本発明は、電子写真法、静電記録法、トナージェット方式記録法の如き方法によって形成される静電潜像を現像してトナー画像を形成するために用いるトナーに関するものである。
電子写真法による画像形成方法としては種々の方法が知られている。一般には光導電性物質を利用し、種々の手段によって静電荷像担持体(以下、「感光体」ともいう)上に静電潜像を形成する。次いでトナーを用いて該静電潜像を現像してトナー画像を形成し、必要に応じて紙の如き転写材にトナー画像を転写した後、熱あるいは圧力により該転写材上にトナー画像を定着して複写物またはプリントを得るものである。このような画像形成装置としては、プリンターや複写機がある。
近年、これらプリンターや複写機は、デジタル化による画像の高精細化と同時に、印字または複写速度の高速化、あるいは装置の小型化による省スペース化、低消費電力化が要求されるようになっている。
プリンターや複写機に用いる定着装置としては種々の方式のものが実用に付されているが、最も一般的な方式は熱ローラーによる加熱圧着方式である。この方式は、トナーに対して離型性を有する材料で表面を形成した熱ローラーとこれを加圧する加圧ローラーとの間に、トナー画像が転写された転写材を該転写材のトナー画像面が熱ローラー側に当接されるように通過させることによって定着を行うものである。この方式では、熱ローラーの表面と転写材のトナー画像面とが加圧下で接触するため、トナーが転写材上に融着する際の熱効率に優れることから、特に高速度が要求される用途に好適に用いられている。
また、低消費電力化が要求される用途に用いられる方式としては、代表的なものとしてフィルム定着方式が挙げられる。この方式は、前記熱ローラーに代えて加熱装置を備えたフィルムユニットを用いるもので、該フィルムと加圧ローラーとの間に、トナー画像が転写された転写材を比較的低い圧力下で通過させて定着を行うものである。この方式では、フィルムの熱容量が小さく、ウエイト時間も短縮できるため、電力の消費量を低減することができる。
上記した高速化や低消費電力化の要求を満たすため、トナー自身の定着性能の改善も求められるようになっている。すなわち、より低い温度で定着させることのできるトナーの実現が望まれている。
一般にトナーは、結着樹脂と染料、顔料、カーボンブラック、磁性体の如き着色剤を主構成材料とする、粒径5乃至30μm程度の微粒子であり、粉砕法に代表される乾式製法や、懸濁重合法に代表される湿式製法によって製造されている。
粉砕法によるトナーは、結着樹脂としての熱可塑性樹脂中に、上記着色剤や必要に応じて荷電制御剤、ワックスを溶融混合して均一に分散させた後、得られた樹脂組成物を微粉砕し、分級することによって得られる。
一方、懸濁重合法によるトナーは、上記着色剤やワックスを重合性単量体に溶解あるいは分散させた重合性単量体組成物を、重合開始剤とともに分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁させて造粒を行い、加熱しながら重合性単量体を重合することによって得られる。このとき、前記重合性単量体組成物には、必要に応じて多官能性単量体、連鎖移動剤、荷電制御剤が添加される。こうして、所望の粒径を有する重合体粒子を得ることができる。
これらトナーの低温定着性を改善するための一般的な方法としては、トナーを構成する結着樹脂のガラス転移温度を低くする方法が知られている。しかし、単にガラス転移温度を低くしただけではトナーの耐熱保存性が低下し、高温環境下での使用では、互いに接触するトナー間で凝集が生じて塊状となるブロッキング現象を起こしやすくなるという問題を生じる。また、トナー担持体の汚染や感光体へのフィルミングが発生しやすくなって画質の低下を引き起こすという問題も生じる。
こうした問題点を解決するため、ガラス転移温度の低い樹脂を含む芯粒子と、該芯粒子の表面を被覆するように形成したガラス転移温度の高い樹脂を含む外殻から構成される、カプセル構造を有するトナーが考案されている。
例えば、熱可塑性樹脂の原料となるモノマー(重合性単量体)を含有してなる芯材構成材料と非晶質ポリエステルを含有してなる外殻構成材料の混合液を分散媒中に分散させ、重合による芯粒子形成の進行とともに該外殻構成材料を液滴の表面に偏在させるin−situ重合法によって外殻を形成したカプセルトナーが提案されている(特許文献1参照)。
また、懸濁重合で得られたポリマー粒子(芯粒子)に対し、乳化重合またはソープフリー乳化重合で得られた樹脂微粒子の水分散液を加えることによって該ポリマー粒子の表面の95%以上を該微粒子で被覆させた後、該ポリマー粒子のガラス転移温度以上に加熱して実質的に隆起のない表面にしたトナーが提案されている(特許文献2参照)。
また、少なくとも2種のガラス転移温度の異なる樹脂微粒子とトナー芯材(芯粒子)を混合し、温度を上昇させながらトナー芯材上に該樹脂粒子を固着又は融着させることにより被覆樹脂を設けたトナーが提案されている(特許文献3参照)。
さらに、平均粒子径が2乃至20μmで、ガラス転移温度が30乃至55℃の結着樹脂からなる芯トナー(芯粒子)の表面に、ワックスを内包化した樹脂微粒子を被覆して固着または融着させる第一段目の工程と、ワックスを含まない樹脂微粒子を被覆して固着または融着させる第二段目の工程とを含む工程により得られるトナーが提案されている(特許文献4参照)。
上記した従来例の内、特許文献1に開示されたトナーは、上記芯材構成材料と外殻構成材料の溶解度指数の差によって上記混合液の液滴中でこれらの分離が起こるという性質を利用して外殻を形成させたもので、ほぼ均一な厚みを持った層が形成されるとされている。ところが、こうして形成した外殻を有するトナーの耐熱保存性は必ずしも十分ではなく、実際に低温定着性を満足するような低いガラス転移温度の芯粒子の場合、十分な耐熱保存性を得るためには外殻構成材料としての非晶質ポリエステルを多量に添加する必要がある。その結果、造粒時において液滴の粘度が著しく増大してしまうため、製造安定性が損なわれるという問題があった。
また、上記した特許文献2に開示されたトナーは、その表面に隆起がなく平滑であるため、十分な機械的強度を有しているとされている。ところが、このような平滑な表面を得ようとして過度に加熱を行った場合、芯粒子の表面に付着させた樹脂微粒子の一部が芯粒子内部に埋没してしまうことがある。そして、それによって芯粒子が部分的に露出したり、あるいは内包させたワックスの一部が染み出したりしたためか、十分な耐熱保存性を得ることができなかった。一方、このような不具合を回避するべくより柔和な条件で加熱を行った場合には、十分な機械的強度を得ることができないため、芯粒子表面の樹脂微粒子が剥離・脱落を起こしやすく、結果的に十分な耐熱保存性を得ることができなかった。
また、上記した特許文献3に開示されたトナーは、ガラス転移温度の異なる樹脂微粒子を芯粒子上に固着または融着させる工程において、低温から高温へ温度を上昇させることを特徴としている。これにより、低温域ではガラス転移温度の低い樹脂微粒子が芯粒子に被覆され、高温になるに従って、ガラス転移温度の高い樹脂微粒子が被覆される。したがって、芯粒子に被覆された被覆材料は、ガラス転移温度が中心方向から外側方向へ向かって高くなるような勾配を持つものと考えられている。ところが、懸濁重合で得られた芯粒子への被覆を試みたところ、このような方法であっても、加熱を過度に行った場合には、特許文献2に開示されたトナーと同様の原因と思われる耐熱保存性の低下が生じることがあり、制御が容易ではないことがわかった。また、使用している樹脂微粒子が高ガラス転移温度で、且つ高分子量であるが故に、芯粒子の低温定着効果が十分に発揮できないことがわかった。
さらに、上記した特許文献4に開示されたトナーは、芯粒子の表面に樹脂微粒子を二段階で被覆し、固着もしくは融着することによって、低温定着性と耐熱保存性を両立させようとするものである。ところが、このトナーは、このように二段階の被覆工程を経て製造されるため、工程が煩雑である。また、懸濁重合で得られた芯粒子への被覆を試みたところ、特にガラス転移温度の高い樹脂微粒子を第二段目に使用する場合、十分な機械的強度を達成するための制御は容易ではないことがわかった。そのため、特許文献2に開示されたトナーと同様、得られたトナーの耐熱保存性は、必ずしも十分とはいえなかった。また、このトナーでも、使用している樹脂微粒子が高ガラス転移温度で、且つ高分子量であるが故に、芯粒子の低温定着効果が十分に発揮できないことがわかった。
以上、説明したように、ガラス転移温度の低い芯粒子とガラス転移温度の高い外殻から構成されるカプセル構造を有するトナーにおいて、低温定着性と耐熱保存性とを兼ね備えたトナーが待望されている。
特登録03030741号公報
特開2000−112174号公報
特開2001−201891号公報
特開2001−235894号公報
本発明の目的は、上述した従来の問題点を解決したトナーを提供することにある。
すなわち、本発明の目的は、特に懸濁重合法によるトナーにおいて、優れた低温定着性を有し、耐熱保存性にも優れ、高温環境下での使用においてもブロッキング現象が起こりにくいトナーを提供することにある。
本発明は、少なくとも重合性単量体と着色剤と該重合性単量体に溶解する樹脂を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に分散させ、該重合性単量体を重合して得られる芯粒子と、該芯粒子の表面に樹脂微粒子を固着させて形成した外殻から構成されるトナー粒子を有するトナーであって、該芯粒子がコアと該コアの表面を被覆してなる中間層を有し、該コアが前記重合性単量体を主構成材料とする重合体から形成されたものであり、該中間層が前記重合性単量体組成物中に予め溶解させた前記樹脂が重合時に芯粒子の表面部に偏析して形成されたものであり、前記中間層を構成する樹脂のガラス転移温度、および、前記外殻を構成する樹脂のガラス転移温度は、前記コアを構成する樹脂のガラス転移温度よりも高く、且つ前記中間層を構成する樹脂の重量平均分子量、および、前記外殻を構成する樹脂の重量平均分子量は、前記コアを構成する樹脂の重量平均分子量よりも小さいことを特徴とするトナーに関する。
本発明によれば、特に懸濁重合法によるトナーにおいて、優れた低温定着性を有し、耐熱保存性にも優れ、高温環境下での使用においてもブロッキング現象が起こりにくいトナーを提供することができる。
以下、本発明の好ましい実施の形態を挙げて、さらに詳しく説明する。
本発明者らは、懸濁重合法によって得られる芯粒子と、該芯粒子の表面に樹脂微粒子を固着させて形成した外殻から構成されるカプセル構造を有するトナーにおいて、コアと該コアの表面を被覆するように設けた中間層とで構成される芯粒子を用いることを試みた。このことによって、均質で、且つ機械的強度にも優れた外殻を形成することが可能になることを見出した。
さらに、前記コアと前記中間層と前記外殻の構成材料を、それぞれの樹脂のガラス転移温度並びに重量平均分子量が特定の関係となるように組み合わせることを試みた。すなわち、前記中間層と前記外殻を構成する樹脂のガラス転移温度が、前記コアを構成する樹脂のガラス転移温度よりも高くなるようにした。また、前記中間層と前記外殻を構成する樹脂の重量平均分子量が、前記コアを構成する樹脂の重量平均分子量よりも小さくなるようにした。この関係を同時に満足させることにより、前記芯粒子の低温定着性を維持したまま、トナーとしての耐熱保存性を大幅に改善することが可能になることを見出した。
こうして、本発明を完成するに至った。
外殻の構成材料である樹脂微粒子のガラス転移温度を、コアのガラス転移温度よりも高くする必要があることは言うまでもない。さらに、外殻とコアの間に該コアよりも高いガラス転移温度を有する中間層を設けると、従来のトナーに見られたような固着工程における樹脂微粒子の芯粒子内部への埋没を抑制することが可能になり、トナーの耐熱保存性を向上させることができる。そして、中間層のガラス転移温度が外殻のガラス転移温度よりも高ければ、その効果はさらに助長される。
一方、耐熱保存性を向上させる目的において、前記樹脂微粒子の分子量は、必ずしも高くする必要はない。従来のトナーに見られるように、高ガラス転移温度で、且つ高分子量の樹脂微粒子を固着または融着させると、定着領域でのトナー粘性に影響を及ぼすため、芯粒子本来の低温定着性が損なわれてしまう。
また、上述の中間層についても同様で、耐熱保存性向上のためには高いガラス転移温度を有していればよいのであって、高分子量である必要はない。高分子量の樹脂を中間層に用いると、低温定着性が損なわれるばかりか、懸濁重合法による芯粒子の製造時に粒度分布の揃った粒子を得ることが困難になるという新たな不具合を生じてしまう。したがって、中間層にはより低分子量の樹脂を用いることが好ましい。
ここで、前記コアのガラス転移温度は、20乃至60℃であることが好ましい。ガラス転移温度が20℃より低いと十分な耐熱保存性の改善効果が得られなくなり、60℃より高いと低温定着性が損なわれるため好ましくない。
また、前記中間層と前記コアのガラス転移温度の差、および前記外殻と前記コアのガラス転移温度の差は、それぞれ15乃至50℃の範囲であることが好ましい。ガラス転移温度の差が15℃より小さいと十分な耐熱保存性の改善効果が得られなくなり、50℃より大きいと低温定着性が損なわれるため好ましくない。
また、前記コアの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量の値で10000乃至100000であることが好ましい。重量平均分子量が10000より低いと、これを用いたトナーは高温オフセットを生じやすくなるという不具合が生じ、100000より高いと低温定着性が損なわれるため好ましくない。
尚、高温オフセットとは、定着時において溶融したトナーの一部が上述した熱ローラーや定着フィルムの表面に付着し、これが後続の被定着シートを汚染する現象をいう。
このように、本発明は、芯粒子の表面に樹脂微粒子を固着または融着させて外殻を形成したカプセル構造のトナーにおいて、懸濁重合法の特徴を利用して新たに中間層を設けたものである。また、コアと中間層と外殻をそれぞれ構成する樹脂のガラス転移温度の関係や、従来は考慮されてこなかった重量平均分子量の関係に着目し、これを規定したものである。そして、こうすることによって低温定着性と耐熱保存性とを兼ね備えたトナーを実現したものである。
したがって、単にin−situ重合法によるカプセル化技術と、樹脂微粒子の固着によるカプセル化技術とを組み合わせただけでは、本発明の目的を達成することは困難である。また、上述したような種類の異なる樹脂微粒子を併用する従来のトナーとも、技術を異にするものである。
以上の通りであるから、本発明によれば、特に懸濁重合法によるトナーにおいて、優れた低温定着性を有し、耐熱保存性にも優れ、高温環境下での使用においてもブロッキング現象が起こりにくいトナーの実現が可能となる。
ここで、前述のガラス転移温度は、例えば、TAインスツルメント社製の示差走査熱量計(2920MDSC)を用い、以下のようにして求めることができる。
まず、試料約6mgをアルミパンに精秤し、空のアルミパンをリファレンスパンとして用意し、窒素雰囲気下、測定温度範囲20乃至150℃で、昇温速度2℃/分、モジュレーション振幅±0.6℃、周波数1回/分の条件で測定を行う。
測定によって得られた昇温時のリバーシングヒートフロー曲線から、吸熱を示す曲線と前後のベースラインとの接線を描き、それぞれの接線の交点を結ぶ直線の中点を求めて、これをガラス転移温度とする。
また、重量平均分子量は、例えば、東ソー社製のGPC測定装置(HLC−8120GPC)を用い、以下のようにして測定することができる。
まず、試料をTHFに浸漬し、樹脂成分の濃度が0.05乃至0.6質量%となるように抽出を行い、この抽出液を孔径0.5μmの耐溶剤性メンブランフィルターで濾過して試料溶液とする。
次いで、カラムを40℃のヒートチャンバー中で安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを1ml/minの流速で流し、上記試料溶液を50乃至200μl注入して測定する。
試料の分子量の算出にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成した検量線を用い、その対数値とカウント数の関係から求める。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.製あるいは東ソー社製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を使用する。なお、カラムとしては、103乃至2×106の分子量領域を適格に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組み合わせるのがよく、本発明においては、次の条件で測定される。
GPC測定条件
装置:HLC−8120GPC(東ソー製)
カラム:KF801,802,803,804,805,806,807(Shodex製)
カラム温度:40℃
solv.:THF
本発明において、芯粒子となる重合体粒子は以下のようにして製造される。
まず、コアの主構成材料となる重合性単量体に、少なくとも中間層の構成材料となる前記重合性単量体に可溶な樹脂と着色剤とを加える。次に、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機を用いてこれらを均一に溶解あるいは分散させて重合性単量体組成物を調製する。このとき、上記重合性単量体組成物中には、必要に応じて多官能性単量体や連鎖移動剤、また、離型剤としてのワックスや荷電制御剤、可塑剤、さらに他の添加剤(例えば、分散剤)を適宜加えることができる。
次いで、上記重合性単量体組成物を、予め用意しておいた分散安定剤を含有する水系媒体中に投入し、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を用いて懸濁させ、造粒を行う。
重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に他の添加剤とともに混合してもよく、水系媒体中に懸濁させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。また、造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。
重合反応は、造粒後の懸濁液を温度50乃至90℃に加熱し、懸濁液中の重合性単量体組成物の粒子が粒子状態を維持し、且つ粒子の浮遊や沈降が生じることがないよう、撹拌しながら行う。
上記重合開始剤は、加熱によって容易に分解し、遊離基(ラジカル)を生成する。生成したラジカルは重合性単量体の不飽和結合に付加し、付加体のラジカルを新たに生成する。そして、生成した付加体のラジカルはさらに重合性単量体の不飽和結合に付加する。このような付加反応を連鎖的に繰り返すことによって重合反応が進行し、前記重合性単量体を主構成材料とするコアが形成される。
このとき、前記重合性単量体組成物の粒子中に溶解していた中間層の構成材料となる樹脂は、徐々に相分離を起こして、該重合性単量体組成物の粒子の表面に向かって移行を始め、重合反応の進行とともに重合体粒子の表面部に偏析して中間層が形成される。
そして、重合反応が完了した後、前記重合体粒子の分散液を、公知の方法によって濾過し、洗浄して乾燥する。
このようにして得られた、コアとその表面を被覆するように設けた中間層とで構成される重合体粒子を、芯粒子として使用する。
ここで、上記コアの主構成材料として用いることができる重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。
スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチル、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチルの如きアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド。
これらの重合性単量体の中でも、スチレンまたはスチレン誘導体と他の重合性単量体とを混合して使用することが、トナーの現像特性および耐久性の点から好ましい。そして、これら重合性単量体の混合比率は、所望するコアのガラス転移温度を考慮して、適宜選択すればよい。
また、上記中間層の構成材料として用いる樹脂は、上記重合性単量体には可溶で、且つ該重合性単量体からなる重合体に対しては完全に相溶しない樹脂が好適であリ、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニル系単量体で変性されたビニル変性ポリエステル樹脂を挙げることができる。
これらの中でも、ビニル変性ポリエステル樹脂は、コアとの親和性を保持しつつ、より被覆性に優れた中間層が形成されるため、特に好適である。
前記ポリエステル樹脂としては、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を公知の方法で重縮合させたものを使用することができる。
2価のアルコールとして、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、または下記一般式(1)で表されるビスフェノール誘導体、また、下記式(2)で示されるジオール。
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、且つx+yの平均値は2乃至10である。)
(式中、R’は−CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、または−CH
2−C(CH
3)
2−である。)
3価以上のアルコールとして、以下のものが挙げられる。ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン。
これらのアルコール成分は、単独で使用してもよいし、混合状態で使用してもよい。
2価のカルボン酸として、以下のものが挙げられる。ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きジカルボン酸;無水フタル酸、無水マレイン酸の如きジカルボン酸無水物;テレフタル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、アジピン酸ジメチルの如きジカルボン酸の低級アルキルエステル。
また、3価以上のカルボン酸を用いることにより、架橋させてもよい。3価以上のカルボン酸として、以下のものが挙げられる。トリメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリn−エチル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリn−ブチル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリn−ヘキシル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリイソブチル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリn−オクチル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリ2−エチルヘキシル。
また、ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に、1価のカルボン酸成分や1価のアルコ−ル成分を用いてもよい。1価のカルボン酸成分として、以下のものが挙げられる。安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸。1価のアルコ−ル成分として、以下のものが挙げられる。n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ラウリルアルコール、2−エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ドデシルアルコール。
前記ビニル変性ポリエステル樹脂は、上述したポリエステル樹脂とビニル系樹脂をハイブリッド化したもので、以下に示す(1)乃至(4)の方法によって製造することができる。
(1)ポリエステル樹脂ユニットを形成した後、該ユニットの存在下にビニル系単量体を添加して付加重合を行う方法。
(2)ビニル系樹脂ユニットを形成した後、該ユニットの存在下にポリエステルの原料となる多価アルコールおよび多価カルボン酸を添加して重縮合を行う方法。
(3)ポリエステル樹脂ユニットおよびビニル系樹脂ユニットをそれぞれ形成した後、これらを少量の有機溶剤に溶解あるいは膨潤させ、エステル化触媒を添加し、加熱することによって結合させる方法。
(4)ポリエステルの原料となる単量体(多価アルコールおよび多価カルボン酸)とビニル系単量体を混合し、付加重合及び重縮合を連続して行う方法。
これらの製造方法において、ポリエステル樹脂ユニットおよび/またはビニル系樹脂ユニット中には、両ユニット成分と反応し得る単量体成分を含有させることが好ましい。ポリエステル樹脂ユニットを構成する単量体の内、ビニル系樹脂ユニットと反応し得るものとして、以下のものが挙げられる。フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸またはその無水物。ビニル系樹脂ユニットを構成する単量体の内、ポリエステル樹脂ユニットと反応し得るものとして、以下のものが挙げられる。カルボキシル基を有する単量体、ヒドロキシ基を有する単量体、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類。
また、上記(1)の製造方法において、ポリエステル樹脂ユニットの末端に別途ビニル基を有する化合物を導入し、これにビニル系単量体を付加重合させることによって、ビニル系樹脂ユニットが結合したブロック型を有するハイブリッド樹脂を得ることもできる。このようなビニル基を有する化合物として、イソシアネート基を有するアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類を挙げることができる。
また、前記ビニル変性ポリエステル樹脂の製造に用いるビニル系単量体は、特に限定されるものではなく、ハイブリッド化によって得られる樹脂の上記重合性単量体組成物への溶解性や、上記コア層との相溶性、ガラス転移温度を考慮して任意に選択することができる。具体的には、上述したコアの主構成材料として使用する単量体と同様のものを用いることができる。
このような中間層の構成材料となる樹脂は、酸価を有していることがより好ましい。ここで、酸価を有しているとは、樹脂中に重縮合反応に与らないカルボキシル基が存在することを示すものである。酸価は、樹脂1gに含まれるカルボキシル基を中和するのに必要な水酸化カリウムの量で表され、以下の方法によって求められる。
基本操作は、JISK−0070に基づく。
1)試料0.5乃至2.0gを、300mlのビーカーに精秤する。このときの重量をWgとする。
2)これに、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150mlを加えて溶解する。
3)0.1mol/lのKOHエタノール溶液を用いて滴定する。滴定は、例えば、京都電子社製の電位差滴定測定装置AT−400(winworkstation)と、ABP−410電動ビュレットを用いての自動滴定を利用して行うことができる。
4)この時のKOH溶液の消費量をSmlとする。また、同時にブランクを測定して、この時のKOHの消費量をBmlとする。
5)次式により、酸価を計算する。尚、式中のfは、KOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×0.1f×56.1}/W
前記中間層の構成材料となる樹脂が酸価を有することで、液滴粒子中での配向性が増し、より均質な中間層の形成が可能になるが、酸価が高くなり過ぎると液滴粒子の安定性の低下を招くことがあるため好ましくない。したがって、好ましい酸価の範囲は、1.0乃至30.0mgKOH/gである。
そして、前記中間層の芯粒子全体に占める割合は、質量比で1乃至10%であることが好ましい。中間層の割合が1%に満たない場合は、トナー化したときに十分な耐熱保存性を得ることができず、10%を超える場合には、トナーとしての低温定着性が損なわれる傾向を示すため好ましくない。
上記芯粒子の製造において使用する重合開始剤は、特に限定されるものではなく、公知の過酸化物系重合開始剤やアゾ系重合開始剤を用いることができる。
過酸化物系重合開始剤として、以下のものが挙げられる。t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソノナノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシピバレート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシアセテート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサンの如きパーオキシエステル系重合開始剤;ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−n−ペンチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートの如きパーオキシジカーボネート系重合開始剤;ジイソブチリルパーオキサイド、ジイソノナノイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ−m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイル−m−トルオイルパーオキサイドの如きジアシルパーオキサイド系重合開始剤;t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネートの如きパーオキシモノカーボネート系重合開始剤;1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタンの如きパーオキシケタール系重合開始剤;ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイドの如きジアルキルパーオキサイド系重合開始剤。
アゾ系重合開始剤として、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル。
これらの重合開始剤の中でも、過酸化物系重合開始剤は分解物の残留が少ないため好適である。また、これら重合開始剤は、必要に応じて2種以上同時に用いることもできる。この際、使用される重合開始剤の好ましい使用量は、単量体100質量部に対し0.1乃至20質量部である。
また、上記芯粒子の製造においては、分子量の調整を目的として、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、以下のものが挙げられる。n−ペンチルメルカプタン、イソペンチルメルカプタン、2−メチルブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘプチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、t−ノニルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン、n−ペンタデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、t−ヘキサデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタンの如きアルキルメルカプタン類;チオグリコール酸のアルキルエステル類;メルカプトプロピオン酸のアルキルエステル類;クロロホルム、四塩化炭素、臭化エチレン、四臭化炭素の如きハロゲン化炭化水素類;α−メチルスチレンダイマー。
これらの連鎖移動剤は必ずしも使用する必要はないが、使用する場合の好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.05乃至3質量部である。
また、上記芯粒子の製造においては、耐高温オフセット性の改善を目的として、少量の多官能性単量体を併用することができる。多官能性単量体としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンの如き芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートの如き二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンの如きジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物。
これらの多官能性単量体は必ずしも使用する必要はないが、使用する場合の好ましい添加量は、重合性単量体100質量部に対して0.01乃至1質量部である。
また、上記芯粒子の製造において、水系媒体中に添加する分散安定剤としては、公知の界面活性剤や有機分散剤、無機分散剤を使用することができる。これらの中でも無機分散剤は超微粉が生成しにくく、重合温度を変化させても安定性が崩れにくく、洗浄も容易でトナーに悪影響を与えにくいため、好適に使用することができる。こうした無機分散剤として、以下のものが挙げられる。リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛の如きリン酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き無機塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナの如き無機酸化物。
これらの無機分散剤を用いる場合、そのまま水系媒体中に添加して用いてもよいが、より細かい粒子を得るため、無機分散剤粒子を生成し得る化合物を用いて水系媒体中で調製して用いることもできる。例えば、リン酸三カルシウムの場合、高速撹拌下、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性のリン酸三カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。これらの無機分散剤は、重合終了後に酸あるいはアルカリを加えて溶解することにより、ほぼ完全に取り除くことができる。
また、これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2乃至20質量部を単独で使用することが望ましいが、必要に応じて0.001乃至0.1質量部の界面活性剤を併用してもよい。界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム。
一方、本発明において使用する外殻の構成材料としての樹脂微粒子は、如何なる方法で製造されたものであってもよく、乳化重合法やソープフリー乳化重合法、転相乳化法の如き公知の方法によって製造されたものを用いることができる。これらの製法の中でも、転相乳化法は、乳化剤や分散安定剤を必要とせず、より小粒径の樹脂微粒子が容易に得られるため、特に好適である。
転相乳化法では、自己水分散性を有する樹脂、あるいは中和によって自己水分散性を発現し得る樹脂を使用する。ここで、自己水分散性を有する樹脂とは、水系媒体中で自己分散が可能な官能基を分子内に含有する樹脂であって、具体的には酸性基もしくはその塩を含有する樹脂である。また、中和によって自己水分散性を発現し得る樹脂とは、中和によって親水性が増大し、水系媒体中での自己分散が可能となり得る酸性基を、分子内に含有する樹脂である。
これらの自己水分散型の樹脂を有機溶剤に溶解し、必要に応じて中和剤を加え、撹拌しながら水系媒体と混合すると、前記樹脂の溶解液が転相乳化を起こして微小な粒子を生成する。前記有機溶剤は、転相乳化後に加熱、減圧の如き方法を用いて除去する。
このように、転相乳化法によれば、前記酸性基の作用によって実質的に乳化剤や分散安定剤を用いることなく、安定した樹脂微粒子の水系分散体を得ることができる。
こうして得られた樹脂微粒子は、そのまま水系分散体として芯粒子への固着工程に供することができる。また、前記水系分散体に酸を添加して樹脂中の酸性基を塩の状態から酸の状態に戻し、ろ過および洗浄を行った後、水に再分散させて使用してもよい。
前記樹脂の材質としては、トナーの結着樹脂として使用し得るものであれば良く、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂が用いられる。上述した中間層の構成材料がポリエステル樹脂あるいはビニル変性ポリエステル樹脂である場合には、同質のポリエステル樹脂を用いることが、より強固に固着し得る点で特に好ましい。
また、前記酸性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基が挙げられる。これらの中でもカルボキシル基、スルホン酸基あるいはこれらを併用して用いることが好ましく、少なくともスルホン酸基が含まれていることが、トナーに良好な摩擦帯電性を付与できる点で特に好ましい。
また、前記樹脂の酸価は、5.0乃至40.0mgKOH/gであることが好ましい。酸価が5.0mgKOH/gよりも少ない場合は、十分な自己水分散性を有する微粒子を得ることができず、酸価が40.0mgKOH/gよりも高い場合は、トナー化したときの吸湿性が増し、摩擦帯電の安定性が損なわれることがあるため好ましくない。尚、ここでいう酸価とは、前記酸性基の含有量を表すもので、酸性基が塩の状態である場合には、酸の状態に戻したものとして算出した値を示す。
また、前記有機溶剤は、前記樹脂を溶解するものであれば特に限定されるものではないが、脱溶剤が容易な低沸点の溶剤を使用することがより好ましい。
前記樹脂微粒子の好ましい平均粒径は、レーザー散乱法による粒度分布測定によって求められるメジアン径の値で、10乃至100nmの範囲である。平均粒径が10nmに満たない場合は、十分な厚さを有する外殻を形成することが困難となり、100nmを超える場合には、均質な厚みの外殻を形成することが困難となる。したがって、いずれの場合も十分な耐熱保存性を有するトナーを得ることはできない。
尚、メジアン径とは、粒度分布の累積曲線の50%値(中央累積値)として定義される粒子径であり、例えば、堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA−920)を用いて測定することができる。
芯粒子の表面に樹脂微粒子を付着させる場合、通常、これらを水系媒体中に分散させた状態で行う。芯粒子と樹脂微粒子の極性が大きく異なる場合は、電気的な吸引力によって付着させることができるが、そうでない場合には、外的な手段を用いて樹脂微粒子の分散状態を制御する必要がある。具体的な方法としては、水系媒体のpHを調整する方法や、水系媒体中に無機塩を添加する方法が挙げられる。いずれの場合も、樹脂微粒子の分散状態を急激に変化させると、樹脂微粒子同士が単独凝集を起こして均一に付着させることできなくなるため、これらの操作は徐々に行うことが好ましい。
また、樹脂微粒子を付着させた後は、容易に剥離・脱落を起こさないよう、固着または融着を行う。具体的な方法としては、水系媒体中に分散させた状態のままで加熱処理する方法や、樹脂微粒子を溶解あるいは膨潤する溶剤を加えて吸収させ、皮膜化した後に溶剤を除去する方法、ろ過および乾燥を行って取り出した粉体を、加熱下で撹拌混合処理する方法等が挙げられる。これらの方法の中でも、水系媒体中で加熱処理する方法は、より均一で且つ強固に固着できる点、および操作が簡便である点で好ましい。ただし、付着させる樹脂微粒子の量が少ない場合や、樹脂微粒子が芯粒子に対して十分に高いガラス転移温度を有していない場合は、芯粒子同士までもが融着を起こすことがある。
本発明を達成するための、樹脂微粒子の付着および固着方法として、特に好ましい一例を以下に説明する。ここに挙げた方法によれば、芯粒子同士の融着を効果的に抑制することができ、外殻の薄層化や低ガラス転移温度化が可能になる。
まず、上述の方法に従って、懸濁重合法による芯粒子を製造する。このとき、分散安定剤には、例えばリン酸三カルシウムのような芯粒子に対する極性が大きく異なる無機分散剤を使用し、重合完了後も芯粒子表面に付着した分散安定剤の除去は行わず、そのまま撹拌を続ける。
次いで、分散安定剤が付着した状態の芯粒子分散液に、該分散安定剤に対する極性が芯粒子と同じであり、且つ該芯粒子のコアよりも高いガラス転移温度を有する樹脂微粒子の水系分散体を添加する。これにより、芯粒子の表面に分散安定剤が介在した状態で、樹脂微粒子が均一に付着する。
次いで、この分散液を、前記芯粒子のコアのガラス転移温度以上になるまで加熱する。
そして、分散液の温度を、前記芯粒子のコアのガラス転移温度から前記樹脂微粒子のガラス転移温度までの温度範囲内に保ちながら、これに酸をゆっくり添加して前記分散安定剤を徐々に溶解させる。このようにして分散安定剤が取り除かれると、それと同時に樹脂微粒子が芯粒子の表面と接触し、均一な状態を維持したまま固着される。
このようにして、薄層でありながら、均質で且つ機械的強度にも優れた外殻を有する、カプセル構造のトナーを得ることができる。
本発明において、樹脂微粒子によって形成される外殻は、芯粒子の表面を90%以上被覆していることが好ましく、100%被覆していることが特に好ましい。このような被覆率を満足するための前記樹脂微粒子の好適な使用量は一義的に決まるものではなく、前記芯粒子と前記樹脂微粒子それぞれの粒子径に応じて適宜調整すればよい。また、固着させる樹脂微粒子は必ずしも一層である必要はなく、100%被覆させるためには多層であってもよい。
尚、被覆率は、個々のトナー断面の透過電子顕微鏡(TEM)による観察像から直接的に求めることもできるが、樹脂微粒子が該樹脂に固有の元素(例えば、スルホン酸基に由来するS元素)を含有する場合には、例えば蛍光X線分析装置(XRF)を用いてトナー中に含まれる該元素の定量分析を行い、計算によって求めることもできる。
本発明のトナーにおいて使用される着色剤としては、公知のものが使用でき、黒色着色剤としてのカーボンブラック、磁性粉体、また、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤が挙げられる。
イエロー着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180が好適に用いられる。
マゼンタ着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン着色剤としては、以下のものが挙げられる。銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
これらの着色剤は単独または混合し、更には固溶体の状態で用いることができる。黒色着色剤として磁性粉体を用いる場合、その添加量は重合性単量体100質量部に対して40乃至150質量部であることが好ましい。黒色着色剤としてカーボンブラックを用いる場合、その添加量は重合性単量体100質量部に対して1乃至20質量部であることが好ましい。また、カラートナーの場合、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択され、その好ましい添加量は、重合性単量体100質量部に対して1乃至20質量部である。
これらの着色剤は、重合阻害性や水相移行性にも注意を払う必要があり、必要に応じて、疎水化処理の如き表面改質を施すことが好ましい。例えば、染料系の着色剤を表面処理する好ましい方法としては、予め染料の存在下に重合性単量体を重合させる方法が挙げられ、得られた着色重合体を単量体組成物に添加する。カーボンブラックについては、上記染料と同様の処理の他に、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質、例えば、ポリオルガノシロキサンでグラフト処理を行ってもよい。
また、磁性粉体は、四三酸化鉄、γ−酸化鉄等の酸化鉄を主成分とするものであり、一般に親水性を有している。そのため、分散媒としての水との相互作用によって磁性粉体が粒子表面に偏在しやすく、得られるトナー粒子は表面に露出した磁性粉体のために流動性および摩擦帯電の均一性に劣るものとなる。したがって、磁性粉体はカップリング剤によって表面を均一に疎水化処理することが好ましい。使用できるカップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤が挙げられ、特にシランカップリング剤が好適に用いられる。
本発明のトナーは、定着性向上のために離型剤を内包させることが好ましい。使用可能な離型剤としては、以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムの如き石油系ワックスおよびその誘導体;モンタンワックスおよびその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックスおよびその誘導体;ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックスおよびその誘導体;カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックスおよびその誘導体。誘導体には、酸化物やビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が含まれる。さらに、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸の如き脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスも使用できる。これらの離型剤は単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
これらの離型剤の中でも、示差走差熱量計により測定されるDSC曲線において昇温時に温度40乃至130℃の領域に最大吸熱ピークを有するものが好ましく、さらには温度45乃至120℃の領域に有するものがより好ましい。このような離型剤を用いることにより、低温定着性に大きく寄与しつつ、離型性をも効果的に発現することができる。最大吸熱ピークが40℃未満であると離型剤成分の自己凝集力が弱くなり、結果として耐高温オフセット性が低下する。また、定着時以外での離型剤の染み出しが生じやすくなり、トナーの摩擦帯電量が低下するとともに、高温高湿下での耐久性が低下する。一方、最大吸熱ピークが130℃を超えると定着温度が高くなり、低温オフセットが発生しやすくなるため好ましくない。さらに、最大吸熱ピーク温度が高過ぎると造粒中に離型剤成分が析出するという不具合を生じ、離型剤の分散性が低下するため好ましくない。
離型剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対し1乃至30質量部であることが好ましく、3乃至20質量部であることがより好ましい。離型剤の含有量が1質量部未満では、十分な添加効果が得られず、オフセット抑制効果も低下する。一方、30質量部を超えると、長期間の保存性が低下するとともに、着色剤等他のトナー材料の分散性が悪くなり、トナーの流動性の低下や画像特性の低下を招きやすい。また、定着時以外にも離型剤成分の染み出しが生じるようになり、高温高湿下での耐久性が低下する。
また、本発明のトナーは、荷電特性の安定化を目的として、必要に応じて荷電制御剤を含有させることができる。含有させる方法としては、トナー粒子の内部に添加する方法と外添する方法がある。荷電制御剤としては公知のものを利用することができるが、内部に添加する場合には重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物を実質的に含まない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤として、以下のものが挙げられる。サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸等の芳香族カルボン酸の金属化合物;アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体;スルホン酸またはカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物;ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン。また、ポジ系荷電制御剤として、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
これらの荷電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではない。内部添加する場合は、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1乃至10質量部、より好ましくは0.1乃至5質量部の範囲で用いられる。また、外部添加する場合は、好ましくはトナー100質量部に対して0.005乃至1.0質量部、より好ましくは0.01乃至0.3質量部である。
本発明によって得られるトナーの重量平均粒径は、より微小な静電潜像のドットを忠実に現像し、高画質な画像を得るため、3.0乃至10.0μmであることが好ましい。重量平均粒径が3.0μm未満になると、転写効率の低下から感光体上の転写残トナーが多くなり、接触帯電工程における感光体の削れやトナー融着の抑制が難しくなる。また、トナー全体の表面積が増大することに加え、粉体としての流動性および撹拌性が低下し、個々のトナー粒子を均一に摩擦帯電させることが困難となることから、ゴースト、カブリ、転写性が低下する傾向となり好ましくない。一方、重量平均粒径が10.0μmを超えると、文字やライン画像に飛び散りが生じやすく、高解像度が得られにくくなる。また、装置が高解像度になっていくと、1ドットの再現性が悪化する傾向になる。
ここで、トナーの平均粒径および粒度分布は、コールターカウンターTA−II型あるいはコールターマルチサイザー(いずれもコールター社製)を用いて測定することが可能である。本発明では、コールターマルチサイザーを用い、これに個数分布と体積分布を出力するインターフェイス(日科機社製)、およびPC9801パーソナルコンピューター(NEC社製)を接続した。電解液には、1級塩化ナトリウムを用いて調製した1%のNaCl水溶液を使用した。
測定法としては、前記電解液100乃至150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1乃至5ml加え、さらに測定試料を2乃至20mg加える。次いで、この電解液に超音波分散器で約1乃至3分間分散処理を施し、前記コールターマルチサイザーにより、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて2μm以上の粒子の体積および個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから、体積分布から求めた重量平均粒径(D4)、個数分布から求めた個数平均粒径(D1)を求める。
本発明によって得られるトナーの平均円形度は、0.970以上であることが好ましい。平均円形度とは、トナー粒子の凹凸度合いを表す指標であり、トナーが完全な球形の場合1.000を示し、表面形状が複雑になるほど小さな値となる。すなわち、平均円形度が0.970以上であるということは、トナー形状が実質的に球形であることを意味している。このような形状を有するトナーは、摩擦帯電が均一になりやすく、カブリやスリーブゴーストの抑制に効果的である。また、トナー担持体上に形成されるトナーの穂が均一であるため、現像部での制御が容易となる。さらに、球形であるが故に流動性も良好であり、現像器内でのストレスを受けにくいため、高湿度下での長期の使用においても帯電性が低下しにくい。そして、定着時においても熱や圧力がトナー全体に均一にかかりやすいため、定着性の向上にも寄与する。
なお、本発明における平均円形度は、シスメックス社製のフロー式粒子像分析装置(FPIA−3000型)を用いて測定を行った。
具体的な測定方法としては、イオン交換水20mlに分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を適量加えた後、測定試料0.02gを加える。そして、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散機(例えば、ヴェルヴォクリーア社製のVS−150等)を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像測定装置を用い、シース液にはシスメックス社製のパーティクルシース(PSE−900A)を使用する。前記手順に従って調整した分散液を前記フロー式粒子像測定装置に導入し、トータルカウントモードで3000個のトナー粒子を計測して、解析粒子径を円相当径3.00μm以上200.00μm以下に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製5200Aをイオン交換水で希釈したもの)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像測定装置を使用した。そして、解析粒子径を円相当径3.00μm以上200.00μm以下に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
そして、本発明のトナーには、流動性向上剤が外部添加されていることが画質向上のために好ましい。流動性向上剤としては、ケイ酸微粉体、酸化チタン、酸化アルミニウムの如き無機微粉体が好適に用いられる。これら無機微粉体は、シランカップリング剤、シリコーンオイルまたはそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化処理されていることが好ましい。
本発明のトナーは、そのまま一成分系現像剤として、あるいは磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。二成分系現像剤として用いる場合、混合するキャリアの平均粒径は10乃至100μmであることが好ましく、現像剤中のトナー濃度は2乃至15質量%であることが好ましい。
以下、本発明の製造方法について、実施例を用いて具体的に説明する。
<合成例1:樹脂微粒子分散液(a)>
(ポリエステル樹脂の作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、エステル化触媒としてテトラブトキシチタネート0.03質量部を添加し、窒素雰囲気下、温度220℃に昇温して、撹拌しながら5時間反応を行った。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物:49.6質量部
エチレングリコール:8.9質量部
テレフタル酸:22.4質量部
イソフタル酸:15.2質量部
5−ナトリウムスルホイソフタル酸:3.9質量部
次いで、反応容器内を5乃至20mmHgに減圧しながら、さらに5時間反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
(樹脂微粒子分散液の作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、得られたポリエステル樹脂100.0質量部とメチルエチルケトン45.0質量部、テトラヒドロフラン45.0質量部を仕込み、温度80℃に加熱して溶解した。
次いで、撹拌下、温度80℃のイオン交換水300.0質量部を添加して水分散させた後、得られた水分散体を蒸留装置に移し、留分温度が100℃に達するまで蒸留を行った。
冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液(a)とした。
<合成例2:樹脂微粒子分散液(b)>
(ポリエステル樹脂の作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、エステル化触媒としてテトラブトキシチタネート0.03質量部を添加し、窒素雰囲気下、温度220℃に昇温して、撹拌しながら5時間反応を行った。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物:50.0質量部
エチレングリコール:9.0質量部
テレフタル酸:21.1質量部
イソフタル酸:14.3質量部
次いで、無水トリメリット酸5.6質量部を加え、反応容器内を5乃至20mmHgに減圧しながら、さらに5時間反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
(樹脂微粒子分散液の作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、得られたポリエステル樹脂100.0質量部とブチルセロソルブ75.0質量部を仕込み、温度90℃に加熱して溶解した後、70℃まで冷却した。
次いで、1モル/リットルのアンモニア水溶液18.0質量部を加え、上記温度を保持しながら30分間撹拌を行った後、温度70℃のイオン交換水300.0質量部を添加して水分散させた。得られた水分散体を蒸留装置に移し、留分温度が100℃に達するまで蒸留を行った。
冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液(b)とした。
<合成例3:樹脂微粒子分散液(c)>
合成例1において、単量体の仕込み量を下記のように変更した以外は、合成例1と同様にしてポリエステル樹脂の水分散体を得た。これを、樹脂微粒子分散液(c)とした。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物:63.0質量部
エチレングリコール:7.6質量部
テレフタル酸:12.7質量部
イソフタル酸:12.7質量部
フマル酸:9.1質量部
5−ナトリウムスルホイソフタル酸:4.1質量部
<合成例4:樹脂微粒子分散液(d)>
(スチレン/アクリル系樹脂の作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器にメチルエチルケトン100.0質量部を仕込み、窒素雰囲気下、温度80℃に昇温した。次いで、下記の単量体からなる混合物に重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート3.0質量部を添加し、撹拌しながら2時間かけて滴下した。
スチレン:94.2質量部
メチルメタクリレート:2.4質量部
メタクリル酸:3.3質量部
次いで、上記温度を保持しながら10時間重合反応を行い、冷却後、反応溶液をヘキサン中に滴下して再沈精製を行い、ろ過し、乾燥してスチレン/アクリル系樹脂を得た。
(樹脂微粒子分散液の作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、メチルエチルケトン150.0質量部を仕込み、上記スチレン/アクリル系樹脂100.0質量部を加えて溶解した。
次いで、1モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液40.0質量部を加え、30分間撹拌を行った後、イオン交換水500.0質量部を添加して水分散させた。
得られた水分散体を減圧蒸留して脱溶剤し、イオン交換水を加えて分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液(d)とした。
<合成例5:樹脂微粒子分散液(e)>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、イオン交換水350.0質量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5質量部を仕込み、窒素雰囲気下、温度90℃に昇温した。次に、2%過酸化水素水溶液8質量部、および2%アスコルビン酸水溶液8質量部を添加した。
次いで、下記の単量体混合物と乳化剤水溶液および重合開始剤水溶液を、撹拌しながら5時間かけて滴下した。
(単量体)
スチレン:75.2質量部
n−ブチルアクリレート:22.8質量部
アクリル酸:2.0質量部
t−ドデシルメルカプタン:0.05質量部
(乳化剤)
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:0.3質量部
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル:0.01質量部
イオン交換水:20.0質量部
(重合開始剤)
2%過酸化水素水溶液:40質量部
2%アスコルビン酸水溶液:40質量部
滴下後、上記温度を保持しながら、さらに2時間重合反応を行い、冷却してスチレン/アクリル系樹脂の水分散体を得た。
得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液(e)とした。
<合成例6:樹脂微粒子分散液(f)>
合成例5において、単量体混合物を下記のように変更した以外は、合成例5と同様にしてスチレン/アクリル系樹脂の水分散体を得た。これを、樹脂微粒子分散液(f)とした。
スチレン:95.9質量部
メチルメタクリレート:2.3質量部
アクリル酸:1.8質量部
t−ドデシルメルカプタン:0.05質量部
こうして得られた樹脂微粒子分散液(a)乃至(f)について、各分散液中の微粒子の平均粒径を、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した。また、各分散液に使用した樹脂の酸価、ガラス転移温度、重量平均分子量をそれぞれ測定した。樹脂微粒子分散液(e)および(f)については、分散液の一部を洗浄して乾燥し、固形分として取り出したものを測定した。尚、スルホン酸基を有する樹脂微粒子分散液(a)および(c)の酸価は、各樹脂中のS元素量を蛍光X線分析装置(XRF)を用いて測定し、計算によって求めたものである。結果を、それぞれ表1にまとめて示した。
<合成例7:中間層形成用樹脂(A)>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、エステル化触媒としてジブチル錫オキサイド0.05質量部を添加し、窒素雰囲気下、温度220℃に昇温した。撹拌しながら、且つ生成するメタノールを留去しながら5時間反応を行った。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物:69.6質量部
テレフタル酸:21.7質量部
無水トリメリット酸:8.7質量部
反応容器内を5乃至20mmHgに減圧しながらさらに5時間反応を行い、前駆体となるポリエステル樹脂樹脂(1)を得た。
次いで、得られた前駆体樹脂(1)100.0質量部をメトキシブチルアセテート400.0質量部に溶解し、これに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネ−ト3.0質量部、ラウリン酸ジブチル錫0.03質量部、メトキシブチルアセテート20.0質量部からなる溶液を滴下して反応を行った。反応の進行はIR(赤外吸収スペクトル)によってモニターしつつ、2200cm-1付近のイソシアネート基に由来するピークが消失するまで行った。
その後、反応溶液をヘキサン中に滴下して再沈精製を行い、ろ過し、乾燥して、末端に不飽和結合を有する前駆体樹脂(2)を得た。
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器にキシレン100.0質量部を仕込み、上記前駆体樹脂(2)71.5質量部を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら温度50℃に昇温した。次いで、スチレン30.0質量部に重合開始剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート3.0質量部を添加して上記反応容器内に滴下し、さらに温度120℃まで昇温した。上記温度で5時間重合反応を行い、室温まで冷却した。
その後、ヘキサン中に滴下して再沈精製を行い、ろ過した後、さらにヘキサンによる洗浄とろ過の操作を2回繰り返し、減圧下温度50℃で乾燥して、スチレンで変性されたポリエステル樹脂を得た。これを、中間層形成用樹脂(A)とした。
<合成例8:中間層形成用樹脂(B)>
合成例7において、単量体の仕込み量を下記のように変更した以外は、合成例7と同様にして反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。これを、中間層形成用樹脂(B)とした。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物:69.9質量部
テレフタル酸:24.3質量部
無水トリメリット酸:5.8質量部
<合成例9:中間層形成用樹脂(C)>
合成例7において、スチレン30.0質量部を、スチレン23.4質量部とn−ブチルアクリレート6.6質量部に変えた以外は合成例7と同様にして、スチレンとn−ブチルアクリレートで変性されたポリエステル樹脂を得た。これを、中間層形成用樹脂(C)とした。
<合成例10:中間層形成用樹脂(D)>
合成例7において、スチレン30.0質量部を、スチレン15.0質量部とn−ブチルアクリレート15.0質量部に変えた以外は合成例7と同様にして、スチレンとn−ブチルアクリレートで変性されたポリエステル樹脂を得た。これを、中間層形成用樹脂(D)とした。
<合成例11:中間層形成用樹脂(E)>
合成例7において、前駆体樹脂(1)を合成する際の反応条件と、スチレン変性する際の反応条件を調整して、高分子量化したスチレン変性ポリエステル樹脂を得た。これを、中間層形成用樹脂(E)とした。
<合成例12:中間層形成用樹脂(F)>
合成例7において、単量体の仕込み量を下記のように変更し、合成例7と同様の方法で反応を行って得られた前駆体樹脂を使用した以外は合成例7と同様にして、酸価を持たないスチレン変性ポリエステル樹脂を得た。これを、中間層形成用樹脂(F)とした。
ビスフェノールA−プロピレンオキシド2モル付加物:71.3質量部
テレフタル酸:28.7質量部
こうして得られた中間層形成用樹脂(A)乃至(F)の、酸価、ガラス転移温度、重量平均分子量の値を、それぞれ表2にまとめて示した。
<合成例13:芯粒子分散液(A1)>
(顔料分散ペーストの作製)
スチレン:212.9質量部
Cuフタロシアニン(Pigment Blue 15:3):19.7質量部
上記材料を容器中で十分プレミクスした後、これを温度20℃以下に保ったままアトライター(三井三池化工機製)を用いて約4時間均一に分散混合し、顔料分散ペーストを作製した。
(芯粒子分散液の作製)
イオン交換水1152.0質量部に0.1モル/リットル−Na3PO4水溶液390.0質量部を投入し、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて撹拌しながら、温度60℃に加温した。1.0モル/リットル−CaCl2水溶液58.0質量部を添加してさらに撹拌を続け、Ca3(PO4)2からなる分散安定剤を含む水系媒体を調製した。
一方、上記顔料分散ペーストに以下の材料を加え、アトライター(三井三池化工機製)を用いて分散混合し、重合性単量体組成物を調製した。
n−ブチルアクリレート:114.7質量部
中間層形成用樹脂(A):20.0質量部
上記単量体組成物を60℃に加温し、これにエステルワックス(主成分C19H29COOC20H41、m.p.68.6℃)32.7質量部を添加して混合溶解した。
次いで、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)9.8質量部をさらに添加して溶解した。
これを前記水系媒体中に投入し、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて、温度60℃、窒素雰囲気下にて、10,000rpmで15分間撹拌して造粒を行った。
さらに、得られた懸濁液を、パドル撹拌翼で撹拌しつつ、温度60℃にて10時間重合を行った。
重合終了後、得られた重合体粒子の分散液を冷却し、イオン交換水を加えて分散液中の重合体粒子濃度が20%になるように調整した。これを、芯粒子分散液(A1)とした。
<合成例14:芯粒子分散液(A2)>
合成例13において、中間層形成用樹脂(A)20.0質量部を、3.9質量部に変えた以外は合成例13と同様にして、芯粒子分散液(A2)を作製した。
<合成例15:芯粒子分散液(A3)>
合成例13において、中間層形成用樹脂(A)20.0質量部を、42.3質量部に変えた以外は合成例13と同様にして、芯粒子分散液(A3)を作製した。
<合成例16乃至20:芯粒子分散液(B)乃至(F)>
合成例13において、中間層形成用樹脂(A)に代えて、中間層形成用樹脂(B)乃至(F)をそれぞれ用いた以外は合成例13と同様にして、芯粒子分散液(B)乃至(F)を作製した。
<合成例21:芯粒子(G)>
合成例13において、中間層形成用樹脂(A)を用いなかった以外は合成例13と同様の方法で重合を行った。
重合終了後、得られた重合体粒子の分散液を冷却し、塩酸を加えて分散安定剤を溶解した後、ろ過し、水洗および乾燥して重合体粒子を得た。これを、芯粒子(G)とした。
芯粒子分散液(A1)乃至(F)については、それぞれ一部を抜き取り、塩酸を加えて分散安定剤を除去した後、ろ過、水洗および乾燥を行った。
こうして得られた芯粒子(A1)乃至(F)、および芯粒子(G)について、平均粒径と平均円形度の測定を行った。結果を、それぞれ表3にまとめて示した。
※中間層形成用樹脂の添加量は、芯粒子全体に占める割合で示した。
表3から明らかなように、芯粒子(A1)乃至(D)は、いずれも平均粒径、円形度ともに良好な値を示している。ただ、高分子量の中間層形成用樹脂(E)を用いた芯粒子(E)、および酸価を持たない中間層形成用樹脂(F)を用いた芯粒子(F)は、平均粒径が若干大きく、円形度もやや低い値を示した。また、中間層形成用樹脂を使用せずに作製した芯粒子(G)は、さらに粗粒化し、粒度分布のブロード化が見られ、円形度も低下していた。
尚、芯粒子(G)について、ガラス転移温度と重量平均分子量の測定を行ったところ、ガラス転移温度は42℃、重量平均分子量は42300であった。このことから、芯粒子(A1)乃至(F)のコアについても、それぞれ同様の物性を有しているものと見積もることができる。
<実施例1>
(トナー粒子の作製)
合成例13で得られた芯粒子分散液(A1)500.0質量部(固形分100.0質量部)に、撹拌下、合成例1で得られた微粒子分散液(a)25.0質量部(固形分5.0質量部)を添加し、30分間撹拌を続けた後、温度55℃に昇温した。
次いで、0.2モル/リットルの塩酸水溶液を、0.005リットル/分の滴下速度で、上記分散液のpHが1.5になるまで滴下した。
上記温度を保持しながら、さらに3時間撹拌を続けた後、冷却し、ろ過し、水洗および乾燥してトナー粒子を得た。
(トナーの作製)
シリカ微粉体100質量部を、10質量部のヘキサメチルジシラザンで処理し、さらに10質量部のシリコーンオイルで処理して、一次粒径12nm、BET比表面積が120m2/gの疎水性シリカ微粉体を調製した。次いで、上記トナー粒子100.0質量部に対して、該疎水性シリカ微粉体1.0質量部を加え、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機製)を用いて混合した。こうして、本発明のトナーを作製した。
<実施例2>
実施例1において、微粒子分散液(a)に代えて、微粒子分散液(b)を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを作製した。
<実施例3>
実施例1において、芯粒子分散液(A1)に代えて、芯粒子分散液(B)を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを作製した。
<比較例1>
(トナー粒子の作製)
イオン交換水380.0質量部に、合成例5で得られた微粒子分散液(e)25.0質量部(固形分5.0質量部)を加え、撹拌しながら、合成例21で得られた芯粒子(G)100.0質量部を徐々に添加して均一に分散させた。
これに、1モル/リットルの塩酸水溶液を加えて分散液のpHを2.0に調整し、1時間撹拌した後、分散液の温度を50℃に昇温して、さらに5時間撹拌を行った。
次いで、得られた分散液を冷却し、ろ過し、水洗および乾燥してトナー粒子を得た。
(トナーの作製)
得られたトナー粒子に、実施例1と同様の方法で疎水性シリカ微粉体を外添して、比較例のトナーを作製した。
<比較例2>
(顔料分散ペーストの作製)
スチレン:187.0質量部
Cuフタロシアニン(Pigment Blue 15:3):19.6質量部
上記材料を容器中で十分プレミックスした後、これを温度20℃以下に保ったままアトライター(三井三池化工機製)を用いて約4時間均一に分散混合し、顔料分散ペーストを作製した。
(トナー粒子の作製)
イオン交換水1152.0質量部に0.1モル/リットル−Na3PO4水溶液390.0質量部を投入し、撹拌しながら温度60℃に加温した。1.0モル/リットル−CaCl2水溶液58.0質量部を添加してさらに撹拌を続け、Ca3(PO4)2からなる分散安定剤を含む水系媒体を調製した。
一方、上記顔料分散ペーストに以下の材料を加え、アトライター(三井三池化工機製)を用いて分散混合し、重合性単量体組成物を調製した。
n−ブチルアクリレート:100.5質量部
中間層形成用樹脂(A):60.0質量部
荷電制御剤(BONTRON E−84(オリエント化学社)):3.3質量部
上記単量体組成物を60℃に加温し、これにエステルワックス(主成分C19H29COOC20H41、m.p.68.6℃)32.9質量部を添加して混合溶解した。
次いで、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8.8質量部をさらに添加して溶解した。
これを前記水系媒体中に投入し、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて、温度60℃、窒素雰囲気下にて、10,000rpmで15分間撹拌して造粒を行った。
さらに、得られた懸濁液を、パドル撹拌翼で撹拌しつつ、温度60℃にて10時間重合を行った。
重合終了後、得られた重合体粒子の分散液を冷却し、塩酸を加えて分散安定剤を溶解した後、濾過し、水洗および乾燥してトナー粒子を得た。
(トナーの作製)
得られたトナー粒子に、実施例1と同様の方法で疎水性シリカ微粉体を外添して、比較例のトナーを作製した。
<比較例3>
(トナー粒子の作製)
イオン交換水360.0質量部に、合成例5で得られた微粒子分散液(e)25.0質量部と合成例6で得られた微粒子分散液(f)25.0質量部(いずれも固形分5.0質量部)を加えた。次に、撹拌しながら、合成例21で得られた芯粒子(G)100.0質量部を徐々に添加して均一に分散させた。
これに、1モル/リットルの塩酸水溶液を加えて分散液のpHを2.0に調整し、1時間撹拌した後、分散液の温度を35℃に昇温して、さらに2時間撹拌を行った。次いで、分散液の温度を45℃に昇温して2時間撹拌を行い、さらに65℃に昇温して2時間撹拌を行った後、冷却し、ろ過し、水洗および乾燥してトナー粒子を得た。
(トナーの作製)
得られたトナー粒子に、実施例1と同様の方法で疎水性シリカ微粉体を外添して、比較例のトナーを作製した。
<比較例4>
(トナー粒子の作製)
イオン交換水380.0質量部に、合成例5で得られた微粒子分散液(e)25.0質量部(固形分5.0質量部)を加え、撹拌しながら、合成例21で得られた芯粒子(G)100.0質量部を徐々に添加して均一に分散させた。
これに、1モル/リットルの塩酸水溶液を加えて分散液のpHを3.0に調整し、1時間撹拌を続けた。次いで、分散液の温度を45℃に昇温して、さらに2時間撹拌を行った後、室温まで冷却した。
続いて、この分散液に、合成例6で得られた微粒子分散液(f)25.0質量部(固形分5.0質量部)を徐々に添加し、1モル/リットルの塩酸水溶液を加えて分散液のpHを2.0に調整し、1時間撹拌を続けた。次いで、分散液の温度を45℃に昇温して2時間撹拌を行い、さらに65℃に昇温して2時間撹拌を行った後、冷却し、ろ過し、水洗および乾燥してトナー粒子を得た。
(トナーの作製)
得られたトナー粒子に、実施例1と同様の方法で疎水性シリカ微粉体を外添して、比較例のトナーを作製した。
実施例1乃至3および比較例1乃至4で得られた各トナーについて、平均粒径と平均円形度の測定を行った。また、耐ブロッキング性、および低温定着性の評価を、以下に述べる要領にしたがって行った。結果を、表4にまとめて示した。
<耐ブロッキング性>
トナー10gを容積100mlのポリカップに量り採り、これを内部温度50℃の恒温槽に入れて7日間放置する。その後、ポリカップを取り出して、中のトナーの状態変化を目視にて評価する。判定基準は以下の通りである。
A:変化なし
B:凝集体があるが、すぐにほぐれる
C:凝集体がやや多く、ほぐれにくい
D:凝集体が多く、容易にはほぐれない
E:全くほぐれない
<低温定着性>
トナーと、シリコーン樹脂で表面被覆した磁性微粒子分散型樹脂キャリア(平均粒径35μm)を、トナー濃度が7.0質量%になるように混合して二成分現像剤を調製する。
次いで、この二成分現像剤を、高温高湿下(30℃/80%)で7日間放置した後、常温常湿下(23℃/60%)でさらに3日間放置し、初期混合による帯電をリセットする。
試験機には、市販のフルカラー複写機(CLC−700,キヤノン製)の改造機を使用し、受像紙(80g/m2)上に未定着のトナー画像(単位面積当たりのトナー載り量0.6mg/cm2)を形成する。
定着試験は、上記複写機から取り外し、定着温度が調節できるように改造した、定着ユニットを用いて行う。具体的な評価方法は、以下の通りである。
常温常湿環境下(23℃,60%RH)にて、プロセススピードを180mm/sに設定し、初期温度を120℃として設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で上記未定着画像の定着を行う。
本発明において、低温定着性は、低温オフセットが観察されず、且つ、得られた定着画像を4.9kPa(50g/cm2)の荷重をかけたシルボン紙で5往復摺擦したときに、摺擦前後の濃度低下率が5%以下となる温度で示した。
表4から、実施例1乃至3の各トナーは、平均粒径および平均円形度の値が、元の芯粒子の値と比べて殆ど変化していないのに対し、比較例1、比較例3および4の各トナーは、平均粒径が増大するとともに、平均円形度が低下していることがわかる。特に、比較例1のトナーはその傾向が著しく、走査電子顕微鏡(SEM)による観察の結果、芯粒子同士の融着が生じていることがわかった。
一方、耐ブロッキング性と低温定着性との関係に着目すると、実施例1乃至3の各トナーにおいては、双方とも良好な結果が得られ、これらの両立を達成することができた。これに対し、比較例1のトナーは耐ブロッキング性を満足することができず、比較例3および4の各トナーは、耐ブロッキング性の改善効果はある程度認められるものの、低温定着性が阻害されることが明らかになった。また、in−situ重合による外殻を設けた比較例2のトナーは、本発明で用いた中間層形成用樹脂(A)と同じものを外殻形成用樹脂として使用し、トナー全体の15%を占めるように添加したにも関わらず、耐ブロッキング性を満足することができなかった。
<実施例4乃至8,比較例5乃至6>
実施例1において、使用する芯粒子分散液と微粒子分散液を、表5に示す組み合わせに変えた以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーおよび比較例のトナーをそれぞれ作製した。
※コアのガラス転移温度および重量平均分子量は、中間層形成用樹脂を使用せずに作製した芯粒子(G)の測定結果から見積もった値である。
こうして得られた実施例4乃至8の各トナー、比較例5および6の各トナーについて、平均粒径と平均円形度の測定を行った。また、耐ブロッキング性、および低温定着性の評価を、上述の要領にしたがって行った。結果を、表6にまとめて示した。
実施例4の結果より、中間層のガラス転移温度が外殻よりも低いと、耐ブロッキング性が低下する傾向を示すことがわかる。比較例5に示されるように、中間層のガラス転移温度がコアよりも低い場合には、中間層による効果は何ら認められない。
また、実施例7の結果から、外殻のガラス転移温度が低い場合にも、十分な耐ブロッキング性が得られなくなることがわかる。逆に、外殻のガラス転移温度が高くなり過ぎると、実施例8に示されるように、低温定着性が阻害されるようになる。
一方、実施例5の結果から、中間層の重量平均分子量が大きい場合にも、低温定着性が低下する傾向を示すことがわかる。さらに、外殻にコアよりも大きな重量平均分子量の材料を用いた比較例6では、低温定着性の低下が特に顕著であった。
尚、酸価を持たない中間層形成用樹脂を用いた実施例6では、中間層によるコアの被覆が不完全であったためか、このトナーもまた、耐ブロッキング性の低下が見られた。
<実施例9>
実施例1において、芯粒子分散液(A1)に代えて、芯粒子分散液(A2)を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを作製した。
<実施例10>
実施例1において、芯粒子分散液(A1)に代えて、芯粒子分散液(A3)を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを作製した。
<実施例11>
実施例1において、微粒子分散液(a)の添加量を10.0質量部(固形分2.0質量部)に変えた以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを作製した。
<実施例12>
実施例1において、微粒子分散液(a)の添加量を15.0質量部(固形分3.0質量部)に変えた以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを作製した。
こうして得られた実施例9乃至12の各トナーについて、平均粒径と平均円形度の測定を行った。また、耐ブロッキング性、および低温定着性の評価を、上述の要領にしたがって行った。結果を、表7にまとめて示した。
実施例9および10の結果より、芯粒子全体に占める中間層の割合が低くなると耐ブロッキング性が低下する傾向を示し、逆に、高くなると低温定着性が低下する傾向を示すことがわかる。
また、実施例11および12の結果より、外殻に用いる樹脂微粒子の量が少なくなると、耐ブロッキング性が低下することがわかる。実施例11および12の各トナーについて、蛍光X線分析装置(XRF)を用いてS元素量を測定し、微粒子による被覆率を計算で求めたところ、実施例11のトナーは61%、実施例12のトナーは92%であることがわかった。また、各トナーの断面を透過電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、実施例11のトナーは、外殻で覆われていない欠損部が僅かに認められたが、実施例12のトナーは、見かけ上、完全に被覆されていることが確認された。