程が変わってしまうことが懸念されるが、実際にはミッシングファンダメンタル現象によって、ユーザには音楽等は通常どおりに知覚される。
ミッシングファンダメンタル現象は、公知のとおり、或る基本周波数の音の整数倍音を含む音声については、基本周波数の音が含まれていなくても、人間が基本周波数の音を知覚する現象であり、基本周波数(この場合例えば100Hz)の成分が無くても、その倍音成分(200Hz)があれば基本周波数(100Hz)の音を人間が知覚する。この現象により、本例のようにピッチシフトを行っても、元の音楽等のイメージを損なうことは無い。従って、ノイズによるマスキングの影響を低減させて、快適に音楽等を楽しめることとなる。特にマスキングされていた低域を明瞭に聞き取ることができるようになる。また、これによってむやみにスピーカ出力音量を上げるなども不要となる。
なお、本例ではピッチシフト部7は2倍の周波数にピッチシフトを行うものとした。
ミッシングファンダメンタル現象で基本周波数を知覚させるには、少なくとも基本周波数の2倍音の存在が必要であり、さらに3倍音、4倍音等の連続した整数倍音を含むことが適切である。上記のような音楽等のオーディオ信号の場合、元々、連続する整数倍音は含まれていると考えられる。即ち、2倍音としたピッチシフト信号SA3’のみを出力するのではなく、高域側のオーディオ信号SA2をミックスして出力するものであるため、最終的なスピーカ出力においては、高いレベルの2倍音とともに、連続した整数倍音成分も含まれており、これによってユーザは基本周波数を知覚できると考えられる。
ここで、さらにピッチシフト信号SA3’としては、2倍音だけでなく、他の整数倍音成分を含むようにすることも考えられる。
例えばピッチシフト部7を図6のように構成する。これは、図3のメモリ20,メモリコントローラ21、逓倍器22に加えて、メモリ23,メモリコントローラ24、逓倍器25、及び加算器26を設けたものである。
メモリコントローラ24には、書込用のクロックとして周波数fsのクロックCK1が供給され、また、クロックCK1が逓倍器25で4倍の周波数(4fs)とされたクロックCK2が、読出用のクロックとして供給される。
メモリコントローラ21側では、入力されるオーディオ信号SA3を、クロックCK1に従ってメモリ20に書き込み、またメモリ20に書き込んだオーディオ信号SA3を、所定単位毎に2倍の周波数のクロックCK2に従って2回連続して読み出しを行うことで、オーディオ信号SA3を、2倍の周波数にピッチシフトした信号を出力する。
またメモリコントローラ24側では、入力されるオーディオ信号SA3を、クロックCK1に従ってメモリ23に書き込み、またメモリ23に書き込んだオーディオ信号SA3を、所定単位毎に4倍の周波数のクロックCK3に従って4回連続して読み出しを行うことで、オーディオ信号SA3を、4倍の周波数にピッチシフトした信号を出力する。
そして加算器26で、2倍の周波数にピッチシフトした信号と4倍の周波数にピッチシフトした信号を加算し、これをピッチシフト信号SA3’として出力する。
このように、2倍音だけでなく、他の整数倍音成分を積極的にピッチシフト信号SA3’に加えるようにすることも考えられる。
もちろんさらに、3倍音、5倍音、6倍音などもピッチシフト信号SA3’に含ませるようにしてもよい。
ところで本例の場合、マイクロホン2はノイズ集音のためのものであって、オーディオ信号SA1に基づく再生音楽等の音は集音されにくいようにする必要がある。
このため、自動車内におけるマイクロホン2の設置箇所や指向性の設定によって、スピーカ15から出力される音が集音されにくいようにすることが適切である。
或いはロードノイズが低域、例えば200Hz以下が主体であることから、マイクロホン2で得られた音声信号についてLPFを介して200Hz以下などの低域成分をスペクトラム解析/制御部4に供給するようにすることも考えられる。
さらには、オーディオ再生部5からのオーディオ信号SA1を位相反転させ、逆相信号としてスペクトラム解析/制御部4に供給し、これをマイクロホン2で得られた音声信号に加算することで、オーディオ信号SA1の成分を打ち消したうえで、ロードノイズ成分がスペクトラム解析/制御部4で解析されるようにしてもよい。
また、スペクトラム解析/制御部4でのマスキングの判定は、帯域毎のノイズレベルを所定のスレッショルドレベルthと比較するものとしたが、このスレッショルドレベルthは、帯域にかかわらず同じレベルとしてもよいし、帯域毎に異なるスレッショルドレベルthを設定しても良い。
さらには、スピーカ出力されるオーディオ信号の音量レベルに応じて、マスキング判定のスレッショルドレベルthを可変するようにしてもよい。
また、オーディオ再生部5からのオーディオ信号SA1をスペクトラム解析/制御部4に供給するようにし、ノイズと同様、オーディオ信号SA1についても帯域毎のレベルを検出し、帯域毎のノイズレベルとオーディオ信号レベルの比較を行って、マスキング発生の有無や、マスキングが発生する帯域を検出するようにしてもよい。
また図1の例では、オーディオ信号SA1はデジタルオーディオ信号としての例で説明したが、オーディオ信号SA1をアナログオーディオ信号とし、アナログオーディオ信号を対象として帯域分割部6、ピッチシフト部7,合成部8等の処理が行われるようにする構成例も考えられる。
なお、以上の各点、即ち多数の倍音成分をピッチシフト信号SA3’に含めるようにすることや、マイクロホン2によるノイズ検出手法、マスキング判定手法、オーディオ信号のデジタル処理/アナログ処理の置き換え可能性などは、繰り返しの記述は避けるが、以下に述べる第2,第3の実施の形態でも同様に考えられるものである。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態のオーディオ装置1の構成を図7に示す。なお、図1と同一部分には同一符号を付し、重複説明は避ける。
この場合、オーディオ再生部5からのオーディオ信号SA1は、そのまま合成部8に供給されるとともに、通過帯域可変フィルタ部11に供給される。
通過帯域可変フィルタ部11は、例えば図8のように、スイッチSW1と通過帯域可変LPF30で構成される。スイッチSW1はスペクトラム解析/制御部4からの制御信号C1によってオン/オフ制御され、また通過帯域可変LPF30のカットオフ周波数は、スペクトラム解析/制御部4からの制御信号C2によって可変設定される。
そして通過帯域可変LPF30の出力が、ピッチシフト処理の対象の帯域のオーディオ信号SA3としてピッチシフト部7に供給される。
ピッチシフト部7では、オーディオ信号SA3について、少なくとも2倍音にピッチシフトしたピッチシフト信号SA3’を生成し、合成部8に出力する。
なお、この図8の構成例の場合、本発明請求項にいう帯域成分抽出部には通過帯域可変フィルタ部11が相当することとなる。
この第2の実施の形態の場合も、スペクトラム解析/制御部4は図4の処理を行えばよい。
マスキングが発生しないと判断した状況で図4の処理がステップF107に進む場合は、スペクトラム解析/制御部4は、ピッチシフト不実行制御として。通過帯域可変フィルタ部11のスイッチSW1をオフとし、またピッチシフト部7に対して制御信号C3によってピッチシフト動作を実行させないようにする。
従ってこの場合は、オーディオ再生部5からのオーディオ信号SA1が、そのまま合成部8からスピーカ出力用のオーディオ信号SA4として(SA4=SA1)出力される。
一方、ロードノイズが大きく、マスキング発生が見込まれる場合として、スペクトラム解析/制御部4の処理がステップF105に進んだ場合は、まずスペクトラム解析結果からピッチシフトを行う対象の帯域を決定し、ステップF106でピッチシフト実行制御を行う。
即ちこの場合は、制御信号C1によって、図2の通過帯域可変フィルタ部11のスイッチSW1をオンとし、また制御信号C2によって通過帯域可変LPF30のカットオフ周波数を指示する。さらにピッチシフト部7に対して制御信号C3によってピッチシフト動作の実行を指示する。
これによってピッチシフト部7には、通過帯域可変LPF30によって抽出された低域のオーディオ信号SA3が供給され、ピッチシフト部7は、オーディオ信号SA3からピッチシフト信号SA3’を生成して合成部8に出力する。
従ってこの場合、合成部8では、図5(c)のオーディオ信号SA1と、図5(f)のピッチシフト信号SA3’が加算合成され、その結果がオーディオ信号SA4としてスピーカ出力に供されることになる。
つまり第1の実施の形態との差異は、マスキング発生が見込まれる帯域も含めて全帯域成分を持つオーディオ信号SA1に、ピッチシフト信号SA3’を加算する形として、スピーカ出力用のオーディオ信号SA4(SA4=SA1+SA3’)を生成する点である。
このような第2の実施の形態によっても、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
[第3の実施の形態]
図9で第3の実施の形態を説明する。図1と同一部分は同一符号を付して説明を省略する。
図9の構成では、図1のスペクトラム解析/制御部4に代えて、低域ノイズ検出/制御部14を設けている。この低域ノイズ検出/制御部14は、簡易なスペクトル解析を行う部位と考えることができ、例えばマイクロホン2で集音されるノイズ音声信号を、或る特定の周波数fxをカットオフ周波数としたLPFによって低域のみ抽出し、その抽出した帯域のノイズレベルを検出する。そしてその検出されたノイズレベルによって、マスキング発生の有無を判定する。
オーディオ再生部5からのオーディオ信号SA1は、合成部8に供給されるとともに、スイッチ12がオンである場合は、LPF13を介してピッチシフト部7に供給される。LPF13は、カットオフ周波数が周波数fxで固定とされている。
この場合、低域ノイズ検出/制御部14は、周波数fx以下の帯域のノイズレベルを検出する。そしてその検出結果により、低域のノイズレベルが小さく、マスキングが発生しないと判断した場合は、制御信号C1によってスイッチ12をオフとする。またピッチシフト部7に対して制御信号C3によってピッチシフト動作を実行させないようにする。
従ってこの場合は、オーディオ再生部5からのオーディオ信号SA1が、そのまま合成部8からスピーカ出力用のオーディオ信号SA4として(SA4=SA1)出力される。
一方、ロードノイズが大きく、低域ノイズレベルが上昇してマスキング発生が見込まれると判定したら、低域ノイズ検出/制御部14は、制御信号C1によってスイッチ12をオンとし、またピッチシフト部7に対して制御信号C3によってピッチシフト動作の実行を指示する。
これによってピッチシフト部7には、LPF13によって抽出された低域のオーディオ信号SA3が供給され、ピッチシフト部7は、オーディオ信号SA3からピッチシフト信号SA3’を生成して合成部8に出力する。
従ってこの場合、合成部8では、オーディオ信号SA1とピッチシフト信号SA3’が加算合成され、その結果がオーディオ信号SA4としてスピーカ出力に供されることになる。
つまりこの第3の実施の形態は、ピッチシフト部7に供給するオーディオ信号SA3の帯域を固定として構成及び処理を簡略化した例である。
例えば低域ノイズ検出/制御部14がレベル検出を行う帯域を100Hz以下、LPF13のカットオフ周波数を100Hzなどと固定とする。これによって100Hz以下の帯域でマスキングが発生する状況では、オーディオ信号SA1における当該帯域をピッチシフトして加算するという手法で、第1,第2の実施の形態と同様の効果を得るようにする。
ピッチシフト処理の対象とする帯域を固定とすることで、実際のノイズ状況に合致した精細な制御はできないが、第1,第2の実施の形態における効果を、より簡易な構成で実現しようとする場合に適している。
以上、第1,第2,第3の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変形例、適用例が想定される。
特に車載用のオーディオ装置としたが、これ以外にも、航空機内、列車内でのオーディオ装置、工場、店舗などに設置するオーディオ装置など、ノイズ環境下で使用されるオーディオシステムとして好適である。
本発明の第1の実施の形態のオーディオ装置のブロック図である。 実施の形態の帯域分割部のブロック図である。 実施の形態のピッチシフト部のブロック図である。 実施の形態のスペクトラム解析/制御部の処理のフローチャートである。 実施の形態の動作イメージの模式的な説明図である。 実施の形態のピッチシフト部のブロック図である。 本発明の第2の実施の形態のオーディオ装置のブロック図である。 実施の形態の通過帯域可変フィルタ部のブロック図である。 本発明の第3の実施の形態のオーディオ装置のブロック図である。 自動車内のノイズ測定結果の説明図である。
符号の説明
1 オーディオ装置、2 マイクロホン、3 マイクアンプ、4 スペクトラム解析/制御部、5 オーディオ再生部、6 帯域分割部、7 ピッチシフト部、8 合成部、9 D/A変換器、10 パワーアンプ、11 通過帯域可変フィルタ部、14 低域ノイズ検出/制御部、15 スピーカ

Claims (7)

  1. オーディオ信号出力音に対しての、環境音によるマスキングの発生が見込まれる周波数帯域を判定して対象周波数帯域とするマスキング帯域判定部と、
    入力されるオーディオ信号から、上記マスキング帯域判定部で判定された対象周波数帯域の信号成分を抽出する帯域成分抽出部と、
    上記帯域成分抽出部で抽出された対象周波数帯域の信号成分のピッチシフトを行い、少なくとも2倍の周波数の信号成分を含むピッチシフト信号を生成するピッチシフト部と、
    上記ピッチシフト部で得られた上記ピッチシフト信号を含むオーディオ信号を、接続されたスピーカに供給するオーディオ信号とする信号出力部と、
    を備えることを特徴とするオーディオ出力装置。
  2. 上記帯域成分抽出部は、上記対象周波数帯域の信号成分と、他の周波数帯域の信号成分とを分離して、上記対象周波数帯域の信号成分を上記ピッチシフト部に供給し、
    上記信号出力部は、上記他の周波数帯域の信号成分と、上記ピッチシフト信号とを合成したオーディオ信号を、スピーカに供給するオーディオ信号とすることを特徴とする請求項1に記載のオーディオ出力装置。
  3. 上記帯域成分抽出部は、入力されたオーディオ信号から、上記対象周波数帯域の信号成分を抽出して上記ピッチシフト部に供給し、
    上記信号出力部は、上記入力されたオーディオ信号と、上記ピッチシフト信号とを合成したオーディオ信号を、スピーカに供給するオーディオ信号とすることを特徴とする請求項1に記載のオーディオ出力装置。
  4. 上記マスキング帯域判定部は、マイクロホンで集音された環境音について周波数解析を行って、各周波数帯域毎の環境音レベルに基づいて、上記対象周波数帯域の判定を行うことを特徴とする請求項1に記載のオーディオ出力装置。
  5. 上記ピッチシフト部は、上記対象周波数帯域の信号成分についての2倍の周波数の信号成分と、さらに他の倍音成分を含む上記ピッチシフト信号を生成することを特徴とする請求項1に記載のオーディオ出力装置。
  6. オーディオ信号出力音に対しての、環境音によるマスキングの発生の有無を判定するマスキング判定部と、
    上記マスキング判定部でマスキング発生有りと判定されることに応じて、入力されるオーディオ信号から、特定周波数帯域の信号成分を抽出する帯域成分抽出部と、
    上記帯域成分抽出部で抽出された対象周波数帯域の信号成分のピッチシフトを行い、少なくとも2倍の周波数の信号成分を含むピッチシフト信号を生成するピッチシフト部と、
    上記ピッチシフト部で得られた上記ピッチシフト信号を含むオーディオ信号を、接続されたスピーカに供給するオーディオ信号とする信号出力部と、
    を備えることを特徴とするオーディオ出力装置。
  7. オーディオ信号出力音に対しての、環境音によるマスキングの発生が見込まれる周波数帯域を判定して対象周波数帯域とするステップと、
    入力されるオーディオ信号から、上記対象周波数帯域の信号成分を抽出するステップと、
    抽出された対象周波数帯域の信号成分のピッチシフトを行い、少なくとも2倍の周波数の信号成分を含むピッチシフト信号を生成するステップと、
    上記ピッチシフト信号を含むオーディオ信号を、接続されたスピーカに供給するオーディオ信号として出力するステップと、
    を備えることを特徴とするオーディオ出力方法。
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