JP2009184330A - 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】各圧力発生室で生じた圧力が他の圧力発生室に影響を及ぼすことを防止すると共に隔壁の強度の向上し得る液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクを噴射するノズル開口に連通し隔壁11によって区画された複数の圧力発生室12がその幅方向に並設された流路形成基板と、流路形成基板の一方面側に設けられて圧力発生室12に圧力変化を付与する圧電素子300と、隔壁11にその長手方向に沿って延設されて隔壁11の圧電素子300側の面に開口する溝部17と、溝部17に充填されて隔壁11よりも低硬度の材料からなるシリコーン樹脂18とを具備する。
【選択図】図3
【解決手段】インクを噴射するノズル開口に連通し隔壁11によって区画された複数の圧力発生室12がその幅方向に並設された流路形成基板と、流路形成基板の一方面側に設けられて圧力発生室12に圧力変化を付与する圧電素子300と、隔壁11にその長手方向に沿って延設されて隔壁11の圧電素子300側の面に開口する溝部17と、溝部17に充填されて隔壁11よりも低硬度の材料からなるシリコーン樹脂18とを具備する。
【選択図】図3
Description
本発明は、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に、液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッドとしては、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させる撓み振動モードの圧電素子を有するアクチュエータ装置を使用したものが知られている。
このようなインクジェット式記録ヘッドとしては、ノズル開口に連通し、隔壁によって区画された複数の圧力発生室が並設された流路形成基板と、流路形成基板の圧力発生室に相対向する領域に振動板となる絶縁膜を介して下電極膜、圧電体層及び上電極膜を積層形成した圧電素子とで構成されている。
また、各圧力発生室を区画する隔壁に、その高さ方向に貫通する溝部が設けられたインクジェット式記録ヘッドが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この溝部によって隔壁が分断されることになるので、一の圧力発生室に加えられた圧力で隔壁が変形しても、その変形による圧力が隣接する他の圧力発生室には及ばない。このため、従来技術に係るインクジェット式記録ヘッドでは、圧力発生室同士で相互にインクの吐出特性に影響を及ぼすことが防止されている。
特開平7−156398号公報(第2頁、第1図)
しかしながら、特許文献1のように、隔壁に溝部を設けると隔壁の強度が低下してしまう問題がある。特に、ノズル開口を高密度化するために隔壁を薄く形成して各圧力発生室の間隔を密にする場合、薄い隔壁に更に溝部が形成されることになるので隔壁の強度の低下は顕著となる。
なお、このような問題は、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
また、このような問題は、振動板を振動させる駆動部として撓み振動モードの圧電素子を用いたものに限定されるものではなく、撓み振動モードの圧電素子以外の圧力発生素子によって振動板を振動させる液体噴射ヘッドであっても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、各圧力発生室で生じた圧力が他の圧力発生室に影響を及ぼすことを防止すると共に隔壁の強度の向上し得る液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通し隔壁によって区画された複数の圧力発生室がその幅方向に並設された流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に設けられて前記圧力発生室に圧力変化を付与する圧力発生素子と、前記隔壁にその長手方向に沿って延設されて前記隔壁の前記圧力発生素子側の面に開口する溝部と、前記溝部に充填されて前記隔壁よりも低硬度の材料からなる充填部材とを具備することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、圧力発生素子により一の圧力発生室に加えられた圧力で隔壁が変形しても、その変形による圧力は充填部材に吸収され、他の圧力発生室にその圧力が伝播し難くなっている。すなわち、各圧力発生室に液滴を吐出するための圧力が加えられても、各圧力発生室同士で相互に液滴の吐出特性に影響を及ぼし合うことが低減される。更に、充填部材により、溝部を設けたことにより薄くなった隔壁の強度が向上する。このため、液体噴射ヘッドは液滴の吐出特性に優れ、且つ耐久性に優れたものとなる。
ここで、前記溝部は、前記隔壁をその高さ方向に貫通していることが好ましい。これによれば、隔壁の変形による圧力をより吸収することができる。
また、前記溝部は、その開口の長手方向の長さが前記隔壁の長手方向の長さと略同一となっていることが好ましい。これによれば、隔壁の変形による圧力をより一層吸収することができる。
また、前記流路形成基板は、シリコン単結晶基板からなり、前記充填部材は、前記液体に対して耐性を有する樹脂から構成されていることが好ましい。これによれば、万が一、隔壁にピンホールが生じて液体が溝部の充填部材に達しても、液滴に充填部材が溶解することを防止できる。
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、吐出特性及び耐久性に優れた液体噴射装置を実現できる。
以下本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図、図2(a)は図1の平面図、図2(b)は図2(a)のA−A´線断面図及び図3は図2(b)のB−B´線断面図である。
これらの図に示すように、流路形成基板10は、本実施形態では板厚方向の結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化によって二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12がその幅方向(短手方向)に並設されている。また、各列の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。すなわち、本実施形態では、流路形成基板10に液体流路として、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15が形成されている。
連通部13は、後述する保護基板30のリザーバ部31と連通して圧力発生室12の列毎に共通のインク室となるリザーバ100の一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。本実施形態では、インク供給路14は、圧力発生室12及び連通路15の一方の幅を狭めることで形成されているが、特にこれに限定されず、例えば圧力発生室12及び連通路15の両側の幅を狭めることでインク供給路14を形成するようにしてもよく、厚さ方向に絞ることでインク供給路14を形成してもよい。
また、詳細は後述するが、各隔壁11には、溝部17が設けられ、溝部17には、充填部材の一例であるシリコーン樹脂18が充填されている。
流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、酸化ジルコニウム(ZrO2)等からなる絶縁体膜55が積層形成されている。また、この絶縁体膜55上には、下電極膜60と、圧電体膜の一例であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層70と、上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。このように、本実施形態では、圧力発生室12内のインク(液体)に圧力変化を生じさせる圧力発生素子として、圧電素子300を設けるようにした。
一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、下電極膜60を圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエータ装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50及び絶縁体膜55が振動板として作用するが、弾性膜50又は絶縁体膜55の何れか一方のみを振動板として設けるようにしてもよい。
圧電体層70は、下電極膜60上に形成される電気機械変換作用を示す圧電材料、特に圧電材料の中でもペロブスカイト構造の強誘電体材料からなる。また、圧電素子300の個別電極である各上電極膜80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、下電極膜60、絶縁体膜55及びリード電極90上には、リザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このリザーバ部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、リザーバ部31のみをリザーバとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜55等)にリザーバと各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
保護基板30には、圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。なお、圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、貫通孔33を挿通させたボンディングワイヤ等の導電性ワイヤからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料の面方位(110)のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムからなり、この封止膜41によってリザーバ部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料、例えば、ステンレス鋼(SUS)等で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
ここで、流路形成基板10の隔壁11に設けられた溝部17及び溝部17に充填されたシリコーン樹脂18について詳細に説明する。
本実施形態に係る溝部17は、下電極膜60、絶縁体膜55、弾性膜50、及び隔壁11に、隔壁11の長手方向に沿って延設され、下電極膜60に開口している。溝部17は、下電極膜60、絶縁体膜55、及び弾性膜50の隔壁11に対向する領域を貫通すると共に、隔壁11をその厚さ方向に貫通しており、ノズルプレート20の溝部17に対向する領域が溝部17の底面となっている。
溝部17には、その底面から開口まで充填部材の一例であるシリコーン樹脂18が充填されている。充填部材としては、シリコン単結晶基板からなる隔壁11よりも低硬度の材料からなるものであればシリコーン樹脂に限定されない。なお、シリコーン樹脂18は、インクに対して耐性を有しており、万が一、隔壁11にピンホールなどが生じてインクが溝部17のシリコーン樹脂18に達しても、シリコーン樹脂18がインクに溶解することを防止できる。
このように隔壁11に溝部17を設け、溝部17に隔壁11よりも低硬度のシリコーン樹脂18を充填したため、圧電素子300により一の圧力発生室12に加えられた圧力で隔壁11が変形しても、その変形による圧力はシリコーン樹脂18に吸収され、他の圧力発生室12にその圧力が伝播し難くなっている。すなわち、各圧力発生室12にインク滴を吐出するための圧力が加えられても、各圧力発生室12同士で相互にインク滴の吐出特性に影響を及ぼし合うことが低減される。更に、シリコーン樹脂18により、溝部17を設けたことにより薄くなった隔壁11の強度が向上している。
なお、シリコーン樹脂18は、溝部17の底面から開口まで充填されている必要はない。少なくとも溝部17のうち、隔壁11をその厚さ方向に貫通した領域にシリコーン樹脂18が充填されていればよい。シリコーン樹脂18は、隔壁11の変形による圧力を吸収するものだからである。また、溝部17は、下電極膜60、絶縁体膜55、及び弾性膜50を貫通して下電極膜60に開口している必要はない。溝部は、少なくとも隔壁11にその長手方向に沿って延設されて隔壁11の圧電素子300側の面に開口していればよい。このような溝部であれば、該溝部に充填された充填部材が隔壁11の変形による圧力を吸収するからである。
また、溝部17の深さは特に限定されないが、本実施形態の溝部17のように、隔壁11をその高さ方向に貫通していることが好ましい。これにより、隔壁11の変形による圧力をより吸収することができる。また、溝部17の長手方向の長さは特に限定はされないが、開口の長手方向の長さは隔壁11の長手方向の長さと略同一であることが好ましい。これにより、隔壁11の長手方向の長さ全体に亘って形成された溝部に充填部材が充填されるので、隔壁11の変形による圧力をより一層吸収することができる。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出される。
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、前述したように各圧力発生室12同士で相互にインク滴の吐出特性に影響を及ぼしあうことが低減されているのでインク滴の吐出特性に優れ、更に、隔壁11の強度が向上しているので耐久性に優れている。
ここで、インクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図4〜図8を参照して説明する。なお、図4〜図5、図7〜8は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す圧力発生室の長手方向の断面図、図6は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す圧力発生室の短手方向の断面図である。
まず、図4(a)に示すように、流路形成基板10が複数個一体的に形成されるシリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110を熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン膜51を形成する。
次いで、図4(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。具体的には、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、例えば、スパッタ法等によりジルコニウム(Zr)層を形成後、このジルコニウム層を熱酸化することにより酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜55を形成する。
次いで、図4(c)に示すように、例えば、白金とイリジウムとを絶縁体膜55上に積層することにより下電極膜60を形成した後、この下電極膜60を所定形状にパターニングする。なお、下電極膜60は、白金(Pt)とイリジウム(Ir)とを積層したものに限定されず、これらを合金化させたものを用いるようにしてもよい。また、下電極膜60として、白金(Pt)とイリジウム(Ir)の何れか一方の単層として用いるようにしてもよく、さらに、これらの材料以外の金属又は金属酸化物等を用いるようにしてもよい。
次に、図5(a)に示すように、下電極膜60上に圧電体層70及び上電極膜80を順次積層形成する。ここで、本実施形態では、有機金属化合物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法、スパッタリング法又はレーザーアブレーション法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法等を用いてもよい。また、上電極膜80は、導電性の高い金属、例えば、イリジウム(Ir)等を用いることができる。
次に、図5(b)に示すように、圧電体層70及び上電極膜80を同時にパターニングすることで、圧電素子300を形成する。具体的には、圧電体層70及び上電極膜80をパターニングすることで、流路形成基板用ウェハ110の各圧力発生室12が形成される領域に相対向する領域に圧電素子300を形成する。
次に、図5(c)に示すように、リード電極90を形成する。具体的には、流路形成基板用ウェハ110の全面に亘ってリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングすることで形成される。
次に、図6(a)に示すように、隔壁11に溝部17を形成する。具体的には、流路形成基板用ウェハ110の全面に設けたレジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して、ドライエッチングにより下電極膜60、絶縁体膜55、弾性膜50、及び流路形成基板用ウェハ110を除去することで溝部17を形成する。なお、後の工程で、流路形成基板用ウェハを所定の厚みに薄くするので、この時点で溝部17は流路形成基板用ウェハ110を貫通している必要はない。
次に、図6(b)に示すように、溝部17にシリコーン樹脂18を充填する。具体的には、シリコーン樹脂18を溝部17に注入し、このシリコーン樹脂18を硬化させる。
なお、図6(a)に示した工程において設けたマスクパターンは、溝部17にシリコーン樹脂18を充填した後に除去することが好ましい。これにより、溝部17にシリコーン樹脂18を充填する際に、シリコーン樹脂18が溝部17外にはみ出しても、はみ出したシリコーン樹脂18はマスクパターン上に付着することになる。そして、例えば、酸素(O2)ガスプラズマでエッチングすることによりマスクパターンを除去すれば、このはみ出したシリコーン樹脂18も一緒に除去されるため、流路形成基板用ウェハ110上にシリコーン樹脂18が残留することを防止できる。
次に、図7(a)に示すように、保護基板用ウェハ130を、流路形成基板用ウェハ110上に接着剤35を介して接着する。ここで、この保護基板用ウェハ130は、保護基板30が複数一体的に形成されたものであり、保護基板用ウェハ130には、リザーバ部31、圧電素子保持部32及び貫通孔33が予め形成されている。
次に、図7(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110を所定の厚みに薄くする。詳言すると、隔壁11に設けた溝部17が、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面に現れるように、流路形成基板用ウェハ110を所定の厚みに薄くする。
次いで、図7(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110上にマスク膜52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図8に示すように、流路形成基板用ウェハ110をマスク膜52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)を行なうことにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハ110表面のマスク膜52を除去し、流路形成基板用ウェハ110及び保護基板用ウェハ130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハ110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。
上述の如きインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図9は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。同図に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上を搬送されるようになっている。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、流路形成基板10としてシリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、SOI基板、ガラス基板、MgO基板等においても本発明は有効である。同様に、保護基板用ウェハ130としてシリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、SOI基板、ガラス基板、MgO基板等であってもよい。
さらに、上述した例では、圧力発生室12に圧力を付与する圧力発生素子として、薄膜型(撓み振動型)の圧電素子300を例示したが、圧力発生素子としては、特にこれに限定されるものではない。圧力発生素子の他の例としては、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電素子や、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子や、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を振動させるいわゆる静電式アクチュエータなどが挙げられる。
なお、上述した実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 15 連通路、 17 溝部、 18 シリコーン樹脂、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 リザーバ部、 32 圧電素子保持部、 33 貫通孔、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 下電極膜、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ、 120 駆動回路、 121 接続配線、 300 圧電素子
Claims (5)
- 液体を噴射するノズル開口に連通し隔壁によって区画された複数の圧力発生室がその幅方向に並設された流路形成基板と、
該流路形成基板の一方面側に設けられて前記圧力発生室に圧力変化を付与する圧力発生素子と、
前記隔壁にその長手方向に沿って延設されて前記隔壁の前記圧力発生素子側の面に開口する溝部と、
前記溝部に充填されて前記隔壁よりも低硬度の材料からなる充填部材とを具備する
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 請求項1に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記溝部は、前記隔壁をその高さ方向に貫通している
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 請求項1又は請求項2に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記溝部は、その開口の長手方向の長さが前記隔壁の長手方向の長さと略同一となっている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記流路形成基板は、シリコン単結晶基板からなり、
前記充填部材は、前記液体に対して耐性を有する樹脂から構成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 請求項1〜4の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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2008
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