以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
図1は、本実施形態に係るベルト式無段変速機を備えた車両の動力伝達部分における全体の構成を示す概念図である。図1に示すように、車両100の動力伝達機構は、ベルト式無段変速機110と、動力発生手段としての内燃機関120と、トルクコンバータ130と、前後進切換機構140と、減速装置150と、差動装置160と、を備える。
内燃機関120は、円筒形状に形成されるシリンダの中心軸方向にピストンが往復運動し、前記ピストンの往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト121から回転を出力する。
トルクコンバータ130は、流体クラッチの一種であり、内燃機関120から取り出された回転を作動油を介して前後進切換機構140に伝える。また、トルクコンバータ130は内燃機関120から取り出されたトルクを増幅する。
前後進切換機構140は、トルクコンバータ130からの回転の回転方向を切り替えてベルト式無段変速機110へ前記回転を伝える。
ベルト式無段変速機110は、前後進切換機構140から入力される回転の回転速度を所望の回転速度に変更して出力する。なお、ベルト式無段変速機110の詳細な説明は後述する。
減速装置150は、ベルト式無段変速機110からの回転の回転速度を減速して差動装置160に前記回転を伝える。
差動装置160は、車両100が旋回する際に生じる旋回の中心側、つまり内側の車輪180と、外側の車輪180との速度差を吸収する。
上記構成要素によって車両100の動力伝達機構は形成される。内燃機関120から取り出された回転は、クランクシャフト121を介してトルクコンバータ130に伝えられる。トルクコンバータ130によってトルクが増幅された回転は、ベルト式無段変速機110の入力軸としてのインプットシャフト131を介して前後進切換機構140に伝えられる。
前後進切換機構140によって回転方向が切り替えられた回転は、プライマリシャフト51を介してベルト式無段変速機110に伝えられる。ベルト式無段変速機110によって、回転速度を変更された回転は、ベルト式無段変速機110の出力軸としてのセカンダリシャフト61を介して減速装置150に伝えられる。減速装置150によって減速された回転は、減速装置150のファイナルドライブピニオン151と、ファイナルドライブピニオン151と噛み合う差動装置160のリングギア161とを介して差動装置160に伝えられる。
差動装置160に伝達された回転は、ドライブシャフト170に伝達される。差動装置160側とは反対側のドライブシャフト170には、車輪180が取り付けられる。ドライブシャフト170に伝達された回転は車輪180に伝達される。これにより、車輪180は回転し、車輪180が路面に前記回転を伝達することにより車両100は走行する。
なお、本実施形態では内燃機関120をピストンとシリンダとを備えるいわゆるレシプロ式の内燃機関として説明したが、本実施形態はこれに限定されない。動力発生手段から回転力を得られれば良く、例えば、動力発生手段はロータリー式の内燃機関でもよいし、モータでもよい。
図2は、本実施形態に係るベルト式無段変速機のプライマリプーリ側の構成を示す断面図である。以下、ベルト式無段変速機110の概略構成について図1及び図2を用いて説明する。なお、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ60とはほぼ同様の構成であるため、プライマリプーリ50側を詳細に説明する。
ベルト式無段変速機110は、図1に示すように、プライマリプーリ50と、プライマリシャフト51と、セカンダリプーリ60と、セカンダリシャフト61と、を備える。
プライマリシャフト51は、軸受81、軸受82によってインプットシャフト131の回転軸と同軸上に回転可能に支持される。セカンダリシャフト61は、軸受83、軸受84によってプライマリシャフト51に対して平行に回転可能に支持される。
プライマリシャフト51には、プライマリプーリ50が設けられる。プライマリプーリ50は、プライマリ固定シーブ52と、プライマリ可動シーブ53と、図2に示すスプライン54とを備える。プライマリ固定シーブ52は、プライマリシャフト51の外周にプライマリシャフト51と一体に、もしくはプライマリシャフト51に固定して設けられる。
プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51上のプライマリ固定シーブ52と対向する位置にスプライン54を介して設けられる。スプライン54は、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上をプライマリシャフト51の軸線に沿って摺動できるようにプライマリ可動シーブ53を支持する。加えて、スプライン54は、前記軸線を回転軸とする回転をプライマリシャフト51からプライマリ可動シーブ53へ伝える。よって、プライマリ可動シーブ53は、スプライン54により、プライマリシャフト51上をスライドして移動できると共に、プライマリシャフト51と一体に回転する。
上記構成により、プライマリ固定シーブ52及びプライマリ可動シーブ53の対向面間には、V字形状のプライマリ溝80aが形成される。また、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上を摺動することにより、プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との距離が変化する。
さらに、プライマリプーリ50は、プライマリ可動シーブ摺動機構55を備える。プライマリ可動シーブ摺動機構55は、プライマリシャフト51に設けられる。プライマリ可動シーブ摺動機構55は、プライマリ可動シーブ53にプライマリシャフト51の軸線方向の力を与える。これにより、プライマリ可動シーブ摺動機構55は、プライマリ可動シーブ53を前記軸線方向に摺動させ、プライマリ固定シーブ52に接近またはプライマリ固定シーブ52から離隔させる。
プライマリ可動シーブ摺動機構55は、例えば、図2に示すように、油圧モータ550と、運動方向変換機構551とを備える。油圧モータ550は、プライマリ可動シーブ53をプライマリシャフト51の軸線方向に摺動させるための駆動力を発生させる。油圧モータ550は、例えば、羽根式油圧モータである。なお、プライマリ可動シーブ摺動機構55は、油圧モータ550に代えて電動モータを備えてもよい。
運動方向変換機構551は、油圧モータ550の回転方向の力をプライマリシャフト51の軸線方向の力に変換する。運動方向変換機構551は、例えば、回転力をその軸線方向の力に変換する多条ネジや滑りネジなどの運動ネジである。
油圧モータ550の回転力は、運動方向変換機構551に入力される。運動方向変換機構551に入力された回転力は、前記軸線方向の力に変換される。そして、前記軸線方向の力は、運動方向変換機構551からプライマリ可動シーブ53へ伝えられる。上記構成により、プライマリ可動シーブ53はプライマリ固定シーブ52に対して相対的に移動する。
図3は、本実施形態に係る油圧モータを図2に示すX−X線から見た断面図である。図3に示すように、プライマリシャフト51には、油路51bと、油路51cとが形成される。油路51bは、各第1油室550dに開口し、第1油室550dに作動油を供給する、または各第1油室550dから作動油を排出する通路である。油路51cは、各第2油室550eに開口し、各第2油室550eに作動油を供給する、または各第2油室550eから作動油を排出する通路である。
図4は、本実施形態に係るベルト式無段変速機における油圧回路構成を説明する模式図である。図5−1は、本実施形態に係る変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって、第1油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図である。図5−2は、本実施形態に係る変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって、第1及び第2の油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図である。図5−3は、本実施形態に係る変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって、第2油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図である。
図4に示すように、油路51b及び油路51cは、変速比制御用切替バルブ56に接続される。また、変速比制御用切替バルブ56には、オイルタンクOTから順に、オイルポンプOP、レギュレータバルブ59、挟圧力調整バルブ58を介して作動油が供給される。
オイルポンプOPとレギュレータバルブ59とは油路59aによって接続される。レギュレータバルブ59と挟圧力調整バルブ58とは油路58aによって接続される。挟圧力調整バルブ58と変速比制御用切替バルブ56とは油路56aによって接続される。
オイルポンプOPは、オイルタンクOTから作動油を吸引し、油路59aを介してレギュレータバルブ59へ作動油を送る。レギュレータバルブ59は、油圧調整手段として機能し、油路58aに送り出す油圧を適正な範囲に調整する。ここで、前記適正な範囲とは、ベルト式無段変速機110のプライマリ可動シーブ53を摺動させるのに必要な油圧の範囲である。
レギュレータバルブ59から送り出された作動油は、油路58aを介して挟圧力調整バルブ58へ導入される。挟圧力調整バルブ58は、油圧調整手段として機能し、油路56aに送り出す油圧を、後述するECU10が要求した圧力に調整する。
挟圧力調整バルブ58から送り出された作動油は、油路56aを介して変速比制御用切替バルブ56へ導入される。変速比制御用切替バルブ56は、複数の油路が形成され、バルブの位置を切り替えることにより、作動油の供給対象である第1油室550d、または第2油室550eの切り替えを行う。この切り替えは、シリンダの内部に配置された図5−1から図5−3に示すバネ56bの反発力とその内部に供給する空気や作動油等の流体の圧力との差分を調節することで行われる。前記流体の圧力の制御は、ECU10によって行われる。
変速比制御用切替バルブ56は、例えば、バルブの位置を制御する圧力であるバルブ位置制御圧がバネ56bの反発力よりも小さく設定されると、図5−1に示すように、第1油室550dに作動油を供給する。これにより、油圧モータ550は正回転する。また、変速比制御用切替バルブ56は、例えば、バルブ位置制御圧がバネ56bの反発力よりも大きく設定されると、図5−3に示すように、第2油室550eに作動油が供給される。これにより、油圧モータ550は逆回転する。
上記構成により、油圧モータ550は、プライマリ可動シーブ53をプライマリシャフト51の軸線方向に摺動させる。つまり、プライマリ可動シーブ53を、プライマリ固定シーブ52に対して接近、または遠離させる。これにより、図1に示すプライマリ溝80aとベルト80との接触半径と、セカンダリ溝80bとベルト80との接触半径とが変化する。これにともなって変速比も変化する。
具体的には、プライマリ可動シーブ53がプライマリ固定シーブ52に対して接近すると、変速比は小さくなる。つまり、ベルト式無段変速機110から取り出される回転数は上昇し、ベルト式無段変速機110から取り出されるトルクは減少する。一方、プライマリ可動シーブ53がプライマリ固定シーブ52に対して遠離すると、変速比は大きくなる。つまり、ベルト式無段変速機110から取り出される回転数は減少し、ベルト式無段変速機110から取り出されるトルクは上昇する。
また、変速比制御用切替バルブ56は、例えば、バルブ位置制御圧をバネ56bの反発力とつり合うように設定し、切替弁を所定の位置に留めておくことにより、図5−3に示すように、第1油室550d及び第2油室550eに同圧の作動油を供給する。これにより油圧モータ550の回転が停止する。油圧モータ550の回転を停止させることにより、ベルト式無段変速機110の変速比を固定できる。
なお、図1に示すように、セカンダリプーリ60は、セカンダリ固定シーブ62と、セカンダリ可動シーブ63と、セカンダリ可動シーブ摺動機構65と、セカンダリ溝80bとを備える。上述したように、セカンダリプーリ60はプライマリプーリ50とほぼ同様の構成であり、セカンダリ固定シーブ62はプライマリ固定シーブ52と、セカンダリ可動シーブ63はプライマリ可動シーブ53と、セカンダリ可動シーブ摺動機構65はプライマリ可動シーブ摺動機構55と、セカンダリ溝80bはプライマリ溝80aとそれぞれ対応する。次に、変速比制御装置11について説明する。
図6は、本実施形態に係る無段変速機制御装置の構成を示す概念図である。ECU10は、図1に示す内燃機関120、図4に示す変速比制御用切替バルブ56、挟圧力調整バルブ58、レギュレータバルブ59などに電気的に接続され、これら内燃機関120、変速比制御用切替バルブ56、挟圧力調整バルブ58、レギュレータバルブ59などの制御対象の動作を制御する。
また、ECU10は、図1に示すプライマリシャフト回転数センサD01、セカンダリシャフト回転数センサD02、車速センサD03、図4に示すアクセル開度センサD04、その他にも内燃機関120の各検出手段類に電気的に接続され、これらの検出手段から各種の情報を取得する。なお、アクセル開度センサD04は、運転者の車両に対する加速の要求の有無及び運転者の車両に対する加速の要求量を判定する手段である。ここで、運転者の車両に対する加速の要求量とは、アクセル開度の大きさ及びアクセル開度の変化の速さに比例する。つまり、アクセル開度が大きいほど運転者の車両に対する加速の要求量は大きい。また、アクセル開度の変化の早さ、いわゆるアクセル開速度が大きいほど運転者の車両に対する加速の要求量は大きい。
ECU10は、例えば、内燃機関120のインジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁などにも電気的に接続される。これにより、ECU10は、インジェクタの燃料噴射量及び燃料噴射時期、点火プラグの点火時期、電子スロットル弁の開度などを制御する。つまり、ECU10は、インジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁などを制御することにより、内燃機関120から取り出せるトルクを制御する。また、ECU10は、その他にも内燃機関120の各制御対象に電気的に接続され、前記各制御対象を制御する。
図6に示すように、変速比制御装置11は、ECU10の中央演算部(Central Processing Unit)Epに組み込まれて構成されている。ECU10は、中央演算部Epと、記憶部Emと、入力ポートINp及び出力ポートOUTpと、入力インターフェースIFin及び出力インターフェースIFoutとから構成される。なお、ECU10とは別個に、変速比制御装置11を用意し、これをECU10に接続してもよい。
変速比制御装置11は、第1目標回転速度機関トルク演算手段としての通常目標回転数機関トルク演算部12と、第2目標回転速度機関トルク演算手段としての高加速用目標回転数機関トルク演算部13と、第3目標機関トルク演算手段としての低加速用目標機関トルク演算部14と、最終目標回転数機関トルク演算部15と、変速比制御手段としての変速比制御部16と、情報取得部17と、比較判定部18と、機関制御手段としての機関制御部19とを含んで構成される。
通常目標回転数機関トルク演算部12は、プライマリシャフト51の回転数の候補である第1目標回転速度としての通常目標回転数NINnと、内燃機関120の機関トルクの候補である第1目標機関トルクとしての通常目標機関トルクTEnとを求める。高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、車両の加速が要求された場合に、プライマリシャフト51の回転数の候補である第2目標回転速度としての加速用目標回転数NINaと、内燃機関120の機関トルクの候補である第2目標機関トルクとしての高加速用目標機関トルクTEaとを通常目標回転数機関トルク演算部12とは異なる演算方法で求める。
低加速用目標機関トルク演算部14は、車両の加速が要求された場合であって、前記加速の要求量が比較的小さい場合に第3目標機関トルクとしての低加速用目標機関トルクTEalを燃費最適線に基づいて求める。最終目標回転数機関トルク演算部15は、最終的にプライマリシャフト51が目標とする最終目標回転速度としての最終目標回転数NINLINEと、最終的に内燃機関120が目標とする最終目標機関トルクとしての最終目標機関トルクTEとを求める。
なお、通常目標回転数機関トルク演算部12は、車両100に対する運転者の加速の要求の有無に関わらず通常目標回転数NINnと通常目標機関トルクTEnとを求める。つまり、通常目標回転数機関トルク演算部12は、車両100に対する運転者の加速の要求がない場合、及び車両100に対する運転者の加速の要求がある場合のいずれであっても、通常目標回転数NINnと通常目標機関トルクTEnとを求める。一方、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、車両の加速が要求された場合に、加速用目標回転数NINaと高加速用目標機関トルクTEaとを求める。
変速比制御部16は、プライマリシャフト51の回転数が、最終目標回転数NINLINEとなるようにベルト式無段変速機110の変速比を制御する。情報取得部17は、図1に示すプライマリシャフト回転数センサD01、セカンダリシャフト回転数センサD02、アクセル開度センサD04、車速センサD03などの検出手段が検出した結果、後述する記憶部Emに格納された情報、機関制御部19が有する情報、などを取得する。比較判定部18は、各検出手段から得た数値や記憶部Emに格納された数値を比較する。機関制御部19は、内燃機関120の運転制御を行う。
中央演算部Epと記憶部Emとは、バスBcとにより接続される。中央演算部Epと入力ポートINpとは、バスBaとにより接続される。中央演算部Epと出力ポートOUTpとは、バスBbとにより接続される。
変速比制御装置11の情報取得部17は、機関制御部19が有する内燃機関120の運転制御データを取得し、これを利用する。また、変速比制御装置11は、この本実施形態に係るベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を、機関制御部19があらかじめ備えている内燃機関120の運転制御ルーチンに割り込ませてもよい。
入力ポートINpには、入力インターフェースIFinが接続されている。入力インターフェースIFinには、図1に示すプライマリシャフト回転数センサD01、セカンダリシャフト回転数センサD02、車速センサD03、図4に示すアクセル開度センサD04、その他各種検出手段が接続されている。これらの各種検出手段から出力される信号は、入力インターフェースIFin内のアナログ/デジタルコンバータADCやディジタル入力バッファDIBにより、中央演算部Epが利用できる信号に変換されて入力ポートINpへ送られる。これにより、中央演算部Epは、ベルト式無段変速機110の変速比の制御や、内燃機関120の制御に必要な情報を取得できる。
出力ポートOUTpには、出力インターフェースIFoutが接続されている。出力インターフェースIFoutには、プライマリ可動シーブ摺動機構55、セカンダリ可動シーブ摺動機構65、インジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁、その他内燃機関120における制御対象が接続されている。出力インターフェースIFoutは、制御回路IFouta、制御回路IFoutbなどを備えており、中央演算部Epで演算された制御信号に基づき、前記制御対象を動作させる。このような構成により、前記検出手段からの出力信号に基づき、ECU10の中央演算部Epは、プライマリ可動シーブ摺動機構55、セカンダリ可動シーブ摺動機構65、インジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁を制御する、つまり、ベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の出力を制御する。換言すると、ECU10は、プライマリシャフト51へ入力する回転数と、セカンダリシャフト61から出力される回転数と、内燃機関120が出力するトルクとを制御する。
記憶部Emには、ベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を含むコンピュータプログラムや制御データマップが格納されている。記憶部Emは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。
上記コンピュータプログラムは、中央演算部Epへ既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、ベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を実現できるものであってもよい。また、この変速比制御装置11は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、同等の機能を実現するものであってもよい。
図7は、本実施形態に係るベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を示すフローチャートである。ステップST101で、情報取得部17は、車速センサD03から車速SPDを取得し、アクセル開度センサD04からアクセル開度PAPを取得する。なお、情報取得部17は、先に車速SPDを取得し、次にアクセル開度PAPを取得してもよいし、先にアクセル開度PAPを取得し、次に車速SPDを取得してもよい。
次にステップST102で、通常目標回転数機関トルク演算部12は、アクセル開度PAPと車速SPDとに基づいて通常目標駆動力FORCEnを求める。以下に通常目標駆動力FORCEnの算出方法を説明する。
図8は、本実施形態に係る通常目標駆動力を求めるためのマップである。図8に示すマップm01において、縦軸は通常目標駆動力FORCEn、横軸は車速SPDを示す。マップm01は、各アクセル開度PAPにおける車速SPDと通常目標駆動力FORCEnとの関係を記述したものである。なお、マップm01は、記憶部Emに格納されている。
情報取得部17は、ECU10の記憶部Emからマップm01を取得する。次に、通常目標回転数機関トルク演算部12は、情報取得部17が取得したマップm01に基づいて通常目標駆動力FORCEnを求める。なお、本実施形態では、通常目標回転数機関トルク演算部12はマップm01を用いて通常目標駆動力FORCEnを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。通常目標回転数機関トルク演算部12は、例えば、マップm01に相当する数式に基づいて通常目標駆動力FORCEnを求めてもよい。
次に、図7に示すステップST103で、通常目標回転数機関トルク演算部12は、通常目標出力POWERnを求める。通常目標回転数機関トルク演算部12は、ステップST103で求めた通常目標駆動力FORCEnとステップST102で情報取得部17が取得した車速SPDとに基づいて通常目標出力POWERnを求める。具体的には、通常目標回転数機関トルク演算部12は、通常目標駆動力FORCEnと車速SPDと1000/3600とを乗算して通常目標出力POWERnを求める。
次に、ステップST104で、通常目標回転数機関トルク演算部12は、通常目標回転数NINnを求める。以下に通常目標回転数NINnの算出方法を説明する。
図9は、本実施形態に係る通常目標回転数を求めるためのマップである。図9に示すマップm02において縦軸は通常目標回転数NINn、横軸は通常目標出力POWERnを示す。マップm02は、各通常目標出力POWERnに基づいて通常目標回転数NINnを記述したものである。ここで、マップm02は、内燃機関120から取り出されるトルクと、内燃機関120の機関回転数とに基づく燃費最適線によって導き出される。なお、燃費最適線は、最も燃費良く機関を運転できるトルクと、機関回転数との関係を表すグラフである。また、燃費とは、単位仕事量あたりの燃料消費量をいう。
なお、マップm02は、記憶部Emに格納されている。よって、情報取得部17は、記憶部Emからマップm02を取得する。次に、通常目標回転数機関トルク演算部12は、情報取得部17が取得したマップm02に基づいて通常目標回転数NINnを求める。なお、本実施形態では、通常目標回転数機関トルク演算部12はマップm02を用いて通常目標回転数NINnを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、通常目標回転数機関トルク演算部12は、マップm02に相当する数式に基づいて通常目標回転数NINnを求めてもよい。
次に、図7に示すステップST105で、比較判定部18は、車両100の加速の要求の有無を判定する。なお、以下、車両100に対する運転者の加速の要求が有る場合を「加速要求あり」といい、車両100に対する運転者の加速の要求が無い場合を「加速要求なし」という。
ここで、第1所定値としての所定値αは、運転者の加速の要求の有無を判断するための値である。所定値αは、例えば、アクセル開度PAPが全開である場合を100%とするときの20%である。情報取得部17は、記憶部Emに格納された所定値αを取得する。次に、比較判定部18は、ステップST101でアクセル開度センサD04から取得したアクセル開度PAPと所定値αとを比較する。
なお、本実施形態ではステップST105で用いるアクセル開度PAPとして、ステップST101で取得したアクセル開度PAPを用いたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ステップST105の直前に情報取得部17が再度アクセル開度PAPをアクセル開度センサD04から取得し、このアクセル開度PAPと所定値αとを比較してもよい。これにより、比較判定部18は、最新の情報に基づいて情報の比較を行える。但し、ステップST101で情報取得部17が取得したアクセル開度PAPを用いることにより、変速比制御装置11は、その工程数を低減できる。
また、本実施形態ではアクセル開度PAPに基づいて加速要求の有無を判定したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、単位時間あたりのアクセル開度PAPの変化量、つまりアクセル開速度PAPvに基づいて加速要求の有無を判定してもよい。
ステップST105で、アクセル開度PAPが所定値αよりも大きい、つまり加速要求ありと判定されると(ステップST105、Yes)、変速比制御装置11は、ステップST106へ進む。情報取得部17は、ステップST106で、アクセル開度センサD04からアクセル開速度PAPvを取得する。
次に、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、ステップST107で、加速用目標回転数NINaを求める。以下に加速用目標回転数NINaの演算方法を説明する。
図10は、本実施形態に係るアクセル開度の変化にともなう通常目標回転数と加速用目標回転数との変化を説明する図である。図10において、横軸は時間軸であり領域AR01から領域AR03までの3つの領域に分けて説明する。
領域AR01では、アクセル開度PAPが所定値α以下、つまり車両100の加速要求なしと判定される。領域AR02では、アクセルが車両100の運転者によって踏み込まれ、アクセル開度PAPが所定値αより大きい、つまり車両100に対する運転者の加速の要求が有ると判定される。領域AR03では、車両100の運転者はアクセルの踏み込みを所定値αを超えた状態で一定に保っている。
ここで、領域AR02では、アクセル開度PAPが所定値αを超えている。アクセル開度PAPが所定値αを超えると、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、加速用目標回転数NINaを求める。ここで、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、アクセル開度PAP、アクセル開速度PAPv、車速SPDに基づいて加速用目標回転数NINaを求める。
具体的には、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、まず、加速要求時基本目標回転数NINLINE0を求める。加速要求時基本目標回転数NINLINE0は、加速要求ありと判定されたときの基本目標回転数であり、車速SPDに基づいて求められる。なお、加速要求時基本目標回転数NINLINE0は、車速SPDと加速要求時基本目標回転数NINLINE0との関係を記述したマップによって求められる。具体的には、前記マップをECU10の記憶部Emに格納し、情報取得部17が前記マップを記憶部Emから取得する。高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、情報取得部17が取得した前記マップから加速要求時基本目標回転数NINLINE0を求める。
前記マップにおいて、加速要求時基本目標回転数NINLINE0は車速SPDの増加にともなって増加する。なお、本実施形態では、加速要求時基本目標回転数NINLINE0を車速SPDと加速要求時基本目標回転数NINLINE0との関係を記述したマップを用いて求めたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、前記マップに相当する数式を用いて車速SPDから加速要求時基本目標回転数NINLINE0を求めてもよい。
さらに、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、目標回転数補正量NLDPAPSTHを求める。目標回転数補正量NLDPAPSTHは、加速用目標回転数NINaを補正するパラメータであり、アクセル開速度PAPvに基づいて求められる。高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、アクセル開速度PAPvと目標回転数補正量NLDPAPSTHとの関係を記述したマップから目標回転数補正量NLDPAPSTHを求めてもよいし、前記マップに相当する数式から目標回転数補正量NLDPAPSTHを求めてもよい。なお、目標回転数補正量NLDPAPSTHは、アクセル開速度PAPvの増加にともなって増加する。
さらに、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、目標回転数補正量NLPAPHを求める。目標回転数補正量NLPAPHは、加速用目標回転数NINaを補正するパラメータであり、車速SPDとアクセル開度PAPとに基づいて求められる。高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、車速SPDとアクセル開度PAPと目標回転数補正量NLPAPHとの関係を記述したマップから目標回転数補正量NLPAPHを求めてもよいし、前記マップに相当する数式から目標回転数補正量NLPAPHを求めてもよい。なお、目標回転数補正量NLPAPHは、車速SPD及びアクセル開度PAPの増加にともなって増加する。
さらに、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、目標回転数変化量NLSPDHを求める。目標回転数変化量NLSPDHは、加速用目標回転数NINaを補正するパラメータであり、車速SPDの変化に基づいて求められる。目標回転数変化量NLSPDHは、車速SPDの勾配に基づいて求められる加速用目標回転数NINaの勾配である。高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、車速SPDの勾配と目標回転数変化量NLSPDHとの関係を記述したマップから目標回転数変化量NLSPDHを求めてもよいし、前記マップに相当する数式から目標回転数変化量NLSPDHを求めてもよい。なお、目標回転数変化量NLSPDHは、車速SPDの勾配の増加にともなって増加する。
高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、目標回転数補正量NLPAPHと目標回転数変化量NLSPDHとに基づいて目標回転数補正量NLPAPH+目標回転数変化量NLSPDHを求める。具体的には、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、例えば、目標回転数補正量NLPAPHと目標回転数変化量NLSPDHとを加算することにより目標回転数補正量NLPAPH+目標回転数変化量NLSPDHを求める。
ここで、図10に示すように、アクセル開度PAPと車速SPDとの増加に対して目標回転数補正量NLPAPH+目標回転数変化量NLSPDHが増加するように加速用目標回転数NINaの勾配を設定する。これにより、プライマリシャフト51の目標回転数が、所定の勾配を有して増加する。プライマリシャフト51の回転数の上昇にともなって、クランクシャフト121の回転数も上昇する。
プライマリシャフト51の回転数の上昇にともなって、内燃機関120の機関回転数も上昇する。よって、車両100の運転者がアクセルを踏み込んだ際に、内燃機関120の機関回転数が上昇する。ここで、実験により、内燃機関の機関回転数が、車両から運転者に与える加速感に関係があることが分かっている。具体的には、機関回転数が上昇すると、前記運転者は、車両からより大きい加速感を得る。よって、車両100の運転者は、車両100から加速感を得ることができる。
高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、上記の演算方法によって求めた、加速要求時基本目標回転数NINLINE0、目標回転数補正量NLDPAPSTH、目標回転数補正量NLPAPH、目標回転数変化量NLSPDHとに基づいて、領域AR02、つまり車両100のアクセルが踏み込まれるときにおける加速用目標回転数NINaを求める。
本実施形態では、例えば加速要求時基本目標回転数NINLINE0、目標回転数補正量NLDPAPSTH、目標回転数補正量NLPAPH、目標回転数変化量NLSPDHとを全て加算して、これを領域AR02における加速用目標回転数NINaとする。次に、領域AR03、つまり車両100の運転者が、アクセルの踏み込みを所定値αを超えた状態で一定に保つときの加速用目標回転数NINaの演算方法を説明する。
領域AR03において、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、目標回転数変化量NLSPDHを求める。目標回転数変化量NLSPDHは、上述のように、加速用目標回転数NINaを補正するパラメータであり、車速SPDの変化に基づいて求められる。高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、目標回転数変化量NLSPDHを、領域AR03における加速用目標回転数NINaの勾配とする。つまり、車両100の運転者が、アクセルの踏み込みを所定値αを超えた状態で一定に保つとき、アクセル開度PAPは一定であるため目標回転数補正量NLPAPHも一定であり、目標回転数変化量NLSPDHは車速SPDの変化に基づいて変化する。
ここで、目標回転数変化量NLSPDHは、上述したように車速SPDの増加にともなって増加するように勾配が設定される。これにより、車両100の運転者は、車速SPDの増加にともなって車両100から加速感を得ることができる。
上述の演算方法により、図7に示すステップST107で、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、加速用目標回転数NINaを求める。次に、図7に示すステップST108で、比較判定部18は、ステップST101でアクセル開度センサD04から取得したアクセル開度PAPと第2所定値としての所定値βとを比較する。
なお、所定値βは、運転者の加速の要求量が比較的小さい低加速要求の有無を判断するための値である。低加速要求ありとは、車両100の運転者によって加速の要求はなされているが、比較的低い加速を車両100に対して前記運転者が要求している状態をいう。所定値βは、例えば、アクセル開度PAPが全開である場合を100%とするときの50%である。つまり、アクセル開度PAPが50%より小さい場合を低加速要求あり、アクセル開度PAPが50%以上の場合を高加速要求ありとする。
なお、本実施形態ではステップST108で用いるアクセル開度PAPとして、ステップST101で取得したアクセル開度PAPを用いたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ステップST108の直前に、情報取得部17によって再度アクセル開度PAPをアクセル開度センサD04から取得し、このアクセル開度PAPと所定値βとを比較してもよい。
これにより、比較判定部18は、最新の情報に基づいて情報の比較を行える。但し、ステップST101で情報取得部17が取得したアクセル開度PAPを用いることにより、変速比制御装置11は、その工程数を低減できる。また、比較判定部18は、例えば、アクセル開度PAPに代えてアクセル開速度PAPvを用いて、低加速要求の有無を判定してもよい。
比較判定部18により、アクセル開度PAPが所定値β以上、つまり、高加速要求ありと判断されると(ステップST108、No)、次に、ステップST109で、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、高加速用目標駆動力FORCEaを求める。以下に高加速用目標駆動力FORCEaの演算方法を説明する。
図11は、本実施形態に係る高加速用目標駆動力を算出するためのマップである。図11に示すマップm03において、縦軸は高加速用目標駆動力FORCEa、横軸は車速SPDを示す。マップm03は、各アクセル開度PAPと車速SPDとに基づいて高加速用目標駆動力FORCEaを記述したものである。なお、破線が通常目標駆動力FORCEnを示し、実線が高加速用目標駆動力FORCEaを示す。図11に示すように、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、高加速用目標駆動力FORCEaを通常目標駆動力FORCEnよりも高く設定する。
次に、ステップST110で、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、高加速用目標出力POWERaを求める。高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、ステップST109で求めた高加速用目標駆動力FORCEaとステップST101で情報取得部17が取得した車速SPDとに基づいて高加速用目標出力POWERaを求める。具体的には、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、高加速用目標駆動力FORCEaと車速SPDと1000/3600とを乗算して高加速用目標出力POWERaを求める。
なお、本実施形態ではステップST110で用いる車速SPDとして、ステップST101で取得した車速SPDを用いたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ステップST110の直前に情報取得部17によって、再度車速SPDを車速センサD03から取得し、この車速SPDを用いてもよい。
これにより、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は最新の情報に基づいて高加速用目標出力POWERaを求めることができる。但し、ステップST101で情報取得部17が取得した車速SPDを用いることにより、変速比制御装置11は、その工程数を低減できる。
次に、ステップST111で、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、高加速用目標機関トルクTEaを求める。高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、ステップST107で求めた加速用目標回転数NINaと、ステップST110で求めた高加速用目標出力POWERaとに基づいて高加速用目標機関トルクTEaを求める。具体的には、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、高加速用目標出力POWERaを加速用目標回転数NINaで除算したものに単位換算定数Kを乗算することにより、高加速用目標機関トルクTEaを求める。
次に、ステップST112で、最終目標回転数機関トルク演算部15は、最終目標回転数NINLINEに加速用目標回転数NINaを代入する。また、最終目標回転数機関トルク演算部15は、最終目標機関トルクTEに高加速用目標機関トルクTEaを代入する。
次に、ステップST113で、変速比制御部16は、プライマリ可動シーブ摺動機構55及びセカンダリ可動シーブ摺動機構65を制御し、プライマリシャフト51の回転数が最終目標回転数NINLINEとなるようにベルト式無段変速機110の変速比を変更する。
次に、ステップST114で、機関制御部19は、内燃機関120のトルクが、最終目標機関トルクTEとなるように制御する。具体的には、機関制御部19は、インジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁を制御して内燃機関120から取り出される出力を制御する。
上記手順が、加速要求ありのときの変速比制御装置11の処理内容である。次に、加速要求なしのときの変速比制御装置11の処理内容を説明する。ステップST105で、比較判定部18によりアクセル開度PAPが所定値α以下であると判定されると(ステップST105、No)、ステップST115で、通常目標回転数機関トルク演算部12は、通常目標機関トルクTEnを求める。
通常目標回転数機関トルク演算部12は、ステップST103で求めた通常目標出力POWERnと、ステップST104で求めた通常目標回転数NINnとに基づいて通常目標機関トルクTEnを求める。具体的には、通常目標回転数機関トルク演算部12は、通常目標出力POWERnを通常目標回転数NINnで除算したものに単位換算定数Kを乗算することにより、通常目標機関トルクTEnを求める。
次に、ステップST116で、最終目標回転数機関トルク演算部15は、最終目標回転数NINLINEに通常目標回転数NINnを代入する。また、最終目標回転数機関トルク演算部15は、最終目標機関トルクTEに通常目標機関トルクTEnを代入する。次に、変速比制御装置11は、ステップST113とステップST114とを実行する。
上記手順が、加速要求なしのときの変速比制御装置11の処理内容である。次に、低加速要求ありのときの変速比制御装置11の処理内容を説明する。なお、以下に説明する制御手順が、本実施形態において最も特徴的な手順である。ステップST108で、比較判定部18によりアクセル開度PAPが所定値βよりも小さいと判定されると(ステップST108、Yes)、ステップST117で、低加速用目標機関トルク演算部14は、低加速用目標出力POWERalを求める。以下に低加速用目標出力POWERalの演算方法を説明する。
図12は、本実施形態に係る低加速用目標出力を算出するためのマップである。図12に示すマップm04において、縦軸は低加速用目標出力POWERal、横軸は加速用目標回転数NINaを示す。マップm04は、各加速用目標回転数NINaに基づいて低加速用目標出力POWERalを記述したものである。ここで、マップm04は、内燃機関120から取り出されるトルクと、内燃機関120の機関回転数とに基づく燃費最適線によって導き出される。つまり、低加速用目標機関トルク演算部14は、内燃機関120の機関回転数がステップST107で求めた加速用目標回転数NINaでの回転を達成し、かつ、内燃機関120が燃費最適線上での動作を実現するPOWERalをマップm04から求める。
マップm04は、記憶部Emに格納されている。よって、情報取得部17は、記憶部Emからマップm04を取得する。次に、低加速用目標機関トルク演算部14は、情報取得部17が取得したマップm04に基づいて低加速用目標出力POWERalを求める。なお、本実施形態では、低加速用目標機関トルク演算部14はマップm04を用いて低加速用目標出力POWERalを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、低加速用目標機関トルク演算部14は、マップm04に相当する数式に基づいて低加速用目標出力POWERalを求めてもよい。
次に、ステップST118で、低加速用目標機関トルク演算部14は、低加速用目標機関トルクTEalを求める。低加速用目標機関トルク演算部14は、ステップST117で求めた低加速用目標出力POWERalと、ステップST107で求めた加速用目標回転数NINaとに基づいて低加速用目標機関トルクTEalを求める。具体的には、低加速用目標機関トルク演算部14は、低加速用目標出力POWERalを加速用目標回転数NINaで除算したものに単位換算定数Kを乗算することにより、低加速用目標機関トルクTEalを求める。
次に、ステップST119で、最終目標回転数機関トルク演算部15は、最終目標回転数NINLINEに加速用目標回転数NINaを代入する。また、最終目標回転数機関トルク演算部15は、最終目標機関トルクTEに低加速用目標機関トルクTEalを代入する。次に、変速比制御装置11は、ステップST113とステップST114とを実行する。
図13は、本実施形態に係る内燃機関の機関回転数と機関トルクとの関係を時間の経過と共に示す説明図である。図14は、本実施形態に係る内燃機関の動作特性を示す図である。図13の横軸は時間の経過を示し、縦軸はアクセル開度PAPの大きさと内燃機関120の機関回転数と内燃機関120の機関トルクとを示す。図13は、アクセル開度PAPが所定値αよりも大きく、所定値βよりも小さいとき、つまり、変速比制御装置11が、図7に示す(ステップST105、Yes)、(ステップST108、Yes)の手順を実行するときの内燃機関120の機関回転数と機関トルクとの関係を時間の経過と共に示す。
図14において、横軸は機関回転数を示し、縦軸は機関トルクを示す。また、内燃機関120の動作特性を太い実線矢印で示す。なお、図14のA点は、図13のA点と対応する。また、図14のB点は、図13のB点と対応する。また、図14のCa点は図13のCa点と対応する。また、図14のCb点は図13のCb点と対応する。
図13に示すように、アクセル開度PAPが所定値αを超えると、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、加速用目標回転数NINaを内燃機関120の実際の機関回転数である実入力回転数DNINよりも高い値に設定する。これにより、実入力回転数DNINは、加速用目標回転数NINaに追従して上昇する。
このとき、高加速用目標回転数機関トルク演算部13は、内燃機関120が目標とする機関トルクを加速要求なしのときに内燃機関120が目標とする機関トルクよりも高い値に設定する。これにより、内燃機関120の機関トルクは、図14の点Aから点Bの間の実線が示すように、WOT(Wide Open Throttle)のときのトルクまで上昇する。なお、WOTは、内燃機関120の電子スロットル弁を境に、吸気流れの上流側の空気圧と、吸気流れの下流側の空気圧との比が1に近い状態を示す。
ここで、アクセル開度PAPは、所定値βよりも小さい。よって、車両100は、運転者によって低加速の要求がなされている。そこで、図13の点Caが示すように、低加速用目標機関トルク演算部14は、通常の加速要求ありのときに内燃機関120が目標とすべき機関トルクである高加速用目標機関トルクTEaよりも、低加速用目標機関トルクTEalを小さく設定する。ここで、低加速用目標機関トルクTEalは、上述のように燃費最適線に基づいて設定される。これにより、図14の点Caが示すように、内燃機関120は、燃費最適線に沿って動作する。
なお、図13の点Cbは、従来の変速比制御装置を備える内燃機関の機関トルクを示す点である。図13の点Cbが示すように、従来の変速比制御装置を備える内燃機関では、運転者が車両に対して通常よりも低い加速を要求した場合であっても、機関トルクを低下させない。よって、図14の点Cbが示すように、内燃機関は燃費最適線をはずれて動作する。これにより、運転者による車両に低加速要求があったときの内燃機関の燃費が低下するおそれがある。
しかしながら、内燃機関120は、低加速要求ありのときは、機関トルクが、燃費最適線に基づいて求められる高加速用目標機関トルクTEaを実現するように動作される。これにより、内燃機関120は、図14の点Caが示すように、燃費最適線に沿って動作する。結果として、内燃機関120は、燃費の低下を抑制できる。
また、図13に示すように、変速比制御装置11は、低加速要求ありのときであっても、内燃機関120が目標とすべき機関回転数を加速要求ありのときと同じ加速用目標回転数NINaに設定する。よって、内燃機関120の機関回転数は、図13に示すように上昇する。ここで、内燃機関の機関回転数が上昇すると、前記運転者は、車両からより大きい加速感を得る。
上述のように、変速比制御装置11は、低加速要求ありのときであっても、内燃機関120の機関回転数を上昇させる。さらに、変速比制御装置11は、低加速要求ありのときは、内燃機関120を燃費最適線に沿うように動作させる。よって、変速比制御装置11は、車両100の運転者に対して車両100から加速感を与えつつ、燃費の低下を抑制できる。つまり、変速比制御装置11は、車両100の運転者に対して与える加速感の低下の抑制と、燃費の低下の抑制とを両立できる。
本実施形態では、所定値βを例えば50%として説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、所定値βは、一定の値ではなく、内燃機関120の運転状況に基づいて常に変化してもよい。
図15は、車速の変化にともなう所定値βの変化を示すグラフである。一般的に、車速SPDが大きくなるほど、運転者のアクセル操作による車両100の駆動力の変化は少なくなる。また、内燃機関120に要求される駆動力も大きくなる。よって、変速比制御装置11は、図15に示すように車速SPDが大きくなるほど、所定値βを小さくする。つまり、変速比制御装置11は、車速SPDが大きくなるほど、比較判定部18による判定を低加速要求ありではなく高加速要求ありと判定されやすくする。
これにより、変速比制御装置11は、車両100が高速走行中のときのように、アクセル開度PAPの変化にともなう車両100の駆動力の変化が小さいときや、内燃機関120が比較的大きい駆動力を要求されるときは、比較判定部18による判定を高加速要求ありと判定されやすくする。よって、変速比制御装置11は、車両100の運転者が車両100に対して要求した加速感と、実際に車両100が運転者に対して与える加速感との差異を低減できる。つまり、変速比制御装置11は、車両100の運転者の走行中の違和感を抑制できる。
図16は、道路の勾配の変化にともなう所定値βの変化を示すグラフである。一般的に、道路の勾配が大きくなるほど、運転者のアクセル操作による車両100の駆動力の変化は少なくなる。また、内燃機関120に要求される駆動力も大きくなる。よって、変速比制御装置11は、図16に示すように道路の勾配が大きくなるほど、所定値βを小さくする。つまり、変速比制御装置11は、道路の勾配が大きくなるほど、比較判定部18による判定を低加速要求ありではなく高加速要求ありと判定されやすくする。
これにより、変速比制御装置11は、車両100が勾配の大きい坂道を走行中ときのように、アクセル開度PAPの変化にともなう車両100の駆動力の変化が小さいときや、内燃機関120が比較的大きい駆動力を要求されるときは、比較判定部18による判定を高加速要求ありと判定されやすくする。よって、変速比制御装置11は、車両100の運転者の走行中の違和感を抑制できる。