JP2008115429A - 湿式銅製錬法における銀の回収方法 - Google Patents

湿式銅製錬法における銀の回収方法 Download PDF

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敬司 工藤
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賢二 竹田
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住友金属鉱山株式会社
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Abstract

【課題】硫化銅鉱物を含む銅原料の塩素浸出工程を含む湿式銅製錬法において、該硫化銅鉱物を含む銅原料中に含有される銀を沈殿物中に濃縮して効率的に回収する方法を提供する。
【解決手段】硫化銅鉱物を含む銅原料を塩素浸出する工程を含む湿式銅製錬法において、溶媒抽出で得られる抽出残液から有価金属を分離回収する工程の際に、鉄イオンとともに銅イオン及び銀イオンを含む抽出残液に沈殿物(B)を添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を100〜250mVに制御しながらセメンテーション反応に付し銀イオンを優先的に還元して沈殿物(A)として分離回収し、その後、金属鉄粉を添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を−300〜0mVに制御しながらセメンテーション反応に付し銅イオンと残留する銀イオンを還元して沈殿物(B)として分離回収することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、湿式銅製錬法における銀の回収方法に関し、さらに詳しくは、硫化銅鉱物を含む銅原料の塩素浸出工程を含む湿式銅製錬法において、該硫化銅鉱物を含む銅原料中に含有される銀を沈殿物中に濃縮して効率的に回収する方法に関する。
従来、黄銅鉱を始めとする硫化銅鉱物を含む硫化銅鉱の製錬方法としては、硫化銅鉱物を浮遊選鉱法で濃集した銅精鉱を用いる乾式熔錬法が行われていた。乾式溶錬法による銅製錬は、銅硫化物精鉱を溶錬炉、転炉、精製炉等の一連の乾式製錬の後、得られた粗銅を電解精製する方法であり、大量の鉱石を効率よく処理するのに適した方法であるが、その反面、小型設備では反応効率が悪いので、大型設備のために膨大な設備投資が必要であること、また生成する大量のSOガスの回収が不可欠であること等の課題がある。
このような状況下、近年、湿式法による製錬方法が研究されている。従来、湿式法による銅製錬としては、酸化銅鉱物を含有する銅鉱石を用いて、積み上げた鉱石に硫酸を散布して銅を浸出し、該浸出生成液の銅濃度を上げるために溶媒抽出法で処理した後、電解採取する方法が工業的に広く用いられている。しかし、銅鉱石の大部分を占める硫化鉱に前記方法を適用した場合、含有鉱物として最も賦存量の多い黄銅鉱では、硫酸による浸出速度が遅く、かつ銅浸出率が低い結果となるという問題があった。さらに、銀等の貴金属は、浸出されず回収されないという問題があった。
近年、前記硫化銅鉱の湿式製錬法において、塩素ガス又は塩化物などのハロゲン化物溶液にて銅を浸出して、得られた浸出生成液から銅を一価銅電解で回収するとともに、随伴する有価金属も回収する方法が提案されている。湿式製錬法では、一般に、浸出工程において、銅を高抽出率で得るため酸化還元電位を高い状態に保持して行われる。この条件下では、硫化銅鉱に含まれる貴金属も銅とともに溶出される。このため、銅電解採取工程において、貴金属は、銅と同時に電着してしまうので、貴金属が個別に回収されないこととともに、銅の純度を低下させるという問題が起る。この対策として、浸出生成液に溶出した貴金属を、活性炭に吸着させたり、アマルガムの形として回収する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、これらの提案では貴金属を分離回収するために、活性炭又は使用する薬剤のコスト、さらには環境への影響に対する課題があった。
一方、この解決策として、黄銅鉱を主鉱物とする硫化銅鉱の塩素浸出に際して、酸化還元電位を制御して貴金属の溶出を抑制して浸出残渣中に濃縮し、回収する方法(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。この方法は、硫化銅鉱物を含む銅原料を塩素浸出する工程、浸出生成液を還元する工程、還元生成液を溶媒抽出に付し、銅を濃縮した逆抽出生成液と鉄を濃縮した抽出残液とを得る工程、該逆抽出生成液中の銅イオンを電解採取する工程、該抽出残液から有価金属を分離回収する工程、及び処理後の抽出残液から鉄を回収する工程を含む一連のプロセスにより、銅とともに鉄及び貴金属等を効率よく分離回収する方法であるが、貴金属の大部分は浸出残渣中に濃縮されているので、貴金属の分離回収において処理が容易で、かつ設備コストの削減が得られる。しかしながら、この方法を用いた際にも、銅の高浸出率を得るための高酸化還元電位に調整する条件下では、貴金属の一部、特に銀の一部が浸出生成液中に溶出されていた。このため、上記抽出残液から有価金属を分離回収する工程においては、抽出残液の浄液方法として、硫化処理、セメンテーション処理、中和処理等が提案されている。
ところで、セメンテーション反応によりハロゲン化物溶液中の銀を回収する方法としては、下記の(イ)又は(ロ)の方法が行なわれるが、それぞれに問題があった。
(イ)還元剤として金属銅を用いる(例えば、特許文献3参照。)。ここでは、銀と同時に未反応の銅も沈澱物中に含有され、結果的に銀の濃縮にならない場合が多い。すなわち、銀とともに銅が多量に存在する場合には、還元雰囲気の形成の効率が悪く酸化還元電位の低下が限られるので、沈澱物中の銀品位が低いこととともに沈澱物中への銀収率が低いという問題があった。さらに、溶けた銅が次の銅回収のセメンテーション反応での負荷になる。また、金属銅として、反応性が良い微細な銅粉を用いると、コスト上の問題が生じる。
(ロ)還元剤として金属鉄粉を用いる。ここでは、銀は還元され沈殿されるが、銀とともに銅が多量に存在する場合には、同時にそれ以上の銅も金属として沈殿され、沈殿物中の銀品位が低くなるという問題があった。そのため、酸化還元電位を制御して、銀を優先的に沈殿させる場合には、鉄粉で還元雰囲気を調整することが難しく、酸化還元電位が全く低下しないか、低下しすぎると大量の銅と一緒に沈殿が起きてしまい、銀の濃縮が困難であるとともに、コスト上の問題が生じる。
このように、微量の銀と多量の銅を含む水溶液から効率よく銀品位の高い沈澱物を得て、それを回収することは困難であった。
さらに、上記抽出残液からセメンテーション反応により銅を回収する際には、銅よりも卑な金属が用いられるが、この使用量が多くコスト上の問題が生じるとともに、多量の沈殿物が発生するので、その処理が問題であった。
以上の状況から、硫化銅鉱物を含む銅原料の塩素浸出工程を含む一連のプロセスにおいて、硫化銅鉱物を含む銅原料に含まれる銀を、濃縮して効率的に回収する方法が求められていた。
特許第2857930号公報(第1〜4頁) 特開2005−60813号公報(第1〜3頁) 特許第2777955号公報(第1頁、第2頁)
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、硫化銅鉱物を含む銅原料の塩素浸出工程を含む湿式銅製錬法において、該硫化銅鉱物を含む銅原料中に含有される銀を沈殿物中に濃縮して効率的に回収する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、硫化銅鉱物を含む銅原料を塩素浸出する工程、浸出生成液を還元する工程、還元生成液を溶媒抽出に付し、銅を濃縮した逆抽出生成液と鉄を濃縮した抽出残液とを得る工程、該逆抽出生成液中の銅イオンを電解採取する工程、該抽出残液から有価金属を分離回収する工程、及び処理後の抽出残液から鉄を回収する工程を含む湿式銅製錬法において、前記抽出残液から有価金属を分離回収する工程について、鋭意研究を重ねた結果、鉄イオンとともに銅イオン及び銀イオンを含む抽出残液に銅のセメンテーション反応により回収された沈殿物を添加し、特定の酸化還元電位に制御しながらセメンテーション反応に付したところ、銀を濃縮した沈殿物として効率的に分離回収することができることを見出し、本発明を完成した。なお、高酸化還元電位でのセメンテーション反応により残留した銀イオンは、その後特定の低酸化還元電位に制御しながら銅を回収するセメンテーション反応に付すことにより、銅イオンとともに還元されて沈殿物として分離回収される。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、硫化銅鉱物を含む銅原料を塩素浸出する工程、浸出生成液を還元する工程、還元生成液を溶媒抽出に付し、銅を濃縮した逆抽出生成液と鉄を濃縮した抽出残液とを得る工程、該逆抽出生成液中の銅イオンを電解採取する工程、該抽出残液から有価金属を分離回収する工程、及び処理後の抽出残液から鉄を回収する工程を含む湿式銅製錬法において、
前記抽出残液から有価金属を分離回収する工程の際に、鉄イオンとともに銅イオン及び銀イオンを含む抽出残液に沈殿物(B)を添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を100〜250mVに制御しながらセメンテーション反応に付し銀イオンを優先的に還元して沈殿物(A)として分離回収し、その後、金属鉄粉を添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を−300〜0mVに制御しながらセメンテーション反応に付し銅イオンと残留する銀イオンを還元して沈殿物(B)として分離回収することを特徴とする銀の回収方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記金属鉄粉の代わりに、銅鉄合金粉を添加することを特徴とする銀の回収方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、さらに、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を200〜600mVに保ちながら、上記浸出生成液又は上記還元生成液に沈殿物(B)を接触させることにより、沈殿物(B)中の銀を再溶解することを特徴とする銀の回収方法が提供される。
本発明の湿式銅製錬法における銀の回収方法は、第1又は2の発明において、上記湿式銅製錬法において、抽出残液から有価金属を分離回収する工程の際に、銀のセメンテーション反応に用いる還元剤として、銀と銅を含み、かつ未反応の鉄が含有される沈殿物(B)を使用すれば、沈殿銅と鉄の混合粉により反応が効果的に制御されるので、上記抽出残液中の銀を銅に対して優先的に沈殿させることができる。これによって、硫化銅鉱物を含む銅原料に含まれる銀を沈殿物中に濃縮して効率的に回収することができる。すなわち、沈殿物(B)が活用され、沈殿物(B)中に残留する鉄を有効に利用することができるので、還元剤コストが低減される。また、これにより抽出残液中の銀とともに銅も低下されるので、この液から回収される電着鉄等の品質を改善することができる。以上により、その工業的価値は極めて大きい。
さらに、第3の発明では、沈殿物(B)の余剰が生じた場合には、その一部を上記湿式銅製錬法で得られる浸出生成液又は還元生成液に接触させ繰り返すことにより沈殿物(B)中の銀を再溶解すれば、さらに銀を回収しかつ濃縮することができるので、より有利である。
以下、本発明の湿式銅製錬法における銀の回収方法を詳細に説明する。
本発明の湿式銅製錬法における銀の回収方法は、硫化銅鉱物を含む銅原料を塩素浸出する工程、浸出生成液を還元する工程、還元生成液を溶媒抽出に付し、銅を濃縮した逆抽出生成液と鉄を濃縮した抽出残液とを得る工程、該逆抽出生成液中の銅イオンを電解採取する工程、該抽出残液から有価金属を分離回収する工程、及び処理後の抽出残液から鉄を回収する工程を含む湿式銅製錬法において、
前記抽出残液から有価金属を分離回収する工程の際に、鉄イオンとともに銅イオン及び銀イオンを含む抽出残液に沈殿物(B)を添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を100〜250mVに制御しながらセメンテーション反応に付し銀イオンを優先的に還元して沈殿物(A)として分離回収し、その後、金属鉄粉を添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を−300〜0mVに制御しながらセメンテーション反応に付し銅イオンと残留する銀イオンを還元して沈殿物(B)として分離回収することを特徴とする。
上記湿式銅製錬法としては、硫化銅鉱物を含む銅原料を塩素浸出する工程、浸出生成液を還元する工程、還元生成液を溶媒抽出に付し、銅を濃縮した逆抽出生成液と鉄を濃縮した抽出残液とを得る工程、該逆抽出生成液中の銅イオンを電解採取する工程、該抽出残液から有価金属を分離回収する工程、及び処理後の抽出残液から鉄を回収する工程を含むものである。
例えば、上記湿式銅製錬法は、以下のように行われる。
硫化銅鉱物を含む銅原料は、最初に塩素浸出工程に付され、銅、鉄等を含有する浸出生成液と硫黄含有残渣とに分離される。浸出生成液は、還元工程に付され、浸出生成液中の銅イオンは還元され、第1銅イオンを含む還元生成液が得られる。ここで、還元剤として硫化銅鉱物を含む銅原料を用いる場合は、この残渣は塩素浸出工程へ循環される。還元生成液は、溶媒抽出工程に付され、溶媒抽出及び逆抽出により第1銅イオンを含有する逆抽出生成液と抽出残液とに分離される。逆抽出生成液は、銅電解採取工程に付され、銅は電着銅として回収される。また、製錬処理の原料の種類にもよるが、通常硫化銅鉱物を含む銅鉱石は、銅とほぼ同量に近い鉄を含有しており、前記溶媒抽出における抽出残液には、多量の鉄イオンが含まれる。したがって、抽出残液は、有価金属を分離回収する工程に付され、鉄イオン含有精製液と鉄以外の有価金属とに分離される。その後、鉄イオン含有精製液は、鉄を回収する工程に付され、例えば電着鉄として回収される。
ここで、硫化銅鉱物を含む銅原料としては、黄銅鉱(CuFeS)、輝銅鉱(CuS)、斑銅鉱(CuFeS)などの硫化銅鉱物を含む銅鉱石、前記銅鉱石から浮遊選鉱法等によって硫化銅鉱物を濃集した銅精鉱、硫化銅鉱物を含み、酸化銅鉱物、ヒ化銅鉱物、アンチモン化銅鉱物など各種含銅鉱物を含む鉱石及びその銅精鉱、並びに銅精鉱などから乾式溶錬法で得られる銅マットおよび高品位銅マットが含まれ、さらには、これらと同時処理される硫化物状、酸化物状、金属状の各種含銅原料がある場合も含まれる。
上記塩素浸出工程としては、上記硫化銅鉱物を含む銅原料を塩化銅、塩化鉄などを含む酸性塩化物水溶液中に懸濁させ、主に硫化銅鉱物を塩素で浸出して銅、鉄等を溶出させて、銅イオンと鉄イオンを含む浸出生成液と元素状硫黄を含む残渣とを形成する工程である。また、上記銅原料を次工程の還元工程で還元剤として用いる場合には、該工程で得られる残渣を塩素浸出工程の原料として用いることが好ましい。例えば、上記銅原料の全量を一旦還元工程で処理した後に、塩素浸出工程で用いることができる。
上記工程における塩素浸出液の酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)は、特に限定されるものではなく、好ましくは500〜600mV、より好ましくは500〜520mVで行われる。すなわち、ORPが500mV未満では、浸出の酸化力が弱いため、銅の浸出率が低い。一方、600mVを超えて浸出すると、硫黄の酸化率が著しく増加する。
上記還元工程としては、上記塩素浸出工程で得られる銅イオン、鉄イオン等を含有する浸出生成液に還元剤を添加して銅イオンの還元処理を行い、浸出生成液に含有される第2銅イオンを第1銅イオンに還元し、同時に第2鉄イオンも第1鉄イオンに還元する工程である。これによって得られる第1銅イオンが高比率で存在する還元生成液から、次の溶媒抽出する工程において、銅イオンのみを選択的に有機溶媒に抽出させることができる。
上記工程において、還元生成液の酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)は、特に限定されるものではなく、銅と鉄を含む塩化物水溶液中の第2銅イオンを第1銅イオンへ還元することができる電位に調整されるが、250〜400mVで行われる。すなわち、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)が400mVを超えると、銅イオンの一部は2価となり、さらにこの第2銅イオンが酸化剤として働いて鉄イオンも一部3価の状態となるので、第1銅イオンが高比率で存在する還元生成液が得られない。一方、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)が250mV未満であると、場合によって銅イオンが金属状態まで還元されて沈殿することがある。
上記溶媒抽出工程としては、第1銅イオンを含む還元生成液と有機抽出剤を含む有機溶媒とを接触混合させて第1銅イオンのみを選択的に有機溶媒に抽出する工程と、第1銅イオンを抽出した有機溶媒と水溶液とを接触混合させて、第1銅イオンを水溶液に逆抽出する工程とによって、銅イオン含有する逆抽出生成液と鉄イオン及び銀等の有価金属イオンを含有する抽出残液を得る工程である。
本発明において、上記抽出残液から有価金属を分離回収する工程の際に、鉄イオンとともに銅イオン及び銀イオンを含む抽出残液に沈殿物(B)を添加し、所定の高酸化還元電位に制御しながらセメンテーション反応に付し銀イオンを優先的に還元して沈殿物(A)として分離回収し、その後、金属鉄粉を添加し、所定の低酸化還元電位に制御しながらセメンテーション反応に付し銅イオンと残留する銀イオンを還元して沈殿物(B)として分離回収することが重要である。これによって、上記抽出残液中の銀を銅に対して優先的に沈殿させることができ、硫化銅鉱物を含む銅原料に含まれる銀を沈殿物中に濃縮して効率的に回収することができる。すなわち、沈殿物(B)が活用され、沈殿物(B)中に残留する鉄を有効に利用することができるので、還元剤コストが低減される。また、これにより抽出残液中の銀とともに銅も低下されるので、この液から回収される電着鉄等の品質を改善することができる。
すなわち、本発明では、まず、銀イオン又は銅イオンよりも卑な金属である鉄を含む沈殿物(B)を還元剤として用いたセメンテーション反応により、その添加量を調節して上記抽出残液を所定の高酸化還元電位に制御して、銀イオンのみを優先的に還元し、かつ主に銅を主体とするその他の金属イオンの還元を抑えることにより、銀品位の高い沈殿物(A)を得ることができる。ここで、沈殿物(B)は、沈殿銅と残留した鉄粉の混合粉であるので、反応が効果的に制御される。すなわち、反応に際して、比較的粗い銅粉に比べて沈殿銅の反応性が良好であり、一方銅イオンよりも卑な鉄が残留されているので、反応性に優れており、短時間で所望のレベルまで酸化還元電位が低下して銀イオンを還元することができる。
本発明の方法に用いる高酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)としては、100〜250mVであり、好ましくは180〜220mVである。すなわち、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)が100mV未満では、液中に含まれる銅イオンが同時に還元され金属銅粉として沈殿するため、沈殿物の銀品位が下がり効率が悪くなる。一方、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)が250mVを超えると、銀はイオンの状態で安定に存在するため、銀イオンのセメンテーション反応そのものが十分に起こらない。
次いで、沈殿物(A)を分離した後の抽出残液に、金属鉄粉を添加して、所定の低酸化還元電位に制御して、前記高酸化還元電位でのセメンテーション反応により残留した銀イオンと、主に銅を主体とするその他の金属イオンを還元し沈殿物(B)を得る。
本発明の方法に用いる低酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)としては、−300〜0mVである。すなわち、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)が180mV未満で銅イオンの還元を行うことができるが、0mV以下にすることで、銅イオンを完全に沈殿させることができる。一方、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)が−300mV未満では、それ以上の効果が得られず、又経済的でない。ここで、得られる沈殿物(B)の組成としては、上記抽出残液中に含有される銅、その他不純物元素等により異なるが、例えば、銅品位が30〜60重量%で残部がほぼ鉄である。
本発明の方法に用いる金属鉄粉としては、特に限定されるものではなく、電解鉄粉、還元粉、粉砕粉等の市販品、及びスクラップ、上記湿式銅製錬法の抽出残液から鉄を回収する工程での回収物等が用いられるが、反応効率上、抽出残液から鉄を回収する際に問題となる不純物元素を含有しないものが好ましい。また、金属鉄粉の代わりに、銅製品のリサイクル等から得られる銅鉄合金粉を用いることができる。銅鉄合金粉では、銅鉄合金粉中の鉄を有効に利用し、しかも銅を銀の還元剤として活用できる。
本発明の方法において、沈殿物(B)の使用に余剰が生じた場合には、必要に応じて、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を200〜600mVに保ちながら、上記浸出生成液又は上記還元生成液に沈殿物(B)を接触させることにより、沈殿物(B)中の銀を再溶解することができる。これによって、銀含有量が低い沈殿物(B)が上記湿式銅製錬法で得られる浸出生成液又は還元生成液に繰り返され、沈殿物(B)中の銀が再溶解されるので、この銀を回収しかつ濃縮することができる。すなわち、銀の再溶解により、結果的に抽出残液中に銀を濃縮させて、沈澱物(A)の銀品位を上昇させることができる。
ここで、上記浸出生成液又は上記還元生成液に沈殿物(B)を接触させるときの酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)としては、特に限定されるものではなく、200〜600mVに保ちながら行うことが好ましい。これによって、沈殿物(B)中に含まれる銀を溶解させることができる。すなわち、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)が200mV未満では、銀の溶解が不十分である。一方、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)の上限としては、硫化銅鉱物を含む銅原料を塩素浸出する工程で好ましく用いられる酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)以下が望ましく、例えば600mVである。また、より好ましくは還元工程後の液に追加還元剤として還元生成液に沈殿物(B)を接触混合させることで、より効率的な還元が可能となる。この場合の酸化還元電位は200〜400mVとなる。
上記浸出生成液又は上記還元生成液に沈殿物(B)を接触させるやり方としては、特に限定されるものではなく、上記湿式銅製錬法の硫化銅鉱物を含む銅原料を塩素浸出する工程、又は浸出生成液を還元する工程において、沈殿物(B)を投入するか、或いは、それぞれの工程から得られる浸出生成液又は還元生成液中に投入して行なうことができる。ここで、硫化銅鉱物を含む銅原料を塩素浸出する工程の浸出生成液の酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)は、通常500〜600mVであり、沈殿物(B)中の銀を溶解することができる。また、浸出生成液を還元する工程の還元生成液の酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)は、通常250〜400mVであり、沈殿物(B)中の銀を溶解することができる。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた金属の分析はICP発光分析法で行った。
(実施例1)
まず、浸出工程で、銀を含有する硫化銅鉱を原料として、塩素ガス、塩化銅、及び塩化鉄を用いて浸出し浸出生成液を得た。次に還元工程で、得られた浸出生成液に硫化銅鉱を還元剤として添加して、液中の銅イオン及び鉄イオンを還元した後、得られた還元生成液を溶媒抽出工程に通すことにより、銅のほとんどが分離された塩化鉄を主成分とする抽出残液を得た。得られた抽出残液の化学組成は、Cu:10.5g/L、Fe:81.4g/L、及びAg:21mg/Lであった。
上記抽出残液100mLを用いて、沈殿物(B)に当たる銅回収のセメンテーション反応からの沈殿物(Cu:45.7重量%、Fe:30.2重量%)1.23gを添加して酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)が安定するまで、室温で攪拌してセメンテーション反応(1)を行なった。このとき、反応は60分で終了した。また、最終的に得られた液の酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)は216mVとなった。反応後、スラリーを濾紙を用いて真空濾過し、得られた濾液を分析した。結果を表1に示す。なお、抽出残液と濾液から求めた回収沈殿物(A)中のAg品位は約1.4重量%であった。したがって、抽出残液の銀濃度が21mg/Lと、銅濃度10.5g/Lに比べて非常に微量であったことを考慮すると十分な濃縮が行われたと云える。なお、抽出残液中からの銀収率はほぼ70%であった。
次いで、上記濾液を用いて、工業用鉄粉2.0gを添加しながら酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を−250mV(−300〜0)mVとなるように制御して、室温で1時間攪拌してセメンテーション反応(2)を行なった。反応後、スラリーを濾紙を用いて真空濾過し、得られた濾液を分析した。結果を表1に示す。
表1より、セメンテーション反応(1)の濾液から、セメンテーション反応(2)により、銅イオンと銀イオンが十分に回収されることが分かる。したがって、得られた沈殿物(B)の全量をセメンテーション反応(1)に用いれば、銀の回収率は実質的にほぼ100%となる。
(実施例2)
上記沈殿物(B)を実施例1と同様の条件で調整した。これを用いて、上記還元工程から得られた還元生成液に上記沈殿物(B)の全量を添加して、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)280mVで1時間撹拌して溶解した。その結果、溶解反応により、上記沈殿物(B)のほとんどが溶解され、含まれていた銀も液中に溶解された。したがって、上記還元工程から得られる還元生成液で沈殿物(B)を処理することにより、沈殿物(B)から銀が溶解され、還元生成液中に回収される。
(比較例1、2、3)
セメンテーション反応(1)の還元剤として、沈殿物(B)の代わりに、塩化浴から回収した電解銅粉(比較例1)、試薬銅粉(比較例2)、又は試薬鉄粉(比較例3)を添加したこと以外は、実施例1と同様に行なった。このとき、反応はそれぞれ95、70、又は60分で終了した。また、最終的に得られた液の酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)はそれぞれ272、201、又は−311mVとなった。反応後、スラリーを濾紙を用いて真空濾過し、得られた濾液を分析し、沈殿物の銀品位を求めた。結果を表2に示す。
表2より、比較例1では、電解銅粉の反応速度が遅く酸化還元電位の低下及び銀の濃縮が不十分であり、抽出残液中からの銀収率はほぼ70%であった。また、これ以上液中の銀の低下、すなわち銀収率の上昇は望めない。これは、電解銅粉の粒度が粗いためと考えられる。また、比較例2では、試薬銅粉の反応により酸化還元電位が低下しているが、銀の濃縮が不十分であり、抽出残液中からの銀収率はほぼ70%であった。また、これ以上液中の銀の低下、すなわち銀収率の上昇は望めない。また、比較例3では、鉄粉の使用により銀は完全に沈殿するものの、銅も全て沈殿するので、沈殿物の銀品位が低下し、銀の濃縮が不十分である。
以上より明らかなように、本発明の湿式銅製錬法における銀の回収方法は、硫化銅鉱の湿式銅製錬法で利用される銀の回収方法として好適である。特に微量の銀を含む溶液から効率よく銀品位の高い沈澱物を生成し、それを回収する方法として有用である。

Claims (3)

  1. 硫化銅鉱物を含む銅原料を塩素浸出する工程、浸出生成液を還元する工程、還元生成液を溶媒抽出に付し、銅を濃縮した逆抽出生成液と鉄を濃縮した抽出残液とを得る工程、該逆抽出生成液中の銅イオンを電解採取する工程、該抽出残液から有価金属を分離回収する工程、及び処理後の抽出残液から鉄を回収する工程を含む湿式銅製錬法において、
    前記抽出残液から有価金属を分離回収する工程の際に、鉄イオンとともに銅イオン及び銀イオンを含む抽出残液に沈殿物(B)を添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を100〜250mVに制御しながらセメンテーション反応に付し銀イオンを優先的に還元して沈殿物(A)として分離回収し、その後、金属鉄粉を添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を−300〜0mVに制御しながらセメンテーション反応に付し銅イオンと残留する銀イオンを還元して沈殿物(B)として分離回収することを特徴とする銀の回収方法。
  2. 前記金属鉄粉の代わりに、銅鉄合金粉を添加することを特徴とする請求項1に記載の銀の回収方法。
  3. さらに、酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を200〜600mVに保ちながら、上記浸出生成液又は上記還元生成液に沈殿物(B)を接触させることにより、沈殿物(B)中の銀を再溶解することを特徴とする請求項1に記載の銀の回収方法。
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