JP2009158549A - 立体回路基板用窒化アルミニウム系基材、その製造方法、及び立体回路基板 - Google Patents

立体回路基板用窒化アルミニウム系基材、その製造方法、及び立体回路基板 Download PDF

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Abstract

【課題】スパッタリングで形成した金属膜からなる電気回路が形成された立体回路基板において特に問題となる、基材表層のアルミナ層と窒化アルミニウム層との剥離の発生を抑制できる表層のアルミナ層と窒化アルミニウム層とが高い密着性を有する窒化アルミニウム系基材、その製造方法、及び立体回路基板を提供することを目的とする。
【解決手段】スパッタリング、レーザーエッチング、及びめっきプロセスを経て電気回路が形成される立体回路基板用窒化アルミニウム系基材であって、エルビウム又はその酸化物を含有し、表層部に1μm以上の厚みのアルミナ層が形成されていることを特徴とする立体回路基板用窒化アルミニウム系基材を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、表層にアルミナ層を有する立体回路基板用窒化アルミニウム系基材、その製造方法、及び立体回路基板に関する。
高い放熱性と高い電気絶縁性とを備えている窒化アルミニウム系基材は、発光ダイオード(LED)等を実装する立体回路基板等に好ましく用いられる。
窒化アルミニウム系基材には、空気中の水と反応することによりアンモニアを生成して特性劣化を引き起こすという問題がある。このような窒化アルミニウムと空気中の水との接触による特性劣化を抑制するために、窒化アルミニウム系基材表面に酸化膜等の皮膜を形成させる方法が知られている。
具体的には、下記特許文献1には、焼結体上に形成した金属膜と焼結体との密着性を高めることを目的として、窒化アルミニウムを主体とし、少なくともその表面にTi、V、Nb、Mo、W、Co及びNiの単体あるいはこれらの炭化物、窒化物、硼化物、酸化物から選ばれる1種以上を含有する焼結体を酸化熱処理して厚さ0.05〜5μmのアルミナ層を形成する方法が開示されている。
表層にアルミナ層が形成された立体回路基板用窒化アルミニウム系基材表面に金属膜からなる電気回路を形成して、立体回路基板を形成する場合、得られた立体回路基板の信頼性を高めるために、基材に対する電気回路の密着性が非常に重要になる。下記特許文献1に記載の技術によれば、確かに、金属膜からなる電気回路とアルミナ層との密着性は、高くなる。しかしながら、金属膜とアルミナ層との密着性が高くなった場合、特に、基材表層のアルミナ層と金属膜との密着性が比較的高い、スパッタリングで金属膜を形成した場合には、アルミナ層と窒化アルミニウム層との界面で電気回路が剥離するという現象が発生する。したがって、金属膜とアルミナ層との密着性を高めたとしても、アルミナ層と窒化アルミニウム層との界面の密着性を高めなければ、電気回路の密着性を充分に高めて、電気回路の剥離を充分に抑制することができなかった。
特開平3−228885号公報
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、スパッタリングで形成した金属膜からなる電気回路が形成された立体回路基板において特に問題となる、基材表層のアルミナ層と窒化アルミニウム層との剥離の発生を抑制できる、アルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性が高い窒化アルミニウム系基材、その製造方法、及び立体回路基板を提供することを目的とする。
本発明の立体回路基板用窒化アルミニウム系基材は、スパッタリング、レーザーエッチング、及びめっきプロセスを経て電気回路が形成される立体回路基板用窒化アルミニウム系基材であって、エルビウム又はその酸化物を含有し、表層部に1μm以上の厚みのアルミナ層が形成されていることを特徴とする。
スパッタリング、レーザーエッチング、及びめっきプロセスを経て、窒化アルミウム系基材表面に形成された電気回路は、基材表層のアルミナ層に対して、比較的高い密着性を示すので、電気回路の剥離を抑制するためには、アルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性が重要になる。
上記構成によれば、アルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性に優れた窒化アルミニウム系基材が得られる。従って、このような窒化アルミニウム系基材を用いて立体回路基板を形成することによって、電気回路の剥離を充分に抑制できる。上記のようにアルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性が高まるのは、エルビウムとアルミニウムとの複合酸化物が窒化アルミニウム系基材に含有されていることによると考えられる。
さらに、得られた窒化アルミニウム系基材は、エルビウム又はその酸化物を含有することによって、高い熱伝導率を発揮する。このことは、得られた窒化アルミニウム系基材中に、熱伝導率の低下の要因となる酸素の量が少ないことによると考えられる。
また、一般的に、表層にアルミナ層が形成されたアルミニウム系基材にレーザーエッチングを施す際、表層のアルミナ層が薄すぎると、レーザーが窒化アルミニウム層まで到達し、その到達部分からアルミナ層にアルミニウムが析出することがある。アルミニウムが多量に析出すると、電気回路が形成された回路部と、それ以外の非回路部とが導通し、短絡の原因となる。上記構成によれば、表層部に1μm以上の厚みのアルミナ層が形成されているので、上記のような短絡の発生を抑制できる。
また、前記エルビウム又はその酸化物の含有量が、酸化物換算で3〜10質量%であることが、表層のアルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性を高める点で好ましい。
また、窒化アルミニウム系基材に、カルシウムを含有することが好ましい。このような構成によれば、窒化アルミニウム系基材を製造する際、比較的低い焼結温度で焼結させることができるので、窒化アルミニウム系基材を効率的に製造できる。このことは、焼結時に、エルビウムとアルミニウムとの複合酸化物が形成されるだけではなく、カルシウムとアルミニウムとの複合酸化物も形成されるので、緻密化が促進されるためであると考えられる。
また、本発明の立体回路基板用窒化アルミニウム系基材の製造方法は、スパッタリング、レーザーエッチング、及びめっきプロセスを経て電気回路が形成される立体回路基板用窒化アルミニウム系基材の製造方法であって、窒化アルミニウム粉末とエルビウム又はその酸化物の粉末とを含有する成形体を、非酸化雰囲気下で焼成することにより、窒化アルミニウム系焼結体を形成する焼成工程と、前記窒化アルミニウム系焼結体を酸化雰囲気下で熱処理することにより、前記窒化アルミニウム系焼結体の表層を酸化させて、厚みが1μm以上のアルミナ層を形成する熱処理工程とを備えることを特徴とする。
このような構成によれば、窒化アルミニウム系焼結体の表層が酸化されて形成されるアルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性に優れた窒化アルミニウム系基材が得られる。従って、このような窒化アルミニウム系基材を用いて立体回路基板を形成することによって、電気回路の剥離を充分に抑制できる。
さらに、得られた窒化アルミニウム系基材は、高い熱伝導率を発揮する。このことは、前記成形体を焼結する際、前記成形体に含まれる酸素を利用して、窒化アルミニウム系焼結体の粒界相にエルビウムとアルミニウムとの複合酸化物を形成させることによると考えられる。すなわち、得られた窒化アルミニウム系基材中に、熱伝導率の低下の要因となる酸素の量が少なくなることによると考えられる。
また、前記焼成温度が、1825℃以上であることが、表層のアルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性をさらに高めることができる点で好ましい。
また、前記焼成温度が、1850℃未満であることが好ましい。このような温度で焼成した場合には、焼成時に成形体を載せる焼結炉のセッターに、窒化アルミニウム系焼結体が付着することを抑制できる。したがって、アルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性に優れた窒化アルミニウム系基材を効率的に製造できる。
また、前記エルビウム又はその酸化物の粉末の含有量が、前記成形体に対して酸化物換算で3〜10質量%であることが好ましい。この構成によれば、アルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性により優れた窒化アルミニウム系基材が得られる。また、得られた窒化アルミニウム系基材は、熱伝導率が高いので、放熱性が高く、LED等を実装する立体回路基板として好適に利用できる。
また、前記成形体が、前記金属カルシウム粉末を含有することが好ましい。この構成によれば、前記成形体を、比較的低い焼結温度で焼結させることができるので、窒化アルミニウム系基材を効率的に製造できる。
また、前記金属カルシウム粉末の平均1次粒子径が、1〜2μmであることが好ましい。このような粒子径の金属カルシウム粉末を、前記窒化アルミニウム粉末と前記エルビウム又はその酸化物の粉末とに混合すると、各粉末が分散しやすくなる。さらに、得られた粉末の混合物を用いて成形すると、前記粉末の混合物の流動性が高く、成形しやすくなる。
また、前記熱処理工程の前に、前記窒化アルミニウム系焼結体の表面を平滑化する平滑化工程を備えることが好ましい。
一般的に、窒化アルミニウム系焼結体の表面が粗化されているほうが、得られる窒化アルミニウム系基材のアルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性が高まる。しかしながら、窒化アルミニウム系焼結体の表面が粗化されていると、得られた窒化アルミニウム系基材表面の凹凸の高低差が大きくなり、微細な電気回路に半導体素子等を実装する際に接合部にボイドが発生して、半導体素子等の実装性が低下する。したがって、半導体素子等の実装性を高めるために、窒化アルミニウム系焼結体の表面を平滑化することが好ましい。
本発明では、前記窒化アルミニウム系焼結体の表面を平滑化しても、アルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性が充分に高い窒化アルミニウム系基材が得られるので、電気回路の剥離を抑制しつつ、半導体素子等の実装性を高めることができる。
また、前記成形体が、冷間等法圧加圧法により得られたものであることが好ましい。このような構成によれば、バインダを用いないで成形体が得られる。したがって、バインダを用いた場合に必要であった、通常1〜2日間はかかる脱脂工程を省略できる。
また、前記熱処理工程の前に、熱間等法圧加圧法により前記窒化アルミニウム系焼結体を加圧する工程を備えることが好ましい。この構成によれば、窒化アルミニウム系焼結体の強度を高めることができる。
また、本発明の立体回路基板は、前記立体回路基板用窒化アルミニウム系基材の表面に、スパッタリング、レーザーエッチング、及びめっきプロセスを経て電気回路が形成されてなることを特徴とする。このような構成によれば、電気回路の密着性に優れた立体回路基板が得られる。
本発明によれば、スパッタリングで形成した金属膜からなる電気回路が形成された立体回路基板に用いられる、アルミナ層と窒化アルミニウム層とが高い密着性を有する窒化アルミニウム系基材が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る窒化アルミニウム系基材を製造する方法としては、はじめに、窒化アルミニウム粉末とエルビウム又はその酸化物の粉末とを含有する成形体を、非酸化雰囲気下で焼成することにより、窒化アルミニウム系焼結体を形成する焼成工程を行う。
前記成形体は、窒化アルミニウム粉末とエルビウム又はその酸化物の粉末とを含有する成形体であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、窒化アルミニウム粉末とエルビウム又はその酸化物の粉末との混合物を、バインダとともに混練し、所定の形状に成形後、脱脂(脱バインダ)することにより得られる。
前記窒化アルミニウム粉末は、例えば、窒素又はアンモニアをアルミニウムに直接反応させる直接窒化法や、アルミナと炭素との混合物に窒素又はアンモニアを反応させる還元窒化法等によって得られる。
前記エルビウム又はその酸化物の粉末は、焼結助剤として働き、窒化アルミニウムの焼結を均一に進行させやすくするために添加される成分である。前記エルビウム又はその酸化物の粉末を添加することによって、得られた窒化アルミニウム系焼結体には、エルビウムとアルミニウムとの複合酸化物が含有される。また、エルビウム又はその酸化物の粉末は、得られた窒化アルミニウム系焼結体の熱伝導率を高める効果も有する。
前記エルビウム又はその酸化物の添加量としては、成形体に対して酸化物換算で3〜10質量%であることが好ましく、6〜8.5質量%であることがより好ましい。添加量が少なすぎる場合には、表層のアルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性に優れた窒化アルミニウム系基材が得られにくくなり、さらに、熱伝導率を向上させる効果を発揮しにくくなる傾向がある。また、添加量が多すぎる場合には、エルビウムとアルミニウムとの複合酸化物が窒化アルミニウム系焼結体の粒界相に形成することができずに、エルビウム又はその酸化物の粉末がそのまま残存してしまう傾向がある。エルビウム又はその酸化物の粉末が多量に残存すると、熱伝導率が低下し、アルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性に優れた窒化アルミニウム系基材が得られにくくなる。
また、前記混合物には、金属カルシウム粉末をさらに混合することが好ましい。前記金属カルシウム粉末を用いることにより、焼結可能温度を低下させることができる。前記金属カルシウム粉末の平均1次粒子径が、1〜2μmであることが好ましく、1〜1.5μmであることがより好ましい。前記金属カルシウム粉末が小さすぎると、前記窒化アルミニウム粉末と前記エルビウム又はその酸化物の粉末と前記金属カルシウム粉末とを混合する際、前記金属カルシウム粉末が凝集し、分散性が低下する傾向がある。また、前記金属カルシウム粉末が大きすぎると、前記窒化アルミニウム粉末との粒子径の差が大きくなり、粉末の混合物の流動性が低下し、成形しにくくなる傾向がある。
前記金属カルシウム粉末の添加量は、成形体に対して、0.02〜0.03質量%であることが好ましく、0.02〜0.025質量%であることがより好ましい。添加量が少なすぎる場合には、焼成可能温度を充分に低下させることができない傾向がある。また、添加量が多すぎる場合には、金属カルシウムがアルミニウム又はエルビウムと複合酸化物を形成することができず、金属カルシウム粉末が残存してしまう傾向がある。金属カルシウム粉末が多量に残存すると、得られた窒化アルミニウム系基材の熱伝導率が低下するおそれがある。
前記混合物は、前記窒化アルミニウム粉末と前記エルビウム又はその酸化物の粉末と前記金属カルシウム粉末と必要に応じて配合されるその他添加剤とを混合することによって得られる。混合方法としては、特に限定されないが、例えば、上記各成分を有機溶剤とともにボールミルを用いて混合し、その後、有機溶剤を揮発させる方法等が挙げられる。
前記その他の添加剤としては、例えば、イットリウム、バリウム、ストロンチウム、又はその酸化物、及び酸化カルシウム等の、エルビウム又はその酸化物の粉末以外の焼結助剤等が挙げられる。
混練方法としては、前記混合物をバインダとともに混練できれば、特に限定されず、例えば、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、ロール等を用いて混練することができる。
前記バインダとしては、MIM(Metal Injection Molding)やCIM(Ceramic Injection Molding)等の分野で従来から用いられているバインダであれば使用でき、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン、パラフィンワックス、ステアリン酸、ポリエチレン、及びポリプロピレン等の有機バインダが挙げられる。
また、成形方法としては、特に限定されず、例えば、圧縮成形、射出成形、トランスファー成形等の各種プレス成形法等により、混練物を所定の形状に成形し、さらに脱脂することにより、前記成形体が得られる。脱脂は、大気中で400〜450℃で、24〜72時間、加熱することにより行われることが好ましい。
また、前記成形体としては、上記のような方法によって得られたものに限らない。例えば、前記窒化アルミニウム粉末と前記エルビウム又はその酸化物の粉末と前記金属カルシウム粉末との混合物を冷間等方圧加圧法(CIP)により、前記混合物を全面から押し固めることによっても得られる。このような方法によれば、バインダを用いないで成形することができる。したがって、バインダを用いた場合に必要であった、通常1〜2日間はかかる脱脂工程を省略できる。なお、CIPとは、水等の液体を圧力媒体とし、粉体(前記混合物)に高圧の等方圧力を加えることにより成形する方法であって、粉体(前記混合物)を様々な形状に成形することができる。
前記焼成工程は、前記成形体を、非酸化雰囲気下で焼成することにより、窒化アルミニウム系焼結体を形成する。
前記非酸化雰囲気とは、酸素を含んでいない雰囲気であり、具体的には、例えば、窒素雰囲気や不活性ガス雰囲気等が挙げられる。
焼成方法としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、窒化ホウ素製のセッター上に前記成形体を載置して、成形体を覆うように窒化ホウ素製のこう鉢を載置する。そして、セッターとこう鉢とで囲まれた空間を非酸化雰囲気下にして加熱する方法等が挙げられる。
前記成形体の焼結温度としては、表層のアルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性に優れた窒化アルミニウム系基材を得るために、1825℃以上であることが好ましい。一方、前記焼成温度が高すぎる場合には、焼成時に前記成形体と接触している部材、例えばセッターに付着された状態で窒化アルミニウム系焼結体が製造される傾向がある。セッターに窒化アルミニウム系焼結体が付着されていると、セッターから窒化アルミニウム系焼結体を剥がす際に、セッターに窒化アルミニウム系焼結体の一部が残存する。そして、次の焼成のために、サンドペーパーやラッピング等によって、セッターに付着した窒化アルミニウム系焼結体を削り落とさなければならない。この場合、前記焼成温度を、1850℃未満にすることによって、窒化アルミニウム系焼結体の付着を抑制でき、アルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性に優れた窒化アルミニウム系基材を効率的に製造できる。また、セッターに付着した窒化アルミニウム系焼結体を削り落とす際に、セッターが消耗するので、窒化アルミニウム系焼結体の付着が抑制されると、セッターが長寿命化する。したがって、焼結温度としては、窒化アルミニウム系基材の製造効率を高めるために、1850℃未満であることが好ましい。
前記窒化アルミニウム系焼結体の形状としては、特に限定されず、具体的には、例えば、板状やバルク状等の形状が挙げられる。
また、前記窒化アルミニウム系焼結体は、さらに、熱間等方圧加圧法(HIP)により、前記窒化アルミニウム系焼結体を押し固めてもよい。そうすることによって、前記窒化アルミニウム系焼結体の強度を高めることができる。なお、HIPとは、アルゴン等の気体を圧力媒体とし、成形体全面に高圧の等方圧力を高温で加える方法である。
次に、前記窒化アルミニウム系焼結体の表層を酸化させて、厚みが1μm以上のアルミナ層を形成する熱処理工程について説明する。
前記酸化雰囲気は、雰囲気中に酸素を含んで、窒化アルミニウム系焼結体の表層を酸化しうる雰囲気であれば特に限定されず、例えば、大気雰囲気や酸素雰囲気が挙げられる。
熱処理温度としては、1000〜1250℃であることが好ましく、1100〜1150℃であることがさらに好ましい。この温度範囲が、アルミナ層の成長速度が適度であるために、比較的短時間で、適度な厚みを有する緻密なアルミナ層を形成することができる点から好ましい。前記熱処理温度が1000℃未満の場合には、空気中の水が窒化アルミニウム系基材の内部へ浸入することを充分に抑制するアルミナ層を形成するためには、長時間を要する傾向がある。また、前記熱処理温度が1250℃を超える場合には、アルミナ層の成長が速すぎて、アルミナ層に大きなクラックが生じやすくなり、該クラックから空気中の水が窒化アルミニウム系基材の内部へ浸入しやすくなる傾向がある。
形成されるアルミナ層の厚みとしては、1μm以上である必要があり、10μmであることが好ましく、5〜6μmであることがさらに好ましい。前記厚みが薄すぎる場合には、空気中の水が窒化アルミニウム基材の内部へ浸入することを充分に抑制できなくなるおそれがある傾向がある。前記厚みが厚すぎる場合には、製造するのに時間がかかりすぎ、さらに、アルミナ層に大きなクラックが生じやすくなる傾向がある。
また、レーザーエッチングしてから電気回路を形成する場合、前記アルミナ層の厚みとしては、1μm以上であることが必要であり、さらに5μm以上であることが好ましい。レーザーエッチングとしては、例えば、THG−YAGレーザーやSHG−YAGレーザー等の高エネルギービーム照射によって、回路形成部分以外の金属膜を除去することによって行う。前記アルミナ層の厚みが薄すぎる場合には、窒化アルミニウム層まで高エネルギービームが到達し、その到達部分からアルミナ層にアルミニウムが析出する傾向がある。アルミナ層にアルミニウムが多量に析出すると、回路部と非回路部とが導通してしまい、短絡の原因となるおそれがある。
また、前記熱処理工程の前に、前記窒化アルミニウム系焼結体の表面を平滑化する平滑化工程を備えることが好ましい。窒化アルミニウム系焼結体として、表面を平滑化した窒化アルミニウム系焼結体を用いることによって、表面が平滑化された窒化アルミニウム系基材が得られる。このような窒化アルミニウム系基材は、電気回路上への半導体素子、例えばICやチップ等の実装性が高まる。一方、一般的に、前記窒化アルミニウム系焼結体の表面が粗化されているほうが、得られる窒化アルミニウム系基材のアルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性が高まる傾向がある。本実施形態においては、前記窒化アルミニウム焼結体の表面を平滑化しても、アルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性が充分に高い窒化アルミニウム基材が得られる。したがって、電気回路の剥離を抑制しつつ、半導体素子等の実装性を高めることができる。
表面が平滑化された窒化アルミニウム系基材の算術平均粗さ(Ra)は、1〜2μmであることが好ましい。前記算術平均粗さ(Ra)が小さすぎる場合には、アルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性が低下する傾向があり、また、大きすぎる場合には、回路形成後の表面の凹凸の高低差が大きすぎて、半導体素子等を実装する際に接合部にボイドが発生したりして放熱性が低下する傾向がある。なお、前記算術平均粗さ(Ra)は、100×100μmの領域をレーザー顕微鏡を用いて表面状態を測定して表面分析することにより算出される。
以上説明した、窒化アルミニウム系基材の製造方法によれば、エルビウム又はその酸化物を含有し、表層部に1μm以上の厚みのアルミナ層が形成されている窒化アルミニウム系基材が得られる。このような窒化アルミニウム系基材は、スパッタリングで形成した金属膜からなる電気回路が形成された立体回路基板において特に問題となる、基材表層のアルミナ層と窒化アルミニウム層との剥離の発生を抑制できる表層のアルミナ層と窒化アルミニウム層とが高い密着性を有する。また、前記窒化アルミニウム系基材は、窒化アルミニウム系基材内部に空気中の水が浸入しにくく、放熱性及び電気絶縁性に優れたものであるために、発光ダイオード(LED)を実装する立体回路基板のような放熱性と絶縁性が要求される立体回路基板等に好ましく用いられる。
また、前記窒化アルミニウム系基材としては、前記エルビウム又はその酸化物の含有量が、酸化物換算で3〜10質量%であることが、上記製造時の前記エルビウム又はその酸化物の好適混合量の場合と同様、表層のアルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性を高める点で好ましい。また、金属カルシウムを0.02〜0.03質量%さらに含有することが好ましい。また、金属カルシウムが含有されていることによって、窒化アルミニウム系基材を製造する際、焼結可能温度を低下させることができるので、窒化アルミニウム系基材を効率的に製造できる。
本発明の窒化アルミニウム系基材に電気回路を形成する方法としては、スパッタリング、レーザーエッチング、及びめっきプロセスを経て電気回路が形成される方法が挙げられる。
このような電気回路形成方法は、まず、得られた所定の形状の窒化アルミニウム系基材の、回路を形成する表面に、スパッタリングにより金属膜を形成する。スパッタリング源(ターゲット)としては、第1段階では、クロム及びチタンからなる群から選択された1種の金属を用い、第2段階では、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、金及び金−錫合金等からなる群から選択された1種の金属を用いる。そして、形成された金属膜から電気回路となる回路形成部分をレーザーによりパターニングする。そして、電気めっき等の手法により、前記回路形成部分に銅めっきを施す。そして、銅めっきが形成されていない部分をエッチング加工することにより、電気回路が形成され、立体回路基板が得られる。ここで、第1段階で形成されるクロム膜やチタン膜は、窒化アルミニウム系基材と電気回路(銅箔回路)との密着性を高めるために形成されるものである。また、レーザーによるパターニングとしては、例えば、THG−YAGレーザーやSHG−YAGレーザー等の高エネルギービーム照射によって、回路形成部分の輪郭部分の金属膜を除去することによって行う。
このようにして形成された立体回路基板は、放熱性と絶縁性とが要求される、発光ダイオード(LED)、ペルチェ素子その他各種半導体素子を実装する立体回路基板として好ましく用いられる。
実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されることはない。
[実施例1]
直接窒化法により作製した酸素量1.1質量%の窒化アルミニウム粉末に対して、酸化エルビウム(Er)粉末6質量%を配合し、ボールミルによって、有機溶剤中で6時間混合した。その後、ドラフトチャンバ内で前記有機溶剤を充分に揮発させることによって、混合物を得た。得られた混合物に有機バインダを配合し、充分に混練した。得られた混練物を、プレス成形法により、所定の形状に成形し、さらに、大気中450℃で1時間プレスしたまま保持した。そして、24〜48時間かけて脱脂した。そうすることによって、所定の形状の成形体を得た。得られた成形体をセッターに載置し、窒素雰囲気下1850℃で3時間焼成することによって、窒化アルミニウム系焼結体を得た。上記成形体の焼成後、得られた窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着されているかを確認した。本実施例の場合、付着が確認された。なお、得られた窒化アルミニウム系焼結体表面の算術平均粗さは、2μmであった。算術平均粗さ(Ra)は、キーエンス社製レーザー顕微鏡VX−8500を用いて焼結体表面を100倍の対物レンズを用いて観察して、高さ方向ピッチ0.01μmで149×112μmの観察エリアの表面形状を測定した。そして、さらに、100×100μmのエリアを選択して、表面粗さ解析して、Raを算出した。
得られた窒化アルミニウム系焼結体を、大気中で、1100で10時間加熱することにより、表層の窒化アルミニウムが酸化されて、表層にアルミナ層を有する窒化アルミニウム系基材が得られた。
得られた窒化アルミニウム系基材を垂直方向に曲げ破壊し、走査型電子顕微鏡で観察したところ、アルミナ層の厚みは、約2.5μmであった。また、得られた窒化アルミニウム系基材の熱伝導率を、レーザーフラッシュ法で測定すると、173W/m・Kであった。得られた窒化アルミニウム系基材の密度は、3.39g/cmであった。
そして、以下の方法により、ピール強度を測定した。
まず、得られた窒化アルミニウム系基材の表面にスパッタ法によりクロム被膜を形成し、さらに、スパッタ法により銅被膜を形成することによって、金属膜を形成した。スパッタ法により金属膜を形成した後、レーザーパターニングにより、金属膜を2mm幅の矩形に成形し、ピール強度測定用部位を作製した。その後、電解銅めっきを施すことによって、ピール強度測定用部位を15μmの厚さに厚膜化した。この2mm幅のピール強度測定用部位の端部をデザインカッターで剥離し、チャッキング部分を作製した。この窒化アルミニウム系基材をピール強度測定用部位の幅方向に自由移動可能なステージに固定し、チャッキング部分をチャッキングし、引っ張り上げる際の荷重を島津製作所製小型卓上試験機EZGraphのピール(引き剥がし)試験で4mmの測定平均値で算出し、この測定のN=6の平均値として算出した。上記方法により測定した銅薄膜のピール強度は、0.9N/mmであった。
[実施例2]
窒化アルミニウム粉末に対して、酸化エルビウム粉末3.3質量%を配合したこと以外、実施例1と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約2.5μmであり、熱伝導率は、145W/m・Kであり、密度は、3.34g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、0.7N/mmであった。また、窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着された。
[実施例3]
窒化アルミニウム粉末に対して、酸化エルビウム粉末5質量%を配合したこと以外、実施例1と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約2.5μmであり、熱伝導率は、172W/m・Kであり、密度は、3.37g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、0.8N/mmであった。また、窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着された。
[実施例4]
窒化アルミニウム粉末に対して、酸化エルビウム粉末8.5質量%を配合したこと以外、実施例1と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約3.5μmであり、熱伝導率は、181W/m・Kであり、密度は、3.44g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、0.8N/mmであった。また、窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着された。また、窒化アルミニウム系焼結体の表面には、色むらが確認された。これは、粒界相中に含まれる酸化エルビウムが多すぎるためであると思われる。
[実施例5]
窒化アルミニウム粉末に対して、酸化エルビウム粉末3.3質量%、及び金属カルシウム粉末(平均一次粒子径:1μm)0.02質量%を配合したこと以外、実施例1と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約2.5μmであり、熱伝導率は、145W/m・Kであり、密度は、3.34g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、0.7N/mmであった。また、窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着された。
[実施例6]
窒化アルミニウム粉末に対して、酸化エルビウム粉末5質量%、及び金属カルシウム粉末(平均一次粒子径:1μm)0.02質量%を配合したこと以外、実施例1と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約2.5μmであり、熱伝導率は、170W/m・Kであり、密度は、3.37g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、0.8N/mmであった。また、窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着された。
[実施例7]
窒化アルミニウム粉末に対して、酸化エルビウム粉末6質量%、及びカルシウム粉末(平均一次粒子径:1μm)0.02質量%を配合したこと以外、実施例1と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約2.5μmであり、熱伝導率は、170W/m・Kであり、密度は、3.39g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、0.9N/mmであった。また、窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着された。
[実施例8]
窒化アルミニウム粉末に対して、酸化エルビウム粉末8.5質量%、及びカルシウム粉末(平均一次粒子径:1μm)0.02質量%を配合したこと以外、実施例1と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約3.5μmであり、熱伝導率は、185W/m・Kであり、密度は、3.45g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、1.0N/mmであった。また、窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着された。
[実施例9]
焼成温度を1825℃にして得られた窒化アルミニウム系焼結体を用いたこと以外、実施例5と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約2.5μmであり、熱伝導率は、140W/m・Kであり、密度は、3.33g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、0.7N/mmであった。また、窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着されていた。
[実施例10]
焼成温度を1825℃にして得られた窒化アルミニウム系焼結体を用いたこと以外、実施例6と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約2.5μmであり、熱伝導率は、170W/m・Kであり、密度は、3.36g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、0.8N/mmであった。また、窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着されていた。
[実施例11]
焼成温度を1825℃にして得られた窒化アルミニウム系焼結体を用いたこと以外、実施例7と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約2.5μmであり、熱伝導率は、180W/m・Kであり、密度は、3.39g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、1.0N/mmであった。また、窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着されていた。
[実施例12]
焼成温度を1825℃にして得られた窒化アルミニウム系焼結体を用いたこと以外、実施例8と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約3.5μmであり、熱伝導率は、160W/m・Kであり、密度は、3.44g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、1.4N/mmであった。また、窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着されていた。
[実施例13]
焼結温度を1825℃にし、窒化アルミニウム粉末に対して、酸化エルビウム粉末7質量%を配合したこと以外、実施例1と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約3μmであり、熱伝導率は、180W/m・Kであり、密度は、3.41g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、1.9N/mmであった。また、窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着されなかった。
[実施例14]
焼成温度を1800℃にして得られた窒化アルミニウム系焼結体を用いたこと以外、実施例13と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約2.5μmであり、熱伝導率は、170W/m・Kであり、密度は、3.39g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、0.6N/mmであった。また、窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着されていなかった。
[実施例15]
焼結温度を1800℃にし、窒化アルミニウム粉末に対して、酸化エルビウム粉末6質量%、及び酸化カルシウム粉末(平均一次粒子径:1μm)0.05質量%を配合したこと以外、実施例1と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約2.5μmであり、熱伝導率は、170W/m・Kであり、密度は、3.38g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、0.5N/mmであった。また、窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着されていなかった。
[比較例1]
焼結温度を1825℃にし、窒化アルミニウム粉末に対して、酸化エルビウム粉末を配合せずに、酸化イットリウム粉末3質量%を配合したこと以外、実施例1と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約2.5μmであり、熱伝導率は、170W/m・Kであり、密度は、3.3g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、0.3N/mmであった。また、窒化アルミニウム系焼結体がセッターに付着されていなかった。
上記処理条件及び結果をまとめたものを表1に示す。
Figure 2009158549
表1からわかるように、酸化エルビウムを含有する窒化アルミニウム系焼結体を焼成して得られた実施例1〜15は、酸化エルビウムを含有しない窒化アルミニウム系焼結体を焼成して得られた比較例1より、ピール強度が高かった。このことから、酸化エルビウムを含有することによって、厚み1μm以上のアルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性が高まることがわかる。
また、窒化アルミニウム系焼結体を作製する際の焼結温度が1825℃以上の実施例1〜13は、焼結温度が1800℃の実施例14,15より、ピール強度が高かった。このことから、窒化アルミニウム系焼結体を作製する際の焼結温度が1825℃以上であることが、アルミナ層と窒化アルミニウム層との密着性が高まめる点で好ましいことがわかる。
さらに、金属カルシウム粉末を配合して得られた窒化アルミニウム系焼結体を用いた実施例5〜12において、窒化アルミニウム系焼結体を作製する際の焼結温度が1825℃の実施例9〜12は、1850℃の実施例5〜8と同程度の密度のものが得られた。このことから、金属カルシウム粉末を配合することによって、1825℃で充分に緻密化された窒化アルミニウム系焼結体が得られることがわかる。
そして、実施例1〜4、実施例5〜8、実施例9〜12は、それぞれ酸化エルビウムの含有量のみを変えた実施例であるが、それぞれを比較すると、含有量が多いほど、熱伝導率及びピール強度が高い傾向があることがわかる。なお、酸化エルビウムの含有量を8.5質量%にした場合、含有量が6質量%である場合と比較して、熱伝導率又はピール強度が低下する場合がある。このことから、酸化エルビウムの含有量が、8.5質量%以下であることがより好ましいことがわかる。
[実施例16]
窒化アルミニウム系焼結体に平滑化処理を施して、表面の算術平均粗さ(Ra)を1μmとしたこと以外、実施例1と同様にして、窒化アルミニウム系機材を得た。得られた窒化アルミニウム系基材のアルミナ層の厚みは、約2.5μmであり、熱伝導率は、170W/m・Kであり、密度は、3.39g/cmであった。実施例1と同様の方法により測定した銅薄膜のピール強度は、0.9N/mmであった。
このことから、窒化アルミニウム系焼結体表面を平滑化しても、充分に高いピール強度が得られることがわかった。
[実施例17]
直接窒化法により作製した酸素量1.1質量%の窒化アルミニウム粉末に対して、酸化エルビウム粉末3.3質量%を配合し、バインダを添加せずに、冷間等方圧加圧法(CIP)により、成形体を得たこと以外、実施例1と同様である。
実施例24に係る窒化アルミニウム系基材は、実施例1に係る窒化アルミニウム系基材と同等の密度、熱伝導率、及びピール強度を示した。また、実施例1に係る成形体は、作製するのに、通常1〜2日間はかかる脱脂工程が必要であるのに対して、実施例24に係る成形体は、その脱脂工程を省略できる。従って、実施例1に係る窒化アルミニウム系基材は、作製するのに、70〜100時間程度かかるのに対して、実施例24に係る窒化アルミニウム系基材は、40〜50時間程度しかかからなかった。
このことから、冷間等方圧加圧法(CIP)を用いることによって、バインダを添加せずに成形体が得られ、さらに、成形体の作製時間が短縮されることがわかった。
[実施例18]
窒化アルミニウム系焼結体に、熱間等方圧加圧法(HIP)を施したこと以外、実施例1と同様にして、窒化アルミニウム系基材を得た。
実施例25に係る窒化アルミニウム系基材は、実施例1に係る窒化アルミニウム系基材と同等の密度、熱伝導率、及びピール強度を示した。さらに、実施例1に係る窒化アルミニウム系基材が、320MPaの曲げ強度であるのに対して、実施例25に係る窒化アルミニウム系基材は、450MPaの曲げ強度であった。このことから、窒化アルミニウム系焼結体に、熱間等方圧加圧法(HIP)を施すことによって、強度の高い窒化アルミニウム系基材が得られることがわかった。

Claims (13)

  1. スパッタリング、レーザーエッチング、及びめっきプロセスを経て電気回路が形成される立体回路基板用窒化アルミニウム系基材であって、
    エルビウム又はその酸化物を含有し、
    表層部に1μm以上の厚みのアルミナ層が形成されていることを特徴とする立体回路基板用窒化アルミニウム系基材。
  2. 前記エルビウム又はその酸化物の含有量が、酸化物換算で3〜10質量%である請求項1に記載の立体回路基板用窒化アルミニウム系基材。
  3. カルシウムを含有する請求項1又は請求項2に記載の立体回路基板用窒化アルミニウム系基材。
  4. スパッタリング、レーザーエッチング、及びめっきプロセスを経て電気回路が形成される立体回路基板用窒化アルミニウム系基材の製造方法であって、
    窒化アルミニウム粉末とエルビウム又はその酸化物の粉末とを含有する成形体を、非酸化雰囲気下で焼成することにより、窒化アルミニウム系焼結体を形成する焼成工程と、
    前記窒化アルミニウム系焼結体を酸化雰囲気下で熱処理することにより、前記窒化アルミニウム系焼結体の表層を酸化させて、厚みが1μm以上のアルミナ層を形成する熱処理工程とを備えることを特徴とする立体回路基板用窒化アルミニウム系基材の製造方法。
  5. 前記焼成温度が、1825℃以上である請求項4に記載の立体回路基板用窒化アルミニウム系基材の製造方法。
  6. 前記焼成温度が、1850℃未満である請求項4又は請求項5に記載の立体回路基板用窒化アルミニウム系基材の製造方法。
  7. 前記エルビウム又はその酸化物の粉末の含有量が、前記成形体に対して酸化物換算で3〜10質量%である請求項4〜6のいずれか1項に記載の立体回路基板用窒化アルミニウム系基材の製造方法。
  8. 前記成形体が、金属カルシウム粉末を含有する請求項4〜7のいずれか1項に記載の立体回路基板用窒化アルミニウム系基材の製造方法。
  9. 前記金属カルシウム粉末の平均1次粒子径が、1〜2μmである請求項8に記載の立体回路基板用窒化アルミニウム系基材の製造方法。
  10. 前記熱処理工程の前に、前記窒化アルミニウム系焼結体の表面を平滑化する平滑化工程を備える請求項4〜9のいずれか1項に記載の立体回路基板用窒化アルミニウム系基材の製造方法。
  11. 前記成形体が、冷間等法圧加圧法により得られたものである請求項4〜10のいずれか1項に記載の立体回路基板用窒化アルミニウム系基材の製造方法。
  12. 前記熱処理工程の前に、熱間等法圧加圧法により前記窒化アルミニウム系焼結体を加圧する工程を備える請求項4〜11のいずれか1項に記載の立体回路基板用窒化アルミニウム系基材の製造方法。
  13. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体回路基板用窒化アルミニウム系基材の表面に、スパッタリング、レーザーエッチング、及びめっきプロセスを経て電気回路が形成されてなることを特徴とする立体回路基板。
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