JP2009185274A - エポキシ組成物、エポキシ組成物の製造方法、硬化性樹脂組成物、および硬化物 - Google Patents

エポキシ組成物、エポキシ組成物の製造方法、硬化性樹脂組成物、および硬化物 Download PDF

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Abstract

【課題】熱安定性に優れるとともに低熱着色性のエポキシ組成物、及び該エポキシ組成物の製造方法の提供、さらに該エポキシ組成物を含有する硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供する。
【解決手段】シクロヘキセンカルボキシエステル構造を有する多価アルケンを酸価することによって得られる多価エポキシ化合物とタングステン化合物とからなり、且つ、タングステン元素含有量が0.1〜2000ppmであるエポキシ組成物、およびエポキシ組成物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱安定性に優れるとともに低熱着色性のエポキシ組成物および該エポキシ組成物の製造方法に関する。さらに、本発明は、該エポキシ組成物を含有する硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料、レジストなどの幅広い分野に利用されている。近年、特に半導体関連材料の分野においてはカメラ付き携帯電話、超薄型の液晶やプラズマTV、軽量ノート型パソコンなど軽・薄・短・小がキーワードとなるような電子機器があふれ、これによりエポキシ樹脂に代表されるパッケージ材料にも非常に高い特性が求められてきている。特に先端パッケージはその構造が複雑になり、液状封止でなくては封止が困難な物が増加している。例えばEnhancedBGAのようなキャビティーダウンタイプの構造になっているものは部分封止を行う必要があり、トランスファー成型では対応できない。このようなことから高機能な液状エポキシ樹脂の開発が求められている。
またコンポジット材、車の車体や船舶の構造材として、近年、その製造法の簡便さからRTMが使用されている。このような組成物においてはカーボンファイバー等への含浸のされやすさから低粘度のエポキシ樹脂が望まれている。
また、オプトエレクトロニクス関連分野、特に近年の高度情報化に伴い、膨大な情報を円滑に伝送、処理するために、従来の電気配線による信号伝送に変わり、光信号を生かした技術が開発されていく中で、光導波路、青色LED、および光半導体等の光学部品の分野においては透明性に優れた樹脂の開発が望まれている。
これらの要求に対し、脂環式のエポキシ樹脂が注目されている。具体的にはエポキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ樹脂群である。
従来、その様な脂環式エポキシ樹脂は過酸(過酢酸等)によるシクロヘキセン構造を有する化合物の酸化反応により製造されてきた。
しかしながら、一般に過酸は危険性の問題から取り扱いが困難であり、より安全な手法が検討されてきている。さらには過酸により生成するカルボン酸が同時に生成されるエポキシ基と反応することでエステル構造の不純物が生成するほか、高分子量重合体が数%生成してしまうという問題がある。このような問題を解決する方法の1つが過酸化水素水を用いたアルケンの酸化方法である。報告においては、一般にタングステンやモリブデン、砒素、チタンなどといった元素を含む触媒用いて製造される。
しかしながら、これらの報告はガスクロマトグラフィーにより、そのコンバージョンや選択率を計算にて算出しているものがほとんどであり、実際に取り出し、生成物の特性を評価した報告は少ない。これは反応により使用した金属触媒の残渣を除くことが非常に難しいということが要因の1つと考えられる。
また、これら報告においては単官能(たとえばシクロヘキセン)のエポキシ化合物の製造法に関するものがほとんどであり、多価アルケンについての検討はほとんどなされていない。エポキシ化合物は、一般に各種硬化剤、あるいは硬化触媒との組み合わせた組成物として、熱、あるいは光により硬化させて硬化物とすることで種々の用途に適応される。単官能だけでは硬化物が生成されない、あるいは重合しても直鎖の化合物となり、特に強度が必要な用途においては使用が困難である。したがって、現実には良好な硬化物を製造することのできる多価エポキシ化合物が必要とされており、多価アルケンの酸化が重要である。
一方、脂環式エポキシ樹脂は一般に170℃程度で熱分解が始まるといわれている。実際に市販されている脂環式エポキシ樹脂(ダウケミカル製 ERL−4221)を使用してDSC(示唆熱分析)を測定した場合、160℃付近から発熱ピークが立ち上がり、190〜220℃付近でピークトップを迎える発熱ピークが確認される。このことは本骨格のエポキシ樹脂を使用するにあたり、安全に取り扱うためには使用温度に制限がかかるということを示唆する。従って、脂環式エポキシ樹脂の熱安定性の向上が希求されている。
本発明は、熱安定性に優れるとともに低熱着色性のエポキシ組成物、及び該エポキシ組成物の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、該エポキシ組成物を含有する硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
本発明者らは、多価アルケンの酸化反応に利用した金属触媒の残渣量に着目し、該金属残渣が多価アルケンの酸化により得られたエポキシ樹脂中に多く含まれる程、加熱条件下(特に100℃以上)で放置した際の該エポキシ樹脂の色の変化が大きくなり、光学用途で使用に耐えられないものとなることを知見した。また、該残渣量を制御することによって脂環式エポキシ樹脂に代表される多価アルケンの熱安定性をも向上させること(その安全に取り扱うための使用温度範囲を拡大できること)を知見し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は下記の通りである。
(1) 多価エポキシ化合物とタングステン化合物とからなり、且つ、タングステン元素含有量が0.1〜2000ppmであることを特徴とするエポキシ組成物。
(2) 触媒としてのタングステン化合物の存在下、多価アルケンを酸化することによって得られることを特徴とする上記(1)記載のエポキシ組成物。
(3) 多価アルケンがシクロヘキセンカルボキシエステル構造を有する化合物またはシクロヘキセンメチルエステル構造を有する化合物であることを特徴とする上記(1)または(2)記載のエポキシ組成物。
(4) 多価アルケンが式(1)
Figure 2009185274
もしくは式(2)
Figure 2009185274
で表される構造を有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のエポキシ組成物。
(5) A)有機化され、且つ、タングステン原子を含有する塩を触媒として、多価アルケンと過酸化水素とを、該過酸化水素を含む溶液を水層とする水−有機層または水−反応基質層の2層系で反応させることによって、多価アルケンを酸化する工程、および、
B)工程A)の後、過酸化水素に塩基性化合物を添加して、該過酸化水素の酸化力を消失させる工程、を含むことを特徴とするエポキシ組成物の製造方法。
(6) 工程B)の後、エポキシ組成物中に残存するタングステン元素含有量が0.1〜2000ppmであることを特徴とする上記(5)記載のエポキシ組成物の製造方法。
(7) 多価アルケンがシクロヘキセンカルボキシエステル構造を有する化合物またはシクロヘキセンメチルエステル構造を有する化合物であることを特徴とする上記(5)または(6)記載のエポキシ組成物の製造方法。
(8) 多価アルケンが式(1)
Figure 2009185274
もしくは式(2)
Figure 2009185274
で表される構造を有することを特徴とする上記(5)〜(7)のいずれか一項に記載のエポキシ組成物の製造方法。
(9) 上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のエポキシ組成物を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
(10) 上記(9)記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
本発明によれば、熱安定性に優れると共に低熱着色性のエポキシ組成物を提供することができる。また、本発明のエポキシ組成物の製造方法によれば、優れた熱安定性、低熱着色性および低粘度の液状エポキシ組成物を提供することができる。
また、該エポキシ組成物を含む硬化性脂組成物は、電気・電子材料、成型材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジスト等の広範囲の用途に使用でき、特に低着色性であることから、光学材料に極めて有用である。
以下、本発明のエポキシ組成物およびその製造方法について説明する。
本発明のエポキシ組成物は、多価エポキシ化合物とまたはタングステン化合物とからなり、且つ、タングステン元素含有量が0.1〜2000ppmであることを特徴とする。
かかるエポキシ組成物は、触媒としてのタングステン化合物の存在下で多価アルケンを酸化するか、多価アルケンを酸化して得られた多価エポキシ化合物に別途タングステン化合物を添加することにより得ることができる。この際の触媒を残存させたり、別途所定量添加したりすることによって、組成物中のタングステン元素量を制御することにより、多価エポキシ化合物の熱安定性を向上させるとともに低熱着色性とすることができる。
多価アルケンとしては分子中に2つ以上の二重結合を有する化合物であれば特に限定はされないが、本発明では該二重結合が非共役結合である化合物が好ましく、該二重結合が2置換である化合物が更に好ましく、該二重結合がシクロ環中の二重結合である化合物が特に好ましい。該シクロ環中に二重結合を有する化合物としては、特に分子内にシクロヘキセン構造を有する化合物が好ましく、シクロヘキセンカルボキシエステル構造を有する化合物またはシクロヘキセンメチルエステル構造を有する化合物が特に好ましい。具体的な化合物としてはシクロヘキセンカルボン酸と2価以上の多価アルコールとのエステル化反応あるいはシクロヘキセンメタノールと2価以上の多価カルボン酸とのエステル化反応(Tetrahedron vol.36 p.2409 (1980)、Tetrahedron Letter p.4475 (1980))、あるいはシクロヘキセンアルデヒドのティシェンコ反応(特開2003-170059、特開2004-262871)、さらにはシクロヘキセンカルボン酸エステルのエステル交換反応(特開2006-052187)によっても製造できる。
2価以上の多価アルコールとしては、アルコール性水酸基を2つ以上有する化合物であれば特に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのジオール類、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2−ヒドロキシメチル−1,4−ブタンジオールなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどのテトラオール類などが挙げられる。
また、2価以上の多価カルボン酸としては、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸などが挙げられる。
本発明における多価アルケンとしては、下記式(1)
Figure 2009185274
もしくは式(2)
Figure 2009185274
で表される構造の化合物が、得られる硬化物の耐熱性及び強靭性の点から特に好ましい。
多価アルケンの酸化方法としては過酢酸等の過酸で酸化する方法、過酸化水素水で酸化する方法、空気(酸素)で酸化する方法などが挙げられるが、これらに限らない。本発明では、特に、タングステン化合物の含有がキーとなることから、多価アルケンの酸化反応中に触媒としてタングステン原子を含むヘテロポリ酸類(以下、単に「ヘテロポリ酸類」という)を使用する手法が好ましく、その簡便さから過酸化水素水を使用するエポキシ化を用いることが好ましい。
この過酸化水素水によるエポキシ化の手法においては種々の手法が適応できるが、具体的には、特開昭59−108793号公報、特開昭62−234550号公報、特開平5−213919号公報、特開平11−349579号公報、特公平1―33471号公報、特開2001−17864号公報、特公平3−57102号公報等に挙げられるような手法が適応できる。本発明において特に以下に挙げる手法を用いることが好ましい。
具体的な手法としては、原料である多価アルケンとヘテロポリ酸類触媒を、過酸化水素水(水層)および有機溶剤(有機層)の水−有機層の2層系中で撹拌し、分液、必要に応じて精製を行い、得られる有機層を濃縮することにより目的とするエポキシ組成物を得る。また、この際、有機溶剤を使用せずに水−反応基質の2層系としてもよい。
反応に使用する具体的なヘテロポリ酸類触媒としては、一般に、タングステン酸、12−タングスト燐酸、12−タングストホウ酸、18−タングスト燐酸、12−タングストケイ酸などのタングステン系の酸、およびその塩が挙げられる。本発明では、特に、転化率の面からタングステン系の酸塩の使用が好ましい。
タングステン系の酸塩のカウンターカチオンとしては4級アンモニウムイオン、アルカリ土類金属イオン、アルカリ金属イオンなどが挙げられる。
具体的にはテトラメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリエチルアンモニウムイオン、トリデカニルメチルアンモニウムイオン、ジラウリルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、トリアルキルメチル(オクチル基とデカニル基の混合タイプ)アンモニウムイオン、トリヘキサデシルメチルアンモニウムイオン、トリメチルステアリルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリブチルアンモニウムイオン、トリカプリルメチルアンモニウムイオン、ジセチルジメチルアンモニウムイオンなどの4級アンモニウムイオン、カルシウムイオンマグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属イオンなどが挙げられるがこれらに限定されない。
本発明においては特に4級アンモニウムイオンとの塩が好ましい。
また、特にこれらタングステン系の酸を有機化した触媒を使用することが望ましく、特にエポキシ樹脂との相溶性に優れるように有機化されたものが望ましい。有機化とは有機溶剤に溶解する(可溶な)形、好ましくは芳香族炭化水素化合物に溶解する(可溶な)形とするという意味である。有機化された触媒は、転化率の面で好ましい。
有機化の具体的な手法としては、タングステン系の酸(あるいはその塩)と4級アンモニウム塩の反応により触媒を製造する方法が挙げられる。この際、使用する4級アンモニウム塩はHLB値が3〜6の物が好ましく、より好ましくは3.5〜5.5、特に好ましくは3.5〜4.5である。
ここでHLBとは界面活性剤の親水基と疎水基のバランスを表す数値であり、一般的にはGriffinが提唱した次式で表される。
HLB値=20×MH/M (MH:親水基部分の分子量、M:分子量)
本発明では、特に鎖状アルキルアミンの4級塩が好ましく、具体的には、トリデカニルメチルアンモニウム塩(HLB 約3.2)、ジラウリルジメチルアンモニウム塩(HLB 約3.8)、トリオクチルメチルアンモニウム塩(HLB 約4.0)、トリアルキルメチル(オクチル基とデカニル基の混合タイプ)アンモニウム塩(HLB 約3.7)、トリヘキサデシルメチルアンモニウム塩(HLB 約5.1)、トリメチルステアリルアンモニウム塩(HLB 約4.7)、テトラペンチルアンモニウム塩(HLB 約4.9)、セチルトリメチルアンモニウム塩(HLB 約5.1)、ベンジルトリブチルアンモニウム塩(HLB 約5.1)、トリカプリルメチルアンモニウム塩、ジセチルジメチルアンモニウム塩などが挙げられるがこれらに限定されない。特にジラウリルジメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、トリアルキルメチル(オクチル基とデカニル基の混合タイプ)アンモニウム塩が好ましい。
またこれらの塩のアニオン種に特に限定はなく、具体的にはハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、アセテートイオン、炭酸イオン等が挙げられるが、これらに限定されない。
HLB値が3を下回ると疎水性が強くなりすぎて、できた触媒の有機層への溶解性が悪くなり、HLB値が6を超えると親水性が強くなり、同じく触媒の有機層への相溶性が悪くなり、好ましくない。
タングステン系の酸と4級アンモニウム塩との反応は水、もしくは水−有機層の2層系で行うことが好ましい。また、特にタングステン系の酸はそのpHによって構造が変化することが知られており、水層のpHを2〜6の間に調整することが好ましい。水層のpHを調整する方法としては緩衝液が使用でき、燐酸系や酒石酸系など種々のものが使用できるがpHの調整ができればよく、一般的に使用されるような緩衝液が利用できる。本製法では特にそのpH調整の簡便さ、リン原子の金属塩への相性の良さから燐酸系の緩衝液を使用することが好ましい。
具体的にはタングステン系の酸を溶解した水溶液を攪拌しながら、4級アンモニウム塩を添加する。反応の進行が遅い場合は加熱(40〜90℃)すると反応は進行しやすい。生成する有機化されたタングステン系の触媒は水層より析出する。析出した塩をろ過、あるいは有機溶剤で抽出、分液することで目的とするタングステン系の触媒が得られる。その形状としては結晶状の物もあれば樹脂状のものもあり、様々である。
またこの際、工程の簡略化のために、得られる触媒を単離せずそのまま多価アルケン等を加え、酸化反応(エポキシ化反応)を行っても構わない。
ここで得られるタングステン系触媒の構造は明確ではないが、タングステン酸類のカウンターカチオンとしてプロトン、4級アンモニウムカチオン、pH調整に使用した緩衝液の金属イオンが関与するような骨格となる。
本反応では、過酸化水素を用いてエポキシ化を行う。特にその反応系中において過酸化水素濃度が30重量%以下であることが好ましい。この濃度が30重量%を超える場合、生成するエポキシ化合物の分解反応も進行しやすくなることから好ましくない。
反応に際して、触媒の使用量は多価アルケン中の二重結合1モルに対して、触媒中のタングステン原子が通常1〜20ミリモル、好ましくは2〜15ミリモル、特に好ましくは2.5〜10ミリモルである。また過酸化水素(水)の使用量は、多価アルケン中の二重結合1モルに対して、過酸化水素が通常1.01〜1.11モルである。
本反応においてはpH調整用に燐酸−燐酸塩水溶液を好ましく用いる。そのpHとしては反応に使用する過酸化水素が混合された段階でpH2〜6の間に調整されることが好ましく、より好ましくはpH3〜5である。pH2未満の場合、エポキシ基の加水分解反応、重合反応が進行しやすくなる。またpH6を超えると、反応が極度に遅くなり、反応時間が長すぎるという問題が生じる。尚、本反応においては過剰の酸(過酸化水素水)の中に燐酸−燐酸塩が添加されるため、その緩衝作用は無いものと考えられる。
使用する燐酸−燐酸塩水溶液は使用する過酸化水素に対し、0.1〜10モル当量の燐酸(あるいは燐酸二水素ナトリウム等の燐酸塩)を使用し、塩基性化合物(たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等)でpH調整を行うという方法が挙げられるがこれに限らない。ここでpHは過酸化水素を添加した際に前述のpHになるように添加することが好ましい。このようなpHに調整するための燐酸−燐酸塩水溶液のpHの範囲は3.5〜6.5、好ましくは4.0〜6.0である。また燐酸塩の濃度は0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。
本反応は有機溶剤を使用しても構わない。使用する有機溶剤の量としては、反応基質である多価アルケン1に対し、重量比で0.3〜10であり、好ましくは0.3〜5、より好ましくは0.5〜2.5である。重量比で10を超える場合、反応の進行が極度に遅くなることから好ましくない。使用できる有機溶剤の具体的な例としてはヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等のアルカン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類等が挙げられる。また、場合によっては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、アノン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、蟻酸メチルなどのエステル化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物なども使用可能である。
具体的な反応操作方法としては、例えばバッチ式の反応釜で反応を行う際は、多価アルケン化合物、過酸化水素、タングステン系の触媒、pH調整溶液、必要に応じて有機溶剤を加え、二層で撹拌する。過酸化水素は添加時に発熱する場合が多いことから、各成分を添加した後に徐々に添加する方法でも構わない。
またタングステン系の触媒は予め作成したものを添加しても、反応系中で作成した後、そのまま反応に使用してもよい。
反応温度は特に限定されないが0〜90℃が好ましく、さらに好ましくは0〜75℃、特に15℃〜75℃が好ましい。水溶液中の酸性度が高い場合、具体的にはpHが4.0以下、さらに3.0以下である場合、反応温度は60℃以下であることが好ましい。
また反応時間は反応温度、触媒量等にもよるが、工業生産という観点から、長時間の反応は多大なエネルギーを消費することになるため好ましくはない。好ましい範囲としては1〜100時間、好ましくは3〜72時間、さらに好ましくは5〜48時間である。
反応終了後、過剰な過酸化水素の酸化力を消失させる目的で、クエンチ処理を行う。過酸化水素のクエンチの手法としては、還元剤の使用ができる他、塩基性化合物によりクエンチを行っても構わない。本発明では、塩基性化合物によりクエンチを行なうことが好ましい。塩基性化合物によってクエンチを行なうことで、大部分の過酸化水素が中和し、触媒であるヘテロポリ酸塩類の残存量を大幅に低減できる。更に前記工程を行って残存する微量の過酸化水素または過酸化物は、還元剤で失活可能である。したがって、還元剤と塩基性化合物を併用することも好ましい。
還元剤としては亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドラジン、シュウ酸などが挙げられる。還元剤の使用量としては過剰分の過酸化水素のモル数に対し、通常0.01〜20倍モル、より好ましくは0.05〜10倍モル、さらに好ましくは0.05〜3倍モルである。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムなどのリン酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のカルボン酸塩、協和化学工業製キョーワード500のような複合金属塩、イオン交換樹脂、アルミナ等の塩基性固体が挙げられる。
その使用量としては水、あるいは有機溶剤(例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類など、各種溶剤)に溶解するものであれば、その使用量は過剰分の過酸化水素のモル数に対し、通常0.01〜20倍モル、より好ましくは0.05〜10倍モル、さらに好ましくは0.05〜3倍モルである。これらは水、あるいは有機溶剤(前述)の溶液として添加しても単体で添加しても構わない。
水や有機溶剤に溶解しない固体塩基を使用する場合、系中に残存する過酸化水素の量に対し、重量比で1〜1000倍の量を使用することが好ましい。より好ましくは10〜500倍、さらに好ましくは10〜300倍である。水や有機溶剤に溶解しない固体塩基を使用する場合は、後に記載する水層と有機層の分離の後、処理を行っても構わない。
一概には言えないが、塩基性が強いほど最終的なタングステン量を減らすことができる傾向が見られる。また塩基性化合物の濃度が濃い方が、効果が見られる傾向にある。ただし、多価アルケンがエステル構造を分子内に有する場合、pHが12を超える、あるいは加温するといったような操作は加水分解を進行させるため好ましくない。これら条件は多価アルケンの構造により適宜検討する必要がある。
過酸化水素のクエンチ後(もしくはクエンチを行う前に)、有機層と水層を分離する。この際、有機層と水層が分離しない、もしくは有機溶剤を使用していない場合は前述の有機溶剤を添加して操作を行い、水層より反応生成物の抽出を行う。この際使用する有機溶剤は得られる原料多価アルケン化合物に対し、重量比で0.5〜10倍、好ましくは0.5〜5倍である。この操作を必要により数回繰り返した後分離した有機層を、必要に応じて水洗して精製する。
得られた有機層は必要に応じてイオン交換樹脂や金属酸化物で処理を行う。本発明においては特に金属酸化物を使用するのが好ましく、その具体例としてはMgO、CaO、SrO、BaO、BeO、ZnO、CeO、Ce、Al、TiO、Ti、TiO、TiO、Ti、SiO、ZrO、FeO、Fe、Fe、ZrO、NiO、CoO、Co、CuO、CuO、AgO、AgO、TiO−Al、TiO−SiO、TiO−ZrO、TiO−MgO、TiO−Al、TiO−WO、TiO−MoO、ZnO−SiO、Al−SiO、Al−ZrO、SiO−MgO、SiO−WO、SiO−ZrO、シャバサイト、エリオナイト、オフレタイト、モルデナイト、フェリエライト、クライノタイロライト、アナルサイム、カンクリナイト、ジスモンディン、グメリナイト、ローモンタイト、リュウサイト、スコレサイト、ソーダライト、トムソナイト、フィリップサイト、ハーモトーム、メルリノイト、アミサイト、ガローナイト、ポーリンジャイト、ユガワラライト、レビナイト、マッザイト、ホージャサイト、ナトロライト、メソライト、トムソナイト、ゴンナルダイト、エディングトナイト、ダッキャルダイト、エピスティルバイト、ピキタイト、ヒューランダイト、クリノプチロライト、スティルバイト、ステレライト、バレライト、バリューステライト、カウレサイト、ワイラカイト、ポルーサイト、アシュクロフィン、モレキュラシーブス、モンモリロナイト、ハロイサルト、アタパルジェイド、セピオライト、アロフェン、酸性白土、活性白土、ケイソウ土などの1種または2種以上の混合物が挙げられる。これらの金属酸化物は天然物または合成物のいずれでも良い。本発明においてはメソポーラス体やその活性体(例えば活性SiO等)が好ましい。金属酸化物による処理は有機溶剤中に残存する触媒の量を低減するのに効果がある。得られた有機層より溶剤を留去することで目的とするエポキシ化合物を得ることができる。場合によってはさらに蒸留により精製しても構わない。蒸留方法としては薄膜、回転式分子蒸留等が挙げられる。
このようにして得られるエポキシ化合物にヘテロポリ酸類触媒を残存させることで本発明のエポキシ組成物となる。先に具体例として記載した製法であれば反応にヘテロポリ酸系の塩を使用するため、そのまま残存させることで敢えて添加しなくても構わない。一方、過酢酸のような過酸で酸化する場合はタングステン化合物の添加が別途必要となる。添加するタングステン化合物としては、タングステン酸、12−タングスト燐酸、12−タングストホウ酸、18−タングスト燐酸、12−タングストケイ酸などのタングステン系の酸、およびその塩等であってもよい。
残存させる量あるいは添加量としては、エポキシ組成物中、タングステン元素含有量として0.1〜2000ppmであり、より好ましくは0.2〜1500ppm、更に好ましくは0.2〜1000ppmであり、最も好ましい範囲としては0.2〜500pmである。エポキシ組成物中のタングステン元素含有量が0.1ppmよりも少量である場合には、熱安定性の向上効果がほとんど見られない。一方、2000ppmを超える場合には、加熱条件での着色が激しくなる。例えば上記式(1)のエポキシ化合物を150℃で空気中に放置した場合、5分程度で着色が始まり、オレンジ色、褐色へ変化していく。タングステン量が2000ppm以下、特に1500ppm以下であればこの変化が少ない。
本発明におけるエポキシ組成物中のタングステン元素含有量は、エポキシ組成物を灰化法(JISK4101:1993)に準じて処理したものを、特開2001−217000に記載のようにアルカリ処理と塩酸処理をした後、発光分光分析法にて測定した含有量を意味する。
尚、多価アルケンをヘテロポリ酸類を触媒として酸化する上記製法により製造した場合には、得られた有機層から溶剤を留去することで目的とするエポキシ組成物を得ることができる。なお、得られたエポキシ組成物のタングステン量が2000ppmを超える場合、前述のようにイオン交換樹脂や金属酸化物で処理を行うことが好ましい。
一方、多価アルケンを、ヘテロポリ酸類を触媒として酸化する上記製法により製造した場合、得られるエポキシ組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定すると、目的とするエポキシ化合物に由来するピークが約90面積%以上、好ましい条件下で製造されたものは92面積%以上の濃度で検出される。公知の過酢酸で酸化して得られたエポキシ樹脂の場合、酸化の際に樹脂自身が部分的に重合してしまうため、高分子量物が増加し、目的とする化合物の純度が80〜88%程度となる。
また、上記製法により得られるエポキシ組成物につきガスクロマトグラフィー(カラム:島津製作所製 HP−5)にてジエポキシ体のピーク濃度とモノエポキシ体のピーク濃度の合計に対するモノエポキシ体のピーク濃度(面積比)を計算すると通常10%以下であり、好ましい条件下で得られたものにおいては7%、さらに好ましい条件下で得られたものにおいては5%となる。
さらにその粘度は一般に製造現場で使用されている過酢酸で製造したエポキシ化合物と比較しても小さくなる。具体的には上記式(1)の化合物のエポキシ化物は市販品(ダウケミカル社製 ERL−4221 成分分析よりアセチル体が検出されていることから過酢酸を使用していることが判る)と比較した場合、市販品が約450mPa・s(E型粘度計 25℃)であるのに対し、上記製法で合成された同骨格のエポキシ化合物はその粘度が約240mPa・sと大幅に低い。
上記のようにして得られるエポキシ組成物は、例えばエポキシアクリレートおよびその誘導体、オキサゾリドン系化合物、環状カーボネート化合物等の各種樹脂原料として使用できる。
以下、本発明のエポキシ組成物を含む、本発明の硬化性樹脂組成物について記載する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明のエポキシ組成物を必須成分として含有する。本発明の硬化性樹脂組成物においては、硬化剤による熱硬化(硬化性樹脂組成物A)と酸を硬化触媒とするカチオン硬化(硬化性樹脂組成物B)の二種の方法が適応できる。
硬化性樹脂組成物Aと硬化性組樹脂成物Bにおいて、本発明のエポキシ組成物は単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。併用する場合、本発明のエポキシ組成物の、本発明のエポキシ組成物と他のエポキシ樹脂との合計重量に対する割合は、30重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましい。ただし、本発明のエポキシ組成物を硬化性樹脂組成物の改質剤として使用する場合は、1〜30重量%の割合で添加することが望ましい。
本発明のエポキシ組成物と併用できる他のエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類またはアルコール類から誘導される、それらのグリシジルエーテル化物;脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
以下それぞれの硬化性樹脂組成物について説明する。なお、以下において、本発明のエポキシ組成物と、必要により併用する他のエポキシ樹脂とを合わせて「全エポキシ樹脂」という。
(1)硬化剤による熱硬化(硬化性樹脂組成物A)
本発明の硬化性樹脂組成物Aが含有する硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。用いうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノール樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体、テルペンとフェノール類の縮合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物Aにおいて、硬化剤の使用量は、硬化性樹脂組成物A中に含まれる全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない懸念がある。
本発明の硬化性樹脂組成物Aにおいては、硬化剤とともに硬化促進剤を併用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤を用いる場合は、硬化性樹脂組成物A中に含まれる全エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
本発明の硬化性樹脂組成物Aには、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量は、リン含有化合物/硬化性樹脂組成物A中に含まれる全エポキシ樹脂=0.1〜0.6(重量比)が好ましい。0.1未満では難燃性が不十分であり、0.6を超えると硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす懸念がある。
さらに本発明の硬化性樹脂組成物Aには、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、樹脂成分100重量部に対して通常0.05〜50重量部、好ましくは0.05〜20重量部が必要に応じて用いられる。
本発明の硬化性樹脂組成物Aには、必要に応じて無機充填剤を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物A中において0〜95重量%を占める量が用いられる。更に本発明の硬化性樹脂組成物Aには、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、顔料等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物Aは、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の硬化性樹脂組成物Aは従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば本発明のエポキシ組成物と硬化剤並びに必要により硬化触媒、リン含有化合物、バインダー樹脂、無機充填剤及び配合剤とを必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合して硬化性樹脂組成物を得、その硬化性樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファー成型機などを用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することにより本発明の硬化物を得ることができる。
また本発明の硬化性樹脂組成物Aをトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、硬化性樹脂組成物ワニスとし、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明の硬化性樹脂組成物Aの硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物Aと該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。また液状組成物のままRTM方式でカーボン繊維を含有するエポキシ樹脂硬化物を得ることもできる。
また、本発明の硬化性樹脂組成物Aをフィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的にはBステージにおけるフレキ性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物Aを前記硬化性樹脂組成物ワニスとして剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去した後、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得られる。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することが出来る。
更に、本発明の硬化性樹脂組成物Aは、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される一般の用途に用いることができ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止材の他、封止材、基板用のシアネート樹脂組成物や、レジスト用硬化剤としてアクリル酸エステル系樹脂等、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
封止剤としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSIなど用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TABなど用のといったポッティング封止、フリップチップなどの用のアンダーフィル、QFP、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)などを挙げることができる。
(2)酸性硬化触媒によるカチオン硬化(硬化性樹脂組成物B)
本発明の硬化性樹脂組成物を酸性硬化触媒で硬化させる場合には、本発明の硬化性樹脂組成物には、光重合開始剤あるいは熱重合開始剤を含有させる。さらに、硬化性樹脂組成物Bは、必要に応じて、希釈剤、重合性モノマー、重合性オリゴマー、重合開始補助剤、光増感剤、無機充填剤、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、シランカップリング材、離型剤、各種熱硬化性樹脂等の各種公知の化合物、材料等を含有していてもよい。
更に、本発明の硬化性樹脂組成物Bが必要に応じて含有する無機充填剤及び離型剤の具体例としては、硬化性樹脂組成物Aと同様なもの等が挙げられる。
硬化性樹脂組成物Bでは、カチオン重合が好ましく、光カチオン重合が特に好ましい。カチオンの触媒(以下、単に「光カチオン重合開始剤」という)としてはヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩が挙げられ、これらは単独または2種以上で使用することができる。該光カチオン重合開始剤の使用量は、硬化性樹脂組成物B中に含まれる全エポキシ樹脂100重量部に対して、好ましくは、0.01〜50重量部であり、より好ましくは、0.1〜10重量部である。
さらに、これらの光カチオン重合開始剤と公知の重合開始補助剤および光増感剤の1種または2種以上を同時に使用することが可能である。重合開始補助剤の例としては、例えば、ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノールプロパン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−イソプロピルチオキサトン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、アセトフェノンジメチルケタール、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤等の重合開始補助剤の使用量は、光ラジカル重合可能な成分100重量部に対して、0.01〜30重量部であり、好ましくは0.1〜10重量部である。
光増感剤の具体例としては、アントラセン、2−イソプロピルチオキサトン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、アクリジン オレンジ、アクリジン イエロー、ホスフィンR、ベンゾフラビン、セトフラビンT、ペリレン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等を挙げることができる。光増感剤の使用量は、硬化性樹脂組成物B中に含まれるエポキシ樹脂成分100重量部に対して、0.01〜30重量部であり、好ましくは0.1〜10重量部である。
本発明の硬化性樹脂組成物Bは、各成分を均一に混合することにより得られる。またポリエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、γブチロラクトン等の有機溶剤に溶解させて均一とした後、乾燥により溶剤を除去して使用することも可能である。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物Bと該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。本発明の硬化性樹脂組成物Bは紫外線照射することにより硬化できるが、その紫外線照射量については、硬化性樹脂組成物の組成等により変化するため、それぞれの硬化条件によって決定される。紫外線照射量は、具体的には、硬化性樹脂組成物Bが硬化する照射量であれば良く、硬化物の接着強度が良好である硬化条件を満たしていれば良い。この硬化の際、光が細部まで透過することが必要であることから、本発明のエポキシ組成物および硬化性樹脂組成物Bは透明性の高いものが望まれる。また、これらエポキシ樹脂系の光硬化では光照射のみでは完全に硬化することが難しく、耐熱性が求められる用途においては光照射後に加熱により完全に硬化を終了させる必要がある。
前記、光照射後の加熱は、通常の硬化性樹脂組成物Bの硬化温度域で良い。例えば常温〜150℃で30分〜7日間の範囲が好適である。硬化性樹脂組成物Bの配合により変化するが、特に高い温度域であればあるほど光照射後の硬化促進に効果があり、短時間の熱処理で効果がある。このような熱アフターキュアすることで、エージング処理になるという効果も出る。
また、これら硬化性樹脂組成物Bを硬化させて得られる硬化物の形状も用途に応じて種々とりうるので特に限定されないが、例えばフィルム状、シート状、バルク状などの形状とすることもできる。成形する方法は適応する部位、部材によって異なるが、例えば、キャスト法、注型法、スクリーン印刷法、スピンコート法、スプレー法、転写法、ディスペンサー方式などの成形方法を適用することができるなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。成形型は研磨ガラス、硬質ステンレス研磨板、ポリカーボネート板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリメチルメタクリレート板等を適用することができる。また、成形型との離型性を向上させるためポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム等を適用することができる。
例えばカチオン硬化性のレジストに使用する際の方法としては、まず、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、γブチロラクトン等の有機溶剤に溶解させた光カチオン性の本発明の硬化成樹脂組成物Bを、銅張積層板、セラミック基板またはガラス基板等の基板上に、スクリーン印刷、スピンコート法などの手法によって、5〜160μmの膜厚で塗布し塗膜を形成する。そして、該塗膜を60〜110℃で予備乾燥させた後、所望のパターンの描かれたネガフィルムを通して紫外線(例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、レーザー光等)を照射し、ついで、70〜120℃で露光後ベーク処理を行う。その後、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等の溶剤で未露光部分を溶解除去(現像)した後、さらに必要があれば紫外線の照射及び/または加熱(例えば100〜200℃で0.5〜3時間)によって十分な硬化を行い、硬化物を得る。このようにしてプリント配線板を得ることも可能である。
本発明の硬化性樹脂組成物Aおよび硬化性樹脂組成物Bを硬化してなる硬化物は、光学部品材料をはじめ各種用途に使用できる。光学用材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。より具体的には、ランプタイプ、SMDタイプ等のLED用封止材の他、以下のようなものが挙げられる。液晶ディスプレイ分野における基板材料、導光板、プリズムシート、偏光板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料である。また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止材、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またLED表示装置に使用されるLEDのモールド材、LEDの封止材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏光板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤である。光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止材、接着剤などである。
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部である。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーである。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止材、接着剤などである。光センシング機器のレンズ用材料、封止材、接着剤、フィルムなどである。光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止材、接着剤などである。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止材、接着剤などである。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LEDの封止材、CCDの封止材、接着剤などである。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤などである。光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーである。半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料である。自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品である。また、鉄道車輌用の複層ガラスである。また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コートである。建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料である。農業用では、ハウス被覆用フィルムである。次世代の光・電子機能有機材料としては、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤などである。
光学用材料の他の用途としては、硬化性樹脂組成物Aが使用される一般の用途が挙げられ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止剤の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
封止剤としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSIなど用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TABなど用のといったポッティング封止、フリップチップなどの用のアンダーフィル、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィル)などを挙げることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物Aおよび硬化性樹脂組成物Bは、光半導体装置にも適用することが可能である。かかる半導体装置は、光半導体素子(光半導体チップ)を封止することによって製造することができる。その封止法としてはキャスティングやポッティングあるいは印刷等の方法で光半導体素子を封止する封止樹脂を成形(注型及び硬化)する方法が採用できる。成形条件は従来から行われている硬化性樹脂組成物による半導体素子の封止成形における成形条件をそのまま採用することができ、本発明の硬化性樹脂組成物Aおよび硬化性樹脂組成物Bの組成等により適宜設定すればよい。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において「部」は特に断わりのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また実施例において、各物性値は下記のようにして測定した。
1)エポキシ当量:JIS K−7236に準じて測定。
2)粘度:25℃においてE型粘度計を使用して測定。
3)ガスクロマトグフィー:
カラム ; HP-5MS 15m-0.25mm-0.25μm
キャリアガス ; ヘリウム 1.0mL/min. (constant flow mode)
オーブン ; 100℃−15℃/min.−300℃(15min.保持)
インジェクション; 1μL,split比 50:1,300℃
イオン化方法 ; EI(EIイオン源)
測定サンプル ; 有機層より0.2mLのサンプルをとり、5mLのトルエンで希釈。
4)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
カラム ; showdex KF-801、KF-802、KF-802.5、KF-803
カラム温度 ; 40℃
溶剤 ; テトラヒドロキシフラン(THF)
流量 ; 1.0ml/min
測定サンプル ; 有機層より0.2mLのサンプルをとり、10mLのTHFで希釈。
合成例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら水60部、12−タングスト燐酸1.7部を加え室温で溶解後、燐酸2.8部を加え、pH1に設定した後、水酸化カリウムでpHが5に調整した。ここにトリアルキルメチルアンモニウムクロライド(前記アルキルがオクチルものとデカニルのものの混合体、東京化成工業株式会社製 商品名;トリオクチルメチルアンモニウムクロライド)2.8部を加え、50℃に昇温し、30分激しく攪拌した。攪拌終了後、水面に白色の析出物が浮いていることを確認した。ここにトルエン300部を加え、析出物を溶解した。次いで水層を分離し、得られた有機層をロータリーエバポレータで溶剤を留去することで、本発明で使用するタングステン酸系触媒(cat−1)を4.0部得た。得られた触媒は淡黄色半固形物質であった。
実施例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら水12部、燐酸0.56部を加え、炭酸ナトリウムを用いて、pHを5.5に調整した。さらにトルエン30部、上記式(1)の化合物22部、タングステン酸系触媒(cat−1)0.5部を加え、攪拌することで2層系の懸濁液とした。この溶液を50℃に昇温し、激しく攪拌しながら、30重量%過酸化水素水24.8部を加えた。反応系中のpHを測定したところpHは4.0であった。そのまま50℃で12時間攪拌した。
室温まで冷却後、反応系中に含まれるタングステン含有量を測定したところ、有機層に5800ppm、水層に75ppm含まれていることが確認され、本発明に使用しているタングステン系触媒は有機層に存在することが明らかである。また反応終了後の基質のコンバージョンは>99%、うちモノエポキシ体3%、ジエポキシ体95%、水付加体2%(ガスクロマトグフィーにて確認)であり、GPCによる本体純度測定を行ったところ97%であることが分かった。次いで1重量%水酸化ナトリウム水溶液20部、20重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液10部を加え1時間攪拌を行い、静置した。2層に分離した有機層を取り出し、更に得られた水層に30部のトルエンを加え、水層中の有機物を抽出した。これをさらに2回繰り返し、得られた有機層を混合した。ここにシリカゲル60部を加え、室温で1時間攪拌後、ろ過、さらに残渣シリカをトルエン50部で洗浄後、ロータリーエバポレータを用い、有機溶剤を留去することで、目的とするエポキシ組成物(EP1)22部を得た。得られたエポキシ組成物は無色であり、エポキシ当量は138g/eq.、粘度は244mPa・sであった。また残存するタングステンの量(灰化法)は1200ppmであった。
実施例2
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら水12部、12−タングスト燐酸0.38部、燐酸0.56部、炭酸ナトリウムを加え、pHを5.0に調整した。更にトリオクチルメチルアンモニウムアセテート0.6部(ライオン・アクゾ製 トリオクチルメチルアンモニウムアセテートのキシレン溶液から溶剤を除去したもの。)を加え、タングステン酸系触媒を精製させた後、トルエン35部を加え溶解、2層系溶液とし、激しく室温で1時間攪拌をする。
攪拌終了後、上記式(1)の化合物22部を加え、さらに再度攪拌することで2層系の懸濁液とした。この溶液を70℃に昇温し、激しく攪拌しながら、30重量%過酸化水素水24.8部を加えた。反応系中のpHを測定したところpHは4.0であった。そのまま70℃で5時間攪拌した。反応終了後の基質のコンバージョンは>99%、うちモノエポキシ体5%、ジエポキシ体95%、水付加体<1%(ガスクロマトグフィーにて確認)であり、GPCによる本体純度測定を行ったところ96%であることが分かった。室温まで冷却後、反応系中に含まれるタングステン含有量を測定したところ、有機層に4900ppm、水層に120ppm含まれていることが確認され、本発明に使用しているタングステン系触媒は有機層に存在することが明らかである(以下の実施例においても同様の方法により、有機層にタングステン系触媒が存在することを確認した)。
ついで1重量%水酸化ナトリウム水溶液20部、20重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液10部を加え1時間攪拌を行い、静置した。2層に分離した有機層を取り出し、更に得られた水層に30部のトルエンを加え、水層中の有機物を抽出した。これをさらに2回繰り返し、得られた有機層を混合した。ここにシリカゲル60部を加え、室温で1時間攪拌後、ろ過、さらに残渣シリカゲルをトルエン50部で洗浄後、ロータリーエバポレータを用い、有機溶剤を留去することで、目的とするエポキシ組成物(EP2)21部を得た。得られたエポキシ組成物は淡黄色であり、エポキシ当量は140g/eq.、粘度は242mPa・sであった。また残存するタングステンの量(灰化法)は約1100ppmであった。
実施例3
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、水12部、12−タングスト燐酸0.38部、燐酸0.56部、炭酸ナトリウムを加え、pHを5.0に調整した。更にトルエン35部、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド0.6部(東京化成工業株製)を加え、激しく40℃で1時間攪拌をすることでタングステン酸系触媒の溶液が得られた。
攪拌終了後、上記式(1)の化合物22部を加え、さらに再度攪拌することで2層系の懸濁液とした。この溶液を40℃に昇温し、激しく攪拌しながら、30重量%過酸化水素水24.8部を加えた。そのまま40℃で48時間攪拌した。反応終了後の基質のコンバージョンは>99%、うちモノエポキシ体<1%、ジエポキシ体>98%、水付加体<1%(ガスクロマトグフィーにて確認)であり、GPCによる本体純度測定を行ったところ98%であることが分かった。
室温まで冷却後、トリポリ燐酸ナトリウム2部、20重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液10部を加え1時間攪拌を行い、静置した。2層に分離した有機層を取り出し、更に得られた水層に30部のトルエンを加え、水層中の有機物を抽出した。これをさらに2回繰り返し、得られた有機層を混合した。ここにシリカゲル100部を加え、室温で1時間攪拌後、ろ過、さらに残渣シリカをトルエン50部で洗浄後、ロータリーエバポレータを用い、有機溶剤を留去することで、目的とするエポキシ組成物(EP3)18部を得た。得られたエポキシ組成物は無色であり、エポキシ当量は138g/eq.、粘度は242mPa・sであった。また残存するタングステンの量(灰化法)は約450ppmであった。
実施例4
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら水24部、タングスト燐酸0.76部、燐酸0.56部、炭酸ナトリウムを加え、pHを4.0に調整した。更にトルエン35部、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド1.0部を加え、激しく40℃で1時間攪拌をすることでタングステン酸系触媒の溶液が得られた。
攪拌終了後、上記式(1)の化合物22部を加え、さらに再度攪拌することで2層系の懸濁液とした。この溶液を40℃に昇温し、激しく攪拌しながら、30重量%過酸化水素水27.2部を加えた。そのまま40℃で48時間攪拌した。反応終了後の基質のコンバージョンは>99%、うちモノエポキシ体4%、ジエポキシ体96%、水付加体<1%(ガスクロマトグフィーにて確認)であり、GPCによる本体純度測定を行ったところ97%であることが分かった。
室温まで冷却後、1重量%水酸化ナトリウム水溶液20部、20重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液10部を加え1時間攪拌を行い、静置した。2層に分離した有機層を取り出し、更に得られた水層に30部のトルエンを加え、水層中の有機物を抽出した。これをさらに2回繰り返し、得られた有機層を混合した。ここに活性炭0.5部、シリカゲル100部を加え、室温で1時間攪拌後、ろ過、さらに残渣シリカゲルをトルエン50部で洗浄後、ロータリーエバポレータを用い、有機溶剤を留去することで、目的とするエポキシ組成物(EP4)19部を得た。得られたエポキシ組成物は無色であり、エポキシ当量は138g/eq.、粘度は245mPa・sであった。また残存するタングステンの量(灰化法)は約1500ppmであった。
合成例2
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置、ディーンスターク管を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらトルエン100部、シクロヘキサ−3−エンカルボン酸126部、1,4−シクロヘキサンジメタノール72部、メタンスルホン酸3部を加え、650〜750torrの減圧条件下、100℃で15時間反応を行った。反応終了後、トリポリ燐酸ナトリウム5部を加え、100℃で1時間攪拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン300部を加え、水300部で3回水洗を行い、得られた有機層にシリカゲル100部、活性炭(二村化学株式会社製、太閤K)1部を加え、室温で2時間攪拌した後、ろ過を行った。得られたろ液より溶剤等を除去することで上記式(2)の化合物を146部得た。
実施例5
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら水12部、燐酸0.56部を加え、炭酸ナトリウムを用いて、pHを5.0に調整した。さらにトルエン30部、上記式(2)の化合物36部、タングステン酸系触媒(cat−1)0.5部を加え、攪拌することで2層系の懸濁液とした。この溶液を50℃に昇温し、激しく攪拌しながら、30重量%過酸化水素水24.8部を加えた。反応系中のpHを測定したところpHは4.0であった。そのまま50℃で24時間攪拌した。反応終了後の基質のコンバージョンは>99%、うちモノエポキシ体5%、ジエポキシ体93%、水付加体2%(ガスクロマトグフィーにて確認)であり、GPCによる本体純度測定を行ったところ94%であることが分かった。1重量%水酸化ナトリウム水溶液20部、20重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液10部を加え1時間攪拌を行い、静置した。2層に分離した有機層を取り出し、更に得られた水層に30部のトルエンを加え、水層中の有機物を抽出した。これをさらに2回繰り返し、得られた有機層を混合した。ここにシリカゲル60部を加え、室温で1時間攪拌後、ろ過、さらに残渣シリカをトルエン50部で洗浄後、ロータリーエバポレータを用い、有機溶剤を留去することで、目的とするエポキシ組成物(EP5)35部を得た。得られたエポキシ組成物は淡黄色であり、エポキシ当量は239g/eq.、粘度は18Pa・sであった。また残存するタングステンの量(灰化法)は1600ppmであった。
実施例6
実施例2において、反応基質である式(1)を上記式(2)の化合物36部に変えた以外は同様の操作を行った。その結果、反応終了後の基質のコンバージョンは>99%、うちモノエポキシ体5%、ジエポキシ体93%、水付加体2%(ガスクロマトグフィーにて確認)であり、GPCによる本体純度測定を行ったところ94%であることが分かった。また得られたエポキシ組成物(EP6)は黄色であり、エポキシ当量は239g/eq.、粘度は18Pa・sであった。また残存するタングステンの量(灰化法)は1600ppmであった。
実施例7〜16、比較例3
上記式(1)で表される多価アルケンのエポキシ化物(EP7;商品名 ERL−4221 ダウケミカル株式会社製、 EP8;商品名 セロキサイド2021P ダイセル化学工業株式会社製)に以下の添加剤を加え、実施例7〜16、比較例3のエポキシ組成物をそれぞれ作成した。
添加剤1; 合成例1で製造した触媒 cat−1
添加剤2; 12−タングスト燐酸ナトリウム(12−タングスト燐酸を燐酸ナトリウムでナトリウム塩化したもの)
添加剤3; 合成例1においてトリオクチルメチルアンモニウムクロライドをジラウリルメチルアンモニウムブロマイドに変えたもの
添加剤4; 合成例1においてトリオクチルメチルメチルアンモニウムクロライドをトリオクチルメチルアンモニウムアセテートに変えたもの
実施例17
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、水18部、12−タングスト燐酸1.9部、燐酸2.8部、炭酸ナトリウムを加え、pHを5.0に調整した。更にトルエン160部、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド3部(東京化成工業株製)を加え、激しく40℃で1時間攪拌をすることでタングステン酸系触媒の溶液が得られた。
攪拌終了後、上記式(1)の化合物110部を加え、再度攪拌することで2層系の懸濁液とした。この溶液を50℃に昇温し、激しく攪拌しながら、35重量%過酸化水素水106部を加えた。そのまま50℃で12時間攪拌した。反応終了後の基質のコンバージョンは>99%、うちモノエポキシ体<1%、ジエポキシ体>98%、水付加体<1%(ガスクロマトグフィーにて確認)であり、GPCによる本体純度測定を行ったところ98%であることが分かった。
室温まで冷却後、30重量%水酸化ナトリウム水溶液3.3部、20重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液50部を加え1時間攪拌を行い、静置した。2層に分離した有機層を水洗し、得られた有機層にシリカゲル100部を加え、室温で1時間攪拌後、ろ過、さらに残渣シリカをトルエン50部で浄後、ロータリーエバポレータを用い、有機溶剤を留去することで、目的とするエポキシ組成物(EP9)18部を得た。得られたエポキシ組成物は淡黄色であり、エポキシ当量は133g/eq.、粘度は229mPa・sであった。また残存するタングステンの量(灰化法)は約105ppmであった。
比較例4
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、水18部、12−タングスト燐酸1.9部、燐酸2.8部、炭酸ナトリウムを加え、pHを5.0に調整した。更にトルエン160部、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド3部(東京化成工業株製)を加え、激しく40℃で1時間攪拌をすることでタングステン酸系触媒の溶液が得られた。
攪拌終了後、上記式(1)の化合物110部を加え、再度攪拌することで2層系の懸濁液とした。この溶液を50℃に昇温し、激しく攪拌しながら、35重量%過酸化水素水106部を加えた。そのまま50℃で12時間攪拌した。反応終了後の基質のコンバージョンは>99%、うちモノエポキシ体<1%、ジエポキシ体>98%、水付加体<1%(ガスクロマトグフィーにて確認)であり、GPCによる本体純度測定を行ったところ98%であることが分かった。
室温まで冷却後、20重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液50部を加え1時間攪拌を行い、静置した。2層に分離した有機層を水洗した後、得られた有機層にシリカゲル30部を加え、室温で1時間攪拌後、ろ過、さらに残渣シリカをトルエン50部で浄後、ロータリーエバポレータを用い、有機溶剤を留去することで、目的とするエポキシ組成物(EP10)21部を得た。得られたエポキシ組成物は黄色であり、エポキシ当量は136g/eq.、粘度は264mPa・sであった。また残存するタングステンの量(灰化法)は約2900ppmであった。
比較例5
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、水18部、12−タングスト燐酸1.9部、燐酸2.8部、炭酸ナトリウムを加え、pHを5.0に調整した。更にトルエン160部、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド3部(東京化成工業株製)を加え、激しく40℃で1時間攪拌をすることでタングステン酸系触媒の溶液が得られた。
攪拌終了後、上記式(1)の化合物110部を加え、再度攪拌することで2層系の懸濁液とした。この溶液を50℃に昇温し、激しく攪拌しながら、35重量%過酸化水素水106部を加えた。そのまま50℃で12時間攪拌した。反応終了後の基質のコンバージョンは>99%、うちモノエポキシ体<1%、ジエポキシ体>98%、水付加体<1%(ガスクロマトグフィーにて確認)であり、GPCによる本体純度測定を行ったところ98%であることが分かった。
室温まで冷却後、20重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液50部を加え1時間攪拌を行い、静置した。2層に分離した有機層を水洗した後、ロータリーエバポレータを用い、有機溶剤を留去することで、目的とするエポキシ組成物(EP11)118部を得た。得られたエポキシ組成物は黄色であり、エポキシ当量は138g/eq.、粘度は270mPa・sであった。また残存するタングステンの量(灰化法)は約5600ppmであった。
試験例1
上記で得られた実施例1〜17及び比較例1〜5のエポキシ組成物について、それぞれDSC(示唆熱分析)による発熱開始温度を確認した。結果を表1に示す。
(DSC測定条件)
温度範囲 30〜350℃
昇温速度 10min/℃
サンプル量 1.0〜3.0mg
試験例2
上記で得られた実施例1〜6、17及び比較例1〜5のエポキシ組成物について耐熱着色試験を行った。耐熱着色試験の評価は、加熱前と加熱後の色みの変化を目視で観察することにより行なった。サンプルは1mLのガラスのサンプル瓶に0.5gのサンプルを入れ、ホットプレートで加熱を行う。加熱条件150℃、加熱時間は15分、30分、1時間である。結果を表2に示す。
試験例3
実施例1〜4で得られたエポキシ組成物(EP1〜EP4)について、過酢酸により製造されたエポキシ化合物(EP7)(ダウケミカル製 ERL−4221 アセチル体が成分に含まれていることから過酢酸で製造されていることが分かる。)を粘度において比較を行った。その結果EP7の粘度が443mPa・sであり、EP1〜EP4の粘度が230〜250mPa・sであることから、過酢酸を用いて製造したエポキシ化合物に比べ低粘度であることが確認できた。これは、選択的に2官能エポキシ化合物ができているためであると考えられる。
Figure 2009185274
Figure 2009185274
以上の結果から、本発明のエポキシ組成物は、熱安定性に優れるとともに低熱着色性であることが判る。

Claims (10)

  1. 多価エポキシ化合物とタングステン化合物とからなり、且つ、タングステン元素含有量が0.1〜2000ppmであることを特徴とするエポキシ組成物。
  2. 触媒としてのタングステン化合物の存在下、多価アルケンを酸化することによって得られることを特徴とする請求項1記載のエポキシ組成物。
  3. 多価アルケンがシクロヘキセンカルボキシエステル構造を有する化合物またはシクロヘキセンメチルエステル構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1または2記載のエポキシ組成物。
  4. 多価アルケンが式(1)
    Figure 2009185274

    もしくは式(2)
    Figure 2009185274

    で表される構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ組成物。
  5. A)有機化され、且つ、タングステン原子を含有する塩を触媒として、多価アルケンと過酸化水素とを、該過酸化水素を含む溶液を水層とする水−有機層または水−反応基質層の2層系で反応させることによって、多価アルケンを酸化する工程、および、
    B)工程A)の後、過酸化水素に塩基性化合物を添加して、該過酸化水素の酸化力を消失させる工程、を含むことを特徴とするエポキシ組成物の製造方法。
  6. 工程B)の後、エポキシ組成物中に残存するタングステン元素含有量が0.1〜2000ppmであることを特徴とする請求項5記載のエポキシ組成物の製造方法。
  7. 多価アルケンがシクロヘキセンカルボキシエステル構造を有する化合物またはシクロヘキセンメチルエステル構造を有する化合物であることを特徴とする請求項5または6記載のエポキシ組成物の製造方法。
  8. 多価アルケンが式(1)
    Figure 2009185274

    もしくは式(2)
    Figure 2009185274

    で表される構造を有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のエポキシ組成物の製造方法。
  9. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ組成物を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
  10. 請求項9記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
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