JP2009170704A - フェライト焼結体および磁性体アンテナ - Google Patents

フェライト焼結体および磁性体アンテナ Download PDF

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Abstract

【課題】焼結温度が変動した場合でも透磁率のばらつきが小さく、高透磁率および低損失のフェライト焼結体を提供する。さらに、高周波帯域、広帯域での使用に好適な、小型の磁性体アンテナを提供する。
【解決手段】AFe1222(A:BaおよびSr、M:CoおよびZn)で表されるY型フェライトを主相とし、500MHzにおける初透磁率が4以上であるとともに、前記フェライト焼結体の断面観察において、主相であるY型フェライトよりもBaおよびSrの比率が高いBa−Srリッチ相の面積率が1%未満であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、Y型フェライトを主相とするフェライト焼結体に関する。さらに通信機能を備えた電子機器、特に携帯電話、携帯端末装置などの通信機器に用いる磁性体アンテナに関する。
携帯電話や無線LAN等の通信機器はその使用周波数帯域は数百MHzから数GHzに及び、広帯域かつ高効率で動作することが求められている。したがって、それに使用されるアンテナも当該帯域で高利得で機能することを前提としたうえで、その使用形態から特に小型かつ低背であることが要求される。さらに、近年開始された地上デジタル放送では、全チャンネルに対応する場合、使用するアンテナとして例えば日本国内のテレビ放送帯域における470MHz〜770MHzといった広い周波数帯域をカバーする必要がある。また、デジタル放送としては例えば韓国では180MHz〜210MHz帯、欧州では470MHz〜890MHz帯を使用する。したがって、これら180MHz以上の周波数帯域で使用可能で、かつ携帯端末等の通信機器に搭載可能な小型のアンテナが望まれる。また、アンテナに限らず、パーソナルコンピュータや携帯端末等の電子機器における信号伝送速度の高速化や駆動周波数の高周波化も進んでおり、使用される各種インダクタンス素子も高周波に対応したものであることが必要とされている。
従来、移動体通信用に適した小型のアンテナとして、誘電体セラミックスを用いたチップアンテナが供されてきた(例えば特許文献1)。周波数を一定とすれば、より誘電率の高い誘電体を用いることにより、チップアンテナの小型化を図ることができる。特許文献1では、ミアンダ電極を設けることで波長短縮を図っている。小型・低背化を可能とする上記誘電体チップアンテナであっても、ヘリカル型放射電極の場合など、巻線数が多くなると線間容量が増加し、Q値が高くなる。その結果帯域幅が狭くなってしまい、広帯域幅が要求される地上波デジタル放送等の用途には適用するのが困難となる。これに対して、誘電体の代わりに磁性体を用いることで、巻線数の増加を回避し、誘電体を用いる場合に比べて帯域幅を広く取れる可能性がある。比誘電率εrの他、比透磁率μrの大きい磁性体を用いて、波長短縮することにより小型化を図ったアンテナも提案されている(特許文献2)。
アンテナやインダクタンス素子に磁性体を用いる場合、例えばNi−Zn系フェライト等のスピネル系フェライトでは、いわゆるスネークの限界があり、高周波領域で用いるには限界があった。これに対して、六方晶系フェライトはc軸に対して垂直な面内に磁化容易方向を持つため、スピネル系フェライトの周波数限界(スネークの限界)を超えた周波数帯まで所定の透磁率を維持することから、特許文献2ではアンテナ用の磁性体として六方晶Y型フェライトが用いられている。特許文献2では、低損失のY型フェライトを用いることによって高利得、広帯域のアンテナを提供している。
特開平10−145123号公報 国際公開第2006/064839号パンフレット
携帯機器に用いる場合など、磁性体アンテナをいっそう小型化する必要がある場合、Y型フェライトの初透磁率が大きいことが好ましい。これに対して、BaCoFe1222の組成のY型フェライトをベースとする場合では、低損失係数を維持しようとすると透磁率は3程度あり、逆に透磁率を上げようとすると損失係数が増加してしまい、低損失と高透磁率を両立することは困難であった。また、焼結体密度が変動すると透磁率も大きく変動するため、製造条件、特に焼結温度のばらつきに起因して透磁率のばらつきが大きくなるという問題もあった。
そこで本発明では、透磁率のばらつきが小さく、高透磁率および低損失のフェライト焼結体を提供し、高周波帯域、広帯域での使用に好適な、小型の磁性体アンテナを提供することを目的とする。
本発明のフェライト焼結体は、AFe1222(A:BaおよびSr、M:CoおよびZn)で表されるY型フェライトを主相とし、500MHzにおける初透磁率が4以上であるとともに、前記フェライト焼結体の断面観察において、主相であるY型フェライトよりもBaおよびSrの比率が高いBa−Srリッチ相の面積率が1%未満であることを特徴とする。代表的なY型フェライトであるCoZはBaCoFe1222の組成式で表せるのに対して、AとしてBaおよびSrをともに含み、MとしてCoおよびZnをともに含む、すなわちSrおよびZnを複合的に含有することで、焼結温度が変動した場合でも透磁率のばらつきを抑え、安定した高透磁率、および低損失係数を有するフェライト焼結体を提供できる。さらに、かかる構成では主相であるY型フェライトよりもBaおよびSrの比率が高いBa−Srリッチ相(以下単にBa−Srリッチ相ともいう)が生成しやすいが、かかるBa−Srリッチ相を低減することによって損失係数の低減を図ることができる。なお、Ba−Srリッチ相の面積率は、フェライト焼結体の断面を鏡面研磨し、該断面の5000倍の走査電子顕微鏡(SEM)像において、一定の観察面積におけるBa−Srリッチ相の面積を読み取り算出する。
また、前記フェライト焼結体において、焼結体密度が5.0×10kg/m以下であることが好ましい。SrおよびZnを複合的に含有する本発明に係るフェライト焼結体は、焼結体密度を小さくすることによって、初透磁率の低下を抑えながら、損失係数tanδの低減を図ることができる。焼結体密度を5.0×10kg/m以下とすることで、ほぼ理論密度と言える5.2×10kg/mの焼結体密度の場合に対して0.02以上損失係数を低減することが可能となる。より好ましくは焼結体密度は4.8×10kg/m以下である。
さらに、前記フェライト焼結体において、500MHzにおける損失係数が0.05以下であることが好ましい。かかる構成によればフェライト焼結体を磁性体アンテナに用いた場合、高いアンテナ利得を得ることができる。より好ましくは損失係数は0.04以下である。
本発明の磁性体アンテナは、上記いずれかのフェライト焼結体を用いたことを特徴とする。上記フェライト焼結体は高透磁率と低損失係数を併せ持つため、該フェライト焼結体を用いることで小型で高利得の磁性体アンテナを提供することができる。
さらに、前記磁性体アンテナにおいて、前記フェライト焼結体に導体が挿入されるとともに、前記フェライト焼結体の表面には樹脂被覆が形成されていることが好ましい。セラミックスであるフェライト焼結体に樹脂被覆を形成することで、焼結体を補強し、カケ等を防止することが可能であり、特に磁性体アンテナを携帯機器などの筐体外に設置する場合に好適である。かかる構成は焼結体密度を低く抑えたフェライト焼結体を用いる場合に、より好適である。
本発明によれば、焼結温度が変動した場合でも透磁率のばらつきが小さく、高透磁率および低損失のフェライト焼結体を提供することができる。さらに、本発明によれば、高周波帯域、広帯域での使用に好適な、小型の磁性体アンテナを提供することができる。
以下、本発明について具体的な実施形態を示しつつ説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、以下磁性体アンテナ用のフェライト焼結体を例に説明するが、本発明に係るフェライト焼結体は、磁性体アンテナ以外にも用いることができる。
本発明に係るフェライト焼結体は、Y型フェライトを主相とする。Y型フェライトとは、代表的には例えばBa、Co、FeおよびOを主成分とし、BaCoFe1222の化学式で表される六方晶系のソフトフェライトである。本発明に係るフェライト焼結体では、AFe1222(A:BaおよびSr、M:CoおよびZn)で表されるY型フェライトを主相とし、Ba、Sr、Co、Zn、FeおよびOを含有する。すなわちBaの一部は、Srで置換し、Coの一部はZnで置換する。Coの一部をZnで置換することによって、初透磁率の向上を図ることができるが、Zn単独での置換では同時に損失係数が大きくなってしまう。この場合、焼結体密度を制御しても初透磁率と損失係数とはトレードオフの関係にあり、高透磁率、低損失係数を両立することが困難である。これに対してZnとSrを複合で置換することによって、透磁率と損失係数との関係が単純なトレードオフの関係から変化する。具体的には、焼結体密度が変化しても初透磁率は顕著に変化しない。すなわち焼結体密度の変動に対する初透磁率のばらつきが抑えられるので、製造安定性に優れる。その一方で焼結体密度を低下させることで損失係数を低減できるため、初透磁率の低下を抑制しつつ、損失係数を低減することができる。
本発明のフェライト焼結体において、初透磁率はBaCoFe1222系では達成困難な4以上を確保する。これによって磁性体アンテナの小型化を図ることができる。なお、初透磁率は数百MHz帯を使用する地上デジタル放送を想定して500MHzでの値を用いている。以下、特に断りのない限り初透磁率および損失係数は500MHzでの値を用いる。上述のようにZnとSrを複合で置換することによって、Zn単独置換等の場合と異なり、初透磁率の低下を抑制しつつ、損失係数を低減することが可能になる。しかし、ZnとSrを複合で置換する場合には、Ba−Srが生成しやすい。このようにBa−Srリッチ相が生成すると、損失係数が増加してしまうため、低損失係数を得るためにはBa−Srリッチ相の面積率は1%未満であることが好ましい。Ba−Srリッチ相の面積率は、フェライト焼結体の断面を鏡面研磨し、該断面の5000倍の走査電子顕微鏡(SEM)像において、一定の観察面積におけるBa−Srリッチ相の面積を読み取り、観察面積に対する比として算出する。
構成元素の比率は、AFe1222(A:BaおよびSr、M:CoおよびZn)で表されるY型フェライトを主相とし、500MHzで4以上の初透磁率が得られるものであればよい。例えば4以上の初透磁率を確保し、0.06以下の損失係数を得る観点からは、フェライト焼結体の組成は、酸化物換算でBaOは10〜14mol%、SrOは6〜10mol%、CoOは12〜14mol%、ZnOは6〜8mol%、残部Feであることが好ましい。Y型フェライトは1GHz以上の高周波帯域まで透磁率を維持するため、数百MHzの帯域において使用されるアンテナに好適である。本発明の六方晶フェライトはY型単相であることが好ましいが、主相以外にZ型、W型など他の六方晶フェライトやCoスピネルなどの異相が生成する場合がある。したがって、本発明ではY型フェライトを主相とするが、これらの異相を含むことも許容する。フェライト焼結体全体の組成においては、(Ba、Sr)、(Co、Zn)およびFeは化学量論比から外れていても良いが、Coスピネル等の異相を低減するためには、フェライト焼結体全体において化学量論比(Ba、Sr)(Co、Zn)Fe1222を満たすことがより好ましい。なお、Y型フェライトを主相とするとは、粉末X線回折パターンにおける最大ピークがY型フェライト相のピークであることを意味する。なお、本発明に係るフェライト焼結体では、Coの一部をNi、Cu等の別の元素でさらに置換する、すなわちMとしてさらに別の元素を含むことも可能であるが、その場合低損失係数を維持する観点からはそれらは1.5mol%以下であることが好ましい。また、本発明に係るフェライト焼結体には、Li、Mn、Si等の他の元素やP、S、B、Naなどの不可避不純物も含有することができる。例えばLiをLiCO等の形態で副成分として添加することで、焼結体密度を制御することができる。この場合も低損失係数を維持するためには添加量は酸化物換算または炭酸物換算で1.0重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5重量部以下である。さらには、不純物としての含有を除き、実質的にCuは含まないことがより好ましい。
上述のように、ZnとSrを複合で置換することによって、透磁率と損失係数との関係が単純なトレードオフの関係から変化する。焼結体密度が変化しても初透磁率は顕著に変化しない。そこで焼結体密度を低下させることで初透磁率の低下を抑制しつつ、損失係数を低減することができる。焼結体密度を5.0×10kg/m以下とすることで、ほぼ理論密度と言える5.2×10kg/mの焼結体密度の場合に対して0.02以上損失係数を低減することが可能となり、例えば0.06以下の損失係数を得るうえで有利である。さらに焼結体密度を4.8×10kg/m以下とすると0.05以下の損失係数を得ることも可能となり、磁性体アンテナの利得の向上に寄与する。また、焼結体密度が低すぎると強度が低下するので焼結体密度は4.6×10kg/m以上が好ましい。
磁性体アンテナを構成する場合、アンテナの小型化・広帯域化のためには、透磁率が高いことが好ましいが、高利得等、アンテナとして十分な性能を発揮するためには、特に損失係数が小さいことが必要である。かかる観点からは、地上デジタル放送のように数百MHz以上の高周波で使用するアンテナの場合、500MHzでの損失係数は0.05以下が好ましい。より好ましくは500MHzにおいて損失係数は0.04以下である。
本発明のフェライト焼結体は、従来からソフトフェライトの製造に適用されている粉末冶金的手法で製造することができる。目的とする割合となるように秤量されたBaCO、SrCO、Co、Feなどの主成分を構成する素原料および副成分を構成する微量成分を混合する。混合方法は、特に限定するものではないが、例えばボールミル等を用いて、純水を媒体として湿式混合(例えば4〜20時間)する。得られた混合紛を電気炉、ロータリーキルンなどを用いて所定の温度で仮焼することにより仮焼粉を得る。仮焼温度、保持時間は、それぞれ900〜1300℃、1〜3時間が好ましい。仮焼温度、保持時間がそれらを下回ると反応の進行が十分でなく、逆にそれらを上回ると粉砕効率が落ちる。仮焼雰囲気は、大気中または酸素中などの酸素存在下であることが好ましい。得られた仮焼粉はアトライタ、ボールミルなどを用いて湿式粉砕し、PVAなどのバインダーを添加した後、スプレイドライヤ等によって造粒することにより造粒紛を得る。粉砕粉の平均粒径は0.5〜5μmが好ましい。得られた造粒粉をプレス機により成形してから、電気炉などを用いて例えば1100℃〜1300℃の温度にて酸素存在下の雰囲気中で1〜5時間焼成を行いフェライト焼結体を得る。1100℃未満であると焼結が十分に進行せず高い焼結体密度が得られず、1300℃を超えると粗大粒が発生するなど過焼結となる。また、焼結は、これが短いと焼結が十分進行せず、逆に長いと過焼結となりやすいので1〜5時間とすることが望ましい。なお、成形は上記圧縮成形の他、押出し成形を用いても良い。押出し成形は例えば以下のようにして行なう。仮焼、粉砕後の原料を、バインダー、可塑剤、潤滑剤、水と混合する。得られた混合物を、スクリューによって押出す。混合物は押出し方向に縮径したキャビティを持つ金型によって所定の形状に成形される。押出された成形体は乾燥後切断して所定の長さに切断される。得られた焼結体は、必要に応じて切断等の加工を施す。
ここで、焼成は良好な磁気特性を得るためには酸素存在下で行うことが好ましく、かかる観点からは酸素中で行うことが好ましい。上述のBa−Srリッチ相は、焼成時の酸素濃度が低いと生成しやすいからである。Ba−Srリッチ相の面積率が1%未満のフェライト焼結体はこのような酸素中焼成において得ることができる。また、フェライト焼結体の密度は、例えば焼成温度によって制御することができる。例えば焼結温度を1160℃以下とすれば5.0×10kg/m以下の焼結体密度を、焼結温度を1150℃以下とすれば4.8×10kg/m以下の焼結体密度を得ることが可能である。したがって、Y型フェライトを主相とし、初透磁率が4以上になるようなBaO、SrO、CoO、ZnOおよびFeの比率で素原料を混合する混合粉を得る混合工程と、該混合粉を仮焼して仮焼粉を得る仮焼工程と、該仮焼粉を粉砕して粉砕粉を得る粉砕工程と、該粉砕粉を成形して成形体を得る成形工程と、該成形体を焼成して焼結体を得る焼成工程とを有する、Y型フェライトを主相とするフェライト焼結体の製造方法において、該焼成工程における焼成温度を1160℃以下にすると、高透磁率と低損失係数を併せ持ったフェライト焼結体を得ることができる。
本発明に係るフェライト焼結体は、アンテナ用として好適なものである。なお、本発明に係るフェライト焼結体は、アンテナに限らず、インダクタや通信用トランス等高周波用途のインダクタンス素子にも好適である。前記アンテナはフェライト焼結体を用いた磁性体アンテナであるが、その構造は特に問わない。例えば、直方体状または円柱状のフェライト焼結体を用いたチップアンテナでもよいし、平板状のフェライト焼結体を用いたマイクロストリップアンテナ等でもよい。但し、携帯電話などの携帯機器に用いる場合は、実装面積が限られているため、実装面積の小さいアンテナに適用することが好ましい。その寸法は使用条件によって決めればよい。例えば携帯機器用には、長手方向の長さが50mm以下、より小型のものとしては30mm以下のものを用いればよい。また、本発明に係るフェライト焼結体は、470〜770MHz等の周波数帯域を使用する地上デジタル放送のアンテナに好適である。そこで該アンテナを例にとって、本発明に係る磁性体アンテナについて説明する。磁性基体の形状は、特に限定するものではない。安定な実装を実現する上では直方体の形状が好ましい。
上記フェライト焼結体を用いて磁性体アンテナを構成することによって、アンテナの広帯域化を図ることができる。広帯域化のためにはアンテナのQ値を下げることが必要となるが、Q値はインダクタンスをL、容量をCとすると(C/L)1/2で表されるため、Lを上げる一方、Cを下げる必要がある。基体として誘電体を用いた場合、インダクタンスLを上げるためには巻き線数を増やす必要があるが、巻線数の増加は線間容量の増加を招くため、アンテナのQ値を効果的に下げることができない。これに対して、磁性体を用いた場合は、巻線数の増加によらず透磁率でインダクタンスLを上げることができるため、巻線数の増加による線間容量の増加を回避して、Q値を下げることができ、アンテナの広帯域化を図ることができる。磁性体アンテナはフェライト焼結体の磁性基体と該磁性基体に巻回された巻線でヘリカルアンテナを構成してもよいし、図1に示すように、フェライト焼結体で構成された磁性基体1を線状の導体2が貫通する構成としても良い。該アンテナは基板に実装して用いることができる。図1の(a)は斜視図、(b)は長手方向に沿って導体を含んだ断面図、(c)は長手方向に垂直な方向での断面図である。線状の導体がフェライト焼結体からなる磁性基体に挿入されて、磁性基体の長手方向に沿って前記磁性基体を貫通している。該構成は、放射導体として機能する直線状の導体が一本貫通している構造なので、該導体は基体内部で実質的に対向する部分を持たないので、容量成分の低減、アンテナの広帯域化に特に有効なのである。図1の構成では、前記導体の両端、すなわち導体の一端3と他端4が磁性基体1から突出している。前記導体の一端3は開放端を構成し、他端4は給電回路等の制御回路(図示せず)に接続されて、アンテナ装置が構成される。なお、複数の磁性体アンテナを直列に接続して用いてもよいし、磁性体アンテナに金属体を接続してさらにアンテナ機能を付加してもよい。なお、図1に示す構成の磁性体アンテナの貫通孔を有する磁性基体は、焼結体に機械加工で貫通孔を形成する方法、圧縮成形法または押出し成形法により貫通孔を有する成形体を成形し、焼結する方法、などによって作製すればよい。
また、磁性体アンテナを筐体外で用いる場合などのように、大きな衝撃が加わる可能性がある場合、アンテナの強度を補強する必要がある場合など、磁性基体を構成するフェライト焼結体の表面に樹脂被覆を形成してもよい。特に焼結体密度を5.0×10kg/m以下、さらには4.8×10kg/m以下として低損失化を図る場合に、焼結体密度の低下による焼結体強度の低下を補うことができる。さらに、前記のように焼結体密度を抑えた焼結体は多くの空孔を有するため、被覆である樹脂の密着性向上にも有利である。また、フェライト焼結体からなる磁性基体に導体が挿入された構造では、導体と表面に形成された樹脂が離間するため、誘電率を持つ樹脂の影響も受けにくく、磁性体アンテナ全体として優れた構成が実現される。
前記フェライト焼結体を用いた磁性体アンテナは、通信機器に用いられる。例えば、前記アンテナおよびアンテナ装置は、携帯電話、無線LAN、パーソナルコンピュータ、地上デジタル放送関連機器等の通信機器に用いることができ、これらの機器を用いた通信における広帯域化に寄与する。地上デジタル放送は使用周波数帯域が広いため、本発明に係るアンテナ装置を用いた通信機器は、該用途に好適である。特に、本発明のアンテナ装置を用いることで、実装面積、実装空間の増加を抑えることができるので、地上デジタル放送を送受信する携帯電話、携帯端末等に好適である。
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
主成分であるFe、BaO(BaCOを使用)、SrO(SrCOを使用)、CoO(Coを使用)、ZnOを60mol%、15mol%、5mol%、10mol%、10mol%のモル比となるように秤量し、この主成分100重量部に対してLiCOを0.5重量部添加し、水を媒体として湿式ボールミルにて16時間混合した。
次に、この混合粉を乾燥後、大気中1000℃で2時間、仮焼した。この仮焼粉を、水を媒体とした湿式ボールミルにて18時間粉砕した。得られた粉砕粉にバインダー(PVA)を1%添加し、造粒した。造粒後リング状および直方体状に圧縮成形し、その後酸素濃度を変えた雰囲気中1180℃で3時間焼結し、焼結体を得た。得られた外径7.0mm、内径3.5mm、高さ3.0mmのリング状焼結体の焼結体密度と25℃、500MHzの初透磁率μおよび損失係数tanδを測定した。なお、密度測定は、水中置換法により測定し、初透磁率μおよび損失係数tanδは、インピーダンス・ゲインフェイズ・アナライザー(Hewlett・Packard社製4291B)を用いて測定した。また、焼結体の破面を鏡面研磨し、該断面を走査電子顕微鏡(SEM)で5000倍で観察した。これらの結果を表1および図2に示す。
上記焼結体についてX線回折を行った結果、メインピーク強度が最も大きい構成相はY型フェライトであり、Y型フェライトが主相であった。図2の(c)の相11、12および13のEDX(エネルギー分散型X線分光器)による元素分析を表2に示すが、相11はY型フェライト相、相12はスピネルフェライト相であることがわかった。図2の写真において白っぽく見える相13はY型フェライト相に比べて大幅にBaとSrがリッチなBa−Srリッチ相であった。該Ba−Srリッチ相ほぼ(Ba、Sr)Feの比率を有することがわかる。なお、焼成雰囲気の酸素濃度が異なる他のフェライト焼結体についても各相の組成はほぼ同じであった。図2に示すように、焼成雰囲気の酸素濃度が10%、20%、50%であった焼結体は、面積率にして1%以上のBa−Srリッチ相が生成しているのに対して、酸素濃度が100%であった焼結体ではBa−Srリッチ相は確認できず、面積率は1%未満であった。これらの焼結体はいずれも6以上の高い初透磁率を示すものの、焼成雰囲気の酸素濃度が10〜50%と低く、Ba−Srリッチ相が生成しているフェライト焼結体では、損失係数は0.1を超えている。これに対して、酸素濃度が100%であったフェライト焼結体では、損失係数は0.07と大幅に低減された。
(実施例2)
次に、主成分であるFe、BaO(BaCOを使用)、SrO(SrCOを使用)、CoO(Coを使用)、ZnOを60mol%、12mol%、8mol%、12mol%、8mol%のモル比となるように秤量し、この主成分100重量部に対してLiCOを0.5重量部添加し、実施例1と同様にして成形体を作製した。得られた成形体は100%の酸素雰囲気中で焼成温度を1150〜1200℃まで変えて焼成し、焼結体を得た。得られた外径7.0mm、内径3.5mm、高さ3.0mmのリング状焼結体の焼結体密度と25℃、500MHzの初透磁率μおよび損失係数tanδを実施例1と同様にして測定した。結果を表3に示す。また、比較のためにSrOを含有せず、Fe、BaO、CoO、ZnOをそれぞれ60mol%、20mol%、12mol%、8mol%のモル比となるように秤量して、焼成温度を1180〜1200℃まで変えて焼結体を作製した。これのフェライト焼結体の評価結果を表3に示す。
表3に示すフェライト焼結体はいずれもY型フェライトが主相であり、Ba−Srリッチ相は確認できず、面積率は1%未満であった。表2から明らかなようにZnだけを置換したNo9〜11のフェライト焼結体では焼結体密度の低下とともに損失係数が低下するが、初透磁率も低下してしまうことがわかる。これに対してSrとZnを複合で置換したNo5〜8のフェライト焼結体では焼成温度を変えて焼結体密度を変化させても初透磁率はほとんど変化しないという特異な挙動を示している。一方損失係数は焼結体密度が減少するにしたがって低下しており、焼結体密度の減少によって初透磁率を維持しつつ、損失係数を小さくできることがわかる。焼結体密度が4.8×10kg/m以下では4.7以上の初透磁率と0.03以下の損失係数も実現されている。
(実施例3)
次に、主成分であるFe、を60mol%、それ以外のBaO(BaCOを使用)、SrO(SrCOを使用)、CoO(Coを使用)、ZnOを表4に示すモル比となるように秤量し、この主成分100重量部に対してLiCOを0.5重量部添加し、実施例1と同様にして成形体を作製した。得られた成形体は100%の酸素雰囲気中で焼成温度を1180〜1200℃まで変えて焼成し、焼結体を得た。得られた外径7.0mm、内径3.5mm、高さ3.0mmのリング状焼結体の焼結体密度と25℃、500MHzの初透磁率μおよび損失係数tanδを実施例1と同様にして測定した。結果を表4に示す。
6〜10mol%のSrと8mol%のZnを複合で置換して焼成温度を1180〜1200℃の間で変えて焼成したNo12〜14およびNo15〜17のフェライト焼結体では、焼結体密度を変化させても初透磁率はほとんど変化しない。その一方で焼結体密度が減少すると損失係数が低下しており、実施例2の場合と同様の挙動を示しており、本発明に係るフェライト焼結体が焼成温度の変動に対して透磁率の変動が小さく、製造安定性に優れることがわかる。また、Srと複合でZnを6〜8mol%置換したNo14、19、20のフェライト焼結体でも優れた磁気特性を発揮していることがわかる。
(実施例4)
上記No6のフェライト焼結体を用いて図1に示す磁性体アンテナを以下のように作製した。焼結体から機械加工により、断面中央に径0.6mmの貫通孔を形成した40×3×3mmの直方体の磁性部材を得た。該貫通孔に径0.5mmの銅線を挿入して磁性体アンテナを構成した。給電電極を形成した基板の端部に前記磁性体アンテナを実装し、ネットワークアナライザを用いたアンテナ利得評価装置に接続して、アンテナ特性(アンテナ利得)を評価した。470kHz〜770kHzの周波数帯域で平均利得は−7dB以上を示し、広帯域で高利得の磁性体アンテナが得られた。
本発明に係る磁性体アンテナの実施形態を示す図である。 本発明に係るフェライト焼結体の断面のSEM観察像である。
符号の説明
1:磁性基体 2:導体 3:導体の一端 4:導体の他端
11〜13:相

Claims (5)

  1. Fe1222(A:BaおよびSr、M:CoおよびZn)で表されるY型フェライトを主相とし、
    500MHzにおける初透磁率が4以上であるとともに、
    前記フェライト焼結体の断面観察において、主相であるY型フェライトよりもBaおよびSrの比率が高いBa−Srリッチ相の面積率が1%未満であることを特徴とするフェライト焼結体。
  2. 焼結体密度が5.0×10kg/m以下であることを特徴とする請求項1に記載のフェライト焼結体。
  3. 500MHzにおける損失係数が0.05以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト焼結体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のフェライト焼結体を用いた磁性体アンテナ。
  5. 前記フェライト焼結体には導体が挿入されるとともに、前記フェライト焼結体の表面には樹脂被覆が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の磁性体アンテナ。
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