JP2009195464A - ミシンの糸切り装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ミシンの糸切り装置(100)は、待機位置と前進位置との間を移動する第1糸捕捉部材(110)と、第1糸捕捉部材を待機位置と前進位置に案内するガイド溝(252)と、固定刃(150)と、針孔と第1糸捕捉部材との間に架け渡された縫い糸を捕捉して、固定刃と協働して縫い糸を切断する第2糸捕捉部材(120)と、第1糸捕捉部材の捕捉動作の後、第2糸捕捉部材を駆動させる動作装置と、を備え、ガイド溝(252)は、第1糸捕捉部材を前進位置から捕捉位置に向けて案内する第1案内部(252b)と、第1案内部に連続して形成され、第1糸捕捉部材を待機位置に向けて案内すると共に、第1案内部を基準に、第2糸捕捉部材側から離間する方向に形成された第2案内部(252a)と、を有する。
【選択図】図9
Description
かかる問題に鑑みて、近年では、糸捕捉時における糸捕捉体610の駆動源をステッピングモータとして下糸Tを低速で捕捉し、切断時にはミシンモータの駆動力により、強い力で下糸T及び上糸を切断する構成としたミシンの糸切り装置も開発されている。
しかし、次回縫製時に縫い糸を確実に絡ませるためには、切断後にミシン側に残る縫い糸の残端長さを確保することが必要となる。図23に示すように、単一の糸捕捉体610と固定刃で縫い糸を切断する従来のミシンの糸切り装置を用いて縫い糸を切断した後に、ミシン側に残る縫い糸の残端長さを確保しようとすると、切断後に布側に残る縫い糸の残端長さもそれに伴い長くなってしまう問題があった。
ミシンベッド上面に設けられ、前記縫い針が貫通する針孔(9)が形成された針板(8)と、
前記針板の下方で回転し、前記縫い針と協働して縫い目を形成する水平釜(21)と、を備え、
前記針板の下方で、前記水平釜と前記針孔との間に渡る上糸又は下糸の少なくとも一方の縫い糸を切断するミシンの糸切り装置(100)において、
一端側に支持部を、他端側に糸捕捉部(111)を有すると共に、待機位置と、前記水平釜と前記針孔との間に渡る前記縫い糸に向けて前進する前進位置との間を移動する第1糸捕捉部材(110)と、
前記第1糸捕捉部材の支持部を支持して、前記第1糸捕捉部材を前記待機位置と前記前進位置に案内するガイド溝(252)と、
前記針板の下方で前記針孔に接近して設けられた固定刃(150)と、
前記縫い糸を捕捉する糸捕捉部(121)を有し、前記針孔と前記第1糸捕捉部材との間に架け渡された縫い糸を捕捉して、前記固定刃と協働して前記縫い糸を切断する第2糸捕捉部材(120)と、
前記第1糸捕捉部材の捕捉動作の後、前記第2糸捕捉部材を駆動させる動作装置(200)と、を備え、
前記ガイド溝(252)は、
前記第1糸捕捉部材を前記前進位置から縫い糸を捕捉する捕捉位置に向けて案内する第1案内部(252b)と、
前記縫い糸と前記第2糸捕捉部材の糸捕捉部との重なりを増やすために、前記第1案内部に連続して形成され、前記第1糸捕捉部材を待機位置に向けて案内すると共に、前記第1案内部を基準に、前記第2糸捕捉部材側から離間する方向に形成された第2案内部(252a)と、
を有することを特徴とする。
さらに、ガイド溝の第2案内部により縫い糸が第2糸捕捉部材に近づくので、第2糸捕捉部材が糸を捕捉するために移動する距離を短くすることができる。また、第2糸捕捉部材の移動ストロークを変えなくても縫い糸と第2糸捕捉部材の糸捕捉部との重なり合う領域が増えるので、第2糸捕捉部材の糸捕捉部による糸の捕捉をより確実なものとすることができる。
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。また、本実施形態においては、各図中に示したXYZ軸を基準にしてミシン1(図1参照)の各部の方向を定めるものとする。ミシン1を水平面に設置した状態において、Z軸方向は鉛直方向となる上下方向を示し、Y軸方向はアーム部11の長手方向と一致する左右方向を示し、X軸方向は水平且つY軸方向に直交する前後方向を示す。
なお、ミシン1は、針振りの駆動源となる針棒揺動用ステッピングモータ90と、布送りの駆動源となる送り歯駆動用ステッピングモータ91と、縫い対象として選択された模様を表示する液晶パネルである選択模様表示器92と、ミシン1の縫い動作の起動と停止を入力する起動停止スイッチ16と、縫い対象としての模様選択を行う模様選択スイッチ17と、運針の速度を設定する速度設定手段としての速度設定ボリューム18とを備えているが、これらは公知のものと同様の構成であるため、本実施形態では詳述しない。
図1に示すように、ミシンフレーム10は、当該ミシンフレーム10の上部をなすアーム部11と、ミシンフレーム10の下部をなしアーム部11と平行に延設されたベッド部12と、アーム部11とベッド部12とを連結し、アーム部11及びベッド部12の長手方向と直交する上下方向(Z軸方向)に立設される縦胴部13とからなり、その外形が正面視にて略コ字状に成形されている。
アーム部11内には、その長手方向であるY軸方向に沿って主軸としての上軸(図示略)が回転自在に設けられており、該上軸にはミシン動作の主たる駆動源となるミシンモータ5が連結されている。また、アーム部11の先端における作業者側の端面には、糸切り装置100による糸切り動作の開始を入力する糸切り開始スイッチ30が設けられている。
一方、ベッド部12内には、図示しないプーリ及びベルトを介して上軸と連結された下軸2が該ベッド部12の長手方向(Y軸方向)に沿って回転自在に設けられている。そして、ミシンモータ5の駆動により上軸が回転されると、プーリ及びベルトを介して下軸2が回転される。本実施形態では、上軸に対して下軸2が一対一の回転数(回転速度)で回転し、該上軸の回転角度と下軸の回転角度とが互いに対応する。従って、上軸の所定の回転角度を検出することで、対応する下軸の回転角度を検出することができるようになっている。また、ベッド部12の先端側には、縫い針3が針落ちを行う針孔9を有する針板8がベッド部12の上面に沿って設けられている。
針駆動機構は、アーム部11の先端内部において上軸の先端に固定された回転錘(図示略)と、回転錘の偏心部に回転自在に連結されたクランクロッド(図示略)と、クランクロッドの下端に連結された針棒と、針棒の下端に支持された縫い針3とを備えている。そして、ミシンモータ5の駆動により上軸が回転すると、回転錘及びクランクロッドを介して針棒に上下動が伝達され、縫い針3が往復上下動を行う。
図3に示すように、釜機構20は、ベッド部12の先端側の内部であって、針駆動機構による縫い針3の針落ち近傍に配置されており、Z軸方向に沿って垂直に設けられた図示しない釜軸を中心に回転する水平釜21を備えている。この水平釜21は、図示しない釜軸ギヤを介して下軸2から動力を得て回転する外釜22と、外釜22の内側に配設された回転しない内釜23とを備えている。外釜22は、上軸及び下軸2の二倍の回転速度、すなわち二倍の回転数で回転し、縫い針3が上昇する際にベッド部12内に形成される上糸のループを外周に設けられた剣先25で捕捉する。そして、内釜23の内部には、下糸が巻かれたボビン24が交換且つ回転自在に装着されている。かかる水平釜21の上部は解放されており、ボビン24から繰り出される下糸が当該下糸の下糸経路に沿って供給され、上糸と交絡されることで縫い目が形成される。
図2に示すように、糸切り装置100は、水平釜21と針孔9との間に渡る上糸又は下糸の少なくとも何れか一方の縫い糸を切断するものである。糸切り装置100は、糸捕捉部111を有し、針板8の下方で進退移動して縫い糸を捕捉する第1糸捕捉部材たる第1糸捕捉体110と、糸捕捉部121を有し、第1糸捕捉体110により捕捉されることで針孔9と糸捕捉部111との間に掛け渡された縫い糸を捕捉して固定刃150に案内し切断する第2糸捕捉部材たる第2糸捕捉体120と、第1糸捕捉体110による捕捉動作の後に第2糸捕捉体120による捕捉動作と切断動作とを行わせる動作装置200と、を備えている。
第1糸捕捉体110は、図2及び図4(a)に示すように、先端が進退移動の後方側C2に向けて曲成された返し部すなわちフック状の糸捕捉部111を有し、後述する動作装置200の第1リンク機構130によりガイド溝252に沿って下軸2の長手方向(Y軸方向)に沿って進退移動(往復直線動作)を行うことで、縫い糸Tを捕捉する。なお、本実施形態では、糸捕捉部111を二股に形成しているが(図2参照)、例えば、単一のフックであってもよい。また、この第1糸捕捉体110の側方には、当該第1糸捕捉体110が初期状態すなわち最後退位置(後述する)に配置された状態で、先端の糸捕捉部111の側面に当接されることで、切断後の縫い糸Tを保持するための図示しないクランプ部材(糸保持部材)が設けられている。第1糸捕捉体110の一端部(後端側)には、第1糸捕捉体110の延びる方向に対して略直交する方向に延びる二本のピン112が形成されている。この二本のピン112は、第1リンク機構130により支持される支持部となる。
第2糸捕捉体120は、上記第1糸捕捉体110と同様、その先端に進退移動の後方側D2に向けて曲成された返し部であるフック状の糸捕捉部121を有し、縫い糸Tを捕捉した第1糸捕捉体110の糸捕捉部111と針孔9との間に掛け渡された縫い糸Tを捕捉する(図20参照)。この第2糸捕捉体120は、後述する動作装置200の第2リンク機構140により第2ガイド溝300に沿って往復直線動作を付与されて進退移動することで、先端の糸捕捉部121が、第1糸捕捉体110の糸捕捉部111と針孔9との間に掛け渡された縫い糸Tを平面視にて交差するように動作可能な針落ち近傍の位置に配置されている(図20参照)。
かかる第2糸捕捉体120は、第1糸捕捉体110の糸捕捉部111と針孔9との間に掛け渡された縫い糸Tを捕捉可能な高さ(所定高さ)を通過する(図4(b)参照)。つまり、第2糸捕捉体120は、図4(b)に示すように、その前端が針板8に近い上部側ほど先が鋭くなっており、この前端が、第1糸捕捉体110の糸捕捉部111に捕捉された縫い糸Tと針板8との間を通過するように移動する。
また、第2糸捕捉体120は、先端の糸捕捉部121を含めて、長手方向の全体が下方に向けて平行に延出する二股状に形成されている(図3及び図4(c)参照)。この二股部の内側には、当該第2糸捕捉体120の前進移動方向に刃先を向けて固定刃150が設けられている(図4(b)及び図4(c)参照)。そして、第2糸捕捉体120は、動作装置200により進退移動の動力を付与され固定刃150に沿って往復直線動作を行うことで、先端の糸捕捉部121で捕捉した縫い糸Tを固定刃150に案内して切断する。
動作装置200は、図2に示すように、第1糸捕捉体110による捕捉動作の駆動源となる糸捕捉体駆動用ステッピングモータ180(以下、単にステッピングモータ180とする)と、ミシンモータ5により回転される下軸2に設けられた第1カム部材たる糸切りカム160と、この糸切りカム160に並設され上記ステッピングモータ180により駆動する第2カム部材たる糸捕捉体駆動カム170と、糸切りカム160と糸捕捉体駆動カム170の双方の原節に当接可能な従節たるカム当接部131を有し、糸切りカム160及び糸捕捉体駆動カム170から第1糸捕捉体110に進退移動の動力を伝達する第1動力伝達手段たる第1リンク機構130と、糸切りカム160と糸捕捉体駆動カム170の双方の原節に当接可能な従節たるカム当接部141を有し、糸切りカム160及び糸捕捉体駆動カム170から第2糸捕捉体120に進退移動の動力を伝達する第2動力伝達手段たる第2リンク機構140と、を備えている。
なお、本実施形態では、第1糸捕捉体110及び第2糸捕捉体120が各々の前進方向であるC1方向,D1方向に移動する方向に後述する糸捕捉体駆動カム170を回動する方向をステッピングモータ180の正転方向とし、逆に、第1糸捕捉体110及び第2糸捕捉体120が各々の後退方向であるC2方向、D2方向に移動する方向に糸捕捉体駆動カム170を回動する方向をステッピングモータ180の逆転方向とする(図7参照)。また、軸周りに回動することで、後述する第1リンク機構130を介して第1糸捕捉体110に進退移動を付与するとともに第2リンク機構140を介して第2糸捕捉体120に進退移動を付与する糸捕捉体駆動カム170の、当該軸周りの回動量に対応するステッピングモータ180の駆動量は、様々な進退移動量に対応するパルス数が予め試験的に求められ後述する制御部50の記憶部であるROM52に記憶されている。
かかる糸切りカム160は、各々の原節が、ミシンモータ5の駆動により、第2糸捕捉体120を最前進位置に配置したまま縫い糸Tを捕捉した第1糸捕捉体110を最後退位置に後退し、その後、第2糸捕捉体120を最後退位置に移動するように各々の原節に対する従節を案内するようになっている。
具体的に、上記各原節たる端面カム部161,162は、後述する切断制御手段としての制御部50によりミシンモータ5が駆動されることで回転する下軸2の回転量に応じて、各従節131,141を所定のタイミング及び所定の移動量で案内するように、回転方向の位相に応じて段階的に起伏した端面形状を有している(図8参照)。
この糸捕捉体駆動カム170の外周部におけるスラスト方向の両端部近傍には、それぞれ当該糸捕捉体駆動カム170を回動自在に支持する支持部材178に当接されることで該糸捕捉体駆動カム170のスラスト方向の位置決めを行うギヤ171及びフランジ172が設けられている。このうち、ギヤ171は、ステッピングモータ180から当該糸捕捉体駆動カム170に回動力を伝達するための従動ギヤとなっている。
そして、糸捕捉体駆動カム170は、原節である円周カム部174及び端面カム部175が、ステッピングモータ180の正転により第1糸捕捉体110及び第2糸捕捉体120を共に最後退位置から最前進位置まで移動した後、ステッピングモータ180の逆転により第2糸捕捉体120を最前進位置に配置したまま第1糸捕捉体110を後退途中の糸捕捉位置に配置するように各カム当接部131,141を案内する(図7参照)。
そして、第1リンク機構130は、ばね134の付勢力により、第1糸捕捉体110に常に前進移動方向C1(図3及び図5における右方向)に向かう移動力を伝達するとともに、糸切りカム160又は糸捕捉体駆動カム170が回動することでばね134の付勢力に抗してカム当接部131がベッド部12先端側(図3及び図5における左側)に移動された際には、第1糸捕捉体110に後退方向C2(同左側)に向かう移動力を伝達する。
そして、第2リンク機構140は、ばね144の付勢力により、第2糸捕捉体120に常に前進移動方向(図3に示す矢印D1方向)に向かう移動力を伝達するとともに、糸切りカム160又は糸捕捉体駆動カム170が回動することでばね144の付勢力に抗してカム当接部141が縦胴部13側(図3及び図5における右方向)に移動された際には、第2糸捕捉体120に後退方向(図3に示す矢印D2方向)に向かう移動力を伝達する。
図9に示すように、案内機構250は、第1糸捕捉体110が縫い糸Tを捕捉した状態で針板8の下方から退避する際に、第1糸捕捉体110の糸捕捉部111をその退避経路よりも第2糸捕捉体120に近づく位置に案内するものである。
案内機構250は、第1糸捕捉体110とリンク133との間に挟み込まれるように配置され、ミシンフレーム10に固定されているベース板251と、ベース板251の表裏に貫通するように形成され、第1糸捕捉体110の進退移動方向に延びるガイド溝252と、を備えている。
ベース板251は、第1糸捕捉体110又は第2糸捕捉体120、及び、リンク133又はリンク143との間に挟み込まれるように設けられ、第1糸捕捉体110からリンク133に向けて延びる二つのピン112が上面からガイド溝252に摺動自在に挿通されている。これにより、リンク133の動作によって連動する第1糸捕捉体110は、二つのピン112がベース板251のガイド溝252に沿って移動することになる。
第1案内部252bは、Y軸方向に沿って平行に形成され、右端側が第1糸捕捉体110を前進位置に案内する。
図3,9に示すように、第2案内部252aは、待機位置に向けて下降するように(図9における左斜め下方向に向けて)形成されている。すなわち、第2案内部252aは、第1案内部252bを基準に、第2糸捕捉体120側から離間する方向に形成されている。
比較のために、図10にY軸方向に平行な単一のガイド溝を用いた際の、第1糸捕捉体190の待機位置を一点鎖線で示す。一点鎖線の第1糸捕捉体190に比べて、本実施形態の待機位置の第1糸捕捉体110の糸捕捉部111は、第2糸捕捉体120側に接近する。
これにより、第1糸捕捉体110に捕捉されて、針孔9から第1糸捕捉体110の糸捕捉部111に至る縫い糸Taは、第2糸捕捉体120の奥側(図10上側)に移動する。このため、第2糸捕捉体120が待機位置に戻る際、第2糸捕捉体120が縫い糸Taを確実に捕捉することができる。
次に、図11に基づきミシン1の制御系の構成について詳しく説明する。
図11は、ミシン1の電気的構成を示す制御ブロック図である。図11に示すように、制御部50は、後述する各種の制御及び処理を行うための各種プログラムと各種の模様縫いを行うための縫製データその他各種設定データを記憶するROM52と、ROM52内の各種のプログラムを実行するCPU51と、各種のプログラムの実行に際して作業領域となるRAM53と、CPU51,ROM52及びRAM53とバスを介して接続された入力インターフェース54及び出力インターフェース55と、ミシンモータ5への電源供給により駆動を行うスイッチング駆動回路56と、針棒揺動用ステッピングモータ90への電源供給により駆動を行う駆動回路57と、送り歯駆動用ステッピングモータ91への電源供給により駆動を行う駆動回路58と、糸捕捉体駆動用ステッピングモータ180への電源供給により駆動を行う駆動回路59とを備えている。
エンコーダ6は、ミシンモータ5の回転軸に取り付けた図示しない円盤と光学センサによって構成されている。円盤には円周に沿って等間隔にスリットが開けられており、光学センサは円盤を挟んで配置された光源と受光素子とを備えている。そして、図示しない上軸が1回転すると光源からの光の透過と遮断との繰り返しにより受光素子からパルス信号が発生する。このエンコーダ6では、上軸一回転につき光学センサが180パルスを発生するように設計されている。エンコーダ6が出力するパルス信号は、入力インターフェース54のパルスカウンタに入力される。
具体的に、制御部50は、糸切り開始スイッチ30の押下が検出されると、切断制御手段として、CPU51が主軸位置検出センサ18の検出信号を読み込み、下軸2が所定の回転角度(例えば、針棒が下停止する際の下軸角度)に位置する際にステッピングモータ180を正転方向に駆動することにより、第1糸捕捉体110及び第2糸捕捉体120を共に最後退位置から最前進位置まで移動した後、ステッピングモータ180を逆転方向に駆動して第2糸捕捉体120を最前進位置に配置したまま第1糸捕捉体110を後退途中の糸捕捉位置に配置する制御を実行する。なお、かかる制御は、糸捕捉体駆動カム170の周方向に渡って所定の位相に形成された円周カム部174及び端面カム部175の各カム形状(図7参照)に応じて、当該糸捕捉体駆動カム170を軸周りに所定量回動させるようにCPU51がステッピングモータ180を駆動することで行われる。
また、制御部50は、切断制御手段として、ステッピングモータ180を逆転方向に駆動して第2糸捕捉体120を最前進位置に配置したまま第1糸捕捉体110を糸捕捉位置に配置する上記制御を実行した後、ステッピングモータ180を停止するとともにミシンモータ5を駆動することで、第2糸捕捉体120を最前進位置に配置したまま縫い糸Tを捕捉した第1糸捕捉体110を最後退位置に後退し、その後、第2糸捕捉体120を最後退位置に移動する制御を実行する。
次に、図12に示すフローチャートに基づき上記構成を備えるミシン1の動作説明を行う。
まず、縫製中は、図13(a)に示すように、第1リンク機構130のカム当接部131が糸捕捉体駆動カム170における円周カム部174の待機部176に配置されるとともに、第2リンク機構140のカム当接部141が糸捕捉体駆動カム170における端面カム部175の待機部177に配置された状態で保持されている。このため、各カム当接部131,141と糸切りカム160とが相互に干渉することはなく、下軸2及び糸切りカム160は自由に回転することができる。また、第1糸捕捉体110及び第2糸捕捉体120は、図13(b)に示すように、それぞれの進退移動方向における最後退位置すなわち待機位置に配置された状態で待機している。
そして、図15(a)に示すように、糸捕捉体駆動カム170が初期位置から矢印G方向に180°回動されるまでステッピングモータ180が駆動されると(ステップS4)、図15(b)に示すように、針板8の下方でボビン24と針孔9との間に掛け渡された下糸T2の当該下糸経路を糸捕捉部111が通過するように第1糸捕捉体110が最前進位置まで移動される。また、上記糸捕捉体駆動カム170の回動により、第2糸捕捉体120は、その先端の糸捕捉部121が水平釜21の上方であって第1糸捕捉体110に近接する針落ち近傍の最前進位置まで移動される(図15(b)参照)。
ここで、上述したように、水平釜30(外釜22)は下軸2の回転数に対して二倍の回転数で回転されるため、下軸2が半回転すなわち180°程回転すると、水平釜30(外釜22)はほぼ360°すなわち一回転することとなる。つまり、下軸2及び糸切りカム160が半回転する間に外釜22を通過した上糸が、図17(b)に示すように、各糸捕捉体110,120の糸捕捉部111,121に同時に捕捉される(ステップS12)。つまり、この時点で、糸捕捉部111には上糸T1及び下糸T2が捕捉され、糸捕捉部121には上糸T1が捕捉された状態となる。また、図17(a)に示すように、糸切りカム160の端面カム部161がカム当接部131に当接する位置まで回転すると、糸切りカム160の端面カム部161を原節として従節たるカム当接部131が、図18(a)に示すように、端面カム部161に沿って左方向に移動される。これに伴い、第1糸捕捉体110がさらに後退(後半)する。
さらに、第1糸捕捉体110の後退移動により、第1糸捕捉体110の一端に設けられているピン112は、やがてベース板251のガイド溝252の湾曲部252aに案内される。このとき、湾曲部252aは、第2糸捕捉体120から遠ざかる方向に湾曲形成されていることから、第1糸捕捉体110のうちピン112が設けられている側の端部は、湾曲部252aに沿って第2糸捕捉体120から遠ざかる方向に移動する。
これに対し、第1糸捕捉体110のうちピン112が設けられていない側の端部、すなわち、縫い糸を捕捉している糸捕捉部111は、ピン112が湾曲部252aに沿って移動することにより第2糸捕捉体120に近づくように移動する。
下糸T2の角度の変化により、下糸T2が第2糸捕捉体120先端の曲面に沿って下方に案内されて糸捕捉部121に捕捉されることとなる。従って、第1糸捕捉体110が図18(b)に示す最後退位置に配置された状態においては、糸捕捉部111に上糸T1及び下糸T2が捕捉されるとともに、糸捕捉部121にも上糸T1及び下糸T2が捕捉された状態となる(ステップS13)。
そして、第2糸捕捉体120の糸捕捉部121が、糸切り位置を通過してさらに後退移動し最後退位置まで移動(ステップS14)することで、図19(b)に示すように、当該糸捕捉部121によって固定刃150に導かれた上糸T1及び下糸T2が切断される(ステップS15)。
さらに、CPU51は、駆動回路56を介してミシンモータ5を停止した後(ステップS16)、駆動回路59を介してステッピングモータ180の逆転駆動(後半)を再開することで糸捕捉体駆動カム170を逆方向(戻り方向)に原点位置まで駆動する処理を実行する(ステップS17)。これにより、糸捕捉体駆動カム170が初期位置(0°)まで逆方向に回転し、カム当接部131が円周カム部174の待機部176内に案内されるとともに、カム当接部141が端面カム部175の待機部177に案内される。従って、第1糸捕捉体110及び第2糸捕捉体120が何れも最後退位置に保持され(ステップS18)、縫製可能な状態となって糸切り処理が終了する。
以上のように、糸切り装置100によれば、第1糸捕捉体110で縫い糸Tを捕捉した後、第1糸捕捉体110の糸捕捉部111と針孔9との間に掛け渡された縫い糸Tをさらに第2糸捕捉体120で捕捉して固定刃150に案内して切断する構成としたことにより、縫い糸Tのより針孔9に近い部分を切断することができる。従って、第1糸捕捉体110で捕捉した縫い糸Tを固定刃150に導いて切断する従来のミシンの糸切り装置に比べて、切断後に布側に残る縫い糸Tの残端長さを短縮することができ、且つ、ミシン1側に残る縫い糸Tの残端長さは、縫い糸Tが第1糸捕捉体110で折り返されるため、従来よりも長く確保することができる。これにより、縫い糸Tを適切な長さに切断して布側に残る縫い糸Tの残端処理に要する手間や時間を低減することができるとともに、次回縫製時に縫い糸Tを効率良く絡ませることができるため、作業の効率化が図られる。
さらに、図21に示すように、ガイド溝252の第2案内部252aにより縫い糸が第2糸捕捉体120に近づくので、第2糸捕捉体120が縫い糸を捕捉するために移動する距離を短くすることができる。また、第2糸捕捉体120の移動ストロークを変えなくても、図21(a)に示すように、第2糸捕捉体120と縫い糸とのラップ幅、言い換えると、第2糸捕捉体120の先端から縫い糸がある位置までの距離が長くなる(図21(a)においては、ラップ幅がR1からR2になる)ので、第2糸捕捉体120の糸捕捉部121による縫い糸の捕捉をより確実なものとすることができる。
なお、本実施形態では、糸切りボタン30の押下に伴う糸切り信号の入力に応じてステッピングモータ180が駆動される構成としているが、例えば、下軸2が所定の回転角度に位置することを検出する検出手段(例えば、主軸位置検出センサ7でもよい)を設け、該検出手段からの検出信号に応じて制御部50がステッピングモータ180を自動的に駆動するように制御することとしてもよい。
8 針板
21 水平釜
110 第1糸捕捉体(第1糸捕捉部材)
111 糸捕捉部
120 第2糸捕捉体(第2糸捕捉部材)
121 糸捕捉部
150 固定刃
200 動作装置
250 案内機構
251 ベース板
252 ガイド溝
252a 第2案内部
252b 第1案内部
T 縫い糸
T1 上糸(縫い糸)
T2 下糸(縫い糸)
Claims (1)
- ミシン上軸に連動して上下動し、下端に縫い針が装着された針棒と、
ミシンベッド上面に設けられ、前記縫い針が貫通する針孔が形成された針板と、
前記針板の下方で回転し、前記縫い針と協働して縫い目を形成する水平釜と、を備え、
前記針板の下方で、前記水平釜と前記針孔との間に渡る上糸又は下糸の少なくとも一方の縫い糸を切断するミシンの糸切り装置において、
一端側に支持部を、他端側に糸捕捉部を有すると共に、待機位置と、前記水平釜と前記針孔との間に渡る前記縫い糸に向けて前進する前進位置との間を移動する第1糸捕捉部材と、
前記第1糸捕捉部材の支持部を支持して、前記第1糸捕捉部材を前記待機位置と前記前進位置に案内するガイド溝と、
前記針板の下方で前記針孔に接近して設けられた固定刃と、
前記縫い糸を捕捉する糸捕捉部を有し、前記針孔と前記第1糸捕捉部材との間に架け渡された縫い糸を捕捉して、前記固定刃と協働して前記縫い糸を切断する第2糸捕捉部材と、
前記第1糸捕捉部材の捕捉動作の後、前記第2糸捕捉部材を駆動させる動作装置と、を備え、
前記ガイド溝は、
前記第1糸捕捉部材を前記前進位置から縫い糸を捕捉する捕捉位置に向けて案内する第1案内部と、
前記縫い糸と前記第2糸捕捉部材の糸捕捉部との重なりを増やすために、前記第1案内部に連続して形成され、前記第1糸捕捉部材を待機位置に向けて案内すると共に、前記第1案内部を基準に、前記第2糸捕捉部材側から離間する方向に形成された第2案内部と、
を有することを特徴とするミシンの糸切り装置。
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