JP2009184870A - レンズの製造方法及びレンズ - Google Patents

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Abstract

【課題】 酸化チタン成分を含有する鉛フリーのレンズにおける黄着色を排し、実用的かつ有用性の高い高屈折率ガラスを用いたレンズを得る。
【解決手段】 酸化チタン成分を含有し、屈折率が1.7以上、かつアッべ数が35以下となる高屈折率光学ガラスを用いたレンズを製造するに際し、触媒により重縮合反応速度を促進させることにより、チタンアルコキシドを低次元成長させ、低次元酸化チタン成分Mtの周りにブロック成分Moが複合化したコンポジット生成物Mを得るとともに、このコンポジット生成物Mを少なくとも酸化チタン成分源としてガラス原料に調合し、加熱熔解することにより高屈折率光学ガラスLgを得、この高屈折率光学ガラスLgを用いてレンズLを製造する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、酸化チタン成分を含有する高屈折率光学ガラスを用いたレンズの製造方法及びこの製造方法により製造したレンズに関する。
一般に、光学ガラス(レンズ)は、カメラやプロジェクタ等の各種光学製品に広く使用されているが、光学製品の小型化に伴ってレンズの小型化(薄型化)も不可欠になる。また、レンズの小型化には、レンズの高屈折率化が必要であり、通常、屈折率を高めるため、ガラス体の内部に均一に分散させた金属微粒子を含有させている。
従来、金属微粒子としては、主に鉛(Pb)が用いられてきたが、近時、環境上有害な鉛の代わりに各種金属酸化物が利用されるに至っている。この種の金属酸化物のうち、特に、屈折率を高くできる酸化チタンの有用性が着目されており、例えば、特許文献1には、SiO2が1〜6重量%、B23が16〜25重量%、CaOが13〜20重量%、ZrO2が1〜8重量%、La23が20〜29重量%、TiO2が13〜16重量%、Nb25が10〜20重量%、SnOが0.01〜1重量%、Sb23が0.01〜1重量%の組成からなる光学用ガラス(レンズ)が開示されている。また、特許文献2には、レンズのコーティングに用いる少なくとも粒径が1〜200mμのルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する無機酸化物微粒子および特定の有機ケイ素化合物を含有するコーティング用組成物が開示されており、いずれも酸化チタンによる高屈折率化を企図したものである。
特開2005−239506号公報 特開平11−310755号公報
ところで、酸化チタンは、上述のように光学ガラス等の高屈折率化を図ることができる添加材料としての優れた資質を有しているが、反面、ガラス原料に含有させた際には、黄着色及びこの着色による光透過率の低下を生じる問題がある。図7に示す特性線Kは、光学ガラスにおけるアッベ数と屈折率の関係を示しているが、酸化チタン(金属酸化物)を含有させて屈折率を大きくすれば、アッベ数が小さくなる関係を有している。したがって、酸化チタンを含有させた光学ガラスにおいて、酸化チタンの含有量が比較的少ない領域、例えば、屈折率が1.7未満であって、アッべ数が35を越える領域では、黄着色は少なく無視できるが、酸化チタンの含有量が多くなる領域である屈折率が1.7以上であって、アッべ数が35以下の領域では、黄着色や光透過率の低下が無視できず、結局、現実には実用に耐える高屈折率光学ガラスを得ることが難しいのが実情である。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したレンズの製造方法及びレンズの提供を目的とするものである。
本発明に係るレンズの製造方法は、上述した課題を解決するため、酸化チタン成分を含有し、屈折率が1.7以上、かつアッべ数が35以下となる高屈折率光学ガラスを用いたレンズを製造するに際し、触媒により重縮合反応速度を促進させることにより、チタンアルコキシドを低次元成長させ、低次元酸化チタン成分Mtの周りにブロック成分Moが複合化したコンポジット生成物Mを得るとともに、このコンポジット生成物Mを少なくとも酸化チタン成分源としてガラス原料に調合し、加熱熔解することにより高屈折率光学ガラスLgを得、この高屈折率光学ガラスLgを用いてレンズLを製造するようにした。ここで、低次元成長とは、線方向に成長する一次元成長及び/又は面方向に成長する二次元成長であり、等方的に成長し、球乃至それに近い形状の粒子を生成する三次元成長とは区別する。なお、低次元成長とは、一次元成長及び/又は二次元成長が相当数を占めることにより本発明の効果を奏し得れば足り、三次元成長の存在を排除するものではない。
このような製造方法により、酸化チタン成分を含有し、屈折率が1.7以上、かつアッべ数が35以下となる高屈折率光学ガラスを用いたレンズであって、低次元酸化チタン成分Mtの周りにブロック成分Moが複合化したコンポジット生成物Mを少なくもガラス原料の酸化チタン成分源として製造した高屈折率光学ガラスLgによるレンズLを得ることができる。
本発明に係る製造方法は、基本的に、ガラス原料に含有させた際に発生する酸化チタン(TiO2)のドメイン化現象の解消を図るものである。ドメイン化現象とは、本明細書において、酸化チタン成分がガラス体中に均一に分散することなく、可視光線領域における光波長以上の大きさとなる不均一な集合体(ドメイン)としてガラス中に存在する状態を指している。
ドメイン化現象が発生する原因としては、次の理由が考えられている。通常、ガラスに添加する酸化チタンは、粒径が数〔μm〕の微粉末材料として提供され、高屈折率光学ガラスの製造時には、この酸化チタンの微粉末材料を他の添加材料と共にガラス原料に調合し、1100〜1500〔℃〕の高温で加熱熔解させる。この際、酸化チタンの微粉末材料が溶融したガラス原料に溶け込み、分子レベルで均一に分散することが望ましいが、金属酸化物の一種である酸化チタンの融点は、1100〜1500〔℃〕の温度領域よりも高いことから、実際には分散状態が不均一となってドメインが発生するものと考えられる。そして、可視光線領域の光波長は、350〔nm〕(青色光(紫色光))〜700〔nm〕(赤色光)程度であるため、ドメインの大きさがこれらの波長と同等程度以上(1/10程度以上)の大きさを有する場合、光の吸収及び散乱に影響することが考えられ、特に、短波長側(青色光側)に対しては、その影響(吸収)がより大きくなることから高屈折率光学ガラスの黄着色原因になるものと考えられる。
そこで、本発明では、酸化チタンの材料段階に着目し、(1)予め、酸化チタン(酸化チタン成分)の材料段階において微粒子を分子レベルで均一に分散させておく。(2)分子レベルで均一に分散させた微粒子をガラス原料に調合した後もその状態を維持させる。の二つの課題を解決するためのアプローチをゾルゲルプロセスの有効性から試みたものである。
即ち、一般的なゾルゲルプロセスによりチタンアルコキシドを成長させる場合、低次元成長は行われない。チタンアルコキシドは重縮合反応速度が遅く、これが故に高次元成長(三次元成長)が行われて粒子が生成され、結局、予め酸化チタン粒子を酸化チタン成分として添加した場合と同様のドメインが発生する。本発明では、チタンアルコキシドに対して、触媒により重縮合反応速度が促進するゾルゲルプロセスを用い、場合によっては、酸化チタンに配位する有機成分を添加することにより加水分解を抑制することにより、チタンアルコキシドにブロック成分(加水分解を受けずに残留するアルコキシ基、及び/又は反応系に添加するブロック化合物)を結合させたままで酸化チタン成分を低次元成長させ、低次元酸化チタン成分の周りにブロック成分が複合化したコンポジット生成物Mを得るようにした。これにより、予め、酸化チタン成分を分子レベルで均一に分散させておくことができる。なお、チタンアルコキシドには、チタンテトラ−i−プロポキシド,チタンテトラ−n−ブトキシド等を用いる。これらは単独で用いても良いし複数を同時に用いても良い。これらの試薬は好適なチタンアルコキシドの一例として例示したものであり、他の試薬の使用を制限するものではない。
また、本発明では、チタンアルコキシドに対してブロック成分を結合させたままで酸化チタン成分を低次元成長させて得たコンポジット生成物M、即ち、低次元酸化チタン成分の周りにブロック成分が複合化したコンポジット生成物Mを、少なくとも添加材料(酸化チタン成分源)としてガラス原料に調合し、加熱熔解することにより高屈折率光学ガラスLgを得るようにした。この場合、コンポジット生成物Mを構成する酸化チタン成分表面には、通常の酸化チタン表面に存在する水酸基(OH)の代わりにブロック成分が存在するため、加熱熔解の途中で炭素化し、酸化チタン成分同士の縮合反応をブロックする。この結果、酸化チタンによるドメインの生成(反応)が抑制され、分子レベルで均一に分散する酸化チタン成分がガラス原料に調合した後もその状態を維持、特に、加熱熔解した後もその状態を維持することができる。
一方、好適な実施の態様により、ブロック成分には、チタンアルコキシドに最初から存在する加水分解を受けない未反応のアルコキシ基,反応系に添加するブロック化合物の一方又は双方が用いられる。ブロック化合物には、チタンアルコキシドに配位する能力を有するカルボン酸類,α−ヒドロキシカルボン酸類,α−ヒドロキシケトン類,グリコール類,β−ジケトン類,エタノールアミン類などを用いることができ、具体的には、ギ酸,酢酸,グリコール酸,乳酸,2−ヒドロキシイソ酪酸,マンデル酸,シュウ酸,クエン酸,酒石酸,アセトイン,ヒドロキシアセトン,プロピオイン,ベンゾイン,エチレングリコール,ジエチレングリコール,ペンタエチレングリコール,グリセリン,スクロース,モノエタノールアミン,ジエタノールアミン,トリエタノールアミン,アセチルアセトン,ベンゾイルアセトン等を挙げることができる。さらに、ブロック化合物には、Si成分を含有してチタンアルコキシドと結合を形成するシリコンアルコキシド類,クロロシラン類などを用いることができ、具体的には、テトラメトキシシラン,テトラエトキシシラン,メチルトリメトキシシラン,ジメチルジメトキシシラン,エチルトリメトキシシラン,ジメチルジエトキシシラン,ビニルトリメトキシシラン,フェニルトリメトキシシラン,トリクロロシラン,テトラクロロシラン,オクタデシルトリクロロシラン,オクタデシルジメチルクロロシラン等を挙げることができる。これらは単独で用いても良いし複数を同時に用いても良い。これらの試薬は好適なブロック化合物の一例として挙げたものであり、他の試薬の使用を制限するものではない。
また、重縮合を促進する触媒には、酸と塩基の中和によって生じる少なくとも一種類以上の塩(えん)を含む塩触媒を用いることができる。特に好ましい塩触媒としては、重縮合促進能の高いヒドラジン誘導体の塩,アミジン誘導体の塩,ヒドロキシルアミン誘導体の塩から選択した一つ以上の塩触媒を用いることができ、具体的には、ヒドラジン一塩酸塩,アセトアミジン塩酸塩,ヒドロキシルアミン塩酸塩,塩化ヒドラジニウム等を挙げることができる。これらは単独で用いても良いし複数を同時に用いても良い。これらの試薬は、好適な塩触媒(重縮合促進触媒)の一例として挙げたものであり、他の試薬の使用を制限するものではない。チタンアルコキシドは、重縮合反応速度が遅いため、これらの塩触媒により重縮合反応速度が速められる。この結果、加水分解反応よりも重縮合反応が速やかに進行する反応環境、特に、有効な低次元成長が実現する反応環境が提供される。
さらに、得られたコンポジット生成物Mは、少なくとも添加材料(酸化チタン成分源)としてガラス原料に調合するとともに、加熱熔解時には、加熱温度を1100〜1500〔℃〕の範囲に選定して、コンポジット生成物Mに含むブロック成分Moを炭化させた後、酸化分解させることができる。コンポジット生成物Mに含む有機配位子(ブロック成分Mo)は、熔解中に一度炭化する。この際に生じた炭素成分は、ドメインの生成を抑制する作用を呈する一方、加熱熔解の進行に伴い、最終的には完全に酸化分解する。したがって、本発明にとって不利に作用することはない。
そして、コンポジット生成物Mを少なくとも添加材料としてガラス原料に調合し、加熱熔解することにより高屈折率光学ガラスLgを得、この高屈折率光学ガラスLgを用いてレンズLを製造すれば、酸化チタン成分を含有し、屈折率が1.7以上、かつアッべ数が35以下となる高屈折率光学ガラスLgを用いたレンズLを得ることができる。なお、実施結果の検証により、高屈折率光学ガラスLgには、酸化チタン成分を20〔重量%〕以上含有させるとともに、酸化チタン成分に複合化するブロック成分を5〜50〔重量%〕含有させることが望ましい。
本発明に係る製造方法に用いるコンポジット生成物Mの一般式を〔化1〕に示す。なお、式中のLは未反応のアルコキシ基及び/又は添加したブロック化合物を示す。
Figure 2009184870
図2は、レンズLに含有するコンポジット生成物Mを模式的イメージで示す。例示は、線方向に一次元成長した低次元酸化チタン成分にブロック成分が複合化したコンポジット生成物M…を示す。また、図2中、Mtは、コンポジット生成物Mにおける酸化チタン成分を模式的イメージで示すとともに、Moは、酸化チタン成分に結合したブロック成分を模式的イメージで示す。酸化チタン成分Mtは、水酸基(OH)の代わりとなるブロック成分Mo(加水分解を受けずに残留するアルコキシ基、及び/又は反応系に添加するブロック化合物)によりガードされた状態となり、コンポジット生成物M…同士の結合(反応)はブロックされる。この結果、酸化チタンによるドメインの生成が抑制される。
このような本発明に係るレンズの製造方法及びレンズLによれば、酸化チタン成分の含有量が多くなる領域、即ち、屈折率が1.7以上であって、アッべ数が35以下の領域であっても、鉛フリーのレンズにおける黄着色及びこの着色に伴う光透過率の低下を排し、実用的かつ有用性の高い高屈折率ガラスLgを用いたレンズLを得ることができるという顕著な効果を奏する。
以下、本発明に係るレンズの製造方法の実施例について、図1に示す工程フローチャートを参照して説明する。
(工程S1)
まず、コンポジット生成物Mを生成するための材料を調合する。使用する材料は、次のとおりであり、この調合例は「実施例1」に対応する。
1−ブタノール 660 〔g〕
チタンテトラ−n−ブトキシド 170 〔g〕
水 18 〔g〕
触媒:ヒドラジン一塩酸塩 0.86 〔g〕
なお、実施例は、この「実施例1」に加え、「実施例2」,「参考例」及び「比較例」を行った。「実施例2」は、「実施例1」の製法を基本とし、ブロック成分MoとしてSi成分を含むシリコンアルコキシドを追加したもの、「参考例」は、「実施例1」と同様にコンポジットを製造後、加熱によってブロック成分Moを除去したもの、「比較例」は、既存技術に対応する現状の生産工程のもの、即ち、粒径が数〔μm〕の微粉末材料として提供される酸化チタンをガラスに添加したものである。
(工程S2)
工程S1により調合した各材料を、撹拌器を付設した生成容器に入れ、チタンアルコキシドの加水分解と重縮合反応からなるゾルゲルプロセスにより、酸化チタン成分を成長させる。この場合、塩触媒として用いるヒドラジン一塩酸塩は、チタンアルコキシドの加水分解反応よりも重縮合反応を極めて効果的に促進させる。したがって、チタンアルコキシドが完全に加水分解を受けなくとも重縮合反応が速やかに進行する。この結果、未反応のアルコキシ基が残ったままで酸化チタン成分が成長し、低次元成長した酸化チタン成分とブロック成分からなるコンポジットが得られる。なお、このときのブロック成分は、未反応のアルコキシ基である。このコンポジットは低次元成長に起因し、高粘度の液体(ゼリー状)となる。
(工程S3,S4)
工程S2により得られたゼリー状のコンポジットを乾燥処理することにより、固形化したコンポジット生成物Mを生成する。この場合、固形化したコンポジット生成物Mは、使用しやすいように、粉末状にする。これにより、ガラス原料に添加材料として使用できるコンポジット生成物Mが得られる。
(工程S5)
工程S3,S4により得られたコンポジット生成物Mは、酸化チタン成分源として他のガラス原料と共に調合する。他のガラス原料としては、SiO2,BaCO3,Ba(NO32,Sr(NO32,ZrO2,Nb25,Na2CO3等からなる混合粉末を用いる。
(工程S6)
工程S5により調合したコンポジット生成物Mとガラス原料は、第一坩堝内に収容し、1250(又は1350)〔℃〕の加熱温度により前段熔解処理を行う。この場合、加熱熔解が進行したなら脱泡処理及び撹拌による均一化処理を行う。これにより、前段熔解処理による中間材料が得られる。
(工程S7,S8)
工程S6により得られた中間材料は、第二坩堝内に移し、1250〔℃〕の加熱温度により後段熔解処理を行うとともに、鋳込み(成形)処理,冷却処理,撰塊処理,検査処理(泡や異物の有無,屈折率,透過率等)を順次行う。これにより、高屈折率光学ガラスLgが得られる。
(工程S9)
工程S7,S8により得られた高屈折率光学ガラスLgに対しては、レンズLを製造するための必要な加工処理を施し、これによりレンズの原形が得られる。なお、この段階で行う加工処理には、カッティング処理,重量調整処理,プレス処理,アニール処理などが含まれる。
(工程S10,S11)
工程S7,S8により得られたレンズの原形に対しては、必要な仕上処理を施す。この段階で行う仕上処理には、研磨処理,検査処理(形状,内部状態等)が含まれ、これにより、目的のレンズLが得られる。
以上の処理工程は、「実施例1」における態様であるが、上述した「実施例2」,「参考例」及び「比較例」についても同様に行う。この場合、「実施例2」は、水酸基(OH)の代わりとなるブロック成分MoをSi成分を含有するシリコンアルコキシドとしたものであり、シリコンアルコキシドの一種であるテトラメチルオルトシリケートを(工程S1)の材料に追加する。シリコンアルコキシドは、最終的に光学ガラスのSiO2成分となるため、「実施例2」では、(工程S5)で加えるSiO2の分量を、追加するシリコンアルコキシドの相当分だけ減らしている。
「参考例」は、ブロック成分Moの有効性を明らかにするために実施したものであり、「実施例1」で得るコンポジットに対して、(工程S5)を行う前に、550〔℃〕の空気中で加熱し、コンポジットに複合化しているブロック成分Moを除去したものを用いた。「比較例」は、既存技術に対応する現状の生産工程のものである。したがって、使用する酸化チタンは、「実施例1」,「実施例2」及び「参考例」とは異なり、酸化チタン成分源として、粒径が数〔μm〕の微粉末材料として提供される酸化チタンを使用することにより、(工程S5)以降を行ったものであり、前述した酸化チタンのドメインが生じているものと推測される。
このように実施した「実施例1」,「実施例2」及び「参考例」によれば、いずれも屈折率が1.7以上、かつアッべ数が35以下となる高屈折率光学ガラスLgの条件を満たすものが製造できた。また、現状に対応する「比較例」も、屈折率が1.7以上、かつアッべ数が35以下となる高屈折率光学ガラスの条件を満たしている。「実施例1」,「実施例2」,「参考例」及び「比較例」における高屈折率光学ガラスLgの非着色性(B/G)及び目視判定による透明性の結果を〔表1〕に示す。なお、非着色性は、光波長400〔nm〕(青色光)の透過率(B)と光波長520〔nm〕(緑色光)の透過率(G)の変化度合、即ち、B/Gにより表した。したがって、B/Gの数値が大きいほど(1に近いほど)非着色性については良好となる。
一方、〔表2〕は、「実施例1」,「実施例2」,「参考例」及び「比較例」における光波長700〜350〔nm〕に対する高屈折率光学ガラスLgの透過率〔%〕の測定結果を示すとともに、図3〜図5に、「実施例1」,「実施例2」及び「参考例」の光波長〔nm〕に対する透過率〔%〕を、それぞれ「比較例」と対比できるようにグラフにより示した。図3は「実施例1」と「比較例」、図4は「実施例2」と「比較例」、図5は「参考例」である。なお、図3〜図5において、横軸の光波長〔nm〕は、〔表2〕における700〔nm〕を「1」とし、350〔nm〕を「36」とした計測番号である。
Figure 2009184870
Figure 2009184870
以上の結果から、「比較例」は、B/G(非着色性)が0.57であるのに対して、「実施例1」及び「実施例2」は、B/Gがそれぞれ0.80及び0.77となり、良好な結果を得た。このように、チタンアルコキシドを低次元成長させ、かつブロック成分を複合化させたコンポジット生成物Mを酸化チタン成分源とすることにより、得られる高屈折率光学ガラスLgの非着色性が大幅に向上し、本発明の目的を達成し得ることがわかる。一方、「実施例1」と同様の原料でありながら製造の過程で複合化しているブロック成分Moを除去した「参考例」は、B/Gが0.62であり、「比較例」に対して改善はされているものの、「実施例1」及び「実施例2」に対しては、さほど良好とは言えない結果である。これらの結果から明らかなように、酸化チタン成分源に用いるコンポジット生成物Mに複合化されるブロック成分Moが非着色性の向上に大きく寄与していることが推測される。なお、量産工程では、現状使用している粒径が数〔μm〕の微粉末材料による酸化チタンの代わりに、本発明により得られるコンポジット生成物Mを、酸化チタン成分源として使用すればよいため、本発明は量産工程に対する適応性にも優れる。
以上、実施例について詳細に説明したが、本発明は、このような実施例に限定されるものではなく、細部の手法,材料,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
本発明の実施例に係るレンズの製造方法を説明するための工程フローチャート、 同製造方法により製造したレンズ及びこのレンズに含有するコンポジット生成物の模式的イメージ図、 同製造方法により製造した実施例1のレンズと比較例のレンズの光波長(測定番号)に対する透過率特性図、 同製造方法により製造した実施例2のレンズと比較例のレンズの光波長(測定番号)に対する透過率特性図、 参考例のレンズと比較例のレンズの光波長(測定番号)に対する透過率特性図、 光学ガラスにおけるアッベ数と屈折率の関係図、
符号の説明
L:レンズ,Lg:高屈折率光学ガラス,M:コンポジット生成物の模式的イメージ,Mt:酸化チタン成分の模式的イメージ,Mo:有機配位子の模式的イメージ

Claims (9)

  1. 酸化チタン成分を含有し、屈折率が1.7以上、かつアッべ数が35以下となる高屈折率光学ガラスを用いたレンズの製造方法において、触媒により重縮合反応速度を促進させることにより、チタンアルコキシドを低次元成長させ、低次元酸化チタン成分の周りにブロック成分が複合化したコンポジット生成物を得るとともに、このコンポジット生成物を少なくとも酸化チタン成分源としてガラス原料に調合し、加熱熔解することにより高屈折率光学ガラスを得、この高屈折率光学ガラスを用いてレンズを製造することを特徴とするレンズの製造方法。
  2. 前記チタンアルコキシドを低次元成長させるに際し、前記酸化チタンに配位する有機成分を添加することにより加水分解を抑制することを特徴とする請求項1記載のレンズの製造方法。
  3. 前記ブロック成分は、チタンアルコキシドに最初から存在し、加水分解を受けずに残留するアルコキシ基、及び/又は反応系に添加するブロック化合物であることを特徴とする請求項1記載のレンズの製造方法。
  4. 前記ブロック化合物は、チタンアルコキシドに配位する能力を有するカルボン酸類、α−ヒドロキシケトン類、α−ヒドロキシカルボン酸類、グリコール類、β−ジケトン類、エタノールアミン類及び/又はSi成分を含有してチタンアルコキシドと結合を形成するシリコンアルコキシド類、クロロシラン類であることを特徴とする請求項3記載のレンズの製造方法。
  5. 前記触媒には、酸と塩基の中和によって生じる少なくとも一種類以上の塩(えん)を含む塩触媒を用いることを特徴とする請求項1又は2記載のレンズの製造方法。
  6. 前記低次元成長は、線方向に成長する一次元成長及び/又は面方向に成長する二次元成長であることを特徴とする請求項1,2又は5に記載のレンズの製造方法。
  7. 前記加熱熔解時には、加熱温度を1100〜1500〔℃〕の範囲に選定して、前記コンポジット生成物に含むブロック成分を炭化させた後、酸化分解させることを特徴とする請求項1記載のレンズの製造方法。
  8. 酸化チタン成分を含有し、屈折率が1.7以上、かつアッべ数が35以下となる高屈折率光学ガラスを用いたレンズにおいて、低次元酸化チタン成分の周りにブロック成分が複合化したコンポジット生成物を少なくもガラス原料の酸化チタン成分源として製造した高屈折率光学ガラスを用いたことを特徴とするレンズ。
  9. 前記高屈折率光学ガラスには、酸化チタン成分を20〔重量%〕以上含有することを特徴とする請求項8記載のレンズ。
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