JP2009195828A - 有機溶剤を含む被処理ガスの処理設備、有機溶剤の回収方法および有機溶剤の再利用方法 - Google Patents

有機溶剤を含む被処理ガスの処理設備、有機溶剤の回収方法および有機溶剤の再利用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 回収有機溶剤中に混入する水分および酸の量を低減し、蒸留などの精製や中和を行なうことなく効率的に有機溶剤を回収し、さらに回収した有機溶剤を容易に印刷インキ組成物の原料として再利用でき、さらに回収の際に爆発の危険性を大幅に低減できる、有機溶剤の回収処理設備、有機溶剤の回収方法および再利用方法を提供すること。
【解決手段】 被処理ガス中に含まれる水分を除去する除湿装置2と、被処理ガス中の有機溶剤を吸着除去する活性炭吸着装置3と、加熱された不活性ガスを送給する加熱ガス供給装置4と、脱着ガス中に含まれる酸成分を除去する化学吸着処理装置5と、供出ガスを脱水する冷却装置6と、脱着ガス中に含まれる有機溶剤を回収する回収装置7と、を有することを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、印刷時に発生する有機溶剤を含む被処理ガスの処理設備に関する。また、本発明は、印刷時に発生する被処理ガス中の有機溶剤を回収する方法、さらには回収した有機溶剤を印刷インキ組成物の原料として再利用する方法に関する。
近年、成層圏におけるオゾン層の破壊、低層圏における酸性雨による農産物への打撃や森林資源の破壊、光化学オキシダントによる人体への悪影響等の大気汚染に関する問題が深刻になってきている。そのため、PRTR法の施行、悪臭防止法の規制強化、京都議定書の二酸化炭素削減、大気汚染防止法、埼玉県生活環境保全条例など、大気環境保全に関する法律も年々厳しくなっている。特に、有機溶剤を大量に使用し放出しているグラビア印刷業界では、有機溶剤の排出量の削減が急務となっている(例えば非特許文献1〜3参照)。
グラビア印刷における有機溶剤排出の問題を解決する手段として、印刷時に発生する有機溶剤を含むガスを燃焼させる方法が挙げられるが、有機溶剤を燃焼した際に発生する二酸化炭素の排出が問題となっている。
有機溶剤および二酸化炭素排出の問題を同時に解決する手段として、溶剤回収装置の設置によって有機溶剤を回収する方法が挙げられる。有機溶剤の排出量を大幅に削減する事が可能となり、大気汚染防止法対策になるだけでなく、二酸化炭素排出量の削減対策、枯渇資源であり価格が非常に高騰している有機溶剤を有効利用するという観点からも、近年非常に関心が高まっている。
従来の溶剤回収装置は、印刷時に発生した有機溶剤を活性炭などの吸着剤で吸着・捕集し、捕集した有機溶剤を加熱水蒸気によって脱着し、冷却・液化して有機溶剤を回収する方法が一般的である。しかしながら、加熱水蒸気によって脱着を行なう場合、回収有機溶剤に大量の水分が混入してしまう(例えば特許文献1参照)。
例えば、図4に示すような揮発性有機物質の回収装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。具体的には、図4において、活性炭を充填し伝熱管103,104を内蔵した吸着塔101,102を複数台設け、各吸着塔101,102の一端側に揮発性有機物質を含有した排ガスの供給管111,121を接続し他端側に浄化空気の排出管112,122を接続し、各伝熱管103,104に水蒸気管113,123;119,129を接続し、各吸着塔101,102の一端部にキャリア空気の供給管114,124を接続し他端部にキャリア空気の排出管115,125を接続し、該キャリア空気の排出管115,125を復水器106に接続し、該復水器106の気相を各吸着塔101,102の前記一端側に接続し、液相を揮発性有機物質108として回収する。ここで、105はブロワー、107は気液分離器を表す。
また、吸着能力の高い活性炭について、通気抵抗が小さく、長期間の使用に耐えるように、ハニカム状活性炭を用いる方法も提案されている(例えば特許文献3参照)。具体的には、図5に示すような多孔のハニカム形状の吸着材を用いたバッチ式のフロンガス回収装置を挙げることができる。第1吸着塔201と第2吸着塔202の2つの吸着塔を有し、バッチ式の吸着工程及び離脱(脱着)工程を交互に繰り返すことにより、双方の吸着塔201,202により連続的なフロンガス回収処理を可能にしたものである。各吸着塔201,202には活性炭等の有機溶剤(フロン)の吸着材が充填されている。吸着材は、複数の空気通路を有するモノリス成形体として構成されているので、ペレット状又は活性炭繊維フェルト状の場合に比して圧力損失が小さい。このようなモノリス成形体としては、多孔のハニカム形状のものがある。また、吸着材の材質は活性炭が好ましい。活性炭は、ゼオライト13X又は活性アルミナよりも細孔内表面の非親水性が優れているとともに、吸着容量も高い。従って、水分は吸着しにくく、有機溶剤の吸符能は高い。ここで、207a,207bはブロア、208〜217は開閉弁、218はコンデンサ、219は水分離器、220はストレージタンクを表す。
特開2005−177650号公報 特開平6−285322号公報 特開平2−261539号公報 安田秀樹、日本印刷学会誌Vol.43、No.6、404−410(2006) 千本雅士、日本印刷学会誌Vol.44、No.1、8−14(2007) 社団法人 産業環境管理協会 平成17年度経済産業省委託調査報告書「環境負荷物質対策調査(揮発性有機化合物(VOC)排出抑制対策技術調査)報告書」平成18年3月
しかしながら、この有機物含有ガス処理設備をグラビア印刷工場などで使用して、排ガス中の有機溶剤を回収して再利用しようとした場合、次のような問題が生じる。つまり、
(i)有機溶剤として、トルエンなどの非親水性溶剤に代えて、より毒性の低い親水性の有機溶剤(例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコ−ル等)が多用されるようになっており、加熱水蒸気によって脱着を行なう場合、回収有機溶剤に大量の水分が混入してしまう。
回収有機溶剤に混入する水分量を削減する方法として、加熱窒素に代表される加熱不活性ガスや加熱空気により脱着を行なう方法も提案されている。上述の水蒸気脱着方法と比較して回収有機溶剤に混入する水分量は減るものの、空気中に含まれる水分が回収有機溶剤に混入する事は避けられない。特に空気中の水分量が多い梅雨時や夏場では回収有機溶剤に大量の水分が混入してしまう。水分が混入した回収有機溶剤をそのまま印刷インキ組成物の原料として再利用した場合、樹脂の溶解性低下などによるインキ貯蔵安定性劣化、印刷適性劣化などの悪影響を及ぼす為、回収有機溶剤中の水分を蒸留などによって除去する必要があった。
(ii)また、上記装置に用いられる吸着剤について、有機物の回収においては吸着能力が高い程好ましく、水分等など回収目的以外の成分が吸着しにくい選択性の高い吸着剤として活性炭が好ましい反面、印刷時に印刷インキ組成物に使用される有機溶剤としてエステル系溶剤が含まれる場合、活性炭吸着剤表面においてエステル系溶剤が加水分解され、酢酸などの酸が発生し回収有機溶剤に混入してしまうことが本発明者の検証によって判った。
(iii)さらに、エステル系溶剤の加水分解により酢酸などの酸が混入した回収有機溶剤をそのまま印刷インキ組成物の原料として再利用した場合、印刷物や包装材料の臭気に悪影響を与えてしまう為、蒸留や中和などによって回収有機溶剤中の酸を除去する必要があった。
(iv)インキの貯蔵安定性や印刷適性、印刷物や包装材料の臭気に悪影響を与えないレベルまで回収有機溶剤中の水分量、酸量を低減するには、蒸留などの精製や中和を行なう必要があるが、回収した有機溶剤を再利用する為の工程が複雑になり、回収有機溶剤の再利用率も大幅に低下する為、回収有機溶剤を再利用する為のコストが掛かってしまうという問題があった。
(v)また、印刷インキには、使用している樹脂の溶解性確保や印刷インキの乾燥速度調整などの観点から複数の有機溶剤が使用されている。通常は5種類以上の有機溶剤を使用した組成となっていのが一般的である。従来の複数の混合溶剤を含む印刷インキを用いて溶剤回収を行なった場合、回収有機溶剤も複数、例えば5種類以上の有機溶剤の混合となる。複数の混合溶剤からなる回収有機溶剤を印刷インキ組成物の原料として再利用するためには、大規模な蒸留塔で単一溶剤またはより少ない混合溶剤成分に分離した後、必要に応じて新溶剤を配合して目的の溶剤組成に補正する必要があった。しかしながら、上記のような蒸留には莫大なイニシャルコスト、ランニングコストが掛かってしまう。また、蒸留には大量のエネルギーを必要とするために、石油資源を多量に消費し二酸化炭素排出量を増やしてしまう結果となり、回収溶剤を再利用してもコスト削減や環境対応にならないことが問題となっていた。また、複数の混合溶剤からなる回収溶剤を成分調整して再利用する場合、目的とする溶剤組成に調整するためには新規溶剤を多量に添加する必要があり、効率的ではない。
(vi)さらに、従前の装置においては、上記のように水蒸気による脱着処理を行ってVOC等を回収することが多いが、吸着量を多くして脱着処理する方が効率的である反面、高濃度のVOC等を含む被処理ガスを高温で処理することから可燃性あるいは爆発の危険性を回避することが必要となり、処理量に限度があった。
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて、印刷時に発生する有機溶剤を回収する際に、回収有機溶剤中に混入する水分および酸の量を低減し、蒸留などの精製や中和を行なうことなく効率的に有機溶剤を回収し、さらに回収した有機溶剤を容易に印刷インキ組成物の原料として再利用でき、さらに回収の際に爆発の危険性を大幅に低減できる、有機溶剤の回収処理設備、有機溶剤の回収方法および有機溶剤の再利用方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す有機溶剤の回収処理設備、有機溶剤の回収方法および有機溶剤の再利用方法によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、印刷時に発生する有機溶剤を含む被処理ガス中に含まれる水分を除去する除湿装置と、除湿された被処理ガス中の有機溶剤を吸着除去するためのハニカム状活性炭が充填・装着された活性炭吸着装置と、この活性炭吸着装置によって吸着された有機溶剤を活性炭から脱着するため加熱された不活性ガスを送給する加熱ガス供給装置と、この加熱された不活性ガスにより脱着された脱着ガス中に含まれる酸成分を除去するための化学吸着剤が充填・装着された化学吸着処理装置と、この脱着ガスを脱水する冷却装置と、脱水された脱着ガス中に含まれる有機溶剤を回収する回収装置と、を有することを特徴とする有機溶剤を含む被処理ガスの処理設備に関するものである。こうした構成の処理設備を用いることによって、回収有機溶剤中に混入する水分および酸の量を低減し、蒸留などの精製や中和を行なうことなく、回収有機溶剤を容易に印刷インキ組成物の原料として再利用することができる。
さらに、前記化学吸着剤が、シリカ系、アルミナ系またはシリカ−アルミナ系担体に、カリウム化合物が担持されて構成されることを特徴とする上記の有機溶剤を含む被処理ガスの処理設備に関するものである。
また、前記除湿装置が、冷媒の送給を受ける熱交換器から構成されたプレクーラーと、これに続く吸着除湿部とを有しており、この吸着除湿部が円筒状容器内に回転可能に、モレキュラーシーブスあるいはゼオライトがハニカム状に配置されたハニカムローターから構成されていることを特徴とする上記の有機溶剤を含む被処理ガスの処理設備に関するものである。
さらに、前記不活性ガスが窒素であり、この窒素を加熱して前記活性炭吸着装置に送給して有機溶剤を脱着するようになっているとともに、脱着された有機溶剤を前記冷却装置に送給する経路に、加熱していない窒素を導入するようになっていることを特徴とする上記の有機溶剤を含む被処理ガスの処理設備に関するものである。
また、エステル系溶剤を必須成分とし、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤からなる群のいずれかに属する有機溶剤を1種類以上3種類以下含有する印刷インキ組成物を用いて印刷する際に発生する有機溶剤を含む被処理ガスを処理することを特徴とする上記の有機溶剤を含む被処理ガスの処理設備に関するものである。
さらに、本発明は、印刷時に発生する有機溶剤を含む被処理ガスから有機溶剤を回収する処理方法であって、以下のプロセス
(1)被処理ガス中に含まれる水分を除去するプロセス
(2)除湿された被処理ガス中の有機溶剤を、ハニカム状活性炭によって吸着除去するプロセス
(3)加熱された不活性ガスを用いて吸着された有機溶剤を前記活性炭から脱着するプロセス
(4)脱着された脱着ガス中に含まれる酸成分を化学吸着剤によって吸着除去するプロセス
(5)酸成分が除去された脱着ガスを脱水するプロセス
(6)脱水された脱着ガス中に含まれる有機溶剤を回収するプロセス
を有することを特徴とする有機溶剤の回収方法に関するものである。
また、エステル系溶剤を必須成分とし、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤からなる群のいずれかに属する有機溶剤を3種類以下含有する印刷インキ組成物を用いて印刷する際に発生する有機溶剤を含む被処理ガスを処理することを特徴とする上記の有機溶剤の回収方法に関するものである。
さらに、回収した有機溶剤中の水分量が3%以下および酸価が0.5mgKOH/g以下であることを特徴とする上記の有機溶剤の回収方法に関するものである。
また、上記印刷インキ組成物が、高分子ジオールおよび有機イソシアネート化合物を反応させてなるポリウレタン樹脂をメインバインダーとして含むことを特徴とする上記の有機溶剤の回収方法に関するものである。
さらに、ポリウレタン樹脂が、鎖延長剤および末端停止剤を用いてなることを特徴とする上記の有機溶剤の回収方法に関するものである。
また、本発明は、上記の方法により回収した有機溶剤を、印刷インキ組成物の原料として再利用する方法に関するものである。
さらに、回収した有機溶剤を、成分調整して使用することを特徴とする上記の有機溶剤を再利用する方法に関するものである。
本発明により、回収した有機溶剤中の水分量および酸の量を従来よりも大幅に低減させることができるため、回収後の蒸留や中和など複雑な精製工程を行なうことなく、必要に応じて成分調整するだけで回収有機溶剤を容易に印刷インキ組成物の原料として再利用することができるようになった。さらに回収の際に爆発の危険性を大幅に低減できるようになった。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、1台あるいは複数台の印刷機から印刷乾燥工程にて発生する揮発した有機溶剤を、共存する空気、水分および主に脱着工程において発生する酸と分離して回収し、必要に応じて成分分析、成分調整した後、印刷インキ組成物の原料として再利用するまでの全体フローを示したものである。なお、図1中()付の記載は、必要に応じて行うプロセスを示す。
また、本発明における有機溶剤を含む被処理ガスの回収処理設備(以下「本設備」という。)の概略全体構成を図2に示す。
つまり、印刷時に発生する有機溶剤を含む被処理ガスが処理される構成として、送給ファン1により送給された被処理ガス中に含まれる水分を除去する除湿装置2と、除湿されて供給された被処理ガス中の有機溶剤を吸着するためのハニカム状活性炭が充填・装着された活性炭吸着装置3と、この活性炭吸着装置3によって吸着された有機溶剤を活性炭から脱着するため加熱された不活性ガスを送給する加熱ガス供給装置4と、この加熱された不活性ガスにより脱着された脱着ガス中に含まれる酸成分を除去するための化学吸着剤が充填・装着された化学吸着処理装置5と、この脱着ガスを脱水する冷却装置6と、脱水された脱着ガス中に含まれる有機溶剤を回収する回収装置7と、を有する有機溶剤含有ガス回収処理設備を基本とする。
つまり、吸着処理用として、被処理ガス中の水分を除去する除湿装置2とともに、除湿された被処理ガス中の有機溶剤を吸着する活性炭吸着装置3が設けられる。また、回収処理用として、加熱ガス供給装置4からの加熱された不活性ガスを活性炭吸着装置3に供給して、吸着された有機溶剤を活性炭から脱着させるとともに、この脱着ガス中に含まれる酸成分を除去する化学吸着装置5と、有機溶剤を含む脱着ガスを冷却して脱水する冷却装置6と、脱水された有機溶剤を回収する回収装置7などから構成される。
〔本設備を用いた有機溶剤を含む被処理ガスの処理プロセス〕
本設備を用いた有機溶剤を含む被処理ガスの処理方法は、少なくとも以下のプロセスを有している。
(1)被処理ガス中に含まれる水分を除去するプロセス
(2)被処理ガス中の有機溶剤を、ハニカム状活性炭によって吸着除去するプロセス
(3)加熱された不活性ガスを用いて吸着された有機溶剤を前記活性炭から脱着するプロセス
(4)脱着された脱着ガス中に含まれる酸成分を化学吸着剤によって吸着除去するプロセス
(5)酸成分が除去された脱着ガスを脱水するプロセス
(6)脱水された脱着ガス中に含まれる有機溶剤を回収するプロセス
つまり、有機溶剤の吸着・脱着プロセスの前後に不純物である水分の除去プロセスを設けるとともに、吸着・脱着処理過程において生じる酸成分を抑制するために、吸着プロセスの前段に水分除去プロセスを設け、脱着プロセスの後段に酸成分除去プロセスを設けることによって、高い有機溶剤の回収率を確保する有機溶剤含有ガス回収処理方法が可能となった。すなわち、本発明では、1台あるいは複数台の印刷機から印刷乾燥工程にて発生する揮発した有機溶剤はまず除湿装置に送られる。
(1)被処理ガス中に含まれる水分を除去するプロセス
被処理ガスは、送給ファン1によって除湿装置2に送給され、含有する水分が除去される。本設備において、この水分除去処理は、回収する有機溶剤の不純物の除去のみならず、後述する非処理ガスの吸着・回収プロセスにおいて生じるエステル系溶剤の加水分解反応を抑制し、該反応によって発生する酸成分の発生を低減することができる点において重要な役割を果たしている。一方、冷却除湿のみによれば、0℃前後の飽和蒸気圧(0.5〜1%程度)までの除去が限界であり、また酢酸エチル等のエステル系溶剤についてもその一部が凝縮するおそれがあることから、水分の吸着能力が高く有機溶剤に対して吸着能力の低い無機材料から構成される吸着剤との併用が好ましい。
脱水の方法としては、逆浸透法、膜蒸留法、蒸気透過法、パーベーパレーション法などを用いた膜分離、シリカゲルなどを用いた吸着、比重差や蒸留などが挙げられるが、本発明では上記方法の中で脱水能力、耐熱性、耐溶剤性などの観点より親水性の高分子膜またはセラミック膜を用いた蒸気透過法が好適に用いられる。親水性の高分子膜に使用される材料としては、ポリビニルアルコール、ポリイミド、キトサン、ポリエチレンオキサイド、水溶性酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼオライトなどが用いられる。
従って、本設備における除湿装置2は、熱交換式のプレクーラー2aとこれに続く吸着除湿部2bから構成される。
プレクーラー2aでは、送給された被処理ガスが、ブライン貯槽タンク2cから送られてブラインチラー2dで冷却された冷媒(ブライン)と熱交換され、5〜10℃程度に冷却される。冷媒は、ポンプP1により送給・循環され、一定温度に保持される。プレクーラー2aに続く吸着除湿部2bは、例えば、円筒状容器内に回転可能に、ハニカム状に配置されたモレキュラーシーブスあるいはゼオライト等が収容されたローター(ハニカムローター)を構成していて、これが回転(例えば、約10回転/時間程度)する中を被処理ガスが通過することにより、被処理ガス中の水分が除去されつつ、シールされ区画された別経路に対して反対方向から、再生ファン(図示せず)より温風(110〜150℃程度)が吹き込まれて再生される方式などを採用することができる。この吸着除湿部2bにより、被処理ガスを安定した低い露点(例えば、−30℃以下)にすることができる。
なお、被処理ガス中の塵芥などを除去するため、被処理ガスを除湿装置2に導入する前に、予め市販の各種除塵フィルターなどからなるプレフィルターを配置していてもよい。
脱水工程を終えた有機溶剤を含むガスは、次に共存する空気と分離される。有機溶剤を分離する方法としては、凝縮法、圧縮法、吸収法、吸着法を用いることができるが、本発明では回収率やコスト面から、吸着剤を用いたガス吸着法が好適に用いられる。
上記ガス吸着法に用いられる吸着剤としては、活性炭、シリカゲルなどの多孔質シリカ、ゼオライト、各種粘土、アルミナ、酸化鉄(水酸化鉄ゲル)、過塩素酸マグネシウム、イオン交換樹脂などが挙げられる。この中で高い比表面積を有する活性炭、シリカゲルなどの多孔質シリカ、ゼオライトを選択することが好ましい。吸着剤の形状としては、粒子状、繊維状、ハニカム状などが挙げられ、粒子状の場合は流動床、繊維状の場合は固定床と、吸着剤の形状に応じた回収システムを選択することができる。本発明では吸着能力、回収率やコスト面から、ハニカム状活性炭が好適に用いられる。
(2)被処理ガス中の有機溶剤を吸着除去するプロセス
除湿装置2を経た被処理ガスは、活性炭吸着装置3に導入され、制御バルブV1を介して複数の活性炭吸着部3a,3aに送給される。この活性炭吸着部3a,3aは、図2では2台並列されており、このようにすると、1台を吸着用に使用し、他方を脱着・再生用として使用することができる。もとより、活性炭吸着部3a,3aは1台でもよく、さらに多数台配置してもよく、その台数、仕様などは被処理ガスの量や、特性により適宜選択される。
活性炭吸着部3a,3aには、ハニカム状活性炭が充填・装着されていて、従来技術のように、粒状活性炭や繊維状活性炭を使用しないため、通気抵抗が小さくて圧力損失が小さく、それでいて吸着能が高いことが特徴である。ハニカム状活性炭の圧力損失が小さいことから、送給ファン1の動力源は小さくてよく、消費エネルギーは少なくて済む。この活性炭吸着部3a,3aは種々の構成が考えられるが、例えば、多孔板と流体ジャケットとを有するユニットに、ハニカム状活性炭を約90〜450mm程度積層して構成されている。
ハニカム状活性炭の比表面積は、約200〜3000m/g程度のものを使用することが好ましく、約300〜2500m/g程度のものを使用することがより好ましく、約400〜2000m/g程度のものを使用することがより一層好ましい。また、ハニカム状活性炭の透孔は、六角形に限定されるものではなく、正方形、長方形、多角形、円形、略円形など種々の形状のものを採用できる。透孔の数(セル数)は多いほど被処理数との接触が多く吸着能が高くなって好ましいが、透孔数が多過ぎると、圧力損失も大きくなり、製造上も困難となってコストは高くなる。そこで、透孔数は約15〜2326個/10cm程度が好ましく、約30〜1550個/10cm程度がより好ましく、約39〜1162個/10cm程度がより一層好ましい。ハニカム状活性炭の製造方法は、特に限定されないが、通常、活性炭原料にバインダーを加えてハニカム状に成型し、炭化・賦活化した後、必要に応じて酸洗浄されるか、あるいは、活性炭自体をハニカム状に成型した後、乾燥され焼成されて製造される。
活性炭吸着部3a,3aに有機溶剤が吸着・除去された処理排ガスは、その後、制御バルブV2を経て大気中に放出されるが、処理排ガス中に残留する有機溶剤が排出基準値以下でない場合、さらに無害化処理を施されて放出されることになる。このとき、ハニカム状活性炭に有機溶剤を含有する被処理ガスを線速度30〜300cm/秒で通流させることによって、効率的に有機溶剤を吸着させることができる。
次に、吸着剤に吸着質として吸着・捕集された有機溶剤は、加熱空気、加熱水蒸気、加熱窒素に代表される加熱不活性ガスなど加熱ガスの導入で脱着される。本発明では、回収溶剤への水分混入量削減の観点より加熱窒素などの加熱不活性ガスを用いることが好ましい。
(3)吸着された有機溶剤を脱着するプロセス
有機溶剤を吸着したハニカム状活性炭からの有機溶剤の脱着は、従来、130℃程度に加熱した1.9気圧程度の加圧水蒸気を送給して行い、脱着後熱風乾燥するようにしていたが、このようにすると、有機溶剤、特に低沸点の酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの場合、乾燥用に送給される熱風との間で爆発限界に達することがあり、そのため細心の注意を要する等作業性が悪く、また防爆設備その他の設備を設ける必要があるという問題があった。そこで、かかる問題を確実に解消するため、本設備では、不活性ガスである窒素を90〜110℃程度、好ましくは約100℃程度に加熱して送給するようにしている。もとより、窒素に代えて他の不活性ガスを使用してもよい。
すなわち、加熱された不活性ガスを送給する加熱ガス供給装置4として、窒素を、窒素容器(気体入りボンベあるいは液体窒素容器など)4aから制御バルブV3を介して窒素ガス循環ファン4bにより、熱媒油槽4cに送給され熱交換されて、ハニカム状活性炭に吸着している有機溶剤の沸点より幾分高い温度にまで加熱され、配管8を通流し制御バルブV4を介して活性炭吸着装置3に送給される。熱媒油槽4cの熱量は、ヒーター4dを取り付けること等により直接あるいは間接に加熱することにより得られる。熱媒油槽4cの熱媒体は、ポンプP2により循環され、所定温度に維持されるようになっている。もっとも、熱媒油槽4cの熱量は、工場内の他の熱源から発生した熱を供給して利用してもよい。窒素を送給するのに、必ずしも窒素ガス循環ファン4bを用いなくてもよく、他の送給手段を用いてもよい。ここに、窒素容器4a、窒素ガス循環ファン4b、熱媒油槽4cなどは加熱ガス送給装置を構成する。
また、ハニカム状活性炭に通流させる被処理ガスの線流速(LVa)と、有機溶剤を吸着したハニカム状活性炭から有機溶剤を脱着するときのガスの線速度(LVb)との関係は重要であり、LVb/LVa=0〜1/10,000であることを要するとともに、より好ましくLVb/LVa=1/10〜1/10,000である。この範囲のとき、ハニカム状活性炭に吸着した有機溶剤を効率的に脱着することができる。具体的には、ハニカム状活性炭に有機溶剤を含有する被処理ガスを線速度30〜300cm/秒で通流させ、この線速度の1/10〜1/10,000で脱着用窒素を通流させることが、効率的に有機溶剤を脱着させることができる。
吸着剤から脱着した有機溶剤は、エステル系溶剤を含む場合には主に脱着工程の熱によるエステル系溶剤の加水分解によって発生した酢酸などの酸、あるいはインキ原料である樹脂や添加剤由来の酸成分を含有する。本発明では、空気より分離した有機溶剤ガス中の酸成分を吸着除去する化学吸着除去装置を通すことによって中和除去する。
(4)脱着ガス中に含まれる酸成分を吸着除去するプロセス
活性炭吸着装置3のハニカム状活性炭に吸着された有機溶剤は、加熱窒素により脱着されて脱着ガスとして脱着される。脱着ガスは、脱着窒素制御バルブV5を経て化学吸着装置5に導入される。
エステル系溶剤の加水分解によって発生した酢酸などの酸は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、酢酸ナトリウムなどの塩基によって中和除去することができるが、本発明では、例えば酸化ケイ素とアルミナの混合物からなる担体に水酸化カリウムあるいは炭酸カリウムを担持した化学吸着剤のように、シリカ系、アルミナ系またはシリカ−アルミナ系担体にカリウム化合物が担持されて構成された化学吸着剤が、有機溶剤の回収処理に影響を与えずに酸成分を効果的に除去できるため特に好適に用いられる。
また、こうした化学吸着処理は、酸成分が発生した直後の水分共存状態において行うことによって、非常に選択性の高い除去処理が可能である。従って、化学吸着処理プロセスは、有機溶剤を活性炭から脱着するプロセスの直後で、かつ脱着ガスの脱水および回収プロセスの前段であることが好ましい。また、処理温度は、100〜150℃が好ましい。100℃以下においては、上記脱着プロセスによって脱着ガス中に含まれる水分等が凝縮する可能性があり、150℃を超えると化学吸着剤の吸着能力が低下し酸成分の除去機能が低下する可能性があるためである。
詳しい反応メカニズムは不明であるが、本発明者は、以下のような推論を立て、後述する〔実施例〕において検証した。つまり、有機溶剤共存中の酸成分の選択的除去には、酸成分の選択的吸着と選択的化学反応が必要であり、シリカ系、アルミナ系またはシリカ−アルミナ系からなる担体が酸成分の選択的吸着に好適であった。ここで、「シリカ系、アルミナ系またはシリカ−アルミナ系担体」とは、酸化ケイ素あるいは酸化アルミニウムを主成分とする担体をいう。また、酸成分とアルカリ金属であるカリウムとの反応性および無機金属系吸着剤による有機酸エステルの非吸着性に加えて、担体となるシリカ系、アルミナ系またはシリカ−アルミナ系の主成分である珪素あるいはアルミニウムが有する助触媒的な機能および化合物を構成する酸素の存在によって、より高い選択性のある化学吸着を形成することが可能になったと推定される。さらに、シリカ−アルミナ系担体へのカリウム化合物の担持力も強く、高い化学吸着力を維持することが可能であるとともに、所定期間使用後の再生も可能である点においても優れている。酸成分が中和除去された有機溶剤ガスは、最後に脱水プロセスにて脱水、冷却、液化されて回収される。
(5)酸成分が除去された脱着ガスを脱水するプロセス
化学吸着装置5において酸成分が除去された脱着ガスは、冷却装置6に供給される。冷却装置6は、第1冷却器6aおよび第2冷却器6bから構成され、脱着ガスは、第1冷却器6aに送給され幾分冷却される。このとき、第1冷却器6aでの冷却温度は、水分が凝縮せずに、かつ第2冷却器6bでの水分除去が効率的に行えるように、5〜20℃が好ましい。第1冷却器6aへは、第1チラーユニット6cから冷媒が熱交用冷却水循環ポンプP3により送給・循環されるようになっている。第1チラーユニット6cに送る冷却水は、供給ポンプP4を備えた冷却水槽6dで貯槽する。
なお、ハニカム状活性炭から加熱窒素で脱着した有機溶剤を第1冷却器6aに送給する経路に、窒素容器4aから窒素の一部を加熱することなく、配管9を通して導入することが好ましい。このようにすると、第1冷却器6aにおける熱消費量が少なくて済み、設備全体の熱利用率が高まり、省エネルギーとなる。導入する冷却用窒素の量は冷却バルブV6で制御される。
さらに、有機溶剤を含む脱着ガスは、第2冷却器6bの内部に多数配置されている細管内に送給されて冷却され、有機溶剤は液状にされる。その場合、第2冷却器6bでは、有機溶剤を含む脱着ガスを零度以下、好ましくは−10℃以下に冷却するので、脱着ガス中の水分は、細管表面に凍結されて分離・除去される。第2冷却器6bは、図2では2台並列に配置されて水分除去の効率を高くしているが、1台でもよく、さらに増設してもよい。第2冷却器6bへは、第2チラーユニット6eから冷媒が熱交換器6fを介して送給され、ブライン循環ポンプP5により循環されるようになっている。
また、有機溶剤と水分を除去された脱着ガス(不活性ガスである窒素を主成分とする)は、脱着ガスを加熱する熱媒油槽4cに送給されて再利用することができる。再利用される脱着ガスの送給量は、制御バルブV7によって制御される。
(6)脱水された脱着ガス中に含まれる有機溶剤を回収するプロセス
第2冷却器6bにおいて液化した有機溶剤は、回収装置7によって回収される。つまり、液体の有機溶剤は、デカンター等の回収槽7aに送られて、高い純度の有機溶剤として回収される。従来の回収処理設備では不純物として水分や酸成分の混入が避けられず排除が困難であったが、本設備においては、水分および酸成分の少ない純度の高い有機溶剤を回収することができる。
水分が大量に混入した回収有機溶剤をそのまま印刷インキ組成物の原料として再利用した場合、樹脂の溶解性低下によるインキ貯蔵安定性劣化、印刷適性劣化などの悪影響を及ぼす恐れがある。本発明では、回収有機溶剤を印刷インキ組成物の原料として再利用した場合に、インキの貯蔵安定性や印刷適性に悪影響を与えないよう回収した有機溶剤中の水分量を3%以下とすることが好ましく、より好ましくは、回収した有機溶剤中の水分量は、0%がよい。
また、酢酸などの酸が大量に混入した回収有機溶剤をそのまま印刷インキ組成物の原料として再利用した場合、印刷物や包装材料に酸臭が残留し好ましくない。本発明では、印刷物や包装材料の臭気に悪影響を与えないよう回収した有機溶剤中の酸価が0.5mgKOH/g以下とすることが好ましく、より好ましくは、回収した有機溶剤中の酸価が0mgKOH/gがよい。
本発明の回収処理設備を用いると、活性炭吸着装置により被処理ガス中の有機溶剤を吸着・除去する前に、予め除湿装置によって水分を低減するとともに、不活性ガスにより脱着された有機溶剤を含有する脱着ガスを冷却して脱水する冷却装置により、脱着ガスに含まれる水分を除去できるため、回収される有機溶剤中の水分を十分に低減できる。さらに、活性炭吸着装置において加水分解によって発生した酢酸等の酸成分は、脱着ガス中に含有して化学吸着処理装置に導入され、ここで化学吸着・除去されるために、後段での冷却装置および回収装置における腐蝕等の影響を及ぼすことなく、また付加的な処理を行う必要がない。このように、本発明は、活性炭に吸着したエステル系溶剤の加水分解を抑制するために、活性炭吸着装置の前段で水分を選択的に除去するとともに、なお、発生する酸成分を化学吸着によって選択的に除去することによって、収量に影響を与えることなく精製された有機溶剤を回収することができる回収装置を提供することができる。
しかも、活性炭吸着装置にハニカム状活性炭を使用していることから、通気抵抗を小さくできるとともに吸着率が高いため、大量かつ低濃度のガスを処理する場合でも効率的であり、しかもハニカム状活性炭に吸着した有機溶剤を脱着するのに不活性ガスを通流するようにしているので、脱着した有機溶剤の発火を防止できるとともに、爆発を確実に阻止できるのみならず、有機溶剤の回収が容易であるため、蒸留塔など大掛かりな設備を必要としない。もとより、窒素を有機溶剤の脱着に使用するため、従来技術のように水蒸気を使用する場合に比べて、水処理の必要がないという利点をも有する。また、窒素は安価であるため処理コストを低減でき、しかも処理設備全体の熱利用率を高めて省エネルギーを実現できる。
本発明における印刷インキ組成物は、着色剤、バインダー(樹脂)、溶剤から構成され、さらに必要に応じて体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、架橋剤、硬化剤、ワックス、シランカップリング剤、防錆剤、防腐剤、可塑剤、赤外吸収剤、紫外線吸収剤、耐光性向上剤、芳香剤、難燃剤等の各種添加剤を使用することもできる。なお、本発明において印刷インキ組成物に主として用いられる樹脂をメインバインダーとする。
本発明における印刷インキに使用される溶剤としては、グラビア印刷およびフレキソ印刷で一般的に使用される有機溶剤や水を用いることができる。有機溶剤としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、クロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素系溶剤、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶剤、さらにアセトン,メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、炭酸ジメチルなどのケトン系溶剤、さらに酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、さらにメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤を使用することができる。
これらの溶剤は、印刷インキの印刷適性や印刷効果などを考慮して適宜選択することができるが、蒸留や中和など複雑な精製工程を行なうことなく、必要に応じて成分調整するだけで回収有機溶剤を容易に印刷インキ組成物の原料として再利用するためには、使用する溶剤種類はより少ない方が好ましいが、印刷インキに用いる樹脂の溶解性を確保し、且つ印刷インキの乾燥性を調整可能な溶剤を選択する必要がある。
本発明では、回収有機溶剤を容易に再利用し、且つ樹脂の溶解性確保、印刷インキの乾燥調整の観点よりエステル系溶剤を必須成分とし、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤からなる群のいずれかに属する有機溶剤を1種類以上3種類以下含有する印刷インキ組成物を用いることが好ましい。
3種類の有機溶剤を選択する場合、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤からそれぞれ1種類ずつ、例えば酢酸エチル、メチルエチルケトン、iso−プロパノールの3種類を選択してもよい。あるいは、エステル系溶剤から2種類、アルコール系溶剤から1種類の計3種類、例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、n−プロパノールの3種類を選択することもできる。
なお、本発明における印刷インキ組成物に使用される溶剤を上記に記載したが、添加剤由来や印刷作業環境雰囲気中に存在する意図しない若干量の溶剤成分が回収有機溶剤に混入する場合がある。しかし、印刷や回収などの各工程を阻害しない程度であれば、上記に記載した以外の有機溶剤を含有することができる。
本発明における印刷インキ組成物に用いられる樹脂は、用途や基材によって適宜選択することができる。本発明に用いられる樹脂の例としては、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン/ウレア樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
最も主力となるラミネート用印刷インキ組成物においては、インキ印刷物への残留溶剤量の低減、押し出しラミネート加工適性などから、本発明における印刷インキ組成物に用いられる樹脂のうち、高分子ジオール、有機イソシアネート化合物、および必要に応じて鎖伸長剤、末端停止剤からなるポリウレタン樹脂をメインバインダーとして用いることが好ましい。本発明に用いられるポリウレタン樹脂には、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されているポリウレタン樹脂を挙げることができる。
本発明のポリウレタン樹脂は、一般に用いられる各種公知のポリオールを用いて合成することができる。ポリオールは1種、または2種類以上を併用してもよい。
ポリオールは、ポリイソシアネート、鎖延長剤と反応させてポリウレタン樹脂にすることが好ましい。前記ポリウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートを必要に応じイソシアネート基に不活性な溶媒を用い、また、さらに必要であればウレタン化触媒を用いて10〜150℃の温度で反応させ、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、次いで、このプレポリマーに鎖延長剤を反応させてポリウレタン樹脂を得るプレポリマー法、あるいは、有機ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物と鎖延長剤を一段で反応させてポリウレタン樹脂を得るワンショット法など公知の方法により製造することができる。
前記ポリオールの例としては、酸化メチレン、酸化エチレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体のポリエーテルポリオール類(1);
エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2メチル−1,3プロパンジオール、2エチル−2ブチル−1,3プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、1,4−ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトールなどの飽和または不飽和の低分子ポリオール類(2);
これらの低分子ポリオール類(2)と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸あるいはこれらの無水物とを脱水縮合または重合させて得られるポリエステルポリオール類(3);
環状エステル化合物、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール類(4);
前記低分子ポリオール類(2)などと、例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られるポリカーボネートポリオール類(5);
ポリブタジエングリコール類(6);
ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類(7);
1分子中に1個以上のヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られるアクリルポリオール(8);
エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオール(9);
などが挙げられる。特にポリプロピレングリコールが好ましい。
前記ポリウレタン樹脂に使用されるポリイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ビス−クロロメチル−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアネート−ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
また、前記ポリウレタン樹脂に使用される鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミンなどの他、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
また、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としては例えば、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。さらに、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L−アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
プレポリマーを製造するに当たり、ポリオールとポリイソシアネートとの量は、ポリイソシアネート(F)のイソシアネート基のモル数と有機ポリオール化合物の水酸基のモル数との比であるNCO/OH比を1.1〜3.0の範囲となるようにすることが好ましい。この比が1.1より小さいときは十分な耐アルカリ性が得られない傾向があり、また、3.0より大きい場合には得られるプレポリマーの溶解性が低下する傾向が認められる。
さらに、このウレタン化反応には触媒を用いることもできる。使用できる触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアニリンなどの3級アミン系の触媒;スズ、亜鉛などの金属系の触媒などが挙げられる。これらの触媒は通常ポリオール化合物に対して0.001〜1モル%の範囲で使用される。
上記で得られた末端にイソシアネート基を有するプレポリマーと鎖延長剤であるジオール、ジアミン、トリオールなどとを10〜80℃で反応させ、末端に活性水素基を含有する高分子量のポリウレタン樹脂が得られる。
末端停止剤を用いるときには、末端停止剤と鎖延長剤とを一緒に使用して鎖延長反応を行ってもよく、また鎖延長剤によりある程度鎖延長反応を行った後に末端停止剤を単独に添加して末端停止反応を行ってもよい。一方、末端停止剤を用いなくても分子量のコントロールは可能であるが、この場合には鎖延長剤を含む溶液中にプレポリマーを添加する方法が反応制御という点で好ましい。
末端停止剤は分子量をコントロールするために用いられる。使用量が多くなると得られるポリウレタン樹脂の分子量は低くなる。これは鎖延長剤と末端停止剤のプレポリマーに対する反応性により変化するが、一般的に、末端停止剤のアミノ基や水酸基の当量に対する鎖延長剤のアミノ基や水酸基の当量の比は0.5〜5.0の範囲が好ましい。この比が5.0を越える場合には高分子量化するためドライラミネート適性が悪くなる傾向があり、0.5未満の場合には分子量ならびに初期接着力が低下する傾向が認められる。
また、プレポリマー中のイソシアネート基の当量に対する鎖延長剤および末端停止剤のアミノ基と水酸基の合計の当量の比は1.1〜3.0、好ましくは1.5〜2.0の範囲となるようにして反応させる。この比が大きく鎖延長剤または末端停止剤の使用量が多い場合にはこれらが未反応のまま残存し、臭気が残りやすくなる傾向がある。
本発明の印刷インキ組成物を含んだ印刷インキの色相としては、使用する着色剤の種類に応じて、プロセス基本色として白の他に、黄、紅、藍、墨の合計5色があり、プロセスガマット外色として赤(橙)、草(緑)、紫の3色がある。さらに透明黄、牡丹、朱、茶、金、銀、パール、色濃度調整用のほぼ透明なメジウム(必要に応じて体質顔料を含む)などがベース色として準備される。印刷インキでは、特色として複数の色相を混合して目的の色相を得る手法があり、特に白インキにはトーニングという所作、例えば少量の藍インキを混合する場合がある。本発明における白インキも、他のインキと混合することができる。さらにインキを混合する以外に、本発明における白インキに、必要に応じて有機顔料、無機顔料、染料を混合することができる。
本発明の印刷インキ組成物に用いることができる白色系無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカなどが挙げられる。白インキの顔料には酸化チタンを用いることが着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましい。
白色系以外の無機顔料としては、カーボンブラック、アルミニウム、マイカ(雲母)などの顔料が挙げられる。アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。
本発明の印刷インキ組成物に有色系着色剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料や染料を挙げることができる。併用できる有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。
着色剤は、印刷インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわち印刷インキの総重量に対して1〜50重量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの着色剤は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
顔料を有機溶剤に安定に分散させるには、前記樹脂単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総重量に対して0.05重量%以上、かつ、ラミネート適性の観点から5重量%以下でインキ中に含まれることが好ましい。さらに、0.1〜2重量%の範囲で含まれることがより好ましい。
上記の印刷インキは、樹脂、着色剤などを有機溶剤中に溶解および/または分散することにより製造することができる。具体的には、顔料を前記併用樹脂、および前記分散剤により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の化合物などを配合することによりインキを製造することができる。
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
前記方法で製造されたインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。なお、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えば樹脂、着色剤、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
本発明の印刷インキを塗布する方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷などの印刷方法や、ロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティングなどのコーティング方法が挙げられる。例えば、グラビア印刷の場合、印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。印刷インキは、これらの印刷方法で基材に塗布された後、オーブンで溶剤分を揮発させて定着される。揮発した溶剤分等はを含む被処理ガスは、送風ファン1によって除湿装置2に送給される。
さらに、この印刷物の印刷面にイミン系、イソシアネート系、ポリブタジエン系、チタン系等の各種アンカーコート剤を介して、溶融ポリエチレン樹脂を積層する通常のエクストルージョンラミネート(押し出しラミネート)法、印刷面にウレタン系等の接着剤を塗工し、プラスチックフィルムを積層するドライラミネート法、印刷面に直接溶融ポリプロピレンを圧着して積層するダイレクトラミネート法等、公知のラミネート工程により、ラミネート積層物が得られる。
本発明において得られた回収有機溶剤は、そのまま印刷インキ組成物の原料として再利用することができる。
さらに、本発明では、必要に応じて得られた回収有機溶剤の溶剤組成を分析した後、必要に応じて回収溶剤に溶剤を追加し成分調整した後、印刷インキ組成物の原料として再利用することもできる。
回収有機溶剤の溶剤組成を分析する方法としては、ガスクロマトグラフィー測定、液体クロマトグラフィー測定、赤外吸収スペクトル測定、屈折率測定、密度比重測定、導電率測定、核磁気共鳴吸収法および臭気試験を用いた測定方法から選択される少なくとも1種類以上の方法により行なわれることが好ましい。回収溶剤に追加し成分調整を行なうための溶剤は、新溶剤であってもよいし、上記方法によって得られた回収溶剤であってもよく、また新溶剤と回収溶剤の混合溶剤であってもよい。
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明中、部および%は、重量部および重量%を表わす。樹脂の分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレン換算分子量として求めた重量平均分子量である。ポリオールの水酸基価は、樹脂1g中に含有する水酸基をアセチル化し、それを中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数である。また、樹脂のアミン価および回収有機溶剤の水分量、酸価、溶剤組成の測定方法は、下記の通りである。
〔樹脂のアミン価の測定方法〕
試料を0.5〜2g精秤する。(試料量:Sg)精秤した試料に中性エタノール(BDG中性)30mLを加え溶解させる。得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なう。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い次の(式1)によりアミン価を求めた。
アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S (式1)
〔回収有機溶剤の水分量の測定方法〕
水分量の測定は、JIS K 0068「化学製品の水分試験方法」により行ない、カールフィッシャー滴定法で測定した。
〔回収有機溶剤の酸価の測定方法〕
酸価とは、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、酸価の測定は、JIS K 0070「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価および不けん化物試験方法」により行なった。
〔回収有機溶剤の溶剤組成の測定方法〕
回収有機溶剤5μLを、検出器としてTCD、ガラス製カラムを有する島津製作所社製ガスクロマトグラフィー「GC−8A」にて分析。クロマトグラムのピーク面積とあらかじめ作成した検量線から溶剤組成を算出した。
本設備において、エステル系溶剤含有ガスを被処理ガスとして処理した場合について説明する。
(i)本設備の吸着および脱着プロセスにおける酸成分の発生要因の解析のための基礎実験を実施した。
(ii)本設備における化学吸着プロセスの有無による回収液の成分の相違を確認する基礎実験を実施した。
(a)実験方法
(a−1)被処理ガス
酢酸イソプロピルまたは酢酸エチルを含む被処理ガスを使用して実験した。
(a−2)活性炭
活性炭は、全て同じものを使用して実験した。比表面積200、400、1000、3000m/gのハニカム活性炭を準備した。活性炭基本特性を下表1に示す。
Figure 2009195828
(a−3)化学吸着剤
担体としてコーディライト(大塚セラミックス社製、2MgO・2AL・5SiO−ZrO・SiO)を用い、水酸化カリウムを担持させた化学吸着を用いた。
(a−4)実験条件
大気中の相対湿度は約60%であり、有機溶剤(約2000重量ppm)を含有する排ガス流量(約300Nm/h)を、図2に示すように、プレクーラーで5℃以下に冷却し、次いで吸着除湿部であるモレキャラーシーブズが収容されたハニカムローターで露点−30℃以下にした後、ハニカム状活性炭を内蔵した活性炭吸着装置4に送給して吸着させた。活性炭吸着装置4は、ハニカム状活性炭約20,000枚を含み、寸法3,000×4,500×高さ1,000mmのものを用いた。有機溶剤を吸着したハニカム状活性炭に対して、約100℃に加熱した窒素を通流させて有機溶剤を脱着させ、有機溶剤を含む窒素を、シリカ−アルミナ系担体にカリウム化合物が担持されて構成された化学吸着剤を備えた化学吸着装置5にて酸成分を除去した後、約15℃以下に冷却した第1冷却器6a、次いで約−10℃に冷却した第2冷却器6bを通流させた。また、このときに化学吸着装置5を使用した場合と使用しなかった場合の回収液の組成を分析し、その差異を検証した。
(b)実験結果
(b−1)酸成分の発生要因の解析のための基礎実験について
酢酸イソプロピルとイソプロピルアルコールとを含む被処理ガスあるいは酢酸イソプロピルとノルマルプロピルアルコールとを含む被処理ガスについて実験した結果を、図3(A)〜(D)に示す。イソプロピルアルコールを含む場合の回収開始時間と酸価との関係を図3(A)、ノルマルプロピルアルコールを含む場合の回収開始時間と酸価との関係を図3(B)、イソプロピルアルコールを含む場合の脱着処理温度と酸価との関係を図3(C)、ノルマルプロピルアルコールを含む場合の脱着処理温度と酸価との関係を図3(D)に示す。それぞれ脱着処理温度が高いほど、また回収開始時間つまり活性炭吸着装置4での滞留時間が長いほど、回収液の酸価が高い結果となった。高温活性炭表面での加水分解反応が大きく起因していると推察することができる。
(b−2)化学吸着プロセスの有無による回収液の成分の確認実験について
酢酸エチルを含む被処理ガスについて実験した結果、最終的にデカンターから回収された液状酢酸エチルは、下表2のような組成となった。化学吸着処理によって、非常に酸成分(酢酸)を低濃度に低減できていることが判った。
Figure 2009195828
〔別実施の形態〕
上記実施形態では、エステル系溶剤として酢酸エチルを有する被処理ガスを処理する例を示したが、これに限定されるものではなく、加水分解等によって、酸成分が発生する成分を含有する被処理ガスを吸着・脱着離操作によって特定成分を回収する場合に、本発明は広く適用することができる。
〔実施例1〕
(a)印刷インキの作製および印刷
(a−1)水酸基価56.1mgKOH/g、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール27.199部、イソホロンジイソシアネート2.871部、2−エチルヘキシル酸第1錫0.005部および酢酸n−プロピル5.0部を窒素気流下に85℃で3時間反応させ、酢酸n−プロピル4.96部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液40.035部を得た。
(a−2)次いで、得られた末端イソシアネートプレポリマーにジ−n−ブチルアミン0.176部、酢酸n−プロピル59.789部を混合したものを50℃で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、重量平均分子量40000、溶剤組成が酢酸n−プロピル単一溶剤であるポリウレタン樹脂溶液(A1)を得た。
(a−3)チタニックスJR−805(テイカ社製)30部、ポリウレタン樹脂溶液(A1)10部、酢酸n−プロピル10.0部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂溶液(A1)40部、酢酸n−プロピル10.0部を混合し白色印刷インキ(B1)を得た。得られた白色印刷インキ(B1)100部に、酢酸n−プロピル50部を希釈溶剤として添加混合し、白色希釈印刷インキ(C1)を得た。ここで得られた白色希釈印刷インキの溶剤組成は、酢酸n−プロピル単一溶剤となった。
(a−4)次に、NBR(ニトリルブタジエンゴム)製のゴム硬度80Hsの圧胴、刃先の厚みが60μm(母材の厚み40μm、片側セラミック層の厚み10μm)のセラミックメッキドクターブレード、東洋プリプレス株式会社製のクロム硬度1050Hvの電子彫刻版(175線/inch、スタイラス角度130度)、および上記白色希釈印刷インキ(C1)を富士機械工業株式会社製グラビア5色印刷機の5色目にセットし、片面コロナ処理OPPフィルム「パイレンP2161(東洋紡績株式会社製)」のコロナ処理面に、印圧2kg/cm、ドクター圧2kg/cm、乾燥風量70m/分、乾燥温度60℃、印刷速度印刷150m/分の条件で30分間印刷を行なった。印刷中は、粘度コントローラーを用いて、酢酸n−プロピルのみからなる希釈溶剤を適宜補充して一定の粘度を保った。印刷幅は600mm、白色希釈印刷インキの塗布量は7.5g/m、トータルの印刷面積は2700mであった。
(b)有機溶剤の回収・再利用
(b−1)印刷時に発生した有機溶剤を含むガスを、図2に示すように、プレクーラーで5℃以下に冷却し、次いで吸着除湿部であるハニカムローターで露点−30℃以下にした後、ハニカム状活性炭を内蔵した活性炭吸着装置4に送給して吸着させた。活性炭吸着装置4は、ハニカム状活性炭約20,000枚を含み、寸法3,000×4,500×高さ1,000mmのものを用いた。有機溶剤を吸着したハニカム状活性炭に対して、約100℃に加熱した窒素を通流させて有機溶剤を脱着させ、有機溶剤を含む窒素を、シリカ−アルミナ系担体にカリウム化合物が担持されて構成された化学吸着剤を備えた化学吸着装置にて酸成分を除去した後、約15℃以下に冷却した第1冷却器6a、次いで約−10℃に冷却した第2冷却器6bを通流させ、有機溶剤(D1)を13.2kg回収した。印刷機からの有機溶剤発生量(回収装置への投入量)の計算値14.2kgに対して回収率は93.0%であった。
(b−2)得られた回収有機溶剤(D1)の溶剤組成は酢酸n−プロピル単一溶剤、水分量は0.3%、酸価は0.40mgKOH/gであった。回収有機溶剤(D1)は、白色印刷インキ(B1)を製造する際の溶剤および/または白色希釈印刷インキ(C1)を得る際の希釈溶剤としてそのまま再利用し、回収溶剤再利用型白色印刷インキ(E1)および回収溶剤再利用型白色希釈印刷インキ(F1)を得た。
〔実施例2〕
(a)印刷インキの作製および印刷
(a−1)アジピン酸と2−ブチル−2−エチルプロパンジオールから得られる水酸基価56.1mgKOH/g、数平均分子量2000のポリエステルジオール24.282部、イソホロンジイソシアネート4.317部、2−エチルヘキシル酸第1錫0.005部および酢酸n−プロピル5.0部を窒素気流下に85℃で3時間反応させ、酢酸n−プロピル5.0部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液38.604部を得た。
(a−2)次いで、イソホロンジアミン1.116部、ジ−n−ブチルアミン0.28部、酢酸n−プロピル46.0部およびイソプロピルアルコール14.0部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液38.604部を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、重量平均分子量60000、アミン価3.0mgKOH/樹脂1g、溶剤組成が酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール=80/20であるポリウレタン樹脂溶液(A2)を得た。
(a−3)チタニックスJR−805(テイカ社製)30部、ポリウレタン樹脂溶液(A2)10部、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比80/20)10.0部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂溶液(A2)40部、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比80/20)10.0部を混合し白色印刷インキ(B2)を得た。得られた白色印刷インキ(B2)100部に、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比80/20)50部を希釈溶剤として添加混合し、白色希釈印刷インキ(C2)を得た。ここで得られた白色希釈印刷インキの溶剤組成は、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール=80:20となった。
(a−4)白色希釈印刷インキ(C2)を富士機械工業株式会社製グラビア5色印刷機の5色目にセットし、実施例1と同条件にて30分間、印刷面積2700mの印刷を行なった。但し、印刷中の粘度制御に用いる希釈溶剤は、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比80/20)を使用した。
(b)有機溶剤の回収・再利用
(b−1)実施例1と同様の条件にて、水分除去、吸着、脱着、酸成分除去、冷却・液化を行ない、有機溶剤(D2)を12.8kg回収した。
(b−2)得られた回収有機溶剤(D2)の溶剤組成は酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール=88/12、水分量は0.3%、酸価は0.38mgKOH/gであった。回収有機溶剤(D2)100部に対してイソプロピルアルコールを新たに10部追加し、溶剤組成を酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール=80/20に調整した後、白色印刷インキ(B2)を製造する際の混合溶剤および/または白色希釈印刷インキ(C2)を得る際の希釈溶剤として再利用し、回収溶剤再利用型白色印刷インキ(E2)および回収溶剤再利用型白色希釈印刷インキ(F2)を得た。
〔実施例3〕
(a)印刷インキの作製および印刷
(a−1)チタニックスJR−805(テイカ社製)30部、ポリウレタン樹脂溶液(A2)10部、メチルエチルケトン10.0部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂溶液(A2)40部、メチルエチルケトン6.5部、イソプロピルアルコール3.5部を混合し白色印刷インキ(B3)を得た。得られた白色印刷インキ(B3)100部に、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール/メチルエチルケトン混合溶剤(重量比50/20/30)50部を希釈溶剤として添加混合し、白色希釈印刷インキ(C3)を得た。ここで得られた白色希釈印刷インキの溶剤組成は、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール/メチルエチルケトン=50:20:30となった。
(a−2)白色希釈印刷インキ(C3)を富士機械工業株式会社製グラビア5色印刷機の5色目にセットし、実施例1と同条件にて30分間、印刷面積2700mの印刷を行なった。印刷中の粘度制御に用いる希釈溶剤は、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール/メチルエチルケトン混合溶剤(重量比50/20/30)を使用した。
(b)有機溶剤の回収・再利用
(b−1)実施例1と同様の条件にて、水分除去、吸着、脱着、酸成分除去、冷却・液化を行ない、有機溶剤(D3)を12.9kg回収した。
(b−2)得られた回収有機溶剤(D3)の溶剤組成は酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール/メチルエチルケトン=58:11:31、水分量は0.4%、酸価は0.36mgKOH/gであった。回収有機溶剤(D3)100部に対して新たにイソプロピルアルコールを12.2部、メチルエチルケトンを4.4部追加し、溶剤組成を酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール/メチルエチルケトン=50:20:30に調整した後、白色希釈印刷インキ(C3)を得る際の希釈溶剤として再利用し、回収溶剤再利用型白色希釈印刷インキ(F3)を得た。
〔実施例4〕
(a)印刷インキの作製および印刷
(a−1)チタニックスJR−805(テイカ社製)30部、ポリウレタン樹脂溶液(A2)10部、メチルエチルケトン10.0部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂溶液(A2)40部、イソプロピルアルコール4.0部、メチルエチルケトン3.2部、プロピレングリコールモノメチルエーテル2.8部を混合し白色印刷インキ(B4)を得た。得られた白色印刷インキ(B4)100部に、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール/メチルエチルケトン/プロピレングリコールモノメチルエーテル混合溶剤(重量比50/20/25/5)50部を希釈溶剤として添加混合し、白色希釈印刷インキ(C4)を得た。ここで得られた白色希釈印刷インキの溶剤組成は、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール/メチルエチルケトン/プロピレングリコールモノメチルエーテル=50:20:25:5となった。
(a−2)白色希釈印刷インキ(C4)を富士機械工業株式会社製グラビア5色印刷機の5色目にセットし、実施例1と同条件にて30分間、印刷面積2700mの印刷を行なった。但し、印刷中の粘度制御に用いる希釈溶剤は、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール/メチルエチルケトン/プロピレングリコールモノメチルエーテル混合溶剤(重量比50/20/25/5)を使用した。
(b)有機溶剤の回収・再利用
(b−1)実施例1と同様の条件にて、水分除去、吸着、脱着、酸成分除去、冷却・液化を行ない、有機溶剤(D4)を12.7kg回収した。
(b−2)得られた回収有機溶剤(D4)の溶剤組成は酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール/メチルエチルケトン/プロピレングリコールモノメチルエーテル=57:13:20:10、水分量は0.4%、酸価は0.40mgKOH/gであった。回収有機溶剤(D4)100部に対して新たに酢酸n−プロピルを43部、イソプロピルアルコールを27部、メチルエチルケトンを30部追加し、溶剤組成を酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール/メチルエチルケトン/プロピレングリコールモノメチルエーテル=50:20:25:5に調整した後、白色希釈印刷インキ(C4)を得る際の希釈溶剤として再利用し、回収溶剤再利用型白色希釈印刷インキ(F4)を得た。
〔比較例1〕
(a)印刷インキの作製および印刷
白色希釈印刷インキ(C2)を富士機械工業株式会社製グラビア5色印刷機の5色目にセットし、実施例1と同条件にて30分間、印刷面積2700mの印刷を行なった。
(b)有機溶剤の回収・再利用
(b−1)除湿装置および酸成分を除去する化学吸着装置は用いず、130℃に加熱した1.9気圧の加圧水蒸気を供給し、活性炭に吸着・捕集された有機溶剤の脱着を行なった。回収された有機溶剤(D5)は14.1kgであった。
(b−2)得られた回収有機溶剤(D5)の溶剤組成は酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール=90/10、水分量は6.2%、酸価は1.03mgKOH/gであった。回収有機溶剤(D5)100部に対してイソプロピルアルコールを新たに12.5部追加し、溶剤組成を酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール=80/20に調整した後、白色印刷インキ(B2)を製造する際の混合溶剤および/または白色希釈印刷インキ(C2)を得る際の希釈溶剤として再利用し、回収溶剤再利用型白色印刷インキ(E5)および回収溶剤再利用型白色希釈印刷インキ(F5)を得た。
〔比較例2〕
(a)印刷インキの作製および印刷
白色希釈印刷インキ(C2)を富士機械工業株式会社製グラビア5色印刷機の5色目にセットし、実施例1と同条件にて30分間、印刷面積2700mの印刷を行なった。
(b)有機溶剤の回収・再利用
(b−1)除湿装置、酸成分を除去する化学吸着装置は用いず、100℃に加熱した窒素を供給し、活性炭に吸着・捕集された有機溶剤の脱着を行なった。回収された有機溶剤(D6)は13.5kgであった。
(b−2)得られた回収有機溶剤(D6)の溶剤組成は酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール=90/10、水分量は3.5%、酸価は0.85mgKOH/gであった。回収有機溶剤(D6)100部に対してイソプロピルアルコールを新たに12.5部追加し、溶剤組成を酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール=80/20に調整した後、白色印刷インキ(B2)を製造する際の混合溶剤および/または白色希釈印刷インキ(C2)を得る際の希釈溶剤として再利用し、回収溶剤再利用型白色印刷インキ(E6)および回収溶剤再利用型白色希釈印刷インキ(F6)を得た。
〔評価1〕
実施例1〜4および比較例1〜2で得た回収溶剤再利用型白色印刷インキE1,2,5,6、回収溶剤再利用型白色希釈印刷インキF1〜6について、回収有機溶剤の再利用適性を以下の通り評価した。
(i)評価方法
(i−1)成分調整に必要な有機溶剤の量
得られた回収有機溶剤を成分調整して白色印刷インキおよび/または白色希釈印刷インキに再利用する際に、成分調整を行なうために新たに必要となる有機溶剤の量を測定した。成分調整に必要な溶剤が少ない程、回収有機溶剤の再利用適性は良好な評価となる。
(i−2)インキ貯蔵安定性
回収有機溶剤を再利用した回収溶剤再利用型白色印刷インキE1,2,5,6、回収溶剤再利用型白色希釈印刷インキF1〜6を、40℃の環境下で7日間静置・貯蔵した。40℃、7日間貯蔵後の分離の有無および貯蔵前後の粘度変化を測定した。なお、白色印刷インキの粘度測定には離合社製ザーンカップNo.4、白色希釈印刷インキの粘度測定には離合社製ザーンカップNo.3を用いた。粘度測定の際には、あらかじめ白色印刷インキ、白色希釈印刷インキおよびザーンカップを25℃の恒温槽に浸し温度を一定とした。次いで、ザーンカップの上端が液面よりも下になるように、25℃に調整した白色印刷インキ、白色希釈印刷インキの中に浸し、ザーンカップのつり輪を持って素早く上に引き上げると同時にストップウォッチを始動した。ザーンカップNo.4の場合は、ザーンカップの上から見て流出孔がそのものの大きさに見えた時点を終点とし、ザーンカップNo.3の場合は、白色希釈印刷インキの流出孔からの連続した流出が最初に途切れた時点を終点とした。
(ii)評価基準
40℃、7日間貯蔵後のインキ貯蔵安定性を、以下の基準で評価した。
○ :白色印刷インキ、白色希釈印刷インキの分離が見られず、且つ貯蔵前後の粘度変化が±1秒未満であった。
○△:白色印刷インキ、白色希釈印刷インキの分離が僅かに認められた(インキ液面高さの5%未満)。または貯蔵前後の粘度変化が±1秒以上、±2秒未満であった。
△ :白色印刷インキ、白色希釈印刷インキの分離が認められた(インキ液面高さの5%以上、10%未満)。または貯蔵前後の粘度変化が±2秒以上、±3秒未満であった。
△×:白色印刷インキ、白色希釈印刷インキの分離が認められた(インキ液面高さの10%以上、20%未満)。または貯蔵前後の粘度変化が±3秒以上、±4秒未満であった。
× :白色印刷インキ、白色希釈印刷インキの分離が認められた(インキ液面高さの20%以上)。または貯蔵前後の粘度変化が±4秒以上であった。
〔評価2〕
(i)評価方法
(i−1)印刷物臭気
NBR(ニトリルブタジエンゴム)製のゴム硬度80Hsの圧胴、刃先の厚みが60μm(母材の厚み40μm、片側セラミック層の厚み10μm)のセラミックメッキドクターブレード、東洋プリプレス株式会社製のクロム硬度1050Hvの電子彫刻版(175線/inch、スタイラス角度130度)および回収有機溶剤を再利用した回収溶剤再利用型白色希釈印刷インキF1〜6を富士機械工業株式会社製グラビア5色印刷機の5色目にセットし、片面コロナ処理OPPフィルム「パイレンP2161(東洋紡績株式会社製)」のコロナ処理面に、印圧2kg/cm、ドクター圧2kg/cm、乾燥風量70m/分、乾燥温度60℃、印刷速度印刷150m/分の条件で5分間印刷を行ない、印刷物1〜6を得た。印刷幅は600mm、白色希釈印刷インキの塗布量は7.5g/mであった。
(i−2)また、回収有機溶剤を使用していない白色希釈印刷インキC1〜4を用いて上記と同様の条件で印刷を行ない、標準印刷物H1〜4を得た。作製した印刷物G1〜6およびH1〜4を0.5mをそれぞれ入れた450ccマヨネーズ瓶を13本用意し、40℃、30分間加熱追い出し後、10人のパネラーが官能臭気を評価した。
(ii)評価基準
印刷物の官能臭気を以下の基準で評価した。
○ :パネラー10人全員が標準印刷物と差異がないと判定した。
○△:パネラー10人のうち1人が標準印刷物と差異があると判定した。
△ :パネラー10人のうち2〜3人が標準印刷物と差異があり、酢酸臭を感じると判定した。
△×:パネラー10人のうち3〜5人が標準印刷物と差異があり、酢酸臭を感じると判定した。
× :パネラー10人のうち6人以上が標準印刷物と差異があり、酢酸臭を感じると判定した。
以上、評価結果を表3に示す。
Figure 2009195828
以上のように、本発明によれば、有機溶剤を含むガスを回収して、特に酢酸エチルなどのエステル系溶剤を含む有機溶剤ガスを効果的に吸着させ、さらに脱着させた有機溶剤を効率的に回収するとともに、爆発する危険性を確実に防止し、回収過程において発生する副生物の影響の少ない有機溶剤含有ガス処理設備を提供することができた。また、回収有機溶剤中に混入する水分および酸の量が低減できるため、回収後は、蒸留などの精製や中和を行なうことなく、回収有機溶剤を容易に印刷インキ組成物の原料として再利用できる方法を提供することができた。
本発明に係る有機溶剤を含む被処理ガスの処理プロセスの全体フロー 本発明に係る有機溶剤を含む被処理ガスの処理設備の概略図 本発明に係る処理設備を用いた実験結果を示す概略図 従来技術に係る揮発性有機物質の回収装置を例示する概略図 従来技術に係るハニカム状活性炭を用いたフロンガス回収処理を例示する概略図
符号の説明
1 送給ファン
2 除湿装置
2a プレクーラー
2b 吸着除湿部
2c ブライン貯槽タンク
2d ブラインチラー
3 活性炭吸着装置
3a,3b 活性炭吸着部
4 加熱ガス供給装置
4a 窒素容器
4b 窒素ガス循環ファン
4c 熱媒油槽
5 化学吸着処理装置
6 冷却装置
6a 第1冷却器
6b 第2冷却器
6c 第1チラーユニット
6d 冷却水槽
6e 第2チラーユニット
6f 熱交換器
7 回収装置
7a 回収槽
8,9 配管
P1〜5 ポンプ
V1〜7 制御バルブ

Claims (12)

  1. 印刷時に発生する有機溶剤を含む被処理ガス中に含まれる水分を除去する除湿装置と、除湿された被処理ガス中の有機溶剤を吸着除去するためのハニカム状活性炭が充填・装着された活性炭吸着装置と、
    この活性炭吸着装置によって吸着された有機溶剤を活性炭から脱着するため加熱された不活性ガスを送給する加熱ガス供給装置と、
    この加熱された不活性ガスにより脱着された脱着ガス中に含まれる酸成分を除去するための化学吸着剤が充填・装着された化学吸着処理装置と、
    この脱着ガスを脱水する冷却装置と、
    脱水された脱着ガス中に含まれる有機溶剤を回収する回収装置と、
    を有することを特徴とする有機溶剤を含む被処理ガスの処理設備。
  2. 前記化学吸着剤が、シリカ系、アルミナ系またはシリカ−アルミナ系担体に、カリウム化合物が担持されて構成されることを特徴とする請求項1記載の有機溶剤を含む被処理ガスの処理設備。
  3. 前記除湿装置が、冷媒の送給を受ける熱交換器から構成されたプレクーラーと、これに続く吸着除湿部とを有しており、この吸着除湿部が円筒状容器内に回転可能に、モレキュラーシーブスあるいはゼオライトがハニカム状に配置されたハニカムローターから構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の有機溶剤を含む被処理ガスの処理設備。
  4. 前記不活性ガスが窒素であり、この窒素を加熱して前記活性炭吸着装置に送給して有機溶剤を脱着するようになっているとともに、脱着された有機溶剤を前記冷却装置に送給する経路に、加熱していない窒素を導入するようになっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機溶剤を含む被処理ガスの処理設備。
  5. エステル系溶剤を必須成分とし、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤からなる群のいずれかに属する有機溶剤を1種類以上3種類以下含有する印刷インキ組成物を用いて印刷する際に発生する有機溶剤を含む被処理ガスを処理することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機溶剤を含む被処理ガスの処理設備。
  6. 印刷時に発生する有機溶剤を含む被処理ガスから有機溶剤を回収する処理方法であって、以下のプロセス
    (1)被処理ガス中に含まれる水分を除去するプロセス
    (2)除湿された被処理ガス中の有機溶剤を、ハニカム状活性炭によって吸着除去するプロセス
    (3)加熱された不活性ガスを用いて吸着された有機溶剤を前記活性炭から脱着するプロセス
    (4)脱着された脱着ガス中に含まれる酸成分を化学吸着剤によって吸着除去するプロセス
    (5)酸成分が除去された脱着ガスを脱水するプロセス
    (6)脱水された脱着ガス中に含まれる有機溶剤を回収するプロセス
    を有することを特徴とする有機溶剤の回収方法。
  7. エステル系溶剤を必須成分とし、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤からなる群のいずれかに属する有機溶剤を1種類以上3種類以下含有する印刷インキ組成物を用いて印刷する際に発生する有機溶剤を含む被処理ガスを処理することを特徴とする請求項6記載の有機溶剤の回収方法。
  8. 回収した有機溶剤中の水分量が、3%以下および酸価が0.5mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項6または7記載の有機溶剤の回収方法。
  9. 印刷インキ組成物が、高分子ジオールおよび有機イソシアネート化合物を反応させてなるポリウレタン樹脂をメインバインダーとして含むことを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の有機溶剤の回収方法。
  10. ポリウレタン樹脂が、鎖延長剤および末端停止剤を用いてなることを特徴とする請求項9記載の有機溶剤の回収方法。
  11. 請求項6ないし10いずれか記載の方法により回収した有機溶剤を、印刷インキ組成物の原料として再利用する方法。
  12. 回収した有機溶剤を、成分調整して使用することを特徴とする請求項11記載の有機溶剤を再利用する方法。
JP2008040036A 2008-02-21 2008-02-21 有機溶剤を含む被処理ガスの処理設備、有機溶剤の回収方法および有機溶剤の再利用方法 Pending JP2009195828A (ja)

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