上記した特許文献1記載の如きリング型通信ネットワークシステムでは、通信線を通じたノード間の通信が正常であれば、その通信線を利用してノード自体の正常/異常を判定することは可能であるので、その結果として、異常発生時、通信ネットワークシステムにおいてその異常が発生した箇所をある程度絞り込むことはできる。しかし、一旦そのノード間通信に異常が発生してそのノード間通信を正常に行うことができなくなると、その通信線を利用した異常判定を行うことができなくなるので、その結果として、リング型通信ネットワークシステムの異常発生箇所を絞り込むことは困難となる。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、リング型通信ネットワークシステムにおいて通信線を通じたノード間通信に異常が発生した場合にその異常発生箇所をある程度絞り込むことが可能な異常検出システム及び異常検出方法を提供することを目的とする。
上記の目的は、複数のノードが通信線を介してリング状に接続され、該通信線を通じてノード間の通信が行われるリング型通信ネットワークシステムの異常を検出するシステムであって、前記通信線とは別の、ノードに電源供給を行う電源供給ラインを用いて、該ノードに関わる正常/異常を判定するリング型通信ネットワークシステムの異常検出システムにより達成される。
また、上記の目的は、複数のノードが通信線を介してリング状に接続され、該通信線を通じてノード間の通信が行われるリング型通信ネットワークシステムの異常を検出する方法であって、前記通信線とは別の、ノードに電源供給を行う電源供給ラインを用いて、該ノードに関わる正常/異常を判定するリング型通信ネットワークシステムの異常検出方法により達成される。
これらの態様の発明においては、複数のノードがリング状に接続される通信線とは別に、ノードに電源供給を行う電源供給ラインが設けられている。そして、ノードに関わる正常/異常の判定は、この電源供給ラインを用いて行われる。かかる構成においては、通信線を通じたノード間通信に異常が発生した場合、ノード間で電源供給ラインを通じて信号が授受されることで、各ノードごとに正常/異常の判定を行うことができる。従って、本発明によれば、リング型通信ネットワークシステムにおいて通信線を通じたノード間通信に異常が発生した場合にその異常発生箇所をある程度絞り込むことができる。
尚、上記したリング型通信ネットワークシステムの異常検出システムにおいて、主ノードは、前記電源供給ラインを通じて従ノードに自己診断の実施指示を示す電圧変動によるダウン側通信パルスを送信するダウン側通信パルス送信手段を備え、従ノードは、主ノードから前記電源供給ラインを通じて送信された前記ダウン側通信パルスを受信した場合に、自己診断を実施する自己診断実施手段と、前記自己診断実施手段による診断結果を示す電圧変動によるアップ側通信パルスを前記電源供給ラインを通じて主ノードに返信するアップ側通信パルス返信手段と、を備え、かつ、主ノードは、また、ダウン側通信パルス送信手段による前記ダウン側通信パルスの送信後、該従ノードから前記電源供給ラインを通じて返信される前記アップ側通信パルスに基づいて、該従ノードに関わる正常/異常を判定する正常/異常判定手段を備えることとすればよい。
また、上記したリング型通信ネットワークシステムの異常検出方法において、主ノードに、前記電源供給ラインを通じて従ノードに自己診断の実施指示を示す電圧変動によるダウン側通信パルスを送信させるダウン側通信パルス送信ステップと、従ノードに、主ノードから前記電源供給ラインを通じて送信された前記ダウン側通信パルスが受信された場合に、自己診断を実施させる自己診断実施ステップと、従ノードに、前記自己診断実施ステップにおける診断結果を示す電圧変動によるアップ側通信パルスを前記電源供給ラインを通じて主ノードに返信させるアップ側通信パルス返信ステップと、主ノードに、ダウン側通信パルス送信ステップにおける前記ダウン側通信パルスの送信後、該従ノードから前記電源供給ラインを通じて返信される前記アップ側通信パルスに基づいて、該従ノードに関わる正常/異常を判定させる正常/異常判定ステップと、を備えることとすればよい。
これらの態様の発明において、従ノードに関わる正常/異常の判定は、電源供給ラインでの電圧変動による通信パルスの授受に従って行われる。かかる構成においては、通信線を通じたノード間通信に異常が発生した場合、主ノードと従ノードとの間で電源供給ラインを通じて通信パルスを授受することで、各従ノードごとに正常/異常の判定を行うことができる。従って、本発明によれば、リング型通信ネットワークシステムにおいて通信線を通じたノード間通信に異常が発生した場合にその異常発生箇所をある程度絞り込むことができる。
この場合、前記ダウン側通信パルス送信手段は、前記通信線を通じたノード間の通信異常が発生した場合に、前記電源供給ラインを通じて従ノードに前記ダウン側通信パルスを送信することとすればよい。
また、前記ダウン側通信パルス送信ステップは、前記通信線を通じたノード間の通信異常が発生した場合に、主ノードに、前記電源供給ラインを通じて従ノードに前記ダウン側通信パルスを送信させることとすればよい。
これらの態様の発明においては、通信線を通じたノード間通信に異常が発生した場合にのみ、主ノードと従ノードとの間で電源供給ラインを通じて通信パルスを授受することで、各従ノードごとに正常/異常の判定を行うことができる。
また、前記ダウン側通信パルス送信手段は、前記ダウン側通信パルスの送信を、主ノード以外のすべての従ノードに対して予め定められた順序で行うこととすればよい。
また、前記ダウン側通信パルス送信ステップは、主ノードに、前記ダウン側通信パルスの送信を、主ノード以外のすべての従ノードに対して予め定められた順序で行わせることとすればよい。
これらの態様の発明においては、従ノードに関わる正常/異常の判定は、従ノードごとに、電源供給ラインでの電圧変動による通信パルスの授受に従って行われる。従って、本発明によれば、リング型通信ネットワークシステムにおいて通信線を通じたノード間通信に異常が発生した場合にその異常発生箇所をある程度絞り込むことができる。
ところで、上記したリング型通信ネットワークシステムの異常検出システムにおいて、前記電源供給ラインは、主ノードと各従ノードとが直列接続されるように設けられ、前記通信線と一体に束ねられて共通のコネクタを介して主ノード又は従ノードに接続されており、前記正常/異常判定手段は、従ノードごとに、ダウン側通信パルス送信手段による前記ダウン側通信パルスの送信後、該従ノードから前記電源供給ラインを通じて返信される前記アップ側通信パルスを受信しない場合に、該従ノード自体又は該従ノードまでのコネクタ接続に異常が生じていると判定することとすればよい。
この態様の発明においては、通信線を通じたノード間通信に異常が発生した場合、主ノードと従ノードとの間で電源供給ラインを通じて通信パルスを授受することで、各従ノードごとに従ノード自体又はその従ノードまでのコネクタ接続の正常/異常の判定を行うことができる。従って、本発明によれば、リング型通信ネットワークシステムにおいて通信線を通じたノード間通信に異常が発生した場合にその異常の発生したノード又は接続コネクタをある程度絞り込むことができる。
また、上記したリング型通信ネットワークシステムの異常検出システムにおいて、前記電源供給ラインは、主ノードと各従ノードとが並列接続されるように従ノードごとにそれぞれ独立して設けられており、前記正常/異常判定手段は、従ノードごとに、ダウン側通信パルス送信手段による前記ダウン側通信パルスの送信後、該従ノードから前記電源供給ラインを通じて返信される前記アップ側通信パルスを受信しない場合に、該従ノード自体に異常が生じていると判定することとすればよい。
この態様の発明においては、通信線を通じたノード間通信に異常が発生した場合、主ノードと従ノードとの間で電源供給ラインを通じて通信パルスを授受することで、各従ノードごとに従ノード自体の正常/異常の判定を行うことができる。従って、本発明によれば、リング型通信ネットワークシステムにおいて通信線を通じたノード間通信に異常が発生した場合にその異常の発生したノードをある程度絞り込むことができる。
尚、上記したリング型通信ネットワークシステムの異常検出システムにおいて、前記ダウン側通信パルス送信手段による前記ダウン側通信パルス、及び、前記アップ側通信パルス返信手段による前記アップ側通信パルスはそれぞれ、従ノード自体又は主ノード自体の動作に影響を及ぼさない範囲で電圧変動される信号であることとすれば、リング型通信ネットワークシステムの異常発生箇所の絞り込みを各ノードの動作機能を阻害することなく行うことができる。
更に、上記したリング型通信ネットワークシステムの異常検出システムにおいて、前記電源供給ラインは、アクセサリ電源ライン又はイグニション電源ラインであることとすれば、車両に搭載されたリング型通信ネットワークシステムにおいて通信線を通じたノード間通信に異常が発生した場合にその異常発生箇所をある程度絞り込むことができる。
この場合、前記電源供給ラインは、キースイッチがアクセサリオン状態になると起動するACC駆動型ノードに対してはアクセサリ電源ラインであり、また、キースイッチがイグニションオン状態になると起動するIG駆動型ノードに対してはイグニション電源ラインであることとすればよい。
また、この場合、キースイッチがイグニションオン状態にあるとき、前記IG駆動型ノードに関わる正常/異常を前記ACC駆動側ノードに関わるものよりも優先的に判定することとすれば、運転操作に使用されることの比較的多い安全上重要なノードであるIG駆動型ノードの異常判定を効率的に行うことができる。
本発明によれば、リング型通信ネットワークシステムにおいて通信線を通じたノード間通信に異常が発生した場合にその異常発生箇所をある程度絞り込むことができる。
図1は、本発明の第1実施例であるリング型通信ネットワークシステム10の構成図を示す。本実施例のリング型通信ネットワークシステム10は、車両に搭載されるネットワークシステムであり、ナビゲーション装置やエンジン装置,ブレーキ装置などの複数の車載電子制御ユニット(車載ECU)を通信接続させた構成を有している。
すなわち、リング型通信ネットワークシステム10は、複数(本実施例では4つ)の車載ECUとしてのノード12を備えている。ノード12には、このリング型ネットワークシステム10を統括する一つのマスターノード12Mと、そのマスターノード12M以外の一般ノード(本実施例では3つ)12A,12B,12Cと、がある。
複数のノード12は、通信線14を介してリング状に接続されており、一本のリング状の通信線14に接続されている。具体的には、マスターノード12Mとノード12Aとが通信線14MAを介して接続され、ノード12Aとノード12Bとが通信線14ABを介して接続され、ノード12Bとノード12Cとが通信線14BCを介して接続され、また、ノード12Cとマスターノード12Mとが通信線14CMを介して接続されている。
すなわち、リング型通信ネットワークシステム10は、一本の通信線14に繋がれた複数のノード12からなり、マスターノード12Mを中心にしてその通信線14の始点と終点とを結んだものとなっている。リング型通信ネットワークシステム10は、通信線14における信号の流れを予め定めた一方向に限定して信号を巡回させる。具体的には、マスターノード12M→ノード12A→ノード12B→ノード12C→マスターノード12Mの方向にのみ信号を巡回させる。
各ノード12はそれぞれ、所定のデータを他のノード12に送るべくそのデータを示す信号を信号巡回方向側の通信線14に送信すると共に、信号巡回方向と反対方向側の通信線14から送信されてくる信号を受信する。ノード12は、通信線14を通じて他のノード12と通信を行う。すなわち、リング型通信ネットワークシステム10において、ノード12間の通常のデータ通信は、一方向にのみ信号が流れるリング状の通信線14を通じて行われる。
また、各ノード12にはそれぞれ、電源供給を行う電源供給ライン(図1において破線で示す)16が接続されている。電源供給ライン16は、リング型通信ネットワークシステム10のノード12がアクセサリ電源で動作すべき車載機器すなわちキースイッチがアクセサリオン状態になると起動するACC駆動型ノードであるときはACC電源ラインであり、ノード12がイグニション電源で動作すべき車載機器すなわちキースイッチがイグニションオン状態になると起動するIG駆動型ノードであるときはIG電源ラインであり、また、ノード12が車載バッテリ電源で動作すべき車載機器すなわちキースイッチの状態に関係なく常時動作する+B駆動型ノードであるときは車載バッテリに直結した+B電源ラインである。
各ノード12はそれぞれ、電源供給ライン16を通じて所定電圧以上の電源供給がなされることにより起動して動作可能になる一方、供給される電源が所定電圧未満であるときは動作不可能になる。また、ACC駆動型ノードは、電源供給ライン16であるACC電源ラインに接続されており、キースイッチがアクセサリオン状態になるとアクセサリ電源がオンとなって起動するが、その起動後、キースイッチがアクセサリオフ状態になるまでアクセサリ電源がオンに維持されることで動作可能状態を継続し、キースイッチがイグニションオン状態にあっても動作可能である。
電源供給ライン16は、各ノード12が直列接続されるように具体的にはマスターノード12M、ノード12A、ノード12B、及びノード12Cがその順で直列接続されるように一本だけ設けられている。すなわち、電源供給ライン16は、ACC電源ライン、IG電源ライン、及び+B電源ラインの何れか一つの電源ラインであり、すべてのノード12は、一本の電源供給ライン16からそれぞれ電源供給され得るノードであり、ACC駆動型ノード、IG駆動型ノード、及び+B駆動型ノードの何れか一つに統一されている。
また、電源供給ライン16は、マスターノード12Mとノード12Aとの間、ノード12Aとノード12Bとの間、及びノード12Bとノード12Cとの間において、上記した通信線14と一体に束ねられており、通信線14と共通の接続コネクタ18を介してノード12に接続されている。かかる構造においては、ノード12に接続コネクタ18が装着されると、通信線14及び電源供給ライン16の双方が共にそのノード12に接続される一方、その装着が解除されると、そのノード12への通信線14及び電源供給ライン16の接続が共に解除されることとなる。尚、ノード12Cとマスターノード12Mとの間には、電源供給ライン16は存在せず、通信線14のみが接続コネクタ18を介してノード12に接続される。
図2は、本実施例のリング型通信ネットワークシステム10の備えるマスターノード12Mの内部構成図を示す。図2に示す如く、マスターノード12Mは、演算処理部30、送信部32、受信部34、電圧入出力部36、及び記憶部38を有している。演算処理部30は、送信部32、受信部34、電圧入出力部36、及び記憶部38それぞれに接続している。送信部32には通信線14MAが、受信部34には通信線14CMが、また、電圧入出力部16には電源供給ライン16が、それぞれ接続されている。
演算処理部30は、適当な時期にノード12A〜12C宛に送信すべきデータを通信線14MAから送信するように送信部32に指令信号を供給する。送信部32は、演算処理部30から供給される指令信号に従って、ノード12A〜12C宛に送信すべきデータを示す信号を通信線14MAに送出する。受信部34は、通信線14CMに送出されている信号を受信し、その受信信号を演算処理部30に供給する。演算処理部30は、受信部34から供給される受信信号を演算処理し、その受信信号に従って所定の制御を行う。
演算処理部30は、また、後に詳述する如く、適当な時期にノード12A〜12Cごとにそのノード12の自己診断を実施させるための信号を送信するように電圧入出力部36に指令信号を供給する。この指令信号は対象のノード12A〜12Cごとに異なるものであり、演算処理部30はノード12A〜12Cに対して一つずつ順に自己診断を実施させる。電圧入出力部36は、演算処理部30から指令信号が供給された場合、その指令信号に従った変動パターンで電源供給ライン16に印加する電圧を時間変化させる。
電圧入出力部36は、また、演算処理部30から供給された指令信号に従って電源供給ライン16に所定変動パターンの電圧を印加させた後、その電源供給ライン16に生ずる電圧の時間変化を測定し、その測定結果を演算処理部30に供給する。演算処理部30は、電圧入出力部36に指令信号を供給してノード12の自己診断を実施させた後、その電圧入出力部36から供給される測定結果に基づいてそのノード12の自己診断結果を検出し、その診断結果をその診断結果に係るノード12のID情報(アドレス)とリンクさせて記憶部38に記憶させる。
また、一般ノード12A〜12Cはそれぞれ、演算処理部、送信部、受信部、及び電圧入出力部(何れも図示せず)を有している。この演算処理部は、送信部、受信部、及び電圧入出力部それぞれに接続している。送信部及び受信部には通信線14が、また、電圧入出力部には電源供給ライン16が、それぞれ接続されている。
一般ノード12A〜12Cの受信部は、信号巡回方向と反対方向側の通信線14に送出された信号を受信し、その受信信号を演算処理部に供給する。演算処理部は、受信部から供給される受信信号を演算処理し、その受信信号に従って所定の制御を行う。演算処理部は、また、生成したデータを他のノード12に送信するように送信部に指令信号を供給する。送信部は、演算処理部から供給される指令信号に従って、他のノード12に送信すべき生成データを示す信号を信号巡回方向側の通信線14に送出する。
また、一般ノード12A〜12Cの電圧入出力部は、電源供給ライン16に生じている電圧の時間変化を測定し、その測定結果を演算処理部に供給する。演算処理部は、電圧入出力部から供給される測定結果に基づいて、マスターノード12Mから自ノード12に対する自己診断の実施が指令されるか否かを判別し、肯定判定がなされた場合に自ノード12の自己診断を実施する。そして、その自己診断結果を示す信号をマスターノード12Mに送信するように電圧入出力部に指令信号を供給する。電圧入出力部は、演算処理部から指令信号が供給された場合、その指令信号に従った変動パターンで電源供給ライン16に印加する電圧を時間変化させる。
次に、図3及び図4を参照して、本実施例のリング型通信ネットワークシステム10において通信異常を検出すべく実行される動作について説明する。図3は、本実施例のリング型通信ネットワークシステム10において通信異常を検出すべく実行される制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。また、図4は、本実施例のリング型通信ネットワークシステム10において通信異常を検出する過程で電源供給ライン16に生ずる電圧の時間変化を表した図を示す。
本実施例において、マスターノード12Mは、アクセサリ電源のオンやイグニション電源のオンなどにより電源供給ライン16への電源供給が開始されると、以後、定期的にシステムの通信線14による通信状態を監視する処理を行う(ステップ100)。具体的には、マスターノード12Mの演算処理部30は、送信部32から通信線14MAへ送出させたデータが通信線14を巡回して受信部34に適正に戻ってくるか否かを判別する(ステップ102)。その結果、かかるデータが受信部34に適正に戻ってきたと判別したときは、通信線14による通信状態が正常状態にあると判断し、以後も継続して上記の如く定期的にシステムの通信状態を監視する。
一方、通信線14MAへ送出させたデータが受信部34に適正に戻ってこないと判別したときは、通信線14による通信状態が異常状態にあると判断し、まず、自己診断処理を実行させる対象のノード(診断処理実行対象ノード)12を決定する(ステップ104)。例えば、その診断処理実行対象ノード12として、マスターノード12Mに通信線14を介して信号巡回方向で隣接するノード12Aを設定する。或いは、マスターノード12Mに通信線14を介して信号巡回方向で最も遠いノード12Cを設定する。
マスターノード12Mは、上記ステップ104で診断処理実行対象ノード12を決定すると、所定時間だけ、電源供給ライン16を通じてその診断処理実行対象ノード12に設定したノード12A〜12Cに自己診断処理の実施を指示する旨を示す通信パルス信号(ダウン側通信パルス信号)を送信する(ステップ106)。
具体的には、マスターノード12Mの演算処理部30は、自己診断処理を指示する旨のダウン側通信パルス信号を電源供給ライン16へ送出するように電圧入出力部36に指令信号を供給する。そして、電圧入出力部36は、演算処理部30からかかる指令信号が供給されると、その指令信号に従って、自己診断処理を実施させる一つの対象ノード12のID情報と自己診断処理の実施を指示する旨とを示す所定時間の電圧変動パターンの波形を生成したうえで、その変動パターンで電源供給ライン16に電圧が印加されるようにその電源供給ライン16に印加する電圧を時間変化させることでダウン側通信パルス信号を送信する。
この場合、以後所定時間だけ、電源供給ライン16に生ずる電圧は、診断処理実行対象ノード12のID情報と自己診断処理の実施を指示する旨とを示す電圧変動パターンで変動することとなる(図4参照)。尚、この所定時間が経過した後は、電源供給ライン16に生ずる電圧は、通常どおりの一定電圧となる。
尚、上記の如くダウン側通信パルス信号の送信を行ううえでは、電源供給ライン16に印加する電圧の変動はマスターノード12Mや一般ノード12A〜Cの動作に影響を及ぼさない範囲(図4に点線で示す下限と上限との間の範囲)で行われる。
すべての一般ノード12はそれぞれ、電源供給されて動作可能であれば常に、電源供給ライン16に生じている電圧の時間変化を電圧入出力部に測定させる。そして、演算処理部に、その電源供給ライン16の電圧の時間変化に基づいて、自ノード12宛に送信されるダウン側通信パルス信号が受信部に受信されて、マスターノード12Mから自ノード12A〜12Cに対する自己診断の実施が指令されるか否かを判別させる。
その結果、演算処理部は、自ノード12宛のダウン側通信パルス信号を受信せず、自己診断の実施が指令されていないと判別した場合は、自己診断処理を実施することはないが、一方、自ノード12宛のダウン側通信パルス信号を受信して、自己診断の実施が指令されたと判別した場合は、自ノード12の正常/異常を検出すべく自己診断処理を実施する(ステップ200)。そして、マスターノード12Mによる電源供給ライン16の電圧変動に係るダウン側通信パルス信号の送信完了後かつマスターノード12Mからのダウン側通信パルス信号の受信完了後にその自己診断処理を実施すると、所定時間だけ、電源供給ライン16を通じてマスターノード12Mにその自己診断の実施結果(正常/異常)を示す通信パルス信号(アップ側通信パルス信号)を返信する(ステップ202)。
具体的には、自己診断を実施した一般ノード12A〜12Cの演算処理部は、自己診断の実施結果を示すアップ側通信パルス信号を電圧入出力部から電源供給ライン16へ送出するように電圧入出力部に指令信号を供給する。そして、電圧入出力部は、演算処理部30からかかる指令信号が供給されると、その指令信号に従って、マスターノード12MのID情報と自己診断を実施した自ノード12のID情報とその自己診断の実施結果とを示す所定時間の電圧変動パターンの波形を生成したうえで、その変動パターンで電源供給ライン16に電圧が印加されるようにその電源供給ライン16に印加する電圧を時間変化させることでアップ側通信パルス信号を返信する。
この場合、以後所定時間だけ、電源供給ライン16に生ずる電圧は、マスターノード12MのID情報と自己診断を実施した一般ノード12A〜12CのID情報と自己診断の実施結果とを示す電圧変動パターンで変動することとなる。尚、この所定時間が経過した後は、電源供給ライン16に生ずる電圧は、通常どおりの一定電圧となる。
尚、上記の如くアップ側通信パルス信号の送信を行ううえでも、電源供給ライン16に印加する電圧の変動はマスターノード12Mや一般ノード12A〜Cの動作に影響を及ぼさない範囲で行われる。
マスターノード12Mは、診断処理実行対象ノード12にダウン側通信パルス信号を送信した後、そのノード12から返信されるアップ側通信パルス信号が受信されると予測される所定時間、電源供給ライン16に生じている電圧の時間変化を電圧入出力部36に測定させる。そして、演算処理部30に、その所定時間中の電源供給ライン16の電圧の時間変化に基づいて、自ノード12M宛に送信されるアップ側通信パルス信号が受信部に受信されて、一般ノード12A〜12Cから自ノード12Mに対する自己診断の実施結果が通知されるか否かを判別させる(ステップ120)。
かかる通知がなされるときは、少なくともマスターノード12Mからそのノード12A〜12Cに至るまでの通信線14及び電源供給ライン16に関し接続コネクタ18が適正にノード12に装着されていると判断できる。一方、かかる通知がなされないときは、その通信線14又は電源供給ライン16が適正にノード12に接続されておらずその接続コネクタ18が適正にノード12に装着されていない、或いは、診断処理実行対象ノード12自体に故障が生じていると判断できる。例えば、診断処理実行対象ノード12が一般ノード12Aである状況において、そのノード12Aの自己診断の実施結果が通知されないときは、通信線14MAとノード12(マスターノード12M及び一般ノード12A)とを接続すべき接続コネクタ18がマスターノード12M又は一般ノード12Aに装着されていない、或いは、ノード12A自体に故障が生じていると判断できる。
従って、演算処理部30は、上記ステップ120の処理の結果、ダウン側通信パルス信号の送信後の所定時間内に自ノード12M宛のアップ側通信パルス信号を受信して、一般ノード12A〜12Cの自己診断の実施結果が通知されたと判別した場合は、その診断結果をその診断結果に係るノード12A〜12CのID情報とリンクさせて記憶部38に記憶させる(ステップ122)。一方、ダウン側通信パルス信号の送信後の所定時間内に自ノード12M宛のアップ側通信パルス信号を受信せず、一般ノード12A〜12Cの自己診断の実施結果が通知されなかったと判別した場合は、ダウン側通信パルス信号の送信先のノード12A〜12Cに関わる異常(具体的には、そのノード12A〜12C自体の故障又はマスターノード12Mからそのノード12A〜12Cに至るまでの通信線14のコネクタ接続の抜け異常)が生じていると判定し、その異常結果をその送信先のノード12A〜12CのID情報とリンクさせて記憶部38に記憶させる(ステップ124)。
尚、このように記憶部38に診断結果や異常結果が記憶された後は、その記憶部38に記憶されたデータは随時読み出し可能であり、通信線14を通じたノード間通信の異常発生後の例えば車両修理時(メンテナンス時)などにその結果が読み出される。
マスターノード12Mは、上記ステップ122又は124の処理を行うと、次に、すべての一般ノード12A〜12Cのうち自己診断処理を実施させる診断処理実行対象ノードになっていないノード12A〜12Cが現に存在するか否かを判別する(ステップ126)。その結果、かかるノード12A〜12Cが未だ存在すると判別した場合は、次に、診断処理実行対象ノードとなるべきノード12を決定する(ステップ128)。例えば、ノード12A→ノード12B→ノード12Cの順で診断処理実行対象ノードが設定されるようにする。
そして、上記したステップ106の処理を繰り返し行う。尚、マスターノード12Mによる電源供給ライン16へのダウン側通信パルス信号の送信は、一般ノード12A〜12Cによる電源供給ライン16へのアップ側通信パルス信号の送信と重ならないタイミングで行われる。そして、上記ステップ126の処理の結果、すべての一般ノード12A〜12Cが診断処理実行対象ノードとなり、診断処理実行対象ノードになっていないノード12A〜12Cが存在しなくなったと判別した場合は、今回のルーチンを終了する。
図3に示すルーチンによれば、通信線14を通じたノード12間通信に異常が発生した場合に、その通信線14とは別の電源供給ライン16を通じてマスターノード12Mと一般ノード12A〜12Cとの間で通信パルスを授受することで、一般ノード12A〜12Cに関わる正常/異常を判定することができる。具体的には、一般ノード12A〜12Cごとにマスターノード12Mとの間で電源供給ライン16での電圧変動によるダウン側通信パルスとアップ側通信パルスとを授受することにより、そのノード12A〜12C自体の故障又はそのノード12A〜12Cに至るまでの通信線14のコネクタ接続抜けの発生を検知することができる。
このような処理が一般ノード12A〜12Cごとに行われれば、故障が発生しているノード12、或いは、コネクタ接続抜けが発生しているノード12間の箇所(通信線14MA,14AB,14BC,14CM)を具体的に特定することができる。従って、本実施例によれば、リング型通信ネットワークシステム10において通信線14を通じたノード間通信に異常が発生した場合に、その異常発生箇所をそのリング型通信ネットワークシステム10内である程度絞り込むことが可能となっている。このため、通信線14を通じたノード間通信の異常発生後、その異常発生の原因となった故障ノード12や接続抜けしている接続コネクタ18を速やかに発見することができ、故障ノード12の交換や接続抜けしている接続コネクタ18のノード12への装着によりその異常を速やかに解消させることが可能となる。
尚、上記の如く、ダウン側通信パルス信号及びアップ側通信パルス信号の送信を行ううえでは、電源供給ライン16に印加する電圧の変動はマスターノード12Mや一般ノード12A〜Cの動作に影響を及ぼさない範囲で行われる。このため、電源供給ライン16を用いた上記したリング型通信ネットワークシステム10内における異常発生箇所の絞り込みを、その電源供給ライン16の電源電圧低下によって各ノード12の動作機能を害することなく行うことが可能である。
また、本実施例のリング型通信ネットワークシステム10においては、通信線14を通じたノード間通信に異常が発生した場合にその異常発生箇所を特定するのに、各ノード12に電源供給を行う電源供給ライン16を用いる。そして、その電源供給ライン16から各ノード12へ電源印加を行いつつ各ノード12に自己診断処理を実施させる。例えば、電源供給ライン16がACC電源ラインである場合には、車両のキースイッチがアクセサリオン状態にあるとき及びイグニションオン状態にあるときに各ノード12にアクセサリ電源を供給しながら自己診断処理を実施させる。また、電源供給ライン16がIG電源ラインである場合には、車両のキースイッチがイグニションオン状態にあるときに各ノード12にイグニション電源を供給しながら自己診断処理を実施させる。
この点、本実施例においては、電源供給ライン16が各ノード12に電源供給を行っているときにその電源供給ライン16を用いてマスターノード12Mと一般ノード12A〜12Cとの間で通信を行ってそれらのノード12に自己診断処理を実施させる。このため、このような本実施例の構成によれば、電源供給ライン16が各ノード12に電源供給を行っていないときにその状態から強制的に電源供給ライン16に各ノード12に印加する電源電圧を発生させてそれらのノード12に自己診断処理を実施させる構成と比べて、通信ネットワークシステムにおける通信ICなどの構成の簡素化を図ることが可能となっている。
更に、本実施例の如く電源供給ライン16を用いて上記したリング型通信ネットワークシステム10内における異常発生箇所を絞り込むこととすれば、その異常発生箇所を絞り込むために電源供給ライン16や通信線14とは別にノード12間の通信線を増やしたりすることは不要である。従って、本実施例によれば、リング型通信ネットワークシステム10内における異常発生箇所の絞り込みを、複雑な構成によることなく簡易な構成で実現させることが可能となっている。
ところで、上記の第1実施例においては、電源供給ライン16がACC電源ライン、IG電源ライン、及び+B電源ラインの何れかであるリング型通信ネットワークシステム10を一つ設け、そのリング型通信ネットワークシステム10の有するノード12をACC駆動型ノード、IG駆動型ノード、及び+B駆動型ノードの何れか一つに統一するが、本発明はこれに限定されるものではなく、電源供給ライン16がACC電源ライン、IG電源ライン、及び+B電源ラインの何れかであるリング型通信ネットワークシステムを、電源供給ライン16の種類(ACC電源ラインとIG電源ラインと+B電源ライン)ごとに設け、それらの各リング型通信ネットワークシステムの有するノード12をその種類ごとにACC駆動型ノード、IG駆動型ノード、及び+B駆動型ノードの何れか一つに統一することとしてもよい。
かかる変形例においては、電源供給ライン16の種類ごとすなわちノード12の種類ごとにノード間通信の異常発生時に電源供給ライン16を用いて異常発生箇所を特定する処理を行うこととすればよい。この場合、キースイッチがアクセサリオン状態にあるときに、ACC電源ラインを電源供給ライン16とするリング型通信ネットワークシステムの異常発生箇所を特定する処理を行い、また、キースイッチがイグニションオン状態にあるときに、IG電源ラインを電源供給ライン16とするリング型通信ネットワークシステムの異常発生箇所を特定する処理と、ACC電源ラインを電源供給ライン16とするリング型通信ネットワークシステムの異常発生箇所を特定する処理と、を行う。
尚、ACC駆動型ノードはオーディオやナビゲーションなどに使用されるものであり運転操作に使用されることのあまりないものである一方、IG駆動型ノードはエンジンやメータ類などの運転操作に使用されることの比較的多い安全上重要なノードである。この点、キースイッチがイグニションオン状態にあるとき、キースイッチがアクセサリオン状態にあるときにも異常発生箇所を特定する処理が行われ得るACC駆動型ノード側のネットワークシステムの方から優先的に或いはランダムにその処理が行われるものとすると、ACC駆動型ノード側のネットワークシステムの異常発生箇所の特定処理が高頻度で行われる事態が生じ得、また、運転操作に使用されることの比較的多い安全上重要なノードであるIG駆動型ノード側のネットワークシステムについて異常発生箇所の特定処理が行われ難くなるおそれがある。
そこで、上記の変形例においては、複数のリング型通信ネットワークシステムで同時にノード間通信の異常が発生した場合、キースイッチがイグニションオン状態にあるときは、IG駆動型ノード側のネットワークシステムについての異常発生箇所の特定処理をACC駆動型ノード側のネットワークシステムについての異常発生箇所の特定処理よりも優先的に行うこととするのがよい。
かかる変形例によれば、キースイッチがイグニションオン状態にあるとき、運転操作に使用されることの比較的多い走行安全上重要なIG駆動型ノードの方がACC駆動型ノードの方よりも異常発生箇所の特定処理が優先的に行われるので、全体の期間を通してACC駆動型ノード側の異常発生箇所の特定処理が高頻度で行われるのを抑制して、各ネットワークシステムにおける異常発生箇所の特定処理の頻度を均一化できると共に、IG駆動型ノード側の異常発生箇所の特定処理を効率的に行うことができ、その結果として、イグニションオン後の車両の走行安全性を早期に高めることが可能となる。
図5は、本発明の第2実施例であるリング型通信ネットワークシステム100の構成図を示す。尚、図5において、上記図1に示す構成と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
すなわち、本実施例のリング型通信ネットワークシステム100は、第1実施例のリング型通信ネットワークシステム10と同様に、車両に搭載されるネットワークシステムであり、車載ECUを通信接続させた構成を有している。リング型通信ネットワークシステム100において、ノード12間の通常のデータ通信は、一方向にのみ信号が流れるリング状の通信線14を通じて行われる。
また、各ノード12にはそれぞれ、電源供給を行う電源供給ライン102が接続されている。電源供給ライン102は、ノード12がアクセサリ電源で動作すべき車載機器すなわちキースイッチがアクセサリオン状態になると起動するACC駆動型ノードであるときはACC電源ラインであり、ノード12がイグニション電源で動作すべき車載機器すなわちキースイッチがイグニションオン状態になると起動するIG駆動型ノードであるときはIG電源ラインであり、ノード12が車載バッテリ電源で動作すべき車載機器すなわちキースイッチの状態に関係なく常時動作する+B駆動型ノードであるときは車載バッテリに直結した+B電源ラインである。各ノード12はそれぞれ、電源供給ライン102を通じて所定電圧以上の電源供給がなされることにより起動して動作可能になる一方、供給される電源が所定電圧未満であるときは動作不可能になる。
電源供給ライン102は、マスターノード12Mと各一般ノード12A〜12Cとの接続が並列接続となるように一般ノード12A〜12Cごとにそれぞれ独立して設けられており、一般ノード12A〜12Cの数だけ設けられている(電源供給ライン102A,102B,102C)。各電源供給ライン102は、ACC電源ライン、IG電源ライン、及び+B電源ラインの何れかであり、通信線14と一体に束ねられることなくノード12に直接接続されている。尚、各電源供給ライン102A,102B,102Cは、互いに同じ種類のものであっても異なる種類のものであってもよく、各ノード12は、対応の電源供給ライン102から電源供給され得るノードであり、ACC駆動型ノード、IG駆動型ノード、及び+B駆動型ノードの何れかであり、互いに同じ種類のものであっても異なる種類のものであってもよい。
マスターノード12Mの演算処理部30は、後に詳述する如く、適当な時期にノード12A〜12Cごとにそのノード12の自己診断を実施させるための信号を送信するように電圧入出力部36に指令信号を供給する。この指令信号は対象のノード12A〜12Cごとに異なるものであり、演算処理部30はノード12A〜12Cに対して一つずつ順に自己診断を実施させる。電圧入出力部36は、演算処理部30から指令信号が供給された場合、その指令信号に従った変動パターンで電源供給ライン102に印加する電圧を時間変化させる。
電圧入出力部36は、また、演算処理部30から供給された指令信号に従って電源供給ライン102に所定変動パターンの電圧を印加させた後、その電源供給ライン102に生ずる電圧の時間変化を測定し、その測定結果を演算処理部30に供給する。演算処理部30は、電圧入出力部36に指令信号を供給してノード12の自己診断を実施させた後、その電圧入出力部36から供給される測定結果に基づいてそのノード12の自己診断結果を検出し、その診断結果をその診断結果に係るノード12のID情報(アドレス)とリンクさせて記憶部38に記憶させる。
また、一般ノード12A〜12Cの電圧入出力部は、電源供給ライン102に生じている電圧の時間変化を測定し、その測定結果を演算処理部に供給する。演算処理部は、電圧入出力部から供給される測定結果に基づいて、マスターノード12Mから自ノード12に対する自己診断の実施が指令されるか否かを判別し、肯定判定がなされた場合に自ノード12の自己診断を実施する。そして、その自己診断結果を示す信号をマスターノード12Mに送信するように電圧入出力部に指令信号を供給する。電圧入出力部は、演算処理部から指令信号が供給された場合、その指令信号に従った変動パターンで電源供給ライン102に印加する電圧を時間変化させる。
次に、本実施例のリング型通信ネットワークシステム100において通信異常を検出すべく実行される動作について説明する。
本実施例において、マスターノード12Mは、アクセサリ電源のオンやイグニション電源のオンなどにより電源供給ライン102への電源供給が開始されると、以後、定期的にシステムの通信線14による通信状態を監視し、その通信状態が異常状態にあると判断したときは、診断処理実行対象ノード12を決定し、その診断処理実行対象ノード12に接続する電源供給ライン102A〜102Cを通じてその診断処理実行対象ノード12に設定したノード12A〜12Cに自己診断の実施を指示するダウン側通信パルス信号を送信する。尚、ダウン側通信パルス信号の送信を行ううえでは、電源供給ライン102に印加する電圧の変動はマスターノード12Mや一般ノード12A〜Cの動作に影響を及ぼさない範囲で行われる。
すべての一般ノード12はそれぞれ、電源供給されて動作可能であれば常に、電源供給ライン102に生じている電圧の時間変化を測定する。そして、その電源供給ライン102の電圧の時間変化に基づいて、自ノード12宛に送信されるダウン側通信パルス信号が受信部に受信されて、マスターノード12Mから自ノード12A〜12Cに対する自己診断の実施が指令されるか否かを判別する。その結果、自ノード12宛のダウン側通信パルス信号を受信して、自己診断の実施が指令されたと判別した場合は、自ノード12の正常/異常を検出すべく自己診断処理を実施し、そして、電源供給ライン102を通じてマスターノード12Mにその自己診断の実施結果(正常/異常)を示すアップ側通信パルス信号を返信する。
マスターノード12Mは、診断処理実行対象ノード12にダウン側通信パルス信号を送信した後、所定時間、電源供給ライン102に生じている電圧の時間変化を測定する。そして、その所定時間中の電源供給ライン102の電圧の時間変化に基づいて、自ノード12M宛に送信されるアップ側通信パルス信号が受信部に受信されて、一般ノード12A〜12Cから自ノード12Mに対する自己診断の実施結果が通知されるか否かを判別する。
その結果、ダウン側通信パルス信号の送信後の所定時間内に自ノード12M宛のアップ側通信パルス信号を受信して、一般ノード12A〜12Cの自己診断の実施結果が通知されたと判別した場合は、その診断結果をその診断結果に係るノード12A〜12CのID情報とリンクさせて記憶部38に記憶させる。一方、ダウン側通信パルス信号の送信後の所定時間内に自ノード12M宛のアップ側通信パルス信号を受信せず、一般ノード12A〜12Cの自己診断の実施結果が通知されなかったと判別した場合は、ダウン側通信パルス信号の送信先のノード12A〜12Cに関わる異常(具体的には、そのノード12A〜12C自体の故障)が生じていると判定し、その異常結果をその送信先のノード12A〜12CのID情報とリンクさせて記憶部38に記憶させる。
上記した処理は、以後、すべての一般ノード12A〜12Cについて完了するまで繰り返し行われる。
かかる構成によれば、通信線14を通じたノード12間通信に異常が発生した場合に、その通信線14とは別の電源供給ライン102を通じてマスターノード12Mと一般ノード12A〜12Cとの間で通信パルスを授受することで、一般ノード12A〜12Cに関わる正常/異常を判定することができる。具体的には、一般ノード12A〜12Cごとにマスターノード12Mとの間で電源供給ライン102での電圧変動によるダウン側通信パルスとアップ側通信パルスとを授受することにより、そのノード12A〜12C自体の故障を検知することができる。
このような処理が一般ノード12A〜12Cごとに行われれば、故障が発生しているノード12を具体的に特定することができる。従って、本実施例によれば、リング型通信ネットワークシステム100において通信線14を通じたノード間通信に異常が発生した場合に、その異常発生箇所をそのリング型通信ネットワークシステム100内である程度絞り込むことが可能となっている。このため、通信線14を通じたノード間通信の異常発生後、その異常発生の原因となった故障ノード12を速やかに発見することができ、故障ノード12の交換によりその異常を速やかに解消させることが可能となる。
尚、上記の如く、ダウン側通信パルス信号及びアップ側通信パルス信号の送信を行ううえでは、電源供給ライン102に印加する電圧の変動はマスターノード12Mや一般ノード12A〜Cの動作に影響を及ぼさない範囲で行われる。このため、電源供給ライン102を用いた上記したリング型通信ネットワークシステム100内における異常発生箇所の絞り込みを、その電源供給ライン102の電源電圧低下によって各ノード12の動作機能を害することなく行うことが可能である。
また、本実施例のリング型通信ネットワークシステム100においても、通信線14を通じたノード間通信に異常が発生した場合にその異常発生箇所を特定するのに、各ノード12に電源供給を行う電源供給ライン102を用いて、その電源供給ライン102から各ノード12へ電源印加を行いつつ各ノード12に自己診断処理を実施させる。この点、本実施例によれば、各ノード12の自己診断処理がそのノード12への電源供給ライン102からの電源供給時に行われるため、電源供給ライン102が各ノード12に電源供給を行っていない状態から強制的にその電源供給ライン102にノード12に印加する電源電圧を発生させてそのノード12に自己診断処理を実施させる構成と比べて、通信ネットワークシステムにおける通信ICなどの構成の簡素化を図ることが可能となる。
更に、本実施例の如く電源供給ライン102を用いて上記したリング型通信ネットワークシステム100内における異常発生箇所を絞り込むこととすれば、その異常発生箇所を絞り込むために電源供給ライン102や通信線14とは別にノード12間の通信線を増やしたりすることは不要である。従って、本実施例においても、リング型通信ネットワークシステム100内における異常発生箇所の絞り込みを、複雑な構成によることなく簡易な構成で実現させることが可能となっている。
ところで、上記の第2実施例においては、各電源供給ライン102A,102B,102Cは、互いに同じ種類のものであっても異なる種類のものであってもよく、各ノード12は、対応の電源供給ライン102から電源供給されるACC駆動型ノード、IG駆動型ノード、及び+B駆動型ノードの何れかであり、互いに同じ種類のものであっても異なる種類のものであってもよいが、それらの電源供給ライン102やノード12が互いに異なる種類のものである場合は、一つのリング型通信ネットワークシステム100内でノード間通信の異常が発生したとき、電源供給ライン102の種類ごとに異常発生箇所を特定する処理を行うこととすればよい。
具体的には、キースイッチがアクセサリオン状態にあるときに、ACC電源ラインを電源供給ライン102とするノード12に自己診断処理を実施させ、また、キースイッチがイグニションオン状態にあるときに、IG電源ラインを電源供給ライン102とするノード12と、ACC電源ラインを電源供給ライン102とするノード12と、にそれぞれ自己診断処理を実施させる。かかる構成によれば、全ノード12のうち電源供給されているノード12に自己診断処理を実施させることができるので、リング型通信ネットワークシステム100内にIG駆動型ノードとACC駆動型ノードとが混在する場合に、ACC駆動型ノードの自己診断処理がアクセサリオン状態からイグニションオン状態まで実行されないのを回避することができ、ACC駆動型ノードの自己診断処理を早期に完了させることが可能となる。
また、リング型通信ネットワークシステム100内にIG駆動型ノードとACC駆動型ノードとが混在する場合、キースイッチがイグニションオン状態にあるときは、IG駆動型ノードについての自己診断処理をACC駆動型ノードについての自己診断処理よりも優先的に行うこととするのがよい。かかる変形例によれば、キースイッチがイグニションオン状態にあるとき、運転操作に使用されることの比較的多い走行安全上重要なIG駆動型ノードの方がACC駆動型ノードの方よりも自己診断処理が優先的に行われるので、全体の期間を通してACC駆動型ノードの自己診断処理が高頻度で行われるのを抑制して、ネットワークシステム内における異常発生箇所の特定処理の頻度を均一化できると共に、IG駆動型ノードの自己診断処理を効率的に行うことができ、その結果として、イグニションオン後の車両の走行安全性を早期に高めることが可能となる。
尚、上記の第1及び第2実施例においては、マスターノード12Mが特許請求の範囲に記載した「主ノード」に、一般ノード12A〜12Cそれぞれが特許請求の範囲に記載した「従ノード」に、接続コネクタ18が特許請求の範囲に記載した「コネクタ」に、それぞれ想到している。
また、上記の第1及び第2実施例においては、マスターノード12Mの演算処理部30が、図3に示すルーチン中ステップ106の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「ダウン側通信パルス送信手段」及び「ダウン側通信パルス送信ステップ」が、一般ノード12A〜12Cの演算処理部が、ステップ200の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「自己診断実施手段」及び「自己診断実施ステップ」が、ステップ202の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「アップ側通信パルス返信手段」及び「アップ側通信パルス返信ステップ」が、マスターノード12Mの演算処理部30が、ステップ120の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「正常/異常判定手段」及び「正常/異常判定ステップ」が、それぞれ実現されている。
ところで、上記の第1及び第2実施例においては、電源供給ライン16を、実際に電源電圧が流れるラインとしたが、例えば、ノード12の起動/停止を指示するいわゆるウェイクアップラインや、車両のアクセサリ電源のオン/オフを指示するライン,車両のイグニション電源のオン/オフを指示するラインであってもよい。
また、上記の第1及び第2実施例においては、リング型通信ネットワークシステム10,100を車両に搭載するものとしたが、リング型通信を行うネットワークシステムであれば車両に搭載されるものに限定するものではない。