JP2009158108A - 電界放射型電子源およびその製造方法 - Google Patents

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崇 幡井
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Abstract

【課題】電子放出特性の向上が可能な電界放射型電子源およびその製造方法を提供する。
【解決手段】電界放射型電子源10(図1(f))は、シリコン基板(半導体基板)1と、シリコン基板1の一表面側に形成された強電界ドリフト部3と、シリコン基板1の他表面側に形成された下部電極2と、強電界ドリフト部3上に形成された表面電極4とを備えている。強電界ドリフト部3は、シリコン基板1の上記一表面側をエッチングすることによりナノメータオーダの所定間隔で形成された複数の突起部31と、各突起部31の表面に沿って形成された多数のナノメータオーダのシリコン微結晶(半導体微結晶)33と、各シリコン微結晶33それぞれの表面に形成され当該シリコン微結晶33の結晶粒径よりも小さな膜厚のシリコン酸化膜(絶縁膜)34とを有し、表面にシリコン酸化膜34が形成されたシリコン微結晶33が各突起部31の表面に沿って連なって形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、電界放射型電子源およびその製造方法に関するものである。
従来から、ナノメータオーダのシリコン微結晶(ナノ結晶シリコン)を利用した電子デバイスとして、電界放射型電子源が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
この種の電界放射型電子源としては、下部電極と、下部電極に対向する金属薄膜よりなる表面電極と、下部電極と表面電極との間に介在し下部電極と表面電極との間に表面電極を高電位側として電圧を印加したときに作用する電界により下部電極から表面電極へ向かって電子がドリフトする強電界ドリフト部とを備えたものが提案されており、表面電極を真空中に配置するとともに表面電極に対向してコレクタ電極を配置し、表面電極と下部電極との間に表面電極を高電位側として電圧を印加するとともに、コレクタ電極と表面電極との間にコレクタ電極を高電位側として電圧を印加することにより、下部電極から注入され強電界ドリフト層をドリフトした電子が表面電極を通して放出される。ここにおいて、上述の電界放射型電子源は、強電界ドリフト部が多数のシリコン微結晶を含んでおり、表面電極が10nm程度の膜厚の金属薄膜(例えば、金薄膜)により構成されている。なお、上述の電界放射型電子源においては、抵抗率が導体の抵抗率に比較的近い半導体基板と当該半導体基板の裏面に形成したオーミック電極とで下部電極を構成したものや、絶縁性基板(例えば、絶縁性を有するガラス基板、絶縁性を有するセラミック基板など)上に形成された金属材料からなる導電性層により下部電極を構成したものなどがある。
ところで、上述の強電界ドリフト部は、多結晶シリコン層をフッ酸系溶液からなる電解液中で陽極酸化処理することにより多孔質多結晶シリコン層を形成し、多孔質多結晶シリコン層を急速加熱法あるいは電気化学的な酸化方法により酸化することによって形成されており、柱状の多結晶シリコンのグレインと、各グレインの表面に形成された薄いシリコン酸化膜と、グレイン間に介在する多数のナノメータオーダのシリコン微結晶と、各シリコン微結晶それぞれの表面に形成され当該シリコン微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚のシリコン酸化膜とを有している。しかして、強電界ドリフト部に印加された電界の大部分はシリコン微結晶の表面に形成されているシリコン酸化膜に集中的にかかり、注入された電子は当該シリコン酸化膜にかかっている強電界により加速されグレイン間を表面に向かってドリフトするので、電子放出効率を向上させることができる。強電界ドリフト部の表面に到達した電子はホットエレクトロンであると考えられ、表面電極を容易にトンネルし真空中に放出される。
したがって、上述の電界放射型電子源において良好な電子放出特性を得るためには、薄いシリコン酸化膜により覆われたシリコン微結晶が下部電極側から表面電極側に向って連続的に整列して形成されていることが望ましい。
特開平11−329213号公報 特開2000−100316号公報
ところで、上記特許文献1,2に開示された電界放射型電子源では、多結晶シリコン層を陽極酸化処理することによりシリコン微結晶を形成しているが、多結晶シリコン層におけるグレインの内部よりも粒界において優先的に陽極酸化反応が進行するので、シリコン微結晶が柱状のグレインの表面に沿って連続的に繋がって形成されることとなる。
しかしながら、多結晶シリコン層のグレインに不連続箇所があると、シリコン微結晶が離れて不連続的に形成されるので、電子の散乱確率が増大して電子放出特性の低下や短寿命化の原因となってしまう。
また、上述の電界放射型電子源のエミッション電流量の向上を図るためには、多結晶シリコン層の柱状のグレインの径を小さくして、強電界ドリフト部においてシリコン微結晶が形成されていて電子が加速されてドリフトする領域(エミッションサイト)の密度を高くする必要がある。
しかしながら、プラズマCVD法などによって多結晶シリコン層を成膜する場合、基板温度(成膜温度)などのプロセス条件を制御しても柱状のグレインの径を大きく変化させることは困難であり、エミッションサイトの密度を高めることによってエミッション電流量の向上を図るには限度があった。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、電子放出特性の向上が可能な電界放射型電子源およびその製造方法を提供することにある。
請求項1の発明は、半導体基板と、半導体基板の一表面側に形成された強電界ドリフト部と、半導体基板の他表面側に形成された下部電極と、強電界ドリフト部上に形成された表面電極とを備え、強電界ドリフト部は、半導体基板の前記一表面側をエッチングすることによりナノメータオーダあるいはマイクロメータオーダの間隔で形成された複数の突起部と、各突起部の表面に沿って形成された多数のナノメータオーダの半導体微結晶と、各半導体微結晶それぞれの表面に形成され当該半導体微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜からなる絶縁膜とを有し、表面に絶縁膜が形成された半導体微結晶が各突起部の表面に沿って連なって形成されていることを特徴とする。
この発明によれば、強電界ドリフト部は、半導体基板の前記一表面側をエッチングすることによりナノメータオーダあるいはマイクロメータオーダの間隔で形成された複数の突起部と、各突起部の表面に沿って形成された多数のナノメータオーダの半導体微結晶と、各半導体微結晶それぞれの表面に形成され当該半導体微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜からなる絶縁膜とを有し、表面に絶縁膜が形成された半導体微結晶が各突起部の表面に沿って連なって形成されているので、強電界ドリフト部での電子の散乱が少なくなるから、電子放出特性の向上が可能となり、しかも、突起部のサイズや間隔は半導体基板の前記一表面側をエッチングする際のマスクのパターンによって自由に設計できるから、強電界ドリフト部におけるエミッションサイトの密度を高めてエミッション電流量を増やすことが可能となる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記突起部は、円柱状、角柱状、井桁状のいずれかの形状に形成されてなることを特徴とする。
この発明によれば、前記半導体微結晶が前記半導体基板の厚み方向に連なることとなり、電子放出効率を高めることができる。
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記突起部は、円錐状、角錐状、円錐台状、角錐台状のいずれかの形状に形成されてなることを特徴とする。
この発明によれば、例えば、平面発光装置の電子源として応用する場合に、平面発光装置の発光輝度の面内均一性を向上させることが可能となる。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電界放射型電子源の製造方法であって、強電界ドリフト部の形成にあたっては、半導体基板を一表面側からウエットエッチングすることにより各突起部を形成する突起部形成工程と、電解液を利用した陽極酸化処理により突起部の表面に沿って多数のナノメータオーダの半導体微結晶を形成する陽極酸化処理工程と、酸化処理により各半導体微結晶それぞれの表面に当該半導体微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜からなる絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程とを備えることを特徴とする。
この発明によれば、電子放出特性の向上が可能な電界放射型電子源を提供することができる。
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記絶縁膜形成工程では、電気化学的な酸化方法により前記酸化膜からなる絶縁膜を形成することを特徴とする。
この発明によれば、前記突起部形成工程、前記陽極酸化処理工程、および前記絶縁膜形成工程の一連の工程を、溶液の種類や通電条件を変えるだけで同じ処理槽内で連続して行うことが可能となり、製造コストの低コスト化を図れる。
請求項1の発明では、電子放出特性の向上が可能になるという効果がある。
請求項4の発明では、電子放出効率を向上させることが可能な電界放射型電子源を提供できるという効果がある。
本実施形態の電界放射型電子源10は、図1(f)に示すように、シリコン基板1と、シリコン基板1の一表面側に形成された強電界ドリフト部3と、シリコン基板1の他表面側に形成されたオーミック電極からなる下部電極2と、強電界ドリフト部3上に形成された規定膜厚(例えば、10nm程度)の導電性薄膜(例えば、金薄膜)からなる表面電極4とを備えている。ここにおいて、シリコン基板1としては、上記一表面が(110)面で抵抗率が0.01〜0.02Ωcmの単結晶のn形シリコン基板を用いている。
なお、本実施形態では、表面電極4を金薄膜により構成しているが、表面電極4の材料は金に限定されるものではなく、仕事関数の小さな材料であればよい。また、表面電極4は、厚み方向に積層された少なくとも二層の薄膜電極層により構成してもよい。二層の薄膜電極層により構成する場合には、上層の薄膜電極層の材料として例えば金などを採用し、下層の薄膜電極層(強電界ドリフト部3側の薄膜電極層)の材料として例えば、クロム、ニッケル、白金、チタン、イリジウムなどを採用すればよい。
本実施形態の電界放射型電子源10では、表面電極4を真空中に配置するとともに表面電極4に対向してコレクタ電極(図示せず)を配置し、表面電極4を下部電極2に対して陽極として直流電圧を印加するとともに、コレクタ電極を表面電極4に対して陽極として直流電圧を印加することにより、シリコン基板1から強電界ドリフト部3へ注入された電子が強電界ドリフト部3をドリフトし表面電極4を通して放出される。ここにおいて、表面電極4と下部電極2との間に流れる電流をダイオード電流と呼び、コレクタ電極と表面電極4との間に流れる電流をエミッション電流と呼ぶことにすれば、ダイオード電流に対するエミッション電流の比率が大きいほど電子放出効率が高くなる。なお、本実施形態の電界放射型電子源10では、表面電極4と下部電極2との間の直流電圧を10〜20V程度の低電圧としても電子を放出させることができる。
ところで、本実施形態における強電界ドリフト部3は、シリコン基板1の上記一表面側をエッチングすることによりナノメータオーダの所定間隔(例えば、10nm)で形成された角柱状(例えば、四角柱状)の複数の突起部31と、各突起部31の表面に沿って形成された多数のナノメータオーダ(例えば、結晶粒径が5nm程度)のシリコン微結晶33と、各突起部31の先端面に形成された薄いシリコン酸化膜32と、各シリコン微結晶33それぞれの表面に形成され当該シリコン微結晶33の結晶粒径よりも小さな膜厚(例えば、1〜2nm程度)のシリコン酸化膜34とを有し、表面にシリコン酸化膜34が形成されたシリコン微結晶33が各突起部31の表面に沿って連なって形成されている。なお、本実施形態では、シリコン基板1が半導体基板を構成し、シリコン微結晶33が半導体微結晶を構成し、シリコン酸化膜34が半導体微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜からなる絶縁膜を構成している。
本実施形態の電界放射型電子源10では、強電界ドリフト部3において、表面にシリコン酸化膜34が形成されたシリコン微結晶33が各突起部31の表面に沿って連なって形成されているので、強電界ドリフト部3での電子の散乱が少なくなるから、電子放出特性の向上が可能となり、しかも、突起部31のサイズや間隔(上記所定間隔)はシリコン基板1の上記一表面側をエッチングする際のマスクのパターンによって自由に設計できるから、強電界ドリフト部3におけるエミッションサイトの密度を高めてエミッション電流量を増やすことが可能となる。また、本実施形態の電界放射型電子源10では、突起部31が角柱状に形成されているので、シリコン微結晶33がシリコン基板1の厚み方向に連なることとなり、電子放出効率を高めることができる。なお、突起部31の形状は角柱状に限らず、例えば、円柱状や井桁状の形状でもよい。
また、本実施形態の電界放射型電子源10では、シリコン微結晶33で発生した熱が突起部31を通して放熱されるので、電子放出時にポッピング現象が発生せず安定して高効率で電子を放出することができる。
以下、上述の電界放射型電子源10の製造方法について図1を参照しながら説明する。
まず、シリコン基板1の上記他表面側にオーミック電極からなる下部電極2を形成する下部電極形成工程を行うことによって、図1(a)に示す構造が得られる。
その後、シリコン基板1の上記一表面側に突起部31を形成するためのマスク層5を形成するマスク層形成工程を行うことによって、図1(b)に示す構造が得られる。ここにおいて、マスク層形成工程では、シリコン基板1の上記一表面側に例えばスパッタ法により第1の所定膜厚(例えば、0.4μm)のシリコン酸化膜からなるマスク材料層を成膜し、続いて、当該マスク材料層上に第2の所定膜厚(例えば、0.5μm)の電子線用レジスト層を塗布してから、ベーキング、電子線露光、現像を行うことでレジストマスクを形成し、レジストマスクをマスクとしてバッファードフッ酸溶液などによりマスク材料層の露出部位をエッチングすることでマスク材料層の一部からなるマスク層5を形成し、更にその後、レジストマスクを除去する。なお、マスク材料層は、シリコン酸化膜に限らず、例えば、他の絶縁膜(例えば、シリコン窒化膜)や金属膜(例えば、クロム膜)などにより形成してもよい。
上述のマスク層形成工程の後、マスク層5をマスクとして、シリコン基板1を所定深さ(例えば、1.5μm程度)までエッチングすることで突起部31を形成する突起部形成工程を行い、続いて、マスク層5を除去するマスク層除去工程を行うことによって、図1(c)に示す構造を得る。ここにおいて、突起部形成工程では、加熱したKOH水溶液またはTMAH水溶液などのアルカリ系溶液を用いてシリコン基板1を所定深さまでウェットエッチング(結晶異方性エッチング)することで突起部31を形成している。
上述のマスク層除去工程の後、電解液を利用した陽極酸化処理により突起部31の表面のうち側面に沿って多数のナノメータオーダ(例えば、5nm程度)のシリコン微結晶33を形成する陽極酸化処理工程を行うことによって、図1(d)に示す構造が得られる。ここにおいて、陽極酸化処理工程では、フッ化水素の濃度が所定濃度(例えば、25wt%)となるように濃度を調整したフッ化水素水溶液とエタノールとの混合液(フッ酸系溶液)よりなる電解液中においてシリコン基板1の上記一表面側に対向配置した白金電極(図示せず)と下部電極2との間に電圧を印加して、所定の定電流(例えば、電流密度が5mA/cmの電流)を所定時間(例えば、5秒)だけ流すことによって突起部31の表面のうち側面にシリコン微結晶33を形成する。なお、陽極酸化処理工程では、シリコン基板1の上記一表面側に光が照射されないように遮光した状態で陽極酸化処理を行う方が、突起部31の側面に沿って多数のシリコン微結晶33を形成する上では好ましい。
上述の陽極酸化処理工程の後、酸化処理により各シリコン微結晶33それぞれの表面に当該シリコン微結晶33の結晶粒径よりも小さな膜厚のシリコン酸化膜34を形成する絶縁膜形成工程を行うことで強電界ドリフト部3が形成され、図1(e)に示す構造が得られる。ここにおいて、絶縁膜形成工程では、電解液として1Mの硫酸水溶液を用い、シリコン基板1の上記一表面側に対向配置した白金電極(図示せず)と下部電極2との間に所定の定電流(例えば、電流密度が30mA/cmの電流)を流し、白金電極と下部電極2との間の電圧が30Vだけ上昇するまで電気化学的な酸化を行うことでシリコン酸化膜34およびシリコン酸化膜32を形成する。要するに、絶縁膜形成工程では、電気化学的な酸化方法によりシリコン酸化膜34を形成している。なお、絶縁膜形成工程の酸化処理で用いる電解液は、硫酸水溶液に限らず、塩酸水溶液、硝酸水溶液や、エチレングリコールなどの有機溶媒中に硝酸カリウムなどの溶質を溶かした溶液などを用いてもよい。
上述の絶縁膜形成工程の後、強電界ドリフト部3上に導電性薄膜(例えば、金薄膜など)からなる表面電極4を例えば電子ビーム蒸着法などにより形成する表面電極形成工程を行うことによって、図1(f)に示す構造の電界放射型電子源10が得られる。
以上説明した電界放射型電子源10の製造方法によれば、強電界ドリフト部3の形成にあたっては、シリコン基板1を上記一表面側からウエットエッチングすることにより各突起部31を形成する突起部形成工程を行ってから、電解液を利用した陽極酸化処理により突起部31の表面に沿って多数のナノメータオーダのシリコン微結晶33を形成する陽極酸化処理工程を行い、その後、酸化処理により各シリコン微結晶33それぞれの表面に当該シリコン微結晶33の結晶粒径よりも小さな膜厚のシリコン酸化膜34からなる絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を行うので、電子放出特性の向上が可能な電界放射型電子源10を提供することができる。また、上述の製造方法によれば、絶縁膜形成工程では、電気化学的な酸化方法によりシリコン酸化膜34を形成するようにしているので、突起部形成工程、陽極酸化処理工程、および絶縁膜形成工程の一連の工程を、溶液の種類や通電条件を変えるだけで同じ処理槽内で連続して行うことが可能となり、製造コストの低コスト化を図れる。
ところで、突起部形成工程では、シリコン基板1を上記一表面側から結晶異方性エッチングすることで突起部31を形成しているが、突起部31を形成するためのエッチングはアルカリ系溶液を用いた結晶異方性エッチングに限らず、例えば、反応性イオンエッチングなどのドライエッチングでもよい。また、シリコン基板1の導電率によっては、電解液や通電条件などを適宜設定すれば、陽極酸化による電解エッチングにより垂直孔を形成することで突起部31を形成することも可能である。ただし、当該電解エッチングにより突起部31を形成した場合には、結晶異方性エッチングやドライエッチングにより突起部31を形成した場合に比べて、突起部31の側面の平坦性が低くなるので、シリコン微結晶33を突起部31の側面に沿って連なるように形成するためには、結晶異方性エッチングやドライエッチングの方が好ましい。
また、絶縁膜形成工程では、電気化学的な酸化方法により酸化処理を行っているが、酸化処理は、電気化学的な酸化方法に限らず、例えば、急速熱酸化、プラズマ酸化、高圧水蒸気酸化など他の酸化方法を採用してもよい。また、酸化処理のあとに、シリコン酸化膜32,34の膜質を改善するために、水素ガス雰囲気中やフォーミングガス雰囲気中でのアニールや、高圧水蒸気アニールなどの処理を行うようにしてもよい。なお、絶縁膜形成工程では、絶縁膜としてシリコン酸化膜34,32を形成しているが、絶縁膜としてシリコン窒化膜やシリコン酸窒化膜などを採用してもよく、窒化処理により絶縁膜を形成したり、酸窒化処理により絶縁膜を形成するようにしてもよい。
また、本実施形態の電界放射型電子源10では、上記所定間隔を10nmに設定してあるが、上記所定間隔はナノメータオーダあるいはマイクロメータオーダであればよい。また、本実施形態の電界放射型電子源では、突起部31が角柱状の形状に形成されているが、突起部31を、円錐状、角錐状、円錐台状、角錐台状のいずれかの形状に形成すれば、当該電界放射型電子源10を平面発光装置の電子源として応用して、電子源に対向配置した透光板に被着された蛍光体膜に電子線を照射して励起するようにすれば、平面発光装置の発光輝度の面内均一性を向上させることが可能となる。
実施形態の電界放射型電子源の製造方法を説明するための主要工程断面図である。
符号の説明
1 シリコン基板(半導体基板)
2 下部電極
3 強電界ドリフト部
4 表面電極
10 電界放射型電子源
31 突起部
32 シリコン酸化膜(絶縁膜)
33 シリコン微結晶(半導体微結晶)
34 シリコン酸化膜(絶縁膜)

Claims (5)

  1. 半導体基板と、半導体基板の一表面側に形成された強電界ドリフト部と、半導体基板の他表面側に形成された下部電極と、強電界ドリフト部上に形成された表面電極とを備え、強電界ドリフト部は、半導体基板の前記一表面側をエッチングすることによりナノメータオーダあるいはマイクロメータオーダの間隔で形成された複数の突起部と、各突起部の表面に沿って形成された多数のナノメータオーダの半導体微結晶と、各半導体微結晶それぞれの表面に形成され当該半導体微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜からなる絶縁膜とを有し、表面に絶縁膜が形成された半導体微結晶が各突起部の表面に沿って連なって形成されていることを特徴とする電界放射型電子源。
  2. 前記突起部は、円柱状、角柱状、井桁状のいずれかの形状に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の電界放射型電子源。
  3. 前記突起部は、円錐状、角錐状、円錐台状、角錐台状のいずれかの形状に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の電界放射型電子源。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電界放射型電子源の製造方法であって、強電界ドリフト部の形成にあたっては、半導体基板を一表面側からウエットエッチングすることにより各突起部を形成する突起部形成工程と、電解液を利用した陽極酸化処理により突起部の表面に沿って多数のナノメータオーダの半導体微結晶を形成する陽極酸化処理工程と、酸化処理により各半導体微結晶それぞれの表面に当該半導体微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜からなる絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程とを備えることを特徴とする電界放射型電子源の製造方法。
  5. 前記絶縁膜形成工程では、電気化学的な酸化方法により前記酸化膜からなる絶縁膜を形成することを特徴とする請求項4記載の電界放射型電子源の製造方法。
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