JP2009184934A - アクリロニトリル類の製造法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類の製造法に関するものである。詳しくは多量の脱水剤を使用せず、また重合物を副生することを抑えて、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアクリルアミド類を出発原料として、そのアミド基を脱水し、アクリロニトリル類を製造する方法に関するものである。
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類は有機化合物の合成原料、高分子化合物の原料として使用される有用な化合物である。アクリロニトリルの製造方法はプロピレンとアンモニア、酸素含有ガスを気相で接触させる方法が既知であり、(特許文献1参照)、またプロピレンの代わりにプロパンとアンモニア、酸素含有ガスを気相で接触させる方法も開示されている(特許文献2参照)。
メタクリロニトリルの製造方法はイソブテンとアンモニア、酸素含有ガスを気相で接触させる方法が既知である。また、イソブテンの代わりにイソブタンをアンモニア、酸素含有ガスを気相で接触させる方法も開示されている(特許文献3参照)。
ここで、プロピレンやイソブテンは化石燃料である石油などに由来する化合物であるため、アクリロニトリル類を製造するに際して、地球温暖化の原因物質である二酸化炭素の排出が懸念される。一方、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアクリルアミド類は、乳酸等の生物原料、酢酸製造における副産物であるプロピオン酸等から製造することが可能であるため、アクリロニトリル類を製造するに際して、その原料として利用できれば、化石燃料の使用を削減することが可能となり、地球温暖化の原因物質である二酸化炭素の排出削減効果が期待される。しかしながらアクリルアミド類を出発原料として、そのアミド基を触媒反応で脱水することによってアクリロニトリル類を合成する実用的な方法は知られていない。
一方、一級アミド基を脱水してニトリル基を製造する方法はオキシ塩化リン、五酸化リンなどの脱水剤を使用するが既知であるが、この場合脱水剤は1当量以上必要である。触媒反応でアミドを脱水する方法としてはジブチルスズオキシド、過酸化レニウムなどが 既知である。これらの触媒はベンズアミド等の芳香族アミド、アジポアミド等のアルキルアミドを高収率で脱水することができるが、アクリルアミド類の脱水反応に使用すると重合反応を起こしアクリロニトリル類を製造することはできない。
特開昭53−144528号公報
特開2001−342169号公報
特開昭59−204164号公報
本発明の課題は、重合物を生成することなく、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアクリルアミド類から高収率でアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類を製造することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次の構成を有する。すなわち、次の式1で示される化合物0.001〜10当量およびラジカル補足剤0.0001〜1当量を有機溶媒中にアクリルアミド類と共存させ、アクリルアミド類のアミド基を脱水してアクリロニトリル類を得る、アクリロニトリル類の製造方法である。
[式1中、R1、R2は独立してC1−8アルキル(R1とR2が一緒になって鎖員1〜6の環を形成してもよい)、または、置換基を有していてもよいフェニル基を表す]
本発明によれば、重合物を生成を抑制してアクリルアミド類からアクリロニトリル類を製造できる。また、アクリルアミド類は乳酸等の生物原料から製造することが可能であることから、本製造法によって化石燃料の使用を削減することが可能となり、地球温暖化の原因物質である二酸化炭素の排出削減効果が期待される。
本発明では、式1で示される化合物およびラジカル補足剤を有機溶媒中にアクリルアミド類と共存させ、アクリルアミド類のアミド基を脱水してアクリロニトリル類を得る。
本発明において、アクリルアミド類とは、アクリルアミドの他、アクリルアミドのα位、または、β位の水素が、メチル基、エチル基などのアルキル基で置換された化合物をいう。アクリルアミド類としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、クロトンアミドなどを具体的に挙げることができる。
また、本発明において、アクリロニトリル類とは、アクリロニトリルの他、アクリロニトリルのα位、または、β位の水素が、メチル基、エチル基などのアルキル基で置換された化合物をいう。アクリロニトリル類としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトンニトリルなどを具体的に挙げることができる。
本発明において式1で示される化合物のR1、R2は独立してC1−8アルキル(R1とR2が一緒になって鎖員1〜6の環を形成してもよい)、または、置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
本発明において、「C1−8アルキル」とは直鎖状、あるいは分岐状のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、ネオヘキシル基、ネオヘプチル基、または、ネオオクチル基を表す。
また、本発明において、「置換されてもよいフェニル基」とは、無置換、またはメチル基、メトキシ基、フッ素、塩素、臭素、もしくはニトロ基で置換されたフェニル基を表す。
本発明で、式1で表される化合物は例えば次の表1に示す化合物が具体的に挙げられる。
本発明において、式1で示される化合物の添加量はアクリルアミド類1当量に対して0.001当量〜10当量、好ましくは0.01当量〜5当量、より好ましくは0.05当量〜1当量とする必要がある。式1で示される化合物の添加量が、アクリルアミド類1当量に対して0.001当量未満であると脱水反応が進行しないし、10当量を超えて添加すると反応収率が低下してしまう。
また、本発明において、ラジカル補足剤は、ラジカルを補足し、ラジカル重合を抑制する薬剤であれば特に限定されないが、4−メトキシ−1−ナフトール、ヒドロキノン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、フェノチアジン、ジフェニルアミン、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが好ましく使用される。
本発明において、ラジカル補足剤の添加量は、アクリルアミド類1当量に対して0.0001当量〜1当量、好ましくは0.001当量〜0.5当量、より好ましくは0.005当量%〜0.1当量%とする必要がある。ラジカル補足剤の添加量がアクリルアミド類1当量に対して0.0001当量%未満では重合物の生成を抑制する効果は得られず、1当量を超えると反応収率が低下してしまう。
本発明で、アクリルアミド類などを共存させる溶媒はアクリルアミド類を溶解する液体であれば特に限定されないが、好ましくはベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ペンタメチルベンゼン、メトキシベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、安息香酸メチル、ジフェニルエーテル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサンが挙げられ、より好ましくはトルエン、キシレン、メシチレン、メトキシベンゼン、クロロベンゼン、ベンゾニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。
これらの溶媒は単独で用いてもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
本発明で、溶媒の量はアクリルアミド類を溶解する量であれば特に限定されないが、アクリルアミド類1gに対して好ましくは1〜1000mL、より好ましくは2〜500mL、さらに好ましくは5〜100mLとする。溶媒の量が、アクリルアミド類1gに対して1mL未満であると、アクリルアミド類が通常、溶解せず反応は進行しないし、1000mL以上であると反応の進行が遅くなる。
本発明において、アクリルアミド類のアミド基を脱水するための反応温度は特に限定されないが、好ましくは80℃〜300℃、より好ましくは100℃〜280℃、さらに好ましくは120℃〜240℃とする。かかる反応温度が80℃未満の場合反応が進行しづらく、300℃を越えると不純物が生成し、アクリロニトリル類の収率が低下してしまう。
本発明において、アミド基の脱水反応によって発生した水は蒸留、ディーンスターク、ソックスレー、モレキュラーシーブス等の方法で取り除くことができる。
本発明により得られるアクリロニトリル類は、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の方法で精製することが可能であるが、特に蒸留で精製するのがより好ましい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<アクリルアミド類の反応率、アクリロニトリル類の選択率の測定>
反応前後の溶液をそれぞれ100μL抜き取り、反応に用いた溶媒で30倍に希釈した後に孔径0.45μmのフィルターで濾過してガスクロマトグラフィー分析を行い、各化合物の面積値を得る。得られた面積値を用い、アクリルアミド類の反応率、アクリロニトリル類の選択率は以下のようにして算出する。
反応前後の溶液をそれぞれ100μL抜き取り、反応に用いた溶媒で30倍に希釈した後に孔径0.45μmのフィルターで濾過してガスクロマトグラフィー分析を行い、各化合物の面積値を得る。得られた面積値を用い、アクリルアミド類の反応率、アクリロニトリル類の選択率は以下のようにして算出する。
アクリルアミド類の反応率(%)=100−(反応後のアクリルアミド類の面積値)/(反応前のアクリルアミド類の面積値)×100
アクリロニトリル類の選択率(%)=(反応後に生成したアクリロニトリル類の面積値)/(反応後に生成した化合物の面積値の和)×100
[実施例1]
アクリルアミド1.0g(14mmol)、ジブチルスズオキシド0.2g(0.8mmol)、フェノチアジン0.01g(0.05mmol)をオルトキシレン40mLに加え、ディーンスタークで脱水しながら反応温度140℃で8時間反応を行った。反応終了後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところアクリルアミドの反応率は82%、アクリロニトリルの選択率は85%であった。
アクリロニトリル類の選択率(%)=(反応後に生成したアクリロニトリル類の面積値)/(反応後に生成した化合物の面積値の和)×100
[実施例1]
アクリルアミド1.0g(14mmol)、ジブチルスズオキシド0.2g(0.8mmol)、フェノチアジン0.01g(0.05mmol)をオルトキシレン40mLに加え、ディーンスタークで脱水しながら反応温度140℃で8時間反応を行った。反応終了後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところアクリルアミドの反応率は82%、アクリロニトリルの選択率は85%であった。
[実施例2]
アクリルアミド 1.0g(14mmol)、ジブチルスズオキシド0.1g(0.4mmol)、ヒドロキノン0.01g(0.09mmol)をトルエン40mLに加え、ディーンスタークで脱水しながら反応温度120℃で10時間反応を行った。反応終了後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところアクリルアミドの反応率は70%、アクリロニトリルの選択率は78%であった。
アクリルアミド 1.0g(14mmol)、ジブチルスズオキシド0.1g(0.4mmol)、ヒドロキノン0.01g(0.09mmol)をトルエン40mLに加え、ディーンスタークで脱水しながら反応温度120℃で10時間反応を行った。反応終了後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところアクリルアミドの反応率は70%、アクリロニトリルの選択率は78%であった。
[実施例3]
アクリルアミド1.0g(14mmol)、ジオクチルスズオキシド0.2g(0.55mmol)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール0.02g(0.09mmol)、モレキュラーシーブス1.5gをジエチレングリコールジメチルエーテル30mLに加え、反応温度140℃で5時間反応を行った。反応終了後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところアクリルアミドの反応率は70%、アクリロニトリルの選択率は69%であった。
アクリルアミド1.0g(14mmol)、ジオクチルスズオキシド0.2g(0.55mmol)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール0.02g(0.09mmol)、モレキュラーシーブス1.5gをジエチレングリコールジメチルエーテル30mLに加え、反応温度140℃で5時間反応を行った。反応終了後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところアクリルアミドの反応率は70%、アクリロニトリルの選択率は69%であった。
[実施例4]
メタクリルアミド1.0g、ジブチルスズオキシド 0.2g、フェノチアジン0.01gをパラキシレン40mLに加え、ディーンスタークで脱水しながら反応温度140℃で8時間反応を行った。反応終了後反、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところメタクリルアミドの反応率は84%、メタクリロニトリルの選択率は80%であった。
メタクリルアミド1.0g、ジブチルスズオキシド 0.2g、フェノチアジン0.01gをパラキシレン40mLに加え、ディーンスタークで脱水しながら反応温度140℃で8時間反応を行った。反応終了後反、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところメタクリルアミドの反応率は84%、メタクリロニトリルの選択率は80%であった。
[実施例5]
メタクリルアミド1.0g(11.7mmol)、ジイソブチルスズオキシド0.3g(1.2mmol)、ヒドロキノン0.03g(0.27mmol)、モレキュラーシーブス1.5gをジメチルホルムアミド20mLに加え、反応温度130℃で6時間反応を行った。反応終了後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところメタクリルアミドの反応率は60%、メタクリロニトリルの選択率は64%であった。
メタクリルアミド1.0g(11.7mmol)、ジイソブチルスズオキシド0.3g(1.2mmol)、ヒドロキノン0.03g(0.27mmol)、モレキュラーシーブス1.5gをジメチルホルムアミド20mLに加え、反応温度130℃で6時間反応を行った。反応終了後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところメタクリルアミドの反応率は60%、メタクリロニトリルの選択率は64%であった。
[実施例6]
メタクリルアミド1.0g(11.7mmol)、ジフェニルスズオキシド0.2g(0.7mmol)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール0.01g(0.05mmol)、モレキュラーシーブス1.5gをジエチレングリコールジエチルエーテル30mLに加え、反応温度150℃で5時間反応を行った。反応終了後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところメタクリルアミドの反応率は74%、メタクリロニトリルの選択率は70%であった。
メタクリルアミド1.0g(11.7mmol)、ジフェニルスズオキシド0.2g(0.7mmol)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール0.01g(0.05mmol)、モレキュラーシーブス1.5gをジエチレングリコールジエチルエーテル30mLに加え、反応温度150℃で5時間反応を行った。反応終了後、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところメタクリルアミドの反応率は74%、メタクリロニトリルの選択率は70%であった。
[比較例1]
フェノチアジンを加えなかった以外は実施例1と同様の方法で反応を行ったが、反応直後に不溶物が析出した。得られた固体を分析したところ、ポリアクリルアミドが主生成物であり、アクリロニトリルは得られなかった。
フェノチアジンを加えなかった以外は実施例1と同様の方法で反応を行ったが、反応直後に不溶物が析出した。得られた固体を分析したところ、ポリアクリルアミドが主生成物であり、アクリロニトリルは得られなかった。
[比較例2]
ジブチルスズオキシドを加えなかった以外は実施例1と同様の方法で反応を行ったが、原料のみが得られ、アクリロニトリルは得られなかった。
ジブチルスズオキシドを加えなかった以外は実施例1と同様の方法で反応を行ったが、原料のみが得られ、アクリロニトリルは得られなかった。
Claims (3)
- 式1において、R1、R2のそれぞれがメチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、イソヘキシル基、イソオクチル基、t−ブチル基、フェニル基、3−ニトロフェニル基、3−メチルフェニル基および4−クロロフェニル基からなる群より選ばれる1種である、請求項1に記載のアクリロニトリル類の製造方法。
- ラジカル補足剤が、4−メトキシ−1−ナフトール、ヒドロキノン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、フェノチアジン、ジフェニルアミン、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のアクリロニトリル類の製造方法。
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2008
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