JP4859267B2 - 窒化アルミニウム焼結体とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い機械的強度と高い熱伝導率とを併せ有する窒化アルミニウム焼結体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体の高集積化に伴ない、従来のアルミナに代わる放熱特性の優れた半導体実装用基板用材料が求められている。その中でも窒化アルミニウム焼結体は、優れた電気絶縁性と、アルミナと比較して十数倍も高い熱伝導率を有する材料であることから、半導体実装用基板をはじめ、各種放熱部品材料及び絶縁用基板として利用範囲が広がっている。
【0003】
このうち、特に高出力の半導体実装用基板の用途では、半導体を実装するために窒化アルミニウム焼結体基板に銅等の薄板を接合したり、実装基板を更に別のヒートシンク材(放熱フィンなどの金属部材)に接着するなど、窒化アルミニウム自身に種々の大きな応力がかかる状態で使用される場合が多く、高熱伝導率に加え、従来よりさらに高強度な窒化アルミニウム焼結体が必要とされるようになった。
【0004】
そこで、窒化アルミニウム焼結体の機械的強度を向上させるために、例えば特開平4−50171号公報には、焼成の昇温時の線収縮速度を制御する方法が、特開平5−238830号公報には、焼成後の冷却速度を制御する方法が提案されている。また、特開平7−172921号公報には、Si成分、Al2O3などの添加により焼結体の粒度分布を制御する方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとしている課題】
しかし、上記した特開平4−50171号公報に記載されている昇温時の線収縮速度で制御する方法では、熱膨張計を内装した焼結炉が必要である等、特殊な装置が必要であり、実際の製造装置に適用するには困難が伴なう。また、特開平5−238830号公報及び特開平7−172921号公報に記載されている方法は、いずれも焼結体組織を精密に制御しなければならず、特に特開平7−172921号公報に記載されている方法では、焼結体の1μmごとの粒度存在割合を厳密に制御しなければならず、大きい焼結体や量産スケールでは制御するのが困難であるという問題点を有していた。
【0006】
そこで、量産性に優れ、かつ量産品の機械的強度とその信頼性が高く、高熱伝導率の窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法の開発が望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行なってきた。その結果、焼結助剤と窒化アルミニウム中の不純物酸素との反応により生成する粒界相結晶粒子の大きさが、強度に影響することを突き止めた。
【0008】
すなわち、セラミックスなどの脆性材料では、引っ張り応力が加わると材料中の大きな欠陥に応力が集中し、そこから破壊が生じる。一般に、強度(σf)と破壊靭性値(KIC)及び欠陥長さ(c)には、次式の関係が成り立つ。
【0009】
σf=KIC/(πc)(1/2)
欠陥の無い理想的な焼結体では欠陥長さ(c)はマトリックスすなわち窒化アルミニウム結晶粒子の最大粒子径と考えることができる。そこで、既知の破壊靭性値と前記最大粒子径から、欠陥のない理想的な窒化アルミニウム焼結体の強度を見積った結果、60kgf/mm2という理想強度を得ることができる。しかしながら、従来の窒化アルミニウム焼結体では30〜45kgf/mm2程度での強度しか得られない。
【0010】
発明者らは、曲げ試験を行なった試験片の破壊面を数多く観察し、破壊が起こった起点(破壊源という)を注意深く調べた結果、それらの多くは粒界相結晶粒子が集まってできた、窒化アルミニウム結晶粒子より大きな集合粒子であり、しかも、その大きさが大きくなるにつれて強度が低下していくことを突き止めた。
【0011】
これらの結果に基づき、焼結助剤と、窒化アルミニウム粉末中の不純物酸素との反応により生成する粒界相結晶粒子の大きさを、窒化アルミニウム結晶粒子の大きさと同程度に制御することにより、量産性に優れ、かつ量産時の機械的強度が高く、高熱伝導率の窒化アルミニウム焼結体を得ることを見出し、さらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、窒化アルミニウムと焼結助剤とからなる焼結体において、粒界相結晶粒子が、分散度0.4〜0.6の範囲で均一に分布し、かつ、焼結体の任意の切断面における粒界相結晶粒子の累積値75%粒子径と窒化アルミニウム結晶粒子の累積値50%粒子径との比が0.5〜1.5であり、曲げ強度が50kgf/mm 2 以上、熱伝導率が160W/mK以上であることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウムと焼結助剤とからなる焼結体であり、かつ以下の性質を有していることが必要である。
【0014】
本発明の窒化アルミニウム焼結体は、粒界相結晶粒子を有していることが必要である。
【0015】
上記粒界相は、窒化アルミニウム結晶粒子の粒界に存在する相である。
【0016】
また、粒界相結晶粒子は、上記粒界相を構成する、焼結助剤単独、焼結助剤同士の反応生成物、または焼結助剤と窒化アルミニウム中の不純物酸素との反応生成物等よりなる結晶粒子である。例えば、焼結助剤が酸化イットリウムの場合、一般的に窒化アルミニウム原料粉末中に含まれる不純物酸素と反応して3Y2O3・5Al2O3(YAG)、Y2O3・Al2O3(YAL)、2Y2O3・Al2O3(YAM)等からなる粒界相結晶粒子を形成する。
【0017】
本発明において用いられる焼結助剤としては、上記酸化イットリウムが最も好適であるが、これに限定されず、他の公知の焼結助剤も使用することができる。例えば、Y2O3の他、LaO3、CeO2、HoO3、Yb2O3、Gd2O3、Nb2O3、Sm2O3、Dy2O3等の希土類酸化物、CaO、SrOなどのアルカリ土類金属酸化物などの、1種または2種以上の混合物が挙げられる。
【0018】
本発明の窒化アルミニウム焼結体は、任意の切断面において、粒界相結晶粒子の累積値75%の粒子径と窒化アルミニウム結晶粒子の累積値50%の粒子径との比が0.5〜1.5の範囲でなければならない。
【0019】
なお、ここで累積値の粒子径は、粒度分布における最小の粒子から累積した値での粒子径であり、本発明においては、焼結体の任意の断面の微構造を画像解析して求めた一つ一つの結晶粒子を面積の小さい方から累積した粒度分布を用いて粒子径を算出した。例えば、前記の窒化アルミニウム結晶粒子の累積値50%の粒子径は、画像解析をして求めた窒化アルミニウム結晶粒子全部の総面積の50%の累積面積に対応する結晶粒子の粒子径を粒度分布より求めた値である。
【0020】
前記粒子径の比が0.5〜1.5の範囲である場合には、粒界相結晶粒子の大きさが、マトリックスである窒化アルミニウム結晶粒子とほぼ同程度の大きさであって、かつ、窒化アルミニウム結晶粒子より大きいものが少ないので、焼結体中に均一に分散する微構造となり、本発明の曲げ強度と熱伝導率を達成することができる。
【0021】
前記粒子径の比が1.5より大きい場合は、窒化アルミニウム結晶粒子より大きな粒界相結晶粒子の増加によって、強度は大きく低下するので好ましくない。
【0022】
逆に、前記粒子径の比が0.5より小さい場合は、焼結体中の窒化アルミニウム結晶粒子内の不純物酸素が残存するため、熱伝導率を向上させる効果が小さくなり好ましくない。
【0023】
本発明の窒化アルミニウム焼結体において、該窒化アルミニウム結晶粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、焼結体の機械的強度等を勘案すると、10μm以下、さらに7μm以下が好ましい。
【0024】
また、上記窒化アルミニウム結晶粒子の粒度分布に関しては、特に制限ないが、1μm未満の結晶粒子が20%以下であることが、高い熱伝導率を持つ焼結体を得ることを勘案すると好ましい。
【0025】
上記粒界相結晶粒子の粒度分布に関しても、特に制限ないが、1μm未満の結晶粒子が20%以下であることが高い熱伝導率を持つ焼結体を得ることを勘案すると好ましく、さらに10μmを超える結晶粒子が1%以下、より好適には0.5%以下であることが高強度の焼結体を得るために好ましい。
【0026】
さらに、上記粒界相結晶粒子の累積値50%の粒子径と、窒化アルミニウム結晶粒子の累積値50%の粒子径とは、できるだけ等しいことが本発明の効果を勘案すると好ましい。具体的には、粒界相結晶粒子の累積値50%の粒子径と、窒化アルミニウム結晶粒子の累積値50%の粒子径との比が、0.7〜1.2の範囲であることが、より好適である。
【0027】
また、本発明の窒化アルミニウム焼結体は、粒界相結晶粒子が均一に分布していることが必要であり、とくに重心間距離法における分散度が、0.40〜0.60の範囲である均一分布が好適である。
【0028】
また、本発明の窒化アルミニウム焼結体は、焼結助剤により生成する粒界相の濃度が4.5〜9.0wt%であることが好ましい。焼結助剤により生成する粒界相の濃度が4.5wt%未満の場合には、該焼結体中の窒化アルミニウム結晶粒子に不純物酸素が残存するため、高い熱伝導率を持つ焼結体が得られにくくなるので好ましくなく、また、9.0wt%より多い場合には、粒界相結晶粒子の集合体の生成などにより曲げ強度が低下するとともに、該粒界相結晶粒子の焼結体中に占める割合が多くなり過ぎるために高い熱伝導率を持つ焼結体が得られにくくなるので好ましくない。
【0029】
本発明の窒化アルミニウム焼結体は、上記したように結晶粒子を制御することにより、焼結体の曲げ強度が50kgf/mm2以上、熱伝導率が160W/mK以上である焼結体を得ることができる。
【0030】
本発明の窒化アルミニウム焼結体の形状、大きさは特に制限されないが、特に、厚み100mm以下、好ましくは0.3〜10mmの厚みの板状物において、効果が特に顕著である。
【0031】
本発明の窒化アルミニウム焼結体の一態様例を図1に、従来公知の窒化アルミニウム焼結体の一態様例を図2に示す。なお、黒色部分が窒化アルミニウム結晶粒子、白色部分が粒界相結晶粒子を示す。
【0032】
図に示すとおり、従来の窒化アルミニウム焼結体は、本発明の窒化アルミニウム焼結体と比較して、非常に大きい粒界相結晶粒子が多数存在するため、本発明の規定を満足しない。
【0033】
本発明の窒化アルミニウム焼結体の製造方法は、本発明で規定する性質を有するように製造すれば、特に制限されないが、以下に示す方法により、好適に本発明で規定する性質を達成することができる。
【0034】
すなわち、混合前の窒化アルミニウム粉末の平均粒径と、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤とよりなる混合粉末の平均粒径との比が、1.1〜2の範囲になるように湿式混合してスラリーを得、次いで該スラリーを乾燥・成形してグリーン体を得、そして該グリーン体を非酸化雰囲気中で焼成する方法である。
【0035】
以下、詳細に説明する。
【0036】
本発明において、上記窒化アルミニウム粉末は、公知のものが特に制限なく使用できるが、緻密な焼結体を得ることを勘案すると、混合前の平均粒径が5μm以下であることが好ましく、3μm以下が更に好ましい。
【0037】
また、高い熱伝導率を有する焼結体を得ることを勘案すると、上記窒化アルミニウム粉末の平均粒径は0.8μm以上で、酸素濃度は1.0wt%以下であることが好ましい。前記平均粒径が0.8μmより小さい窒化アルミニウム粉末は、表面積が大きい分、酸素濃度が高くなる傾向があり、結果として、高熱伝導率の窒化アルミニウム焼結体が得られにくくなるので好ましくない。
【0038】
上記焼結助剤粉末は、公知のものが特に制限なく使用できるが、緻密でかつ高熱伝導率を有する焼結体を得ることを勘案すると、前記した希土類元素の酸化物やアルカリ土類金属の酸化物が好ましく、その中でも酸化イットリウムが好適である。また、その添加量は、窒化アルミニウム粉末100重量部に対して3.0〜8.0重量部にすることが好ましい。上記添加量にすることにより、粒界相結晶粒子の累積値75%粒子径と窒化アルミニウム結晶粒子の累積値50%粒子径との比を、本発明で規定する範囲に制御することが容易となる。
【0039】
本発明において、上記グリーン体は、窒化アルミニウム粉末、希土類化合物粉末からなる混合粉末に有機バインダー等を添加してプレスまたはシート成形する方法などによって得られる。
【0040】
上記バインダーとしては、公知のものが特に制限なく使用できる。具体的にはポリビニルブチラール、エチルセルロース類やアクリル樹脂類などが使用でき、その中でも、ポリビニルブチラール及びポリn−ブチルメタクリレートがグリーン体成形性に優れているので好適である。
【0041】
また、上記混合粉末への有機バインダーの混合割合は、混合粉末100重量部に対し、プレス成形体を得る場合には、2〜15重量部、シート体を得る場合には、5〜15重量部の添加が好ましく採用される。
【0042】
上記した有機バインダーを用いるグリーン体の成形方法としては、上記混合粉及び有機バインダーに、アルコール類やトルエンなどの有機溶媒、グリセリン化合物類などの分散剤及びフタル酸エステル類などの可塑剤を加えて、ボールミルで十分に混合してスラリー状にしたものをドクターブレード法によりシート状のグリーン体にする方法や、スプレードライ法により顆粒状にした後に金型プレスによりブロック状のグリーン体にする方法が一般的である。
【0043】
本発明の製造方法における特徴の一つは、混合前の窒化アルミニウム粉末の平均粒径と、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤よりなる混合粉末の平均粒径との比が、1.1〜2の範囲になるように湿式混合することにある。
【0044】
混合前の窒化アルミニウム粉末の平均粒径と、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤よりなる混合粉末の平均粒径との比が、1.1〜2の範囲である場合には、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤とがそれぞれ適度に解砕されている状態となる。
【0045】
上記粉末の平均粒径の比が1.1より小さい場合には、窒化アルミニウム粉末や焼結助剤粉末はほとんど解砕されておらず、それぞれの粉末が均一に混合されるのみである。この場合において、解砕されなかった焼結助剤の粗大粒子が混合粉末中に存在するため、高温焼成後の焼結体中にも粗大な粒界相結晶粒子の集合体が多く存在し、本発明の焼結体が得られ難い。
【0046】
一方、上記粉末の平均粒径の比が2より大きい場合には、窒化アルミニウム粉末や焼結助剤粉末が一次粒子の大きさまで解砕される。その結果、窒化アルミニウム粉末の比表面積が大きくなるため、粉末の酸素濃度が高くなり、該粉末を高温焼成して得られた焼結体は、本発明の目的である高熱伝導率を達成できない傾向となる。
【0047】
解砕された焼結助剤の微粉末は、混合粉末のスラリー、あるいは該スラリーの乾燥後のグリーン体中で均一に分散することが好ましい。例えば、均一に分散している状態は、前記スラリーをドクターブレード法でシート状のグリーン体にして、焼結助剤のグリーン体での状態を、SEM(走査型電子顕微鏡)の反射電子像などで観察することにより、確認できる。
【0048】
本発明において、混合前の窒化アルミニウム粉末の平均粒径と、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤よりなる混合粉末の平均粒径との比が、1.1〜2の範囲になるように湿式混合する方法は、特に制限されないが、ボールミルを用い、かつ、特定の硬度のボールを使用する方法を用いることにより、前記範囲を容易に達成することができる。
【0049】
すなわち、混合時に使用するボール表面の材質の硬度が900kgf/mm2(ビッカース硬度)以上、ボール全体の密度が3〜6.5g/cm3、ボール径が5〜20mmの範囲にあるボールが好適である。
【0050】
このような特性を持つボールについて、例を挙げると、セラミック製の、具体的にはAl2O3,ZrO2、Si3O4、SiAlON,AlN製のボールが挙げられる。その中で、特にアルミナ製のボールが、本発明の窒化アルミニウム焼結体を得ることを勘案すると、好ましい。
【0051】
また、湿式混合の条件(容器への充填率、回転数、使用する溶剤量、混合時間等)は、使用するボールの硬度、密度、ボール径に応じて適宜決定すればよい。
【0052】
上記した有機バインダーを用いたグリーン体は、通常、焼結を行う前に脱脂をおこない、脱脂体とする。上記脱脂は、酸素や空気などの酸化性ガス、あるいは水素などの還元性ガス、アルゴンや窒素などの不活性ガス、二酸化炭素及びこれらの混合ガスあるいは水蒸気を混合した加湿ガス雰囲気中での熱処理によって行なう方法が一般的である。上記脱脂の温度は300℃〜1200℃、また、脱脂時間は1分〜500分の範囲で、上記有機バインダーの配合割合と脱脂方法に応じて適宜選択すればよい。その際、雰囲気、温度、保持時間を調節して脱脂体の酸素濃度を2.5wt%以下にしておくことが好ましい。酸素濃度を2.5wt%以下にすることにより、窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率を向上させることが容易となる。
【0053】
本発明において、前記グリーン体や上記脱脂体は、非酸化性雰囲気中、その原料中に添加した焼結助剤の量や、前記グリーン体や上記脱脂体の大きさや厚みに応じた最適緻密化温度により焼成すればよい。なお、ここで最適緻密化とは、焼結体の理論密度に対する試料密度(相対密度という)が98%以上にすることをいう。
【0054】
また、上記最適緻密化温度は、各試料であらかじめ緻密化曲線(収縮曲線)を調べることにより求めることができ、一般的に1650〜1800℃の範囲から選択すればよい。焼成温度が1650℃より低いと緻密な焼結体が得られず、緻密でない部分の強度が低いために、焼結体の曲げ強度が低くなる。また、焼成温度が1800℃より高い場合、焼結体の粒成長の促進により焼結体の結晶粒径が10μmを超えてしまい、本発明の曲げ強度を有する焼結体が得られにくくなる。
【0055】
また、上記非酸化性雰囲気としては、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、水素などのガス単独あるいは混合ガスよりなる雰囲気又は真空(又は減圧)雰囲気が使用される。
【0056】
上記焼結は、通常、焼成容器に収容して行われる。上記焼成容器としては、窒化アルミニウムの焼成に使われる公知の容器が使用できる。具体的に例を上げると、窒化アルミニウム製あるいは窒化ホウ素製の箱型の密閉容器が挙げられる。
【0057】
また、前記成形体や脱脂体同士、さらには焼成容器との間には、焼成による融着を防ぐために一般的に使用されている敷粉を介在させても良い。敷粉としては、例えば窒化ホウ素粉末等が使用される。
【0058】
上記焼成時間は、特に限定されないが、通常1分〜20時間、更に好ましくは1時間〜10時間に設定するのが好適である。
【0059】
このように、本発明の窒化アルミニウム焼結体は、高い機械的強度と高い熱伝導率を有する。また、絶縁抵抗、誘電率、その他の焼結体物性値ならびに焼結体の外観も良好である。
【0060】
【実施例】
以下、本発明の方法を具体的に説明するための実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
なお、以下の実施例及び比較例における各種の物性の測定は次の方法により行なった。
1)窒化アルミニウム粉末及び混合粉末の平均粒径
MICROTRAC II(LEED&NORTHRUP社製)を用いて、レーザー回折法により求めた。窒化アルミニウム粉末は水に分散させて測定した。また、混合粉末は混合・脱溶媒後のスラリーから完全に有機溶媒成分を加熱などにより除去した乾燥粉末を作製し、それをエタノールに分散させて測定した。
2)窒化アルミニウム結晶粒子径及び粒界相結晶粒子径
焼結体微構造の写真から、画像解析システム(IP−1000PC、旭化成工業製)を使用して以下の方法により各粒子径を求めた。
【0062】
まず、評価する焼結体の任意の断面を鏡面に研磨し、窒化アルミニウム結晶粒子の粒成長が起こらない温度である、1600〜1650℃で数分間熱処理した。この処理により、結晶粒界でのエッチング速度が他の部分に比べて大きいため結晶粒界部分のみがエッチングされて、窒化アルミニウム結晶粒子及び粒界相結晶粒子の一つ一つが識別できる表面を得ることができる。
【0063】
次いで、その表面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、なるべく平均的な組織であって、観察粒子200〜300個が一つの視野に入るような倍率で微構造の写真を得て、観察粒子数が1000〜2000個になるように複数枚の写真を用意した。微構造の写真では、図1および図2に示すように、窒化アルミニウム結晶粒子がグレー〜黒色、粒界相結晶粒子が白色で表されるので、これらの粒子の識別は容易に行なうことができる。
【0064】
最後にこれらの微構造の写真を画像を、コンピューターによる画像解析システムを使って窒化アルミニウム結晶粒子の1000〜2000の個々の粒子の面積と円相当径を求めた。前記微構造の写真における粒界相結晶粒子についても、窒化アルミニウム結晶粒子と同様に、面積と円相当径を求めた。なお、窒化アルミニウム結晶粒子や粒界相結晶粒子はほぼ等軸状であり、粒子径は円相当径であらわすことができる。また、解析の際、解析画像端部で粒子が切れている結晶粒子については評価の対象から外した。さらに、2つ以上の粒界相結晶粒子が接触している場合、2つの結晶粒子の境界の長さがそれら粒子の平均粒子径より大きい場合にはそれらの結晶粒子を合わせた粒子を1粒子として扱った。
3)粒界相結晶粒子の分散度の測定
上記結晶粒子径の測定に使った微構造の写真を使い、上記画像解析システムを使って、重心間距離法(近接する粒子の重心間距離より分散度を求める方法)により粒界相粒子の焼結体中の分散度を求めた。分散度は粒子間距離の平均偏差と平均粒子間距離の比で表され、値が小さいほうが分散が良好である。
4)曲げ強度の測定
JIS R1601に従い、クロスヘッド速度0.5mm/分、スパン30mmで3点曲げ試験を行なった。試験片の幅は4mmで、焼結体を6mm幅に切り出し、両端を1mm研削加工して所定の幅にした。また、厚みはシート加工した試料は焼結体そのものの厚みとし、試験片の上下面は研削及び研磨加工しない焼結体の表面とした。
4)熱伝導率の測定
理学電気(株)製の熱定数測定装置PS−7を使用して、レーザーフラッシュ法により測定した。厚み補正は検量線により行なった。
【0065】
実施例1
内容積が2.4Lのナイロン製ポットに、直径10mmのアルミナ製ボール(表面硬度1100kgf/mm2、密度3.6g/cm3)を入れ、次いで、平均粒径が1.5μm、比表面積2.6m2/g、酸素濃度0.8wt%の窒化アルミニウム粉末100重量部、焼結助剤として比表面積12.5m2/gの酸化イットリウム粉末を5重量部、表面活性剤として、ソルビタントリオレート2重量部及び溶媒としてトルエン、エタノール、ブタノールを合わせて35重量部(それぞれの体積比が75:20:5)を加えて湿式混合した。この時、前記アルミナ製ボールはポットの内容積の40%(見かけの体積)充填した。混合はポットの回転数70rpmで24時間行なった。さらに、得られたスラリーに、有機バインダーとしてポリビニルブチラールを11重量部、可塑剤としてジ−n−ブチルフタレート3.5重量部及び溶媒としてトルエン、エタノール、ブタノールを合わせて45重量部(それぞれの体積比が75:20:5)を加えて、さらに2回目の湿式混合を18時間行ない、得られたスラリーを10000〜25000cpsの粘度になるまで脱溶媒し、ドクターブレード法によりシート状の0.75mmの厚みのグリーン体を作製した。さらに、シート状グリーン体を、打ち抜きプレス加工機により、長辺63mm、短辺44mmのグリーン体に加工した。
【0066】
得られたグリーン体を乾燥空気中で600℃の温度で240分間脱脂処理し、酸素濃度が2.2wt%の脱脂体を得た。
【0067】
さらに、上記脱脂体を窒化ホウ素製の焼成容器に入れ、窒素ガス雰囲気中で1740℃の温度で4時間焼成し、密度3.28g/cm3以上の緻密で透光性の焼結体を得た。焼結体の作製条件を表1に、焼結体の微構造と特性を表2に示した。
【0068】
実施例2
1770℃の温度で焼成すること以外は、実施例1と同様の操作を行なった。焼結体の作製条件を表1に、焼結体の微構造と特性を表2に示した。
【0069】
実施例3
1回目の湿式混合時に添加する溶媒の量を30重量部、2回目の湿式混合時に添加する溶媒の量を50重量部添加する以外は、実施例1と同様の操作を行なった。焼結体の作製条件を表1に、焼結体の微構造と特性を表2に示した。
【0070】
実施例4
1回目の湿式混合時にアルミナ製ボールをポットの内容積に対して33%充填し溶媒を40重量部添加したこと、2回目の湿式混合時に添加する溶媒の量を40重量部添加すること、及び1760℃の温度で焼成すること以外は、実施例1と同様の操作を行なった。焼結体の作製条件を表1に、焼結体の微構造と特性を表2に示した。
【0071】
実施例5
酸化イットリウム粉末を4.5重量部とすること以外は、実施例1と同様の操作を行なった。焼結体の作製条件を表1に、焼結体の微構造と特性を表2に示した。
【0072】
実施例6
平均粒径が2.5μm、比表面積3.9m2/g、酸素濃度0.98wt%の窒化アルミニウム粉末を使用したこと、1790℃で焼成したこと以外は、実施例1と同様の操作を行なった。焼結体の作製条件を表1に、焼結体の微構造と特性を表2に示した。
【0073】
比較例1
ミルボールに直径約25mmの鉄芯をナイロンで被覆したボール(表面硬度100kgf/mm2以下、密度3.5g/cm3)を使用し、1770℃で焼成したこと以外は実施例1と同様の操作を行なった。焼結体の作製条件を表1に、焼結体の微構造と特性を表2に示した。
【0074】
比較例2
平均粒径が2.5μm、比表面積3.9m2/g、酸素濃度0.98wt%の窒化アルミニウム粉末を使用したこと、ミルボールに直径約25mmの鉄芯をナイロンで被覆したボール(表面硬度100kgf/mm2以下、密度3.5g/cm3)を使用したこと、及び1800℃の温度で焼成したこと以外は、実施例1と同様の操作を行なった。焼結体の作製条件を表1に、焼結体の微構造と特性を表2に示した。
【0075】
比較例3
平均粒径が2.5μm、比表面積3.9m2/g、酸素濃度0.98wt%の窒化アルミニウム粉末を使用したこと、酸化イットリウム粉末を2.5重量部添加したこと、ミルボールに直径約25mmの鉄芯をナイロンで被覆したボール(表面硬度100kgf/mm2以下、密度3.5g/cm3)を使用したこと、及び1800℃で焼成したこと以外は実施例1と同様の操作を行なった。焼結体の作製条件を表1に、焼結体の微構造と特性を表2に示した。
【0076】
【表1】
【表2】
【発明の効果】
本発明によれば、窒化アルミニウム結晶粒子の大きさと同程度の大きさの粒界相結晶粒子が均一に分散する微構造を有する焼結体は、高強度かつ高熱伝導率であり、また、混合前の窒化アルミニウムの平均粒径と、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤よりなる混合粉末の平均粒径との比が、一定範囲になるように湿式混合し、該スラリーの成形体を焼成することによって容易に得られるため、複雑または煩雑な製造工程を要さず高強度かつ高熱伝導率の窒化アルミニウム焼結体の量産を可能にし、かつ大型の焼結体にも適用可能であり、その工業的価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化アルミニウム焼結体の微構造SEM写真(倍率2000倍)である。
【図2】従来の窒化アルミニウム焼結体の微構造SEM写真(倍率2000倍)である。
Claims (2)
- 窒化アルミニウムと焼結助剤とからなる焼結体において、粒界相結晶粒子が、分散度0.4〜0.6の範囲で均一に分布し、かつ、焼結体の任意の切断面における粒界相結晶粒子の累積値75%粒子径と窒化アルミニウム結晶粒子の累積値50%粒子径との比が0.5〜1.5であり、曲げ強度が50kgf/mm 2 以上、熱伝導率が160W/mK以上であることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体。
- 窒化アルミニウム粉末と焼結助剤よりなる混合粉末を、表面のビッカース硬度が900kgf/mm2以上のボールを使用したボールミルにより、混合前の窒化アルミニウム粉末の平均粒径と上記混合粉末の平均粒径との比が、1.1〜2の範囲になるように湿式混合してスラリーを得、次いで該スラリーを乾燥・成形してグリーン体を得、そして該グリーン体を非酸化雰囲気中で焼成することを特徴とする請求項1の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
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