以下、図面に基づいて、本発明にかかる冷凍装置の実施形態について説明する。
(1)空気調和装置の基本構成
図1は、本発明にかかる冷凍装置の一実施形態としての空気調和装置1の概略構成図である。空気調和装置1は、冷房運転が可能となるように構成された冷媒回路10を有している。そして、この冷媒回路10には、超臨界域で作動する冷媒(ここでは、二酸化炭素)が封入されており、二段圧縮式冷凍サイクルが行われるようになっている。
空気調和装置1の冷媒回路10は、主として、圧縮機構2と、放熱器としての熱源側熱交換器4と、膨張機構5と、蒸発器としての利用側熱交換器6と、中間冷却器7とを有している。
圧縮機構2は、本実施形態において、2つの圧縮要素で冷媒を二段圧縮する圧縮機21から構成されている。圧縮機21は、ケーシング21a内に、圧縮機駆動モータ21bと、駆動軸21cと、圧縮要素2c、2dとが収容された密閉式構造となっている。圧縮機駆動モータ21bは、駆動軸21cに連結されている。そして、この駆動軸21cは、2つの圧縮要素2c、2dに連結されている。すなわち、圧縮機21は、2つの圧縮要素2c、2dが単一の駆動軸21cに連結されており、2つの圧縮要素2c、2dがともに圧縮機駆動モータ21bによって回転駆動される、いわゆる一軸二段圧縮構造となっている。圧縮要素2c、2dは、本実施形態において、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素である。そして、圧縮機21は、吸入管2aから冷媒を吸入し、この吸入された冷媒を圧縮要素2cによって圧縮した後に中間冷媒管8に吐出し、中間冷媒管8に吐出された冷媒を圧縮要素2dに吸入させて冷媒をさらに圧縮した後に吐出管2bに吐出するように構成されている。ここで、中間冷媒管8は、圧縮要素2dの前段側に接続された圧縮要素2cから吐出された冷媒を、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入させるための冷媒管である。また、吐出管2bは、圧縮機構2から吐出された冷媒を熱源側熱交換器4に送るための冷媒管である。
このように、圧縮機構2は、本実施形態において、2つの圧縮要素2c、2dを有しており、これらの圧縮要素2c、2dのうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮するように構成されている。また、冷媒回路10には、圧縮機構2(ここでは、圧縮機21)の圧縮要素2c、2d等の摺動部を潤滑するための冷凍機油として、ポリアルキレングリコール(以下、PAGとする)が冷媒とともに封入されている。このPAGは、本実施形態のように、冷媒として二酸化炭素を使用することで冷凍サイクルにおける高圧が超臨界域になるような場合であっても、高粘性の特性を有しており、圧縮要素2c、2d等の摺動部に対して良好な潤滑性を示すものである。
そして、この冷凍機油の大部分は、圧縮機21のケーシング21a内に溜まっているが、冷凍機油の一部は、圧縮機構2(ここでは、圧縮機21)の前段側の圧縮要素2cから冷媒に同伴して中間冷媒管8に吐出されたり、後段側の圧縮要素2dから冷媒に同伴して吐出管2bに吐出されることで、圧縮機構2(ここでは、圧縮機21のケーシング21a)の外部に流出することになる。
熱源側熱交換器4は、圧縮機構2から吐出された冷媒の冷却器として機能する熱交換器である。熱源側熱交換器4は、その一端が圧縮機構2に接続されており、その他端が膨張機構5に接続されている。尚、ここでは図示しないが、熱源側熱交換器4には、熱源側熱交換器4を流れる冷媒と熱交換を行う冷却源としての空気が供給されるようになっている。
膨張機構5は、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された冷媒を減圧する機構であり、本実施形態において、電動膨張弁が使用されている。膨張機構5は、その一端が熱源側熱交換器4に接続され、その他端が利用側熱交換器6に接続されている。また、本実施形態において、膨張機構5は、放熱器としての熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒を蒸発器としての利用側熱交換器6に送る前に減圧する。
利用側熱交換器6は、膨張機構5において減圧された冷媒の加熱器として機能する熱交換器である。利用側熱交換器6は、その一端が膨張機構5に接続されており、その他端が圧縮機構2に接続されている。尚、ここでは図示しないが、利用側熱交換器6には、利用側熱交換器6を流れる冷媒と熱交換を行う加熱源としての空気が供給されるようになっている。
中間冷却器7は、中間冷媒管8に設けられており、前段側の圧縮要素2cから吐出されて圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却器として機能する熱交換器である。尚、ここでは図示しないが、中間冷却器7には、中間冷却器7を流れる冷媒と熱交換を行う冷却源としての空気が供給されるようになっている。このように、中間冷却器7は、冷媒回路10を循環する冷媒を用いたものではないという意味で、外部熱源を用いた冷却器ということができる。
さらに、空気調和装置1は、ここでは図示しないが、圧縮機構2、膨張機構5等の空気調和装置1を構成する各部の動作を制御する制御部を有している。
(2)空気調和装置の基本動作
次に、本実施形態の空気調和装置1の基本動作について、図1〜図3を用いて説明する。ここで、図2は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された圧力−エンタルピ線図であり、図3は、冷房運転時の冷凍サイクルが図示された温度−エントロピ線図である。尚、以下の冷房運転における運転制御は、上述の制御部(図示せず)によって行われる。また、以下の説明において、「高圧」とは、冷凍サイクルにおける高圧(すなわち、図2、3の点D、D’、Eにおける圧力)を意味し、「低圧」とは、冷凍サイクルにおける低圧(すなわち、図2、3の点A、Fにおける圧力)を意味し、「中間圧」とは、冷凍サイクルにおける中間圧(すなわち、図2、3の点B1、C1における圧力)を意味している。
圧縮機構2を駆動すると、低圧の冷媒(図1〜図3の点A参照)は、吸入管2aから圧縮機構2に吸入され、まず、圧縮要素2cによって中間圧力まで圧縮された後に、中間冷媒管8に吐出される(図1〜図3の点B1参照)。この前段側の圧縮要素2cから吐出された中間圧の冷媒は、中間冷却器7において、冷却源としての空気と熱交換を行うことで冷却される(図1〜図3の点C1参照)。この中間冷却器7において冷却された冷媒は、次に、圧縮要素2cの後段側に接続された圧縮要素2dに吸入されてさらに圧縮されて、圧縮機構2から吐出管2bに吐出される(図1〜図3の点D参照)。ここで、圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、圧縮要素2c、2dによる二段圧縮動作によって、臨界圧力(すなわち、図2に示される臨界点CPにおける臨界圧力Pcp)を超える圧力まで圧縮されている。そして、この圧縮機構2から吐出された高圧の冷媒は、冷媒の冷却器として機能する熱源側熱交換器4(放熱器)に送られる。そして、熱源側熱交換器4に送られた高圧の冷媒は、熱源側熱交換器4において、冷却源としての空気と熱交換を行って冷却される(図1〜図3の点E参照)。そして、熱源側熱交換器4において冷却された高圧の冷媒は、膨張機構5によって減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となり、冷媒の加熱器として機能する利用側熱交換器6(蒸発器)に送られる(図1〜図3の点F参照)。そして、利用側熱交換器6に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、利用側熱交換器6において、加熱源としての空気と熱交換を行って加熱されて、蒸発することになる(図1〜図3の点A参照)。そして、この利用側熱交換器6において加熱された低圧の冷媒は、再び、圧縮機構2に吸入される。このようにして、冷房運転が行われる。
このように、空気調和装置1では、圧縮要素2cから吐出された冷媒を圧縮要素2dに吸入させるための中間冷媒管8に中間冷却器7を設けているため、中間冷却器7を設けなかった場合(この場合には、図2、図3において、点A→点B1→点D’→点E→点Fの順で冷凍サイクルが行われる)に比べて、圧縮要素2cの後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の温度が低下し(図3の点B1、C1参照)、圧縮要素2dから吐出される冷媒の温度も低下することになる(図3の点D、D’参照)。このため、この空気調和装置1では、高圧の冷媒の冷却器として機能する熱源側熱交換器4において、中間冷却器7を設けなかった場合に比べて、冷却源としての水や空気と冷媒との温度差を小さくすることが可能になり、図3の点B1、D’、D、C1を結ぶことによって囲まれる面積に相当する分の放熱ロスを小さくできることから、運転効率を向上させることができる。
しかし、前段側の圧縮要素2cから吐出される中間圧の冷媒には、圧縮機構2内(ここでは、圧縮機21のケーシング21a内)の冷凍機油が同伴するため、圧縮機構2内の冷凍機油は、中間冷媒管8を通じて、圧縮機構2外(ここでは、圧縮機21のケーシング21a外)に持ち出されることになる。そして、本実施形態のように、中間冷媒管8に中間冷却器7を設けた場合には、中間冷却器7内に冷凍機油が溜まり込んでしまい、圧縮機構2(ここでは、後段側の圧縮要素2d)に戻りにくくなってしまうため、圧縮機構2(ここでは、圧縮機21)の油切れが生じるおそれがある。
そこで、本実施形態の空気調和装置1では、中間冷却器7に対して、後述のような構造的な工夫を施すことによって、圧縮機構2の油切れ等の問題を解決するようにしている。
(3)中間冷却器、熱源側熱交換器、及び、利用側熱交換器の構造
次に、本実施形態の空気調和装置1における中間冷却器7、熱源側熱交換器4、及び、利用側熱交換器6の構造について、図4〜図10を用いて説明する。ここで、図4は、本実施形態にかかる中間冷却器7、放熱器としての熱源側熱交換器4、又は、蒸発器としての利用側熱交換器6の概略構造を示す斜視図であり、図5は、溝付管の横断面図であり、図6は、図5のA部の拡大図であり、図7は、溝付管の縦断面図であり、図8は、蒸発器としての利用側熱交換器6を管端側から見た側面図であり、図9は、本実施形態にかかる中間冷却器7を管端側から見た側面図であり、図10は、本実施形態にかかる放熱器としての熱源側熱交換器4を管端側から見た側面図である。
本実施形態において、中間冷却器7、熱源側熱交換器4、及び、利用側熱交換器6は、いずれもフィンアンドチューブ型の熱交換器が使用されている。より具体的には、中間冷却器7、熱源側熱交換器4、及び、利用側熱交換器6は、それぞれ、主として、複数の伝熱フィン71からなる伝熱フィン群72と、複数の伝熱管75及びU字管76からなる伝熱管群79とを有している。ここで、中間冷却器7の伝熱管群79を中間冷却用伝熱管群とし、熱源側熱交換器4の伝熱管群79を放熱用伝熱管群とし、利用側熱交換器6の伝熱管群79を蒸発用伝熱管群とする。また、各伝熱フィン71は、本実施形態において、長方形の平板状に形成されている。各伝熱管75は、伝熱フィン71を貫通し、その各伝熱管75の端部同士がU字管76によって接続されている。ここで、中間冷却器7の中間冷却用伝熱管群を構成する伝熱管75を中間冷却用伝熱管とし、熱源側熱交換器4の放熱用伝熱管群を構成する伝熱管75を放熱用伝熱管とし、利用側熱交換器6の蒸発用伝熱管群を構成する伝熱管75を蒸発用伝熱管とする。これにより、入口側端部77から出口側端部78まで1つの冷媒流路が形成されている。尚、本実施形態において、中間冷却器7、熱源側熱交換器4、及び、利用側熱交換器6は、後述のように、複数の流路を有する、いわゆる、複数パスの熱交換器である(図8〜10参照)。すなわち、中間冷却器7、熱源側熱交換器4、及び、利用側熱交換器6には、それぞれ、冷媒の入口側端部77および出口側端部78が複数設けられている。そして、各流路を冷媒が流れ、この冷媒の流れと直交するように各伝熱フィン71の間を空気が流れることにより、冷媒と空気とが熱交換を行うようになっている。
そして、本実施形態においては、利用側熱交換器6と中間冷却器7及び熱源側熱交換器4とで、伝熱管75の構成が異なっている。
利用側熱交換器6は、本実施形態において、3つの冷媒流路が上部から下部へ順に配置される3パスの熱交換器に構成されている。そして、中間冷却器7は、3つの入口側端部77が空気の入口側とは反対側に位置し、3つの出口側端部78が空気の入口側と同じ側に位置している。そして、利用側熱交換器6では、入口側端部77より流入した冷媒が図8における左半部の冷媒流路を流れ、その後、図8の右半部の冷媒流路へ流れて最終的に出口側端部78から流出するように構成されている。すなわち、中間冷却器7において、左半部が冷媒流路の入口側半部となっており、右半部が冷媒流路の出口側半部となっている。そして、利用側熱交換器6の各冷媒流路では、複数の伝熱管75の全てに内面に複数の溝が形成された溝付管が用いられている。この溝付管は、その内面75aに周方向に間隔を空けて複数の内フィン75bが設けられており、これらの内フィン75bによって複数の溝75cが形成されている。本実施形態において、各内フィン75bの断面は、略山型形状に形成されており、これにより、溝75cの断面は、逆台形形状に形成されている。また、複数のフィン75b及び複数の溝75cは、管長手方向に対して所定のねじれ角度αだけ傾斜するように延びている。ここで、伝熱管75は、外径Dが6.0〜8.6mmであり、肉厚tが0.11D〜0.14Dである。尚、溝付管における肉厚tは、溝75cにおける底肉厚tを意味する。
中間冷却器7は、本実施形態において、2つの冷媒流路が上部から下部へ順に配置される2パスの熱交換器に構成されている。そして、中間冷却器7は、2つの入口側端部77が空気の入口側とは反対側に位置し、2つの出口側端部78が空気の入口側と同じ側に位置している。そして、中間冷却器7では、入口側端部77より流入した冷媒が図9における左半部の冷媒流路を流れ、その後、図9の右半部の冷媒流路へ流れて最終的に出口側端部78から流出するように構成されている。すなわち、中間冷却器7において、左半部が冷媒流路の入口側半部となっており、右半部が冷媒流路の出口側半部となっている。そして、中間冷却器7の各冷媒流路では、複数の伝熱管75の全てに内面が平滑な平滑管が用いられている。ここで、伝熱管75は、外径Dが6.0〜8.6mmであり、肉厚tが0.11D〜0.14Dである。
熱源側熱交換器4は、本実施形態において、3つの冷媒流路が上部から下部へ順に配置される3パスの熱交換器に構成されている。そして、熱源側熱交換器4は、3つの入口側端部77が空気の入口側とは反対側に位置し、3つの出口側端部78が空気の入口側と同じ側に位置している。そして、熱源側熱交換器4では、入口側端部77より流入した冷媒が図10における左半部の冷媒流路を流れ、その後、図10の右半部の冷媒流路へ流れて最終的に出口側端部78から流出するように構成されている。すなわち、熱源側熱交換器4において、左半部が冷媒流路の入口側半部となっており、右半部が冷媒流路の出口側半部となっている。そして、熱源側熱交換器4の各冷媒流路では、複数の伝熱管75の全てに内面が平滑な平滑管が用いられている。ここで、伝熱管75は、外径Dが6.0〜8.6mmであり、肉厚tが0.11D〜0.14Dである。
このように、本実施形態においては、中間冷却器7の中間冷却用伝熱管群を構成する複数の中間冷却用伝熱管の全てに内面が平滑な平滑管が用いられ、熱源側熱交換器4の放熱用伝熱管群を構成する複数の放熱用伝熱管の全てに内面が平滑な平滑管が用いられ、利用側熱交換器6の蒸発用伝熱管群を構成する複数の蒸発用伝熱管の全てに内面に複数の溝が形成された溝付管が用いられている。
次に、中間冷却器7の伝熱管75に溝付管を用いた場合における伝熱管75に存在する冷凍機油の量と平滑管を用いた場合における伝熱管75に存在する冷凍機油の量との違いについて、図11、12を用いて説明する。ここで、図11は、中間冷却器7の伝熱管75における冷凍機油の溜まり量を説明するための模式図であり、図12は、平滑管および溝付管に存在する総油量を比較したグラフである。
図11は、中間冷却器7の伝熱管75の内部において、冷媒とともに冷凍機油が流動する様子をモデル化したものである。中間冷却器7は、冷却源である空気との熱交換により相変化を伴うことなく中間圧の冷媒を冷却する熱交換器であるため(図2、3参照)、図11において、冷媒は、冷却源である空気との熱交換により相変化を伴うことなく冷却されながら一定流量vで流れているものと仮定する。一方、冷凍機油は、流動する冷媒に対して一定の質量比で一様に存在するものと仮定する。また、冷凍機油は、冷媒に対する相溶性の割合に応じて、冷媒に溶け込むもの(図中におけるC)と、冷媒に溶けきれずに内面75aを伝うように流れるもの(図中におけるB)とに分離する。
そして、図12に示されるように、「冷媒中の油量」(即ち、図11における冷媒に溶け込む冷凍機油Cの量)については、平滑管の場合と溝付管の場合とでほぼ同量である。一方、「溜まり量」(即ち、図11における冷媒に溶けきれずに内面75aを伝うように流れる冷凍機油Bの量)については、溝付管の場合が平滑管の場合よりも著しく多いことが分かる。つまり、伝熱管75に溝付管ではなく平滑管を用いた方が、中間冷却器7において存在する冷凍機油の総油量が低減される。特に、本実施形態では、冷凍機油としてPAGが使用されており、このPAGは、冷媒である二酸化炭素に対する相溶性が低いため、内面75aを伝うように流れる冷凍機油Bの量が非常に多くなる傾向にあり、溝付管の場合と平滑管の場合との差が顕著に現れているものと考えられる。
また、放熱器としての熱源側熱交換器4は、圧力レベルは中間冷却器7を流れる冷媒と異なるが、冷却源である空気との熱交換により相変化を伴うことなく高圧(ここでは、超臨界圧)の冷媒を冷却する熱交換器であるため(図2、3参照)、熱源側熱交換器4の伝熱管75の内部においても、上述の中間冷却器7の伝熱管75の内部と同様の流動状態となり、伝熱管75に溝付管ではなく平滑管を用いた方が、熱源側熱交換器4において存在する冷凍機油の総油量が低減されるものと考えられる。
次に、中間冷却器7及び蒸発器としての利用側熱交換器6において、伝熱管75に溝付管を用いた場合における熱交換量と平滑管を用いた場合における熱交換量との違いについて、図7、13、14を用いて説明する。ここで、図13は、蒸発器としての利用側熱交換器6における油循環率と熱交換量との関係を示すグラフであり、図14は、中間冷却器7における油循環率と熱交換量との関係を示すグラフである。
まず、冷媒に溶けきれずに内面75aを伝うように流れる冷凍機油Bの油量を計算し、溝の有無や形状を考慮して内面75aの全体に形成される油膜の厚さTを求める。そして、この油膜の厚さTを伝熱抵抗として捉え、熱交換量Q(即ち、蒸発器としての利用側熱交換器6の場合は蒸発器能力Qe、中間冷却器7の場合は冷却器能力Qc)を算出する。
そして、図13に示されるように、蒸発器としての利用側熱交換器6においては、溝付管および平滑管の何れの場合も、油循環率OCRが高いほど熱交換量Qeが低下する。そして、溝付管の場合と平滑管の場合とで、油循環率OCRに対する熱交換量Qeはほぼ同じである。このことから、蒸発器としての利用側熱交換器6の場合、伝熱管75が溝付管であっても平滑管であっても、蒸発器能力はほとんど変わらないことがわかる。ここで、油循環率OCRとは、単位長さ当たりの伝熱管75における冷媒量に対する冷凍機油量(すなわち、図11における冷凍機油Bの油量と冷凍機油Cの油量との合計油量)の比率である。
一方、図14に示されるように、中間冷却器7においては、溝付管の場合には、油循環率OCRが高いほど熱交換量Qcが低下するが、平滑管の場合には、油循環率OCRに対して熱交換量Qcはほとんど変化しない。そして、油循環率OCRに対する熱交換量Qcは、油循環率OCRがゼロ付近(すなわち、中間冷却器7に冷凍機油がほとんど流入しない場合)を除いては、溝付管の場合に比べて平滑管の場合の方が非常に高くなっている。これは、中間冷却器7のような冷却器の場合には、伝熱管75に平滑管を用いる方が溝付管を用いる場合に比べて、伝熱管75の内面75aに形成される油膜の厚さTが薄くなり、伝熱抵抗が小さくなることが影響している。したがって、中間冷却器7の場合には、冷凍機油に起因する熱交換量の観点では、伝熱管75に平滑管を用いる方がよいことになる。
また、放熱器としての熱源側熱交換器4は、圧力レベルは中間冷却器7を流れる冷媒と異なるが、冷却源である空気との熱交換により相変化を伴うことなく高圧(ここでは、超臨界圧)の冷媒を冷却する熱交換器であるため(図2、3参照)、熱源側熱交換器4においても、上述の中間冷却器7と同様に、冷凍機油に起因する熱交換量の観点では、伝熱管75に平滑管を用いる方がよいものと考えられる。
以上により、本実施形態における空気調和装置1のような超臨界域で作動する冷媒を使用する多段圧縮式冷凍サイクルを行う冷凍装置において、前段側の圧縮要素2cから吐出されて後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の冷却器として機能する中間冷却器7を設けるにあたり、中間冷却器7の中間冷却用伝熱管群を構成する複数の中間冷却用伝熱管に上述のような溝付管を使用すると、圧縮機構2の前段側の圧縮要素2cから吐出される冷媒に圧縮機構2(ここでは、圧縮機21のケーシング21a)内の冷凍機油が同伴することに加えて、前段側の圧縮要素2cから冷媒に同伴して吐出された冷凍機油が中間冷却器7に流入すると冷凍機油が中間冷却用伝熱管の内面を伝うように流れることから、中間冷却用伝熱管に上述のような溝付管を使用した場合には、中間冷却用伝熱管の内面に形成された複数の溝に冷凍機油が捕捉され易くなり、前段側の圧縮要素2cから冷媒に同伴して吐出される冷凍機油が中間冷却器7にさらに溜まり込み易くなってしまうため、圧縮機構2の油切れが生じるおそれが高くなることがわかる(図12参照)。また、中間冷却用伝熱管に溝付管を使用した場合には、中間冷却用伝熱管の内面に形成された複数の溝に捕捉される冷凍機油が多くなり、中間冷却用伝熱管の内面における油膜が厚くなることから、このような油膜が伝熱抵抗になってしまい、中間冷却器7の熱交換能力があまり向上しないこともわかる(図13参照)。さらに、中間冷却用伝熱管の内面における油膜は、伝熱抵抗だけでなく流路抵抗にもなることから、中間冷却器7における圧力損失が増大して後段側の圧縮要素2dに吸入される冷媒の圧力(すなわち、冷凍サイクルの中間圧)を低下させてしまうため、運転効率が低下する原因になることがわかる。
このため、冷凍装置に用いられる蒸発器等の熱交換器においては、その熱交換能力を向上させるために熱交換器の伝熱管の内面に複数の溝が形成された溝付管が用いられていることから、本実施形態における空気調和装置1の中間冷却器7の中間冷却用伝熱管群を構成する複数の中間冷却用伝熱管に溝付管を使用することが考えられるが、この考え方にしたがって中間冷却用伝熱管に溝付管を使用すると、冷凍機油の中間冷却器7への溜まり込みにより、圧縮機構2の油切れが生じるおそれが高くなるとともに、中間冷却器7の熱交換性能の低下や運転効率の低下が生じるおそれがあることがわかる。
これに対して、本実施形態の空気調和装置1においては、中間冷却器7の中間冷却用伝熱管群を構成する複数の中間冷却用伝熱管の全てに内面が平滑な平滑管が用いられているため、この平滑管からなる中間冷却用伝熱管を冷凍機油が流れる際には、冷凍機油が平滑管の内面を滑らかに流れることになり、平滑管の内面に冷凍機油が捕捉されるのを抑えることができる。これにより、本実施形態の空気調和装置1では、中間冷却器7の中間冷却用伝熱管群を構成する複数の中間冷却用伝熱管に溝付管を使用する場合に比べて、前段側の圧縮要素2cから冷媒に同伴して吐出されて中間冷却器7に流入する冷凍機油が中間冷却器7に溜まり込むのを抑えて圧縮機構2の油切れが生じるのを抑えることができるとともに、冷凍機油の中間冷却器7への溜まり込みによる中間冷却器7の熱交換性能の低下や運転効率の低下が生じるのを抑えることができる。
また、本実施形態の空気調和装置1においては、放熱器としての熱源側熱交換器4に圧縮機構2(より具体的には、後段側の圧縮要素2d)から吐出された冷媒が流入するが、この際、圧縮機構2の後段側の圧縮要素2dから吐出される冷媒には、圧縮機構2(ここでは、圧縮機21のケーシング21a)内の冷凍機油が同伴する。このため、放熱用伝熱管に溝付管を使用した場合には、放熱用伝熱管の内面に形成された複数の溝に冷凍機油が捕捉され易くなり、放熱用伝熱管の内面における油膜が厚くなることから、このような油膜が伝熱抵抗になってしまい、放熱器としての熱源側熱交換器4の熱交換能力が低下する原因になると考えられる。
これに対して、本実施形態の空気調和装置1においては、放熱器としての熱源側熱交換器4の放熱用伝熱管群を構成する複数の放熱用伝熱管の全てに内面が平滑な平滑管が用いられているため、この平滑管からなる放熱用伝熱管を冷凍機油が流れる際には、冷凍機油が平滑管の内面を滑らかに流れることになり、平滑管の内面に冷凍機油が捕捉されるのを抑えることができる。これにより、本実施形態の空気調和装置1では、熱源側熱交換器4の放熱用伝熱管群を構成する複数の放熱用伝熱管に溝付管を使用する場合に比べて、冷凍機油の熱源側熱交換器4への溜まり込みによる放熱器としての熱源側熱交換器4の熱交換性能の低下が生じるのを抑えることができる。
尚、圧縮機構2を構成する圧縮機21としては、前段側及び後段側の圧縮要素2c、2dが共通のケーシング21a内に収容されるとともにケーシング21a内の冷凍機油が溜まる空間に前段側の圧縮要素2cに吸入される冷媒が充満する低圧ドーム型、前段側及び後段側の圧縮要素2c、2dが共通のケーシング21a内に収容されるとともにケーシング21a内の冷凍機油が溜まる空間に前段側の圧縮要素2cから吐出される冷媒が充満する中間圧ドーム型、前段側及び後段側の圧縮要素2c、2dが共通のケーシング21a内に収容されるとともにケーシング21a内の冷凍機油が溜まる空間に後段側の圧縮要素2dから吐出される冷媒が充満する高圧ドーム型のいずれを採用した場合であっても、圧縮機構2の油切れを防ぐ等の効果を得ることができるが、特に、圧縮機構2を構成する圧縮機21として高圧ドーム型の圧縮機を採用した場合には、前段側の圧縮要素2cにおいては、冷媒が、圧縮機構2の吸入側(すなわち、吸入管2a)からケーシング21a内の前段側の圧縮要素2cに直接に吸入されて圧縮された後に、前段側の圧縮要素2cからケーシング21a外(すなわち、中間冷媒管8)に直接に吐出されるのに対して、後段側の圧縮要素2dにおいては、冷媒が、ケーシング21a内の後段側の圧縮要素2dに吸入されて圧縮された後に、ケーシング21a内の冷凍機油が溜まる空間を通じてケーシング21a外(すなわち、吐出管2b)に吐出されるため、高圧ドーム型の圧縮機21を有する圧縮機構2では、後段側の圧縮要素2dから吐出される冷媒に同伴する冷凍機油は、ケーシング21a内の冷凍機油が溜まる空間において、冷媒との分離が行われるが、前段側の圧縮要素2cから吐出される冷媒に同伴する冷凍機油は、後段側の圧縮要素2dから吐出される冷媒に同伴する冷凍機油とは異なり、冷媒との分離が行われないため、前段側の圧縮要素2cから吐出される冷媒に同伴する冷凍機油の量が多くなり、このような圧縮機構2及び中間冷却器7を備えた空気調和装置1では、多量の冷凍機油が中間冷却器7に流入することになり、中間冷却器7に溜まり込む冷凍機油の量が、低圧ドーム型の圧縮機や中間圧ドーム型の圧縮機を採用する場合に比べて多くなる傾向にあることから、本実施形態のように、中間冷却器7の中間冷却用伝熱管群を構成する複数の中間冷却用伝熱管に平滑管を用いることが非常に有効である。
(4)変形例1
上述の実施形態においては、中間冷却器7の中間冷却用伝熱管群を構成する複数の中間冷却用伝熱管の全てに内面が平滑な平滑管が用いられているが、中間冷却用伝熱管群を構成する複数の中間冷却用伝熱管の一部に内面が平滑な平滑管が用いられていてもよい。すなわち、中間冷却器7の中間冷却用伝熱管群を構成する複数の中間冷却用伝熱管のうち、少なくとも一部の中間冷却用伝熱管に平滑管が用いられていればよい。このように、複数の中間冷却用伝熱管の全てではなく一部の中間冷却用伝熱管だけに平滑管が設けられている場合であっても、中間冷却用伝熱管群を構成する複数の中間冷却用伝熱管の全てに溝付管が用いられる場合に比べて、前段側の圧縮要素2cから冷媒に同伴して吐出されて中間冷却器7に流入する冷凍機油が中間冷却器7に溜まり込むのを抑えて圧縮機構2の油切れが生じるのを抑えることができるとともに、冷凍機油の中間冷却器7への溜まり込みによる中間冷却器7の熱交換性能の低下や運転効率の低下が生じるのを抑えることができる。
例えば、図15に示されるように、中間冷却器7の各冷媒流路において、入口側半部に位置する伝熱管75に溝付管を用い、出口側半部に位置する伝熱管75に平滑管を用いるようにしてもよい。ここで、入口側半部に用いられる溝付管は、上述の蒸発器としての利用側熱交換器6に用いられている溝付管と同様に、その内面75aに周方向に間隔を空けて複数の内フィン75bが設けられており、これらの内フィン75bによって複数の溝75cが形成されている(図5参照)。また、各内フィン75bの断面は、略山型形状に形成されており、これにより、溝75cの断面は、逆台形形状に形成されている(図6参照)。また、複数のフィン75b及び複数の溝75cは、管長手方向に対して所定のねじれ角度αだけ傾斜するように延びている(図7参照)。ここで、伝熱管75は、外径Dが6.0〜8.6mmであり、肉厚tが0.11D〜0.14Dである。尚、溝付管における肉厚tは、溝75cにおける底肉厚tを意味する。
次に、中間冷却器7における冷媒の温度分布と冷凍機油の粘性率の変化との関係について、図16を用いて説明する。ここで、図16は、中間冷却器7における冷凍機油の粘性率の変化を示すグラフである。
中間冷却器7においては、その入口から出口に向かうにしたがって冷媒の温度が低下するため、冷媒の入口側の中間冷却用伝熱管における冷凍機油の粘性率が低く、冷媒の出口側の中間冷却用伝熱管における冷凍機油の粘性率が高くなる。このため、冷凍機油は、冷媒の出口側の中間冷却用伝熱管に比べて、冷媒の入口側の中間冷却用伝熱管の内面には捕捉されにくい傾向となる。このため、本変形例における中間冷却器7のように、複数の中間冷却用伝熱管のうち、冷媒の入口側の中間冷却用伝熱管に内面に複数の溝が形成された溝付管を用い、冷媒の出口側の中間冷却用伝熱管に内面が平滑な平滑管を用いることによって、粘性率の低い冷凍機油が流れる冷媒の入口側については、溝付管によって中間冷却用伝熱管の伝熱面積を確保しつつ、粘性率の高い冷凍機油が流れる冷媒の出口側については、平滑管によって冷凍機油が中間冷却用伝熱管の内面に捕捉されることなく滑らかに流れるようにしている。
これにより、本変形例の空気調和装置1では、中間冷却器7における冷媒の温度分布(より具体的には、この温度分布に起因する冷凍機油の粘性率の変化)を考慮して、効果的に、冷凍機油の中間冷却器7への溜まり込みを抑えるとともに、中間冷却器7の熱交換性能の低下や運転効率の低下が生じるのを抑えることができる。また、中間冷却器7のコンパクト化にも寄与することができる。
また、本変形例における中間冷却器7において、冷媒の入口側の中間冷却用伝熱管に使用される溝付管は、内フィン75bの高さ(以下、フィン高さhとする)が50μm以下とされている。
次に、溝付管のフィン高さhと熱交換能力との関係について、図17を用いて説明する。ここで、図17は、溝付管のフィンの高さと熱交換能力との関係を示すグラフである。
中間冷却器7においては、油有りの場合(油循環率OCR=1wt%の場合)、すなわち、伝熱管75内を冷媒が冷凍機油とともに循環する場合、溝付管のフィン高さhが0μmのとき、熱交換能力(すなわち、単位伝熱面積当たりの熱交換量)が最大になる。すなわち、中間冷却器7では、油有りの場合、伝熱管75に平滑管を用いた方が熱交換能力が高くなる。そして、熱交換能力は、フィン高さhが高いほど低下する。しかし、フィン高さhが50μmまでは、熱交換能力はそれほど低下しないが、50μmを超えると著しく熱交換能力は低下する。一方、油無しの場合(油循環率OCR=0wt%の場合)は、溝付管のフィン高さhが高いほど熱交換能力は高くなる。このため、本変形例における中間冷却器7のように、入口側半部に位置する溝付管のフィン高さhを50μm以下に形成することにより、熱交換能力の低下を抑えつつ、つまり、中間冷却器7の入口側半部においても、出口側半部の平滑管とほとんど遜色のない熱交換能力を得ることができる。
これにより、本変形例の空気調和装置1では、溝付管の溝の深さ(すなわち、フィン高さh)を最適化することにより、冷凍機油の中間冷却器7への溜まり込みによる中間冷却器7の熱交換能力の低下が生じるのを抑えつつ、溝付管によって中間冷却用伝熱管の伝熱面積を大きくすることができる。また、中間冷却器7のコンパクト化にも寄与することができる。
(5)変形例2
上述の実施形態及び変形例1においては、放熱器としての熱源側熱交換器4の放熱用伝熱管群を構成する複数の放熱用伝熱管の全てに内面が平滑な平滑管が用いられているが、放熱用伝熱管群を構成する複数の放熱用伝熱管の一部に内面が平滑な平滑管が用いられていてもよい。すなわち、熱源側熱交換器4の放熱用伝熱管群を構成する複数の放熱用伝熱管のうち、少なくとも一部の放熱用伝熱管に平滑管が用いられていればよい。このように、複数の放熱用伝熱管の全てではなく一部の放熱用伝熱管だけに平滑管が設けられている場合であっても、放熱用伝熱管群を構成する複数の放熱用伝熱管の全てに溝付管が用いられる場合に比べて、圧縮機構2(より具体的には、後段側の圧縮要素2d)から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油の熱源側熱交換器4への溜まり込みによる熱源側熱交換器4の熱交換性能の低下が生じるのを抑えることができる。
例えば、図18に示されるように、熱源側熱交換器4の各冷媒流路において、入口側半部に位置する伝熱管75に溝付管を用い、出口側半部に位置する伝熱管75に平滑管を用いるようにしてもよい。ここで、入口側半部に用いられる溝付管は、上述の中間冷却器7に用いられている溝付管と同様のものである。
そして、放熱器としての熱源側熱交換器4は、圧力レベルは中間冷却器7を流れる冷媒と異なるが、冷却源である空気との熱交換により相変化を伴うことなく高圧(ここでは、超臨界圧)の冷媒を冷却する熱交換器であるため(図2、3参照)、熱源側熱交換器4における冷媒の温度分布と冷凍機油の粘性率の変化との関係や溝付管のフィン高さhと熱交換能力との関係については、上述の中間冷却器7と同様である(図16、17参照)。
これにより、本変形例の空気調和装置1では、放熱器としての熱源側熱交換器4における冷媒の温度分布(より具体的には、この温度分布に起因する冷凍機油の粘性率の変化)を考慮して、効果的に、冷凍機油の熱源側熱交換器4への溜まり込みを抑えるとともに、熱源側熱交換器4の熱交換性能の低下が生じるのを抑えることができ、また、溝付管の溝の深さ(すなわち、フィン高さh)を最適化することにより、冷凍機油の熱源側熱交換器4への溜まり込みによる熱源側熱交換器4の熱交換能力の低下が生じるのを抑えつつ、溝付管によって放熱用伝熱管の伝熱面積を大きくすることができ、さらに、熱源側熱交換器4のコンパクト化にも寄与することができる。
(6)変形例3
上述の変形例2においては、中間冷却器7の中間冷却用伝熱管群を構成する複数の中間冷却用伝熱管のうち、少なくとも一部の中間冷却用伝熱管に平滑管が用いられており、かつ、熱源側熱交換器4の放熱用伝熱管群を構成する複数の放熱用伝熱管のうち、少なくとも一部の放熱用伝熱管に平滑管が用いられているが、例えば、圧縮機構2を構成する圧縮機21として高圧ドーム型の圧縮機を採用することにより圧縮機構2から吐出される冷媒に同伴する冷凍機油の量が少ない場合等のように、放熱器としての熱源側熱交換器4に流入する冷凍機油の量を少なくすることができる場合(図14の油循環率OCRがゼロ付近に相当)には、放熱用伝熱管の伝熱面積を大きくするために、図19に示されるように、熱源側熱交換器4の放熱用伝熱管群を構成する複数の放熱用伝熱管の全てに溝付管を用いるようにしてもよい。
これにより、本変形例の空気調和装置1では、中間冷却器7については、前段側の圧縮要素2cから冷媒に同伴して吐出されて中間冷却器7に流入する冷凍機油が中間冷却器7に溜まり込むのを抑えて圧縮機構2の油切れが生じるのを抑えるとともに、冷凍機油の中間冷却器7への溜まり込みによる中間冷却器7の熱交換性能の低下や運転効率の低下が生じるのを抑えることができ、放熱器としての熱源側熱交換器4については、冷凍機油の熱源側熱交換器4への溜まり込みが生じにくいことから、全ての伝熱管75に溝付管を用いることによって、熱交換能力を向上させることができる(図18参照)。
(7)変形例4
上述の実施形態及びその変形例では、1台の一軸二段圧縮構造の圧縮機21によって、2つの圧縮要素2c、2dのうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮する二段圧縮式の圧縮機構2が構成されているが、三段圧縮式等のような二段圧縮式よりも多段の圧縮機構を採用してもよいし、また、単一の圧縮要素が組み込まれた圧縮機及び/又は複数の圧縮要素が組み込まれた圧縮機を複数台直列に接続することで多段の圧縮機構を構成してもよい。また、利用側熱交換器6が多数接続される場合等のように、圧縮機構の能力を大きくする必要がある場合には、多段圧縮式の圧縮機構を2系統以上並列に接続した並列多段圧縮式の圧縮機構を採用してもよい。
例えば、図20に示されるように、上述の実施形態及びその変形例における冷媒回路10(図1参照)において、二段圧縮式の圧縮機構2に代えて、二段圧縮式の圧縮機構103、104を並列に接続した圧縮機構102を採用した冷媒回路110にしてもよい。
第1圧縮機構103は、本変形例において、2つの圧縮要素103c、103dで冷媒を二段圧縮する圧縮機29から構成されており、圧縮機構102の吸入母管102aから分岐された第1吸入枝管103a、及び、圧縮機構102の吐出母管102bに合流する第1吐出枝管103bに接続されている。第2圧縮機構104は、本変形例において、2つの圧縮要素104c、104dで冷媒を二段圧縮する圧縮機30から構成されており、圧縮機構102の吸入母管102aから分岐された第1吸入枝管104a、及び、圧縮機構102の吐出母管102bに合流する第2吐出枝管104bに接続されている。尚、圧縮機29、30は、上述の実施形態及びその変形例における圧縮機21と同様の構成であるため、圧縮要素103c、103d、104c、104dを除く各部を示す符号をそれぞれ29番台や30番台に置き換えることとし、ここでは、説明を省略する。そして、圧縮機29は、第1吸入枝管103aから冷媒を吸入し、この吸入された冷媒を圧縮要素103cによって圧縮した後に中間冷媒管8を構成する第1入口側中間枝管81に吐出し、第1入口側中間枝管81に吐出された冷媒を中間冷媒管8を構成する中間母管82及び第1出口側中間枝管83を通じて圧縮要素103dに吸入させて冷媒をさらに圧縮した後に第1吐出枝管103bに吐出するように構成されている。圧縮機30は、第1吸入枝管104aから冷媒を吸入し、この吸入された冷媒を圧縮要素104cによって圧縮した後に中間冷媒管8を構成する第2入口側中間枝管84に吐出し、第2入口側中間枝管84に吐出された冷媒を中間冷媒管8を構成する中間母管82及び第2出口側中間枝管85を通じて圧縮要素104dに吸入させて冷媒をさらに圧縮した後に第2吐出枝管104bに吐出するように構成されている。中間冷媒管8は、本変形例において、圧縮要素103d、104dの前段側に接続された圧縮要素103c、104cから吐出された冷媒を、圧縮要素103c、104cの後段側に接続された圧縮要素103d、104dに吸入させるための冷媒管であり、主として、第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cの吐出側に接続される第1入口側中間枝管81と、第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cの吐出側に接続される第2入口側中間枝管84と、両入口側中間枝管81、84が合流する中間母管82と、中間母管82から分岐されて第1圧縮機構103の後段側の圧縮要素103dの吸入側に接続される第1出口側中間枝管83と、中間母管82から分岐されて第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104dの吸入側に接続される第2出口側中間枝管85とを有している。また、吐出母管102bは、圧縮機構102から吐出された冷媒を熱源側熱交換器4に送るための冷媒管である。吐出母管102bには、第1吐出枝管103bと第2吐出枝管104bとが接続されている。
このように、圧縮機構102は、本変形例において、2つの圧縮要素103c、103dを有するとともにこれらの圧縮要素103c、103dのうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮するように構成された第1圧縮機構103と、2つの圧縮要素104c、104dを有するとともにこれらの圧縮要素104c、104dのうちの前段側の圧縮要素から吐出された冷媒を後段側の圧縮要素で順次圧縮するように構成された第2圧縮機構104とを並列に接続した構成となっている。
中間冷却器7は、本変形例において、中間冷媒管8を構成する中間母管82に設けられており、第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cから吐出された冷媒と第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cから吐出された冷媒とが合流したものを冷却する熱交換器である。すなわち、中間冷却器7は、2つの圧縮機構103、104に共通の冷却器として機能するものとなっている。このため、多段圧縮式の圧縮機構103、104を複数系統並列に接続した並列多段圧縮式の圧縮機構102に対して中間冷却器7を設ける際の圧縮機構102周りの回路構成の簡素化が図られている。
また、中間冷媒管8を構成する第1入口側中間枝管81には、第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cの吐出側から中間母管82側への冷媒の流れを許容し、かつ、中間母管82側から前段側の圧縮要素103cの吐出側への冷媒の流れを遮断するための逆止機構81aが設けられており、中間冷媒管8を構成する第2入口側中間枝管84には、第2圧縮機構103の前段側の圧縮要素104cの吐出側から中間母管82側への冷媒の流れを許容し、かつ、中間母管82側から前段側の圧縮要素104cの吐出側への冷媒の流れを遮断するための逆止機構84aが設けられている。本変形例においては、逆止機構81a、84aとして逆止弁が使用されている。このため、圧縮機構103、104のいずれか一方が停止中であっても、運転中の圧縮機構の前段側の圧縮要素から吐出された冷媒が中間冷媒管8を通じて、停止中の圧縮機構の前段側の圧縮要素の吐出側に達するということが生じないため、運転中の圧縮機構の前段側の圧縮要素から吐出された冷媒が、停止中の圧縮機構の前段側の圧縮要素内を通じて圧縮機構102の吸入側に抜けて停止中の圧縮機構の冷凍機油が流出するということが生じなくなり、これにより、停止中の圧縮機構を起動する際の冷凍機油の不足が生じにくくなっている。尚、圧縮機構103、104間に運転の優先順位を設けている場合(例えば、第1圧縮機構103を優先的に運転する圧縮機構とする場合)には、上述の停止中の圧縮機構に該当することがあるのは、第2圧縮機構104に限られることになるため、この場合には、第2圧縮機構104に対応する逆止機構84aだけを設けるようにしてもよい。
また、上述のように、第1圧縮機構103を優先的に運転する圧縮機構とする場合においては、中間冷媒管8が圧縮機構103、104に共通に設けられているため、運転中の第1圧縮機構103に対応する前段側の圧縮要素103cから吐出された冷媒が中間冷媒管8の第2出口側中間枝管85を通じて、停止中の第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104dの吸入側に達し、これにより、運転中の第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cから吐出された冷媒が、停止中の第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104d内を通じて圧縮機構102の吐出側に抜けて停止中の第2圧縮機構104の冷凍機油が流出して、停止中の第2圧縮機構104を起動する際の冷凍機油の不足が生じるおそれがある。そこで、本変形例では、第2出口側中間枝管85に開閉弁85aを設け、第2圧縮機構104が停止中の場合には、この開閉弁85aによって第2出口側中間枝管85内の冷媒の流れを遮断するようにしている。これにより、運転中の第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cから吐出された冷媒が中間冷媒管8の第2出口側中間枝管85を通じて、停止中の第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104dの吸入側に達することがなくなるため、運転中の第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素103cから吐出された冷媒が、停止中の第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104d内を通じて圧縮機構102の吐出側に抜けて停止中の第2圧縮機構104の冷凍機油が流出するということが生じなくなり、これにより、停止中の第2圧縮機構104を起動する際の冷凍機油の不足がさらに生じにくくなっている。尚、本変形例においては、開閉弁85aとして電磁弁が使用されている。
また、第1圧縮機構103を優先的に運転する圧縮機構とする場合においては、第1圧縮機構103の起動に続いて第2圧縮機構104を起動することになるが、この際、中間冷媒管8が圧縮機構103、104に共通に設けられているため、第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素103cの吐出側の圧力及び後段側の圧縮要素103dの吸入側の圧力が、前段側の圧縮要素103cの吸入側の圧力及び後段側の圧縮要素103dの吐出側の圧力よりも高くなった状態から起動することになり、安定的に第2圧縮機構104を起動することが難しい。そこで、本変形例では、第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cの吐出側と後段側の圧縮要素104dの吸入側とを接続する起動バイパス管86を設けるとともに、この起動バイパス管86に開閉弁86aを設け、第2圧縮機構104が停止中の場合には、この開閉弁86aによって起動バイパス管86内の冷媒の流れを遮断し、かつ、開閉弁85aによって第2出口側中間枝管85内の冷媒の流れを遮断するようにし、第2圧縮機構104を起動する際に、開閉弁86aによって起動バイパス管86内に冷媒を流すことができる状態にすることで、第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cから吐出される冷媒を第1圧縮機構103の前段側の圧縮要素104cから吐出される冷媒に合流させることなく、起動バイパス管86を通じて後段側の圧縮要素104dに吸入させるようにして、圧縮機構102の運転状態が安定した時点(例えば、圧縮機構102の吸入圧力、吐出圧力及び中間圧力が安定した時点)で、開閉弁85aによって第2出口側中間枝管85内に冷媒を流すことができる状態にし、かつ、開閉弁86aによって起動バイパス管86内の冷媒の流れを遮断して、通常の冷房運転に移行することができるようになっている。尚、本変形例において、起動バイパス管86は、その一端が第2出口側中間枝管85の開閉弁85aと第2圧縮機構104の後段側の圧縮要素104dの吸入側との間に接続され、その他端が第2圧縮機構104の前段側の圧縮要素104cの吐出側と第2入口側中間枝管84の逆止機構84aとの間に接続されており、第2圧縮機構104を起動する際に、第1圧縮機構103の中間圧部分の影響を受けにくい状態にできるようになっている。また、本変形例においては、開閉弁86aとして電磁弁が使用されている。
また、本変形例の空気調和装置1の冷房運転の動作は、圧縮機構2に代えて設けられた圧縮機構102によって、圧縮機構102周りの回路構成がやや複雑化したことによる変更点を除いては、上述の実施形態における動作(図1〜図3及びその関連記載)と基本的に同じであるため、ここでは、説明を省略する。
そして、本変形例の構成においても、上述の実施形態及びその変形例と同様の作用効果を得ることができる。
(8)他の実施形態
以上、本発明の実施形態及びその変形例について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上述の実施形態及びその変形例においては、中間冷却器7及び放熱器としての熱源側熱交換器4として、2パスや3パスのフィンアンドチューブ型の熱交換器を採用しているが、パス数については限定されるものではなく、それ以外のものであってもよい。
また、上述の変形例1、2においては、中間冷却器7や放熱器としての熱源側熱交換器4の出口側半部、すなわち、出口から中間位置までの伝熱管75に平滑管を用いるようにしているが、これに限定されず、出口から中間位置を超えた部分までを平滑管としてもよいし、出口から中間位置を超えない部分までを平滑管としてもよい。
また、上述の実施形態及びその変形例においては、中間冷却器7及び放熱器としての熱源側熱交換器4として、空気を冷却源とするフィンアンドチューブ型の熱交換器を採用しているが、これに限定されず、例えば、水やブラインを冷却源とするシェルアンドチューブ型の熱交換器や二重管型の熱交換器等を採用するとともに、このような熱交換器に使用される伝熱管に対して本発明を適用してもよい。
また、上述の実施形態及びその変形例においては、1つの利用側熱交換器を有する冷房運転が可能な空気調和装置に本発明を適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、複数の利用側熱交換器を有するものや冷房運転と暖房運転とが切り換え可能なもの等のような他の型式の冷凍装置であっても、超臨界域で作動する冷媒を冷媒として使用して多段圧縮式冷凍サイクルを行うものであれば、本発明を適用可能である。
また、超臨界域で作動する冷媒としては、二酸化炭素に限定されず、エチレン、エタンや酸化窒素等を使用してもよい。