JP2009173773A - シリコーン樹脂組成物および半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】低粘度で、硬化後には高い透明性を有するとともに経時による変色が少なく、しかも接着性に優れた硬化物を与えるシリコーン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】第1の両末端ビニル封鎖型シリコーン樹脂(W1)と第2の両末端ビニル封鎖型シリコーン樹脂(W2)(ただしW2/W1は0.03以上0.2以下)とアルケニル基含有シロキサンとヒドロ基含有ポリシロキサン(ただしポリシロキサンはQ単位を10モル%以上50モル%以下の量で含有する)とヒドロシリル化触媒を含有する組成物。
【選択図】なし
【解決手段】第1の両末端ビニル封鎖型シリコーン樹脂(W1)と第2の両末端ビニル封鎖型シリコーン樹脂(W2)(ただしW2/W1は0.03以上0.2以下)とアルケニル基含有シロキサンとヒドロ基含有ポリシロキサン(ただしポリシロキサンはQ単位を10モル%以上50モル%以下の量で含有する)とヒドロシリル化触媒を含有する組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、シリコーン樹脂組成物、およびこれを用いた半導体装置に関する。
白色LEDにおいては、実使用中の紫外線などによってエポキシ封止材が黄変することが問題とされつつある。また、小型化に伴なって発熱量が増加し、エポキシ封止材にクラックが発生するという新たな問題も発生しており対応が急務となっている。こうした問題に対しては、分子中に多数のフェニル基を有するシリコーン樹脂を用いることによって対応が進められている。
今後のLEDの光源としては、より低波長なものが使用されるようになる傾向にある。従来のエポキシ封止材やフェニル基含有シリコーン樹脂は、低波長領域での光透過性が悪いことから、低波長領域を光源としたLEDへ適用するのは困難となることが予測される。LED用として、直鎖状や環状のシリコーン樹脂を含有する樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1,2,3参照。)が、いずれにおいても、硬化収縮が生じるために十分な接着性は得られていない。また、硬度が低い場合には、配線の断線などの問題もあった。
特開2000−198930号公報
特開2005−42099号公報
特開2007−103494号公報
本発明は、低粘度で、硬化後には高い透明性を有するとともに経時による変色が少なく、しかも接着性に優れた硬化物を与えるシリコーン樹脂組成物、およびかかるシリコーン樹脂組成物の硬化物によって半導体素子が封止されてなる半導体装置を提供することを目的とする。
(R10は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1以上4以下のアルキル基であり、k1は800≦k1<900を満たす数値である。)
下記一般式(A2)で表わされ、第2の重量(w2)で配合された第2の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂と、
下記一般式(A2)で表わされ、第2の重量(w2)で配合された第2の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂と、
(R11は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1以上4以下のアルキル基であり、k1+100≦k2<1300、および0.03≦(w2)/(w1)≦0.2を満たす。)
下記一般式(B)で表わされるアルケニル基含有シロキサンと、
下記一般式(B)で表わされるアルケニル基含有シロキサンと、
(R14は、0.1モル%以上95モル%以下がヒドロ基であり、残りは、炭素数1以上4以下のアルキル基である。mは1以上3以下であり、重量平均分子量は100以上10000以下である。ただし、下記式で表わされるQ単位を10モル%以上50モル%以下の量で含有する。)
ヒドロシリル化触媒と
を含有することを特徴とする。
を含有することを特徴とする。
本発明の一態様にかかる半導体装置は、発光素子と、
この発光素子を封止する樹脂層とを具備し、
前記樹脂層は前述のシリコーン樹脂組成物を硬化させてなる硬化物からなることを特徴とする。
この発光素子を封止する樹脂層とを具備し、
前記樹脂層は前述のシリコーン樹脂組成物を硬化させてなる硬化物からなることを特徴とする。
本発明の一態様によれば、低粘度で、硬化後には高い透明性を有するとともに経時による変色が少なく、しかも接着性に優れた硬化物を与えるシリコーン樹脂組成物、およびかかるシリコーン樹脂組成物の硬化物により半導体素子が封止されてなる半導体装置が提供される。
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の実施形態にかかるシリコーン樹脂組成物には、4種類の特定のポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒とが含有される。
本発明の実施形態にかかるシリコーン樹脂組成物に含有される第1のポリシロキサンは、前記一般式(A1)で表わされる第1の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂である。前記一般式(A1)中、R10は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1以上4以下のアルキル基である。安価で、しかも容易に合成できることからR10としてはメチル基およびエチル基が特に好ましい。
前記一般式(A1)におけるk1は800以上900未満に規定される。第1の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂は、シリコーン樹脂組成物の粘度を調整する目的で加えられる。k1の値が800未満の場合には、硬化物が脆くなりやすくなり、一方、900を越えると、低粘度化の効果が小さくなるので不利となる。その粘度は、5,000〜16,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。こうした範囲内の粘度であれば、硬化状態が悪化するのも避けられる。第1の両末端ビニル基封鎖型ポリシロキサンの粘度は、7,000〜12,000mPa・sがより好ましい。
本発明の実施形態にかかるシリコーン樹脂組成物に含有される第2のポリシロキサンは、前記一般式(A2)で表わされる第2の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂である。前記一般式(A2)中、R11は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1以上4以下のアルキル基である。安価で、しかも容易に合成できることからR11としてはメチル基およびエチル基が特に好ましい。
一般式(A2)におけるk2は、(k1+100)以上1300未満である。第2の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂は、接着性を高める作用を有する。k2が(k1+100)未満の場合には、前述の第1の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂と同等の特性となり、十分な接着性を有する硬化物が得にくい。一方、1300を越えると、組成物の粘度が高くなりすぎて作業性が損なわれる。その粘度は、18,000〜40,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。こうした範囲内の粘度であれば、高粘度に起因して反応性が劣化することはなく、硬化状態が悪化することも避けられる。このような両末端ビニル基封鎖型ポリシロキサンの粘度は、19,000〜30,000mPa・sがより好ましい。
第2の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂は、主鎖を構成するジオルガノシロキサンの繰り返し単位の数が多いこと以外は、第1の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂と同様である。基本的な構成が同様の2種類の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂を用いることは、高い硬度を有するとともに接着性に優れた硬化物が得られる点で有利である。こうした第1および第2の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂は、ベースポリマーとして使用される。
繰り返し単位の長さが異なる第1および第2の2種類の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂を配合することによって、硬度および透明性を同時に満足することが可能となった。第1の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂が含有されない場合には、樹脂組成物の粘度が高くなりすぎるのに加え、得られる硬化物が白濁しやすい。一方、第2の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂が含有されない場合には、得られる硬化物の硬度が不十分となる。
ただし、第2の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂の含有量w2と、前述の第1の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂の含有量w1との重量比(w2/w1)は、以下の範囲に規定される。
0.03≦w2/w1≦0.2
重量比(w2/w1)が0.03未満の場合には、硬度の高い硬化物を得るのが困難となる。一方、0.2を越えると、組成物の粘度が高くなりすぎるのに加え、硬化物の透明性が低下する。重量比(w2/w1)は、0.04以上0.18以下の範囲内がより好ましい。
重量比(w2/w1)が0.03未満の場合には、硬度の高い硬化物を得るのが困難となる。一方、0.2を越えると、組成物の粘度が高くなりすぎるのに加え、硬化物の透明性が低下する。重量比(w2/w1)は、0.04以上0.18以下の範囲内がより好ましい。
適切な繰り返し単位を有する2種類の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂を用いることによって、硬度と透明性とを兼ね備えたシリコーン樹脂組成物を得ることが可能となった。
第1および第2の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂からなるベースポリマーの含有量は、樹脂組成物全体の40wt%以上80wt%以下であることが好ましい。より好ましくは、樹脂組成物全体の50wt%以上75wt%以下である。
前記一般式(B)中、R12は、アルケニル基であり、ビニル基、アリル基、ブテニル基、およびペンテニル基などが挙げられる。硬化後のシリコーン樹脂の透明性や入手のしやすさ等を考慮すると、アルケニル基としてはビニル基が特に好ましい。R13は、炭素数1以上4以下のアルキル基である。合成のしやすさとコストが低いことから、メチル基が特に好ましい。
上述したようなアルケニル基およびアルキル基の少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子、Si原子、O原子、N原子、またはS原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
前記一般式(B)で表わされるアルケニル基含有ポリシロキサンは、Q構造の最小単位と考えることができる。かかる成分が配合されることによって、架橋密度を稼ぐことができるので、前述の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂とともに用いることによって、さらに硬度の高い硬化物が得られる。しかも、分子量が小さいことから粘度は低く、高粘度の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂の反応性の希釈剤としてもその役割を果たす。
その結果、シリンジからチップが搭載されたパッケージにシリコーン樹脂組成物を注入する際に、都合のよい粘度が得られる。シリコーン樹脂組成物の粘度は500以上20,000mPa・s/25℃以下、好ましくは1,000以上10,000mPa・s/25℃以下である。
上述したようなアルケニル基含有シロキサンの含有量は、樹脂組成物全体の10wt%以上40wt%以下であることが好ましい。より好ましくは、樹脂組成物全体の15wt%以上30wt%以下である。
第4のポリシロキサンは、下記平均組成式(C)で表わされるヒドロ基含有ポリシロキサンである。かかるヒドロ基含有ポリシロキサンは、前述の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂およびアルケニル基含有ポリシロキサンとヒドロシリル化反応を生じて、組成物を硬化させる架橋剤として作用する。
上記平均組成式(C)におけるR14の0.1モル%以上95モル%以下は、ヒドロ基に規定される。ヒドロ基の含有量が少なすぎる場合には、硬化が困難となる。一方、ヒドロ基の含有量が多すぎる場合には、未反応のヒドロ基が残存し、硬化物の安定性などに悪影響を与えるといった不都合が生じる。
前記平均組成式(C)における残りのR14は、炭素数1以上4以下のアルキル基であり、合成のしやすさとコストの観点から、メチル基が特に好ましい。
Q単位は、前記式で表わされるとおり、Si原子の4つの結合手の全てにO原子が結合した構造でそれぞれに官能基を有する。こうした構造に起因して、Q単位は、架橋密度が高くなり、得られる硬化物の硬度が高くなるという利点を有する。前記平均組成式(C)中に10モル%以上のQ単位が含有されていれば、この利点を確保することができる。しかしながら、Q単位の含有量が多すぎる場合には、得られる硬化物の硬度が高くなりすぎ、接着性が得にくいという不都合が生じるため、平均組成式(C)中におけるQ単位の含有量の上限は50モル%以下に規定される。
前記平均組成式(C)で表わされるヒドロ基含有ポリシロキサンは、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量が100以上10,000以下に規定される。重量平均分子量が100未満の場合には、十分な強度を有する硬化物が得られなくなる。一方、10,000を越えるポリシロキサンは、合成が困難である。ヒドロ基含有ポリシロキサンの重量平均分子量は、200以上5,000以下が好ましく、400以上3、000以下がより好ましい。
なお、ポリシロキサンの合成のしやすさを考慮すると、前記平均組成式(C)におけるmは1以上3以下に規定される。得られる硬化物の硬度を考慮すると、mの値は2.4が特に好ましい。
こうしたヒドロ基含有ポリシロキサンの一部には、RSiO3/2(T単位)が含まれていてもよい。
例えば、Q単位の割合が10〜50モル%で、M単位が10〜80モル%、D単位が0〜20モル%になるように、M、D、Q各単位の割合を調製する。このような構造のヒドロ基含有ポリシロキサンは、各単位の原料(M単位、D単位、Q単位)となる化合物を、上述のモル割合となるように配合し、酸の存在下で共加水分解を行なうことによって合成することができる。
SiO2単位(Q単位)の原料として、ケイ酸ソーダ、アルキルシリケート、ポリアルキルシリケート、および四塩化ケイ素等を挙げることができる。
さらに、R2SiO2/2単位(D単位)、同一シリコン原子に水素とアルキル基を含む場合、あるいは同一シリコン原子にアルキル基のみを含む場合の原料の例を、下記化学式に示す。この場合、アルキル基としてメチル基、あるいはエチル基を示した。
上述したようなヒドロ基含有ポリシロキサンは、分子中に接着性付与成分を結合させることができる。平均組成式(C)におけるヒドロ基と反応したアルコキシ基含有シリル基が、接着性付与成分として作用する。この接着性付与成分は、ヒドロ基含有ポリシロキサンにおけるヒドロ基の一部と、アルケニルアルコキシシランとを予め反応させる。反応を十分に進行させるために、接着性付与成分が結合したヒドロ基含有ポリシロキサンは、アルケニル基含有ヒドロキシシランにおけるアルケニル基1個に対して0.5〜2個のケイ素原子に結合した水素原子となる量で、配合することが望まれる。0.5個未満の場合には、接着性が損なわれるおそれがあり、2個より多い場合には樹脂の相溶性が低下するおそれがある。
具体的には、ヒドロ基含有シロキサン樹脂としては、Q単位を含有するHQM105(GELEST社製)およびHQM107(GELEST社製)のヒドロ基と、アルケニルアルコキシシランとを、塩化白金酸等の触媒によって反応させることにより得られる化合物が挙げられる。ここで用いられるアルケニルアルコキシシランは、下記一般式で表わすことができる。
nは1乃至3の整数である。Rはアルケニル基を表わし、炭素数2〜8のビニル基、アリル基、ブテニル基、およびペンテニル基などが例示される。より好ましくはビニル基である。また、Rpは一価の炭化水素基を表わし、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ドデシル、およびオクタデシルなどの炭層数が1〜18個のアルキル基などが例示される。好ましくはメチル、およびエチルである。ORpの一部が一価の炭化水素基あるいは水素に置換されていてもよい。具体的には、ビニルトリメトキシシラン、およびビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
本発明の実施形態にかかるシリコーン樹脂組成物おいては、上述したようなアルケニル基含有ポリシロキサンとヒドロ基含有ポリシロキサンとをヒドロシリル化反応によって架橋するための触媒として、白金触媒が含有される。
例えば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH2)2(PPh3)2、Pt(CH2=CH2)2Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4]m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)3]4、Pt[P(OBu)3]4)(Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表わし、nおよびmは整数である。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒などが挙げられる。
また、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl2O3、RuCl3、IrCl3、PdCl2・2H2O、およびNiCl2等、非白金系の触媒を用いることもできる。
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、および白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用することができ、2種以上併用してもよい。
白金触媒の配合量は特に規定されないが、組成物全体の重量の0.1〜500ppm程度の割合で配合されれば、効果が得られる。
上述したように、本発明の実施形態にかかるシリコーン樹脂組成物には、特定の4種類のポリシロキサンが含有される。第1のポリシロキサンである第1の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂と、第2のポリシロキサンである第2の第1の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂とによってベースポリマーが構成される。繰り返し単位の異なる以外は同様の2種類の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂が含有されるので、硬度と透明性とを確保することができる。
こうした両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂が含有されることによって、基板あるいは金属に対する接着性が高められる。また、芳香族環やエステル基などの紫外領域に吸収のある置換基を含有していないので、本発明の実施形態にかかるシリコーン樹脂組成物の硬化物は、経時変化による変色も少ない。
また、第3のポリシロキサンであるアルケニル基含有ポリシロキサンおよび第4のポリシロキサンであるヒドロ基含有ポリシロキサンには、硬化収縮率の小さいQ単位が所定の量で含有される。これによって、ポリフタルアミドなどの基板あるいは金属に対する良好な接着性が確保される。しかも、これらのポリシロキサンには、不飽和結合が含まれないことから、特に紫外領域の光に対して光透過性が向上する。
特定の4種類のポリシロキサンを含有することに起因して、本発明の実施形態にかかるシリコーン樹脂組成物は、光透過性と接着性に優れた硬化物を得ることができる。したがって、特に白色発光ダイオード(LED)素子用シリコーン樹脂組成物として好適に用いられる。
上述した成分に加えて、本発明の実施形態にかかるシリコーン樹脂組成物には、接着性を損なわない範囲で鎖状のシリコーン樹脂や環状のシリコーン樹脂、かご状シリコーン樹脂を配合することができる。シリコーン樹脂としては、ポリオルガノアルケニルシロキサンおよびポリオルガノハイドロジェンシロキサンが挙げられる。
上記一般式(a−1)中、pは、0〜10,000の整数である。R1の少なくとも2つはアルケニル基であり、残りは同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜18の1価の炭化水素基である。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、および1−ヘキセニル基などが挙げられる。容易に合成できることから、ビニル基が好ましい。アルケニル基は、分子鎖末端および分子鎖途中のいずれの位置のR1として導入されてもよいがが、少なくとも分子鎖両末端のケイ素原子に結合している場合には、硬化速度や硬化物の物性などを高めることができる。
一方、R1として導入され得る1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基、およびアラルキル基が挙げられる。こうした炭化水素基における少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子、Si原子、O原子、N原子、またはS原子等のヘテロ原子等によって置換されていてもよい。合成しやすく、しかも硬化後に良好な光透過性を保つという点を考慮すると、メチル基が好ましい。直鎖状ポリオルガノアルケニルシロキサンの具体例を以下に示す。
上記一般式(a−2)中、nは2から8の整数である。R1の少なくとも2つはアルケニル基であり、残りは同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜18の1価の炭化水素基である。R1として導入され得る1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基、およびアラルキル基が挙げられる。こうした炭化水素基における少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子、Si原子、O原子、N原子、またはS原子等のヘテロ原子等により置換されていてもよい。特に、メチル基が好ましい。環状ポリオルガノアルケニルシロキサンの具体例を以下に示す。
上記一般式(a−3)中、R1の少なくとも2つはアルケニル基であり、残りは同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜18の1価の炭化水素基である。R1として導入され得る1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基、およびアラルキル基が例示される。こうした炭化水素基における少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子、Si原子、O原子、N原子、またはS原子等のヘテロ原子等により置換されていてもよい。特に、メチル基であることが好ましい。かご状の具体的なものとしては、下記式で表されるものが挙げられる。
上記一般式(b−1)中、rは0〜10,000の整数である。R2の少なくとも2つはヒドロ基であり、残りは同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜18の1価の炭化水素基である。R2として導入され得る1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基、およびアラルキル基が挙げられる。特に、光透過性やコストの観点からメチル基であることが好ましい。具体例を、下記化学式に示す。
上記一般式(b−2)中、nは2から8の整数である。R2の少なくとも2つはヒドロ基であり、残りは同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜18の1価の炭化水素基である。R2として導入され得る1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基、およびアラルキル基が挙げられる。こうした炭化水素基における少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子、Si原子、O原子、N原子、またはS原子等のヘテロ原子等により置換されていてもよい。特に、光透過性やコストの観点からメチル基であることが好ましい。具体例を、下記化学式に示す。
上記一般式(b−3)中、R2の少なくとも2つはヒドロ基であり、残りは同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜18の1価の炭化水素基である。R2として導入され得る1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基、およびアラルキル基が例示される。こうした炭化水素基における少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子、Si原子、O原子、N原子、またはS原子等のヘテロ原子等により置換されていてもよい。特に、メチル基であることが好ましい。
本発明の実施形態にかかるシリコーン樹脂組成物には、透明性に粘度に悪影響を与えない範囲で各種の添加剤を配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、シリコン系やフッ素系の消泡剤、煙霧質シリカ、シリカエアロゾル、沈殿シリカ、粉砕シリカ、けいそう土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、およびカーボンブラックなどの無機充填剤が例示される。また、必要により適当な顔料、染料、接着助剤、防カビ剤、耐熱性向上剤、難燃剤または酸化防止剤を添加することができる。
以下、具体例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
一般式(A1)で表わされる第1の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂、および一般式(A2)で表わされる第2の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂として、それぞれ以下に示す(PSA1)および(PSA2)を用意した。
(PSA1)
両末端ビニル基封鎖ポリジメチルシリコーン樹脂
粘度:10000cSt、当量:0.03〜0.04eq/kg
GELEST社製(製品名:DMS−V41)
この(PSA1)は、前記一般式(A1)においてR10としてメチル基が導入され、k1が845の化合物である。k1の値はGPCにより求めた。
両末端ビニル基封鎖ポリジメチルシリコーン樹脂
粘度:10000cSt、当量:0.03〜0.04eq/kg
GELEST社製(製品名:DMS−V41)
この(PSA1)は、前記一般式(A1)においてR10としてメチル基が導入され、k1が845の化合物である。k1の値はGPCにより求めた。
(PSA2)
両末端ビニル基封鎖ポリジメチルシリコーン樹脂
粘度:20000cSt、当量:0.025〜0.030eq/kg
GELEST社製(製品名:DMS−V42)
この(PSA2)は、前記一般式(A2)においてR11としてメチル基が導入され、k2が970の化合物である。k2の値はGPCにより求めた。
両末端ビニル基封鎖ポリジメチルシリコーン樹脂
粘度:20000cSt、当量:0.025〜0.030eq/kg
GELEST社製(製品名:DMS−V42)
この(PSA2)は、前記一般式(A2)においてR11としてメチル基が導入され、k2が970の化合物である。k2の値はGPCにより求めた。
前記一般式(B)で表わされるアルケニル基含有ポリシロキサンとしては、テトラキス(ジメチルビニルシロキシ)シランを準備した。一般式(B)におけるR12がビニル基であり、R13がメチル基のこの化合物を、(PSB)とする。
また、前記平均組成式(C)で表わされるヒドロ基含有ポリシロキサンとしては、以下に示す(PSC)を用意した。
(PSC)
Q単位を20〜25%含有するヒドロシリコーン樹脂
粘度:4cSt、当量:8.5eq/kg
GELEST社製(製品名:HQM105)
この(PSC)は、平均組成式(C)におけるR14がメチル基であり、mが2.4である。
Q単位を20〜25%含有するヒドロシリコーン樹脂
粘度:4cSt、当量:8.5eq/kg
GELEST社製(製品名:HQM105)
この(PSC)は、平均組成式(C)におけるR14がメチル基であり、mが2.4である。
さらに、シランカップリング剤としてトリメトキシビニルシランを用意した。この化合物を(TMVS)をする。
白金触媒として、2mmol/Lの塩化白金酸の2−プロパノール溶液を用いた。
表1に示したポリシロキサンの配合量は、重量%で表わした。
上記表2、3に示されるように、比較例1の組成物には、第1の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂が含有されず、比較例4の組成物には、第2の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂が含有されない。比較例2および3の組成物は、第1の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂と第2の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂との重量比(w2/w1)が所定の範囲外である。具体的には、比較例2の組成物では、(w2/w1)は3.75であり、比較例3の組成物では、(w2/w1)は1.26である。
上述の各組成物を硬化させて硬化物を得、その光透過性を調べた。具体的には、各組成物を石英基板上にバーコーダーにより塗布して、それぞれの塗膜を形成した。石英基板ごと所定の温度のホットプレート上に静置し、この塗膜を100℃で1時間、さらに150℃で3時間、熱処理することによりで硬化させた。その結果、厚み0.5mmの薄膜からなる硬化物が形成された。薄膜から10cmの距離に低圧水銀灯を配置して、1000時間照射した。
その後、分光光度計を用いて、硬化物の光透過率を測定した。光透過率の測定は、400nmおよび300nmの2種類の波長について行なった。波長400nmの光に対する光透過率は、紫外線で蛍光体を励起した白色LEDの透明性の指標となり、波長300nmの光に対する光透過率も同様である。長期的に光透過性に優れたシリコーン樹脂封止材を得るためには、いずれの波長に対する光透明性も、85%以上であることが要求される。
硬度測定用サンプルは以下のようにして行なった。テフロン(登録商標)製のくぼみ(10mm×10mm×10mm)にシリコーン樹脂組成物を流し込み、100℃で1時間、さらに150℃で4時間加熱硬化させた。アスカー型式Aの硬度計を用いて、1サンプルあたり3回以上測定を行なって、平均値を硬度とした。硬度は、40以上であれば許容範囲内である。
さらに、IRリフローでシリコーン樹脂とパッケージとの界面における剥離を観測した。IRリフロー用のサンプルは、以下のようにして作製した。PPA(ポリフタルアミド)樹脂から形成されたパッケージのくぼみ(直径3mm、高さ2mmの円柱状)にシリコーン樹脂組成物を流し込み、所定の温度で硬化させた。パッケージごと高温吸湿槽に投入してシリコーン樹脂の硬化物に吸湿させた後、IRリフロー(260℃/10秒)処理をした。同様の条件で、吸湿・IRリフローを繰り返し行なった。シリコーン樹脂硬化物とPPA樹脂との界面における剥離を顕微鏡により観察し、剥離が発生するまでの回数を調べた。5回以上であれば、十分な接着性を有するといえる。
上記表4に示されるように、光透過性に関しては、実施例の組成物は全て、400nmおよび300nmにおいて優れた透過性を有している。一方、比較例1,2,3,7,および8の組成物においては、硬化物が白濁しているために透過率は低くなっている。これらの組成は、W2/W1≧0.2の範囲で発生している。W2/W1≦0.03の範囲(比較例4,5,6)では、良好な光透過性を示した。
硬度に関しては、実施例の組成物は、全て40以上であるのに対し、比較例の組成物では、W2/W1≧0.2の範囲(比較例1,2,3,7,8)では40以上を示し、67に及ぶものもある。W2/W1≦0.03の範囲(比較例4,5,6)では、40未満であった。
硬化物の接着性に関しては、実施例の樹脂組成物はいずれも優れており、剥離が発生するまでの回数が5回以上である。比較例の樹脂組成物は、W2/W1≧0.2の範囲(比較例1,2,3,7,8)では5回未満となり、W2/W1≦0.03の範囲(比較例4,5,6)では4回を示したが、いずれも5回未満であった。
特定の4種類のポリシロキサンを含有することによって、高い透明性と優れた接着性とを備え、しかも経時変化による変色の少ない硬化物を形成し得るシリコーン樹脂組成物が得られる。
図1には、本発明の一実施形態にかかる半導体装置の構成を表わす概略図を示す。図示する半導体装置は、LED発光装置であり、凹部を有する基板4と、この凹部内に配置されたダイオードチップ6と、ダイオードチップを覆う透明樹脂層2とを含む。基板4には、内部電極5aおよび外部電極5bが設けられ、ダイオードチップ6の接続端子(図示せず)は、導電ワイヤ3により内部電極5aに接続される。
光は樹脂層を通過して出てくることから、図示するようなLED発光装置1においては、ダイオードチップ6を覆う透明樹脂層2には高い透明性が求められる。本発明の実施形態にかかるシリコーン樹脂組成物は、上述したように優れた透明性を有するので、透明樹脂層2の形成に好適に用いられる。
なお、本発明の実施形態にかかるシリコーン樹脂組成物を硬化させてなる硬化物で半導体素子を封止することによって、種々の半導体装置を製造することができる。例えば、半導体素子としてのフリップチップ実装により半導体素子を、本発明の実施形態にかかるシリコーン樹脂組成物の硬化物で封止することによって、熱応力の緩和に優れた半導体装置が得られる。また、色素増感型太陽電池の電解液を封止する際に本発明の実施形態にかかるシリコーン樹脂組成物を適用してもよい。色素増感型太陽電池の場合には、耐久性が向上する。
さらに、本発明の実施形態にかかるシリコーン樹脂組成物は、半導体装置のみならず、種々の用途に適用することができる。例えば、一般工業におけるディッピング剤、型取り用ゴム、成形材料、剥離用コーティング剤、歯科用印象材などの付加反応型シリコーンゴムまたはシリコーンゲルなど、幅広い用途に好適に使用することができる。こうした用途に適用した場合も、高い接着性という効果が得られ、その利用性は大きい。
1…LED発光装置; 2…透明樹脂層; 3…導電ワイヤ; 4…基板
5a…内部電極; 5b…外部電極; 6…ダイオードチップ。
5a…内部電極; 5b…外部電極; 6…ダイオードチップ。
Claims (5)
- 下記一般式(A1)で表わされ、第1の重量(w1)で配合された第1の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂と、
下記一般式(A2)で表わされ、第2の重量(w2)で配合された第2の両末端ビニル基封鎖型シリコーン樹脂と、
下記一般式(B)で表わされるアルケニル基含有シロキサンと、
下記平均組成式(C)で表わされるヒドロ基含有ポリシロキサンと、
を含有することを特徴とするシリコーン樹脂組成物。 - 上記一般式(B)において、前記R12に導入される前記アルケニル基はビニル基であり、前記R13に導入される前記アルキル基はメチル基であることを特徴とする請求項1に記載のシリコーン樹脂組成物。
- 上記平均組成式(C)において、前記R14に導入されるアルキル基はメチル基であることを特徴とする請求項1または2に記載のシリコーン樹脂組成物。
- 上記平均組成式(C)は、0.1〜10wt%のトリメトキシシリル基を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂組成物。
- 発光素子と、
この発光素子を封止する樹脂層とを具備し、
前記樹脂層は請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させてなる硬化物からなることを特徴とする樹脂封止型半導体装置。
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