JP2009191321A - 電解採取した銅粉から塩素の除去方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】塩化浴での電解採取法により得られる銅粉中に含有される塩素を効率的に除去する方法を提供する。
【解決手段】塩化浴で電解採取された、塩素を含有する銅粉を、洗浄液として、まず食塩水を、次いで硫酸溶液を、最後に温水を用いた洗浄に付すことを特徴とする。前記食塩水の塩素濃度は、50〜200g/Lであり、前記硫酸溶液の硫酸濃度は、5〜15質量%あることを特徴とする。さらに、前記銅粉は、その比表面積が0.05m2/g以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】塩化浴で電解採取された、塩素を含有する銅粉を、洗浄液として、まず食塩水を、次いで硫酸溶液を、最後に温水を用いた洗浄に付すことを特徴とする。前記食塩水の塩素濃度は、50〜200g/Lであり、前記硫酸溶液の硫酸濃度は、5〜15質量%あることを特徴とする。さらに、前記銅粉は、その比表面積が0.05m2/g以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、電解採取した銅粉から塩素の除去方法に関し、さらに詳しくは、塩化浴での電解採取法により得られる銅粉中に含有される塩素を効率的に除去する方法に関する。
従来、銅の製錬方法としては、硫化銅鉱を選鉱して銅品位を上昇した銅精鉱を用いて、自熔炉、転炉等にて熔錬して粗銅を生産し、これをアノードとして、硫酸浴にて電解精製して製品カソードを得る乾式製錬法が主流であった。しかしながら、このような乾式製錬法は、大規模に操業する場合には、不純物元素への対応力、コスト競争力等があり、多くで採用されている方式ではあるが、その反面、プロセス全体の建設コストが非常に高価であるということ、硫化鉱の酸化を利用するために発生する亜硫酸ガスによる公害が懸念されること、亜硫酸ガスを硫酸等に固定するための専用の設備が必要であることなどの問題点も抱えている。
上記問題点を改善するための対応策として、近年、硫化銅鉱又はその精鉱を直接湿式処理する湿式製錬法が提案され、検討が行われている。このような湿式製錬法では、建設のための初期投資を下げられること、自動化が比較的容易であること、硫黄の酸化による排ガス処理が不要であることなどのメリットが大きく考慮されるためである。
ところで、従来、硫化銅鉱の湿式製錬法としては、硫化銅鉱を微生物の酸化力を使って浸出させるバクテリアリーチング、硫酸による直接常圧浸出のヒープリーチング等を用いる方法が実施されているが、いずれも硫化銅鉱中の硫黄の酸化を利用して浸出率を向上させるものであり、環境への影響を考慮すれば必ずしも有利とは言えない。これに対し、近年、塩素の強い酸化力を利用し、硫化銅鉱から硫黄を酸化させずに選択的に金属成分を浸出した後、一貫した湿式工程を経て塩化銅水溶液から電解採取法を用いて製品として金属銅を得る塩素浸出による湿式銅製錬法(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
しかしながら、このようにコスト的に大きなメリットを有する湿式銅製錬法も次のようなデメリットを有する。例えば、塩化浴での電解採取工程から得られる電着物は、一般的に用いられる電解条件では粉状粒子である場合が多いため、その後の洗浄工程等を経て産出される最終製品である電解金属銅粉では、塩素分の付着による塩素含有量の上昇が起こりやすい。これは、電解採取の始液として、加水分解しやすい高濃度の塩化銅水溶液を用いており、かつ電着物形状が不定形であるため粉状粒子の隙間に取り込まれた塩化銅水溶液が、通常の水洗浄工程等において加水分解されるためである。前記銅粉の塩素含有量としては、上記乾式製錬法を経て硫酸浴の電解により得られる電気銅の塩素含有量が10ppm以下であるのに対し、例えば、その10〜100倍程度と極めて大きいものである。
ところで、銅中の塩素は、電子材料及び機能性材料のみならず合金用途としても、低減が望まれる元素である。したがって、コスト的に大きなメリットを有する湿式銅製錬法への期待と同時に、この製錬法により得られる銅粉から塩素を効率的に除去する方法が求められている。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、塩化浴での電解採取法により得られる銅粉中に含有される塩素を効率的に除去する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、塩化浴で電解採取された銅粉から塩素を除去する方法について、鋭意研究を重ねた結果、塩化浴で電解採取された銅粉を、特定の洗浄液を用いて特定の順序で行う洗浄に付したところ、銅粉中に含有される塩素を効率的に除去することができること、及び前記銅粉として、特定の比表面積である銅粉を準備するとき、より洗浄効率が向上することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、塩化浴で電解採取された、塩素を含有する銅粉を、洗浄液として、まず食塩水を、次いで硫酸溶液を、最後に温水を用いた洗浄に付すことを特徴とする銅粉から塩素の除去方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記銅粉は、その比表面積が0.05m2/g以下であることを特徴とする銅粉から塩素の除去方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、比表面積が0.01m2/g以下であることを特徴とする請求項2に記載の銅粉から塩素の除去方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、前記食塩水の塩素濃度は、50〜200g/Lであることを特徴とする銅粉から塩素の除去方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、前記硫酸溶液の硫酸濃度は、5〜15質量%あることを特徴とする請求項1に記載の銅粉から塩素の除去方法が提供される。
本発明の電解採取した銅粉から塩素の除去方法は、塩化浴で電解採取された銅粉を、洗浄液として、まず食塩水を、次いで硫酸溶液を、最後に温水を用いた洗浄に付すという非常に簡単な一連の湿式工程により、銅粉中に含有される塩素を効率的に除去することができるので、その工業的価値は極めて大きい。さらに、その比表面積が0.05m2/g以下であるとき、より洗浄効率が上昇し、この中で、比表面積が0.01m2/g以下である銅粉を用いれば、現在市場に流通している硫酸浴の電解により得られる電気銅レベルの塩素含有量にまで低下させることができるので、より有利である。
以下、本発明の電解採取した銅粉から塩素の除去方法を詳細に説明する。
本発明の電解採取した銅粉から塩素の除去方法は、塩化浴で電解採取された、塩素を含有する銅粉を、洗浄液として、まず食塩水を、次いで硫酸溶液を、最後に温水を用いた洗浄に付すことを特徴とする。さらに、この際、必要に応じて、塩化浴で電解採取された銅粉の比表面積が0.05m2/g以下であることを特徴とする
本発明の電解採取した銅粉から塩素の除去方法は、塩化浴で電解採取された、塩素を含有する銅粉を、洗浄液として、まず食塩水を、次いで硫酸溶液を、最後に温水を用いた洗浄に付すことを特徴とする。さらに、この際、必要に応じて、塩化浴で電解採取された銅粉の比表面積が0.05m2/g以下であることを特徴とする
本発明において、銅粉をまず食塩水、次いで硫酸溶液、最後に温水の順序で洗浄すること、さらに、この際、必要に応じて、銅粉として、塩化浴での電解採取において所定の比表面積を有する銅粉を準備することが重要である。これにより、洗浄に際して、上記の順序による洗浄に付すことで、銅粉粒子の表面へ付着した塩素を低減することができ、さらに、所定の比表面積を有するように粗大化させた銅粉を用いることで、洗浄効率を一層向上させることができる。
すなわち、電解採取により得られる銅粉を通常の手段である水洗浄した後に含有される塩素は、下記に説明するように、塩化物と洗浄時に生じる塩素を含む加水分解生成物によるものであるので、これらの化合物の溶液への溶解度差を利用して、効率的に塩素イオンを除去するものである。以下に、電解採取により得られる銅粉を通常の水洗浄に付す際の塩素含有の原因と本発明の方法による作用について、より詳細に説明する。
すなわち、塩化銅水溶液を用いて塩化浴での電解採取により銅粉を得る場合、銅粉粒子自体には塩素が含有されることはないが、電解終了後の電着銅の引上げ、洗浄時に、主に次の式(1)、(2)、(3)で表す反応により、塩化物及び塩素を含む水酸化物が発生し、得られる銅粉に塩素が残留する。
すなわち、塩化銅水溶液を用いて塩化浴での電解採取により銅粉を得る場合、銅粉粒子自体には塩素が含有されることはないが、電解終了後の電着銅の引上げ、洗浄時に、主に次の式(1)、(2)、(3)で表す反応により、塩化物及び塩素を含む水酸化物が発生し、得られる銅粉に塩素が残留する。
[1価Cuの反応]
式:CuCl3 2− ⇒ (CuCl)+2Cl−・・・・(1)
式:CuCl3 2− ⇒ (CuCl)+2Cl−・・・・(1)
[2価Cuの反応]
式:CuCl3 −+2H2O ⇒ Cu(OH)2+2H++3Cl−・・・・(2)
式:CuCl3 −+H2O ⇒ CuHOCl+HCl+Cl−・・・・(3)
式:CuCl3 −+2H2O ⇒ Cu(OH)2+2H++3Cl−・・・・(2)
式:CuCl3 −+H2O ⇒ CuHOCl+HCl+Cl−・・・・(3)
上記式(1)の反応は、水等による液中の塩素イオン濃度の低下にともなう、(CuCl)等で表される塩化第1銅の析出を表すものであり、上記式(2)、(3)の反応は、塩化第2銅、例えば1価銅電解の場合においては電解時又は引き上げ時の酸化により生成された塩化第2銅から、加水分解による水酸化物又はハイドロオキシクロライドの発生を表すものである。
したがって、銅粉の塩素含有量を低下するためには、上記の析出物に対して、次のそれぞれ異なった洗浄液を用いた対策を行うことが効果的である。
なお、本発明の方法は、一般的な槽と攪拌機の組合せで工業的に実施可能であり、特別な機能を持つ洗浄装置を必ずしも必要とするものではない。
したがって、銅粉の塩素含有量を低下するためには、上記の析出物に対して、次のそれぞれ異なった洗浄液を用いた対策を行うことが効果的である。
なお、本発明の方法は、一般的な槽と攪拌機の組合せで工業的に実施可能であり、特別な機能を持つ洗浄装置を必ずしも必要とするものではない。
(1)食塩水を用いる洗浄
上記食塩水を用いる洗浄は、銅粉の表面に析出された塩化第1銅に対して再度クロロ錯塩を形成させて溶解除去するものである。
上記食塩水の濃度としては、1.4〜5.6mol/L(Clイオン濃度では50〜200g/Lに当たる。)が好ましく、2.8〜5.6mol/L(Clイオン濃度では100〜200g/Lに当たる。)がより好ましい。すなわち、食塩水の濃度が1.4mol/L未満では、銅のクロロ錯イオンよりも塩化第1銅の方が安定であり、高い洗浄効果が得られない。一方食塩水の濃度が5.6mol/Lを超えると、食塩自体の溶解度が下がるので、脱塩素という意味においては大きな効果が得られなくなる。
上記食塩水を用いる洗浄は、銅粉の表面に析出された塩化第1銅に対して再度クロロ錯塩を形成させて溶解除去するものである。
上記食塩水の濃度としては、1.4〜5.6mol/L(Clイオン濃度では50〜200g/Lに当たる。)が好ましく、2.8〜5.6mol/L(Clイオン濃度では100〜200g/Lに当たる。)がより好ましい。すなわち、食塩水の濃度が1.4mol/L未満では、銅のクロロ錯イオンよりも塩化第1銅の方が安定であり、高い洗浄効果が得られない。一方食塩水の濃度が5.6mol/Lを超えると、食塩自体の溶解度が下がるので、脱塩素という意味においては大きな効果が得られなくなる。
また、食塩水を用いる洗浄を行う際の固液比としては、特に限定されるものではなく、銅粉の表面を洗浄することができるように選ばれるが、特に工業的な効率を考慮すれば、250〜500g/Lが好ましい。
次に、食塩水を用いる洗浄について、具体例を用いて説明する。
ここで、4.2質量%のClを含む塩化浴で電解採取した銅粉を用いて、食塩水を用いる洗浄を実施した。スラリー濃度は2水準(250g/L、500g/L)、食塩水濃度は3水準(60g/L、100g/L、200g/L)、洗浄温度は常温及び洗浄時間は10分の条件で、スラリーの撹拌洗浄を行った。その後、銅粉をろ過水洗し、得られた銅粉中のCl濃度を求めた。結果を表1に示す。表1より、これらの条件において、十分な洗浄効果が見られることが分かる。ただし、食塩水濃度によって若干の差があり、食塩水中のCl濃度が100〜200g/Lの間が望ましいということができる。
以上より、食塩水を用いる洗浄により、銅粉中の塩素含有量は、例えば、洗浄前の数質量%のオーダーの含有量から100ppm程度までに低減することができる。
ここで、4.2質量%のClを含む塩化浴で電解採取した銅粉を用いて、食塩水を用いる洗浄を実施した。スラリー濃度は2水準(250g/L、500g/L)、食塩水濃度は3水準(60g/L、100g/L、200g/L)、洗浄温度は常温及び洗浄時間は10分の条件で、スラリーの撹拌洗浄を行った。その後、銅粉をろ過水洗し、得られた銅粉中のCl濃度を求めた。結果を表1に示す。表1より、これらの条件において、十分な洗浄効果が見られることが分かる。ただし、食塩水濃度によって若干の差があり、食塩水中のCl濃度が100〜200g/Lの間が望ましいということができる。
以上より、食塩水を用いる洗浄により、銅粉中の塩素含有量は、例えば、洗浄前の数質量%のオーダーの含有量から100ppm程度までに低減することができる。
(2)硫酸溶液による洗浄
上記硫酸溶液による洗浄は、上記食塩水による洗浄で十分に除去ができなかった塩素分を除去するものである。ここで、食塩水による洗浄で十分に除去ができなかった塩素分としては、ハイドロクロライド及び付着水として水酸化物に含有された形態で存在する。しかも、水酸化物は、銅粉粒子の表面に析出している。これを、効率良く除去するためには、水酸化物を化学的に溶解することができる硫酸を用いる。
上記硫酸溶液による洗浄は、上記食塩水による洗浄で十分に除去ができなかった塩素分を除去するものである。ここで、食塩水による洗浄で十分に除去ができなかった塩素分としては、ハイドロクロライド及び付着水として水酸化物に含有された形態で存在する。しかも、水酸化物は、銅粉粒子の表面に析出している。これを、効率良く除去するためには、水酸化物を化学的に溶解することができる硫酸を用いる。
上記硫酸溶液の硫酸濃度としては、特に限定されるものではなく、銅粉の表面部分の水酸化物が溶け出すようなpHを有する洗浄液であれば十分であり、5〜15質量%が好ましく、10質量%程度がより好ましい。すなわち、硫酸溶液の濃度が15質量%を超える高濃度の硫酸を使用すると、その後に硫酸の中和のためのコスト上昇を招くため有効ではない。一方、硫酸溶液の濃度が5質量%未満では、十分な洗浄効果が得られない。なお、硫酸の代わりに、他に硝酸、有機酸等を用いることができるが、価格面又は安定性における不利は否めない。
また、硫酸溶液を用いる洗浄を行う際の固液比としては、特に限定されるものではなく、銅粉の表面を洗浄することができるように選ばれるが、特に工業的な効率を考慮すれば、250〜500g/Lが好ましい。
上記硫酸溶液を用いる洗浄により、銅粉中の塩素含有量は、例えば、食塩水を用いる洗浄後の100ppmから、20ppm程度までに低減することができる。
上記硫酸溶液を用いる洗浄により、銅粉中の塩素含有量は、例えば、食塩水を用いる洗浄後の100ppmから、20ppm程度までに低減することができる。
(3)温水による洗浄
上記温水による洗浄は、上記硫酸溶液を用いる洗浄により付着した洗浄後の硫酸溶液を除去するものである。したがって、洗浄条件としては、特に限定されるものではなく、硫酸分の除去が完了される程度に行われるが、例えば、50〜70℃の温水を用いることにより、効率的に洗浄が行われる。
上記温水による洗浄は、上記硫酸溶液を用いる洗浄により付着した洗浄後の硫酸溶液を除去するものである。したがって、洗浄条件としては、特に限定されるものではなく、硫酸分の除去が完了される程度に行われるが、例えば、50〜70℃の温水を用いることにより、効率的に洗浄が行われる。
以上のように、食塩水に続いて硫酸を作用させるという順序で洗浄を行い、最後に温水洗浄を行うことにより、塩化浴での電解採取により得られた銅粉から効率良く塩素を除去することが達成される。
さらに、上記の一連の洗浄に付す際に、銅粉として、塩化浴での電解採取において比表面積が0.05m2/g以下である銅粉を準備することが、洗浄後の銅粉の塩素含有量を低下するため効果的である。これは、前述のように、通常の水洗浄に付されて得られた銅粉において、銅粉の塩素含有量は、粗粒化の度合を表す比表面積に比例しており、かつ塩素は銅粉の表面上に付着されているので、銅粉の比表面積を低下することにより、洗浄効率を向上させることができるからである。
ところで、洗浄効率を向上させるためには、比表面積が小さいほど粗粒化されているので望ましいが、比表面積は、塩化浴での電解採取条件に依存するものであるので、塩化浴での電解採取条件の制御が必要である。例えば、通常、電解採取での電流密度を低下すること、又は電解液中の銅濃度を上昇することにより、得られる銅粉の比表面積を小さくすることができるので、適切な電解採取条件を選ぶことにより、得られる銅粉の比表面積を容易に調整することができる。例えば、電解採取条件として、電流密度が460A/m2で、電解始液の銅濃度が35g/Lであった場合、得られた銅粉の比表面積は0.04m2/gであるが、一方、電流密度を500A/m2に変えた場合には、得られた銅粉の比表面積は1.12m2/gと大きなものとなった。ちなみに、このときの食塩水を用いる洗浄、硫酸溶液を用いる洗浄及び温水を用いる洗浄を順次実施した洗浄後の銅粉の塩素含有量は、0.107質量%であった。これらのことより、塩化銅水溶液を用いた塩化浴での電解採取において、比表面積が0.05m2/g以下である銅粉を得ることが好ましい。
すなわち、比表面積が小さいほど望ましいが、上記のような銅粉が形成される電解採取においては、通常は0.005m2/gが下限値である。一方、比表面積が0.05m2/gを超えると、銅粉中の塩素含有量が高く、洗浄効率が著しく低下するため、工業的な条件下において実用的でない。また、比表面積が0.01m2/g以下の銅粉を用いれば、洗浄後の銅粉の塩素含有量をさらに十分に低下することができ、現在市場に流通している硫酸浴の電解により得られる電気銅レベルの塩素含有量にまで低下させることができるのでより好ましい。
上記方法に用いる電解採取としては、塩化銅水溶液を用いる塩化浴での電解採取であり、例えば、銅原料から、銅イオンを含む浸出生成液を得る塩素浸出工程、該浸出生成液を還元して1価の銅イオンを含む還元生成液を得る銅イオン還元処理工程、該還元生成液を溶媒抽出に付し、銅を含む逆抽出生成液と抽出残液とを得る溶媒抽出工程、及び該逆抽出生成液を電解採取に付し、電着銅を得る銅電解採取工程を含む湿式製錬法において、用いられるものである。
上記銅原料としては、特に限定されるものではなく、例えば、硫化銅鉱物を含む銅原料、また、銅メッキ被覆鉄系材料、自動車、家電製品等のシュレッダー処理産出物等のリサイクル工程から産出する合金など銅及び鉄を含む銅原料が用いられる。硫化銅鉱物を含む銅原料としては、黄銅鉱(CuFeS2)、輝銅鉱(Cu2S)、斑銅鉱(Cu5FeS4)などの硫化銅鉱物を含む銅鉱石、硫化銅鉱物を含む鉱石から浮遊選鉱法などによって硫化銅鉱物を濃集した銅精鉱および銅精鉱など濃集物から乾式溶錬法で得られる銅マットが含まれ、さらには、これらと同時処理される硫化物状、酸化物状、金属状の各種含銅原料がある場合も含まれる。
上記塩素浸出工程は、硫化銅鉱物を含む銅原料を塩化第2銅、塩化第2鉄などを含む酸性塩化物水溶液中に懸濁させ、塩素を吹きこんで主に硫化銅鉱物を浸出して銅、鉄等を溶出させ、銅イオン、鉄イオンを含む浸出生成液と元素状硫黄を含む残渣とを形成する工程である。
上記銅イオン還元処理工程は、2価銅イオン、2価鉄イオン及び3価鉄イオン等を含有する浸出生成液に還元剤を添加してイオンの還元処理を行い、浸出生成液に含有される2価銅イオンを1価銅イオンに還元し、同時に3価鉄イオンも2価鉄イオンに還元する。
上記溶媒抽出工程は、還元生成液から1価銅イオンのみを選択的に有機溶媒に抽出し、溶媒抽出液から逆抽出により逆抽出生成液として塩化第1銅を含む酸性水溶液を得るとともに鉄イオンを含有する抽出残液を得る工程である。この抽出剤は、トリブチルフォスフェイトなどの中性抽出剤が好ましい。
上記溶媒抽出工程は、還元生成液から1価銅イオンのみを選択的に有機溶媒に抽出し、溶媒抽出液から逆抽出により逆抽出生成液として塩化第1銅を含む酸性水溶液を得るとともに鉄イオンを含有する抽出残液を得る工程である。この抽出剤は、トリブチルフォスフェイトなどの中性抽出剤が好ましい。
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例で用いた金属及び塩素の分析は、ICP発光分析法で行った。
(実施例1、2、3)
塩化浴で電解採取した銅粉を用いて、食塩水を用いる洗浄、硫酸溶液を用いる洗浄及び温水を用いる洗浄を順次実施した。前記銅粉の比表面積は、0.009m2/gであり、塩素含有量は、4.2質量%であった。
まず、食塩水を用いる洗浄においては、スラリー濃度を250g/Lとして、洗浄温度は常温、及び洗浄時間は10分の条件で、スラリーの撹拌洗浄を行った。このときの食塩水濃度は、60g/L(実施例1)、100g/L(実施例2)、及び200g/L(実施例3)の3水準であった。洗浄終了後、ろ過して銅粉を回収した。
次いで、得られた銅粉の硫酸溶液を用いる洗浄においては、濃度10質量%の硫酸溶液を用いて、スラリー濃度を250g/Lとして、洗浄温度は60℃、及び洗浄時間は60分の条件で、スラリーの撹拌洗浄を行った。硫酸溶液による洗浄の終了後、ろ過して銅粉を回収した。その後、得られた銅粉の温水を用いる洗浄においては、60℃の温水中で15分間撹拌洗浄を行った。
その後、銅粉をろ過し、得られた銅粉中のCl濃度を求めた。結果を表2に示す。
塩化浴で電解採取した銅粉を用いて、食塩水を用いる洗浄、硫酸溶液を用いる洗浄及び温水を用いる洗浄を順次実施した。前記銅粉の比表面積は、0.009m2/gであり、塩素含有量は、4.2質量%であった。
まず、食塩水を用いる洗浄においては、スラリー濃度を250g/Lとして、洗浄温度は常温、及び洗浄時間は10分の条件で、スラリーの撹拌洗浄を行った。このときの食塩水濃度は、60g/L(実施例1)、100g/L(実施例2)、及び200g/L(実施例3)の3水準であった。洗浄終了後、ろ過して銅粉を回収した。
次いで、得られた銅粉の硫酸溶液を用いる洗浄においては、濃度10質量%の硫酸溶液を用いて、スラリー濃度を250g/Lとして、洗浄温度は60℃、及び洗浄時間は60分の条件で、スラリーの撹拌洗浄を行った。硫酸溶液による洗浄の終了後、ろ過して銅粉を回収した。その後、得られた銅粉の温水を用いる洗浄においては、60℃の温水中で15分間撹拌洗浄を行った。
その後、銅粉をろ過し、得られた銅粉中のCl濃度を求めた。結果を表2に示す。
表2より、実施例1〜3では、食塩水を用いる洗浄と硫酸を用いる洗浄により、それぞれ銅粉中の塩素が除去され、Cl濃度は0.002〜0.003質量%と十分な低レベルまで低下されることが分かる。
(実施例4)
塩化浴で電解採取した銅粉を用いて、食塩水を用いる洗浄、硫酸溶液を用いる洗浄及び温水を用いる洗浄を順次実施した。前記銅粉の比表面積は、0.04m2/gであり、塩素含有量は、4.2質量%であった。なお、電解採取条件としては、電流密度が460A/m2で、電解始液の銅濃度が35g/Lであった。
まず、食塩水を用いる洗浄においては、スラリー濃度を250g/Lとして、洗浄温度は常温、及び洗浄時間は10分の条件で、スラリーの撹拌洗浄を行った。このときの食塩水濃度は、100g/Lであった。洗浄終了後、ろ過して銅粉を回収した。
次いで、得られた銅粉の硫酸溶液を用いる洗浄においては、濃度10質量%の硫酸溶液を用いて、スラリー濃度を250g/Lとして、洗浄温度は60℃、及び洗浄時間は60分の条件で、スラリーの撹拌洗浄を行った。硫酸溶液による洗浄の終了後、ろ過して銅粉を回収した。その後、得られた銅粉の温水を用いる洗浄においては、60℃の温水中で15分間撹拌洗浄を行った。
その後、銅粉をろ過し、得られた銅粉中のCl濃度を求めた。その結果、得られた銅粉中のCl濃度は0.004質量%と低レベルまで低下した。
塩化浴で電解採取した銅粉を用いて、食塩水を用いる洗浄、硫酸溶液を用いる洗浄及び温水を用いる洗浄を順次実施した。前記銅粉の比表面積は、0.04m2/gであり、塩素含有量は、4.2質量%であった。なお、電解採取条件としては、電流密度が460A/m2で、電解始液の銅濃度が35g/Lであった。
まず、食塩水を用いる洗浄においては、スラリー濃度を250g/Lとして、洗浄温度は常温、及び洗浄時間は10分の条件で、スラリーの撹拌洗浄を行った。このときの食塩水濃度は、100g/Lであった。洗浄終了後、ろ過して銅粉を回収した。
次いで、得られた銅粉の硫酸溶液を用いる洗浄においては、濃度10質量%の硫酸溶液を用いて、スラリー濃度を250g/Lとして、洗浄温度は60℃、及び洗浄時間は60分の条件で、スラリーの撹拌洗浄を行った。硫酸溶液による洗浄の終了後、ろ過して銅粉を回収した。その後、得られた銅粉の温水を用いる洗浄においては、60℃の温水中で15分間撹拌洗浄を行った。
その後、銅粉をろ過し、得られた銅粉中のCl濃度を求めた。その結果、得られた銅粉中のCl濃度は0.004質量%と低レベルまで低下した。
以上より、実施例1〜4では、塩化浴で電解採取された銅粉を、食塩水を用いる洗浄、硫酸溶液を用いる洗浄及び温水を用いる洗浄を順次実施し、本発明に従って行われたので、
塩素含有量が低い銅粉を得ることができる。
塩素含有量が低い銅粉を得ることができる。
以上より明らかなように、本発明の電解採取した銅粉から塩素の除去方法は、特に湿式銅製錬分野で行われる塩化浴での銅電解採取工程から産出される銅粉から、含有される塩素を除去する方法として好適である。特に、電解採取工程の電解条件を選んで、所定の比表面積以下の銅粉を準備することにより、一層の塩素含有量の低下が行えるので、より有利である。
Claims (5)
- 塩化浴で電解採取された、塩素を含有する銅粉を、洗浄液として、まず食塩水を、次いで硫酸溶液を、最後に温水を用いた洗浄に付すことを特徴とする銅粉から塩素の除去方法。
- 前記銅粉は、その比表面積が0.05m2/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の銅粉から塩素の除去方法。
- 比表面積が0.01m2/g以下であることを特徴とする請求項2に記載の銅粉から塩素の除去方法。
- 前記食塩水の塩素濃度は、50〜200g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の銅粉から塩素の除去方法。
- 前記硫酸溶液の硫酸濃度は、5〜15質量%あることを特徴とする請求項1に記載の銅粉から塩素の除去方法。
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