以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図12には、本発明の実施例1である携帯電子機器(電子機器)の概略構成を示している。本実施例の携帯電子機器100は、第1の本体部30と、ヒンジ部42を中心として該第1の本体部30に対して開閉可能に取り付けられた第2の本体部40とを有する。
第1の本体部30は、プラスチック等の樹脂製ケースである筐体10内に、発熱体1、基板2および放熱板4を収容して構成されている。また、筐体10には、バッテリ16が着脱可能に装着されている。第1の本体部30において、筐体10における前側の壁状部分、すなわち第1の壁部である筐体前壁10aには、キーパッドその他の操作部材が配置された操作部12が設けられている。なお、筐体前壁10aは、開口のない壁である必要はなく、実際には操作部材を露出させるための開口が複数形成されている。
第2の本体部40において、プラスチック等の樹脂製、またはアルミなどの金属製のケースである筐体の前側の壁状部分には、液晶素子や自発光素子により構成されるディスプレイ41が設けられている。該筐体内には、ディスプレイ41を駆動するための回路(図示せず)が内蔵されている。
発熱体1は、LSI,CPU等の演算処理装置により代表される。但し、本発明においては、発熱するものであれば、演算処理装置以外の電子部品も発熱体に含む。以上の携帯電子機器の基本構成は、以下に説明する実施例においても同様である。
図1Aには、第1の本体部30を構成する筐体10内の構造を拡大して示している。この図では、筐体前壁10aを下にして示している。このことは以下の実施例でも同様である。
発熱体1は、プリント基板(以下、単に基板という)2における筐体前壁10a側の面に実装されている。発熱体1および基板2は、筐体前壁10に対してほぼ平行となるように配置され、基板2は、筐体10内の概ね全体に広がる面内方向サイズを有する。なお、図示しないが、基板2には、発熱体1以外の各種電子部品も実装されている。
放熱板4は、発熱体1と筐体前壁10aとの間に基板2とほぼ平行になるように配置され、発熱体1に接触している。放熱板4は、発熱体1で発生した熱を拡散させて放熱し、該発熱体1を冷却する。放熱板4は、一般にアルミニウム(熱伝導率200〜300W/m・K)や銅(熱伝導率300〜400W/m・K)等、熱伝導率が高い金属材料により形成されている。
但し、放熱板4の材料としてグラファイトシート(熱伝導率200〜600W/m・K)を用いると、金属材料を用いる場合に比べて軽量化することができる。なお、図示していないが、放熱板4に、放熱表面積を増加させるためのフィン形状等を形成してもよい。
基板2の左右両端部にはネジ3が取り付けられており、これらのネジ3は筐体前壁10aに形成されたネジ穴に締め込まれて固定されている。そして、本実施例では、放熱板4と筐体前壁10aとの間に支持台5を配置し、これにより放熱板4と筐体前壁10aとの間に所定の厚みを有する空気層6を形成している。すなわち、本実施例では、支持台5(空気層6)、放熱板4、発熱体1および基板2が筐体前壁10a側からこの順で筐体10内に配置されている。
支持台5は、基板2および発熱体1を介してネジ3による締め付け力を受ける放熱板4と筐体前壁10aとの間に挟み込まれて固定されている。言い換えれば、支持台5は、該締め付け力に抗して放熱板4を筐体前壁10aから離間させ、所定の厚みを有する空気層6を確保する機能を有する。なお、支持台5を筐体前壁10a又は放熱板4に接着又はテープにより固定してもよい。
放熱板4は、放熱効率をできるだけ上げるために、基板2に対してほぼ同程度の面内方向サイズを有するように(但し、ネジ3との干渉を避けられる程度に小さく)形成されている。
ここで、筐体10内の構造を、基板2、発熱体1および放熱板4が重なっている方向のうち支持台5側から見たときの平面図(図1A中にGで示す方向から見た図)を図2に示す。図2において、1′は筐体前壁10aから放熱板4までの間でG方向から見たときに発熱体1に重なる領域、つまりはG方向から放熱板4を素通しで見たときに発熱体1が存在する領域を示している。以下この領域1′を発熱体配置領域という。
そして、支持台5は、発熱体配置領域1′よりも外側に配置されている。本実施例では、発熱体配置領域1′外において該領域1′を挟んで離間配置された2つの支持台5を有する。各支持台5は立方体形状又は直方体形状(板形状を含む)を有する。なお、本実施例では、2つの支持台5を設ける場合について説明するが、本発明において支持台の数はこれに限定されず、3つ以上の支持台を発熱体配置領域外に互いに離間させて配置してもよい。
また、図3に示すように、支持台5を矩形枠状に形成し、発熱体配置領域1′よりも外側に配置してもよい。すなわち、支持台5を、発熱体配置領域1′を囲むように配置してもよい。
なお、図2および図3に示した支持台5の形状および配置は例にすぎず、本発明における支持台の形状および配置は、放熱板4と筐体前壁10aとの間に空気層6を確保できれば、どのようなものであってもよい。但し、上述したように支持台5を発熱体配置領域1′外に配置することで、発熱体1から放熱板4に伝わった熱が支持台5を介して発熱体配置領域1′に伝わりにくくなるようにすることができる。
さらに、支持台5は、一般的に用いられる熱伝導率が低い材料、例えば図4Aに示す繊維系材料、図4Bに示す発泡系材料又は図4Cに示す積層型材料により形成される。繊維系材料としては、例えばグラスウール(熱伝導率0.034W/m・K)がある。また、発泡系材料としては、例えば押出発泡ポリスチレン(熱伝導率0.038W/m・K)、発泡ポリエチレン(熱伝導率0.035W/m・K)がある。さらに、積層型材料としては、例えば図4Cに示すように、ウレタン等の弾性材料5bの間に一般的な断熱材料5aを挟んだものがある。
このように、プラスチックや金属に比べて熱伝導率が低い材料を用いて支持台5を形成するのが好ましい。これにより、発熱体1から放熱板4に伝わった熱が支持台5を介して筐体前壁10aに伝わりにくくなるようにすることができる。
なお、支持台5を、図4Cに示した弾性材料の間に断熱材料を挟んだ積層型材料や他の弾性を有する材料を用いて形成することにより、図1B中に点線矢印Jで示すように、該弾性部材の弾性力によって放熱板4と発熱体1とをより強く圧接させることができる。これにより、発熱体1から放熱板4への熱抵抗を減少させて放熱板4による発熱体1の冷却効果を高めることができる。
空気層6を形成する空気は、60〜90℃では、熱伝導率が0.026W/m・Kであり、一般的な断熱部材(熱伝導率0.026W/m・K以上)以下の熱伝導率を有する。従来のように放熱板と筐体との間に断熱部材を配置し、該断熱部材を先に説明した発熱体配置領域に接触させると、断熱部材によって遮断できなかった熱が断熱部材を介して直に筐体に伝わり、筐体における発熱体配置領域にその周辺に比べて極めて高い温度のヒートスポットが形成される。しかし、本実施例のように、放熱板4と筐体前壁10aとの間に空気層6を形成することにより、断熱部材を筐体に接触させて配置する場合に比べて筐体に熱が伝わりにくくなり、より高い断熱効果が得られる。したがって、筐体10におけるヒートスポットの形成を回避することができる。
しかも、放熱板4と同等の大きなサイズの断熱部材ではなく、小さなサイズの支持台5によって空気層6を設けることで、携帯電子機器100の軽量化を図ることもできる。
また、放熱板4は筐体10と接触しておらず、空気層6(の外周全体)が筐体10内の空気層6以外の空間に開放されている。このため、放熱板4から空気層6に伝わった熱が筐体10内における該空気層6以外の空間に拡散する。これにより、筐体前壁10aにおけるヒートスポットの形成をより効果的に回避することができる。
ここで、図14(A),(B)および図15(A),(B)にはそれぞれ、支持台により放熱板と筐体との間に空気層を形成する場合において、支持台の配置および形状と筐体の温度との関係を調べるための実験内容とその結果を示す。
本実験では、図14(A)に示すように、筐体310(図1Aの筐体前壁10aに相当する)側から順に、繊維系材料(0.034W/m・K)により形成した支持台305、銅板(385W/m・K)からなる放熱板304、10mm四方の矩形の発熱体301および基板302を配置した。
図14(B)に示すパターン1では、図2および図3と同じ平面視において、12mm四方の矩形形状を有する支持台を発熱体配置領域301′と重なるように配置し、A点〜F点での筐体310の温度を測定した。A点は発熱体配置領域301′の中央、B点はA点から支持台の対角方向に約14mm離れた点、C,D点はB点から同対角方向に10mmおよび20mm離れた点である。また、E点はA点から支持台の対向する2辺に平行な方向に10mm離れた点、F点はE点から同平行方向にさらに10mm離れた点である。
なお、パターン1は、放熱板と筐体との間に断熱部材を配置し、該断熱部材をA点を含めて筐体に接触させた場合と同等である。
パターン2では、6mm四方の矩形形状を有する4つの支持台を、発熱体配置領域301′外において該領域301′を囲む20mm四方の矩形の角部に配置し、A点〜F点での筐体310の温度を測定した。A点〜F点の位置はパターン1と同じである。
パターン3では、20mm四方の矩形枠形状を有する支持台を、発熱体配置領域301′外において該領域301′を囲むように配置し、A点〜F点での筐体310の温度を測定した。A点〜F点の位置はパターン1と同じである。なお、パターン1〜3において、支持台および空気層の厚さ(支持台305、放熱板304、発熱体301および基板302の重なり方向での高さ)は同じとした。
図15(A)には、周囲温度35℃で測定した上記パターン1〜3におけるA点からF点での温度(℃)を示す。また、図15(A)には、発熱体301の温度(℃)、発熱体301の発熱量(消費電力)(W)および発熱体301とA点間での熱抵抗値(℃/W)も併せて示している。さらに、図15(B)には、パターン1〜3における発熱体301の温度とA点からC点までの温度変化を示す。
パターン2,3では、A点での筐体温度が、パターン1と比較して約5℃低くなった。また、パターン2,3でのB点では、支持台305と接触するためパターン1でのB点よりも温度が高くなった。同様に、パターン3でのE点でも、支持台305と接触するためパターン1でのB点よりも温度が高くなった。但し、パターン2,3でのB点およびパターン3でのE点の温度は、パターン2,3でのA点よりは低い温度であった。
発熱体301とA点間での熱抵抗値は、パターン2ではパターン1に比べて約1.56倍、パターン3ではパターン1に比べて約1.73倍高くなった。
この実験結果から分かるように、パターン2,3の支持台の配置方法を採ることにより、筐体における支持台との接触位置の温度は接触していない場合に比べて高くなるものの、パターン1においてヒートスポットとなっていたA点での温度が下がり、該ヒートスポットを解消することができる。つまり、A点からF点まで含む広い範囲でヒートスポットの形成を回避することができ、パターン1の場合のようにヒートスポットに触れた使用者に不快感を与えることを防止することができる。
図5には、本発明の実施例2である携帯電子機器における第1の本体部を構成する筐体10内の構造を示している。本実施例において、実施例1と共通する構成要素には、実施例1と同符号を付して説明に代える。
本実施例では、放熱板4′のうち発熱体1に重なる部分4a′をその周囲の部分(他の部分)4b′よりも基板2側とは反対側に突出させた形状を有する。具体的には、放熱板4′における発熱体1に接触する部分が凸形状となり、その反対側が凹形状になるように形成している。
放熱板4′をこのような形状に形成することにより、放熱板4′が弾性を有する材料で形成されている場合には、該放熱板4′に基板2の方向に発生する弾性力Kによって、突出部分4a′と発熱体1との密着性を高めることができる。これにより、発熱体1から放熱板4′への熱抵抗を小さくすることができ、発熱体1をより効率良く冷却することができる。
さらに、本実施例では、放熱板4′のうち周囲部分4b′と基板2との間に、実施例1の場合に比べて厚さの大きな空間を形成することができる。そして、この空間を利用して、基板2における放熱板4′側の面(発熱体1の実装面)に他の大型の電子部品(IC等)20を実装することができる。これにより、例えば該電子部品20を基板2における放熱板4′とは反対側の面に実装する場合に比べて、筐体10(つまりは携帯電子機器)を薄型化および小型化することができる。
図6には、本発明の実施例3である携帯電子機器における第1の本体部を構成する筐体10内の構造を示している。本実施例において、実施例1と共通する構成要素には、実施例1と同符号を付して説明に代える。
本実施例では、放熱板4における筐体前壁10a側の面に、該放熱板4とほぼ同じ面内方向サイズの板形状の断熱部材(断熱板)7を接触させ、該断熱部材7と筐体前壁10aとの間に、支持台5を配置して空気層6を設けている。すなわち、本実施例では、支持台5(空気層6)、断熱部材7、放熱板4、発熱体1および基板2が筐体前壁10a側からこの順で筐体10内に配置されており、断熱部材7と空気層6とにより放熱板4と筐体前壁10aとの間に断熱層8を形成している。本実施例は、発熱体1の発熱量が、実施例1の発熱体に比べて大きい場合に特に有効である。
断熱部材7としては、空気層6の空気(0.024〜0.026W/m・K)の熱膨張率以上の熱膨張率(0.026W/m・K以上)を有する一般的な断熱材料、例えば発泡ウレタンやシリコンフォームを用いている。本実施例の場合も、断熱部材を筐体に接触させる場合に比べて高い断熱効果が得られ、筐体におけるヒートスポットの形成を回避することができる。つまり、一般的な断熱部材を用いた場合でも、空気層6によって高い断熱効果が得られるため、ヒートスポットが形成されることを抑制できる。
ここで、従来のように断熱部材を筐体に接触させる場合において、断熱部材の厚さを厚くすることによってもヒートスポットの形成を回避することができると考えられる。しかし、本実施例のように空気層を設けるようにすれば、ヒートスポットの形成を回避するために必要な空気層の厚さは、断熱部材の厚さ増加分よりも薄くて済む。このため、空気層を設けることにより、断熱部材の厚さを増加させる場合に比べて、基板2から筐体前壁10aまでの厚さを薄くすることができる。したがって、筐体前壁10aにおけるヒートスポットの形成を回避しつつ筐体10(つまりは携帯電子機器)のコンパクト化を図ることができる。
また、放熱板4および断熱部材7は筐体10と接触しておらず、空気層6は、筐体10内の空気層6以外の空間に開放されている。このため、断熱部材7から空気層6に伝わった熱が空気層6内や筐体10内における該空気層6以外の空間に拡散し、筐体前壁10aにおけるヒートスポットの形成をより効果的に回避することができる。
ここで、断熱部材を厚くして筐体に接触させた場合(空気層を設けない場合)と空気層を設けた場合での筐体の温度を比較するために行った実験結果を、図16(B)に示す。
図16(A)には、断熱部材407と筐体前壁410aとの間に空気層406を設けた実験装置を示す。空気層406を設けない場合は、該空気層406の部分も全て断熱部材407とした実験装置を用いた。なお、図16(B)に示すように、空気層406を設けない場合の断熱部材407の厚さは1.5mm、空気層406を設けた場合の断熱部材407および空気層406の厚さはそれぞれ、1.0mmおよび0.5mmである。また、筐体410は、110×260×14mmの外形サイズで、壁部分の厚さが1mmのものを用いた。また、発熱体401の発熱量は3.5Wで、放熱板404として50×100mmの銅板(385W/m・K)を、断熱部材407として熱膨張率が0.026W/m・Kのものを用いた。
双方の場合の発熱体401、放熱板404、断熱部材407、筐体410(筐体前壁410a)の内面および外面における発熱体配置領域の中央I,Hの温度は、図16(B)に示す通りである。
図16(B)から分かるように、空気層を設けず断熱部材を1.5mmと厚くした場合に比べて、断熱層408として同じ厚み内で断熱部材を1.0mm、空気層406を0.5mmとした場合の方が、筐体外面の温度が1.2℃低くなった。これにより、空気層の断熱部材よりも優れた断熱効果、つまりはヒートスポット形成の回避効果を確認することができた。さらに言えば、空気層6(支持台5)の厚さを断熱部材7の厚さの半分以上とすることで、断熱部材を同じ厚さ厚くする場合に比べて筐体外面の温度を低くする効果を有することが分かった。
また、空気層を設けない場合において、筐体外面の温度を空気層406を設けた場合と同等まで下げるためには、断熱部材を1.5mmよりもさらに厚くする必要があることが推測できた。
また、図17には、同じ厚さの断熱部材を用いて空気層を設けない場合と空気層を設けた場合について筐体の温度を比較するために行った実験結果を示す。本実験では、断熱部材の厚さは1.0mm、発熱体の発熱量は5W、放熱板としてグラファイトシート(240W/m・K)を用いた。また、この実験では、断熱部材として、熱膨張率が空気よりも低い(0.005W/m・K)ものを用いた。これ以外の実験条件は、図16(A),(B)の実験と同じである。
図17から分かるように、空気層を設けた場合の方が、空気層を設けない場合に比べて筐体外面の温度が3.6℃低くなった。これにより、空気層を設けることによって、空気層を設けない場合に比べて筐体の温度を下げること(ヒートスポットの形成をより確実に回避すること)ができることが分かった。
なお、本実施例においては、断熱部材7と支持台5とを別部材として構成した場合について説明したが、断熱部材7の一部を筐体前壁10a側に突出する形状に形成して支持台として用いるようにしてもよい。この場合、断熱部材のうち放熱板に沿って延びる板状の部分が請求項1にいう「断熱部材」に相当し、支持台形状の部分が同「支持台」に相当する。このことは、後述する断熱部材を用いる他の実施例でも同様である。
図7には、本発明の実施例4である携帯電子機器における第1の本体部を構成する筐体10内の構造を示している。本実施例において、実施例1と共通する構成要素には、実施例1と同符号を付して説明に代える。
本実施例は、実施例1における放熱板4の筐体前壁10a側の面のうち、発熱体1と放熱板4とが重なる方向から見て、該発熱体1にほぼ重なる領域にのみ断熱部材7′を設けたものに相当する。断熱部材7′は、発熱体1より若干大きな面内方向サイズを有する。
放熱板4のうち断熱部材7′が重なっていない領域および断熱部材7′と筐体前壁10aとの間には空気層6が形成されている。本実施例も、実施例1に比べて発熱体1の発熱量が大きい場合に特に有効である。
また、実施例1と同様に、空気層6は、筐体10内の空気層6以外の空間に開放されている。支持台5は、放熱板4のうち断熱部材7′が重なっていない領域と筐体前壁10aとの間に配置されている。
本実施例によれば、発熱体1にほぼ重なる領域に設けた断熱部材7′と空気層6との高い断熱効果によって、筐体前壁10aにヒートスポットが形成されることを回避することができる。しかも、断熱部材7′のサイズを実施例2のように放熱板4とほぼ同サイズとする場合に比べて、携帯電子機器を軽量化することができる。
図8には、本発明の実施例5である携帯電子機器における第1の本体部を構成する筐体10内の構造を示している。本実施例において、実施例3と共通する構成要素には、実施例3と同符号を付して説明に代える。
本実施例では、実施例3の構成において、実施例2と同様に放熱板4′のうち発熱体1に重なる部分4a′をその周囲の部分(他の部分)4b′よりも筐体前壁10a側とは反対側に突出させた形状を有する。そして、放熱板4′が弾性を有する材料で形成されている場合には、その弾性力によって該突出部分4a′と発熱体1との密着性を高め、発熱体1から放熱板4′への熱抵抗を小さくすることができる。したがって、発熱体1をより効率良く冷却することができる。
また、本実施例でも、放熱板4′のうち周囲部分4b′と基板2との間に、実施例1の場合に比べて厚さの大きな空間を形成することができるので、この空間を利用して、基板2における放熱板4′側の面(発熱体1の実装面)に他の大型の電子部品(IC等)20を実装することができる。これにより、例えば該電子部品20を基板2における放熱板4′とは反対側の面に実装する場合に比べて、筐体10(つまりは携帯電子機器)を薄型化および小型化することができる。
図9には、本発明の実施例6である携帯電子機器における第1の本体部を構成する筐体10内の構造を示している。本実施例において、実施例5と共通する構成要素には、実施例5と同符号を付して説明に代える。
本実施例では、放熱板4′の筐体前壁10a側の面のうち、発熱体1に接触する(重なる)突出部分4a′の反対側の領域に、発熱体1よりも若干大きな面内方向サイズを有する断熱部材7″を設けている。
これにより、実施例5にて説明した効果に加え、放熱板4′における発熱体1にほぼ重なる領域に設けた断熱部材7″と空気層6との高い断熱効果によって、筐体前壁10aにおける発熱体配置領域(図2,3参照)にヒートスポットが形成されることをより確実に回避することができる。しかも、断熱部材7″のサイズを実施例4のように放熱板4′とほぼ同サイズとする場合に比べて、携帯電子機器を軽量化することができる。
図10には、本発明の実施例7である携帯電子機器における第1の本体部を構成する筐体10内の構造を示している。また、本実施例において、実施例3と共通する構成要素には、実施例3と同符号を付して説明に代える。
本実施例では、実施例3の構成に加え、発熱体1と放熱板4との間に、発熱体1よりも大きな面内方向サイズを有するヒートスプレッダ9を配置している。このヒートスプレッダ9は、熱伝導率の高い金属で作られ、発熱体1から受けた熱を面内方向に高い熱伝導率で伝達する。このため、放熱板4に直接、発熱体1を接触させる場合よりも広い面積で発熱体1からの熱を放熱板4に伝えることができる。したがって、放熱板4の面内方向での伝熱量を増加させることができ、放熱板4により効率良く放熱させることができる。
さらに、ヒートスプレッダ9が追加されたことにより、実施例3に比べて、発熱体1から筐体前壁10aに至る熱伝導経路が長くなるため、筐体前壁10aにおける発熱体配置領域1′(図2,3参照)の温度をより低下させることができる。
本実施例は、特に、発熱体1が小型である場合(放熱板4との接触面積が小さい場合)や、グラファイトシート等、厚さ方向の熱伝導率が低い放熱板4を用いる場合に有効である。
図14には、本発明の実施例8である携帯電子機器100′の概略構成を示している。本実施例において、実施例1(図12)にて説明した携帯電子機器100と同じ構成要素には、実施例1と同符号を付して説明に代える。
本実施例では、第1の本体部30を構成する筐体10内には、実施例1にて説明した基板2とは別の放熱板4が配置されておらず、基板2′を窒化アルミニウム等、熱伝導率の高い材料によって製作したり、放熱に適した構造を採用したりすることにより、基板2′自体を放熱板として機能させる。
図11には、筐体10内の構造を拡大して示している。図中において、基板2′はその左右両端部においてネジ3により筐体前壁10aに固定されている。基板2′における筐体前壁10aとは反対側の面には、発熱体1が実装されている。
そして、基板2′と筐体前壁10aとの間には支持台5が配置され、これにより、基板2′と筐体前壁10aとの間に所定の厚さを有する空気層6が形成されている。すなわち、本実施例では、支持台5(空気層6)、基板2および発熱体1が、筐体前壁10a側からこの順で筐体10内に配置されている。
本実施例でも、支持台5は、ネジ3による締め付け力を受ける基板2′と筐体前壁10aとの間に挟み込まれて固定されており、締め付け力に抗して基板2′を筐体前壁10aから離間させて所定の厚みを有する空気層6を確保する機能を有する。なお、支持台5を筐体前壁10a又は基板2′に接着又はテープにより固定してもよい。
支持台5は、図11においてGで示す、発熱体1および基板2′が重なっている方向のうち支持台5側から見たときに、実施例1で説明した発熱体配置領域よりも外側に配置されている。具体的には、例えば図2および図3で示すような形状を有する支持台5が、同図に示した発熱体配置領域1′外に配置されている。
支持台5は、実施例1でも説明したように、繊維系材料(図4A)、発泡系材料(図4B)、又は積層型材料(図4C)により形成するとよい。これにより、発熱体1から基板2′に伝わった熱が支持台5を介して筐体前壁10aに伝わりにくくなるようにすることができる。
そして、本実施例においても、基板2′と筐体前壁10aとの間に空気層6を形成することにより、基板2′と筐体前壁10aとの間に配置した断熱部材を筐体前壁10aに接触させる場合に比べて、筐体10に熱が伝わりにくくなる。したがって、筐体前壁10aにヒートスポットが形成されることを回避することができる。
しかも、基板2′と同等の大きなサイズの断熱部材ではなく、小さなサイズの支持台5によって空気層6を設けることで、携帯電子機器100′の軽量化を図ることもできる。
また、基板2′は筐体10に接触しておらず、空気層6は筐体10内の空気層6以外の空間に開放されている。これにより、基板2′から空気層6内の空気に伝わった熱を筐体10内の空間に拡散させることができ、ヒートスポットの形成をより効果的に回避することができる。
さらに本実施例では、基板2′を放熱板として機能させることで、基板2′とは別の放熱板を不要とするため、携帯電子機器100′の薄型化、小型化および軽量化に有効である。
図18には、本発明の実施例9である携帯電子機器100″の概略構成を示している。本実施例において、実施例1(図12)にて説明した携帯電子機器100と同じ構成要素には、実施例1と同符号を付して説明に代える。
実施例1では、発熱体1で発生した熱によって第1の本体部30(筐体10)における操作部12が設けられた側の壁部分(筐体前壁10a)にヒートスポットが形成されないようにするための構成について説明した。
これに対し、本実施例では、発熱体1で発生した熱によって筐体10におけるバッテリ16が装着される側の壁部分である筐体後壁10bにヒートスポットが形成されないようにしている。具体的には、支持台5(空気層6)、放熱板4、発熱体1および基板2が筐体背面10a側からこの順で筐体10内に配置されている。
筐体後壁10bにヒートスポットが形成されると、バッテリ16が加熱され、さらにバッテリ16を覆うカバー(筐体の一部)の温度が上昇する。このカバーの部分は、使用者が携帯電子機器100″を持つ際に手で触れることが多いので、この部分の温度が高いと使用者に不快感を与えるおそれがある。しかし、本実施例によって筐体後壁10bにヒートスポットが形成されることを回避することで、バッテリ16およびこれを覆うカバーの温度上昇を抑えることができる。
以上説明したように、上記各実施例によれば、空気層の断熱作用によって筐体の第1の壁部に熱が伝達されにくくなるため、発熱量が大きな発熱部材を用いる場合でも、第1の壁部でのヒートスポットの形成を抑制することができる。
なお、ここまで本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、様々な変形及び変更が可能である。例えば、放熱板、断熱部材および支持台の材料は上記実施例にて説明したものに限られない。また、本発明は、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ(PC)、デジタルカメラ等の電子機器に広く適用することができる。