JP2009174073A - 炭素繊維前駆体繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリアクリロニトリル系重合体溶液を紡糸工程と、得られた繊維糸条Aを水洗する工程と、水浴延伸する工程と、乾燥熱処理する工程と、シール部材を両端側に有する延伸チューブBを備えたスチーム延伸装置を用いて延伸することからなる炭素繊維前駆体繊維の製造方法において、ポリアクリロニトリル系重合体として、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定される重量平均分子量(Mw)が20万〜50万で、多分散度(Mz/Mw)(Mzは、Z平均分子量を表す。)が2.5〜6.0であるポリアクリロニトリル系重合体を用い、かつ、スチーム延伸工程において、延伸チューブには繊維糸条導入側に予熱域C、繊維糸条取り出し側に加熱域Dの分割された2領域を有する延伸チューブを用いる。
【選択図】図1
Description
延伸チューブの繊維糸条導入側にあるシール部材の糸条通過口>延伸チューブの予熱域と加熱域の間のシール部材の糸条通過口>延伸チューブの繊維糸条取り出し側にあるシール部材の糸条通過口
の関係にあるものである。
延伸チューブの繊維糸条導入側にあるシール部材の糸条通過口>延伸チューブの予熱域と加熱域の間のシール部材の糸条通過口>延伸チューブの繊維糸条取り出し側にあるシール部材の糸条通過口
の関係になるように制御することが好ましい。
測定しようとするポリマーをその濃度が0.1重量%となるように、ジメチルホルムアミド(0.01N−塩化リチウム添加)に溶解し、検体溶液を得る。得られた検体溶液について、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、単にGPCという)装置を用いて、次の条件で測定したGPC曲線より、分子量分布曲線を求め、MnとMwを算出する。
・カラム :極性有機溶媒系GPC用カラム
・流速:1ml/min
・温度 :40℃
・試料濾過 :メンブレンフィルター(0.5μmカット)
・注入量:0.1ml
・検出器 :示差屈折率検出器
MwおよびMnは、分子量が異なる分子量既知の単分散ポリスチレンを少なくとも3種類用いて、溶出時間−分子量の検量線を作成し、該検量線上において、該当する溶出時間に対応する分子量を読み取ることにより求める。
スチーム延伸に供する速度を30m/分にし、毛羽が発生したときの引き取り側の速度を読みとり、かかる速度をスチーム延伸に供する速度で除した値を、その温度における延伸限界倍率とする。ここで毛羽とは、走行中のアクリル系繊維の束から突出した5mm以上の単繊維切れのことをいう。また、供給するスチーム圧力を0.05GPaずつ変化させながら試験を行い、延伸限界倍率のピーク値を求め、その値を用いた。
スチーム延伸装置の延伸チューブを出た後に最初に接触する駆動源を持ったローラー出側で繊維糸条を巻き取り、速やかに27m採取し、乾燥前重量(g)を測定する。その繊維糸条を120℃の温度で1時間乾燥させ、乾燥後重量(g)を測定する。原糸水分率(%)は、次の式で算出される。
・原糸水分率(%)=乾燥前重量/乾燥後重量×100
[実施例1]
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定されるポリスチレン換算分子量が150万以上であるポリアクリロニトリル系重合体が全重合体に対して4.0重量%混合されており、かつ、全重合体のポリスチレン換算分子量が40万であり、Mz/Mwが4.9であるポリアクリロニトリル系重合体組成物を重合体濃度が21重量%になるようにジメチルスルホキシドに溶解してなる炭素繊維前駆体繊維製造用紡糸溶液を紡糸原液として用い、孔径が0.15mmφであり、孔数が3,000の形状を有する紡糸口金を用いて、DMSO40重量%と水60重量%からなる凝固浴中にエアーギャップを介したのち吐出し、ドラフト率4で引き取り凝固繊維糸条を得た。この凝固繊維糸条を水洗後、65℃の温度の温水を用いた浴中延伸で3倍に延伸し、さらにアミノ変成シリコーン系シリコーン油剤を付与した。引き続き、165℃の温度に加熱したローラーを用いて乾燥熱処理を行い、単繊維繊度3.5dtexのフィラメント糸条を得た。このようにして得られた繊維糸条を4本合糸し、フィラメント数を12,000本とした上で、図1に示す糸条通過口を有するシール部材を両端側に有する延伸チューブにスチーム吹き込み口を備えたスチーム延伸装置を用い、表1に示す供給スチームの湿り度とシール部材の構成で、延伸限界倍率を測定した。シール部材の最小内径長さは10mmのものを用いた。上記の延伸チューブは、繊維糸条導入側に予熱域、繊維糸条取り出し側に加熱域の分割された2領域を有し、予熱域でのスチームの湿り度が1%であり、かつ、加熱域でのスチームの湿り度が1%となるようにした。シール部材は、繊維糸条導入側の糸条通過口が内径7.0mmのものを10個用い、予熱域と加熱域の間の糸条通過口には内径6.0mmのものを6個用い、繊維糸条取り出し側の糸条通過口には内径5.0mmのものを2個使用し、延伸限界倍率を測定した。結果を表1に示す。
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定されるポリスチレン換算分子量が150万以上であるポリアクリロニトリル系重合体が、全重合体に対して2.8重量%混合されており、かつ、全重合体のポリスチレン換算分子量が26万であり、Mz/Mwが4.0である紡糸原液を使用し、繊維糸条取り出し側の糸条通過口のシール部材の内径が5.0mmのものを2個から4個に変えたこと以外は、実施例1と同様にし、延伸限界倍率を測定した。結果を表1に示す。
実施例2と同様の紡糸原液を用い、繊維糸条取り出し側の糸条通過口のシール部材の内径が7.0mmのものを8個に変えたこと以外は、実施例1と同様にし、延伸限界倍率を測定した。結果を表1に示す。
実施例2と同様の紡糸原液を用い、延伸チューブに投入するフィラメント数(単繊維数)を3000本とし、シール部材として、繊維糸条導入側には糸条通過口の内径が3.0mmのものを8個、予熱域と加熱域の間には糸条通過口の内径が4.0mmのものを6個、繊維糸条取り出し側には糸条通過口の内径が5.0mmのものを2個使用したこと以外は、実施例1と同様にし、延伸限界倍率を測定した。結果を表1に示す。
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定されるポリスチレン換算分子量が150万以上であるポリアクリロニトリル系重合体が、全重合体に対して2.9重量%混合されており、かつ、全重合体のポリスチレン換算分子量が48万であり、Mz/Mwが5.7である紡糸原液を使用したこと以外は、実施例1と同様にし、延伸限界倍率を測定した。結果を表1に示す。
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定されるポリスチレン換算分子量が150万以上であるポリアクリロニトリル系重合体が、全重合体に対して1.3重量%混合されており、かつ、全重合体のポリスチレン換算分子量が34万であり、Mz/Mwが2.7である紡糸原液を使用したこと以外は、実施例1と同様にし、延伸限界倍率を測定した。結果を表1に示す。
実施例2と同様の紡糸原液を用い、繊維糸条取り出し側の糸条通過口のシール部材の内径が7.0mmのものを8個に変えたこと以外は、実施例1と同様にし、延伸限界倍率を測定した。結果を表1に示す。
実施例2と同様の紡糸原液を用い、繊維糸条取り出し側の糸条通過口の内径が5.0mmのシール部材をを2個から12個に変えたこと以外は、実施例2と同様にしたところ、加熱域の湿り度が10%と大きかった。延伸限界倍率は、実施例2に比べて低下した。結果を表2に示す。
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定されるポリスチレン換算分子量が150万以上であるポリアクリロニトリル系重合体が、全重合体に対して0重量%混合されており、かつ、全重合体のポリスチレン換算分子量が38万であり、Mz/Mwが1.6である紡糸原液を使用したこと以外は、比較例1と同様に延伸限界倍率を測定した。このとき、加熱域の湿り度が10%と大きかった。結果を表2に示す。
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定されるポリスチレン換算分子量が150万以上であるポリアクリロニトリル系重合体が、全重合体に対して2.0重量%混合されており、かつ、全重合体のポリスチレン換算分子量が60万であり、Mz/Mwが1.8である紡糸原液を使用したこと以外は、比較例1と同様に延伸限界倍率を測定した。このとき、加熱域の湿り度が10%と大きかった。結果を表2に示す。
比較例2と同様の紡糸原液を使用したこと以外は、実施例1と同様に延伸限界倍率を測定した。分子量が150万以上の成分の含有率が0重量%と低く、Mz/Mwが1.6と低いと、加熱域の湿り度が1%と低下しても、逆に比較例2よりも延伸性は低下した。結果を表2に示す。
比較例3と同様の紡糸原液を使用したこと以外は、実施例1と同様に延伸限界倍率を測定した。Mz/Mwが1.8と低いと、加熱域の湿り度が1%と低下しても、逆に比較例3よりも延伸性は低下した。結果を表2に示す。
比較例2と同様の紡糸原液を使用したこと以外は、実施例3と同様に延伸限界倍率を測定した。分子量が150万以上の成分の含有率が0重量%と低く、Mz/Mwが1.6と低いと、加熱域の湿り度が1%と低下しても、逆に比較例2よりも延伸性は低下した。結果を表2に示す。
B:延伸チューブ
C:予熱域
D:加熱域
E:シール部材
1:繊維糸条導入口
2:繊維糸条取り出し口
3:スチーム吹き込み口
4:前段シール部材
5:中段シール部材
6:後段シール部材
7:フィードローラー
8:ドローローラー
9:最小内径断面積
10:最小内径長さ
Claims (6)
- ポリアクリロニトリル系重合体が溶媒に溶解してなる紡糸溶液を湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により紡糸口金から吐出させ紡糸する紡糸工程と、該紡糸工程で得られた繊維糸条を水浴中で洗浄する水洗工程と、該水洗工程で得られた繊維糸条を水浴中で延伸する水浴延伸工程と、該水浴延伸工程で得られた繊維糸条を乾燥熱処理する乾燥熱処理工程と、糸条通過口を有するシール部材を両端側に有する延伸チューブにスチーム吹き込み口を備えたスチーム延伸装置を用いて該乾燥熱処理工程で得られた繊維糸条をスチーム延伸するスチーム延伸工程からなる炭素繊維前駆体繊維の製造方法において、前記のポリアクリロニトリル系重合体として、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定される重量平均分子量(Mw)が20万〜50万で、多分散度(Mz/Mw)(Mzは、Z平均分子量を表す。)が2.5〜6.0であるポリアクリロニトリル系重合体を用い、かつ、前記のスチーム延伸工程において、延伸チューブには繊維糸条導入側に予熱域、繊維糸条取り出し側に加熱域の分割された2領域を有する延伸チューブを用い、該予熱域でのスチームの湿り度が0〜5%であり、かつ、該加熱域でのスチームの湿り度が0.1〜5%となるようにしてスチーム延伸することを特徴とする炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 全重合体中、GPC法により測定される分子量が150万以上のポリアクリロニトリル系重合体成分の含有率が、0.5〜5重量%である請求項1記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 加熱域にスチーム吹き込み口を設けるとともに、予熱域と加熱域の間に糸条通過口を有するシール部材を設け、かつ、シール部材の最小内径長さから求めた最小内径断面積の逆数と最小内径長さの積が、延伸チューブの繊維糸条導入側にあるシール部材の糸条通過口>延伸チューブの予熱域と加熱域の間のシール部材の糸条通過口>延伸チューブの繊維糸条取り出し側にあるシール部材の糸条通過口の大きさの関係にある請求項1または2記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- スチーム延伸する際の繊維糸条を構成する単糸の数が10000本以上である請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 延伸チューブの繊維糸条導入側の張力よりも延伸チューブの繊維糸条取り出し側の張力が、0.05〜0.3g/d高くなるようにしてスチーム延伸する請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 炭素繊維前駆体繊維の水分率が0.5〜2.5%となるようにしてスチーム延伸する請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
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