JP2009191911A - 固定式等速自在継手 - Google Patents

固定式等速自在継手 Download PDF

Info

Publication number
JP2009191911A
JP2009191911A JP2008031791A JP2008031791A JP2009191911A JP 2009191911 A JP2009191911 A JP 2009191911A JP 2008031791 A JP2008031791 A JP 2008031791A JP 2008031791 A JP2008031791 A JP 2008031791A JP 2009191911 A JP2009191911 A JP 2009191911A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
joint member
constant velocity
velocity universal
track
universal joint
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2008031791A
Other languages
English (en)
Inventor
Kisao Yamazaki
起佐雄 山崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NTN Corp
Original Assignee
NTN Corp
NTN Toyo Bearing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NTN Corp, NTN Toyo Bearing Co Ltd filed Critical NTN Corp
Priority to JP2008031791A priority Critical patent/JP2009191911A/ja
Publication of JP2009191911A publication Critical patent/JP2009191911A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Rolling Contact Bearings (AREA)

Abstract

【課題】ボール径およびオフセット等の等速自在継手基本構造を変更することなく、低角時の効率を更に改善することが可能な固定式等速自在継手を提供する。
【解決手段】外側継手部材および内側継手部材の少なくとも一つのトラック溝22において、低作動角時にボール27が接触する範囲の接触角を、他の範囲の接触角よりも大きく設定した。内側継手部位および外側継手部材のトラック溝22,25の溝表面に微小凹形状のくぼみ35を設けた。
【選択図】図1

Description

本発明は、固定式等速自在継手に関し、詳しくは、自動車や各種産業機械の動力伝達系において使用されるもので、駆動側と従動側の二軸間で角度変位のみを許容する固定式等速自在継手に関する。
例えば、自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達する手段として使用される等速自在継手の一種に固定式等速自在継手がある。この固定式等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し得る構造を備えている。一般的に、前述した固定式等速自在継手としては、バーフィールド型(BJ)やアンダーカットフリー型(UJ)が広く知られている。
例えば、バーフィールド型(BJ)の固定式等速自在継手は、図10に示すように内球面1に複数のトラック溝2が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された外側継手部材としての外輪3と、外球面4に外輪3のトラック溝2と対をなす複数のトラック溝5が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された内側継手部材としての内輪6と、外輪3のトラック溝2と内輪6のトラック溝5との間に介在してトルクを伝達する複数のボール7と、外輪3の内球面1と内輪6の外球面4との間に介在してボール7を保持するケージ8とを備えている。ケージ8には、ボール7が収容される窓部9が周方向に沿って複数配設されている。
また、内輪6のトラック溝5の曲率中心O2および外輪3のトラック溝2の曲率中心O1は、継手中心Oに対して等距離k、kだけ軸方向に逆向きにオフセットされている。
一般に、自動車用でその前輪のタイヤを駆動するために使用される固定式等速自在継手(タイヤ側の等速自在継手)は、直進状態での作動角は低く設定されている(0〜10deg程度)。自動車が旋回する場合には、操舵角に応じて大きな作動角をとる。一般の自動車の使用状況から考えれば、大きな操舵を必要とする場面(車庫入れ時や交差点の走行等)の頻度は少なく、大半は直線状態=低作動角で使用されている。よって、低作動角での固定式等速自在継手の効率(摩擦による損失)を改善することで、自動車の燃費向上が期待出来る。
固定式等速自在継手の効率改善に関しては、図13に示すように、小径のボール7を使用するとともに、トラックオフセット量k´(k´<k)を小とすることにより、高効率・コンパクトな固定式等速自在継手を実現する方法がある(特許文献1及び特許文献2)。このように、小径ボール・小トラックオフセットを採用することで、内輪6とボール7・外輪3とボール7の移動距離の差が少なくなり、ボール7と外輪3のトラック2間でのすべり速度が減少し、効率が向上する。
すなわち、図10に示す等速自在継手と、図13に示すように小トラックオフセット化したものとを比較した場合、図10に示す等速自在継手では、ボール7の挟み角がβであり、図13に示す等速自在継手では、ボール7の挟み角が挟み角βよりも小さいβ´となる。ボール7を軸方向に押し出す力は、図11と図14に示すように、FからF´のように減少する。ボール7を軸方向に押す力の減少により、ボール7によってケージ8が内外輪の球面に押し付けられる力、即ち、球面力が減少し、接触部の摩擦損失が少なくなって効率が向上する。
図12は図10に示す等速自在継手が作動角(40deg)をとった場合を示し、図15は図13に示す等速自在継手が作動角(40deg)をとった場合を示し、ラインL1は外輪3とボール7との接触点の軌跡であり、ラインL2は内輪6とボール7との接触点の軌跡である。
ところで、図10はボールが6個の場合であり、図13はボールが8個の場合であり、これらの場合の接触点軌跡の長さ等を比較し、その結果を次の表1に記載した。
Figure 2009191911
この表1から分かるように、8個ボールに比べて6個ボールは、接触点軌跡の長さが長いことが分かる。
特許第3460107号公報 特開平9−317784号公報
小径ボール、小オフセットの構造を採用すれば、等速自在継手の効率を改善することは可能であるが、強度面とのバランスを考慮すると設計に限界がある。ボール径およびオフセットを小さくするほど、効率は向上する。しかしながら、ボール径を小さくしすぎると、それに対応するトラック溝が浅くなり、大トルク入力時に、ボールがトラック溝肩部に乗り上げ易くなり、高角時の強度が低下する。オフセットを極端に小さくすれば、ボールに発生する挟み角が小さくなり、結果、ボールをコントロールする力が不足し、作動時の引っ掛かり等の作動不良が生じる。このように、従来の固定式等速自在継手におけるボール小径化や小オフセット化は、強度、作動性、効率の三者間のバランスをとりながら設計する必要があり、設計性に劣っていた。
本発明は、上記課題に鑑みて、ボール径およびオフセット等の等速自在継手基本構造を変更することなく、設計性に優れ低角時の効率を更に改善することが可能な固定式等速自在継手を提供する。
本発明の第1の固定式等速自在継手は、内球面に複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、外球面に複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールとを備えた固定式等速自在継手であって、前記外側継手部材および前記内側継手部材の少なくとも一つのトラック溝において、低作動角時にボールが接触する範囲の接触角を、他の範囲の接触角よりも大きく設定するとともに、ボール表面に微小凹形状のくぼみを設けたものである。
本発明の第2の固定式等速自在継手は、内球面に複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、外球面に複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールとを備えた固定式等速自在継手であって、前記外側継手部材および前記内側継手部材の少なくとも一つのトラック溝において、低作動角時にボールが接触する範囲の接触角を、他の範囲の接触角よりも大きく設定するとともに、内側継手部材のトラック溝の溝表面に微小凹形状のくぼみを設けたものである。
本発明の第3の固定式等速自在継手は、内球面に複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、外球面に複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールとを備えた固定式等速自在継手であって、前記外側継手部材および前記内側継手部材の少なくとも一つのトラック溝において、低作動角時にボールが接触する範囲の接触角を、他の範囲の接触角よりも大きく設定するとともに、外側継手部材のトラック溝の溝表面に微小凹形状のくぼみを設けたものである。
本発明の第4の固定式等速自在継手は、内球面に複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、外球面に複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールとを備えた固定式等速自在継手であって、前記外側継手部材および前記内側継手部材の少なくとも一つのトラック溝において、低作動角時にボールが接触する範囲の接触角を、他の範囲の接触角よりも大きく設定するとともに、前記内側継手部位および外側継手部材のトラック溝の溝表面に微小凹形状のくぼみを設けたものである。
本発明の第5の固定式等速自在継手は、内球面に複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、外球面に複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールとを備えた固定式等速自在継手であって、前記外側継手部材および前記内側継手部材の少なくとも一つのトラック溝において、低作動角時にボールが接触する範囲の接触角を、他の範囲の接触角よりも大きく設定するとともに、ボール表面と、前記内側継手部位および外側継手部材のトラック溝の溝表面とに微小凹形状のくぼみを設けたものである。
ところで、ボールと内外継手部材のトラック間に生じる発熱は、内側継手部材のトラックと外側継手部材のトラックのトラック長さの違いによって生じるすべり摩擦に起因する。つまり、外側にある外側継手部材のトラック長さが内側継手部材のトラック長さよりも長いため、内外のトラックに挟まれているボールが転動する際に、トラック長さの差の分だけ、長い外側継手部材の側でボールが転がることができずにすべりが生じ、結果としてすべり摩擦による発熱が生じてしまう。ここで、接触角が大きいと、内側継手部材のトラックおよび外側継手部材のトラックに対するボールの接触点が近づき(ボールを小径化するのと同様の効果がある)、内側継手部材とボール・外側継手部材とボールの移動距離の差が少なくなり、ボールと外側継手部材のトラック間でのすべり摩擦量が減少し、効率が向上する。しかしながら、接触角を大きくすると、大負荷時にボールがトラック溝肩部に乗り上げ易くなり、強度が低下してしまう。特に、高作動角時に使用する内側継手部材および外側継手部材の奥側のトラック(マウス底側)では、オフセットの影響で元々トラック溝が浅いため、強度低下が顕著になる。
そこで、本発明では、トラック溝の深さに余裕がある低作動角域のみ、接触角を大きくし、奥側のトラック溝深さに余裕がない部分については従来の接触角のままとした。この構造をとることにより、高作動角時の奥側トラックでの強度を確保しつつ、燃費向上に重要な低作動角時の効率を改善することができる。しかも、このような構造は設計上及び製作上の困難性を有しない。
ボール(鋼球)の表面やトラック溝の溝表面に多数の微小凹部(例えば、大きさが数10μm程度の微小凹部)をランダムに配置したことによって、潤滑流体は平滑面の接触部(相手転動面との接触部)を迂回し、微小凹部で油量を増加し接触面(鋼球表面)内を通過する。すなわち、微小凹部(マイクロオイルポット)が鋼球の表面と相手転動面の保油効果として働く。しかも、鋼球の表面粗さを相手転動面の表面粗さに近づけて粗面化することによって、鋼球の表面と相手転動面との接触面間における油膜層を確実に形成することができる。
前記微小凹形状のくぼみが設けられた表面の面粗さをRa0.03〜0.6μmとし、面粗さのパラメータのSK値を−1.0以下とし、くぼみの面積比率を10〜40%とするのが好ましい。
ここで、面粗さをRaとは、粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を長さで割った値をマイクロメートル(μm)で表わしたものである。パラメータのSK値は、粗さ曲線の歪み度(スキューネス)を指し(ISO 4287:1997)、凹凸分布の非対称性を知る目安の統計量であり、ガウス分布のような対称な分布ではSK値は0に近くなり、凹凸の凸部を削除した場合は負、逆の場合は正の値をとることになる。
このため、ボール表面やトラック溝の溝表面の面粗さをRa0.03〜0.6μmとしたことにより、ボール表面やトラック溝の相手転動面(トラック溝)との接触面間における油膜層を確実に形成することができる。面粗さのパラメータのSK値を−1.0以下とすることにより、前記くぼみが安定して油溜まりとなり、圧縮されても滑り方向、直角方向への油のリークは少なく、油膜形成に優れ、油膜形成状況は良好で、表面損傷を極力抑える効果がある。また、くぼみの面積比率を10〜40%とすることにより、潤滑油を保持するくぼみをボール表面にアトランダムに多数設けることができ、安定した低摩擦化を図ることができる。
ボール表面やトラック溝の溝表面に、多数の微小凹形状のくぼみをランダムに設けるとともに、前記ボール表面の面粗さをRa0.05〜0.15μmとし、面粗さのパラメータのSK値を−4.9〜−1.0とするのがより好ましい。
微小凹形状のくぼみが設けられた表面が、バレル研磨加工にて形成されていたり、ショットブラスト加工にて形成されていたりする。バレル研磨とは、容器(バレル)に被研磨物(ワーク)と研磨材(メディア)を入れ、バレルの運動により発生するワークとメディアとの相対摩擦によりバリ取り、R付け等の表面加工を行う方法である。ショットブラストとは、ブラストとも呼ばれ投射材と呼ばれる粒体を加工物(ワーク)に衝突させ、ワークの加工等を行う手法(方法)である。
このため、バレル研摩である場合、SK値のコントロールは、バレル研摩機の回転速度、加工時間、ワーク投入量、チップの種類と大きさ等を選ぶことにより行える。また、ショットブラストである場合、投射材の種類(粒径、組成、密度、硬度、強度)、投射速度、投射角度、投射量等を選ぶことにより行える。
本発明では、高作動角時の奥側トラックでの強度を確保しつつ、燃費向上に重要な低作動角時の効率を改善することができる。すなわち、ボール径及びオフセット等の等速自在継手の基本構造を変更することなく、低角時の継手効率を改善しつつ、高角時の継手強度を十分確保できる固定式等速自在継手を提供できる。しかも、このような構造は設計上及び製作上の困難性を有しないので、低コストで簡単にこのような固定式等速自在継手を製造することができる。
ボール表面又はトラック表面にランダムに付けられた微小凹形状のくぼみの効果により、潤滑剤が微小凹形状の窪み部に保持される。よって、トラックとボールの接触面において、より良好な油膜層状態が維持できることから、接触の摩擦抵抗の減少により、等速自在継手の効率を向上させることができる。
以下本発明の実施の形態を図1〜図9に基づいて説明する。
本発明に係る固定式等速自在継手は、図1に示すように内球面21に複数のトラック溝22が軸方向に沿って形成された外側継手部材としての外輪23と、図2に示すように外球面24に複数のトラック溝25が軸方向に沿って形成された内側継手部材としての内輪26とを備える。そして、図3と図4に示すように、外輪23のトラック溝22と内輪26のトラック溝25とが対をなし、トルクを伝達するボール27が外輪23のトラック溝22と内輪26のトラック溝25との間に介在する。外輪23の内球面21と内輪26の外球面24との間にケージが介在され、このケージの周方向に沿って所定ピッチで配設された複数の窓部(ポケット)にボール27が保持される。
前記外輪23のトラック溝22は、図1に示すように、その曲率中心O1を継手中心Oから軸方向に外輪23の開口側にずらしている。また、図2に示すように、内輪26のトラック溝25の曲率中心O2を継手中心Oから軸方向に外輪23のトラック溝22の曲率中心O1と反対側の奥側に等距離kだけ離して設けている。
外輪23のトラック溝22や内輪26のトラック溝25は、図3と図4に示すように、ボール27の半径rよりも大きな曲率半径Rで、鍛造加工のみ、又は鍛造加工後の削り加工等にて成形したゴシックアーチ状である。このように、ゴシックアーチ状とすることによって、トラック溝22、25とボール27はアンギュラ接触となっている。
外輪23のトラック溝22は、低作動角時にボールが接触する範囲A(図1参照)の接触角θAOと、他の範囲B(図1参照)の接触角θBOとを相違させている。この場合、範囲Aの接触角θAOを範囲Bの接触角θBOよりも大きく、つまり、θAO>θBOとしている。また、内輪26のトラック溝25は、低作動角時にボールが接触する範囲A1(図2参照)の接触角θAIと、他の範囲B1(図2参照)の接触角θBIとを相違させている。この場合、範囲A1の接触角θAIを範囲B1の接触角θBIよりも大きく、つまり、θAI>θBIとしている。
接触角とは、ボール27の中心Oを基準としてボール27とトラック溝22,25とが接触するボール接触中心Pとトラック溝22,25の溝底中心Qとのなす角度を意味する。また、ボール接触中心Pとは、トラック溝22,25とボール27との接触により形成される楕円形状の接触面(接触楕円)における長軸と短軸とが交わる点を意味する。この長軸は、接触楕円の長手方向における最も長い部分となる軸をいい、短軸は、前述の長軸と直交する短手方向における最も長い部分となる軸をいう。
この場合、θAI=θAO及びθBI=θBOである必要はなく、θAI≠θAO及びθBI≠θBOであってもよい。すなわち、内外輪の接触角の値は異なっていてもよいが、内輪26および外輪23の各トラックの低角時にボール27が移動する範囲A、A1は、必ず他の範囲B、B1よりも大きくしておく。また、低角時とは、この等速自在継手が自動車に使用されて、車庫入れ時や交差点走行時等の大きな操舵をとらない通常の走行時での低角時である。
また、ボール表面には、図5に示すように、大きさ数10μm程度の微小凹部(くぼみ)35を無数にランダムに形成する。この場合、ボール表面の面粗さをRa0.03〜0.6μmとし、好ましくは、Ra0.05〜0.15μmとする。面粗さのパラメータのSK値を−1.0以下とし、好ましくは、SK値を−4.9〜−1.0とするのが好ましい。さらに、くぼみの面積比率を10〜40%とする。
面粗さRaとは、粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を長さで割った値をマイクロメートル(μm)で表わしたものである。パラメータのSK値は、粗さ曲線の歪み度(スキューネス)を指し(ISO 4287:1997)、凹凸分布の非対称性を知る目安の統計量であり、ガウス分布のような対称な分布ではSK値は0に近くなり、凹凸の凸部を削除した場合は負、逆の場合は正の値をとることになる。
微小凹形状のくぼみが設けられた表面は、バレル研磨加工にて形成したり、ショットブラスト加工にて形成したりできる。バレル研磨とは、容器(バレル)に被研磨物(ワーク)と研磨材(メディア)を入れ、バレルの運動により発生するワークとメディアとの相対摩擦によりバリ取り、R付け等の表面加工を行う方法である。ショットブラストとは、ブラストとも呼ばれ投射材と呼ばれる粒体を加工物(ワーク)に衝突させ、ワークの加工等を行う手法(方法)である。
このような表面加工には、WPC加工、ディンプル加工、マイクロディンプル処理、さらには、微粒子ピーニングや精密ショットピーニングとも呼ばれるWPC処理がより好ましい。WPC処理とは、金属成品の表面に、目的に応じた材質の微粒子を圧縮性の気体に混合して高速衝突させるという表面改質処理である。この手法においては、処理対象物の最表面で急熱・急冷が繰り返される。このため、微細で靭性に富む緻密な組織が形成され、高硬度化して表面を強化すると同時に、表面性状を微小ディンプルへ変化させることによって摩擦摩耗特性を向上させることができる。すなわち、WPC処理を施すことによって、疲労強度向上と摺動性向上とを図ることができる。
マイクロディンプルである微小凹部(マイクロオイルスポット)35以外は平坦面で、方向性はなく(等方性)、この部分の表面粗さが、内輪26及び外輪23のトラック溝表面粗さと同等とされる。この微小凹部35は、最適なメディア、砥粒の選定により微細ディンプルを形成することができる。この場合、表面の研削条件を変えることによって、任意の大きさ、任意の数の微小凹部35を製作できる。この微小凹部35の深さは例えば約1μm程度である。すなわち、バレル研摩である場合、SK値のコントロール等は、バレル研摩機の回転速度、加工時間、ワーク投入量、チップの種類と大きさ等を選ぶことにより行える。また、ショットブラストである場合、投射材の種類(粒径、組成、密度、硬度、強度)、投射速度、投射角度、投射量等を選ぶことにより行える。
ところで、図7に示すような潤滑流体流れモデルを形成した場合、潤滑流体の流れは、(A)よりも(B)、(C)の方が抵抗が大きく、接触内部に存在する流体の量が増加することになる。このため、転がり接触面の油膜厚さが増すことになる。図7において、ハッチング部が弾性変形による接触部40a、40b、40cを示し、破線は潤滑流体の流れを示している。(A)および(C)は接触部40a、40cが楕円乃至長円状であり、(B)は接触部40bが円形状である。また、転がり方向と仕上げ面の加工方向が同じ場合を示し、(C)は、転がり方向と仕上げ面の加工方向が直角の場合を示している。
この潤滑流体流れモデルを、前記等速自在継手にあてはめれば、図6に示すようなモデルにて表すことができる。図6において、ハッチング部が弾性接触部36を示し、クロスハッチングが微小凹部35を示し、破線が流体の流れを示す。この場合、転がり方向は図面上の左から右で、潤滑流体は平滑面の接触部を迂回し、微小凹部35で油量を増加しボール表面上を流れる。このため、油膜を形成することができる。
本発明では、トラック溝の深さに余裕がある低作動角域のみ、接触角を大きくし、奥側のトラック溝深さに余裕がない部分については従来の接触角のままとした。この構造をとることにより、高作動角時の奥側トラックでの強度を確保しつつ、燃費向上に重要な低作動角時の効率を改善することができる。しかも、このような構造は設計上及び製作上の困難性を有しないので、低コストで簡単にこのような固定式等速自在継手を製造することができる。
また、鋼球(ボール7)の表面に大きさが数10μm程度の多数の微小凹部35をランダムに配置したことによって、潤滑流体は平滑面の接触部(外輪23及び内輪26のトラック溝表面との接触部)を迂回し、微小凹部35で油量を増加しボール表面上を通過する。すなわち、微小凹部(マイクロオイルポット)35がボール27の表面とトラック溝表面の保油効果として働く。
しかも、ボール表面の面粗さをRa0.03〜0.6μmとしたことにより、ボール表面と相手転動面(トラック溝)との接触面間における油膜層を確実に形成することができる。面粗さのパラメータのSK値を−1.0以下とすることにより、前記くぼみが安定して油溜まりとなり、圧縮されても滑り方向、直角方向への油のリークは少なく、油膜形成に優れ、油膜形成状況は良好で、表面損傷を極力抑える効果がある。また、くぼみの面積比率を10〜40%とすることにより、潤滑油を保持するくぼみをボール表面にアトランダムに多数設けることができ、安定した低摩擦化を図ることができる。
このため、ボール表面にマイクロオイルポット効果を発揮するくぼみ35を設けることなく、外輪23のトラック溝22や内輪26のトラック溝25の溝表面に、前記くぼみ35を設けてもよい。この場合も、多数の微小凹形状のくぼみをランダムに設けるとともに、くぼみの面粗さをRa0.03〜0.6μmとし、好ましくは、Ra0.05〜0.15μmとする。くぼみの面粗さのパラメータのSK値を−1.0以下とし、好ましくは、SK値を−4.9〜−1.0とするのが好ましい。さらに、くぼみの面積比率を10〜40%とする。
このように、外輪23のトラック溝22や内輪26のトラック溝25の溝表面に、くぼみ35を設けても、ボール表面にくぼみ35を設けた場合と同様の作用効果を奏する。
ボール表面又はトラック表面にランダムに付けられた微小凹形状のくぼみの効果により、潤滑剤が微小凹形状の窪み部に保持される。よって、トラックとボールの接触面において、より良好な油膜層状態が維持できることから、接触の摩擦抵抗の減少により、等速自在継手の効率を向上させることができる。
外輪23のトラック溝22や内輪26のトラック溝は、鍛造加工のみ、又は鍛造加工後の削り加工等にて成形することができるので、内輪26や外輪23のトラック溝成形は、なんら特別な成形方法によることなく簡単に行うことができる。
外輪23の範囲Aや範囲Bの接触角は、それぞれにおいて一定である必要がなく、図8に示すように、滑らかに連続的に変化するものであってもよく、内輪26の範囲A1や範囲B1の接触角においても、それぞれにおいて一定である必要がなく、図9に示すように、滑らかに連続的に変化するものであってもよい。これによって、ボールの滑らかな移動が可能となる。
ところで、等速自在継手として、継手作動角の高角化を図るために、トラック溝底がそれぞれ円弧部とストレート部とを備えるアンダーカットフリー型であっても、アンダーカットフリー型の直線部分がテーパー形状を呈している形状のものであってもよい。また、トラック溝底がそれぞれ曲率半径が相違する複数の円弧部を備えたものであっても、外輪のトラック溝の曲率中心および内輪のトラック溝の曲率中心をそれぞれ継手軸線よりも径方向にオフセット(径方向のオフセット)させたものであってもよい。
さらには、外輪23のトラック溝22のオフセット量k(軸方向のオフセット量)と内輪26のトラック溝25のオフセット量k(軸方向のオフセット量)とを相違させてもよい。この場合、外輪23のトラック溝22のオフセット量kを内輪26のトラック溝25のオフセット量kよりも大きくしても、内輪26のトラック溝25のオフセット量kを外輪23のトラック溝22のオフセット量kよりも大きくしてもよい。
また、ボール数も5個以上としたり、トラック溝の周方向配設ピッチが等ピッチであっても不等ピッチであってもよく、トラック溝底がそれぞれ曲率半径が相違する複数の円弧部を備えたものであったり、さらには、外輪23のトラック溝22の軸方向オフセット量kと内輪26トラック溝22の軸方向オフセット量kとを相違させたり、外輪23のトラック溝22の曲率中心および内輪26のトラック溝25の曲率中心をそれぞれ継手軸線よりも径方向にオフセットさせたりすることができる。
このように、本発明の等速自在継手は、種々の使用環境に対応した種々のタイプのものを構成することができる。このため、自動車のプロペラシャフトに、最適な等速自在継手を構成することができる。特に、8個以上のトルク伝達ボールを備えた等速自在継手では、強度、負荷容量、及び耐久性を確保しつつ、より一層のコンパクト化、軽量化を実現することができる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、前記実施形態では、外輪23のトラック溝22においても、内輪26のトラック溝25においても、低角時のボール移動範囲A、A1の接触角θを他の範囲B、B1の接触角θよりも大きく設定したが、このような設定を、外輪23のトラック溝22のみに行っても、内輪26のトラック溝25のみに行ってもよい。このような接触角の設定は、外輪側に行う場合であっても、内輪側に行う場合であっても、少なくとも1つのトラック溝22,25に行えばよい。すなわち、全トラック溝22,25にこのような接触角の設定を行っても、選択した任意の数のトラック溝22,25に行ってもよい。このため、多数の微小凹形状のくぼみを形成する場合、全トラック溝22,25であっても、接触角の大きさが相違する範囲A、A1、B、B1を有するトラック溝22,25のみに設けてもよい。
本発明の第1実施形態を示す固定式等速自在継手の外輪の要部断面図である。 前記固定式等速自在継手の内輪の要部断面図である。 前記固定式等速自在継手の要部拡大断面図である。 前記固定式等速自在継手の要部断面図である。 前記固定式等速自在継手のボールの表面粗さを示す簡略図である。 本発明の鋼球転動構造の流体流れモデル図である。 鋼球の表面粗さと油膜パラメータに関した係数の変化を示すグラフ図である。 本発明の第2実施形態を示す固定式等速自在継手の外輪の要部断面図である。 前記第2実施形態を示す固定式等速自在継手の内輪の要部断面図である。 従来の固定式等速自在継手の断面図である。 前記図10の固定式等速自在継手のボールに作用する押圧力を示す図である。 前記図10の固定式等速自在継手の作動角をとった状態の断面図である。 従来の他の固定式等速自在継手の断面図である。 前記図13の固定式等速自在継手のボールに作用する押圧力を示す図である。 前記図14の固定式等速自在継手の作動角をとった状態の断面図である。
符号の説明
21 内球面
22,25 トラック溝
24 外球面
27 ボール
35 くぼみ(微小凹部)

Claims (9)

  1. 内球面に複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、外球面に複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールとを備えた固定式等速自在継手であって、
    前記外側継手部材および前記内側継手部材の少なくとも一つのトラック溝において、低作動角時にボールが接触する範囲の接触角を、他の範囲の接触角よりも大きく設定するとともに、ボール表面に微小凹形状のくぼみを設けたことを特徴とする固定式等速自在継手。
  2. 内球面に複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、外球面に複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールとを備えた固定式等速自在継手であって、
    前記外側継手部材および前記内側継手部材の少なくとも一つのトラック溝において、低作動角時にボールが接触する範囲の接触角を、他の範囲の接触角よりも大きく設定するとともに、内側継手部材のトラック溝の溝表面に微小凹形状のくぼみを設けたことを特徴とする固定式等速自在継手。
  3. 内球面に複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、外球面に複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールとを備えた固定式等速自在継手であって、
    前記外側継手部材および前記内側継手部材の少なくとも一つのトラック溝において、低作動角時にボールが接触する範囲の接触角を、他の範囲の接触角よりも大きく設定するとともに、外側継手部材のトラック溝の溝表面に微小凹形状のくぼみを設けたことを特徴とする固定式等速自在継手。
  4. 内球面に複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、外球面に複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールとを備えた固定式等速自在継手であって、
    前記外側継手部材および前記内側継手部材の少なくとも一つのトラック溝において、低作動角時にボールが接触する範囲の接触角を、他の範囲の接触角よりも大きく設定するとともに、前記内側継手部位および外側継手部材のトラック溝の溝表面に微小凹形状のくぼみを設けたことを特徴とする固定式等速自在継手。
  5. 内球面に複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、外球面に複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールとを備えた固定式等速自在継手であって、
    前記外側継手部材および前記内側継手部材の少なくとも一つのトラック溝において、低作動角時にボールが接触する範囲の接触角を、他の範囲の接触角よりも大きく設定するとともに、ボール表面と、前記内側継手部位および外側継手部材のトラック溝の溝表面とに微小凹形状のくぼみを設けたことを特徴とする固定式等速自在継手。
  6. 前記微小凹形状のくぼみが設けられた表面の面粗さをRa0.03〜0.6μmとし、面粗さのパラメータのSK値を−1.0以下とし、くぼみの面積比率を10〜40%としたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
  7. 前記微小凹形状のくぼみが設けられた表面の面粗さをRa0.05〜0.15μmとし、面粗さのパラメータのSK値を−4.9〜−1.0としたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
  8. 前記微小凹形状のくぼみが設けられた表面が、バレル研磨加工にて形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
  9. 前記微小凹形状のくぼみが設けられた表面が、ショットブラスト加工にて形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
JP2008031791A 2008-02-13 2008-02-13 固定式等速自在継手 Withdrawn JP2009191911A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008031791A JP2009191911A (ja) 2008-02-13 2008-02-13 固定式等速自在継手

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008031791A JP2009191911A (ja) 2008-02-13 2008-02-13 固定式等速自在継手

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2009191911A true JP2009191911A (ja) 2009-08-27

Family

ID=41074122

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008031791A Withdrawn JP2009191911A (ja) 2008-02-13 2008-02-13 固定式等速自在継手

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2009191911A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013249947A (ja) * 2012-06-04 2013-12-12 Hyundai Motor Co Ltd 車両用の等速ジョイント
WO2019026596A1 (ja) * 2017-08-02 2019-02-07 Thk株式会社 スプライン構造、減速又は増速装置、等速ジョイント

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013249947A (ja) * 2012-06-04 2013-12-12 Hyundai Motor Co Ltd 車両用の等速ジョイント
CN103453032A (zh) * 2012-06-04 2013-12-18 现代自动车株式会社 用于车辆的等速万向节装置
WO2019026596A1 (ja) * 2017-08-02 2019-02-07 Thk株式会社 スプライン構造、減速又は増速装置、等速ジョイント
US11493092B2 (en) 2017-08-02 2022-11-08 Thk Co., Ltd. Speed-reducing or -increasing apparatus
JP7191830B2 (ja) 2017-08-02 2022-12-19 Thk株式会社 スプライン構造、減速又は増速装置、等速ジョイント

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2009145035A1 (ja) 固定型等速自在継手
JP5101430B2 (ja) 固定式等速自在継手
EP1705395A2 (en) Fixed-type constant-velocity universal joint
US20020022528A1 (en) Constant velocity universal joint
JP4223358B2 (ja) 固定式等速自在継手
JP5214336B2 (ja) 固定式等速自在継手
CN105899831B (zh) 改进的扭矩传递接头和接头部件、制造方法以及检查方法
JP2009191911A (ja) 固定式等速自在継手
JP2002013544A (ja) 等速自在継手
JP2009174639A (ja) 固定式等速自在継手
JP4537304B2 (ja) 固定式等速自在継手
JP5615873B2 (ja) 固定式等速自在継手
JP5248207B2 (ja) 固定型等速自在継手
JP2009079684A (ja) 固定式等速自在継手
JP2016156428A (ja) 転動体及び等速ジョイント用転動体
JP6591223B2 (ja) 固定式等速自在継手
WO2023248683A1 (ja) 等速自在継手及びその製造方法
JP2001330051A (ja) 等速自在継手
JP2008196635A (ja) 固定式等速自在継手
JP5340548B2 (ja) 固定式等速自在継手
JP4813286B2 (ja) 等速自在継手用外側継手部材
WO2014208241A1 (ja) 固定式等速自在継手
JP5220480B2 (ja) 固定型等速自在継手
JP2002005186A (ja) 等速自在継手
JP2011208674A (ja) 等速自在継手

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20110510