<硬化性シリコーン樹脂組成物>
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、下記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び(E)成分を必須成分として含む硬化性組成物である。即ち、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、ヒドロシリル化反応により硬化させることができる付加硬化型のシリコーン樹脂組成物である。なお、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、これら必須成分以外の任意成分を含んでいてもよい。
(A):分子内に2個以上のアルケニル基及び1個以上のアリール基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン
(B):分子内に1個以上のヒドロシリル基を有し、脂肪族不飽和基を有しないポリオルガノシロキサン
(C):白金族金属を含むヒドロシリル化触媒
(D):有機金属化合物
(E):分子内に1個以上のアルケニル基を有する分岐鎖状のポリオルガノシロキサン
[(A)成分]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物の必須成分である(A)成分は、上述のように、分子内に2個以上のアルケニル基及び1個以上のアリール基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンである。従って、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(A)成分は、ヒドロシリル基を有する成分(例えば、(B)成分等)とヒドロシリル化反応を生じる成分である。
(A)成分は、分子内に2個以上のアルケニル基及び1個以上のアリール基を有し、主鎖として−Si−O−Si−(シロキサン結合)に加えて、−Si−RA−Si−(シルアルキレン結合:RAはアルキレン基を示す)を含むポリオルガノシロキサン(ポリオルガノシロキシシルアルキレン)である。即ち、(A)成分には、後述の(E)成分のようなシルアルキレン結合を有しないポリオルガノシロキサンは含まれない。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物はこのような(A)成分を含むために、硫黄バリア性と耐熱衝撃性とに優れた硬化物を形成できる。さらに、硬化させることにより、硫黄バリア性が高く、黄変し難く、タックの低い又は無い硬化物とすることができるため、これを封止材とする光半導体装置の品質が向上する。
(A)成分が分子内に有するシルアルキレン結合におけるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の直鎖又は分岐鎖状のC1-12アルキレン基等が挙げられ、中でも、C2-4アルキレン基(特に、エチレン基)が好ましい。(A)成分は、主鎖がシロキサン結合のみからなり、シルアルキレン結合を有しないポリオルガノシロキサンと比較して、製造工程において低分子量の環を生じ難く、また、加熱等により分解してシラノール基(−SiOH)を生じ難いため、(A)成分を使用することにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物の表面粘着性(タック性)が低減され、より黄変し難くなる傾向がある。
(A)成分としては、直鎖状、分岐鎖状(例えば、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、網目状等)の分子構造を有するもの等が挙げられる。中でも、(A)成分としては、分岐鎖状の分子構造を有するものが、硬化物の機械強度の観点で好ましい。
(A)成分が分子内に有するアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の置換又は無置換アルケニル基が挙げられる。当該置換アルケニル基における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。中でも、上記アルケニル基としては、ビニル基が好ましい。また、(A)成分は、1種のみのアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。(A)成分が有するアルケニル基は、特に限定されないが、ケイ素原子に結合した基であることが好ましい。
(A)成分が分子内に有するアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)等の置換又は無置換C6-14アリール基等が挙げられる。当該置換アリール基における置換基としては、置換又は無置換C1-8アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。中でも、上記アリール基としては、フェニル基が好ましい。また、(A)成分は、1種のみのアリール基を有するものであってもよいし、2種以上のアリール基を有するものであってもよい。(A)成分が有するアリール基は、特に限定されないが、ケイ素原子に結合した基であることが好ましい。(A)成分は、分子内に1個以上のアリール基を有することにより、アリール基を有しないポリオルガノシロキサンと比較して、硫黄バリア性に優れた硬化物を形成できる。
(A)成分が分子内に有するアルケニル基及びアリール基以外のケイ素原子に結合した基としては、特に限定されないが、例えば、水素原子、有機基等が挙げられる。有機基としては、例えば、アルキル基[例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等]、シクロアルキル基[例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等]、シクロアルキル−アルキル基[例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基等]、炭化水素基における1以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化炭化水素基[例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等]等の一価の置換又は無置換炭化水素基等が挙げられる。なお、本明細書において「ケイ素原子に結合した基」とは、通常、ケイ素原子を含まない基を指すものとする。中でも、アルキル基(特にメチル基)が好ましい。
また、(A)成分は、ケイ素原子に結合した基として、ヒドロキシ基、アルコキシ基を有していてもよい。
(A)成分の性状は、特に限定されず、例えば25℃において、液状であってもよいし、固体状であってもよい。
(A)成分としては、下記平均単位式:
(R1 2SiO2/2)a1(R1 3SiO1/2)a2(R1SiO3/2)a3(SiO4/2)a4(RA)a5(X1O)a6
で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンが好ましい。上記平均単位式中、R1は、同一又は異なって、一価の置換又は無置換炭化水素基であり、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例(例えば、アルキル基、ハロゲン化アルキル基等)、及び上述のアルケニル基、アリール基が挙げられる。但し、R1の一部はアルケニル基(特にビニル基)であり、その割合は、分子内に2個以上となる範囲に制御される。例えば、R1の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、0.1〜40モル%が好ましい。アルケニル基の割合を上記範囲に制御することにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性がより向上する傾向がある。また、R1の一部はアリール基(特にフェニル基)であり、その割合は、分子内に1個以上となる範囲に制御される。例えば、R1の全量(100モル%)に対するアリール基の割合は、10〜60モル%が好ましい。アリール基の割合を上記範囲に制御することにより、硬化物の硫黄バリア性がより向上する傾向がある。アルケニル基、アリール基以外のR1としては、アルキル基(特にメチル基)が好ましい。
上記平均単位式中、RAは、上述のようにアルキレン基である。特にエチレン基が好ましい。
上記平均単位式中、X1は、水素原子又はアルキル基である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
上記平均単位式中、a1は正数、a2は正数、a3は0又は正数、a4は0又は正数、a5は正数、a6は0又は正数である。中でも、a1は1/(a1+a2+a3+a4+a5)〜200/(a1+a2+a3+a4+a5)が好ましく、a2は1/(a1+a2+a3+a4+a5)〜200/(a1+a2+a3+a4+a5)が好ましく、a3は0/(a1+a2+a3+a4+a5)〜10/(a1+a2+a3+a4+a5)が好ましく、a4は0/(a1+a2+a3+a4+a5)〜5/(a1+a2+a3+a4+a5)が好ましく、a5は1/(a1+a2+a3+a4+a5)〜100/(a1+a2+a3+a4+a5)が好ましい。特に、(a3+a4)が正数の場合には、(A)成分が分岐鎖(分岐状の主鎖)を有し、硬化物の機械強度がより向上する傾向がある。
(A)成分としては、より具体的には、例えば、下記式(I−1)で表される構造を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンが挙げられる。
上記式(I−1)中、R11は、同一又は異なって、水素原子、又は一価の置換若しくは無置換炭化水素基である。R11としては、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例(例えば、アルキル基、ハロゲン化炭化水素基等)、及び上述のアルケニル基、アリール基が挙げられる。但し、R11の少なくとも2個はアルケニル基(特にビニル基)であり、R11の少なくとも1個はアリール基(特にフェニル基)である。また、アルケニル基及びアリール基以外のR11としては、アルキル基(特にメチル基)が好ましい。
上記式(I−1)中、RAは、上記と同じく、アルキレン基を示し、中でも、C2-4アルキレン基(特に、エチレン基)が好ましい。なお、複数のRAが存在する場合、これらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記式(I−1)中、r1は1以上の整数(例えば、1〜100)を示す。なお、r1が2以上の整数の場合、r1が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記式(I−1)中、r2は1以上の整数(例えば、1〜400)を示す。なお、r2が2以上の整数の場合、r2が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記式(I−1)中、r3は0又は1以上の整数(例えば、0〜50)を示す。なお、r3が2以上の整数の場合、r3が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記式(I−1)中、r4は0又は1以上の整数(例えば、0〜50)を示す。なお、r4が2以上の整数の場合、r4が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記式(I−1)中、r5は0又は1以上の整数(例えば、0〜50)を示す。なお、r5が2以上の整数の場合、r5が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、上記式(I−1)における各構造単位の付加形態は特に限定されず、ランダム型であってもよいし、ブロック型であってもよい。また、各構造単位の配列の順番も特に限定されない。
式(I−1)で表される構造を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンの末端構造は、特に限定されないが、例えば、シラノール基、アルコキシシリル基、トリアルキルシリル基(例えば、r5が付された括弧内の構造、トリメチルシリル基等)等が挙げられる。上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンの末端には、アルケニル基やヒドロシリル基等の各種の基が導入されていてもよい。
(A)成分は公知乃至慣用の方法により製造することができ、その製造方法は特に限定されないが、例えば、特開2012−140617号公報に記載の方法により製造できる。また、(A)成分を含む製品として、例えば、商品名「ETERLED GD1130」、「ETERLED GD1125」、「ETERLED GS5155」、「ETERLED GS5145」、「ETERLED GS5135」「ETERLED GS5120」(いずれも長興材料工業製)等が入手可能である。
なお、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(A)成分は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。例えば、分子構造が異なる(A)成分の2種以上を併用することができ、具体的には、直鎖状の(A)成分と分岐鎖状の(A)成分とを併用する態様等が挙げられる。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(A)成分の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、0.1〜60重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜55重量%、さらに好ましくは0.1〜50重量%である。(A)成分の含有量を0.1重量%以上とすることにより、硬化物の硫黄バリア性がより向上する傾向がある。また、硬化物のタックが低減され、耐黄変性が向上するため、光半導体装置の品質及び耐久性が向上する傾向もある。一方、(A)成分の含有量を60重量%以下とすることにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向があり、また、(B)〜(D)成分の増量による効果(例えば硬化性向上、硫黄バリア性向上、密着性向上等)を効率的に得られる傾向がある。
[(B)成分]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(B)成分は、分子内に1個以上のヒドロシリル基(Si−H)を有し、脂肪族不飽和基を有しないポリオルガノシロキサンである。従って、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(B)成分は、アルケニル基を有する成分(例えば、(A)成分等)とヒドロシリル化反応を生じる成分である。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物が(B)成分を含むことにより、ヒドロシリル化反応による硬化反応を効率的に進行させることができる。また、その硬化物が優れた硫黄バリア性を発揮する。
(B)成分が分子内に有するヒドロシリル基の数は、1個以上であればよく、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性の観点で、2個以上(例えば2〜50個)が好ましい。
(B)成分としては、特に限定されないが、分子内に1個以上(好ましくは2個以上)のヒドロシリル基を有し、脂肪族不飽和基及びシルアルキレン結合を有しないポリオルガノシロキサン(単に「ポリオルガノシロキサン(B1)」と称する場合がある)であることが好ましい。
なお、(B)成分は、上述のように、分子内に脂肪族不飽和基を有しない。上記脂肪族不飽和基とは、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する脂肪族炭化水素基であり、例えば、エチレン性不飽和基、アセチレン性不飽和基等が挙げられる。エチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、5−ヘキセニル基等のアルケニル基(例えば、C2-20アルケニル基(特にC2-10アルケニル基)等);1,3−ブタジエニル基等のアルカジエニル基(特に、C4-10アルカジエニル基等);アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等のアルケニルカルボニルオキシ基;アクリルアミド基等のアルケニルカルボニルアミノ基等が挙げられる。アセチレン性不飽和基としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基等のアルキニル基(例えば、C2-20アルキニル基(特にC2-10アルキニル基)等);エチニルカルボニルオキシ基等のアルキニルカルボニルオキシ基;エチニルカルボニルアミノ基等のアルキニルカルボニルアミノ基が挙げられる。
ポリオルガノシロキサン(B1)としては、直鎖状、分岐鎖状(一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、網目状等)の分子構造を有するもの等が挙げられる。なお、ポリオルガノシロキサン(B1)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。例えば、分子構造が異なるポリオルガノシロキサン(B1)の2種以上を併用することができ、具体的には、直鎖状のポリオルガノシロキサン(B1)と分岐鎖状のポリオルガノシロキサン(B1)とを併用する態様等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサン(B1)が有するケイ素原子に結合した基の中でも水素原子以外の基は、特に限定されないが、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基は除かれる)及び上述のアリール基、より詳しくは、アルキル基、アリール基、ハロゲン化炭化水素基等が挙げられる。中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
また、(B1)成分は、ケイ素原子に結合した基として、ヒドロキシ基、アルコキシ基を有していてもよい。
ポリオルガノシロキサン(B1)の性状は、特に限定されず、例えば25℃において、液状であってもよいし、固体状であってもよい。中でも液状であることが好ましく、25℃における粘度が0.1〜10億mPa・sの液状であることがより好ましい。
ポリオルガノシロキサン(B1)としては、下記平均単位式:
(R2SiO3/2)b1(R2 2SiO2/2)b2(R2 3SiO1/2)b3(SiO4/2)b4(X2O1/2)b5
で表されるポリオルガノシロキサンが好ましい。上記平均単位式中、R2は、同一又は異なって、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基は除かれる)であり、例えば、水素原子、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例(例えば、アルキル基、ハロゲン化アルキル基等)、及び上述のアリール基が挙げられる。但し、R2の一部は水素原子(ヒドロシリル基を構成する水素原子)であり、その割合は、ヒドロシリル基が分子内に1個以上(好ましくは2個以上)となる範囲に制御される。例えば、R2の全量(100モル%)に対する水素原子の割合は、0.1〜40モル%が好ましい。水素原子の割合を上記範囲に制御することにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性がより向上する傾向がある。また、水素原子以外のR2としては、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
上記平均単位式中、X2は、上記X1と同じく、水素原子又はアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、特にメチル基であることが好ましい。
上記平均単位式中、b1は0又は正数、b2は0又は正数、b3は0又は正数、b4は0又は正数、b5は0又は正数であり、かつ、(b1+b2+b3)は正数である。
ポリオルガノシロキサン(B1)の一例としては、例えば、分子内に1個以上(好ましくは2個以上)のヒドロシリル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。上記直鎖状ポリオルガノシロキサンにおける水素原子以外のケイ素原子に結合した基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基は除かれる)及び上述のアリール基が挙げられるが、中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対する水素原子(ケイ素原子に結合した水素原子)の割合は、特に限定されないが、0.1〜40モル%が好ましい。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、20〜99モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、40〜80モル%が好ましい。特に、上記直鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が40モル%以上(例えば、45〜70モル%)であるものを使用することにより、硬化物の硫黄バリア性がより向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が90モル%以上(例えば、95〜99モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンは、例えば、下記式(II−1)で表される。
[上記式中、R
21は、同一又は異なって、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基は除かれる)である。但し、R
21の少なくとも1個(好ましくは少なくとも2個)は水素原子である。m1は、5〜1000の整数である。]
なお、上記式(II−1)で表される直鎖状ポリオルガノシロキサンにおいて、上記R21は、ヒドロキシ基、アルコキシ基であってもよい。また、上記R21における一価の置換若しくは無置換炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基は除かれる)がヒドロキシ基やアルコキシ基を有していてもよい。
ポリオルガノシロキサン(B1)の他の例としては、分子内に1個以上(好ましくは2個以上)のヒドロシリル基を有し、RSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を有する分岐鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。この分岐鎖状ポリオルガノシロキサンには、網目状等の三次元構造のポリオルガノシロキサンも含まれる。なお、Rは、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基は除かれる)である。上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおける水素原子以外のケイ素原子に結合した基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基は除かれる)及び上述のアリール基が挙げられるが、中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。さらに、上記T単位中のRとしては、水素原子、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基は除かれる)及び上述のアリール基が挙げられるが、中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。上記T単位中のRの全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、硬化物の硫黄バリア性の観点で、30モル%以上が好ましい。
上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、70〜95モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、10〜70モル%が好ましい。特に、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が10モル%以上(例えば、10〜70モル%)であるものを使用することにより、硬化物の硫黄バリア性がより向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が50モル%以上(例えば、50〜90モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンは、例えば、b1が正数である上記平均単位式で表すことができる。この場合、特に限定されないが、b2/b1は0〜10の数、b3/b1は0〜0.5の数、b4/(b1+b2+b3+b4)は0〜0.3の数、b5/(b1+b2+b3+b4)は0〜0.4の数であることが好ましい。また、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンの分子量は特に限定されないが、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が300〜1万であることが好ましく、より好ましくは500〜3000である。
なお、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(B)成分は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(B)成分の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、1〜60重量%が好ましく、より好ましくは5〜55重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。(B)成分の含有量を1重量%以上とすることにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性がより向上し、硫黄バリア性がより向上する傾向がある。一方、(B)成分の含有量を60重量%以下とすることにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
[(C)成分]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(C)成分は、白金族金属を含むヒドロシリル化触媒である。即ち、(C)成分は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群より選択される少なくとも1種の金属(白金族金属)を含むヒドロシリル化触媒である。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物が(C)成分を含むことにより、加熱により硬化性シリコーン樹脂組成物中のアルケニル基とヒドロシリル基の間のヒドロシリル化反応を効率的に進行させることができる。
(C)成分としては、公知乃至慣用のヒドロシリル化触媒(例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等)を使用することができ、具体的には、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金のオレフィン錯体、白金−カルボニルビニルメチル錯体等の白金のカルボニル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体や白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体等の白金−ビニルメチルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体等の白金系触媒、並びに上記白金系触媒において白金原子の代わりにパラジウム原子又はロジウム原子を含有するパラジウム系触媒又はロジウム系触媒等が挙げられる。中でも、(C)成分としては、白金系触媒(白金を含むヒドロシリル化触媒)が好ましく、特に、白金−ビニルメチルシロキサン錯体や白金−カルボニルビニルメチル錯体や塩化白金酸とアルコール、アルデヒドとの錯体が、反応速度が良好であるため好ましい。
なお、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(C)成分は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(C)成分の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれるアルケニル基の全量1モル(1モル当たり)に対して、1×10-8〜1×10-2モルが好ましく、より好ましくは1.0×10-6〜1.0×10-3モルである。(C)成分の含有量を1×10-8モル以上とすることにより、より効率的に硬化物を形成させることができる傾向がある。一方、(C)成分の含有量を1×10-2モル以下とすることにより、より色相に優れた(着色の少ない)硬化物を得ることができる傾向がある。
また、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(C)成分の含有量(配合量)は、特に限定されないが、例えば、ヒドロシリル化触媒中の白金族金属が重量単位で、0.01〜1000ppmの範囲内となる量が好ましく、0.1〜500ppmの範囲内となる量がより好ましい。(C)成分の含有量がこのような範囲にあると、より効率的に硬化物を形成させることができ、また、より色相に優れた硬化物を得ることができる傾向がある。
[(D)成分]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(D)成分は、有機金属化合物である。但し、(D)成分には、上述の(C)成分は含まれない。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物が(D)成分を含むことにより、硬化物の被着体に対する密着性が向上し、硬化物と被着体との界面からのガスの侵入を抑制することによるものと推測されるが、硫黄バリア性が向上する。
(D)成分としては、公知乃至慣用の有機金属化合物を使用することができる。上記(D)成分としては、例えば、ホウ素化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、亜鉛化合物、鉄化合物、ビスマス化合物、ハフニウム化合物、イットリウム化合物、ガリウム化合物等が挙げられる。中でも、ホウ素化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
上記ホウ素化合物としては、例えば、トリメチルボレート、トリブチルボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン等のホウ酸エステル;ビス(ピナコレート)ジボロン等のジボロン;2,4,6−トリメトキシボロキシン等のトリアルコキシボロキシン等が挙げられる。
上記ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムアシレート、ジルコニウムオクトエート、ジルコニウム(2−エチルヘキソエート)、オクタン酸ジルコニウム[又は、オクトープジルコニウム]等の脂肪酸ジルコニウム塩;ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド等のジルコニウムアルコキシド;ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシジアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシステアレート等のジルコニウムキレート等が挙げられる。
上記チタン化合物としては、例えば、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトネート)、ジイソプロポキシチタンビス(メチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(ブチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(2−エチルヘキシルアセトアセテート)、チタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート等のチタンキレート化合物;テトラノルマルプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラオクチルチタネート、チタンブトキシドダイマー等のアルコキシチタン等が挙げられる。
上記アルミニウム化合物としては、例えば、(エチルアセトアセテート)アルミニウムジイソプロポキシド、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等が挙げられる。
上記スズ化合物としては、例えば、テトラブチルスズ、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキサイド、テトラオクチルスズ、ジオクチルスズジクロライド、ジオクチルスズオキサイド、テトラメチルスズ、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレート、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ビス(ネオデカノエート)スズ、ジ−n−ブチルビス(エチルヘキシルマレート)スズ、ジノルマルブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ、ジノルマルブチルブトキシクロロスズ、ジノルマルブチルジアセトキシスズ、ジノルマルブチルジラウリル酸スズ、ジメチルジネオデカノエートスズ等が挙げられる。
上記亜鉛化合物としては、例えば、亜鉛トリアセチルアセトネート、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ビス(アセチルアセトネート)亜鉛(II)(一水和物)等が挙げられる。
上記ハフニウム化合物としては、例えば、上述のジルコニウム化合物として例示された化合物において、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物等が挙げられる。
上記ガリウム化合物としては、例えば、トリス(アセチルアセトネート)ガリウム、酢酸ガリウム、オキシ酢酸ガリウム、トリエトキシガリウム、トリス(8−キノリノラト)ガリウム、シュウ酸ガリウム、エチルキサントゲン酸ガリウム、ジエチルエトキシガリウム、マレイン酸ガリウム等、オクチル酸ガリウム、ラウリン酸ガリウム等が挙げられる。
なお、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(D)成分は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(D)成分の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜4重量%である。(D)成分の含有量を0.01重量%以上とすることにより、より効率的に硬化物を形成させることができ、硬化物の硫黄バリア性、耐熱衝撃性、密着性が向上する傾向にある。一方、(D)成分の含有量を10重量%以下とすることにより、より色相に優れた(着色の少ない)硬化物を得ることができる傾向がある。
[(E)成分]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(E)成分は、上述のように、分子内に1個以上のアルケニル基を有する分岐鎖状のポリオルガノシロキサン(「(E)成分」と称する場合がある)である。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(E)成分は、(A)成分とともに、ヒドロシリル基を有する成分(例えば、(B)成分等)とヒドロシリル化反応を生じる成分である。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物が(E)成分を含むことにより、硬化物の耐熱性、耐熱衝撃性、硫黄バリア性がさらに向上する場合がある。
(E)成分は、分子内に1個以上のアルケニル基を有し、なおかつ主鎖として−Si−O−Si−(シロキサン結合)を有し、シルアルキレン結合を有しない分岐鎖状のポリオルガノシロキサン(分岐状の主鎖を有するポリオルガノシロキサン)である。なお、(E)成分には、網目状等の三次元構造のポリオルガノシロキサンも含まれる。但し、(E)成分には、後述の(F)成分は含まれない。
(E)成分が分子内に有するアルケニル基としては、上述の置換又は無置換アルケニル基が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。また、(E)成分は、1種のみのアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。(E)成分が有するアルケニル基は、特に限定されないが、ケイ素原子に結合したものであることが好ましい。
(E)成分が分子内に有するアルケニル基の数は、1個以上であればよく、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性の観点で、2個以上(例えば2〜50個)が好ましい。
(E)成分が有するアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基は、特に限定されないが、例えば、水素原子、有機基等が挙げられる。有機基としては、例えば、上述の有機基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキル−アルキル基、ハロゲン化炭化水素基等の置換又は無置換炭化水素等)及び上述のアリール基が挙げられる。
また、(E)成分は、ケイ素原子に結合した基として、ヒドロキシ基、アルコキシ基を有していてもよい。
(E)成分の性状は、特に限定されず、例えば25℃において、液状であってもよいし、固体状であってもよい。
(E)成分としては、下記平均単位式:
(R3SiO3/2)c1(R3 2SiO2/2)c2(R3 3SiO1/2)c3(SiO4/2)c4(X3O1/2)c5
で表されるポリオルガノシロキサンが好ましい。上記平均単位式中、R3は、同一又は異なって、一価の置換又は無置換炭化水素基であり、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例(例えば、アルキル基、ハロゲン化炭化水素基等)、上述のアルケニル基、及び上述のアリール基が挙げられる。但し、R3の一部はアルケニル基(特にビニル基)であり、その割合は、分子内に1個以上(好ましくは2個以上)となる範囲に制御される。例えば、R3の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、0.1〜40モル%が好ましい。アルケニル基の割合を上記範囲に制御することにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性がより向上する傾向がある。また、アルケニル基以外のR3としては、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
上記平均単位式中、X3は、上記X1と同様、水素原子又はアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、特にメチル基であることが好ましい。
上記平均単位式中、c1は0又は正数、c2は0又は正数、c3は0又は正数、c4は0又は正数、c5は0又は正数であり、かつ、(c1+c2+c3)及び(c1+c4)がそれぞれ正数である。
(E)成分の具体例としては、分子内に2個以上のアルケニル基を有し、RSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を有する分岐鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。なお、Rは、一価の置換又は無置換炭化水素基である。この分岐鎖状ポリオルガノシロキサンが有するアルケニル基としては、上述のアルケニル基の具体例が挙げられるが、中でもビニル基が好ましい。なお、1種のみのアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。また、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおけるアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基(アリール基も含まれる)が挙げられるが、中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。さらに、上記T単位中のRとしては、中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性の観点で、0.1〜40モル%が好ましい。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、10〜40モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、5〜70モル%が好ましい。特に、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が40モル%以上(例えば、45〜60モル%)であるものを使用することにより、硬化物の硫黄バリア性がより向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が50モル%以上(例えば、60〜99モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンは、c1が正数である上記平均単位式で表すことができる。この場合、特に限定されないが、c2/c1は0〜10の数、c3/c1は0〜0.5の数、c4/(c1+c2+c3+c4)は0〜0.3の数、c5/(c1+c2+c3+c4)は0〜0.4の数であることが好ましい。また、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンの分子量は特に限定されないが、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜1万であることが好ましく、より好ましくは700〜3000である。
(E)成分の具体例としては、例えば、上記平均単位式中、c1及びc2が0であり、X3が水素原子である下記平均単位式:
(R3a 2R3bSiO1/2)c6(R3a 3SiO1/2)c7(SiO4/2)c8(HO1/2)c9
で表されるポリオルガノシロキサンが挙げられる。上記平均単位式中、R3aは、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。また、R3bは、同一又は異なって、アルケニル基を示し、中でもビニル基が好ましい。さらに、c6、c7、c8及びc9はいずれも、c6+c7+c8=1、c6/(c6+c7)=0.15〜0.35、c8/(c6+c7+c8)=0.53〜0.62、c9/(c6+c7+c8)=0.005〜0.03を満たす正数である。なお、c7は0であってもよい。硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性の観点で、c6/(c6+c7)は0.2〜0.3であることが好ましい。また、硬化物の硬度や機械強度の観点で、c8/(c6+c7+c8)は0.55〜0.60であることが好ましい。さらに、硬化物の密着性や機械強度の観点で、c9/(c6+c7+c8)は0.01〜0.025であることが好ましい。このようなポリオルガノシロキサンとしては、例えば、SiO4/2単位と(CH3)2(CH2=CH)SiO1/2単位とで構成されるポリオルガノシロキサン、SiO4/2単位と(CH3)2(CH2=CH)SiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位とで構成されるポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
なお、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(E)成分は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(E)成分の含有量(配合量)は、特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して、50〜200重量部が好ましく、より好ましくは75〜175重量部、さらに好ましくは100〜150重量部である。(E)成分の含有量を上記範囲に制御することにより、硬化物の耐熱衝撃性、硫黄バリア性、及び耐熱性がさらに向上する場合がある。
[(F)成分]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、分子内に1個以上のアルケニル基を有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(「(F)成分」と称する場合がある)を含んでいてもよい。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物が(F)成分を含むことにより、硬化物の硫黄バリア性(特に、SO
Xバリア性)が著しく向上する傾向がある。(F)成分としては、分子内に1個以上(好ましくは2個以上)のアルケニル基を有し、ラダー構造の−Si−O−Si−骨格を有するポリオルガノシルセスキオキサンを使用することができ、特に限定されない。(F)成分の特に好ましい態様として、例えば、下記のラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)が挙げられる。但し、(F)成分は、以下のラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンには限定されない。
・ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a):分子内に2個以上のアルケニル基を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量が500〜1500、分子量分散度(Mw/Mn)が1.00〜1.40であるラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン。
・ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b):ラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンの分子鎖末端の一部又は全部に、式(III−3−1)で表される構成単位(T単位)及び式(III−3−2)で表される構成単位(M単位)を含むポリオルガノシルセスキオキサン残基(「ポリオルガノシルセスキオキサン残基(R)」と称する場合がある)を有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン。
(F)成分はラダー構造を有するが、このことは、FT−IRスペクトルにおいて1050cm-1付近(例えば、1000〜1100cm-1)と1150cm-1付近(例えば、1100cm-1を超え1200cm-1以下)にそれぞれ固有吸収ピークを有する(即ち、1000〜1200cm-1に少なくとも2本の吸収ピークを有する)ことから確認される[参考文献:R.H.Raney, M.Itoh, A.Sakakibara and T.Suzuki, Chem. Rev. 95, 1409(1995)]。なお、FT−IRスペクトルは、例えば、下記の装置及び条件により測定することができる。
測定装置:商品名「FT−720」((株)堀場製作所製)
測定方法:透過法
分解能:4cm-1
測定波数域:400〜4000cm-1
積算回数:16回
・ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)
但し、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、ラダー構造に加えて、さらにカゴ構造やランダム構造等のその他のシルセスキオキサン構造を有するものであってもよい。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は500〜1500であり、好ましくは550〜1450、より好ましくは600〜1400である。Mnが500未満であると、例えば、硬化物の物性(耐熱性、硫黄バリア性等)が低下する傾向がある。一方、Mnが1500を超えると、室温で固体となりやすく、取り扱い性が低下する傾向がある。また、他の成分との相溶性が悪化する場合もある。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量分散度(Mw/Mn)は1.00〜1.40であり、好ましくは1.35以下(例えば、1.05〜1.35)、より好ましくは1.30以下(例えば、1.10〜1.30)である。分子量分散度が1.40を超えると、例えば、低分子シロキサンが増加し、硬化物の密着性や硫黄バリア性等が低下する傾向がある。一方、例えば、分子量分散度を1.05以上とすることにより、室温で液体(液状)となりやすく、取り扱い性が向上する場合がある。
なお、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の数平均分子量、分子量分散度は、下記の装置及び条件により測定される。
測定装置:商品名「LC−20AD」((株)島津製作所製)
カラム:Shodex KF−801×2本、KF−802、及びKF−803(昭和電工(株)製)
測定温度:40℃
溶離液:THF、試料濃度0.1〜0.2重量%
流量:1mL/分
検出器:UV−VIS検出器(商品名「SPD−20A」、(株)島津製作所製)
分子量:標準ポリスチレン換算
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の窒素雰囲気下における5%重量減少温度(Td5)は、特に限定されないが、150℃以上が好ましく、より好ましくは240℃以上、さらに好ましくは260〜500℃、特に好ましくは262℃以上、最も好ましくは265℃以上である。5%重量減少温度が150℃以上(特に、240℃以上)であると、多様な用途において要求される耐熱性を満たしやすくなる傾向がある。なお、5%重量減少温度は、一定の昇温速度で加熱した時に加熱前の重量の5%が減少した時点での温度であり、耐熱性の指標となる。上記5%重量減少温度は、TGA(熱重量分析)により、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分の条件で測定される。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、特に限定されないが、室温(25℃)で液体であることが好ましい。具体的には、その25℃における粘度は、特に限定されないが、30000Pa・s以下(例えば、1〜30000Pa・s)が好ましく、より好ましくは25000Pa・s以下、さらに好ましくは10000Pa・s以下である。上記粘度は、粘度計(商品名「MCR301」、アントンパール社製)を用いて、振り角5%、周波数0.1〜100(1/s)、温度:25℃の条件で測定される。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)としては、例えば、下記式(III−2)で表され、かつ分子内に2個以上のアルケニル基を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が500〜1500、分子量分散度(Mw/Mn)が1.00〜1.40であるラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンが挙げられる。
上記式(III−2)中、R42は、同一又は異なって、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基である。R42の具体例としては、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基(アルケニル基、アリール基も含まれる)が挙げられる。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、R42としてアルケニル基を有していてもよいし、有していなくてもよい。ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、上記式(III−2)中のアルケニル基以外のR42として、アルキル基及びアリール基からなる群より選択された少なくとも1種の基を有することが好ましく、フェニル基及びメチル基からなる群より選択された少なくとも1種の基を有することがより好ましい。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の上記式(III−2)におけるR42の全量(100重量%)中の、フェニル基、ビニル基、及びメチル基の割合(合計含有量)は、特に限定されないが、50〜100重量%が好ましく、より好ましくは70〜100重量%、さらに好ましくは80〜100重量%である。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の上記式(III−2)におけるR42の全量(100重量%)中の、フェニル基の割合(含有量)は、特に限定されないが、0〜100重量%が好ましく、より好ましくは1〜100重量%、さらに好ましくは5〜100重量%である。ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の上記式(III−2)におけるR42の全量(100重量%)中の、ビニル基の割合(含有量)は、特に限定されないが、0〜100重量%が好ましく、より好ましくは1〜100重量%、さらに好ましくは5〜90重量%、特に好ましくは10〜80重量%である。ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の上記式(III−2)におけるR42の全量(100重量%)中の、メチル基の割合(含有量)は、特に限定されないが、0〜100重量%が好ましく、より好ましくは1〜100重量%、さらに好ましくは5〜100重量%である。
なお、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の上記式(III−2)におけるR42の組成(例えば、フェニル基、ビニル基、メチル基の割合等)は、例えば、NMRスペクトル(例えば、1H−NMRスペクトル)測定等により算出することができる。
上記式(III−2)中、R
43は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、下記式(III−2−1)で表される一価の基、下記式(III−2−2)で表される一価の基、又は、下記式(III−2−3)で表される一価の基を示す。
上記式(III−2−1)中、R44は、同一又は異なって、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基である。R44の具体例としては、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基(アルケニル基、アリール基も含まれる)が挙げられ、中でもアルキル基が好ましい。また、上記式(III−2−1)中、R45は、同一又は異なって、一価の置換又は無置換炭化水素基である。R45の具体例としては、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基(アルケニル基、アリール基も含まれる)が挙げられ、中でもアルキル基が好ましい。上記式(III−2−1)中、n1は、0以上の整数を示す。n1としては、0〜5が好ましく、より好ましくは0〜3、さらに好ましくは0である。
上記式(III−2−2)中、R44は、式(III−2−1)におけるR44と同じく、同一又は異なって、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基である。R44としては、中でもアルキル基が好ましい。また、上記式(III−2−2)中、R45は、式(III−2−1)におけるR45と同じく、同一又は異なって、一価の置換又は無置換炭化水素基である。R45としては、中でもアルキル基が好ましい。上記式(III−2−2)中、R46はアルケニル基であり、中でもビニル基が好ましい。また、上記式(III−2−2)中、n2は、0以上の整数を示す。n2としては、0〜5が好ましく、より好ましくは0〜3、さらに好ましくは0である。
上記式(III−2−3)中、R44は、式(III−2−1)におけるR44と同じく、同一又は異なって、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基である。R44としては、中でもアルキル基が好ましい。また、上記式(III−2−3)中、R47は、同一又は異なって、一価の飽和脂肪族炭化水素基であり、例えば、アルキル基、シクロアルキル基等が挙げられるが、中でもアルキル基(特にメチル基)が好ましい。上記式(III−2−3)中、n3は、0以上の整数を示す。n3としては、0〜5が好ましく、より好ましくは0〜3、さらに好ましくは0である。
上記式(III−2)中、nは0以上の整数を示す。上記nは、通常、0以上の偶数(例えば、2以上の偶数)である。上記nは、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の数平均分子量が500〜1500、分子量分散度が1.00〜1.40に制御される限り、特に限定されない。ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の分子量分散度が1.00を超える場合、該ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、一般に、式(III−2)で表されるポリオルガノシルセスキオキサンであってnが異なる2種以上の混合物である。特に、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、nが1以上(特に2以上)の成分を必須成分として含有することが好ましい。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、分子内に2個以上のアルケニル基を有する。ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)が有するアルケニル基としては、特にビニル基が好ましい。ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)が式(III−2)で表される場合、例えば、式(III−2)におけるR42のいずれかがアルケニル基であるもの、R44及びR45のいずれかがアルケニル基である式(III−2−1)で表される一価の基を有するもの、式(III−2−2)で表される一価の基を有するもの、R44のいずれかがアルケニル基である式(III−2−3)で表される一価の基を有するもの等が挙げられる。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、周知慣用の方法により製造でき、特に限定されないが、例えば、特開平4−28722号公報、特開2010−518182号公報、特開平5−39357号公報、特開2004−99872号公報、国際公開第1997/007156号、特開平11−246662号公報、特開平9−20826号公報、国際公開第2006/033147号、特開2005−239829号公報、国際公開第2013/176238号等の文献に開示された方法等により製造できる。
・ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)におけるラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンは、例えば、下記式(III−3)で表される。
上記式(III−3)において、pは1以上の整数(例えば、1〜5000)を示し、好ましくは1〜2000の整数、さらに好ましくは1〜1000の整数である。式(III−3)中のR48は、同一又は異なって、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基である。Tは末端基を示す。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)における上記ポリオルガノシルセスキオキサン中のケイ素原子に直接結合した基(例えば、式(III−3)におけるR48)は、特に限定されないが、上記基の全量(100モル%)に対する一価の置換若しくは無置換炭化水素基の占める割合が50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。特に、上記基の全量(100モル%)に対する、置換又は無置換のC1-10アルキル基(特に、メチル基、エチル基等のC1-4アルキル基)、置換又は無置換のC6-10アリール基(特に、フェニル基)、置換又は無置換のC7-10アラルキル基(特に、ベンジル基)の合計量が、50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)は、上記ラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンの分子鎖末端の一部又は全部に、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(R)を有する。上記ポリオルガノシルセスキオキサンが上記式(III−3)で表される場合、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)は、式(III−3)中のTの一部又は全部が上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(R)で置換されたものである。
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(R)は、上述のように、式(III−3−1)で表される構成単位及び式(III−3−2)で表される構成単位を少なくとも含む残基である。
上記式(III−3−1)におけるR49は、アルケニル基を示す。上記アルケニル基としては、上述のアルケニル基の具体例が挙げられ、中でも、C2-10アルケニル基が好ましく、より好ましくはC2-4アルケニル基、さらに好ましくはビニル基である。
上記式(III−3−2)中のR50は、同一又は異なって、一価の置換若しくは無置換炭化水素基を示す。上記置換若しくは無置換炭化水素基としては、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基(アルケニル基、アリール基も含まれる)等が挙げられる。R50としては、中でもアルキル基が好ましく、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-10アルキル基、特に好ましくはC1-4アルキル基、最も好ましくはメチル基である。特に、式(III−3−2)中のR50がいずれもメチル基であることが好ましい。
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(R)は、上記式(III−3−1)で表される構成単位と上記式(III−3−2)で表される構成単位以外にも、例えば、下記式(III−3−1')で表される構成単位を有していてもよい。
上記式(III−3−1')中のR49'は、アルケニル基を除く一価の基を示す。具体的には、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルケニル基を除く一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基等が挙げられる。
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(R)における式(III−3−1)に表された3つの酸素原子が結合したケイ素原子の量は、特に限定されないが、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(R)を構成するケイ素原子の全量(100モル%)に対して、20〜80モル%が好ましく、より好ましくは25〜60モル%である。含有量が20モル%未満であると、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)が有するアルケニル基の量が不十分となって、硬化物の硬度が十分得られない場合がある。一方、含有量が80モル%を超えると、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)中にシラノール基や加水分解性シリル基が多く残存するため、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)が液状で得られない場合がある。さらにラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)間で縮合反応が進行して分子量が変化しやすくなるため、保存安定性が悪化する場合がある。
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(R)における式(III−3−2)に表された1つの酸素原子が結合したケイ素原子の量は、特に限定されないが、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(R)を構成するケイ素原子の全量(100モル%)に対して、20〜85モル%が好ましく、より好ましくは30〜75モル%である。含有量が20モル%未満であると、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)中にシラノール基や加水分解性シリル基が残存しやすく、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)が液状で得られない場合がある。さらにラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)間で縮合反応が進行して分子量が変化しやすくなるため、保存安定性が悪化する場合がある。一方、含有量が85モル%を超えると、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)が有するアルケニル基の量が不十分となって、硬化物の硬度が十分得られない場合がある。
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(R)が有するSi−O−Si構造(骨格)としては、特に限定されず、例えば、ラダー構造、カゴ構造、ランダム構造等が挙げられる。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)は、例えば、下記式(III−3')で表すことができる。式(III−3')中のp、R
48としては、上記式(III−3)と同様のものが例示される。式(III−3')中のAは、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(R)、又は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、若しくはアシルオキシ基を示し、Aの一部又は全部はポリオルガノシルセスキオキサン残基(R)である。4つのAは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。なお、式(III−3')中の複数(2〜4個)のAがポリオルガノシルセスキオキサン残基(R)である場合、それぞれのAは互いに又は他の式(III−3’)で表される分子が有するAと1以上のSi−O−Si結合を介して結合していてもよい。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)における、分子内のアルケニル基の数は1個以上であればよく、特に限定されないが、2個以上(例えば、2〜50個)が好ましく、より好ましくは2〜30個である。上述の範囲でアルケニル基を有することにより、耐熱性等の各種物性、耐クラック性、硫黄化合物に対するバリア性に優れた硬化物が得られやすい傾向がある。なお、アルケニル基の数は、例えば、1H−NMRスペクトル測定等により算出できる。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)中のアルケニル基の含有量は、特に限定されないが、0.7〜5.5mmol/gが好ましく、より好ましくは1.1〜4.4mmol/gである。また、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)に含まれるアルケニル基の割合(重量基準)は、特に限定されないが、ビニル基換算で、2.0〜15.0重量%が好ましく、より好ましくは3.0〜12.0重量%である。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、100〜80万が好ましく、より好ましくは200〜10万、さらに好ましくは300〜1万、特に好ましくは500〜8000、最も好ましくは1700〜7000である。Mwが100以上であると、硬化物の耐熱性が低下しにくい。一方、Mwが80万以下であると、他の成分との相溶性が低下しにくい。なお、上記Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量より算出される。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、80〜80万が好ましく、より好ましくは150〜10万、さらに好ましくは250〜1万、特に好ましくは400〜8000、最も好ましくは1500〜7000である。Mnが80以上であると、硬化物の耐熱性が低下しにくい。一方、Mnが80万以下であると、他の成分との相溶性が低下しにくい。なお、上記Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量より算出される。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)は、常温(約25℃)で液体であることが好ましい。より具体的には、その23℃における粘度は、100〜10万mPa・sが好ましく、より好ましくは500〜1万mPa・s、さらに好ましくは1000〜8000mPa・sである。粘度が100mPa・s以上であると、硬化物の耐熱性が低下しにくい。一方、粘度が10万mPa・s以下であると、硬化性シリコーン樹脂組成物の調製や取り扱いが容易である。なお、23℃における粘度は、レオメーター(商品名「Physica UDS−200」、Anton Paar社製)とコーンプレート(円錐直径:16mm、テーパ角度=0°)を用いて、温度:23℃、回転数:20rpmの条件で測定することができる。
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ラダー構造を有し、分子鎖末端にシラノール基及び/又は加水分解性シリル基(シラノール基及び加水分解性シリル基のいずれか一方又は両方)を有するポリオルガノシルセスキオキサンの分子鎖末端に対して、上記シルセスキオキサン残基(R)を形成する方法が挙げられる。具体的には、国際公開第2013/176238号等の文献に開示された方法等により製造できる。
また、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)及び(b)は、ケイ素原子に結合した基として、ヒドロキシ基、アルコキシ基を有していてもよい。
なお、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(F)成分は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、硬化物の硫黄バリア性と強度(樹脂強度)の観点で、(F)成分を含むことが好ましく、より好ましくはラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)及び/又はラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(b)を含むことである。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(F)成分の含有量(配合量)は、特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜45重量部、さらに好ましくは0.01〜40重量部である。また、特に限定されないが、上記(F)成分の含有量(配合量)は、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.2〜10重量%である。上記(F)成分の含有量を上記範囲に制御することにより、硬化物の硫黄バリア性が著しく向上する傾向がある。
[(G)成分]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、分子内に下記式(Y)で表される基及び/又は下記式(Z)で表される基(式(Y)で表される基及び式(Z)で表される基のいずれか一方又は両方)を少なくとも有するイソシアヌレート化合物(「(G)成分」と称する場合がある)を含んでいてもよい。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物が(G)成分を含むことにより、硬化物の硫黄バリア性が著しく向上し、さらに、硬化物の被着体に対する密着性が向上する傾向がある。
式(Y)及び式(Z)中、R6及びR7は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基等が挙げられる。上記アルキル基の中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。式(Y)及び式(Z)におけるR6、R7は、それぞれ水素原子であることが特に好ましい。
(G)成分は、イソシアヌル酸骨格を有し、1個以上の式(Y)で表される基及び/又は1個以上の式(Z)で表される基を分子内に少なくとも有する化合物であればよい。中でも(G)成分としては、下記式(X)で表される化合物が好ましい。
式(X)中、Rx、Ry、及びRzは、同一又は異なって、アルキル基、式(Y)で表される基、又は式(Z)で表される基を示す。但し、Rx、Ry、及びRzのうち少なくとも1つは、式(Y)で表される基及び式(Z)で表される基からなる群より選択される基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜12のアルキル基等が挙げられる。中でも、硬化物の硫黄バリア性向上の観点で、式(X)中のRx、Ry、及びRzは、同一又は異なって、式(Y)で表される基又は式(Z)で表される基であることが好ましい。特に、式(X)におけるRx、Ry、及びRzのうち、いずれか1つ以上(好ましくは1つ又は2つ、より好ましくは1つ)が式(Z)で表される基であることが好ましい。
(G)成分は、他の成分との相溶性を向上させる観点で、下記の(H)成分やその部分縮合物とあらかじめ混合してから他の成分への配合(混合)を行ってもよい。
(G)成分としては、具体的には、例えば、モノアリルジメチルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、1−アリル−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ジアリル−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−グリシジルイソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−メチルプロペニル)イソシアヌレート等が挙げられる。中でも、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートが好ましい。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(G)成分は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(G)成分の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%である。(G)成分の含有量を0.01重量%以上とすることにより、硬化物の硫黄バリア性、被着体に対する密着性がより向上する傾向がある。一方、(G)成分の含有量を10重量%以下とすることにより、均一であって、より優れた硬化性を有する硬化性シリコーン樹脂組成物が得られやすい傾向がある。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(G)成分の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化物の硫黄バリア性向上の観点で、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.01〜1.5重量部が好ましい。
[(H)成分]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、シランカップリング剤(「(H)成分」と称する場合がある)を含んでいてもよい。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物が(H)成分を含むことにより、被着体に対する硬化物の密着性が向上する傾向がある。
(H)成分は、(A)成分、(B)成分、(E)成分、(F)成分、及び(G)成分等との相溶性が良好であるため、例えば、(G)成分のその他成分に対する相溶性を向上させるために、あらかじめ(G)成分と(H)成分の組成物を形成した上で、その他成分と配合すると、均一な硬化性シリコーン樹脂組成物が得られやすい。
(H)成分としては、公知乃至慣用のシランカップリング剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシシラン)、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピレントリメトキシシラン、メルカプトプロピレントリエトキシシラン等が挙げられる。中でも、エポキシ基含有シランカップリング剤(特に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)が好ましい。なお、(H)成分は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(H)成分の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。(H)成分の含有量を0.01重量%以上とすることにより、被着体に対する密着性が向上し、特に、(G)成分を相溶させて使用する際に、硬化がより十分になりやすい。一方、(H)成分の含有量を15重量%以下とすることにより、硬化が不十分となりにくく、硬化物の硫黄バリア性、耐熱衝撃性がより向上しやすい。
[その他のポリオルガノシロキサン]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、上述の(A)成分、(E)成分、及び(F)成分以外にも、分子内にアルケニル基を有するその他のポリオルガノシロキサン(「その他のポリオルガノシロキサン」と称する場合がある)を含んでいてもよい。その他のポリオルガノシロキサンを含むことにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の粘度を調整したり、硬化物の物性(例えば、機械物性)のバランスを調整することができる場合がある。
その他のポリオルガノシロキサンとしては、例えば、分子内に1個以上のアルケニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサン(分子内に1個以上のアルケニル基を有し、主鎖としてシロキサン結合を有し、シルアルキレン結合を有しない直鎖状のポリオルガノシロキサン)等が挙げられる。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において上記直鎖状ポリオルガノシロキサンは、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンが分子内に有するアルケニル基としては、上述の置換又は無置換アルケニル基が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。また、上記直鎖状ポリオルガノシロキサンは、1種のみのアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。上記直鎖状ポリオルガノシロキサンが有するアルケニル基は、特に限定されないが、ケイ素原子に結合したものであることが好ましい。
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンが分子内に有するアルケニル基の数は1個以上であればよく、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性の観点で、2個以上(例えば2〜50個)が好ましい。
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンが有するアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基は、特に限定されないが、例えば、水素原子、有機基等が挙げられる。有機基としては、例えば、上述の有機基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキル−アルキル基、ハロゲン化炭化水素基等の置換又は無置換炭化水素基等)及び上述のアリール基が挙げられる。
また、上記直鎖状ポリオルガノシロキサンは、ケイ素原子に結合した基として、ヒドロキシ基、アルコキシ基を有していてもよい。
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンの性状は、特に限定されず、例えば25℃において、液状であってもよいし、固体状であってもよい。
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンとしては、下記平均単位式:
(R4 2SiO2/2)d1(R4 3SiO1/2)d2(X4O1/2)d3
で表されるポリオルガノシロキサンが挙げられる。上記平均単位式中、R4は、同一又は異なって、一価の置換又は無置換炭化水素基であり、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例(例えば、アルキル基、ハロゲン化炭化水素基等)、上述のアルケニル基、及び上述のアリール基が挙げられる。但し、R4の一部はアルケニル基(特にビニル基)であり、その割合は、分子内に1個以上(好ましくは2個以上)となる範囲に制御される。例えば、R4の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、0.1〜40モル%が好ましい。アルケニル基の割合を上記範囲に制御することにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性がより向上する傾向がある。また、アルケニル基以外のR4としては、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
上記平均単位式中、X4は、上記X1と同様、水素原子又はアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、特にメチル基であることが好ましい。
上記平均単位式中、d1は正数、d2は0又は正数、d3は0又は正数である。
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンの一例としては、例えば、分子内に2個以上のアルケニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。この直鎖状ポリオルガノシロキサンが有するアルケニル基としては、上述のアルケニル基の具体例が挙げられるが、中でもビニル基が好ましい。なお、1種のみのアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。また、上記直鎖状ポリオルガノシロキサンにおけるアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基(アリール基も含まれる)が挙げられるが、中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、特に限定されないが、0.1〜40モル%が好ましい。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、1〜20モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、30〜90モル%が好ましい。特に、上記直鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が40モル%以上(例えば、45〜80モル%)であるものを使用することにより、硬化物の硫黄バリア性がより向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が90モル%以上(例えば、95〜99モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンは、例えば、下記式(IV−1)で表される。
[上記式中、R
51は、同一又は異なって、一価の置換又は無置換炭化水素基である。但し、R
51の少なくとも1個(好ましくは少なくとも2個)はアルケニル基である。m2は、5〜1000の整数である。]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物におけるその他のポリオルガノシロキサンの含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜30重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量%である。その他のポリオルガノシロキサンの含有量を上記範囲に制御することにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の粘度や硬化物の物性のバランスの調整が可能となる場合がある。
[ヒドロシリル化反応抑制剤]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、硬化反応(ヒドロシリル化反応)の速度を調整するために、ヒドロシリル化反応抑制剤を含んでいてもよい。上記ヒドロシリル化反応抑制剤としては、公知乃至慣用のヒドロシリル化反応抑制剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;チアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。上記ヒドロシリル化反応抑制剤は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。上記ヒドロシリル化反応抑制剤の含有量(配合量)は、硬化性シリコーン樹脂組成物の架橋条件等により異なるが、実用上、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対する含有量として、0.00001〜5重量%の範囲内が好ましい。
[環状シロキサン]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、上述のポリオルガノシロキサン((A)成分、(B)成分、(E)成分、(F)成分、その他のポリオルガノシロキサン)以外のシロキサン化合物として、例えば、分子内に2個以上の脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)を有する環状シロキサンを含んでいてもよい。また、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、上記シロキサン化合物として、分子内に2個以上のヒドロシリル基を有する環状シロキサンを含んでいてもよい。上記各環状シロキサンは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における上記環状シロキサンの含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜30重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。
[溶媒]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、公知乃至慣用の有機溶媒や水等が挙げられ、特に限定されないが、例えば、トルエン、ヘキサン、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。なお、溶媒は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、その含有量は特に限定されず、適宜選択できる。
[蛍光体]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は蛍光体を含んでいてもよい。蛍光体としては、公知乃至慣用の蛍光体(例えば、光半導体装置分野で周知の蛍光体等)を使用することができ、特に限定されないが、例えば、青色光の白色光への変換機能を封止材に対して付与したい場合には、一般式A3B5O12:M[式中、Aは、Y、Gd、Tb、La、Lu、Se、及びSmからなる群より選択された1種以上の元素を示し、Bは、Al、Ga、及びInからなる群より選択された1種以上の元素を示し、Mは、Ce、Pr、Eu、Cr、Nd、及びErからなる群より選択された1種以上の元素を示す]で表されるYAG系の蛍光体微粒子(例えば、Y3Al5O12:Ce蛍光体微粒子、(Y,Gd,Tb)3(Al,Ga)5O12:Ce蛍光体微粒子等);シリケート系蛍光体微粒子(例えば、(Sr,Ca,Ba)2SiO4:Eu等)等が挙げられる。なお、蛍光体は、周知慣用の表面処理がされたものであってもよい。また、蛍光体は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における蛍光体の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%である。蛍光体を上記範囲で含有することにより、光半導体装置において封止材による光の波長変換機能を十分に発揮させることができ、なおかつ、硬化性シリコーン樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎず、硬化物作製(特に、封止作業)時の作業性がより向上する傾向がある。
[その他の成分]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、上述の成分以外の成分(「その他の成分」と称する場合がある)を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、シリカフィラー、酸化チタン、アルミナ、ガラス、石英、アルミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機質充填剤、これらの充填剤をオルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により処理した無機質充填剤;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂微粉末;銀、銅等の導電性金属粉末等の充填剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤等)、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤等)、難燃助剤、補強材(他の充填剤等)、核剤、シランカップリング剤以外のカップリング剤、滑剤、ワックス、可塑剤、離型剤、耐衝撃性改良剤、色相改良剤、流動性改良剤、着色剤(染料、顔料等)、表面調整剤(例えば、各種ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の化合物)、分散剤、消泡剤、脱泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、その他の機能性添加剤(例えば、カルボン酸の亜鉛塩等の亜鉛化合物等)等の周知慣用の添加剤等が挙げられる。これらその他の成分は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、その他の成分の含有量(配合量)は、特に限定されず、適宜選択することが可能である。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物中に存在するヒドロシリル基1モルに対して、アルケニル基が0.2〜4モルとなるような組成(配合組成)であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5モル、さらに好ましくは0.8〜1.2モルである。ヒドロシリル基とアルケニル基との割合を上記範囲に制御することにより、硬化物の耐熱衝撃性、硫黄バリア性がいっそう向上する傾向がある。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれる(A)成分、(B)成分、(E)成分、(F)成分、及びその他のポリオルガノシロキサンの総量(総含有量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、70重量%以上(例えば、70重量%以上100重量%未満)が好ましく、より好ましくは80重量%以上(例えば、80〜99重量%)、さらに好ましくは90重量%以上(例えば、90〜99重量%)である。上記総量を70重量%以上とすることにより、硬化物の耐熱性、透明性がより向上する傾向がある。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれる(A)成分、(E)成分、(F)成分、及びその他のポリオルガノシロキサンの総量(総含有量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、40〜90重量%が好ましく、より好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは60〜80重量%である。上記総量を40重量%以上とすることにより、硬化物の耐久性、透明性がより向上する傾向がある。一方、上記総量を90重量%以下とすることにより、硬化性がより向上する傾向がある。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(B)成分の含有量(配合量)は、特に限定されないが、(A)成分、(E)成分、(F)成分、及びその他のポリオルガノシロキサンの総量(総含有量)100重量部に対して、1〜200重量部が好ましい。(B)成分の含有量を上記範囲に制御することにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性がより向上し、効率的に硬化物を形成することができる傾向がある。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれる(A)成分、(E)成分、(F)成分、及びその他のポリオルガノシロキサンの総量(総含有量;100重量%)に対する(A)成分の割合は、特に限定されないが、10重量%以上(例えば、10〜100重量%)が好ましく、より好ましくは15重量%以上(例えば、15〜90重量%)、さらに好ましくは20重量%以上(例えば、20〜80重量%)である。上記割合を10重量%以上とすることにより、硬化物の硫黄化合物(特にSOX)に対するバリア性がより向上し、また、タックが低減し、黄変が抑制される傾向がある。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれる(A)成分、(E)成分、(F)成分、及びその他のポリオルガノシロキサンの総量(総含有量;100重量%)に対する、(E)成分と(F)成分の割合(合計割合)は、特に限定されないが、0重量%を超えて90重量%が好ましく、より好ましくは5〜85重量%、さらに好ましくは10〜80重量%である。上記割合を90重量%以下とすることにより、相対的に(A)成分を増量できるため、硬化物の硫黄化合物(特にSOX)に対するバリア性がより向上し、また、タックが低減し、黄変が抑制される場合がある。一方、例えば、上記割合を10重量%以上とすることにより、硬化物の機械特性や光学特性等のバランスがより良好となる場合がある。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれる(A)成分、(B)成分、(E)成分、(F)成分、及びその他のポリオルガノシロキサンの総量(総含有量;100重量%)に対する、(A)成分の割合は、特に限定されないが、5重量%以上(例えば、5〜100重量%)が好ましく、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15〜50重量%である。上記割合を5重量%以上とすることにより、硬化物のタックがより低減し、硫黄バリア性、耐熱衝撃性が良好となる傾向がある。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、特に限定されないが、例えば、上記の各成分を室温で(又は必要に応じて加熱しながら)撹拌・混合することにより調製することができる。なお、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、各成分が全てあらかじめ混合されたものをそのまま使用する1液系の組成物として使用することもできるし、例えば、別々に調製しておいた2以上の成分を使用前に所定の割合で混合して使用する多液系(例えば、2液系)の組成物として使用することもできる。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、特に限定されないが、常温(約25℃)で液体であることが好ましい。より具体的には、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、25℃における粘度として、300〜2万mPa・sが好ましく、より好ましくは500〜1万mPa・s、さらに好ましくは1000〜8000mPa・sである。上記粘度が300mPa・s以上であることにより、硬化物の耐熱性がより向上する傾向がある。一方、上記粘度が2万mPa・s以下であることにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の調製がしやすく、その生産性や取り扱い性がより向上し、また、硬化物に気泡が残存しにくくなるため、硬化物(特に、封止材)の生産性や品質がより向上する傾向がある。なお、硬化性シリコーン樹脂組成物の粘度は、上述のラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の粘度と同様の方法で測定される。
<硬化物>
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化(特に、ヒドロシリル化反応により硬化)させることによって、硬化物(「本発明の硬化物」と称する場合がある)が得られる。硬化の際の条件は、特に限定されず、従来公知の条件より適宜選択することができるが、例えば、反応速度の点から、温度(硬化温度)は25〜180℃(より好ましくは60〜150℃)が好ましく、時間(硬化時間)は5〜720分が好ましい。本発明の硬化物は、ポリシロキサン系材料特有の高い耐熱性及び透明性を有することに加え、耐熱衝撃性、被着体に対する密着性、及び硫黄バリア性に優れ、さらに、(G)成分を含む場合には、特に優れた耐熱衝撃性を有する硬化物が得られる。
<封止剤、光半導体装置>
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、特に、光半導体装置における光半導体素子(LED素子)の封止用樹脂組成物(光半導体封止用樹脂組成物)(「本発明の封止剤」と称する場合がある)として好ましく使用できる。本発明の封止剤を硬化させることにより得られる封止材(硬化物)は、ポリシロキサン系材料特有の高い耐熱性及び透明性を有することに加え、耐熱衝撃性、被着体に対する密着性、及び硫黄バリア性にも優れる。このため、本発明の封止剤は、特に、高輝度、短波長の光半導体素子の封止剤等として好ましく使用できる。本発明の封止剤を使用して光半導体素子を封止することにより、光半導体装置(「本発明の光半導体装置」と称する場合がある)を得ることができる。即ち、本発明の光半導体装置は、光半導体素子と、該光半導体素子を封止する封止材とを少なくとも含み、上記封止材が本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物(本発明の封止剤)の硬化物(本発明の硬化物)である光半導体装置である。なお、光半導体素子の封止は、公知乃至慣用の方法により実施でき、特に限定されないが、例えば、本発明の封止剤を所定の成形型内に注入し、所定の条件で加熱硬化することで実施できる。硬化温度と硬化時間は、特に限定されず、硬化物の調製時と同様の範囲で適宜設定することができる。本発明の光半導体装置の一例を図1に示す。図1において、100はリフレクター(光反射用樹脂組成物)、101は金属配線(電極)、102は光半導体素子、103はボンディングワイヤ、104は硬化物(封止材)を示す。
<光半導体用レンズの形成用組成物、光半導体装置>
また、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、光半導体装置に備えられるレンズ(光半導体用レンズ)を形成するための組成物(光半導体用レンズの形成用組成物)(「本発明のレンズ形成用組成物」と称する場合がある)としても好ましく使用できる。本発明のレンズ形成用組成物を硬化させることにより得られるレンズは、高い耐熱性及び透明性を有することに加えて、被着体に対する密着性及び硫黄バリア性にも優れる。本発明のレンズ形成用組成物を使用することにより、光半導体装置(これも「本発明の光半導体装置」と称する場合がある)を得ることができる。即ち、本発明の光半導体装置は、光半導体素子とレンズとを少なくとも含み、上記レンズが本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物(本発明のレンズ形成用組成物)の硬化物(本発明の硬化物)である光半導体装置である。なお、本発明のレンズ形成用組成物を用いた光半導体用レンズの製造は、公知乃至慣用の方法により実施でき、特に限定されないが、例えば、本発明のレンズ形成用組成物を所定の成形型内に注入して所定の条件で加熱硬化する方法や、ディスペンサー等によって塗布して所定の条件で加熱硬化する方法等によって実施できる。硬化温度と硬化時間は、特に限定されず、硬化物の調製時と同様の範囲で適宜設定することができる。本発明の光半導体装置が上記レンズを備える態様は特に限定されず、例えば、本発明の光半導体装置が封止材を有する場合には、該封止材の表面上の一部又は全部に配置された態様、上記光半導体装置の光半導体素子を封止する態様(即ち、本発明の硬化物が封止材とレンズとを兼ねる態様)等であってもよい。より具体的には、例えば、国際公開第2012/147342号、特開2012−188627号公報、特開2011−233605号公報等に開示された態様等が挙げられる。
本発明の光半導体装置は、光半導体素子と、該光半導体素子を封止する封止材と、レンズとを含み、上記封止材が本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物(本発明の封止剤)の硬化物(本発明の硬化物)であり、なおかつ、上記レンズが本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物(本発明のレンズ形成用組成物)の硬化物(本発明の硬化物)である光半導体装置であってもよい。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、上述の封止剤用途(光半導体素子の封止剤用途)及びレンズ形成用途(光半導体装置におけるレンズ形成用途)に限定されず、例えば、光半導体装置以外の半導体装置における半導体素子の封止剤、機能性コーティング剤、耐熱プラスチックレンズ、透明機器、接着剤(耐熱透明接着剤等)、電気絶縁材(絶縁膜等)、積層板、コーティング、インク、塗料、シーラント、レジスト、複合材料、透明基材、透明シート、透明フィルム、光学素子、光学レンズ、光学部材、光造形、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリ等の光学関連や半導体関連の用途に好ましく使用できる。
特に、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、従来の樹脂材料では対応することが困難であった、高輝度・短波長の光半導体装置において光半導体素子を被覆する封止材、高耐熱・高耐電圧の半導体装置(パワー半導体等)において半導体素子を被覆する封止材等の用途に好ましく使用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、表1に示す各成分の配合割合の単位は重量部である。
合成例で製造した生成物及び製品の1H−NMR分析は、JEOL ECA500(500MHz)により行った。また、上記生成物並びに製品の数平均分子量及び重量平均分子量の測定は、Alliance HPLCシステム 2695(Waters製)、Refractive Index Detector 2414(Waters製)、カラム:Tskgel GMHHR−M×2(東ソー(株)製)、ガードカラム:Tskgel guard column HHRL(東ソー(株)製)、カラムオーブン:COLUMN HEATER U−620(Sugai製)、溶媒:THF、測定条件:40℃、により行った。
合成例1
[ビニル基を有するポリオルガノシルセスキオキサンの製造]
温度計、撹拌装置、還流冷却器、及び窒素導入管を取り付けた100mlのフラスコ(反応容器)に、窒素気流下でビニルトリメトキシシラン65ミリモル(9.64g)、フェニルトリメトキシシラン195ミリモル(38.67g)、及びメチルイソブチルケトン(MIBK)8.31gを仕込み、この混合物を10℃以下に冷却した。上記混合物に、水360ミリモル(6.48g)及び5Nの塩酸0.24g(塩化水素として1.2ミリモル)を滴下した。その後、MIBKを40g添加して、反応溶液を希釈した。
次に、反応容器の温度を70℃まで昇温した。ここに水520ミリモル(9.36g)を添加し、窒素気流下で重縮合反応を行った。続いて、重縮合反応後の反応溶液にヘキサメチルジシロキサン130ミリモル(21.11g)を添加し、70℃で撹拌してシリル化反応を行った。その後、冷却し、下層液が中性になるまで水洗を行い、上層液を分取した後、1mmHg、40℃の条件で上層液から溶媒を留去し、無色透明の液状の生成物(38.6g;ビニル基を有するポリオルガノシルセスキオキサン)を得た。
上記生成物(シリル化反応後の生成物)の数平均分子量は1280であり、分子量分散度は1.13であった。また、図2には、上記生成物の1H−NMRスペクトルのチャート(溶媒:重クロロホルム)を示す。さらに、上記生成物のFT−IRスペクトルを上述の条件で測定したところ、1000〜1200cm-1に2本の吸収ピークを有することが確認された。図3には、上記生成物のFT−IRスペクトルのチャートを示す。
上記生成物(シリル化反応後の生成物)は、上述の(F)成分(詳しくは、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a))に該当する。
表1に記載の各成分の説明を以下に示す。
(A剤)
ETERLED GS5145A:商品名「ETERLED GS5145A」[(A)成分を含むシリコーン樹脂]、長興材料工業製、アリール基(フェニル基)の割合約24モル%、ヒドロシリル化触媒[(C)成分]を含む。
MA−DGIC:商品名「MA−DGIC」[モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、(G)成分]、四国化成工業(株)製
OE−6630A:商品名「OE−6630A」[(A)成分を含まないシリコーン樹脂]、東レ・ダウコーニング(株)製、ヒドロシリル化触媒[(C)成分]を含む。
OFS−6040:商品名「XIAMETER OFS−6040」[3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(H)成分]、ダウコーニング社製
(B剤)
ETERLED GS5145B:商品名「ETERLED GS5145B」[シリコーン樹脂、(B)成分及び(E)成分を含む]、長興材料工業製
OE−6630B:商品名「OE−6630B」[シリコーン樹脂]、東レ・ダウコーニング(株)製
実施例1
[硬化性シリコーン樹脂組成物の製造]
まず、表1に示すように、商品名「ETERLED GS5145A」20重量部及びトリブチルボレート1重量部を混合し、40℃で2時間撹拌して、A剤を調製した。
次に、上記で得たA剤21重量部に対して、B剤として商品名「ETERLED GS5145B」80重量部を混合し、自公転式撹拌装置(商品名「あわとり練太郎」、(株)シンキー製、型番:ARE−310)を用いて撹拌5分、脱泡2分で混練し、硬化性シリコーン樹脂組成物を製造した。
[光半導体装置の製造]
図1に示す態様のLEDパッケージ(InGaN素子、3.5mm×2.8mm)に、上記で得られた硬化性シリコーン樹脂組成物を注入し、60℃で1時間、続いて80℃で1時間、さらに150℃で4時間加熱することで、上記硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置を製造した。
実施例2〜13、比較例1〜4
硬化性シリコーン樹脂組成物の組成を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性シリコーン樹脂組成物及び光半導体装置を製造した。
(評価)
上記で得られた硬化性シリコーン樹脂組成物及び光半導体装置について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
[硫黄腐食性試験]
上記で製造した光半導体装置を試料として用いた。
まず、上記試料について、全光束測定機(オプトロニックラボラトリーズ社製、マルチ分光放射測定システム「OL771」)を用いて、20mAの電流を流した際の全光束(単位:lm)を測定し、これを「腐食性試験前の全光束」とした。
次に、上記試料と硫黄粉末(キシダ化学(株)製)0.3gとを450mlのガラス瓶に入れ、さらに上記ガラス瓶をアルミ製の箱の中に入れた。続いて、上記アルミ製の箱を80℃のオーブン(ヤマト科学(株)製、型番:DN−64)に入れ、24時間後に取り出した。加熱後の試料について上記と同様に全光束を測定し、これを「腐食性試験後の全光束」とした。そして、腐食性試験前後における全光束の維持率(%)[=100×(腐食性試験後の全光束(lm))/(腐食性試験前の全光束(lm))]を算出した。
光度維持率が高いほど、硬化物(封止材)が腐食性ガスに対するバリア性に優れることを示す。なお、硬化性シリコーン樹脂組成物ごとに(各実施例・比較例ごとに)10個の光半導体装置について光度維持率を測定・算出し、表1にはこれらの光度維持率の平均値(N=10)を示した。
[熱衝撃性試験]
上記で製造した光半導体装置を試料として用いた。試料は、硬化性シリコーン樹脂組成物ごとに10個ずつ用いた。なお、試料は、試験前に20mAの電流を通電した時に点灯するものであることを確認した上で用いた。
上記試料について、熱衝撃試験機(エスペック(株)製、型番:TSB−21)を用いて、温度−40℃で5分間、続いて温度100℃で5分間曝露することを1サイクルとした熱衝撃付与を、1000サイクル実施した。その後、1000サイクルの熱衝撃を付与した後の試料について、20mAの電流を通電し、点灯しなかった試料の数を計測した。そして、点灯しなかった試料の数が0個である場合を○(耐熱衝撃性が良好である)、点灯しなかった試料の数が1個以上である場合を×(耐熱衝撃性が不良である)と評価した。結果を表1に示す。
[吸湿リフロー試験]
上記で製造した光半導体装置を試料として用いた。試料は、硬化性シリコーン樹脂組成物ごとに10個ずつ用いた。なお、試料は、試験前に20mAの電流を通電した時に点灯するものであることを確認した上で用いた。
上記試料を30℃、60%RHに調整した恒温恒湿槽(エスペック(株)製、型番「SH−641」)に入れ、192時間後に取り出した。続いて、上記各試料について、リフロー炉(ANTOM(株)製、型番「UNI−5016F」)を用いて、260℃で10秒間の加熱処理を2回施した。その後、リフロー炉による2回の加熱処理を施した後の試料について、20mAの電流を通電し、点灯しなかった試料の数を計測した。そして、点灯しなかった試料の数が0個である場合を○(吸湿リフロー性が良好である)、点灯しなかった試料の数が1個以上である場合を×(吸湿リフロー性が不良である)と評価した。結果を表1に示す。
[密着強度試験]
所定の基材上に、実施例及び比較例で得られた各硬化性シリコーン樹脂組成物を、60℃で1時間、続いて80℃で1時間、さらに150℃で4時間加熱し硬化させて、硬化物を得た。得られた硬化物のそれぞれについて、以下の評価を行った。なお、上記所定の基材として、PA−9T((株)クラレ製、ポリアミド系樹脂)、及び、銀メッキした銅基板の2種類を用いた。
評価:上記所定の基材上の硬化物について、ダイシェアテスター((株)アークテック製、型番:SERIES4000)を用いて、測定速度300μmの条件で、上記所定の基材に対する密着強度をそれぞれ測定した。結果を、表1に示す。
[総合判定]
実施例及び比較例で得られた硬化性シリコーン樹脂組成物について、硫黄腐食性試験、熱衝撃性試験、吸湿リフロー試験、及び密着強度試験の4項目の評価結果に基づき、以下の基準で総合判定を行った。
○(良好である):硫黄腐食性試験の評価結果が80%以上であり、熱衝撃性試験の評価結果が○であり、吸湿リフロー試験の評価結果が○であり、PA−9T、及び、銀メッキした銅基板への密着強度試験の評価結果がともに30N以上である。
×(不良である):硫黄腐食性試験の評価結果が80%以上であること、熱衝撃性試験の評価結果が○であること、及び吸湿リフロー試験の評価結果が○であること、PA−9T、及び、銀メッキした銅基板への密着強度試験の評価結果がともに30N以上であることのうちの1つでも満たさないもの