JP2011111341A - 酸化層を有する窒化アルミニウム基板、該基板の製造方法、該基板を用いた回路基板及びledモジュール - Google Patents

酸化層を有する窒化アルミニウム基板、該基板の製造方法、該基板を用いた回路基板及びledモジュール Download PDF

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Abstract

【課題】窒化アルミニウム焼結体の表面に、高い密着強度及び高い反射率を有する酸化層が形成された窒化アルミニウム基板を提供することを目的とする。
【解決手段】窒化アルミニウム焼結体2の表面に窒化アルミニウムの酸化層3が形成された窒化アルミニウム基板1において、酸化層3は、酸化アルミニウムのマトリックス5中に窒化アルミニウム結晶粒子4が含有され、窒化アルミニウム結晶粒子4の含有率が酸化層3の表層側から焼結体2側へ近づくにつれて増加する構成である。酸化層3中の酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の厚みが5〜20μmであり、焼結体2中の希土類元素の酸化物換算での含有量が3〜6質量%であり、カルシウムの含有量が0.003質量%以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、窒化アルミニウム焼結体の表面に窒化アルミニウムの酸化層が形成された窒化アルミニウム基板の技術分野、特に、高い放熱性と高い反射率とが要求される高輝度LED実装基板の技術分野に属する。
窒化アルミニウム基板は高い放熱性と低熱抵抗性とを備えている。このような窒化アルミニウム基板は、高い放熱性が要求される発光ダイオード(LED)用の回路基板として好ましく用いられる。窒化アルミニウム基板をLED用回路基板として用いる場合は、高い反射率も要求される。高い反射率を得るために、基板の表面にアルミニウムや銀をメッキ又は蒸着する方式が一般的である。しかし、得られた金属膜は信頼性に欠ける傾向がある。また、窒化アルミニウム焼結体を酸化雰囲気で熱処理して、窒化アルミニウム焼結体の表面に窒化アルミニウムの酸化層を形成することが知られている。このようにして形成された酸化層には酸化アルミニウム(アルミナ)が含有される(特許文献1、2参照)。酸化アルミニウムは可視光波長域での反射率が80%以上と非常に高い物質である。したがって、このような高い反射率の酸化アルミニウムを含有する酸化層が表面に形成された窒化アルミニウム基板は、高い反射率が要求されるLED用回路基板として好ましく用いられる。
酸化アルミニウムの反射率は厚みに依存する。つまり、酸化層の厚みが厚いほど高い反射率が得られる。しかし、例えば5μmというような厚みの酸化層を熱処理で形成すると、酸化層の密着性が不足し、酸化層が剥がれ易くなる。また、酸化層の表面にクラックが発生し易くなる。これは、次のような理由によるものと考えられる。熱処理においては、窒化アルミニウム焼結体の表面側から酸化が進行し、酸化層と窒化アルミニウム層との間に明瞭な界面が生成する。熱処理後の冷却時に、酸化アルミニウムと窒化アルミニウムとの熱膨張率の差により両層間の界面において不整合が起る。その結果、酸化層と窒化アルミニウム層との間に歪(応力)が生じ、酸化層の剥離やクラックの発生が起るものと考えられる。
そこで、熱処理に代えて、CVDやPVD等で窒化アルミニウム焼結体の表面にアルミナを成膜することが提案される。しかし、CVDやPVD等では十分な厚みのアルミナ層を確保することが困難なため、高い反射率を得ることができない。
一方、窒化アルミニウムの焼結温度を下げるため、原料粉体にカルシウムを含有させることが知られている(特許文献3参照)。しかし、カルシウムを含有させると、窒化アルミニウム基板の色相が変化し、反射率が低下するという問題がある。
特開昭62−123071号公報 特開平2−83285号公報 特開平2−207554号公報
本発明は、酸化層を有する窒化アルミニウム基板における前記のような不具合に対処するもので、高い反射率を得るために、たとえ5μm以上という厚い酸化層を形成しても、酸化層の密着性を向上し、酸化層の剥離やクラックの発生を抑制すること、及び可視光波長域で60%以上の反射率、青色LEDの波長である475nmの波長で65%以上の反射率を確保することを課題とする。
本発明の一局面は、窒化アルミニウム焼結体の表面に窒化アルミニウムの酸化層が形成された窒化アルミニウム基板であって、前記焼結体中のカルシウムの含有量が0.003質量%以下であり、前記酸化層は、酸化アルミニウムのマトリックス中に窒化アルミニウム結晶粒子を含有し、該窒化アルミニウム結晶粒子の含有率が酸化層の厚み方向に表層側から焼結体側へ向けて増加し、前記酸化層中の酸化アルミニウムの総含有量に基づいて酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の厚みを算出したときの厚みが5〜20μmであることを特徴とする窒化アルミニウム基板である。このような構成によれば、窒化アルミニウム層と酸化層との密着性が極めて高くなる。その理由は、酸化層中に含有される窒化アルミニウム系粒子が酸化処理後における冷却収縮に伴い発生する応力を緩和する作用を奏するためであると思われる。
しかも、窒化アルミニウム焼結体中のカルシウムの含有量を0.003質量%以下に抑制したので、基板の高熱伝導率を維持したまま、可視光波長域での基板の反射率が60%以上に向上し、青色LEDの波長である475nmの波長での基板の反射率が65%以上に向上することに寄与する。なお、カルシウム含有量の下限は特に限定されず、零であっても零でなくてもよい。
本発明においては、前記酸化層は、酸化アルミニウムのマトリックス中に窒化アルミニウム結晶粒子が含有され、該窒化アルミニウム結晶粒子の含有率が酸化層の厚み方向に酸化層の表層側から焼結体側へ近づくにつれて傾斜的に増加する構成である。つまり、酸化アルミニウムから窒化アルミニウムに徐々に置き換わっていくような層である。このような構成によれば、熱膨張率が酸化アルミニウム層と窒化アルミニウム層との界面で急激に変化することなく徐々に変化するために、酸化処理後の冷却収縮により生じる界面における不整合が緩和される。そして、このような構成の酸化層(応力緩和層)を有することにより、より優れた密着性を示す。さらに、酸化アルミニウムが、窒化アルミニウム焼結体の結晶粒界に侵入するように、または、焼結体の内層方向に向かって酸化アルミニウム層を構成する酸化アルミニウムの一部分が、窒化アルミニウム焼結体の結晶粒界に沿って延びるように形成されている場合にはアンカー効果も発揮すると思われる。
また、前記酸化層中の酸化アルミニウムの総含有量に基づいて酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の厚みを算出したときの厚みは5〜20μmであるから、窒化アルミニウム基板の表面に高い光反射性を付与できる。窒化アルミニウムは熱伝導率は高いが、反射率は可視光波長域で30%前後と低い。一方、酸化アルミニウムの反射率は80%以上であるが、熱伝導率は窒化アルミニウムの20%以下である。アルミナの反射率は厚みに依存する。窒化アルミニウム基板の表面にCVDやPVD等の手法を用いて成膜する場合には十分な厚みの確保が困難で、十分な反射率が確保できない。本発明によれば、窒化アルミニウム基板の表面に、厚い膜厚の酸化アルミニウム層が形成されている。
本発明において、仮想の層とは、酸化層中の酸化アルミニウムの総含有量に基づいて酸化アルミニウムのみからなると仮想される層のことである。つまり、酸化層は、前述のように、酸化アルミニウムのマトリックス中に窒化アルミニウム結晶粒子を含有しているので、酸化アルミニウム成分と窒化アルミニウム成分とが混在している。したがって、単に、酸化層の見かけの厚みは、酸化アルミニウムのみからなる層の厚みではない。酸化層のうち、窒化アルミニウム成分を除く、酸化アルミニウム成分のみからなる層を仮想するのである。そして、そのように仮想された層の厚みは、酸化層の見かけの厚みのうち、窒化アルミニウム成分を除く、酸化アルミニウム成分のみからなる層(仮想の層)の厚みのことである。
本発明においては、焼結助剤である希土類元素の酸化物を配合して窒化アルミニウムを焼結する。これにより、窒化アルミニウムの焼結体には、モノクリニック構造を有する粒界相(結晶粒界)が形成される。モノクリニック構造は、REAl(REは希土類元素)で表されるような結晶構造である。窒化アルミニウム基板においては、窒化アルミニウム層の窒化アルミニウム結晶粒子の粒界相に、モノクリニック構造を有する希土類元素とアルミニウムとを含有する複合酸化物を含有することが好ましい。このような複合酸化物を粒界相に含有する場合には粒界相に沿うように酸化アルミニウムを存在させることができる。このような粒界相に沿って伸びた酸化アルミニウムは、表面に形成された酸化アルミニウム層のアンカーになる。このアンカーにより、窒化アルミニウム層と酸化アルミニウム層との密着性がより高くなる。
希土類元素の酸化物としては、酸化イットリウムが、より充分なモノクリニック構造を有する複合酸化物が形成される点から好ましい。
本発明においては、希土類元素の酸化物換算での含有量が3〜6質量%、及びカルシウムの含有量が0.003質量%以下である窒化アルミニウム基板に、酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の厚みが5〜20μmである酸化層を有するから、例えば可視光波長域において60%以上の反射率が確保でき、青色LEDの波長である475nmの波長において65%以上の反射率が確保できる。また、基材が窒化アルミニウムであるため、100W/Km以上の高い熱伝導率が確保できる。
また、本発明においては、前記酸化層(応力緩和層)は、酸化アルミニウムのマトリックス中に窒化アルミニウム結晶粒子が含有され、該窒化アルミニウム結晶粒子の含有率が酸化層の厚み方向に酸化層の表層側から焼結体側へ近づくにつれて傾斜的に増加する構成である。つまり、酸化アルミニウムから窒化アルミニウムに徐々に置き換わっていくような層である。このような構成によれば、熱膨張率が酸化アルミニウム層と窒化アルミニウム層との界面で急激に変化することなく徐々に変化するために、酸化処理後の冷却収縮により生じる界面における不整合が緩和される。その結果、酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の厚みが5μm以上と厚くても、酸化層の密着性を確保すると共に、酸化アルミニウムと窒化アルミニウムとの熱膨張率の差に起因するクラックの幅を100nm以下のヘアクラックに抑制できる。なお、酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の厚みが20μmを超えると、クラックの幅が200nm程度となり、窒化アルミニウム焼結体の保護性が損なわれる。
前記仮想の層の厚みは、例えば、前記酸化層の垂直断面像をEDX観察して得られる酸化アルミニウムの面積の合計を前記垂直断面像の幅で除することにより、良好に精度よく算出される。あるいは、後述する重量仮想厚みによっても、良好に精度よく算出される。
本発明においては、酸化層の表層側に、仮想の層ではなく現実の層として酸化アルミニウムのみからなる酸化アルミニウム層を有し、この酸化アルミニウム層と焼結体との間に、酸化アルミニウムのマトリックス中に窒化アルミニウム結晶粒子を含有し、該窒化アルミニウム結晶粒子の含有率が酸化層の厚み方向に表層側から焼結体側へ向けて増加する中間層(窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層)を有する構成であることが好ましい。この場合は、酸化層の一部分を構成する中間層が応力緩和層として機能する。そして、この中間層(応力緩和層)の厚みは、表層側の現実の酸化アルミニウム層の厚みに対して2倍以上であることが好ましい。このような厚みの中間層を形成することにより、酸化アルミニウムと窒化アルミニウムとの熱膨張率の差に起因する応力を十分緩和できる。酸化アルミニウムのみからなる仮想層の厚みが5μm以上と厚くても、より高い密着性が得られる。
本発明の他の一局面は、窒化アルミニウム焼結体の表面に窒化アルミニウムの酸化層が形成された窒化アルミニウム基板の製造方法であって、希土類元素の酸化物換算での含有量が3〜6質量%、及びカルシウムの含有量が0.003質量%以下である窒化アルミニウム混合粉体を、非酸化雰囲気で、1825〜1900℃の温度範囲で、焼成することにより、窒化アルミニウム焼結体を得る焼成工程と、得られた焼結体を、酸化雰囲気で、加熱して、酸化処理することにより、窒化アルミニウム焼結体の表面に窒化アルミニウムの酸化層を形成する酸化工程とを備えることを特徴とする窒化アルミニウム基板の製造方法である。このような構成によれば、窒化アルミニウム焼結体の粒界相に、モノクリニック構造を有する希土類元素とアルミニウムとを含む複合酸化物が容易に形成される。モノクリニック構造を有する希土類元素とアルミニウムとを含む複合酸化物を粒界相に含有する窒化アルミニウム焼結体を熱処理することにより、粒界相に沿った酸化を進行させることができる。このために、窒化アルミニウム焼結体の表面に近い部分は表面から進行する酸化が起こる一方、表面から遠い部分は粒界相を通じて進行する酸化の割合が高くなる。その結果、窒化アルミニウム結晶粒子の含有割合が、酸化層の表層側から焼結体側へ近づくにつれて傾斜的に増大していくような酸化層が形成される。
希土類元素の酸化物としては、酸化イットリウムが、より充分なモノクリニック構造を有する複合酸化物が形成される点から好ましい。
本発明の製造方法では、カルシウムの含有量が低いので、焼結温度が1825℃未満の場合は、窒化アルミニウムの焼結が不十分となり、十分な熱伝導率が得られない。また、窒化アルミニウム焼結体中に存在する、モノクリニック構造を有する希土類元素とアルミニウムとを含む複合酸化物からなる粒界相が50nm未満と非常に薄くなる。その結果、熱酸化の際に、表面側からの酸化が主となって、酸化物マトリックス中に窒化アルミニウム粒子が分散した酸化層(応力緩和層)の形成が困難となる。また、アンカー効果も得られなくなる。一方、焼結温度が1900℃を超えると、焼結時に形成される複合酸化物(希土類元素とアルミニウムとのモノクリニック構造の複合酸化物)が焼結体の表面に移動する量が多くなる。その結果、熱酸化時に、色むらとして認識され、光の反射のマクロ的な不均一の要因の1つとなる。
本発明の製造方法では、酸化工程において、酸化雰囲気下で、1050〜1350℃の範囲の温度で熱処理することにより、全体として適度な成長レートで酸化が進行することにより、酸化層の厚みを良好にコントロールできる。
熱酸化温度が1050℃未満となると、酸化層の全体的な成長速度が過度に遅くなり、5μm程度の厚みの酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の形成に100時間以上の長時間が必要となって、量産性に欠ける。また、酸化が局所的に進行する部分ができて、その結果、酸化が焼結体内に深く進行し、基板クラックの発生の原因となって、基板の強度を損ねることになる。一方、熱酸化温度が1350℃を超えると、酸化層の全体的な成長速度が過度に高くなり、20μm程度の厚みの酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の形成に5分以下の短時間で足り、量産時の品質の均一性を欠く可能性が高くなる。
また、本発明の製造方法では、酸化工程において、酸化雰囲気中に、水蒸気分圧が1.25〜100hPaの範囲で、水分が含有されていることが好ましい。酸化雰囲気に適度な水分が含有される場合には、酸化の初期に形成される酸化膜に微細な空隙(マイクロポア)が形成される。この場合には、マイクロポアを通じて酸素が内部に供給されやすくなるために、酸化アルミニウムのみからなる表層側の現実の酸化アルミニウム層の成長速度、及び仮想の層の成長速度(つまり酸化層内における酸化アルミニウムの成長速度)をより促進することができる。
熱酸化の際の水蒸気分圧が1.25hPa未満の場合は、窒化アルミニウムの最表面で酸化の初期に形成される酸化膜がマイクロポアのない緻密な酸化膜となる。そのため、酸化層の成長が、酸化層内を拡散する酸素や窒素による拡散律速になり、5μm程度の厚みの酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の形成に1350℃程度の温度で酸化処理しても100時間以上の長時間が必要となって、量産性に欠ける。一方、水蒸気分圧が100hPaを超えると、通常の室内で大気として得るのは困難となり、別途加湿装置が必要となり、量産における設備が大型化、複雑化してしまう。
本発明のさらに他の一局面は、前記窒化アルミニウム基板の表面に電気回路が形成されている回路基板である。このような回路基板は、電気回路の密着性が高く、また、熱伝導性にすぐれたものであり、さらに、表面の光反射率が高い。したがって、高い放熱性と高い反射性が要求されるようなLEDが搭載される回路基板として好ましく用いられうる。
その場合に、窒化アルミニウム基板が三次元立体形状を有し、その基板表面に導電層を形成した後、該導電層をレーザー加工により部分的に除去することにより、前記電気回路が三次元立体回路として形成されているものが好ましく用いられうる。本発明では、酸化層の形成が基板の表面の全領域で同時に均一に進行しているので、基板の形状に影響されることなく、基板の表面全体に均一な厚みの酸化層が形成されている。その結果、例えば斜面等への回路形成の際においても、レーザーが酸化層を貫通せずに(酸化層はレーザーの貫通を阻止する機能を有する)、導電層のみを除去し、レーザー輪郭除去法での回路形成が短絡等を起こさずに良好に行える。酸化層にクラックが発生した場合でもヘアクラックの程度なので、クラックの幅が非常に狭く、クラックを起因とした回路形成時の短絡の問題が防止できる。また、基板の斜面や底面等においても、均一良好な高い反射率が確保されるので、基板の斜面や底面等にLED素子を実装した場合でも均一な光が確保できる。
本発明のさらに他の一局面は、前記回路基板にLED素子が実装されているLEDモジュールである。
本発明によれば、表面に形成された酸化層が高い密着強度と高い反射率とを有し、かつ基板自体が高い放熱性を有する窒化アルミニウム基板を得ることができる。
酸化層を有する窒化アルミニウム基板を説明するための部分断面模式図である。 (a)は、仮想の層の厚みの算出方法を説明するための断面模式図、(b)は、図2(a)の酸化層に存在する酸化アルミニウム成分を集めて、酸化アルミニウムのみからなる仮想の層を想定したときの説明図である。 窒化アルミニウム焼結体の焼成工程における温度プロファイルを示す図である。 垂直断面像をSEM観察したときに観察される、最表層にのみモノクリニック構造を有する粒界相を有し、内層には粒界相を有さない窒化アルミニウム焼結体の断面模式図である。 (a)〜(d)は、窒化アルミニウム基板に電気回路を形成する工程を説明するための模式図である。 LEDモジュールを説明するための模式図である。 実施例1〜7、比較例1〜6において、可視光波長域における反射率を分光光度計で測定したときの測定結果である。
従来の窒化アルミニウム基板に形成された酸化層は密着強度が低かった。そのために酸化層が形成された窒化アルミニウム基板に回路を形成した場合、窒化アルミニウム層と酸化層との界面から回路が剥離してしまうおそれがあった。また、窒化アルミニウム層と酸化層との密着強度が低い場合には、酸化層が剥離することにより基板の耐水性や耐湿性を損ない易くなるという問題もあった。特に、厚い酸化層は密着強度が著しく低かった。また、幅の広いクラックも生じ易かった。幅の広いクラックが生じることによっても、基板の耐水性や耐湿性を損ない易くなるという問題があった。酸化層の密着強度が低い理由は、窒化アルミニウムと酸化アルミニウムとの熱膨張率の差によるものと考えている。窒化アルミニウムの熱膨張率は、4.5(10−6/℃)程度、酸化アルミニウムの熱膨張率は7.7(10−6/℃)程度である。窒化アルミニウム焼結体は1000℃を超えるような温度で熱処理することにより酸化処理される。そして、熱処理後は常温付近にまで冷却される。したがって、熱処理により形成された酸化アルミニウムは、熱処理後の冷却により、窒化アルミニウムよりも高い割合で冷却収縮する。そのために、窒化アルミニウムと酸化アルミニウムとの界面において不整合を生じ、応力(歪)が作用するために、界面における密着性が低下するものと考えている。また、酸化層に幅の広いクラックが生じるものと考えている。
本発明者らは、窒化アルミニウム基板の表層に密着強度の高い酸化アルミニウム層を形成することを目的として、種々の検討を行った。その結果、一群の窒化アルミニウム基板において、密着強度が極めて高い酸化アルミニウム層が形成されていることを見出した。また、副次的に、厚膜の酸化層が高い光反射率を示すことも見出した。さらに、原料粉体中におけるカルシウムの含有量を制限することにより、高熱伝導率を維持しつつ、色相が良好となり、反射率が向上することも見出した。
本発明の一実施形態に係る酸化層を有する窒化アルミニウム基板を図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る酸化層を有する窒化アルミニウム基板を説明するための部分断面模式図である。図1中、符号1は酸化層を有する窒化アルミニウム基板、符号2は窒化アルミニウム層(窒化アルミニウム焼結体)、符号2aは結晶粒界(粒界相)、符号3は酸化層、符号3aは酸化アルミニウム層、符号3bは中間層(窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層)、符号4は窒化アルミニウム結晶粒子、符号5は酸化アルミニウム成分、をそれぞれ示す。
図1に示すように、本実施形態に係る窒化アルミニウム基板1は、窒化アルミニウム層(窒化アルミニウム焼結体)2の表面に酸化層3を有する。酸化層3は、その表層側の、酸化アルミニウムのみからなる酸化アルミニウム層3aと、この酸化アルミニウム層3aと焼結体2との間の、窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層3bとからなる。窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層3bは、酸化アルミニウム成分5のマトリックス中に窒化アルミニウム結晶粒子4が含有され分散したような構成を有する。
窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層(中間層)3bは、特に、酸化アルミニウム層3aとの界面から窒化アルミニウム層2に近づくにつれて、窒化アルミニウム結晶粒子4の含有割合が徐々に増大して、酸化アルミニウムから窒化アルミニウムに徐々に置き換わっていくような層である。つまり、窒化アルミニウム結晶粒子4の含有率が酸化層3の表層側から焼結体2側へ近づくにつれて傾斜的に増加する構成である。このような層構造は、後述するように、結晶粒界にモノクリニック構造を有する複合酸化物が存在する焼結体を、酸化条件を制御して、表面からの酸化の成長レート(成長速度)と粒界からの酸化の成長レート(成長速度)とのバランスを調整することにより形成することができる。
本実施形態においては、窒化アルミニウム焼結体2の表面に窒化アルミニウムの酸化層3が形成された窒化アルミニウム基板1が提供される。そして、前記酸化層3は、酸化アルミニウムのマトリックス(酸化アルミニウム成分5)中に窒化アルミニウム結晶粒子4が含有され、該窒化アルミニウム結晶粒子4の含有率が酸化層3の表層側から焼結体2側へ近づくにつれて増加する構成である。前記酸化層3中の酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の厚みは5〜20μmである。前記焼結体2中の(つまり原料粉体である窒化アルミニウム混合粉体中の)希土類元素の酸化物換算での含有量は3〜6質量%に調整されている。同様に、前記焼結体2中の(つまり原料粉体である窒化アルミニウム混合粉体中の)カルシウムの含有量は0.003質量%以下に調整されている。このような構成により、酸化層3中に含有される窒化アルミニウム系粒子が酸化処理後における冷却収縮に伴い発生する応力を緩和する作用を奏するため、窒化アルミニウム層2と酸化層3との密着性が極めて高くなる。
本実施形態において、仮想の層とは、前述したように、酸化層3中の酸化アルミニウムの総含有量に基づいて酸化アルミニウムのみからなると仮想される層のことである。つまり、酸化層3は、酸化アルミニウムのマトリックス5中に窒化アルミニウム結晶粒子4を含有しているので、酸化アルミニウム成分と窒化アルミニウム成分とが混在している。したがって、単に、酸化層3の見かけの厚みは、酸化アルミニウムのみからなる層の厚みではない。そこで、酸化層3のうち、窒化アルミニウム成分を除く、酸化アルミニウム成分のみからなる層を仮想するのである。そして、そのように仮想された層の厚みは、酸化層3の見かけの厚みのうち、窒化アルミニウム成分を除く、酸化アルミニウム成分のみからなると仮想された層の厚みとなる。
本実施形態では、窒化アルミニウム焼結体2中のカルシウムの含有量を0.003質量%以下に抑制したので、基板1の高熱伝導率を維持したまま、可視光波長域での基板1の反射率が60%以上に向上し、青色LEDの波長である475nmの波長での基板1の反射率が65%以上に向上することに寄与する。なお、カルシウム含有量の下限は特に限定されず、零にすることが可能であれば零であってもよく、零にすることが可能でなければ零でなくてもよい。要は、カルシウム含有量の上限が0.003質量%を超えないことが重要である。
前記酸化層3は、酸化アルミニウムのマトリックス5中に窒化アルミニウム結晶粒子4が含有され、該窒化アルミニウム結晶粒子4の含有率が酸化層3の表層側から焼結体2側へ近づくにつれて傾斜的に増加する構成である。つまり、酸化アルミニウムから窒化アルミニウムに徐々に置き換わっていくような層である。このような構成によれば、熱膨張率が酸化層3と窒化アルミニウム層2との界面で急激に変化することなく徐々に変化するために、酸化処理後の冷却収縮により生じる界面における不整合が緩和される。そして、このような構成の酸化層(応力緩和層)3を有することにより、より優れた密着性を示す。さらに、酸化アルミニウムが、窒化アルミニウム焼結体2の結晶粒界2aに侵入するように、または、焼結体2の内層方向に向かって酸化アルミニウム層を構成する酸化アルミニウムの一部分が、窒化アルミニウム焼結体2の結晶粒界2aに沿って延びるように形成されているので、アンカー効果も発揮される。なお、広義には、酸化層3全体を応力緩和層と見ることもできるが、特に本実施形態の場合、酸化層3の表層側に、現実の層としての酸化アルミニウムのみからなる酸化アルミニウム層3aを有し、この酸化アルミニウム層3aと焼結体2との間に、中間層(窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層)3bを有する構成であるので、この中間層3bを応力緩和層として見るほうがより好ましい。
また、焼結助剤である希土類元素の酸化物を配合して窒化アルミニウムを焼結しているので、窒化アルミニウムの焼結体2には、モノクリニック構造を有する粒界相(結晶粒界)2aが形成される。モノクリニック構造は、REAl(REは希土類元素)で表されるような結晶構造である。窒化アルミニウム基板1においては、窒化アルミニウム層2の窒化アルミニウム結晶粒子4の粒界相2aに、モノクリニック構造を有する希土類元素とアルミニウムとを含有する複合酸化物を含有することが好ましい。このような複合酸化物を粒界相2aに含有する場合には粒界相に沿うように酸化アルミニウムを存在させることができる。このような粒界相2aに沿って伸びた酸化アルミニウムは、表面に形成された酸化アルミニウム層3aのアンカーになる。このアンカーにより、窒化アルミニウム層2と酸化アルミニウム層3aとの密着性がより高くなる。
希土類元素の酸化物としては、酸化イットリウムが、より充分なモノクリニック構造を有する複合酸化物が形成される点から好ましい。
本実施形態に係る窒化アルミニウム基板1に含まれる酸化層3は、該酸化層3中に含まれる酸化アルミニウム成分5の総含有量に基づいて、酸化アルミニウムのみからなる仮想の層を想定し、この仮想の層の算出される厚み(以下、仮想厚みとも呼ぶ)が5〜20μmになるような層である。なお、酸化層3の厚みをこのような仮想厚みで規定した理由は、窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層3b中に島状や縞状のように不連続に存在する酸化アルミニウム成分5を含む窒化アルミニウム基板1中の酸化アルミニウムの含有量を明確に特定するためである。
酸化層3の仮想厚みは、5μm以上が好ましいが、より好ましくは7μm以上、さらに好ましくは9μm以上である。また、酸化層3の仮想厚みは、20μm以下が好ましいが、より好ましくは18μm以下、さらに好ましくは16μm以下である。前記仮想厚みが5μm未満の場合には、充分な光反射率を得ることが困難になる。また、前記仮想厚みが20μmを超える場合には、クラックの幅が広くなり、耐水性や耐湿性が不十分となる。なお、特に、仮想厚みが10μmを超える場合には、光反射率が極めて高い窒化アルミニウム基板が得られる。
また、前記酸化層3中の酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の厚みは5〜20μmであるから、窒化アルミニウム基板1の表面に高い光反射性を付与できる。窒化アルミニウムは熱伝導率は高いが、反射率は可視光波長域で30%前後と低い。一方、酸化アルミニウムの反射率は80%以上であるが、熱伝導率は窒化アルミニウムの20%以下である。アルミナの反射率は厚みに依存する。窒化アルミニウム基板1の表面にCVDやPVD等の手法を用いてアルミナを成膜する場合には十分な厚みのアルミナ層の確保が困難で、十分な反射率が確保できない。本発明によれば、窒化アルミニウム基板1の表面に、厚い膜厚の酸化層3ないし酸化アルミニウムのみからなる仮想の層が形成されている。
そして、希土類元素の酸化物換算での含有量が3〜6質量%、及びカルシウムの含有量が0.003質量%以下である窒化アルミニウム基板に、酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の厚みが5〜20μmである酸化層3を有するから、例えば可視光波長域において60%以上の反射率が確保でき、青色LEDの波長である475nmの波長において65%以上の反射率が確保できる。また、基材が窒化アルミニウムであるため、100W/Km以上の高い熱伝導率が確保できる。
また、前記酸化層(応力緩和層)3は、酸化アルミニウムのマトリックス5中に窒化アルミニウム結晶粒子4が含有され、該窒化アルミニウム結晶粒子4の含有率が酸化層3の厚み方向に酸化層3の表層側から焼結体2側へ近づくにつれて傾斜的に増加する構成である。つまり、酸化アルミニウムから窒化アルミニウムに徐々に置き換わっていくような層である。このような構成によれば、熱膨張率が酸化アルミニウム層3aと窒化アルミニウム層2との界面で急激に変化することなく徐々に変化するために、酸化処理後の冷却収縮により生じる界面における不整合が緩和される。その結果、酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の厚みが5μm以上と厚くても、酸化層3の密着性を確保すると共に、酸化アルミニウムと窒化アルミニウムとの熱膨張率の差に起因するクラックの幅を100nm以下のヘアクラックに抑制できる。なお、酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の厚みが20μmを超えると、クラックの幅が200nm程度となり、窒化アルミニウム焼結体2の保護性が損なわれる。
図2を参照しながら、酸化層3中における酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の厚みの算出方法について具体的に説明する。仮想の層とは、前述したように、酸化層3中の酸化アルミニウムの総含有量に基づいて酸化アルミニウムのみからなると仮想される層のことである。
酸化層3の仮想厚みの測定においては、はじめに、酸化層が形成された窒化アルミニウム基板を研磨することにより、垂直断面を表出させる。なお、研磨手段は、非水系の潤滑剤及び研磨剤を用いた機械研磨や、アルゴンビーム等のエネルギー加工による研磨等、が用いられうる。得られた垂直断面は、走査型電子顕微鏡(SEM)で3000倍程度の倍率で観察される。そして、撮影された画像をEDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)分析することにより断面の酸化部分の元素マッピングを行う。なお、EDXとは、極微小領域に電子線を照射したときに試料表面から発生する特性X線を用いることにより、試料表面の多元素の組成分析を同時に行う元素分析法である。元素マッピングにおいては、図2Aに示すように、画像処理により酸化アルミニウム成分のみを着色する。そして、着色された酸化アルミニウム成分の合計面積を算出する。そして、算出された合計面積を垂直断面の幅(図2(a)中の「L」)で除する。これにより仮想厚みが良好に精度よく算出される。この厚みは、図2(b)に示すように、酸化アルミニウムのみからなる仮想の層Tを想定したときの仮想の層Tの厚みになる。
なお、EDXによる元素分析によれば、図2(a)に示すように、窒化アルミニウム結晶粒子の分散状態も確認できる。また、酸化層の表面から遠ざかり、窒化アルミニウム層に近づくにつれて、窒化アルミニウム結晶粒子の含有割合が傾斜的に増大していることも確認できる。
なお、上記仮想厚みは、窒化アルミニウム焼結体を酸化処理する前後における重量変化を測定して得られる、以下の方法によって算出される重量仮想厚みと実質的に同じになる。
窒化アルミニウム焼結体の酸化処理において、酸化処理前の重量(W0(g))と酸化処理後の重量(W1(g))とを測定する。そして、酸化処理前の基板に対する酸化処理後の基板の重量の増加分(W1−W0)を、酸化アルミニウムの分子量(102)に対する窒化アルミニウムの分子量(41)の2倍との差、酸化アルミニウムの密度(3.99(g/cm))、及び基板の全表面積(S(cm))で除した後、酸化アルミニウムの分子量(102)及び単位調整用係数(1万)を乗じて得られる以下の式1から算出しうる。
重量仮想厚み(μm)=〔(W1−W0)/{(102−41×2)×3.99×S}〕×102×10000 …(式1)
ここで、EDX分析を用いた元素マッピングによれば、窒化アルミニウム基板1の酸化層3においては、その表層部の酸化アルミニウム層3aから、窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層3bに、酸化アルミニウム成分5が隣接する複数の窒化アルミニウム結晶粒子4の粒界相に侵入するように形成されているように観察される。
酸化層3の見かけの厚みとしては、好ましくは10〜200μm、より好ましくは15〜100μm、さらに好ましくは20〜50μmである。
酸化層3の見かけの厚みとしては、窒化アルミニウム結晶粒子4の平均結晶粒子径の2倍以上の厚み、さらには3倍以上の厚みであることが好ましい。このような厚みの酸化層3を形成させた場合には、窒化アルミニウム基板1の表層部から窒化アルミニウム結晶粒子4の粒界相に沿って、酸化アルミニウム成分5が内層に伸びるように形成され、酸化アルミニウム成分5が酸化アルミニウム層3aのアンカーとなって、酸化アルミニウム層3aの密着性が向上する。
また、酸化層3中における、窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層3bの厚みとしては、酸化アルミニウム層3aの厚みに対して2倍以上、さらには4倍以上であることが好ましい。このような厚みの場合には、酸化処理における熱処理後の冷却過程において、窒化アルミニウムと酸化アルミニウムとの熱膨張率の差により生じる内部応力を中間層(窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層)3bの厚みで十分に緩和することができる。それにより、窒化アルミニウム層2と酸化層3との界面における不整合を抑制することができる。また、窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層3bの厚みの上限は特に限定されないが、酸化アルミニウム層3aの厚みに対して20倍以下、さらには15倍以下であることが好ましい。
このような酸化層3を有する窒化アルミニウム基板1は、モノクリニック構造を有する希土類元素とアルミニウムとの複合酸化物を粒界相に含有する窒化アルミニウム焼結体を、酸化雰囲気下で所定の条件で熱処理することにより形成しうる。
まず、モノクリニック構造からなる希土類元素とアルミニウムとの複合酸化物を粒界相に含む窒化アルミニウム焼結体は、希土類元素の酸化物を3〜6質量%含有する原料粉体としての窒化アルミニウム混合粉体を、非酸化雰囲気下(例えば窒素雰囲気下等)において、1825〜1900℃の温度範囲で、所定の時間、焼結させることにより得られる。特に、本実施形態では、窒化アルミニウム混合粉体中のカルシウムの含有量を0.003質量%以下に制限している。これにより、焼結温度を1825℃以上に設定している。カルシウムの含有量が低いので、焼結温度が1825℃未満であると、窒化アルミニウムの焼結が不十分となり、十分な熱伝導率が実現しないからである。
窒化アルミニウム粉末としては、従来から窒化アルミニウム焼結体の製造に用いられている、例えば、窒素又はアンモニアをアルミニウムに直接反応させる直接窒化法や、アルミナと炭素との混合物に窒素又はアンモニアを反応させる還元窒化法等によって得られるものが特に限定なく用いられうる。本実施形態においては、特には、直接窒化法により作成された0.5〜1.3質量%、さらには0.9〜1.2質量%程度の酸素を含有する窒化アルミニウム粉末が、モノクリニック構造を有する複合酸化物がより形成されやすい点から好ましい。
また、希土類元素の酸化物としては、酸化イットリウム(Y)、酸化エルビウム(Er)、酸化ランタン(La)、酸化ディスプロシウム(Dy)等が挙げられる。希土類元素の酸化物は、焼結助剤として働く。焼結助剤は窒化アルミニウムの焼結を均一に進行させ易くするために添加される。希土類元素の酸化物の粉体を窒化アルミニウム混合粉体に配合して焼結することにより、得られる窒化アルミニウム焼結体の粒界相に希土類元素とアルミニウムとの複合酸化物が形成される。このとき、1825℃以上の温度で焼結させることにより、粒界相にモノクリニック構造を有する複合酸化物がより形成されやすくなる。
窒化アルミニウム混合粉体中の希土類元素の酸化物の配合割合としては、3〜6質量%、さらには、4〜8質量%の範囲であることが好ましい。このような配合割合の場合には、粒界相にモノクリニック構造を有する複合酸化物を形成させやすくなる。なお、特に、酸化イットリウム(Y)を配合する場合には4〜6質量%、酸化エルビウム(Er)を配合する場合には5〜6質量%の範囲内で配合し、1825℃以上の焼結温度で焼結させることが好ましい。このような条件下では、モノクリニック構造を有する複合酸化物が十分良好に形成される。
窒化アルミニウム混合粉体には、窒化アルミニウムの焼結温度を下げるために、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、またはこれらの酸化物を焼結助剤としてさらに少量配合してもよい。特に、本実施形態においては、窒化アルミニウム混合粉体中におけるカルシウムの含有量を0.003質量%以下に制限している。これにより、窒化アルミニウム焼結体の色相が変化して反射率が低下するという問題が低減される。その結果、基板の高熱伝導率を維持したまま、可視光波長域での基板の反射率が60%以上に向上し、青色LEDの波長である475nmの波長での基板の反射率が65%以上に向上することに寄与する。このような高い反射率の窒化アルミニウム基板は、高い反射率が要求されるLED用回路基板として好ましく用いられうる。
窒化アルミニウム混合粉末は、窒化アルミニウム粉末と、希土類元素の酸化物と、焼結温度を下げるためのカルシウムと、必要に応じて配合されるその他の焼結助剤とを混合することによって得られる。混合方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、上記各成分を有機溶剤とともにボールミルを用いて混合し、その後、有機溶剤を揮発させる方法等が挙げられる。
窒化アルミニウム混合粉末は、バインダとともに混練された後、所定の形状の予備成形体に成形される。混練には、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、ロール等が用いられる。バインダとしては、MIM(Metal Injection Molding)やCIM(Ceramic Injection Molding)等の分野で従来から用いられているバインダが用いられる。その具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン、パラフィンワックス、ステアリン酸、ポリエチレン、及びポリプロピレン等の有機バインダ等が用いられうる。
成形方法は、特に限定されず、例えば、圧縮成形等の各種プレス成形法のほか、CIM(Ceramic Injection Molding)等の射出成形、トランスファー成形が用いられる。
得られた予備成形体は、大気中で400〜450℃で、昇温工程も含めて24〜72時間、加熱されることにより予め脱脂(脱バインダ)されることが好ましい。
また、圧縮成形方法としては、バインダを添加せずに、窒化アルミニウム系混合粉末を冷間等方圧加圧法(CIP)を用いて、押し固める方法を用いてもよい。CIPによれば、バインダを用いないで成形することができる。したがって、通常1〜3日間程度要する脱脂工程を省略できる。なお、CIPとは、水等の液体を圧力媒体とし、粉体(前記混合物)に高圧の等方圧力を加えることにより成形する方法であり、粉体(前記混合物)を様々な形状に成形することができる。
このようにして得られた予備成形体を、非酸化雰囲気下(例えば窒素雰囲気下等)で焼成して焼結させることにより、窒化アルミニウム焼結体が得られる(焼成工程)。
焼結方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、窒化ホウ素製のセッター上に脱脂された予備成形体を載置して、予備成形体を覆うように窒化ホウ素製のこう鉢を載置する。そして、セッターとこう鉢とで囲まれた空間を非酸化雰囲気下にして加熱する方法が挙げられる。
焼結温度としては、前述の理由によりカルシウムの配合量が低いため1825℃以上、さらには1830℃以上、とくには、1835℃以上の温度であることが好ましい。このような焼結温度の場合には、助剤成分と窒化アルミニウム粒子表面に微量に存在する酸化アルミニウムとが液相化しながら粒界領域全体で反応が進行する。それにより粒界相にモノクリニック構造を有する複合酸化物が形成されやすくなる。これに対し、例えば、1805〜1815℃のような、比較的低い温度で焼結すると、粒界相の液相化が不充分になって、モノクリニック構造を有する複合酸化物の生成割合が低くなる。
また、焼結温度の上限は特に限定されるものではないが、本実施形態では、1900℃以下とする。焼結温度が高すぎる場合には、焼結により形成される希土類金属とアルミニウムとの複合酸化物が窒化アルミニウム基板の表面へ移動しやすくなる。そして、表面の前記複合酸化物が熱酸化されることにより色むらとして認識されるおそれがある。このような色むらは光の反射のマクロ的な不均一の要因になる。また、焼結時に成形体と接触しているセッターに窒化アルミニウム焼結体が付着してしまうおそれもある。この場合には、セッターから窒化アルミニウム焼結体を剥がす際に、セッターに焼結体の一部が残存する。そして、次の焼結のために、サンドペーパーやラッピング等によって、付着した焼結体を削り落とす手間がかかる。このために焼結温度の上限としては、1900℃以下、さらには1875℃以下、とくには1850℃以下であることが好ましい。
焼結時間は、焼結温度によるために一概に規定できないが、例えば1825℃で焼結する場合には、2〜6時間程度で焼結される。
次に、窒化アルミニウムの焼結プロセスの具体的一例について、図3を参照して説明する。
図3は、窒化アルミニウムの焼結プロセスにおける温度プロファイルである。図3の温度プロファイルにおいては、t1〜t2が第一昇温過程、t2〜t3が第二昇温過程、t3〜t4が焼結過程、t4〜t5が第一降温過程、t5〜t6が第二降温過程、t6〜t7が第三降温過程をそれぞれ示す。第一昇温過程は、生産効率を高めるために、液相が生成される温度である1300℃付近まで急速に昇温するための過程である。また、第二昇温過程は、1300℃付近から焼結温度(すなわち、1825〜1900℃)まで、焼結時の急激な収縮により生じる焼結体の反りや変形を抑制するために低速で昇温するための過程である。また、焼結過程は焼結を進行させる過程である。また、第一降温過程は冷却速度を制御しながら1600℃以下まで冷却することにより、窒化アルミニウム焼結体の界面状態を制御するための過程である。また、第二降温過程は焼結炉内で温度制御せずに、炉冷する過程である。また、第三降温過程は外気により冷却する過程である。
ここで、第二昇温過程においては、昇温速度が0.5〜5℃/minの範囲であることが好ましい。前記昇温速度が低すぎる場合には、焼結プロセスに時間がかかり過ぎるために、エネルギーコストが高くなりすぎる傾向がある。また、昇温速度が高すぎる場合には焼結時の収縮が急激に生じることにより焼結体に反りや変形が発生しやすくなる傾向がある。
また、第一降温過程においては、降温速度が0.5〜10℃/minの範囲であることが好ましい。降温速度が低すぎる場合には焼結プロセスに時間がかかり過ぎるために、エネルギーコストが高くなりすぎる傾向がある。
なお、第一降温過程においては、とくに、焼結温度(すなわち、1825〜1900℃)から1600℃まで、さらには焼結温度から1300℃まで、とくに、焼結温度から1100℃まで、の降温過程における降温速度が0.5〜5℃/minの範囲であることが好ましい。第一降温過程において、このような低速でゆっくりと冷却した場合には、窒化アルミニウム焼結体の内層に存在する液相成分を徐々に表層領域に移動させることができる。そして、図4に示すように、モノクリニック構造の複合酸化物を含有する粒界相2aが焼結体の表層7に偏在し、焼結体の内層8には粒界相が存在しないか粒界相がきわめて少ない焼結体が得られる。その結果、窒化アルミニウム焼結体が緻密になるために、熱伝導率が向上する。このような焼結体は、第一降温過程において低速で冷却することにより、粒界相を形成する複合酸化物9が焼結体表面に排出されて形成される。なお、焼結体表面に排出された複合酸化物9は、焼結体表面に塊状に表出して表面の平滑性を著しく失わせる。このような場合には、後述する酸化処理の前に、予め、研磨処理やラッピング処理を施すことにより、塊状の複合酸化物9を除去して表面状態を整えることが好ましい。表面状態を整えることにより、回路の密着性を維持することができる。
なお、図4に示したような、モノクリニック構造の複合酸化物を含有する粒界相2aが焼結体の表層7に偏在し、焼結体の内層8には粒界相が存在しないか粒界相がきわめて少ない焼結体を得る必要のない場合は、図3に示したような温度プロファイルを必ずしも経る必要がないことはいうまでもない。
このようにして窒化アルミニウム焼結体が得られる。得られた窒化アルミニウム焼結体は、さらに、熱間等方圧加圧法(HIP)により、押し固められて強度を高めてもよい。なお、HIPとは、アルゴン等の気体を圧力媒体とし、成形体全面に高圧の等方圧力を高温で加える方法である。
窒化アルミニウム焼結体中の結晶粒子の平均粒子径としては1〜15μm、さらには2〜8μmの範囲であることが好ましい。前記平均粒子径が大きすぎる場合には得られる窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層3bが厚くなりすぎる傾向がある。また、前記平均粒子径が小さすぎる場合には窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層3bの形成が困難になる傾向がある。なお、窒化アルミニウム焼結体中の結晶粒子の平均結晶粒子径Dは、JIS H0501に準拠した切断法に準じて、一定長さLの線分中に含まれる結晶粒子数Nを数え、D=L/Nにより求められる。
次に、窒化アルミニウム焼結体を、酸化雰囲気下において、熱処理(酸化処理)することにより、焼結体の表面(表層部分)に酸化層が形成される(酸化工程)。
酸化雰囲気は、酸素を含み、窒化アルミニウム焼結体の表層を酸化しうる雰囲気であれば特に限定されない。具体的には、例えば、大気雰囲気や酸素雰囲気が挙げられる。
酸化工程における熱処理温度としては、1050〜1350℃が好ましく、1100〜1300℃がより好ましく、1100〜1250℃がさらに好ましい。このような熱処理温度の場合には、酸化層の成長速度が適度であるために、比較的短時間で、適度な厚みを有する酸化層が良好に形成される。熱処理温度が1050℃未満の場合には、充分な厚みの酸化層を形成するために、長時間を要する。また、熱処理温度が1350℃を超える場合には、酸化速度が速すぎることにより、膜厚の制御が困難になる傾向がある。具体的には、約1μmの酸化層(見かけの酸化層)を形成させるために、例えば、1050℃では3時間程度、1100℃では1時間程度、1350℃では30秒程度を要する。
また、前記酸化雰囲気としては、水蒸気分圧1.25〜100hPa、さらには、6〜60hPaの範囲の量の水分を含有することが好ましい。酸化雰囲気に適度な水分が含有される場合には、酸化初期に形成される酸化膜に微細な空隙(マイクロポア)が形成される。この場合には、マイクロポアを通じて酸素が内部に供給されやすくなるために、酸化層の成長レートを適度に促進することができる。このような、水蒸気分圧の調整は、密閉炉中に水分調整されたガスを導入することにより行われる。
このように熱処理された窒化アルミニウム焼結体は、600℃以上の温度においては炉冷し、600℃から150℃程度の温度までは炉内で風冷し、150℃付近から室温付近までの温度においては空冷することが好ましい。このような冷却条件によれば、冷却収縮による窒化アルミニウム層と酸化アルミニウム層との界面における不整合をとくに抑制することができる。これにより、密着強度の高い酸化層3を有する窒化アルミニウム基板1が得られる。また、酸化アルミニウム層と窒化アルミニウム層との界面近傍において、酸化アルミニウム層の一部が窒化アルミニウム層の結晶粒界に侵入するように形成されているために、酸化アルミニウム層がアンカー効果によっても密着性が向上すると思われる。
このような窒化アルミニウム基板は、高い熱伝導率を有し、電気絶縁性にも優れた基板である。また、電気回路基板として用いた場合には、窒化アルミニウム層と酸化層との密着性が高いために電気回路の剥離の発生を抑制することができる。さらに、このような窒化アルミニウム基板は、酸化層の厚みが厚いために、窒化アルミニウム基板の内部に空気中の水が浸入しにくい。また、とくに酸化層の厚み(仮想厚み)が10μmを超える場合には、優れた反射率を有する基板になる。そして、窒化アルミニウム混合粉体中におけるカルシウムの含有量、ひいては窒化アルミニウム焼結体中におけるカルシウムの含有量を0.003質量%以下に制限しているから、窒化アルミニウム焼結体の色相が変化して反射率が低下するという問題が低減され、その結果、基板の高熱伝導率を維持したまま、65%以上の可視光波長域での反射率が確保できる。そして、このような高い反射率の窒化アルミニウム基板は、高い反射率が要求されるLED用回路基板に特に好適である。
したがって、本実施形態の窒化アルミニウム基板は、その表面に電気回路を形成することにより、放熱性に優れた電気回路基板として用いることができる。このような電気回路基板は、電気回路の密着性が高く、また、表面の光反射率も高い。従って、高い放熱性と高い反射性が要求されるようなLEDが搭載される回路基板として好ましく用いられうる。特に、窒化アルミニウム基板が三次元立体形状を有し、その基板表面に導電層を形成した後、該導電層をレーザー加工により部分的に除去することにより形成された三次元立体回路として好ましく用いられうる。
本実施形態の窒化アルミニウム基板に電気回路を形成する方法としては、スパッタリング等の手段により導電層を形成した後、レーザー加工により回路パターン部分以外の部分を除去したのち、さらにめっきプロセスにより電気回路を形成するような方法が挙げられる。
さらに具体的には、例えば、図5(a)に示すように、窒化アルミニウム層2及び酸化層3を備える三次元形状を有するような窒化アルミニウム基板11の回路を形成する表面に、スパッタリングにより金属膜10を形成する。スパッタリング源(ターゲット)としては、第1段階では、クロム及びチタンからなる群から選択された1種の金属を用い、第2段階では、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、金及び金−錫合金等からなる群から選択された1種の金属を用いる。そして、図5(b)に示すように、形成された金属膜10の電気回路となる部分の輪郭をレーザー12により除去する(レーザー輪郭除去法)。そして、図5(c)に示すように、電気めっき等の手法により、回路形成部分に銅めっき13を施す。そして、図5(d)に示すように、銅めっき13を形成した後、基板11の表面をソフトエッチングすることにより、電気回路14が形成され、立体回路基板20が得られる。ここで、第1段階で形成されるクロム膜やチタン膜は、窒化アルミニウム基板と電気回路(銅箔回路)との密着性を高めるために形成されるものである。また、レーザーによるパターニングとしては、例えば、THG−YAGレーザーやSHG−YAGレーザー等の高エネルギービーム照射によって、回路形成部分の輪郭部分の金属膜を除去することによって行う。
このようにして形成された立体回路基板は、放熱性と絶縁性とが要求される、発光ダイオード(LED)、ペルチェ素子その他各種半導体素子を実装する立体回路基板として好ましく用いられる。具体的には、図6に示すような、立体回路基板20に、単数または複数のLED素子15を実装してなるLEDモジュールとしても好ましく用いられる。
実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されることはない。
[実施例1]
表1に示すように、直接窒化法により作製した酸素含有量1.1質量%の窒化アルミニウム粉末に対して、酸化イットリウム(Y)粉末5.0質量%(イットリウムの酸化物換算での含有量が5.0質量%)と、酸化カルシウム(CaO)42質量ppm(カルシウムとして30質量ppm相当)を配合し、ボールミルにて、有機溶剤中で6時間混合した。その後、ドラフトチャンバ内で有機溶剤を充分に揮発させることにより、窒化アルミニウム混合粉末を得た。得られた混合粉末にポリビニルアルコール(PVA)系の有機バインダを配合して充分に混練した。得られた混練物をCIM法により射出成形して成形体を得た。そして、得られた成形体を450℃で72時間熱処理して有機バインダを分解(脱脂)することにより、予備成形体を得た。次に、予備成形体をセッターに載置し、窒素雰囲気下において、1825℃で、3時間、焼結することにより、30×40×2mmの板状の窒化アルミニウム焼結体を作製した(焼成工程)。
次に、得られた窒化アルミニウム焼結体を、焼結炉に入れ、大気中、1100℃で、12時間保持して酸化処理することにより、表面に酸化層が形成された窒化アルミニウム基板を作製した(酸化工程)。
得られた窒化アルミニウム基板の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定すると、182W/K・mであった。
また、アルキメデス法により測定された密度は、3.31g/cmであった。
得られた窒化アルミニウム焼結体及び窒化アルミニウム基板を以下のように評価した。
(窒化アルミニウム焼結体の結晶粒子径の測定)
窒化アルミニウム焼結体を圧延垂直方向(横断面)に切断した後、機械研磨と鏡面仕上げを施した後、エッチングを行うことにより試料を作成した。そして、得られた試料をSEMにより、5000倍で断面を観察した。そして、この断面の断面写真から結晶粒子径を測定した。なお、結晶粒子径は、JIS H0501に準拠した切断法によりn=300で算出した。その結果、焼結体の結晶粒子径は4μmであった。
(窒化アルミニウム焼結体の粒界相組成の同定)
上記「窒化アルミニウム焼結体の結晶粒子径の測定」で観察された断面において観察された粒界相の元素比をEDX分析した。EDX分析の結果、粒界相の元素比はO:Al:Y=15:4:6であることが確認された。算出された元素比から、粒界相がYAlO:YAl=2:1の複合酸化物から形成されていることが確認された。この結果から、粒界相にはモノクリニック構造を有するYAlが含有されていることが確認された。
(窒化アルミニウム基板の表層の酸化層の観察)
上記「窒化アルミニウム焼結体の結晶粒子径の測定」で用いた方法と同様にして、窒化アルミニウム基板の垂直断面を表出させた。そして、SEMにより垂直断面の断面写真を2500倍の倍率で撮影した。そして、撮影された画像をEDX分析することにより断面の酸化部分のマッピングを行った。そして、図2(a)に示すように画像処理により酸化部分のみを着色した。そして、その着色部の合計面積を算出し、その合計面積を断面の幅(図2(a)中のL)で除することにより、仮想厚み(T)を算出した。その結果、酸化層の仮想厚みは13μmであった。
また、表層の酸化アルミニウムのみからなる酸化アルミニウム層3aの厚みを計測したところ3μmであった。
また、EDX分析により、酸化アルミニウム層と窒化アルミニウム層との間には、酸化アルミニウム層3aから内層の粒界相へ酸化アルミニウムが侵入するような形態で、窒化アルミニウム結晶粒子を含有する酸化層(窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層)が形成されていることが確認できた。
酸化アルミニウム層と窒化アルミニウム層との間に存在する窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層の厚みは約24μmであった。つまり、窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層(中間層)3bの厚みは、表層の酸化アルミニウム層3aの厚み(3μm)の8倍であった。
また、EDXによる元素分析により、酸化アルミニウム層との界面から遠ざかるにつれて窒化アルミニウム結晶粒子が傾斜的に増大していることが確認できた。さらに、酸化層の表面は色むらの見られない、均一な外観であった。
(酸化アルミニウム層の密着強度)
窒化アルミニウム基板の表面にスパッタ法によりクロム被膜を形成し、さらに、スパッタ法により銅被膜を形成することにより、金属膜を形成した。スパッタ法により金属膜を形成した後、レーザーパターニング(レーザー輪郭除去法)により、金属膜を2mm幅の矩形に成形し、ピール強度測定用部位を作製した。その後、電解銅めっきを施すことによって、ピール強度測定用部位を15μmの厚みに厚膜化した。この2mm幅のピール強度測定用部位の端部をデザインカッターで剥離し、チャッキング部分を作製した。この窒化アルミニウム基板をピール強度測定用部位の幅方向に自由移動可能なステージに固定し、チャッキング部分をチャッキングした。そして、ピール強度測定用部位を引剥がし速度50mm/minで4mm引き剥がしたときの荷重の平均値(N=6)を算出した(JIS C5016の導体の引き剥がし強さに準拠)。なお、上記試験は、島津製作所製小型卓上試験機EZGraphを用いて行った。得られた密着強度は1.8N/mmであった。このとき、酸化層と金属膜との界面で剥離していた。これは、酸化層と窒化アルミニウム層(焼結体)との界面の密着強度が1.8N/mm以上であることを示す。
窒化アルミニウム基板の表面の可視光波長域(400〜800nm)における反射率を分光光度計で測定した。可視光波長域の全域において、反射率は60%をはるかに超えていた。青色LEDの波長である475nmの波長において、反射率は69.3%であった。このとき得られた測定結果を図7に示す。
上記評価結果を表1及び表2に示す。
[実施例2〜7、比較例1〜6]
実施例1と同様にして、表1に示す配合組成で、それぞれ窒化アルミニウム焼結体を作製し、酸化層を形成し、評価を行った。結果を表1、表2及び図7に示す。
・実施例2は、実施例1と比べて、カルシウムの含有量を少なくし、酸化時間を長くしたものである。
・実施例3は、実施例1と比べて、カルシウムの含有量を低くしたものである。
・実施例4は、実施例1と比べて、カルシウムの含有量を低くしたものである。
・実施例5は、実施例1と比べて、酸化イットリウムの含有量を低くし、成形方法をプレス成形とし、焼結温度を高くし、酸化温度を高くし、酸化時間を短くしたものである。
・実施例6は、実施例1と比べて、酸化イットリウムの含有量を高くし、成形方法をプレス成形とし、酸化温度を低くし、酸化時間を長くしたものである。
・実施例7は、実施例1と比べて、酸化時間を長くしたものである。
・比較例1は、実施例1と比べて、カルシウムの含有量を多くし、酸化時間を短くしたものである。
・比較例2は、実施例1と比べて、カルシウムの含有量をかなり多くし、酸化時間を短くしたものである。
・比較例3は、実施例1と比べて、カルシウムの含有量をかなり多くし、焼結温度を低くし、酸化時間を短くしたものである。
・比較例4は、実施例1と比べて、カルシウムの含有量をかなり多くし、酸化時間を長くしたものである。
・比較例5は、実施例1と比べて、酸化エルビウムを用い、酸化エルビウムの含有量を多くし、カルシウムの含有量を少なくし、酸化時間を短くしたものである。
・比較例6は、実施例1と比べて、酸化温度を高くし、酸化時間を長くし、雰囲気炉に、露点が−25℃の乾燥空気を導入して酸化処理を行ったものである。
Figure 2011111341
Figure 2011111341
表1及び表2の結果から、実施例1〜7は、いずれも、5μm以上20μm以下という厚い酸化層(仮想厚み)を形成しても、酸化層の密着強度が1.5(N/mm)以上あり、酸化層の密着性が向上していた。また、可視光波長域での反射率が65%以上あり(最低で67.6%)、高い反射率を実現していた。特に、カルシウムの含有量がより少ない実施例2〜4は、反射率がより高かった。また、焼結温度及び酸化温度がより高い実施例5も、反射率が良好であった。また、酸化時間がより長い実施例7も、反射率が良好であった。
一方、比較例1〜6は、いずれも、可視光波長域での反射率が65%未満で(最高で62.6%)、反射率が低かった。特に、比較例3は、粒界相への酸化アルミニウムの侵入がなく、中間層(窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層)が生成しておらず、反射率及び密着強度に共に著しく劣っていた。これは、焼結温度が低すぎて、窒化アルミニウム焼結体中に存在する、希土類元素とアルミニウムとを含むモノクリニック構造の複合酸化物の生成割合が低くなり、酸化工程では表面側からの酸化が主となって、酸化物マトリックス中に窒化アルミニウム粒子が分散した酸化層(応力緩和層)が形成されなかったものと考えられる。比較例1、2、4は、カルシウムの含有量が0.003質量%を超えて多かったため、窒化アルミニウム基板の色相が変化したことが要因の1つと考えられる。比較例5は、反射率が低いことの他、酸化エルビウムを焼結助剤としたため、窒化アルミニウム焼結体内にアルミニウムとエルビウムとの複合酸化物が形成され、その結果、窒化アルミニウムの色が赤みを帯び、特定の波長で光を吸収する傾向が生じた。そのため、図7に現れているように、反射率が波長によって均一でなかった。比較例6は、反射率が低いことの他、10μmの酸化層の形成に、1300℃の高温で50時間が必要で、量産性に欠ける結果であった。
1 窒化アルミニウム基板
2 窒化アルミニウム層(窒化アルミニウム焼結体)
2a 粒界相
3 酸化層
3a 酸化アルミニウム層
3b 中間層(窒化アルミニウム結晶粒子含有酸化層)
4 窒化アルミニウム結晶粒子
5 酸化アルミニウム成分
10 金属膜
12 レーザー
14 電気回路
15 LED素子
20 立体回路基板

Claims (12)

  1. 窒化アルミニウム焼結体の表面に窒化アルミニウムの酸化層が形成された窒化アルミニウム基板であって、
    前記焼結体中のカルシウムの含有量が0.003質量%以下であり、
    前記酸化層は、酸化アルミニウムのマトリックス中に窒化アルミニウム結晶粒子を含有し、該窒化アルミニウム結晶粒子の含有率が酸化層の厚み方向に表層側から焼結体側へ向けて増加し、
    前記酸化層中の酸化アルミニウムの総含有量に基づいて酸化アルミニウムのみからなる仮想の層の厚みを算出したときの厚みが5〜20μmであることを特徴とする窒化アルミニウム基板。
  2. 前記焼結体中に、希土類元素が酸化物換算で3〜6質量%含まれていることを特徴とする請求項1に記載の窒化アルミニウム基板。
  3. 前記希土類元素の酸化物は、酸化イットリウムであることを特徴とする請求項2に記載の窒化アルミニウム基板。
  4. 前記仮想の層の厚みは、前記酸化層の垂直断面像をEDX観察して得られる酸化アルミニウムの面積の合計を前記垂直断面像の幅で除することにより算出される厚みであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化アルミニウム基板。
  5. 前記仮想の層の厚みは、窒化アルミニウム焼結体の酸化処理前の重量(W0(g))及び酸化処理後の重量(W1(g))と、酸化アルミニウムの分子量(102)と、窒化アルミニウムの分子量(41)と、酸化アルミニウムの密度(3.99(g/cm))と、基板の全表面積(S(cm))とを用いて式1から算出される重量仮想厚みであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化アルミニウム基板。
    重量仮想厚み(μm)=〔(W1−W0)/{(102−41×2)×3.99×S}〕×102×10000 …(式1)
  6. 前記酸化層は、その表層側に、酸化アルミニウムのみからなる酸化アルミニウム層を有し、この酸化アルミニウム層と焼結体との間に、酸化アルミニウムのマトリックス中に窒化アルミニウム結晶粒子を含有し、該窒化アルミニウム結晶粒子の含有率が酸化層の厚み方向に表層側から焼結体側へ向けて増加する中間層を有する構成であり、前記中間層の厚みが前記酸化アルミニウム層の厚みの2倍以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の窒化アルミニウム基板。
  7. 窒化アルミニウム焼結体の表面に窒化アルミニウムの酸化層が形成された窒化アルミニウム基板の製造方法であって、
    希土類元素の酸化物換算での含有量が3〜6質量%、及びカルシウムの含有量が0.003質量%以下である窒化アルミニウム混合粉体を、非酸化雰囲気で、1825〜1900℃の温度範囲で、焼成することにより、窒化アルミニウム焼結体を得る焼成工程と、
    得られた焼結体を、酸化雰囲気で、加熱して、酸化処理することにより、窒化アルミニウム焼結体の表面に窒化アルミニウムの酸化層を形成する酸化工程とを備えることを特徴とする窒化アルミニウム基板の製造方法。
  8. 酸化工程における加熱温度範囲は、1050〜1350℃であることを特徴とする請求項7に記載の窒化アルミニウム基板の製造方法。
  9. 酸化工程における酸化雰囲気中に、水蒸気分圧が1.25〜100hPaの範囲で、水分が含有されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の窒化アルミニウム基板の製造方法。
  10. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の窒化アルミニウム基板の表面に電気回路が形成されていることを特徴とする回路基板。
  11. 前記窒化アルミニウム基板が三次元立体形状を有し、前記電気回路は、前記窒化アルミニウム基板の表面に形成された導電層がレーザー加工により部分的に除去されたことにより形成されていることを特徴とする請求項10に記載の回路基板。
  12. 請求項10又は11に記載の回路基板にLED素子が実装されていることを特徴とするLEDモジュール。
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