JP5059367B2 - ミシンの糸切断装置 - Google Patents
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かかる従来のミシンの糸切断装置は、ミシンベッド内に配設され、ミシンモータに連動する下軸から動力を得て進退移動を行う糸捕捉体610を備えており、この糸捕捉体610の進退移動における後退移動の際に該糸捕捉体610の先端に設けられた二股部で縫い糸Tを捕捉した後、該糸捕捉体610と固定刃により縫い糸Tを切断するようになっている(図14(a)参照)。
また、近年では糸捕捉部材の駆動源をステッピングモータとすることにより、該糸捕捉部材を低速で駆動するミシンの糸切断装置も開発されている。
つまり、請求項1記載の発明によれば、下糸の引き出し過剰と糸切り不良とを何れも防止しつつ円滑に下糸を捕捉し切断することができる。
また、第一動力伝達手段に設けられた従節は、第二カム部材の原節によって第一カム部材の原節と非係合となる位置に後退移動することが可能となる。これにより、縫製中においては下軸と共に回転される第一カム部材と第一動力伝達手段の従節とが干渉することなく、円滑な縫製動作を実現することができる。
以下、図1〜図13を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について詳しく説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。また、本実施形態においては、各図中に示したXYZ軸を基準にしてミシン1(後述する)の各部の方向を定めるものとする。ミシン1を水平面に設置した状態において、Z軸方向は鉛直方向となる上下方向を示し、Y軸方向はアーム部11の長手方向と一致する左右方向を示し、X軸方向は水平且つY軸方向に直交する前後方向を示す。
ミシン1は、所定の布送り方向に沿う正逆方向について任意の送りピッチで布送りを行いつつ、布送り方向に直交する方向に針振りを行うことを可能とし、一針ごとに被縫製物に対して任意の位置に針落ちを行うことで任意の模様縫いを行う家庭用ミシンである。
図1に示すように、ミシンフレーム10は、当該ミシンフレーム10の上部をなすアーム部11と、ミシンフレーム10の下部をなしアーム部11と平行に延設されたベッド部12と、アーム部11とベッド部12とを連結し、アーム部11及びベッド部12の長手方向と直交する上下方向(Z軸方向)に立設される縦胴部13とから構成されており、その外形が正面視にて略コ字状に成形されている。
アーム部11内には主軸としての上軸(図示略)が回転自在に設けられており、この上軸にはミシンモータ5(図3参照)が連結されている。ベッド部12内には下軸2が回転自在に設けられており、この下軸2は図示しないプーリ及びベルトを介して上軸と連結されている。そして、ミシンモータ5により上軸が回転されると、該上軸と同期して下軸2が回転される。この下軸2は、上軸に対して一対一の回転数(回転速度)で回転される。つまり、上軸の回転角度と下軸の回転角度が互いに対応するようになっている。
図示しない針駆動機構は、アーム部11の先端内部において上軸の先端に固定された回転錘(図示略)と、回転錘の偏心部に回転自在に連結されたクランクロッド(図示略)と、クランクロッドの下端に連結された針棒と、針棒の下端に支持された縫い針21とを備えている。そして、ミシンモータ5の駆動により上軸が回転すると、回転錘及びクランクロッドを介して針棒に上下動が伝達され、縫い針21が往復上下動を行う。
釜機構30は、ベッド部12内の先端側に配置されており、Z軸方向に沿って垂直に設けられた図示しない釜軸を中心に回転する水平釜31を備えている。
水平釜31は、図示しない釜軸ギヤを介して下軸2により回転される外釜31aと、外釜31aの内側に配設された回転しない内釜31bとを備えている。外釜31aは、下軸2及び上軸の二倍の速度(回転数)で回転され、その外周に設けられた剣先で縫い針21が上昇する際にベッド部12内に形成される上糸ループを捕捉する。内釜31bの内部には、下糸Tが巻かれたボビン32が交換且つ回転自在に装備される。
また、水平釜31は、その上部が解放されており、ボビン32から繰り出される下糸Tが当該下糸Tの下糸経路に沿って供給され、上糸と交絡されることで縫い目が形成されるようになっている。
ここで、図2に基づき本実施形態たるミシンの糸切断装置たる糸切り機構60について、詳しく説明する。
図2に示すように、糸切り機構60は、二股部61aを有し、ボビン32(図7(b)参照)から繰り出される下糸Tの当該下糸経路を通って進退移動を行うことにより前記二股部61aで捕捉した下糸Tを固定刃63に案内して切断する糸捕捉部材たる糸捕捉体61と、糸捕捉体61に動力を伝達する第一動力伝達手段としての二股部作動リンク67と、糸捕捉体61を前記進退移動の前進方向に付勢する付勢手段としてのばね69と、ミシンモータ5により回転される下軸2に設けられ、二股部作動リンク67を介して糸捕捉体61に移動力を伝達する第一カム部材としての糸切りカム65と、糸捕捉体61を駆動するためのステッピングモータである糸捕捉体駆動用ステッピングモータ64と、糸捕捉体駆動用ステッピングモータ64から二股部作動リンク67を介して糸捕捉体61に移動力を伝達する第二動力伝達手段50と、を備えている。
支持部材70は、ベッド部12内に固定されると共に捕捉部駆動カム66を回動自在に支持するものである。また、この支持部材70の上部には保持部材70が連結されている。
捕捉部駆動カム66は、そのスラスト方向がY軸方向に沿って配設されると共に糸切りカム65を内部に擁する円筒カムであり、本実施形態における第二カム部材として機能する。すなわち、この捕捉部駆動カム66の内側には、糸切りカム65が当該糸切りカム65に固定された下軸2ごと回動自在に内挿されている。
さらに、捕捉部駆動カム66には、該捕捉部駆動カム66の周面部を内周から外周まで貫通する開口部66aが設けられている。この開口部66aには、該開口部66aのうちギヤ66c側において捕捉部駆動カム66の周方向、すなわち、スラスト方向と直交するように形成された待機部66dと、この待機部66dにおける前記フランジ66b側の端面が当該端面と鈍角をなしてフランジ66b側に近接するように拡開することで、Y軸方向に対して斜めに形成されたカム部66eとが形成されている。
カム部66eは、捕捉部駆動カム66が軸周りに回動されることで、上述したばね69の付勢力により当該カム部66eに当接される係合部67aをY軸方向に移動するようになっている。つまり、カム部66eは、当該カム部66eに沿って係合部67aが案内されることで、上記保持部材71の凸部71aを中心に二股部作動リンク67を水平旋回させ、糸捕捉体61を最後退位置(待機位置P1)から最前進位置P2(図9(b)参照)まで移動することができるようになっている。なお、糸捕捉体61がかかる最前進位置P2に配置された際には、カム部66eのうち最もフランジ66b側の端部に係合部67aが配置され、当該端部において補足部駆動カム66の回動が規制されるようになっている。
つまり、糸捕捉体駆動用ステッピングモータ64を駆動することで、トルク伝達軸72、ギヤ73及びギヤ66cを介して捕捉部駆動カム66が回動され、該捕捉部駆動カム66の原節であるカム部66eに沿って従節たる係合部67aを駆動することができ、その結果、二股部作動リンク67を介して糸捕捉体61を進退移動することができるようになっている。なお、糸捕捉体61の進退移動量に対応する糸捕捉体駆動用ステッピングモータ64の駆動量は、様々な進退移動量に対応するパルス数が予め試験的に求められ後述する制御部100の記憶部であるROM102に記憶されている。
次に、図3に基づきミシン1の制御系について詳しく説明する。
図3は、本発明たるミシン1の電気的構成を示す制御ブロック図である。図3に示すように、制御部100は、後述する各種の制御及び処理を行うための各種プログラムと各種の模様縫いを行うための縫製データその他各種設定データを記憶するROM102と、ROM102内の各種のプログラムを実行するCPU101と、各種のプログラムの実行に際して作業領域となるRAM103と、CPU101,ROM102及びRAM103とバスを介して接続された入力インターフェース104及び出力インターフェース105と、ミシンモータ5への電源供給により駆動を行うスイッチング駆動回路106と、針棒揺動用ステッピングモータ90への電源供給により駆動を行う駆動回路107と、送り歯駆動用ステッピングモータ91への電源供給により駆動を行う駆動回路108と、糸捕捉体駆動用ステッピングモータ92への電源供給により駆動を行う駆動回路109とを備えている。
すなわち、制御部100は、切断制御手段として、糸捕捉体駆動用ステッピングモータ64を駆動することで捕捉部駆動カム66及び二股部作動リンク67を介して糸捕捉体61を移動して下糸Tを捕捉した後、ミシンモータ5を駆動することで糸切りカム65及び二股部作動リンク67を介して糸捕捉体61を移動して下糸Tを切断する処理を実行する。本実施形態では、糸切り開始スイッチである糸切りボタン80の押下が検出されると、CPU101が主軸位置検出センサ18の検出信号を読み込んで下軸2が所定の回転角度(例えば、針棒が下停止する際の下軸角度)に位置する際に、制御部100により上述した動作処理が行われるようになっている。
次に、図6に示すフローチャート及び図7〜図13に基づき上記構成を備えるミシン1の動作説明を行う。
まず、縫製中は、図7(a)に示すように、二股部作動リンク67の係合部67aが捕捉部駆動カム66の待機部66dに配置されている。このため、係合部67aと糸切りカム65とが相互に干渉することはなく、下軸2及び糸切りカム65は自由に回転することができる。また、糸捕捉体61は、図7(b)に示すように、最後退位置すなわち待機位置P1に配置された状態で待機している。
ここで、上述したように、水平釜30(外釜31a)は下軸2の回転数に対して二倍の回転数で回転されるため、下軸2が半回転すなわち180°程回転すると、水平釜30(外釜31a)はほぼ360°すなわち一回転することとなる。つまり、下軸2及び糸切りカム65が半回転する間に外釜31aを通過した上糸が、図11(b)に示すように、上糸用の二股部61aに捕捉される(ステップS11)。また、図11(a)に示すように、糸切りカム65の端面カム部65aが係合部67aに当接する位置まで回転すると、糸切りカム65の端面カム部65aを原節として従節たる係合部67aが、図12(a)に示すように、端面カム部65aに沿って左方向に移動される。これに伴い、糸捕捉体61がさらに後退方向に移動され、図12(b)に示すように、糸切断位置P3を通過してさらに後退移動することで当該糸捕捉体61と固定刃63との協働により上糸及び下糸Tが切断される。
以上のように、本実施形態たるミシン1によれば、下糸Tを捕捉する際の糸捕捉体61の駆動源を糸捕捉体駆動用ステッピングモータ64(ステッピングモータ)とすることで、糸捕捉体61を低速で移動することができる。これにより、ボビン32から下糸Tが過剰に引き出される引き出し過剰を防止することができる。また、下糸Tを切断する際の糸捕捉体61の駆動源をミシンモータ5とすることで、ステッピングモータを駆動源として糸を切断する場合に比べて切断する力を強力にすることができる。従って、使用される糸の種類(例えば、太さや硬さ等)を考慮することなく糸切りを実行することができ、糸切り不良を防止することができる。つまり、本実施形態たるミシンの糸切断装置(糸切り機構60)によれば、下糸Tの引き出し過剰と糸切り不良とを何れも防止しつつ円滑に下糸Tを捕捉し切断することができる。
また、二股部作動リンク67に設けられた係合部(従節)は、捕捉部駆動カム66の原節(端面カム部66a)によって糸切りカム65の原節(端面カム部65a)と非係合となる位置に後退移動することができるため、縫製中においては下軸2と共に回転される糸切りカム65の端面カム部(原節)と二股部作動リンク67の係合部(従節)とが干渉することなく、円滑な縫製動作を実現することができる。
また、捕捉部駆動カム66が糸切りカム65を内側に擁する構成としたことで、糸切り機構60の省スペース化を図りつつ、簡易な構成で下糸Tの捕捉及び切断の円滑化を図ることができる。
なお、本実施形態では、糸切りボタン80の押下に伴う糸切り信号の入力に応じて糸捕捉体駆動用ステッピングモータ64が駆動される構成としているが、例えば、下軸2が所定の回転角度に位置することを検出する検出手段すなわちセンサを設け、該センサからの検出信号に応じて制御部100が糸捕捉体駆動用ステッピングモータ64を駆動するように制御することとしてもよい。
また、制御部100は、予め設定された縫製データに基づき縫製を終了した際に、糸捕捉体駆動用ステッピングモータ64及びミシンモータ5を駆動することで上記糸切り動作を順次実行することとしてもよい。
また、付勢手段は、糸捕捉体61を前進方向に付勢することができればよく、例えば、ゴムであってもよい。
また、回動伝達手段(第二動力伝達手段)は、本実施形態では、ギヤ73とギヤ66cとが直接歯合することでベッド部12内における当該回動伝達手段の省スペース化を図る構成としているが、かかる回動伝達手段は、糸捕捉体駆動用ステッピングモータ64の回動量に応じて捕捉部駆動カム66に回動を伝達することができればよく、例えば、ギヤ73からベルトやラック(ピニオン)を介して捕捉部駆動カム66に回動を伝達する構成としてもよい。このようにすることで、ベッド部12内のスペースに合わせて回動伝達手段を所望に配置することができる。
2 下軸
5 ミシンモータ
10 ミシンフレーム
11 アーム部
12 ベッド部
13 縦胴部
21 縫い針
30 釜機構
31 水平釜
32 ボビン
50 第二動力伝達手段
60 糸切り機構(ミシンの糸切断装置)
61 糸捕捉体(糸捕捉部材)
61a 二股部
62 捕捉部材
63 固定刃
64 糸捕捉体駆動用ステッピングモータ(ステッピングモータ)
65 糸切りカム(第一カム部材)
65a 端面カム部(端面カム,原節)
66 捕捉部駆動カム(第二カム部材、第二動力伝達手段)
66a 開口部
66b フランジ
66c ギヤ(従動ギヤ)
66d 待機部
66e カム部(円筒カム,原節)
67 二股部作動リンク(第一動力伝達手段)
67a 係合部(従節)
69 ばね(付勢手段)
70 支持部材(第二動力伝達手段)
80 糸切りボタン(糸切り開始スイッチ)
100 制御部
101 CPU
102 ROM
103 RAM
T 下糸
P1 最後退位置(待機位置)
P2 最前進位置
Claims (3)
- 二股部を有し、ボビンから繰り出される下糸の当該下糸経路を通って進退移動を行うことにより前記二股部で捕捉した下糸を固定刃に案内して切断する糸捕捉部材と、
前記糸捕捉部材に動力を伝達する第一動力伝達手段と、
ミシンモータにより回転される下軸に設けられ、前記第一動力伝達手段を介して前記糸捕捉部材に移動力を伝達する第一カム部材と、
前記糸捕捉部材を駆動するためのステッピングモータと、
前記ステッピングモータから前記第一動力伝達手段を介して前記糸捕捉部材に移動力を伝達する第二動力伝達手段と、を備え、
前記ステッピングモータを駆動することで前記第二動力伝達手段を介して前記糸捕捉部材を移動して下糸を捕捉した後、前記ミシンモータを駆動することで前記第一カム部材を介して前記糸捕捉部材を移動して下糸を切断する切断制御手段を備えることを特徴とするミシンの糸切断装置。 - 前記第二動力伝達手段は、前記ステッピングモータにより作動する第二カム部材を有し、
前記第一動力伝達手段は、前記第一カム部材と第二カム部材の双方の原節に当接可能な従節を有し、
前記第二カム部材の原節は、前記糸捕捉部材を後退させて前記第一カム部材の原節が前記従節と非係合となる位置に前記従節を移動可能とすることを特徴とする請求項1記載のミシンの糸切断装置。 - 前記第一カム部材は、前記下軸のスラスト方向端面に原節を有する端面カムであり、
前記第二カム部材は、前記第一カム部材を内側に擁する円筒カムであることを特徴とする請求項2記載のミシンの糸切断装置。
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