JP4352823B2 - 硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法 - Google Patents

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Description

本発明は、硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法に関し、さらに詳しくは、黄銅鉱を始めとする硫化銅鉱物を含む銅原料の湿式精錬法において、硫黄の酸化を抑制しながら高浸出率で銅を浸出して一価銅電解で回収し、また随伴する有価金属も回収して、浸出残渣などの廃棄物を可能な限り減少することができる精錬方法に関する。
現在、世界の銅の大部分が、銅精鉱を原料とした乾式溶錬法によって製造されている。前記銅精鉱は、黄銅鉱(CuFeS)、輝銅鉱(CuS)、斑銅鉱(CuFeS)など硫化銅鉱物を含有する鉱石を、浮遊選鉱法などの物理分離手段によって硫化鉱物を濃集したものである。前記銅精鉱の組成は、主に鉱石の産地に依存するが、上記した硫化銅鉱物と、黄鉄鉱、磁硫鉄鉱等の硫化鉄鉱物のほか、脈石である珪酸鉱物などの酸化鉱物からなる。また、主に、硫化鉱物中に亜鉛、鉛のほか、ヒ素、アンチモン、ビスマス等のV族元素鉱物、セレン、テルル等のVI族元素鉱物、及び貴金属を含有している。
前記乾式溶錬法による銅製錬は、溶錬炉、転炉、精製炉等を用いる一連の乾式製錬で銅精鉱を処理して得られた粗銅を電解精製する方法であり、大量の鉱石を効率よく処理するのに適した方法であるが、その反面、小型設備では反応効率が悪いので、大型設備のために膨大な設備投資が必要であること、また生成する大量のSOガスの回収が不可欠であること等の課題がある。
このような状況下、近年、湿式法による精錬方法が研究されている。従来、湿式法による銅精錬としては、銅酸化鉱物を含有する銅鉱石を用いて、積み上げた鉱石に硫酸を散布して銅を浸出し、該浸出生成液の銅濃度を上げるために溶媒抽出法で処理した後、電解採取する方法が工業的に広く用いられている。しかし、銅鉱石の大部分を占める硫化鉱に前記方法を適用した場合、含有鉱物として最も賦存量の多い黄銅鉱では、硫酸による浸出速度が遅く、かつ銅浸出率が低い結果となるという問題があった。したがって、黄銅鉱を含む銅原料の湿式法による精錬方法では、乾式溶錬に匹敵する生産性を得ることは困難であった。
この解決策として、黄銅鉱の浸出を促進することができる条件で浸出を行う方法が提案されている。代表的な方法として、例えば、銅鉱石又は銅精鉱をハロゲン化物を含む硫酸溶液中で加圧酸化した後浸出し、得られた浸出生成液を溶媒抽出し、第2銅イオンを含む逆抽出液から銅を電解採取する方法(例えば、特許文献1参照)、また、銅精鉱を臭化塩素イオンのようなハロゲン化錯体を形成する浸出液で浸出し、それに続く低酸化還元電位領域での浸出を経て得られた第1銅イオンを含む浸出生成液から銅を電解採取する方法(例えば、特許文献2参照)がある。
上記のような湿式法による精錬方法では、乾式溶錬法に比べて反応温度が低いので、設備が比較的簡便であり投資が圧縮できること、また短周期で運転と停止の繰り返しができるので、生産調整が容易であること等の利点がある。しかし、上記の湿式法に関しても、効率的な精錬方法として、未だ、以下の解決すべき課題がある。
(1)黄銅鉱での高銅浸出率と硫黄の酸化抑制
湿式法では、硫化鉱物に含まれる硫黄を、硫酸に比べて保管性に優れた元素状硫黄として回収することが望ましい。しかし、難抽出性の黄銅鉱を原料として、銅の高浸出率を得るために強い酸化力を有する浸出法で処理すると、浸出において硫黄が酸化され、浸出液中に硫酸イオンとして溶出し、元素状硫黄として回収することができない。したがって、黄銅鉱を用いて、銅の高浸出率と硫黄の酸化抑制を実現することができる浸出方法が望まれている。
(2)銅の効率的な還元
湿式法では、第1銅を含む塩化物水溶液から電解採取を行うのが望ましい。すなわち、硫酸溶液では、銅の形態は2価に限られるが、塩化物溶液の場合には、1価と2価の形態がある。一価銅電解、すなわち1価の銅イオンを電解採取する方法では、2価の銅イオンを電解採取する場合の半分の電力量で電解が行えるので経済的である。しかしながら、塩素ガスを用いる浸出工程で得られる浸出生成液では、その酸化還元電位が高いので、銅イオンは2価の形態で存在することになる。従来、第2銅イオンを第1銅イオンに還元する方法において、還元剤として、SOガスを液に吹き込んだり、電解採取で得た銅粉の一部を繰り返すことが知られている。しかし、SOの吹き込みでは、浸出液中の硫酸イオン濃度が上昇することになって、液処理のコストが増加してしまう。また、銅粉を使用するとその分製品の直接収率が低下してコスト高につながる。したがって、一価銅電解のため、銅イオンの効率的な還元方法の実現が望まれている。
(3)廃棄残渣量の減少と鉄の効率的回収
湿式法による浸出残渣は、一般に、乾式溶錬によるスラグに比較して化学的に不安定である場合が多く、含まれる不純物が周辺環境に溶出する懸念が指摘されている。この対策として、廃棄する残渣の量を減らすために、浸出において残渣の主成分である鉄の浸出率を上げ、かつ利用可能な形態で鉄を回収することが望ましい。
以上のような状況から、上記の課題を解決して、硫化銅鉱物を含む銅原料を効率的に処理することができる湿式精錬法が望まれている。
なお、本明細書で用いる平均粒子径(D50)の測定は、マイクロトラック粒子径分布測定装置(日機装(株)製、型式9320HRA(X−100))を用いて行った。
特表2001−515145号公報(第1頁、第2頁) 特許第2857930号公報(第1〜4頁)
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、黄銅鉱を始めとする硫化銅鉱物を含む銅原料の湿式精錬法において、硫黄の酸化を抑制しながら高浸出率で銅を浸出して一価銅電解で回収し、また随伴する有価金属も回収して、浸出残渣などの廃棄物を可能な限り減少することができる精錬方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法について、鋭意研究を重ねた結果、硫化銅鉱物を含む銅原料を酸性塩化物水溶液中で塩素で浸出する塩素浸出工程、浸出生成液中の銅イオンを還元する銅イオン還元処理工程、還元生成液中の銅を溶媒で抽出し、次いで抽出液を逆抽出する溶媒抽出工程、銅を電解採取する銅電解採取工程、及び鉄を電解採取する鉄電解採取工程を含む一連のプロセスにより、銅とともに鉄及び随伴する有価金属を効率よく分離回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、硫化銅鉱物を含む銅原料から、湿式精錬法で銅ととを回収する方法において、
(1)前記銅原料を酸性塩化物水溶液中で塩素による浸出に付し、該液中に銅を溶出させ、銅イオンを含む浸出生成液と元素状硫黄を含む残渣とを形成する塩素浸出工程、
(2)前記浸出生成液に還元剤を添加し、銅イオンを還元して第1銅イオンを含む還元生成液を得る銅イオン還元処理工程、
(3)前記還元生成液を溶媒抽出に付し、銅を抽出した後、逆抽出して、第1銅イオンを含む逆抽出生成液と第1鉄イオンを含む抽出残液とを得る溶媒抽出工程、
(4)前記逆抽出生成液を電解採取に付し、電着銅と電解尾液とを形成する銅電解採取工程、及び
(5)前記抽出残液を電解採取に付し、電着鉄と塩化鉄水溶液からなる鉄電解尾液とを形成する鉄電解採取工程、を含むことを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、塩素浸出工程において、塩素による浸出が塩素ガスの吹きこみによるものであることを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、塩素浸出工程において、スラリー濃度が100〜400g/L、浸出温度が100〜110℃、酸化還元電位(Ag/AgCl電極規準)が500〜600mVであることを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、塩素浸出工程において、塩素浸出の終了時点での浸出生成液の塩化物イオン濃度が、250〜400g/Lになるように、酸性塩化物水溶液中の塩化物イオン濃度を調整することを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、銅イオン還元処理工程において、還元剤として硫化銅鉱物を用いることを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、前記硫化銅鉱物を浸出生成液中で大気圧下加熱処理に付し、還元生成液と元素状硫黄を含む残渣を形成することを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、前記硫化銅鉱物として平均粒子径(D50)が0.5〜60μmになるように調製された黄銅鉱を主鉱物とする銅精鉱を用いるとともに、前記浸出生成液の還元温度を90〜110℃の範囲でかつ下記の式1により算出される温度(A)以上に調整することを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
式1:A(℃)=6.79×Ln(B)+81.5
(式中、Bは、銅精鉱の体積頻度累積が50容量%に相当する平均粒子径(D50)を意味し、マイクロトラックを用いて測定された単位μmの数値である。)
また、本発明の第8の発明によれば、第6の発明において、前記硫化銅鉱物として平均粒子径(D50)が0.5〜60μmになるように調製された黄銅鉱を主鉱物とする銅精鉱を用いるとともに、前記浸出生成液の還元温度を90〜110℃の範囲でかつ下記の式2により算出される温度(A)以上に調整することを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
式2:A(℃)=7.04×Ln(B)+95.2
(式中、Bは、銅精鉱の体積頻度累積が50容量%に相当する平均粒子径(D50)を意味し、マイクロトラックを用いて測定された単位μmの数値である。)
また、本発明の第9の発明によれば、第6の発明において、前記残渣を銅原料として前記塩素浸出工程に送ることを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第1の発明において、溶媒抽出工程において、溶媒抽出に用いられる有機溶媒が中性抽出剤を含むことを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、前記有機溶媒中の中性抽出剤の濃度が、40容量%以上であることを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第12の発明によれば、第1の発明において、溶媒抽出工程において、逆抽出で用いられる水溶液は、銅濃度が70g/L以下、塩素イオン濃度が50〜350g/Lであることを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第13の発明によれば、第1の発明において、溶媒抽出工程において、逆抽出の温度が、40〜90℃であることを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第14の発明によれば、第1の発明において、銅電解採取工程において、陰極室、陽極室、及び前記両室を分離する隔膜から構成される電解槽を用いて、該陰極室に前記溶媒抽出工程からの第1銅イオンを含む逆抽出生成液を給液して銅を電析させ、かつ該陽極室に前記鉄電解採取工程からの塩化鉄水溶液からなる鉄電解尾液を給液して陽極酸化させるとともに、該陽極室への給液が隔膜を通じて該陰極室へ流入するのを防止することを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第15の発明によれば、第14の発明において、前記隔膜の通水度が、0.04〜0.15L/m.sであることを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第16の発明によれば、第14の発明において、前記電解槽は、給液と廃液が陰極室と陽極室のそれぞれで個別に行われ、かつ陰極室の液面レベルを陽極室のそれよりも高くする構造であることを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第17の発明によれば、第14の発明において、前記陰極室の廃液を溶媒抽出の逆抽出液として前記溶媒抽出工程へ戻すとともに、前記陽極室の廃液を浸出液として前記塩素浸出工程へ戻すことを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第18の発明によれば、第1の発明において、鉄電解採取工程において、濾布で仕切られた陽極室と陰極室から構成される電解槽内で、陽極室に陰極で析出する鉄量の2倍量以上の鉄イオンを供給して浴電圧を低下させて電解を行うことを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第19の発明によれば、第1の発明において、鉄電解採取工程に先立って、溶媒抽出工程で得られる抽出残液を浄液に付し、精製液と沈殿生成物とを形成する浄液工程を含むことを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第20の発明によれば、第19の発明において、前記浄液工程において、浄液が、硫化処理、セメンテーション処理、又は中和処理から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第21の発明によれば、第1の発明において、さらに、塩素浸出工程で得られる元素状硫黄を含む残渣を、不活性雰囲気下で蒸留に付し、硫黄を揮発させ、凝縮された硫黄と随伴する貴金属を含む残滓とに分離する浸出残渣処理工程を含むことを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
また、本発明の第22の発明によれば、第1の発明において、さらに、銅電解採取工程で得られる電着銅を陽極として、電解精製に付し、高純度の電気銅と銀含有スライムとに分離する銅電解精製工程を含むことを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法が提供される。
本発明の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法は、黄銅鉱を始めとする硫化銅鉱物を含む銅原料の湿式精錬法において、硫黄の酸化を抑制しながら高浸出率で銅を浸出して一価銅電解で回収することができ、また随伴する有価金属も回収して、浸出残渣などの廃棄物を可能な限り減少することができる精錬方法であり、その工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法を詳細に説明する。
まず、本発明の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法の概要について、図を用いて説明する。図1は、本発明の精錬プロセス工程図の一例を表す。
図1において、硫化銅鉱物を含む銅原料8は、最初に塩素浸出工程1に付され、銅、鉄等を含有する浸出生成液と硫黄含有残渣とに分離される。浸出生成液は、銅イオン還元処理工程2に付され、浸出生成液中の銅イオンは還元され、第1銅イオンを含む還元生成液が得られる。ここで、還元剤として硫化銅鉱物を含む銅原料を用いる場合は、この残渣は塩素浸出工程1へ循環される。還元生成液は、溶媒抽出工程3に付され、溶媒抽出及び逆抽出により第1銅イオンを含有する逆抽出生成液と抽出残液に分離される。逆抽出生成液は、銅電解採取工程4に付され、銅は電着銅9として回収される。
また、精錬処理の原料の種類にもよるが、通常硫化銅鉱物を含む銅鉱石は、銅とほぼ同量に近い鉄を含有しており、前記溶媒抽出工程3における抽出残液には、多量の鉄イオンが含まれる。したがって、溶媒抽出工程3における抽出残液は、必要に応じて浄液工程5に付され、鉄イオン含有精製液と鉄以外の有価金属固形物とに分離される。鉄イオン含有精製液は、鉄電解採取工程6に付され、鉄は電着鉄10として回収される。
また、塩素浸出工程1で分離された硫黄含有残渣は浸出残渣処理工程7に付され、元素状硫黄が回収される。さらに、銅電解採取工程4で分離された電解尾液は、陰極電解尾液が逆抽出給液として溶媒抽出工程3に、陽極電解尾液が浸出液として塩素浸出工程1に再循環される。また、鉄電解採取工程6で得られる電解尾液は陽極給液として銅電解採取工程4へ送られる。
1.硫化銅鉱物を含む銅原料と随伴する有価金属
本発明の精錬方法における硫化銅鉱物を含む銅原料としては、黄銅鉱(CuFeS)、輝銅鉱(CuS)、斑銅鉱(CuFeS)などの硫化銅鉱物を含む銅鉱石、前記銅鉱石から浮遊選鉱法等によって硫化銅鉱物を濃集した銅精鉱、硫化銅鉱物を含み、酸化銅鉱物、ヒ化銅鉱物、アンチモン化銅鉱物など各種含銅鉱物を含む鉱石及びその銅精鉱、並びに銅精鉱などから乾式溶錬法で得られる銅マットおよび高品位銅マットが含まれ、さらには、これらと同時処理される硫化物状、酸化物状、金属状の各種含銅原料がある場合も含まれる。
また、随伴する有価金属としては、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、硫黄、亜鉛、カドミウム、錫、鉛の他、ヒ素、アンチモン、ビスマス等のV族元素、セレン、テルル等のVI族元素、及び貴金属等が挙げられる。
2.塩素浸出工程
本発明の精錬方法における塩素浸出工程は、上記硫化銅鉱物を含む銅原料を塩化銅、塩化鉄などを含む酸性塩化物水溶液中に懸濁させ、主に硫化銅鉱物を塩素で浸出して銅、鉄等を溶出させて、銅イオンと鉄イオンを含む浸出生成液と元素状硫黄を含む残渣とを形成する工程である。また、上記銅原料を次工程の銅イオン還元処理工程で還元剤として用いる場合には、該工程で得られる残渣を塩素浸出工程の原料として用いることが好ましい。例えば、上記銅原料の全量を一旦銅イオン還元処理工程で処理した後に、塩素浸出工程で用いることができる。
上記工程において浸出に用いる塩素は、特に限定されるものではなく、酸性塩化物水溶液中の塩化銅、塩化鉄などを酸化することができる塩素化合物が用いられるが、この中で、特に反応効率から、酸化力の強い塩素ガスの吹きこみを行うのが好ましい。
上記工程において、輝銅鉱、斑銅鉱及び高品位銅マットに比べて、塩素による浸出反応の速度が遅い黄銅鉱が主たる浸出対象である場合には、銅の高浸出率とともに硫黄の酸化抑制が重要な課題である。この課題に対応するためには、浸出時の酸化力を適正に制御することが望ましい。なお、酸化力は、浸出液の酸化還元電位、浸出温度、スラリー濃度、浸出液の塩素濃度等の条件を最適化することによって制御することができる。
上記工程における塩素浸出液の酸化還元電位(ORPと呼称することがある。Ag/AgCl電極規準)は、特に限定されるものではなく、500〜600mVが好ましく、500〜520mVがより好ましい。すなわち、ORPが500mV未満では、浸出の酸化力が弱いため、銅の浸出率が低い。一方、600mVを超えて浸出すると、硫黄の酸化率が著しく増加する。さらに、ORPが500〜520mVでは硫黄の酸化はほとんど生じない。また、銅原料が黄銅鉱主体の原料である場合には、ORPは500〜520mVが特に好ましい。
上記工程における浸出温度は、特に限定されるものではなく、100〜110℃が好ましく、より好ましくは105〜110℃である。すなわち、浸出温度が100℃未満では、銅及び鉄の浸出率が低く、その反面硫黄は酸化される。一方、110℃を超えると加圧設備が必要となる。
上記工程における浸出初期のスラリー濃度(スラリー中の銅原料の濃度)は、特に限定されるものではなく、100〜400g/Lが好ましく、より好ましくは250〜400g/Lである。すなわち、浸出初期のスラリー濃度が100g/L未満では、銅及び鉄の浸出率が低く、その反面硫黄は酸化される。一方、400g/Lを超えると、設備及び操作上のむずかしさがある。
さらに、上記工程における浸出終了時点での浸出終液に含まれる塩素イオン濃度は、特に限定されるものではなく、200〜400g/Lが好ましく、より好ましくは250〜400g/Lである。すなわち、浸出終了時点での浸出終液に含まれる塩素イオン濃度が、200g/L未満では、銅及び鉄の浸出率が低く、その反面硫黄は酸化される。一方、400g/Lを超えてもそれ以上の反応結果への効果がない。浸出終了時点での浸出終液に含まれる塩素イオン濃度を200〜400g/Lになるように維持することによって、黄銅鉱中の銅をほぼ完全に浸出させることができる。なお、浸出終液に含まれる塩素イオン濃度を200〜400g/Lに維持するためには、酸性塩化物水溶液への塩素吹き込み量を制御する方法が好ましい。
本発明の精錬方法において、塩素浸出工程を上記の条件で行うことにより、黄銅鉱を主体とする銅原料を用いて、黄銅鉱の硫黄の酸化率を5%以下に抑制しつつ、銅の95%以上と鉄の90%以上を浸出することができる。これによって、湿式銅精錬プロセスの課題の一つである黄銅鉱の高銅浸出率と硫黄の酸化抑制が達成される。
また、塩素浸出工程において形成される第2銅イオン及び第2鉄イオンを含む浸出生成液と元素状硫黄を含む残渣は、通常の手段によって固液分離される。
3.銅イオン還元処理工程
本発明の精錬方法における銅イオン還元処理工程は、上記塩素浸出工程で得られる銅イオン、鉄イオン等を含有する浸出生成液に還元剤を添加して銅イオンの還元処理を行い、浸出生成液に含有される第2銅イオンを第1銅イオンに還元し、同時に第2鉄イオンも第1鉄イオンに還元する工程である。これによって得られる第1銅イオンが高比率で存在する還元生成液から、次の溶媒抽出工程において、銅イオンのみを選択的に有機溶媒に抽出させることができる。
上記工程において、還元生成液のORP(Ag/AgCl電極規準)は、銅と鉄を含む塩化物水溶液中の第2銅イオンを第1銅イオンへ還元することができる電位に調整されるが、0〜400mVが好ましく、0〜380mVがより好ましい。すなわち、ORP(Ag/AgCl電極規準)が400mVを超えると、銅イオンの一部は2価となり、さらにこの第2銅イオンが酸化剤として働いて鉄イオンも一部3価の状態となるので、第1銅イオンが高比率で存在する還元生成液が得られない。一方、ORP(Ag/AgCl電極規準)が0mV未満であると、場合によって鉄イオン又は銅イオンが金属状態まで還元されて沈殿することがある。
ところで、鉄イオンなどが共存する浸出生成液の第1銅と第2銅の形態を正確に分析することは困難であるが、図2より、銅の形態とORPの関係を推定した。
図2は、試薬を混合して、90℃で塩化物溶液中の第1鉄イオン濃度を変えた場合の銅の形態(Cu(1)/Cu(2):第1銅と第2銅の濃度比)とORP(Ag/AgCl電極規準)の関係を示す。ここで、銅及び鉄イオンの大部分が第1銅イオンと第1鉄イオンで存在するには、ORP(Ag/AgCl電極規準)が400mV以下、完全に第1銅イオンと第1鉄イオンとするには、380mV以下であることが分る。したがって、Cu濃度が50g/L程度で50〜100g/Lの濃度でFeが共存する浸出生成液の場合には、概ね380〜400mVが還元工程での到達目標のORPとなる。
上記工程で用いる還元剤としては、特に限定されるものではなく、金属銅、銅よりも卑な金属、硫化銅又は硫化銅鉱物から選ばれる少なくとも1種が使用できるが、例えば、特に銅の浸出も同時に行える硫化銅又は硫化銅鉱物を用いるのが好ましい。すなわち、上記塩素浸出工程に先立って、硫化銅鉱物を含む銅原料を塩素浸出工程からの浸出生成液と予め接触させることによって、銅イオンを1価に、鉄イオンを2価に還元し、同時に原料中の銅の一部を予め浸出できる。このとき、形成される元素状硫黄を含む残渣は、銅原料として上記塩素浸出工程に送られ浸出に付されることが好ましい。
ここで、硫化銅鉱物が黄銅鉱の場合に、第2銅イオンと第2鉄イオンを、第1銅イオンと第1鉄イオンに還元し、かつ元素状の硫黄を生成する還元反応は、以下の化学反応式1及び2で表わせる。
化学反応式1:Cu2++1/3CuFeS→4/3Cu+1/3Fe2++2/3S、
化学反応式2:Fe3++1/3CuFeS→1/3Cu+4/3Fe2++2/3S
化学反応式1及び2の反応は、第2銅イオンと第2鉄イオンによる黄銅鉱の浸出反応である。したがって、第2銅イオンと第2鉄イオンの還元反応に伴ない黄銅鉱の浸出が進む。
上記工程において、還元剤として硫化銅鉱物を用いる場合、還元処理条件は、特に限定されるものではなく、大気圧下又は加圧下で行われる。この中で、特に加圧設備が不要な大気圧下での還元処理が好ましい。すなわち、硫化銅鉱物を浸出生成液中で大気圧下加熱処理に付し、還元生成液と元素状硫黄を含む残渣を形成する方法が好ましい。
前記大気圧下での還元処理方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、以下の二つの方法で、第1銅イオンが高比率で存在する還元状態が得られる。
すなわち、一つは、前記硫化銅鉱物として平均粒子径(D50)が0.5〜60μmになるように調製された黄銅鉱を主鉱物とする銅精鉱を用いるとともに、前記浸出生成液の還元温度を90〜110℃の範囲でかつ下記の式1により算出される温度(A)以上に調整することを含む方法である。これによって、還元生成液のORP(Ag/AgCl電極規準)を400mV以下とすることができる。
式1:A(℃)=6.79×Ln(B)+81.5
(式中、Bは、銅精鉱の体積頻度累積が50容量%に相当する平均粒子径(D50)を意味し、マイクロトラックを用いて測定された単位μmの数値である。)
また、二つめは、前記硫化銅鉱物として平均粒子径(D50)が0.5〜60μmになるように調製された黄銅鉱を主鉱物とする銅精鉱を用いるとともに、浸出生成液の還元温度を90〜110℃の範囲でかつ下記の式2により算出される温度(A)以上に調整することを含む方法である。これによって、還元生成液のORP(Ag/AgCl電極規準)を380mV以下とすることができる。
式2:A(℃)=7.04×Ln(B)+95.2
(式中、Bは、銅精鉱の体積頻度累積が50容量%に相当する平均粒子径(D50)を意味し、マイクロトラックを用いて測定された単位μmの数値である。)
前記二つの方法において、浸出生成液中の第2銅イオン及び第2鉄イオンと、黄銅鉱との反応性が、還元生成液の酸化還元電位の低下、すなわち還元反応の進行度合にとって重要である。このため、硫化銅鉱物として所定の平均粒子径(D50)に粒子径が調整された銅精鉱を用いることと、前記銅精鉱のD50から式1又は2に従って求められる温度から還元温度を適正に選択することの二つの要件が必須である。
これによって、銅精鉱の粒子径を所定値に調整して用いれば、浸出生成液を大気圧下で所定の還元温度に加熱するとき、ORP(Ag/AgCl電極規準)を第1銅イオンが第2銅イオンに対して優位に存在する400mV以下、好ましくは380mV以下に低下させることができる。すなわち、大気圧下の処理で第2銅イオンを第1銅イオンに効率的に還元することができることを意味する。
上記還元方法で用いる銅精鉱の粒子径は、D50が0.5〜60μmであり、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは3.5〜8.2μmである。すなわち、D50が0.5μm未満では、還元生成液と残渣との分離工程での漏れ又は沈降性の悪化等が起る。一方60μmを超えると、銅精鉱の反応性が低下するため、到達目標のORPを得るためには浸出生成液の温度を上げてより沸点に近い温度で長時間保持することになるので、生産性及びエネルギー的に非効率である。
上記還元方法で用いる銅精鉱の粒子径の調整には、特に限定されるものではなく、市販の各種の粉砕機、例えば、通常ビーズミルと呼ばれる湿式媒体撹拌粉砕機(例えば浅田鉄工製ナノグレンミルNM−G5M、アメックス製NVM−2)及び遊星ボールミル(例えばセイシン企業製プラネタリーミルSFK−04)等が用いられる。
上記還元方法で用いる還元温度の範囲は、90〜110℃である。すなわち、上記塩素浸出工程では、例えば、浸出液の塩化物イオン濃度は200〜400g/Lが好ましいことから、このときの浸出生成液の沸点は110℃近傍まで上昇する。ここで、還元温度が110℃を超えると大気圧下での処理ができない。一方90℃未満では、上記銅精鉱の粒子径を細かくしても反応が遅く、目標のORPを得るためには長時間の処理を要するので効率が低い。
上記還元方法で用いる銅精鉱の初期スラリー濃度は、特に限定されるものではないが、高濃度であるほど還元反応が進み易いが、プロセスの物量バランス、塩化銅及び塩化鉄の溶解度等から制約がある。この中で、操業上の制約が少ない50〜250g/Lが望ましく、100g/Lがより望ましい。すなわち、前記初期スラリー濃度が100g/Lであれば、実用上の問題はない。
上記還元方法において、銅精鉱の平均粒子径(D50)と適正な還元温度の関係は、銅精鉱のD50(B)から下記の式1又は2を満足する温度(A)を求め、前記浸出生成液の還元温度を90〜110℃の範囲でかつ温度(A)以上に調整する。
式1:A(℃)=6.79×Ln(B)+81.5
式2:A(℃)=7.04×Ln(B)+95.2
(式中、Bは、銅精鉱の体積頻度累積が50容量%に相当する平均粒子径(D50)を意味し、マイクロトラックを用いて測定された単位μmの数値である。)
これによって、還元生成液のORP(Ag/AgCl電極規準)を、式1に従えば400mV以下に、また式2に従えば380mV以下にすることができる。すなわち、第1銅イオンが高比率で存在する還元生成液を得ることができる。
ここで、前記の式1又は2は、銅精鉱の初期スラリー濃度100g/Lで、それぞれ400mV以下又は380mV以下の目標ORP(Ag/AgCl電極規準)を達成するための銅精鉱のD50と還元温度の関係を示すもので、以下によって導かれた。まず、図3に、還元温度と粒子径を変えて還元処理を行ったときの還元温度、粒子径、ORP(Ag/AgCl電極規準)の関係を示す。図中に、90、104、107℃の温度での近似線を示す。これより得られた目標ORPと温度及びD50との関係を表1、図4及び図5に示す。図4と図5の近似線の回帰式を、各々式1と式2とした。
Figure 0004352823
以上より明らかなように、安価な黄銅鉱を主鉱物とする銅精鉱を用いて第2銅イオンを還元して、第1銅イオンが高比率で存在する還元生成液を得ることができる。
以上、本発明の精錬方法における銅イオン還元処理工程によって、塩化物水溶液中の第2銅イオンと第2鉄イオンを効率良く還元し、かつ硫化銅鉱物中の硫黄の酸化を抑制して反応を進めて、第1銅イオン及び第1鉄イオンを含む還元生成液と元素状硫黄を含む残渣とを形成することができる。これによって、湿式銅精錬プロセスの課題の一つである銅の効率的な還元が達成される。
4.溶媒抽出工程
本発明の精錬方法における溶媒抽出工程は、上記銅イオン還元処理工程で得られる第1銅イオンを含む還元生成液と有機抽出剤を含む有機溶媒とを接触混合させて第1銅イオンのみを選択的に有機溶媒に抽出する工程と、第1銅イオンを抽出した有機溶媒と水溶液とを接触混合させて、第1銅イオンを水溶液に逆抽出する工程とによって、銅イオン含有水溶液と鉄イオン及び有価金属イオン含有抽出残液を得る工程である。なお、前記還元生成液は、ORP(Ag/AgCl電極規準)が0〜400mVに調整されているものである。
上記工程に用いる有機抽出剤は、特に限定されるものではなく、第1銅イオンを抽出し、鉄及び随伴する有価金属と分離できる有機抽出剤であれば、いずれも用いることができるが、この中で、特にトリブチルフォスフェイトなどの中性抽出剤が好ましい。すなわち、トリブチルフォスフェイト抽出剤を用い、還元生成液の酸化還元電位を最適に維持して溶媒抽出することによって、第1銅イオンを有機溶媒相に選択的に抽出し、第1鉄イオン及び銀イオンなどを抽出残液に残すことができる。
ここで、有機溶媒相中のトリブチルフォスフェイトなどの中性抽出剤の濃度は、特に限定されるものではないが、好ましくは40〜100容量%、さらに好ましくは50〜100容量%である。すなわち、40容量%未満では、工業的に期待する銅抽出率を得ることができない。通常、トリブチルフォスフェイトは流動性を保つためにケロシン等の希釈剤で希釈して用いられるが、銅イオンの抽出率の向上には、トリブチルフォスフェイトの希釈は極力行わない方が望ましい。すなわち、前記銅イオンの抽出率は、還元生成液中の塩化物イオンの濃度と、トリブチルフォスフェイトの濃度とに依存するからである。
上記工程の逆抽出に用いる水溶液の銅濃度は、特に限定されるものではないが、70g/L以下が好ましい。すなわち、前記銅濃度が70g/Lを超えると逆に有機溶媒相に銅が移動する現象が起こる。
上記工程の逆抽出に用いる水溶液の塩素イオン濃度は、特に限定されるものではないが、50〜350g/Lが好ましい。すなわち、前記塩素イオン濃度が50g/L未満では、逆抽出される第1銅イオンは水への溶解度が小さいので、逆抽出された銅イオンを溶液の状態に保つことができない。通常、逆抽出される銅濃度にあわせて、逆抽出に用いる溶液の塩素イオン濃度を高くして、逆抽出された銅イオンを溶液の状態に保つが、実用的には、塩素イオン濃度の上限は350g/Lであるので、この値が塩素イオン濃度の上限となる。
上記工程の逆抽出の温度は、特に限定されるものではないが、40〜90℃が好ましく、より好ましくは50〜90℃である。すなわち、40℃未満では、トリブチルフォスフェイト中の銅イオンは水相側へ排出されにくく、逆抽出率が小さい。一方、90℃を超えると、放熱量が多くなり、温度を保つことが困難になるうえ、溶媒の蒸散量も多くなって有機溶媒相及び水相を安定な状態を保つことができない。
以上、本発明の精錬方法における溶媒抽出工程によって、銅イオン還元処理工程で得られた還元生成液から、第1銅イオン含有水溶液と鉄イオン及び有価金属イオン含有抽出残液が効率よく得られる。
5.銅電解採取工程
本発明の精錬方法における銅電解採取工程は、上記溶媒抽出工程で得られる第1銅イオンを含む逆抽出生成液から銅を電解採取し、陰極上に析出された電着銅と電解尾液とを形成する工程である。
上記工程において、銅の電解採取方法は、特に限定されるものではなく、塩化物からの電解採取法により金属を回収する種々の方法を用いることができるが、この中で、特に、陰極室、陽極室、及び前記両室を分離する隔膜から構成される電解槽を用いて、該陰極室に溶媒抽出工程からの逆抽出生成液(塩化第1銅水溶液)を給液して銅を電析させ、かつ該陽極室に鉄電解採取工程からの鉄電解尾液(塩化鉄水溶液)を給液して陽極酸化させるとともに、該陽極室への給液が隔膜を通じて該陰極室へ流入するのを防止することを含む隔膜電解による方法を用いるのが、好ましい。さらに、上記方法で前記陰極室の廃液を溶媒抽出の逆抽出液として溶媒抽出工程へ戻すとともに、前記陽極室の廃液を浸出液として塩素浸出工程へ戻すのが、さらに好ましい。
上記工程の銅の電解採取方法を、図を用いて説明する。図6は、本発明の銅電解採取工程で用いる電解槽の構造の一例を表わす図である。
図6の電解槽は、隔膜13によって陰極室11と陽極室12に別けられ、それぞれの電極が設置される。陰極14は、特に限定されるものでなく、金属銅、チタン、ステンレスが使用できる。また、陽極15は、特に限定されるものでなく、食塩電解等の塩化物水溶液から塩素ガス発生用に用いる不溶性電極、例えば、商品名DSE(ペルメレック電極(株)製)が使用できる。
また、前記電解槽の特徴は、陽極室12への給液19が隔膜13を通じて陰極室11へ流入するのを防止する構造であることである。このため、陰極室液20と陽極室液21とが分離されるが、隔膜13を通してイオン及び電気が通過する必要があるので、陰極室液20と陽極室液21を厳格に分割するものではない。すなわち、陰極室11に酸化された陽極室液21が自由に流入しない構造であればよく、イオン及び水の通過を完全に停止するものである必要はない。
これを電解槽の構造上で実現するため、隔膜は、特に限定されるものではなく、例えば濾布又は固体電解質膜が用いられるが、この中でも、特に目が細かく、通水度が低くなるように織られた濾布を用いる方法が好ましい。すなわち、固体電解質膜は、濾布と比べてコストが高く、また不純物に弱いからである。
前記隔膜の通水度は、特に限定されるものではないが、0.04〜0.15L/m.sが好ましい。すなわち、0.04L/m.s未満では、液の移動が少ないため槽電圧が上昇し、また濾布のコストも上昇する。一方0.15L/m.sを超えれば、液の移動の増加により銅の収率が低下する。
さらに、陽極室12に陰極室液20が少量流入して陽極室液21に混入しても操業上影響がほとんどなく問題がない場合には、陽極室液21が陰極室11側に流入しないようにするために陰極室液20の水頭を陽極室液21より高く保つことが好ましい。例えば、陰極室11のオーバーフローレベルを陽極室12のそれよりも若干高めとし、液面差を付けてその圧力で陽極室12の塩素ガスや塩素ガスを含んだ液が陰極室11に入り込まないようにする。
ここで、電解採取を順調に進行させるため、陰極での還元反応と陽極での酸化反応(陽極酸化)からなる電解反応を平衡させることが必要である。
そのため、陰極室11には、上記溶媒抽出工程からの逆抽出生成液(塩化第1銅水溶液)を陰極給液18として供給して、陰極14上で第1銅イオンを金属銅に還元し電析させる。反応後の陰極室液20は、陰極室11から直接排出され、回収されるような構造を持つ装置とする。
一方、陽極室12には、鉄電解採取工程からの鉄電解尾液(塩化鉄水溶液)を陽極給液19として供給して、陽極15上で塩化鉄水溶液を陽極酸化させる。反応後の陽極室液21は、陽極室12から直接排出され、回収されるような構造を持つ装置とする。ここで、鉄電解採取工程からの塩化鉄水溶液は、陽極で酸化されて電子を放出することができるイオンを含んだ溶液であるので電解反応が成り立つ。例えば、鉄電解採取工程で、浴電圧を下げるために陽極反応として塩化第1鉄を塩化第2鉄に酸化する反応を用いる場合、鉄電解陽極廃液は塩素イオンを充分に含む塩化第2鉄溶液であり、銅電解採取の陽極給液19として好ましい。この塩化第2鉄水溶液を銅電解採取工程で陽極酸化すると塩素ガスが生成される。
また、隔膜13は陰極室液20と陽極室液21を厳格に分割するものではないので、陰極室液20の一部が陽極室液21に混入して排出されるが、大部分の陰極室液20はそのまま陰極廃液22として排出されることになる。これにより、陰極室液20中の電着しなかった第1銅イオンは、酸化性の陽極室液21によって酸化されることなく回収することができる。このため、溶媒抽出工程の逆抽出液として反応面の問題がなく好適である。
また、陽極廃液23は、塩素浸出工程に循環されるが、銅電解採取工程での液量の増減が殆どないため、液バランス上の問題は起こらない。また、酸化剤である塩化第2鉄が更に酸化力のある塩素ガスに形を変えることになり、浸出工程での効率向上に好ましい。
陰極廃液22及び陽極廃液23の排出方法としては、各室の液面を一定に保つことが出来れば良く、それぞれの室の液面にあわせたオーバーフロー口16、17を設け、自動的に排出される機構とするのが簡便な方法である。
以上、本発明の精錬方法における銅電解採取工程では、第1銅イオンの電解採取が行われるので高電流効率が達成される。また、そこで得られる陰極室液は還元性であるので溶媒抽出の逆抽出液として反応的に安定かつ好適な性状であり、かつ陽極室液は強い酸化性であるので塩化浸出工程の浸出液として好適な性状である。さらに、これらの液を循環することによって、循環される工程を含むプロセス全体の液量バランスをとることができる。
6.鉄電解採取工程
本発明の精錬方法における鉄電解採取工程は、上記溶媒抽出工程で得られる抽出残液から鉄を電解採取して、陰極に析出された電着鉄と上記銅電解採取工程に好適な陽極給液を形成する工程である。電着鉄は、純鉄あるいは屑鉄として利用することができるので、鉄電解採取工程は残渣処理場所と資源の有効利用の点から好ましい。
上記工程における鉄の電解採取方法は、特に限定されるものではないが、例えば、隔膜電解法を用いて、前記抽出残液を電解槽の陰極給液とし、陽極室から陽極廃液を得るのが好ましい。前記陽極廃液は塩化鉄水溶液であるので、新たに銅を浸出するための浸出液として塩素浸出工程へ循環することができるが、銅電解採取工程の陽極給液として循環するのが好ましい。すなわち、銅電解採取工程を経由して陽極給液として作用させた後に塩素浸出工程へ循環されるのが、湿式銅精錬プロセス全体の効率において特に好ましい。
上記の隔膜電解法としては、特に限定されるものではないが、塩素ガスの発生抑制と浴電圧の低下のために、特定の給液方法及び電解条件で行う隔膜電解法を用いるのが好ましい。すなわち、陽極では、陰極で析出する鉄イオンの2倍量の2価の鉄イオンが3価に酸化されるので、電解採取する鉄量を陰極に給液した2価の鉄イオンの3分の1以下に制御する。ここで、電解反応が進行するためには、陽極で鉄イオンが2価から3価に酸化されるだけで十分であるので、塩素ガスの発生が抑制される。したがって、隔膜電解法で、陽極室に陰極で析出する鉄量の2倍量以上の鉄イオンを供給することで、塩素ガスの発生を抑制して浴電圧を低下させることができる。
なお、溶媒抽出工程又はその後の処理中に液中の2価の鉄イオンが3価に酸化された場合には、鉄電解採取工程での電流効率を低下させて電力コストを上昇させるので、鉄電解採取工程の給液口に鉄粉あるいは鉄板等を設置することで液中の3価の鉄イオンを2価に還元するのが好ましい。
以上、鉄電解採取工程における鉄の電解採取方法として特定の給液方法及び電解条件で行う上記隔膜電解法を用いれば、電着鉄と上記銅電解採取工程に好適な陽極給液を形成するとともに、塩素ガスの発生を抑制して浴電圧を低下させることができる。これによって、湿式銅精錬プロセスの課題の一つである廃棄残渣量の減少と鉄の効率的回収が達成される。
7.浄液工程
本発明の精錬方法は、必要に応じて、鉄電解採取工程に先立って、溶媒抽出工程で得られる鉄を含む抽出残液を処理する浄液工程を行うことができる。浄液工程は、溶媒抽出工程で得られた鉄を含む抽出残液から、随伴する有価金属を沈殿生成させ分離し、随伴する有価金属を含む固形物と鉄を含む精製液とを分離する工程である。
一般に、鉄の電解採取においては、鉄は他の不純物と電位的にも共析し易いことから資源として利用できる鉄を得るためには不純物の除去が課題となる。したがって、上記溶媒抽出工程で得られた鉄を含む抽出残液から、随伴する有価金属を回収し、また資源として利用できる鉄を得るために、浄液工程を設けることができる。
浄液工程には、従来公知の方法の適用が可能であるが、この中でも硫化処理、セメンテーション処理又は中和処理から選ばれる少なくとも1種の処理方法が好ましく、随伴する有価金属の種類、含有量によって適宜選択することができる。なお、随伴する有価金属の種類及び含有量は、原料中の含有状態に左右され、また溶媒抽出の条件によっても変化するので限定されない。
なお、浄液によって形成された随伴する有価金属を含む固形物と鉄を含む精製液は、通常の手段によって固液分離される。
8.浸出残渣処理工程
本発明の精錬方法は、必要に応じて、塩素浸出工程で得られる元素状硫黄を含む残渣を処理する浸出残渣処理工程を行うことができる。浸出残渣処理工程は、塩素浸出工程で得られる元素状硫黄を含む残渣を不活性雰囲気下で加熱して蒸留処理し、硫黄を揮発させ、凝縮された硫黄と随伴する貴金属類を含む残滓とに分離する工程である。
前記蒸留処理の温度は、特に限定されるものではないが、250〜350℃が好ましく、330〜350℃がより好ましい。すなわち、250℃未満では、硫黄の揮発率が低い。
ここで、前記蒸留処理において蒸留装置の冷却部から凝縮された硫黄を得て、必要に応じて、さらに精製して硫黄製品とすることができる。一方、貴金属類は、残滓中に濃縮され、既存の製錬、精製工程の貴金属回収法で処理することができる。なお、得られた残滓は、元素状硫黄が完全に除かれているので、含有される貴金属が効率良く回収される。
9.銅電解精製工程
本発明の精錬方法は、必要に応じて、銅電解採取工程で得られる電着銅を処理する銅電解精製工程を行うことができる。銅電解精製工程は、銅電解採取工程で得られる電着銅を陽極として、電解精製に付し、高純度の電気銅と銀含有スライムとに分離する工程である。銅電解採取工程で得られる電着銅の不純物濃度が高い場合、必要により、銅電解精製工程を行う。例えば、前記電着銅を溶融して陽極を鋳造し、この陽極を通常の電解精製法で処理して、不純物及び貴金属をスライム又は電解液へ分配させて、陰極上に高純度な電気銅を得ることができる。また、前記電着銅を、既存の乾式溶錬法の後半工程の転炉ないし精製炉に投入して陽極を鋳造し、この陽極を既存の銅電解精製工程で処理することもできる。
以上、本発明に係わるプロセスの工程について説明したが、その構成は、銅原料の組成(硫化銅の種類構成、鉄濃度、貴金属含有量、他の有価物含有量など)、回収製品の品質、工場立地などによって、選ぶことが出来る。例えば、鉄含有量が少なくその大部分が浸出残渣として系外排出されるような場合、特に輝銅鉱(CuS)や高品位銅マットが原料であるときには、溶媒抽出工程、浄液工程、及び鉄回収工程を省略できる。
以下、本発明の実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例で用いた分析方法及び平均粒子径(D50)の測定方法は以下の通りである。
(1)金属の分析:液体試料はそのまま、固形試料は酸溶解して、ICP発光分析法で行った。
(2)塩素イオン濃度の分析:硝酸銀を用いた電位差滴定で塩酸濃度を分析し、ICP発光分析法で求めた銅、鉄及びナトリウムイオンに付随する塩素イオン濃度を算出し、これを合算した。
(3)鉱物種組成及び硫黄形態の分析:顕微鏡観察により鉱物種を同定し、化学分析値から推定した。
(4)平均粒子径(D50)の測定:マイクロトラック粒子径分布測定装置(日機装(株)製、型式9320HRA(X−100))を用いて行った。
(実施例1)
(1)塩素浸出工程
銅原料を酸性塩化物水溶液中で塩素による浸出に付し、この液中に銅を溶出させ、銅イオンを含む浸出生成液と元素状硫黄を含む残渣とを得て、評価した。
銅原料として、表2に示す化学組成で、かつ表3に示す鉱物種組成である銅精鉱を使用した。
Figure 0004352823
Figure 0004352823
銅精鉱30〜120gの所定量を秤量し、銅濃度60g/L及び塩素イオン濃度200g/Lの酸性塩化物水溶液300mLとともに、容量500mLのチタン製の反応容器に装入した。このスラリー濃度を100〜400g/Lとした。
オイルバスを使用して、前記容器内を105〜110℃の温度に維持し、ORPをAg/AgCl電極を参照電極として450〜750mVの間の所定の一定値に維持するように、塩素ガスを吹き込んで塩素浸出処理を行った。処理開始から、1、3、6時間経過後にサンプリングし、浸出残渣中の存在物量と浸出液中の銅イオン濃度、鉄イオン濃度及び硫黄濃度を分析し、銅精鉱からの銅と鉄の浸出率及び硫黄酸化率を算出した。
さらに、塩素イオン濃度が22〜419g/Lになるように塩化銅、塩化鉄及び塩化ナトリウムを使用して調整して得た浸出始液を用いて、ORP(Ag/AgCl電極規準)を520mVに調整して浸出した。同時に浸出温度を100〜110℃とした。
酸化還元電位(ORP)と、銅と鉄の浸出率及び硫黄酸化率の関係を、表4に示し、スラリー濃度と、銅と鉄の浸出率の関係を図7に示す。さらに、図8に、終液塩素イオン濃度と、銅と鉄の浸出率及び硫黄酸化率の関係を示す。
Figure 0004352823
表4より、塩素浸出液のORP(Ag/AgCl電極規準)を、好ましくは500〜600mV、より好ましくは500〜520mVに調整することによって、銅と鉄の高抽出率及び低硫黄酸化率が得られることが分る。また、図7より、浸出初期のスラリー濃度を、好ましくは100〜400g/L、より好ましくは250〜400g/Lに調整することによって、銅と鉄の高抽出率及び低硫黄酸化率が得られることが分る。さらに、図8より、浸出終了時点での浸出終液に含まれる塩素イオン濃度を、好ましくは200〜400g/L、より好ましくは250〜400g/Lに調整することによって、銅と鉄の高抽出率及び低硫黄酸化率が得られることが分る。
(2)銅イオン還元処理工程
下記の浸出生成液A、B、C、D、E、F、G、Hと、銅精鉱A、B、C、D、E、Fを用いて、下記の浸出生成液の還元方法に従って、89〜109℃の所定の還元温度で還元処理を行い、その際の最終のORP(Ag/AgCl電極規準)を測定した。結果を表5に示す。なお、用いた浸出生成液の始液ORP(Ag/AgCl電極規準、90℃)も参考に示す。
[浸出生成液]
(1)組成:いずれも、銅濃度30g/L、鉄濃度100g/L、塩化物イオン濃度220g/Lである。
(2)始液ORP(Ag/AgCl電極規準、90℃)
A:508mV、B:490mV、C:481mV、D:482mV、E:490mV、F:491mV、G:495mV、H:498mV
[銅精鉱]
A:銅精鉱(D50:60μm、化学組成:銅26重量%、鉄29重量%、硫黄28重量%、その他17重量%)。
B:銅精鉱Aを、遊星ボールミル(セイシン企業製 プラネタリーミル SKF−04型)を用いて乾式粉砕して得た、D50:3.77μmの粉砕物。なお、直径8mmの鋼球を50容量%充填した粉砕容器に入れて、150rpmで1時間処理した。
C:銅精鉱Aを、ビーズミル(浅田鉄工製 ナノミル NM−G5M型)を用いて湿式粉砕して得た、D50:1.08μmの粉砕物。なお、水を用いたスラリーの濃度を100g/Lとし、ビーズミルの粉砕室を3回パスさせた。
D:銅精鉱Aを、ビーズミル(浅田鉄工製 ナノミル NM−G5M型)を用いて湿式粉砕して得た、D50:1.33μmの粉砕物。なお、水を用いたスラリーの濃度を100g/Lとし、ビーズミルの粉砕室を2回パスさせた。
E:銅精鉱Aを、ビーズミル(浅田鉄工製 ナノミル NM−G5M型)を用いて湿式粉砕して得た、D50:2.21μmの粉砕物。なお、水を用いたスラリーの濃度を100g/Lとし、ビーズミルの粉砕室を1回パスさせた。
F:銅精鉱Aを、ビーズミル(浅田鉄工製 ナノミル NM−G5M型)を用いて湿式粉砕して得た、D50:0.76μmの粉砕物。なお、水を用いたスラリーの濃度を100g/Lとし、ビーズミルの粉砕室を1時間循環させた。
[浸出生成液の還元方法]
所定組成の浸出生成液に所定の平均粒子径(D50)に調整された銅精鉱50gを、初期スラリー濃度が100g/Lになるように500mLのガラスビーカーに装入して撹拌し、所定の還元温度に加熱して3時間保持した。
Figure 0004352823
表5より、用いた銅精鉱のD50から上記の式1を満足する温度(A)を求め、前記浸出生成液の還元温度を90〜110℃の範囲でかつ温度(A)以上に調整して行った場合(No.1〜7)には、400mV以下のORP(Ag/AgCl電極規準)が得られ、特に式2を満足する温度(A)以上に調整して行った場合(No.1)には、380mV以下が得られることが分かる。これに対して、D50と還元温度の関係が上記式1又は2の条件に合わない場合(No.8〜12)には、400mV以下のORP(Ag/AgCl電極規準)が得られないことが分かる。したがって、銅精鉱のD50と還元温度の関係を、上記式1又は2を満足する条件に調整することが好ましい。
(3)溶媒抽出工程
還元生成液A、B、C、Dを用いて、これら還元生成液を溶媒抽出に付し、銅を抽出した後、逆抽出して、第1銅イオンを含む逆抽出生成液と第1鉄イオンを含む抽出残液とを得て、評価した。
還元生成液Aとして、Cu75g/L、Fe51g/Lの濃度を有する上記工程で得られた還元生成液を用い、この500mLに銅粉を加えて酸化還元電位(Ag/AgCl電極規準)を300mVに調整し、還元生成液中の銅イオンを完全に一価に還元した。この液を溶媒抽出の始液とし、希釈剤(商品名シェルゾールA、昭和シェル石油(株)製)で40容量%の濃度に調整したトリブチルフォスフェイト(商品名TBP、大八化学(株)製)500mLと混合して、液温を50℃として、10分間振とうして溶媒抽出を行った。次いで、有機溶媒相と水相を分離し、この有機溶媒相に、塩酸でpH1に調整した250mLの水を混合し10分間振とうして、逆抽出した。
得られた逆抽出生成液の組成を、溶媒抽出の始液及び抽出残液とともに表6に示す。
Figure 0004352823
表6より、抽出剤として、トリブチルフォスフェイトを用いることによって、銅が鉄に対して、選択的にかつ高効率で分離されることが分る。
還元生成液Bとして、Cu80g/L、Fe50g/Lの濃度の塩化第2銅と塩化第2鉄からなる合成水溶液に、食塩を添加して塩素イオン濃度を200g/Lとし、さらにこの液を60℃に加温し、鉄粉を投入してORP(Ag/AgCl電極規準)を300mVに調整した液を用いた。前記液を、室温にてトリブチルフォスフェイト濃度が40〜100容積%の所定値にケロシンで希釈して得た有機溶媒と接触混合させ、トリブチルフォスフェイト中に金属イオンを抽出し、銅、鉄それぞれの抽出率を求めた。なお、接触混合時には混合時の気液界面接触による酸化を防ぐため窒素により不活性雰囲気とした。結果を図9、図10に示す。
図9より、トリブチルフォスフェイトの濃度を上昇させると銅の抽出率は大きくなるが、鉄の抽出率はあまり変化がないことが分る。図10より、トリブチルフォスフェイトの濃度が高いと銅/鉄の分離係数も良くなることが分る。
還元生成液Cとして、Cu118g/L、Fe90g/L、Ag9mg/Lの濃度となるように塩化第2銅、塩化第2鉄及び塩化銀を含む銅精鉱浸出液を作製し、さらにこの液を60℃に加温し、鉄粉を投入してORP(Ag/AgCl電極規準)を300mVに調整した液を用いた。前記液を、室温にてトリブチルフォスフェイトと接触混合させ、トリブチルフォスフェイト中に金属イオンを抽出した。なお、接触混合時には混合時の気液界面接触による酸化を防ぐため窒素により不活性雰囲気とした。次に、塩酸でpH1.0に調整し、食塩で塩素イオン濃度を50g/Lに調整した逆抽出液を用いて、50℃で、トリブチルフォスフェイト中の銅イオンを逆抽出した。その後、抽出後の抽出残液と逆抽出生成液のCu、Fe、Agを分析した。
その結果、抽出残液中の濃度はCu60g/L、Fe90g/L、Ag8mg/Lであり、逆抽出生成液中の濃度はCu28g/L、Fe5g/L、Ag1mg/L以下であった。これより、銀はトリブチルフォスフェイトに抽出されず、抽出残液に残り、銅と銀は殆ど完全に分離できることが分る。
還元生成液Dとして、Cu50g/L、Fe70g/Lの濃度の塩化第2銅、塩化第2鉄からなる合成水溶液に、食塩を添加して塩素イオン濃度を200g/Lとし、さらにこの液を60℃に加温し、鉄粉を投入してORP(Ag/AgCl電極規準)を275mVに調整した液を用いた。前記液を、室温にてトリブチルフォスフェイトと接触混合させ、トリブチルフォスフェイト中に金属イオンを抽出した。なお、接触混合時には混合時の気液界面接触による酸化を防ぐため窒素により不活性雰囲気とした。次に、塩酸でpH0.5に、食塩で塩素イオン濃度を100g/Lに調整した逆抽出液を用いて、30℃、40℃、60℃、75℃で、トリブチルフォスフェイト中の銅を逆抽出した。その後、Cuを分析して逆抽出率を求めた。結果を図11に示す。
図11より、温度を上げることにより逆抽出率は大きくなり、トリブチルフォスフェイト中の銅の50%以上を逆抽出するには、50℃以上が好ましいことが分る。
(4)銅電解採取工程
逆抽出生成液を、以下の隔膜電解槽を用いて電解採取に付し、電着銅と電解尾液を得て、評価した。
隔膜電解槽の構造は、図6に示すものである。ここで、陽極は、70mm×70mmの不溶性電極(商品名DSE、ペルメレック電極(株)製)で、また陰極は、60mm×65mmの純銅板である。陰極室と陽極室の間を、目が細かい通水度の低いテトロン製の濾布(通水度0.06L/m.s)を隔膜として用いて分離した。陰極室及び陽極室のそれぞれにオーバーフロー方式の排液口を設け、それぞれ別に排液できるようにした。そのとき、陰極室のオーバーフローレベルは陽極室のそれよりも若干高めとし、液面差を付けてその圧力で陽極室の塩素ガスや塩素ガスを含んだ液が陰極室に入り込まないようにした。
この電解槽の陰極室に、銅濃度80g/Lの塩化第1銅水溶液を2.5mL/minの給液量で供給し、一方陽極室には鉄濃度80g/Lの塩化第2鉄水溶液を供給した。このとき、陰極室に供給する塩化第1銅水溶液のORP(Ag/AgCl電極規準)は309mVであった。
電流を約1.2A流し、電流密度308A/mで銅電解採取を行った。このとき、電着した銅からの電流効率は93%であり、一般的な塩化第1銅の銅電解と同等の電流効率(85〜95%)が得られることが分る。また、10分間の陰極室への給液25.5mLに対して、陰極室からの排液量は25.2mLであり、陰極室液の回収率は99%となった。即ち、陰極室液が陽極室へ少量移動し、陽極室液の陰極室への流入は無いと判断できる。このときの陰極室廃液のORP(Ag/AgCl電極規準)は307mVであり、電着による銅イオンの消費以外は陰極室液の性状は殆ど変化がない。これより、陰極に供給した液の殆どを銅イオン量が減っただけの状態で回収することができ、陰極廃液は溶媒抽出の逆抽出液として好適である。
また、陽極給液である塩化第2鉄水溶液のORP(Ag/AgCl電極規準)は600mVであったが、陽極での酸化反応によって塩素ガスが発生し、陽極廃液のORP(Ag/AgCl電極規準)は900mV以上の強酸化液となった。これにより、陽極廃液と塩素ガスとを塩素浸出工程に循環することによって、より高い酸化力が得られる。
また、上記の銅電解採取工程で得られた電着銅の分析値の一例を、表7に示す。表7より、純度99.99重量%の不純物が少ない電着銅が得られることが分る。
Figure 0004352823
(5)浄液工程
溶媒抽出工程において、抽出残液には鉄の他に、2〜5g/Lの濃度の銅、0.5g/L程度の濃度のヒ素、アンチモン、ニッケル、亜鉛、鉛、及びカドミウム、さらに0.1g/L程度の濃度の銀等多くの随伴する有価金属が含まれており、鉄回収にとっては不純物となる。
これらの浄液処理方法として、硫化処理、セメンテーション処理、又は中和処理を用いた。抽出残液を50℃に加温し、各方法で1時間処理した。中和処理は、pH3になるように消石灰を添加して中和した。また、硫化処理は、pH0.5で水硫化ナトリウムの水溶液を不純物を硫化するのに必要な当量の2倍ないし5倍を添加した。セメンテーション処理は、鉄粉を添加してORPを調整し、pH1.4でORP(Ag/AgCl電極規準)−71mV、pH1.1でORP(Ag/AgCl電極規準)−250mVで処理した。各浄液処理方法での各元素の除去率の結果を、表8に示す。
Figure 0004352823
表8より、各浄液処理方法で不純物を効果的に除去できること分る。例えば、ヒ素又はアンチモンは中和で除去することができ、一方、鉛又はニッケルを除去するには硫化反応が適している。また、銀を回収するにはセメンテーション又は硫化が効果的である。なお、これらの処理は、銅精鉱に含まれる不純物に応じて使い分ければよいので、必ずしもすべての処理が必要であると言うことではない。
また、各処理方法を適宜使い分けることで不純物を選択的に分離し、有効利用又は処理に適した形態で回収することも可能である。
(6)鉄電解採取工程
浄液処理した鉄を含む精製液を用いて、鉄電解採取を行い、評価した。
電解槽は、容量500mLで、その内部に電極面積が60mm×60mmの不溶性陽極(商品名DSE、ペルメレック電極(株)製)1枚と、同じ面積になるようにマスキングした陰極(チタン板)2枚を距離が60mmになるように設置した。
電解液を毎分1mLあるいは毎分5mLの割合で、濾布で仕切られた陰極側にポンプで給液しながら、電流密度が200A/mとなるように通電して電解採取した。なお、給液した電解液は繰り返して使用せず、そのまま予備槽に貯留した。この場合、理論電着量は毎時1.5gとなるので、給液中の鉄イオンは、毎分1mLで給液したときは、毎時1.5gと理論電着量と同じで、毎分5mLで給液したときは、毎時7.5gと理論電着量の5倍供給されることになる。
5時間の通電後、カソード表面を洗浄して電着量を測定し電流効率を算出した。電流効率は、97%であった。
毎分1mLで給液した場合には、浴電圧は2.9Vとなって、陽極から塩素ガスの発生が目視で確認された。一方、毎分5mLで給液すると陽極からの塩素ガスの発生は観察されず、浴電圧も2.3Vまで低下した。即ち、本発明の電解方法によって、電力コストを低減できることが分る。
(7)浸出残渣処理工程
塩素浸出工程の浸出残渣から、元素状硫黄を分離し、貴金属を含む残滓を回収する蒸留を行った。塩素浸出工程で得られた浸出残渣から150gを分取し、これを石英製のボートに入れて管状炉中に挿入した。炉内には窒素ガスを流し、320℃になるように加熱した。ガスの流れ出る端部に冷却管を設け空冷した。加熱開始から4時間経過後にガスを流したまま電源を切り、炉内温度が概ね70℃以下となってから残渣と硫黄を取り出した。表9に、浸出残渣と脱硫黄後の残渣の化学分析値、及び硫黄の形態分析結果を示す。
Figure 0004352823
表9より、浸出残渣から硫黄が除去され、その分だけ金が濃縮されていることが分る。
以上より明らかなように、本発明の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法は、硫化銅鉱物を含む銅原料の湿式精錬法として利用され、原料中に含まれる硫黄の酸化を抑制しながら、銅を浸出して一価銅電解で回収する方法として、また同時に随伴する有価金属も回収し有効に活用する方法として、さらに浸出残渣などの廃棄物を可能な限り減少する方法等として有用であり、特に難浸出性の黄銅鉱の精錬に用いるのに適している。
本発明の精錬プロセス工程の一例を表す図である。 温度90℃で塩化物溶液中の第1鉄イオン濃度を変えた場合の銅の形態(Cu(1)/Cu(2):第1銅と第2銅の濃度比)とORP(Ag/AgCl電極規準)の関係を示す図である。 還元温度と粒子径を変えて還元処理を行ったときの還元温度、粒子径、ORP(Ag/AgCl電極規準)の関係を表す図である。 目標ORP(Ag/AgCl電極規準)400mVでの温度と粒子径(D50)の関係(回帰式)を示す図である。 目標ORP(Ag/AgCl電極規準)380mVでの温度と粒子径(D50)の関係(回帰式)を示す図である。 本発明で用いる電解槽の構造の一例を表す図である。 塩素浸出工程でのスラリー濃度と、銅と鉄浸出率及び硫黄酸化率の関係を表す図である。 塩素浸出工程での終液塩素イオン濃度と、銅と鉄浸出率及び硫黄酸化率の関係を表す図である。 溶媒抽出工程でのトリブチルフォスフェイト濃度と銅及び鉄抽出率の関係を表す図である。 溶媒抽出工程でのトリブチルフォスフェイト濃度とCu/Fe分離係数の関係を表す図である。 溶媒抽出工程での液温度と銅の逆抽出率の関係を表す図である。
符号の説明
1 塩素浸出工程
2 銅イオン還元処理工程
3 溶媒抽出工程
4 銅電解採取工程
5 浄液工程
6 鉄電解採取工程
7 浸出残渣処理工程
8 銅原料
9 電着銅
10 電着鉄
11 陰極室
12 陽極室
13 隔膜
14 陰極
15 陽極
16 陰極オーバーフロー口
17 陽極オーバーフロー口
18 陰極給液
19 陽極給液
20 陰極室液
21 陽極室液
22 陰極廃液
23 陽極廃液

Claims (22)

  1. 硫化銅鉱物を含む銅原料から、湿式精錬法で銅ととを回収する方法において、
    (1)前記銅原料を酸性塩化物水溶液中で塩素による浸出に付し、該液中に銅を溶出させ、銅イオンを含む浸出生成液と元素状硫黄を含む残渣とを形成する塩素浸出工程、
    (2)前記浸出生成液に還元剤を添加し、銅イオンを還元して第1銅イオンを含む還元生成液を得る銅イオン還元処理工程、
    (3)前記還元生成液を溶媒抽出に付し、銅を抽出した後、逆抽出して、第1銅イオンを含む逆抽出生成液と第1鉄イオンを含む抽出残液とを得る溶媒抽出工程、
    (4)前記逆抽出生成液を電解採取に付し、電着銅と電解尾液とを形成する銅電解採取工程、及び
    (5)前記抽出残液を電解採取に付し、電着鉄と塩化鉄水溶液からなる鉄電解尾液とを形成する鉄電解採取工程、を含むことを特徴とする硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  2. 塩素浸出工程において、塩素による浸出が塩素ガスの吹きこみによるものであることを特徴とする請求項1に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  3. 塩素浸出工程において、スラリー濃度が100〜400g/L、浸出温度が100〜110℃、酸化還元電位(Ag/AgCl電極規準)が500〜600mVであることを特徴とする請求項1に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  4. 塩素浸出工程において、塩素浸出の終了時点での浸出生成液の塩化物イオン濃度が、250〜400g/Lになるように、酸性塩化物水溶液中の塩化物イオン濃度を調整することを特徴とする請求項1に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  5. 銅イオン還元処理工程において、還元剤として硫化銅鉱物を用いることを特徴とする請求項1に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  6. 前記硫化銅鉱物を浸出生成液中で大気圧下加熱処理に付し、還元生成液と元素状硫黄を含む残渣を形成することを特徴とする請求項5に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  7. 前記硫化銅鉱物として平均粒子径(D50)が0.5〜60μmになるように調製された黄銅鉱を主鉱物とする銅精鉱を用いるとともに、前記浸出生成液の還元温度を90〜110℃の範囲でかつ下記の式1により算出される温度(A)以上に調整することを特徴とする請求項6に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
    式1:A(℃)=6.79×Ln(B)+81.5
    (式中、Bは、銅精鉱の体積頻度累積が50容量%に相当する平均粒子径(D50)を意味し、マイクロトラックを用いて測定された単位μmの数値である。)
  8. 前記硫化銅鉱物として平均粒子径(D50)が0.5〜60μmになるように調製された黄銅鉱を主鉱物とする銅精鉱を用いるとともに、前記浸出生成液の還元温度を90〜110℃の範囲でかつ下記の式2により算出される温度(A)以上に調整することを特徴とする請求項6に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
    式2:A(℃)=7.04×Ln(B)+95.2
    (式中、Bは、銅精鉱の体積頻度累積が50容量%に相当する平均粒子径(D50)を意味し、マイクロトラックを用いて測定された単位μmの数値である。)
  9. 前記残渣を銅原料として前記塩素浸出工程に送ることを特徴とする請求項6に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  10. 溶媒抽出工程において、溶媒抽出に用いられる有機溶媒が中性抽出剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  11. 前記有機溶媒中の中性抽出剤の濃度が、40容量%以上であることを特徴とする請求項10に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  12. 溶媒抽出工程において、逆抽出で用いられる水溶液は、銅濃度が70g/L以下、塩素イオン濃度が50〜350g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  13. 溶媒抽出工程において、逆抽出の温度が、40〜90℃であることを特徴とする請求項1に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  14. 銅電解採取工程において、陰極室、陽極室、及び前記両室を分離する隔膜から構成される電解槽を用いて、該陰極室に前記溶媒抽出工程からの第1銅イオンを含む逆抽出生成液を給液して銅を電析させ、かつ該陽極室に前記鉄電解採取工程からの塩化鉄水溶液からなる鉄電解尾液を給液して陽極酸化させるとともに、該陽極室への給液が隔膜を通じて該陰極室へ流入するのを防止することを特徴とする請求項1に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  15. 前記隔膜の通水度が、0.04〜0.15L/m.sであることを特徴とする請求項14に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  16. 前記電解槽は、給液と廃液が陰極室と陽極室のそれぞれで個別に行われ、かつ陰極室の液面レベルを陽極室のそれよりも高くする構造であることを特徴とする請求項14に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  17. 前記陰極室の廃液を溶媒抽出の逆抽出液として前記溶媒抽出工程へ戻すとともに、前記陽極室の廃液を浸出液として前記塩素浸出工程へ戻すことを特徴とする請求項14に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  18. 鉄電解採取工程において、濾布で仕切られた陽極室と陰極室から構成される電解槽内で、陽極室に陰極で析出する鉄量の2倍量以上の鉄イオンを供給して浴電圧を低下させて電解を行うことを特徴とする請求項1に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  19. 鉄電解採取工程に先立って、溶媒抽出工程で得られる抽出残液を浄液に付し、精製液と沈殿生成物とを形成する浄液工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  20. 前記浄液工程において、浄液が、硫化処理、セメンテーション処理、又は中和処理から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項19に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  21. さらに、塩素浸出工程で得られる元素状硫黄を含む残渣を、不活性雰囲気下で蒸留に付し、硫黄を揮発させ、凝縮された硫黄と随伴する貴金属を含む残滓とに分離する浸出残渣処理工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
  22. さらに、銅電解採取工程で得られる電着銅を陽極として、電解精製に付し、高純度の電気銅と銀含有スライムとに分離する銅電解精製工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の硫化銅鉱物を含む銅原料の精錬方法。
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