以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
(実施形態)
図1は、本実施形態に係るベルト式無段変速機を備えた車両の動力伝達部分における全体の構成を示す概念図である。図1に示すように、車両100の動力伝達機構は、ベルト式無段変速機110と、動力発生手段としての内燃機関120と、トルクコンバータ130と、前後進切換機構140と、減速装置150と、差動装置160と、を備える。
内燃機関120は、円筒形状に形成されるシリンダの中心軸方向にピストンが往復運動し、前記ピストンの往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト121から回転を出力する。
トルクコンバータ130は、流体クラッチの一種であり、内燃機関120から取り出された回転を作動油を介して前後進切換機構140に伝える。また、トルクコンバータ130は内燃機関120から取り出されたトルクを増幅する。
前後進切換機構140は、トルクコンバータ130からの回転の回転方向を切り替えてベルト式無段変速機110へ前記回転を伝える。
ベルト式無段変速機110は、前後進切換機構140から入力される回転の回転速度を所望の回転速度に変更して出力する。なお、ベルト式無段変速機110の詳細な説明は後述する。
減速装置150は、ベルト式無段変速機110からの回転の回転速度を減速して差動装置160に前記回転を伝える。
差動装置160は、車両100が旋回する際に生じる旋回の中心側、つまり内側の車輪180と、外側の車輪180との速度差を吸収する。
上記構成要素によって車両100の動力伝達機構は形成される。内燃機関120から取り出された回転は、クランクシャフト121を介してトルクコンバータ130に伝えられる。トルクコンバータ130によってトルクが増幅された回転は、ベルト式無段変速機110の入力軸としてのインプットシャフト131を介して前後進切換機構140に伝えられる。
前後進切換機構140によって回転方向が切り替えられた回転は、プライマリシャフト51を介してベルト式無段変速機110に伝えられる。ベルト式無段変速機110によって、回転速度を変更された回転は、ベルト式無段変速機110の出力軸としてのセカンダリシャフト61を介して減速装置150に伝えられる。減速装置150によって減速された回転は、減速装置150のファイナルドライブピニオン151と、ファイナルドライブピニオン151と噛み合う差動装置160のリングギア161とを介して差動装置160に伝えられる。
差動装置160に伝達された回転は、ドライブシャフト170に伝達される。差動装置160側とは反対側のドライブシャフト170には、車輪180が取り付けられる。ドライブシャフト170に伝達された回転は車輪180に伝達される。これにより、車輪180は回転し、車輪180が路面に前記回転を伝達することにより車両100は走行する。
なお、本実施形態では内燃機関120をピストンとシリンダとを備えるいわゆるレシプロ式の内燃機関として説明したが、本実施形態はこれに限定されない。動力発生手段から回転力を得られれば良く、例えば、動力発生手段はロータリー式の内燃機関でもよいし、モータでもよい。
図2は、本実施形態に係るベルト式無段変速機のプライマリプーリ側の構成を示す断面図である。以下、ベルト式無段変速機110の概略構成について図1及び図2を用いて説明する。なお、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ60とはほぼ同様の構成であるため、プライマリプーリ50側を詳細に説明する。ベルト式無段変速機110は、図1に示すように、プライマリプーリ50と、プライマリプーリ軸としてのプライマリシャフト51と、セカンダリプーリ60と、セカンダリプーリ軸としてのセカンダリシャフト61と、を備える。
プライマリシャフト51は、軸受81、軸受82によってインプットシャフト131の回転軸と同軸上に回転可能に支持される。セカンダリシャフト61は、軸受83、軸受84によってプライマリシャフト51に対して平行に回転可能に支持される。
プライマリシャフト51には、プライマリプーリ50が設けられる。プライマリプーリ50は、プライマリ固定シーブ52と、プライマリ可動シーブ53と、図2に示すスプライン54とを備える。プライマリ固定シーブ52は、プライマリシャフト51の外周にプライマリシャフト51と一体に、もしくはプライマリシャフト51に固定して設けられる。プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51にプライマリシャフト51上をプライマリシャフト51の軸線方向に慴動可能に設けられる。具体的には図2に示すように、プライマリ可動シーブ53はスプライン54によってプライマリシャフト51にスプライン嵌合される。つまり、プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51上でプライマリ固定シーブ52と対向して位置する。
上記構成により、プライマリ固定シーブ52及びプライマリ可動シーブ53の対向面間には、V字形状のプライマリ溝80aが形成される。また、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上を慴動することにより、プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との距離が変化する。
さらに、プライマリプーリ50は、プライマリ可動シーブ摺動機構55を備える。プライマリ可動シーブ摺動機構55は、プライマリシャフト51に設けられる。プライマリ可動シーブ摺動機構55は、プライマリ可動シーブ53をプライマリシャフト51の軸線方向に摺動させ、プライマリ固定シーブ52に接近またはプライマリ固定シーブ52から離隔させる。以下、図2を用いて、プライマリ可動シーブ摺動機構55について説明する。
プライマリ可動シーブ摺動機構55は、油圧モータ550と、運動方向変換機構551とを備える。油圧モータ550は、プライマリ可動シーブ53をプライマリシャフト51の軸線方向に摺動させるための駆動源である。運動方向変換機構551は、油圧モータ550の回転方向の力をプライマリシャフト51の軸線方向の力に変換する。
本実施形態では、油圧モータ550としてインナーロータとの相対回転により生じたアウターロータの回転を駆動力とする構造のモータ、例えば羽根式油圧モータを適用できる。羽根式油圧モータは、アウターロータを構成するモータケース550b内に少なくとも二つの羽根を有する。これにより、前記羽根によってモータケース550b内に少なくとも二つの油室が形成される。前記二つの油室に作動油を流入させ、この作動油の油圧により各羽根を相対回転させることで、羽根式油圧モータは駆動力を発生する。なお、本実施形態はこれに限定されず、プライマリ可動シーブ摺動機構55は、油圧モータ550に代えて電動モータを備えてもよい。
油圧モータ550は、モータシャフト550aと、モータケース550bと、軸受550cとを有する。モータシャフト550aは、油圧モータ550の回転軸であり、プライマリシャフト51と共に回転する。モータケース550bは、油圧モータ550を構成する要素を収容するケーシングである。軸受550cは、モータケース550bに設けられ、モータシャフト550aを回転可能に支持する。
運動方向変換機構551は、例えば、アウターロータの回転力をその軸線方向の力に変換する多条ネジや滑りネジなどの運動ネジを適用できる。運動方向変換機構551は、図2に示すように、第1運動方向変換機構構成部551aと、第2運動方向変換機構構成部551bとにより構成される。第1運動方向変換機構構成部551aは、モータケース550bの外周面に設けられる。また、第2運動方向変換機構構成部551bは、プライマリ可動シーブ53の延設部の内周面にスプライン551cを介してスプライン嵌合される。
第1運動方向変換機構構成部551aの外周面には、周方向にネジ部分が形成される。一方、第2運動方向変換機構構成部551bの内周面にも周方向にネジ部分が形成される。また、油圧モータ550は、モータシャフト550aがプライマリシャフト51に固定されるため、軸線方向に移動しない。これにより、運動方向変換機構551のモータケース550bが回転すると、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51の軸線方向に摺動する。
例えば、モータケース550bが回転すると、この回転力は、運動方向変換機構551を介してプライマリ可動シーブ53を摺動させるための油圧モータ550の推力となる。ここで、推力に対する反力は軸受550cに作用する。しかしながら、軸受550cは、モータシャフト550aを介してプライマリシャフト51に固定されている。よって軸受550c及びモータケース550bは、前記反力の方向に移動しない。上記構成により、プライマリ可動シーブ53は油圧モータ550に対して相対的に移動する。つまり、プライマリ可動シーブ53はプライマリ固定シーブ52に対して相対的に移動する。次に、上述した油圧モータ550における油路について説明する。
図3は、本実施形態に係る油圧モータを図2に示すX−X線から見た断面図である。図3に示すように、プライマリシャフト51には、油路51bと、油路51cとが形成される。油路51bは、各第1油室550dに開口し、第1油室550dに作動油を供給する、または各第1油室550dから作動油を排出する通路である。油路51cは、各第2油室550eに開口し、各第2油室550eに作動油を供給する、または各第2油室550eから作動油を排出する通路である。
図4は、本実施形態のベルト式無段変速機における油圧回路構成を説明する模式図である。図5−1は、本実施形態に係る変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって、第1油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図である。図5−2は、本実施形態に係る変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって、第1及び第2の油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図である。図5−3は、本実施形態に係る変速比制御用切替バルブの動作を説明する模式図であって、第2油室に油圧を供給する場合のバルブ位置を示す図である。
図4に示すように、油路51b及び油路51cは、変速比制御用切替バルブ56に接続される。また、変速比制御用切替バルブ56には、順にオイルポンプOP、レギュレータバルブ59、挟圧力調整バルブ58を介してオイルタンクOTから作動油が供給される。なお、オイルポンプOPとレギュレータバルブ59とは油路59aによって接続される。レギュレータバルブ59と挟圧力調整バルブ58とは油路58aによって接続される。挟圧力調整バルブ58と変速比制御用切替バルブ56とは油路56aによって接続される。
オイルポンプOPは、オイルタンクOTから作動油を吸引し、油路59aを介してレギュレータバルブ59へ作動油を送る。レギュレータバルブ59は、油圧調整手段として機能し、油路58aに送り出す油圧を適正な範囲に調整する。ここで、前記適正な範囲とは、ベルト式無段変速機110のプライマリ可動シーブ53を慴動させるのに必要な油圧の範囲である。
レギュレータバルブ59から送り出された作動油は、油路58aを介して挟圧力調整バルブ58へ導入される。挟圧力調整バルブ58は、油圧調整手段として機能し、油路56aに送り出す油圧を、後述するECU10が要求した圧力に調整する。
挟圧力調整バルブ58から送り出された作動油は、油路56aを介して変速比制御用切替バルブ56へ導入される。変速比制御用切替バルブ56は、複数の油路が形成され、バルブの位置を切り替えることにより、作動油の供給対象である第1油室550d、または第2油室550eの切り替えを行う。この切り替えは、シリンダの内部に配置された図5−1から図5−3に示すバネ56bの反発力とその内部に供給する空気や作動油等の流体の圧力との差分を調節することで行われる。前記流体の圧力の制御は、ECU10によって行われる。
変速比制御用切替バルブ56は、例えば、バルブの位置を制御する圧力であるバルブ位置制御圧がバネ56bの反発力よりも小さく設定されると、図5−1に示すように、第1油室550dに作動油を供給する。これにより、油圧モータ550は正回転する。また、変速比制御用切替バルブ56は、例えば、バルブ位置制御圧がバネ56bの反発力よりも大きく設定されると、図5−3に示すように、第2油室550eに作動油が供給される。これにより、油圧モータ550は逆回転する。
上記構成により、油圧モータ550は、プライマリ可動シーブ53をプライマリシャフト51の軸線方向に慴動させる。つまり、プライマリ可動シーブ53を、プライマリ固定シーブ52に対して接近、または遠離させる。これにより、図1に示すプライマリ溝80aとベルト80との接触半径と、セカンダリ溝80bとベルト80との接触半径とが変化する。これにともなって変速比も変化する。
具体的には、プライマリ可動シーブ53がプライマリ固定シーブ52に対して接近すると、変速比は小さくなる。つまり、ベルト式無段変速機110から取り出される回転数は上昇し、ベルト式無段変速機110から取り出されるトルクは減少する。一方、プライマリ可動シーブ53がプライマリ固定シーブ52に対して遠離すると、変速比は大きくなる。つまり、ベルト式無段変速機110から取り出される回転数は減少し、ベルト式無段変速機110から取り出されるトルクは上昇する。
また、変速比制御用切替バルブ56は、例えば、バルブ位置制御圧をバネ56bの反発力とつり合うように設定し、切替弁を所定の位置に留めておくことにより、図5−3に示すように、第1油室550d及び第2油室550eに同圧の作動油を供給する。これにより油圧モータ550の回転が停止する。油圧モータ550の回転を停止させることにより、ベルト式無段変速機110の変速比を固定できる。
なお、図1に示すように、セカンダリプーリ60は、セカンダリ固定シーブ62と、セカンダリ可動シーブ63と、セカンダリ可動シーブ摺動機構65と、セカンダリ溝80bとを備える。上述したように、セカンダリプーリ60はプライマリプーリ50とほぼ同様の構成であり、セカンダリ固定シーブ62はプライマリ固定シーブ52と、セカンダリ可動シーブ63はプライマリ可動シーブ53と、セカンダリ可動シーブ摺動機構65はプライマリ可動シーブ摺動機構55と、セカンダリ溝80bはプライマリ溝80aとそれぞれ対応する。次に、変速比制御装置11について説明する。
図6は、本実施形態に係る無段変速機制御装置の構成を示す概念図である。ECU10は、内燃機関120、図4に示す変速比制御用切替バルブ56、挟圧力調整バルブ58、レギュレータバルブ59などに電気的に接続され、これら内燃機関120、変速比制御用切替バルブ56、挟圧力調整バルブ58、レギュレータバルブ59などの制御対象の動作を制御する。また、図1に示すプライマリシャフト回転数センサD01、セカンダリシャフト回転数センサD02、車速センサD03、図4に示すアクセル開度センサD04、その他にも内燃機関120の各検出手段類に電気的に接続され、これらの検出手段から各種の情報を取得する。なお、アクセル開度センサD04は、車両の加速の要求及び車両の加速の要求量を判定する手段である。
ECU10は、例えば、内燃機関120のインジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁などに電気的に接続される。これにより、ECU10は、インジェクタの燃料噴射量及び燃料噴射時期、点火プラグの点火時期、電子スロットル弁の開度などを制御する。つまり、ECU10は、インジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁などを制御することにより、内燃機関120から取り出せるトルクを制御する。また、ECU10は、その他にも内燃機関120の各制御対象に電気的に接続され、前記各制御対象を制御する。
図6に示すように、変速比制御装置11は、ECU10の中央演算部(Central Processing Unit)Epに組み込まれて構成されている。ECU10は、中央演算部Epと、記憶部Emと、入力ポートINp及び出力ポートOUTpと、入力インターフェースIFin及び出力インターフェースIFoutとから構成される。なお、ECU10とは別個に、本実施形態に係る変速比制御装置11を用意し、これをECU10に接続してもよい。
変速比制御装置11は、基本目標回転数演算部12と、過渡変速用目標回転速度演算手段としての過渡変速用目標回転数演算部13と、最終目標回転数設定部14と、変速比制御手段としての変速比制御部15と、情報取得部16と、比較判定部17とを含んで構成される。
基本目標回転数演算部12は、プライマリシャフト51の回転数の候補である基本目標回転速度としての基本目標回転数NINcを求める。過渡変速用目標回転数演算部13は、車両の加速が要求された場合に、プライマリシャフト51の回転数の候補である過渡変速用目標回転速度としての過渡変速用目標回転数NINtを求める。最終目標回転数設定部14は、最終的にプライマリシャフト51が目標とする最終目標回転数NINLINEを求める。
なお、基本目標回転数演算部12は、車両100に対する運転者の加速の要求の有無に関わらず基本目標回転数NINcを求める。つまり、基本目標回転数演算部12は、車両100に対する運転者の加速の要求がない場合、及び車両100に対する運転者の加速の要求がある場合に、基本目標回転数NINcを求める。一方、過渡変速用目標回転数演算部13は、車両の加速が要求され、過渡変速が要求された場合に、過渡変速用目標回転数NINtを求める。ここで、過渡変速要求とは、ベルト式無段変速機110のプライマリシャフト51の回転数を比較的短時間の間に上昇させる要求のことである。
変速比制御部15は、セカンダリシャフト61の回転数が、最終目標回転数NINLINEとなるようにベルト式無段変速機110の変速比を制御する。情報取得部16は、図1に示すプライマリシャフト回転数センサD01、セカンダリシャフト回転数センサD02、車速センサD03、図4に示すアクセル開度センサD04、などの検出手段が検出した結果、後述する記憶部Emに格納された情報、機関制御部18が有する情報、などを取得する。比較判定部17は、各検出手段から得た数値や記憶部Emに格納された数値を比較する。
中央演算部Epには、上述の変速比制御装置11以外に、機関制御部18とが含まれる。機関制御部18は、内燃機関120の運転制御を行う。中央演算部Epと、記憶部Emとは、バスBcとにより接続される。中央演算部Epと入力ポートINpとは、バスBaとにより接続される。中央演算部Epと出力ポートOUTpとは、バスBbとにより接続される。
変速比制御装置11の情報取得部16は、機関制御部18が有する内燃機関120の運転制御データを取得し、これを利用する。また、変速比制御装置11は、この本実施形態に係るベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を、機関制御部18があらかじめ備えている内燃機関120の運転制御ルーチンに割り込ませてもよい。
入力ポートINpには、入力インターフェースIFinが接続されている。入力インターフェースIFinには、図1に示すプライマリシャフト回転数センサD01、セカンダリシャフト回転数センサD02、車速センサD03、図4に示すアクセル開度センサD04、その他各種検出手段が接続されている。これらの各種検出手段から出力される信号は、入力インターフェースIFin内のアナログ/デジタルコンバータADCやディジタル入力バッファDIBにより、中央演算部Epが利用できる信号に変換されて入力ポートINpへ送られる。これにより、中央演算部Epは、ベルト式無段変速機110の変速比の制御や、内燃機関120の制御に必要な情報を取得できる。
出力ポートOUTpには、出力インターフェースIFoutが接続されている。出力インターフェースIFoutには、プライマリ可動シーブ摺動機構55、セカンダリ可動シーブ摺動機構65、内燃機関120のインジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁、その他内燃機関120における制御対象が接続されている。出力インターフェースIFoutは、制御回路IFouta、制御回路IFoutbなどを備えており、中央演算部Epで演算された制御信号に基づき、前記制御対象を動作させる。このような構成により、前記検出手段からの出力信号に基づき、ECU10の中央演算部Epは、プライマリ可動シーブ摺動機構55、セカンダリ可動シーブ摺動機構65、内燃機関120のインジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁を制御する、つまり、ベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の出力を制御する。換言すると、ECU10は、プライマリシャフト51へ入力する回転数と、セカンダリシャフト61から出力される回転数と、内燃機関120が出力するトルクとを制御する。
記憶部Emには、ベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を含むコンピュータプログラムや制御データマップが格納されている。記憶部Emは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。
上記コンピュータプログラムは、中央演算部Epへ既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、ベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を実現できるものであってもよい。また、この変速比制御装置11は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、同等の機能を実現するものであってもよい。
図7は、本実施形態に係るベルト式無段変速機の変速比を制御する手順を示すフローチャートである。ステップST101において過渡変速用目標回転数演算部13は、制御手順の周回数をカウントするための変数であるカウンタTを初期化する。つまりカウンタTを0とする。次に、ステップST102において情報取得部16は、アクセル開度センサD04からアクセル開度PAPを取得する。加えて、情報取得部16は、車速センサD03から車速Cvを取得する。なお、アクセル開度PAPと車速Cvとはどちらを先に取得してもよい。
次にステップST103において基本目標回転数演算部12は、アクセル開度PAPと車速Cvとに基づいて基本目標駆動力FORCEcを求める。以下に基本目標駆動力FORCEcの算出方法を説明する。
図8は、本実施形態に係る基本目標駆動力を求めるためのマップである。図8に示すマップm01において、横軸は車速を示し、縦軸は目標駆動力を示す。マップm01は、各アクセル開度PAPにおける車速Cvと基本目標駆動力FORCEcとの関係を記述したものである。なお、マップm01は、記憶部Emに格納されている。情報取得部16は、ECU10の記憶部Emからマップm01を取得する。次に、基本目標回転数演算部12は、情報取得部16が取得したマップm01に基づいて基本目標駆動力FORCEcを求める。なお、本実施形態では、基本目標回転数演算部12はマップm01を用いて基本目標駆動力FORCEcを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。基本目標回転数演算部12は、マップm01に相当する数式に基づいて基本目標駆動力FORCEcを求めてもよい。
次に、図7に示すステップST104において基本目標回転数演算部12は、基本目標出力POWERcを求める。基本目標回転数演算部12は、ステップST103で求めた基本目標駆動力FORCEcとステップST102で情報取得部16が取得した車速Cvとの乗算により基本目標出力POWERcを求める。
なお、本実施形態ではステップST104で用いたCvを用いるが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ステップST104の直前に、車速センサD03から車速Cvを再度取得してもよい。次に、ステップST105において基本目標回転数演算部12は、基本目標回転数NINcを求める。以下に基本目標回転数NINcの算出方法を説明する。
図9は、本実施形態に係る基本目標回転数を求めるためのマップ、図10は、最良の燃費で機関を運転できる機関回転数と機関トルクとの関係を示すグラフである。なお、燃費とは、単位燃料量で車両100が走行できる距離をいう。図9に示すマップm02において横軸は目標出力を示し、縦軸は目標回転数を示す。マップm02は、各基本目標出力POWERcに基づいて基本目標回転数NINcを記述したものである。ここで、マップm02は、図10に示す燃費最適線から導き出される。
図10に示すグラフにおいて、横軸は内燃機関120のクランクシャフト121の回転数、つまり機関回転数を示し、縦軸は内燃機関120のクランクシャフト121のトルクを示す。燃費最適線は、最良の燃費で機関を運転できる機関回転数と機関トルクとの関係を示す線である。また、WOT(Wide Open Torque)は、内燃機関120の電子スロットル弁を境に、吸気流れの上流側の空気圧と、吸気流れの下流側の空気圧との比が1に近い状態の内燃機関120の機関トルクを示す線である。
なお、マップm02は、記憶部Emに格納されている。よって、情報取得部16は、記憶部Emからマップm02を取得する。次に、基本目標回転数演算部12は、情報取得部16が取得したマップm02に基づいて基本目標回転数NINcを求める。なお、本実施形態では、基本目標回転数演算部12はマップm02を用いて基本目標回転数NINcを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、基本目標回転数演算部12は、マップm02に相当する数式に基づいて基本目標回転数NINcを求めてもよい。
次に、図7に示すステップST106において比較判定部17は、車両100の加速の要求の有無を判定する。なお、以下、車両100に対する運転者の加速の要求が有る場合を「加速要求あり」といい、車両100に対する運転者の加速の要求がない場合を「加速要求なし」という。具体的には、記憶部Emに格納された所定値αを情報取得部16が取得し、ステップST102でアクセル開度センサD04から取得したアクセル開度PAPと所定値αとを比較する。なお、所定値αは、アクセル開度PAPがその値よりも大きいとき、加速要求ありと判定できる値である。なお、所定値αは、例えばアクセル開度が全開である場合を100%とするときの20%である。
なお、本実施形態ではステップST106で用いるアクセル開度PAPとして、ステップST102で取得したアクセル開度PAPを用いたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ステップST106の直前に情報取得部16が再度アクセル開度PAPをアクセル開度センサD04から取得し、このアクセル開度PAPと所定値αとを比較してもよい。また、本実施形態ではアクセル開度PAPに基づいて加速要求の有無を判定したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、単位時間あたりのアクセル開度PAPの変化量、つまりアクセル開速度に基づいて加速要求の有無を判定してもよい。
ステップST106で、アクセル開度PAPが所定値αよりも大きい、つまり加速要求ありと判定されると(ステップST106、Yes)、次に、ステップST107において比較判定部17は、車両100に対する運転者の過渡変速の要求の有無を判定する。なお、以下、車両100に対する運転者の過渡変速の要求が有る場合を「過渡変速要求あり」といい、車両100に対する運転者の過渡変速の要求がない場合を「過渡変速要求なし」という。
具体的には、記憶部Emに格納された所定値βを情報取得部16が取得し、ステップST102でアクセル開度センサD04から取得したアクセル開度PAPと所定値βとを比較する。なお、所定値βは、アクセル開度PAPがその値よりも大きいとき、過渡変速要求ありと判定できる値である。つまり、過渡変速要求とは、加速要求を判定するために用いられるアクセル開度である所定値αよりもさらに大きい所定値βを超えて、車両を運転する運転者がアクセルを踏み込んだ状態をいう。
なお、本実施形態ではアクセル開度PAPに基づいて過渡変速要求の有無を判定したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、単位時間あたりのアクセル開度PAPの変化量、つまりアクセル開速度に基づいて過渡変速要求の有無を判定してもよい。
ステップST107で、過渡変速要求ありと判定されると(ステップST107、Yes)、ステップST108において情報取得部16は、プライマリシャフト回転数センサD01から実入力回転数NINを取得する。実入力回転数NINは、プライマリシャフト51の実際の回転数である。
次に、過渡変速用目標回転数演算部13は、カウンタ変数としてのカウンタTに1を加算して新たなカウンタTとする。なお、過渡変速要求あり(ステップST107、Yes)と最初に判定された時、カウンタTは0である。つまり、ステップST107で最初に過渡変速要求ありと判定されてステップST109に至った場合、ステップST109でカウンタTに1が加算されて、カウンタTは1となる。
次に、過渡変速用目標回転数演算部13は、カウンタTが1であるか否かを判定する。ステップST110で、カウンタTが1であると判定されると(ステップST110、Yes)、過渡変速用目標回転数演算部13はステップST111を実行する。また、ステップST110で、カウンタTが1ではないと判定されると(ステップST110、No)、過渡変速用目標回転数演算部13はステップST115を実行する。つまり、ステップST109及びステップST110は、変速比制御装置11の制御処理手順において、最初に過渡変速要求ありと判定されたか否かを判定する工程である。
図11は、アクセル開度の変化にともなう各目標回転数を示す図である。なお、図11の横軸は時間の経過を示し、縦軸はプライマリシャフト51の回転数とアクセル開度PAPの大きさを示す。また、図11において、アクセル開度PAPが所定値β以下の領域を領域AR01とする。また、アクセル開度PAPが所定値β以上であって、過渡変速用目標回転数NINtが一定の領域を領域AR02とする。
また、図11において、過渡変速用目標回転数NINtが単位時間あたりに一定の変化量で増加する領域であって、過渡変速用目標回転数NINtが基本目標回転数NINc以下の領域を領域AR03とする。なお、以下単位時間あたりの変化量を勾配という。さらに、過渡変速用目標回転数NINtが一定の勾配で増加する領域であって、過渡変速用目標回転数NINtが基本目標回転数NINcよりも大きい領域を領域AR04とする。
なお、図11中の破線は、実入力回転数NINを示す。実入力回転数NINは、通常、プライマリシャフト51の目標回転数よりも低速回転であり、プライマリシャフト51の実入力回転数NINは次第に目標回転数に近づく。
ここで、図7に示すステップST110で、カウンタTが1であると判定されると(ステップST110、Yes)、ステップST111において過渡変速用目標回転数演算部13は、初回過渡変速用目標回転数NINtaを求める。初回過渡変速用目標回転数NINtaとは、過渡変速用目標回転数NINtの一部であり、図11の領域AR02に示す過渡変速用目標回転数NINtのことをいう。このように、初回過渡変速用目標回転数NINtaは、勾配が水平、つまり単位時間あたりの変化量が0である。
図11の領域AR02のアクセル開度PAPが示すように、運転者が車両100に対して通常よりも強い加速を求め、アクセルペダルを踏み込むと、過渡変速用目標回転数演算部13は、初回過渡変速用目標回転数NINtaをステップ的に上昇させる。以下に初回過渡変速用目標回転数NINtaの求め方を説明する。
過渡変速用目標回転数演算部13は、ステップST105で基本目標回転数演算部12が算出した基本目標回転数NINcと、ステップST108で情報取得部16が算出した初回過渡変速用目標回転数NINtaとの偏差に基づいて初回過渡変速用目標回転数NINtaを求める。本実施形態に係る変速比制御装置11は、具体的には、初回過渡用目標回転数=(基本目標回転数NINc−実入力回転数NIN)x0.4+実入力回転数NINにより求める。
なお、本実施形態では、基本目標回転数NINcと、実入力回転数NINの偏差に0.4を乗算したが、基本目標回転数NINcと、実入力回転数NINの偏差に乗算する数値は、0.4に限定されない。例えば、0.4より大きい0.7を前記偏差に乗算することにより、より早く実入力回転数NINは上昇する。
なお、目標回転数のステップ的な上昇に上限を設けてもよい。例えば、初回過渡変速用目標回転数NINtaと実入力回転数NINとの偏差が所定値以上となった場合は、初回過渡変速用目標回転数NINtaと実入力回転数NINとの偏差が所定値未満となる範囲で初回過渡変速用目標回転数NINtaを設定してもよい。これにより、ベルト式無段変速機110に過剰な負荷がかかるのを抑制し、ベルト式無段変速機110を安全に運転できる。
次に、図7に示すステップST112において最終目標回転数設定部14は、最終目標回転数NINLINEに初回過渡変速用目標回転数NINtaを代入する。続いて、ステップST113において変速比制御部15は、プライマリ可動シーブ摺動機構55及びセカンダリ可動シーブ摺動機構65を制御し、プライマリシャフト51の回転数が最終目標回転数NINLINEとなるようにベルト式無段変速機110の変速比を変更する。
次に、ステップST114において機関制御部18は、セカンダリシャフト61のトルクが、ステップST103で基本目標回転数演算部12が求めた基本目標駆動力FORCEcとなるように内燃機関120の出力を制御する。具体的には、機関制御部18は、内燃機関120のインジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁を制御して内燃機関120から取り出される出力を制御する。
上記ステップST101からステップST114までが変速比制御装置11の制御手順における初回ターンになる。ステップST114まで終了すると、変速比制御装置11の制御手順はステップST102へ戻る。以下に変速比制御装置11の制御手順における2ターン目を説明する。なお、ステップST102からステップST108までの説明は、上記制御手順と同様のため省略する。
2ターン目のステップST109において過渡変速用目標回転数演算部13は、現在のカウンタTに1を加算する。この時、カウンタTには1ターン目で加算された1が残っているため、ステップST109でカウンタTは2になる。
次に、ステップST110において比較判定部17は、カウンタTが1であるか否かを判定する。この時、カウンタTは2であるため、比較判定部17によりカウンタTは1ではないと判定される(ステップST110、No)。なお、ステップST110で、カウンタTが1であると判定される(ステップST110、Yes)場合は、初回ターンのみである。
ステップST110で、カウンタTが1ではないと判定されると(ステップST110、No)、ステップST115において比較判定部17は、初回過渡変速用目標回転数NINtaと実入力回転数NINとの偏差が、所定値γよりも大きいか否かを判定する。所定値γは、初回過渡変速用目標回転数NINtaと実入力回転数NINとの偏差がその値以下であった場合、実入力回転数NINが初回過渡変速用目標回転数NINtaに追いついたと判断できる値である。つまり、初回過渡変速用目標回転数NINtaと実入力回転数NINとの偏差が、所定値γより大きい場合は、実入力回転数NINが初回過渡変速用目標回転数NINtaに追いついていないと比較判定部17は判定する。
ステップST115において、初回過渡変速用目標回転数NINtaと実入力回転数NINとの偏差が、所定値γより大きいと判定されると(ステップST115、Yes)、最終目標回転数設定部14は、最終目標回転数NINLINEに初回過渡変速用目標回転数NINtaを代入する。続いて、変速比制御部15はステップST113を実行し、機関制御部18はステップST114を実行する。
変速比制御装置11は、ステップST115において比較判定部17によって初回過渡変速用目標回転数NINtaと実入力回転数NINとの偏差が、所定値γ以下であると判定されるまで(ステップST115、NO)上記ステップST102からステップST114を繰り返し実行する。
次に、図11に示す領域AR03における変速比制御装置11の制御手順を説明する。図7に示すステップST115において、初回過渡変速用目標回転数NINtaと実入力回転数NINとの偏差が、所定値γ以下であると判定されると(ステップST115、NO)、ステップST116において過渡変速用目標回転数演算部13は、過渡変速用目標回転数NINtbを求める。なお、過渡変速用目標回転数NINtbは、過渡変速用目標回転数NINtの一部である。
過渡変速用目標回転数演算部13は、前回(前ターン)の最終目標回転数NINLINEに所定値δを加算することにより過渡変速用目標回転数NINtbを求める。つまり、図11の領域AR03に示す過渡変速用目標回転数NINtbは、単位時間あたり所定値δで増加する。
なお、所定値δが大きいほどプライマリシャフト51の実入力回転数はより早く増加する。ここで、プライマリシャフト51の実入力回転数がより早く増加すると、内燃機関120の機関回転数もより早く増加する。内燃機関120の機関回転数が増加すると、内燃機関120が発するエンジン音も増加する。よって、車両の運転者は、車両が加速するイメージを得ることができる。
次に、ステップST117において比較判定部17は、ステップST116で求めた過渡変速用目標回転数NINtbがステップST105で求めた基本目標回転数NINcよりも大きいか否かを判定する。図11の領域AR03に示す過渡変速用目標回転数NINtbは、基本目標回転数NINc以下である。よって、以下にステップST117において、比較判定部17が、過渡変速用目標回転数NINtbが基本目標回転数NINc以下であると判定した場合の変速比制御装置11の制御手順を説明する。
過渡変速用目標回転数NINtbが基本目標回転数NINc以下であると判定されると(ステップST117、No)、ステップST118において最終目標回転数設定部14は、最終目標回転数NINLINEに過渡変速用目標回転数NINtbを代入する。続いて、変速比制御部15はステップST113を実行し、機関制御部18はステップST114を実行する。
変速比制御装置11は、ステップST117において比較判定部17によって、過渡変速用目標回転数NINtbが基本目標回転数NINcよりも大きいと判定されるまで(ステップST117、Yes)上記ステップST102からステップST118までを繰り返し実行する。次に、図11の領域AR04に示す過渡変速用目標回転数NINtについて説明する。
図12は、各アクセル開度における車速と駆動力との関係を示すマップである。図12に示すマップm03において、横軸は車速を示し、縦軸は駆動力を示す。図7に示すステップST117において比較判定部17によって、過渡変速用目標回転数NINtbが基本目標回転数NINcよりも大きいと判定されると(ステップST117、Yes)、ステップST119において過渡変速用目標回転数演算部13は、図12に示すマップm03を用いて過渡変速用目標駆動力FORCEtを求める。
図12の細線はステップST103で基本目標回転数演算部12が求めた基本目標駆動力FORCEcを示す。また、図12の太線はステップST119で過渡変速用目標回転数演算部13が求める過渡変速用目標駆動力FORCEtを示す。
過渡変速用目標駆動力FORCEtは領域AR04内において基本目標駆動力FORCEcよりも大きく設定される。また、過渡変速用目標駆動力FORCEtの単位時間あたりの変化量は0か、もしくは所定値εで過渡変速用目標駆動力FORCEtは次第に低下する。ここで、本実施形態ではアクセル開度PAPに基づいて過渡変速用目標駆動力FORCEtの単位時間あたりの変化量を異ならせている。具体的には、アクセル開度PAPが大きいほど所定値εを相対的に小さく設定し、アクセル開度PAPが小さいほど所定値εを相対的に大きく設定する。例えば、アクセル開度PAPが100%の時は、過渡変速用目標駆動力FORCEtの単位時間あたりの変化量を0に設定する。つまり、過渡変速用目標駆動力FORCEtを一定に保つ。
なお、マップm03は、記憶部Emに格納されている。情報取得部16は、ECU10の記憶部Emからマップm03を取得する。次に、過渡変速用目標回転数演算部13は、情報取得部16が取得したマップm03に基づいて過渡変速用目標駆動力FORCEtを求める。なお、本実施形態では、過渡変速用目標回転数演算部13はマップm03を用いて過渡変速用目標駆動力FORCEtを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。過渡変速用目標回転数演算部13は、マップm01に相当する数式に基づいて過渡変速用目標駆動力FORCEtを求めてもよい。
次に、図7に示すステップST120において過渡変速用目標回転数演算部13は、過渡変速用目標出力POWERtを求める。過渡変速用目標回転数演算部13は、ステップST119で過渡変速用目標回転数演算部13が求めた過渡変速用目標駆動力FORCEtとステップST102で情報取得部16が取得した車速Cvとの乗算により過渡変速用目標出力POWERtを求める。
なお、本実施形態ではステップST120で用いた車速Cvは、ステップST102で求めた車速Cvを用いるが、本実施形態はこれに限定されない。ステップST120の直前に、車速センサD03から車速Cvを再度取得してもよい。次に、ステップST121において過渡変速用目標回転数演算部13は、過渡変速用目標回転数NINtcを求める。なお、過渡変速用目標回転数NINtcは過渡変速用目標回転数NINtの一部である。過渡変速用目標回転数NINtcの演算方法は、基本目標回転数NINcとほぼ同様である。つまり、図9と同様に、燃費最適線に基づく過渡変速用目標出力POWERtと過渡変速用目標回転数NINtcとの関係を記述したマップを用意し、そのマップに基づいて過渡変速用目標回転数演算部13が過渡変速用目標回転数NINtcを求める。
なお、本実施形態では、過渡変速用目標回転数演算部13は図9に示すマップm02と同様のマップを用いて過渡変速用目標回転数NINtcを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、過渡変速用目標回転数演算部13は、マップm02と同様のマップに相当する数式に基づいて過渡変速用目標回転数NINtcを求めてもよい。
次に、ステップST122において最終目標回転数設定部14は、最終目標回転数NINLINEに過渡変速用目標回転数NINtcを代入する。続いて、変速比制御部15はステップST113を実行し、機関制御部18はステップST114を実行する。変速比制御装置11は、ステップST106で比較判定部17によってアクセル開度PAPが所定値α以下と判定される(ステップST106、No)、またはステップST107で比較判定部17によってアクセル開度PAPが所定値β以下と判定される(ステップST107、No)まで、上記ステップST102からステップST122までを繰り返し実行する。
ステップST106で比較判定部17によってアクセル開度PAPが所定値α以下と判定される(ステップST106、No)、つまり加速要求なしと判定されると、ステップST123において最終目標回転数設定部14は、最終目標回転数NINLINEに基本目標回転数NINcを代入する。
続いて、変速比制御部15はステップST113を実行し、機関制御部18はステップST114を実行して変速比制御装置11の制御手順を終了する。また、ステップST107で比較判定部17によってアクセル開度PAPが所定値β以下と判定されると(ステップST107、No)、つまり過渡変速要求なしと判定されると、ステップST123において最終目標回転数設定部14は、最終目標回転数NINLINEに基本目標回転数NINcを代入する。続いて、変速比制御部15はステップST113を実行し、機関制御部18はステップST114を実行して変速比制御装置11の制御手順を終了する。
図13は、本実施形態に係る内燃機関の動作特性を示す図である。上記のように構成した変速比制御装置11によって制御されるベルト式無段変速機110を備える車両100の内燃機関120の動作特性を、図13を用いて説明する。図13において、横軸は機関回転数を示し、縦軸は機関トルクを示す。また、本実施形態に係る内燃機関120の動作特性を太い実線矢印で示す。なお、図13中のO点は、図11及び図12中のO点と対応する。また、図13中のA点は、図11及び図12中のA点と対応する。
図13のO点で図11に示すようにアクセル開度PAPが所定値βを超える。ここで、図12に示すように、内燃機関120の目標駆動力は比較的高く設定されている。よって、図13に示すように内燃機関120の機関トルクは、まず燃費最適線を外れWOTでのトルクに達するまで上昇する。次に、内燃機関120の機関トルクはWOT線に沿うと共に、内燃機関120の機関回転数が増加する。なお、上記した内燃機関120の動作特性は、図11に示す領域AR02内での内燃機関120の動作特性である。
この時、内燃機関120は、WOTでのトルクを目標としている。よって、内燃機関120を搭載する車両は加速する。これにより車両を運転する運転者は、車両から加速感を得ることができる。
次に、プライマリシャフト51の実入力回転数NINが、図11に示す領域AR03に達すると、内燃機関120の機関トルクは、WOT線から次第に低下しはじめ、燃費最適線に接近する。つまり、内燃機関120の機関トルクは図13のA点に至る。
この時、内燃機関120の機関トルクは、燃費最適線でのトルクに次第に接近する。これにより、内燃機関120の単位燃料量で走行できる距離の低下が抑制できる。また、図11に示すように、プライマリシャフト51の回転数は所定勾配で増加する。つまり、内燃機関120の機関回転数が増加する。内燃機関120の機関回転数の増加にともなって、内燃機関120が発するエンジン音も増加する。これにより、車両100の運転者は、車両100が加速するイメージを得ることができる。よって、車両100の加速中に運転者が加速感を得られると共に、車両100の単位燃料量で走行できる距離の低下を抑制できる。
次に、プライマリシャフト51の実入力回転数NINが、図11に示す領域AR04に達すると、内燃機関120の機関トルクは図13に示すように燃費最適線に沿うと共に、内燃機関120の機関回転数が増加する。
ここで、領域AR04では、本実施形態に係る変速比制御装置11は、燃費最適線に基づいて過渡変速用目標回転数NINtcを求めている。よって、内燃機関120の単位燃料量で走行できる距離の低下がさらに抑制できる。また、この時、図11に示すように、プライマリシャフト51の回転数は増加する。つまり、内燃機関120の機関回転数が増加する。内燃機関120の機関回転数が増加すると、内燃機関120が発するエンジン音も増加する。これにより、車両100の運転者は、を、車両100が加速するイメージを得ることができる。
以上、本実施形態に係る変速比制御装置11は、車両100に対して急激な加速の要求である過渡変速要求がある場合に内燃機関120からの回転が入力されるプライマリシャフト51の回転速度の候補としての過渡変速用目標回転数NINtを求める過渡変速用目標回転数演算部13と、車両100に対して急激な加速の要求がある場合におけるプライマリシャフト51の回転速度を過渡変速用目標回転数NINtになるようにプライマリシャフト51の回転速度とプライマリシャフト51からの回転が伝達されるセカンダリシャフト61の回転速度との比である変速比を制御する変速比制御部15と、を備え、過渡変速用目標回転数演算部13は、過渡変速用目標回転数NINtが車両100が目標とする出力を最小燃費で実現する基本目標回転数NINcよりも大きい場合に、車両100が目標とする出力と燃費最適線とに基づいて過渡変速用目標回転数NINtを求める。
また、本実施形態に係る変速比制御装置11の過渡変速用目標回転数演算部13は、過渡変速要求が判定されると、まず過渡変速用目標回転数NINtをステップ的に増加させ、過渡変速用目標回転数NINtとプライマリシャフト51の実際の回転速度である実入力回転数NINとの差が所定値以下に達すると、単位時間あたりに所定の変化量で過渡変速用目標回転数NINtを増加させる。
上記構成により、図11に示す領域AR02では、高い目標駆動力と高い目標回転数とが設定されるので、車両100の運転者は車両100から強い加速感を得ることができる。また、領域AR02では、プライマリシャフト51の目標回転数が所定勾配で増加するので、車両100の加速中における運転者の違和感を抑制できる。また、領域AR04では、図12に示すように、過渡変速用目標駆動力FORCEtの単位時間あたりの低下量が基本目標駆動力FORCEcの単位時間あたりの低下量よりも小さく設定される。さらに、領域AR04における過渡変速用目標回転数NINtcは、燃費最適線に基づいて求められる。よって、車両100の運転者は車両100から加速感を得ると共に、車両100の単位燃料量で走行できる距離の低下を抑制できる。