JP2009155920A - 橋梁伸縮装置部の防音構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 橋梁伸縮装置部で発生する突発騒音の桁間への伝搬と反響を有効に吸収・減殺すること、桁伸縮への追従性と良好な耐水性・耐久性を具えること、並びに交通規制を要さず、簡単な荷役機械とツールにより橋梁下部から無騒音で安価施工でき、保守点検が容易なこと。
【解決手段】 床版下の主桁端部空間において、線状騒音源となる床版遊間下面の開口部を、耐水性吸音パネル材により、当該開口部からパネル材の吸音面を一定距離離して箱状に覆い、吸音パネル材間に滑り構造を設けた防音構造体である。該吸音パネル材は、桁端部に止着される背板と、背板下端から水平に延びる底板と、底板の両端で直立し背板と結合する側板とを有して向かい合う2組の棚に分かれ、該2組の棚の底・側板前縁部同士が、前記空間の橋軸直交面に沿う中央部で、一方が上・内、他方が下・外となって互いに摺動自在に重なり合い、桁の伸縮に追従する。
【選択図】図1

Description

本発明は、道路橋の伸縮装置部から発生する突発騒音を吸収・減殺する技術に関する。
道路橋の端部には、温度変化による橋梁の伸縮を吸収する伸縮装置が設けられている。路面の伸縮装置部分を車両が高速で通過する際に大きな突発音が発生する。この騒音は100〜1000Hzに及ぶ広範囲の合成音であり、最大音圧は95dB(A)に達する例がある。
突発騒音対策として従来各種の取り組みがなされてきた。例えば、老朽化した伸縮装置の取替・改良、伸縮装置前後の舗装の研削・補修による不陸修正、さらには複数スパンを連結一体化して伸縮装置自体を撤去するノージョイント化等である。
しかし、人家密集地域の供用路線での改良工事は、深夜の騒音工事禁止や車線規制極少化の要請等厳しい制約下にあり、工事期間が長期化しがちである。したがって、可能な限り橋梁下部からの施工が可能で、交通規制を要しない対策が望まれる。
そのような橋梁下部からの施工が可能な先行技術例として、下記特許文献1、2を挙げることができる。
特許文献1は、(a)中間にゴム膜を挟んでV字形に折れ曲がる2枚の防音板の両端を両壁にヒンジで取り付ける構成、(b)両壁から水平に突き出る2枚の防音板の自由端がオーバーラップする構成、(c)桁側面の開口部を、防音板の一端を桁に固定し他端を対向する桁の側壁面に摺接させて閉塞する構成を開示する。
同文献の[0003]には、上記構成に対する先行技術として、伸縮装置直下の床版遊間部に弾性シール材を充填する例が挙げられている(図8参照)。しかし上例では、弾性シール材を圧縮した状態で狭い遊間へ挿入しなければならないため作業性が悪く、その上施工後の経年劣化により弾性シール材の弾性力が低下して落下のおそれがあると記載されている(同文献[0006]参照)。
特許文献2は、伸縮ゴム部直下の桁遊間に止水ゴム膜を接合し、その下面にスポンジゴム等の吸音材を充填する構成を開示する。しかし、止水ゴム膜の下面に充填される吸音材の性能が満足に発揮されるかについては疑問がある(例えば特開平10-183539号公報[0014]参照)。
特開2002−155506号公報 特開2006−193943号公報
高速道路では境界に遮音壁を設け、環境基準を達成するよう、遮音壁の嵩上げ等の対策を年々強化している。しかし近年は道路橋の突発騒音に対する苦情も発生している。
突発騒音は、交通量の増大と車両の大型化、これに伴う路面の摩耗・老朽化に起因する伸縮装置とその付近の舗装の段差が原因と考えられる。突発騒音は路面及び周辺だけでなく、伸縮装置部の間隙を通して橋面下へも伝搬し、桁間で反響してより大きな衝撃音として伝わるので、橋梁下の広い範囲に影響を与える。よって施工が簡易でコストが安い施工技術の開発が望まれている。
本発明は上述のような課題を解決すべくなされたものであり、橋梁の伸縮装置部で発生する突発騒音の桁間への伝搬と反響を有効に吸収・減殺すること、桁伸縮への追従性と良好な耐水性・耐久性を具えること、並びに交通規制を要さず、橋梁下部から容易にかつ経済的に施工でき、完成後も点検容易なことを目的とする。
本発明の請求項1に係る発明は、橋梁の主桁端部空間において、線状騒音源となる床版遊間下面開口部を、耐水性吸音パネル材により、当該開口部からパネル材の吸音面を一定距離離して箱状に覆い、前記吸音パネル材は、桁端部に止着される背板と、背板の下端から水平に延びる底板と、底板の両端で直立し背板と結合する側板とを有して向かい合う2組の棚に分かれ、該2組の棚の底・側板前縁部同士が、主桁端部空間の橋軸直交面に沿う中央部で、一方が上・内、他方が外・下となって互いに摺動自在に重なり合い、主桁の伸縮に追従する。
上記は本発明に係る防音構造体の基本構造であり、線状騒音源を吸音パネル材により箱状に覆い、かつ吸音パネル材間に滑り構造を設ける点を特徴とする(図1参照)。騒音源から一定距離を隔てることで箱内の空気の弾性がバネとして作用し、吸音パネル材が共震して突発騒音に対する吸音作用が効果的に発揮される。透過損失分は二重化される底面部分及び背面の桁端部で遮断される。本防音構造体は橋梁の主桁端部空間に主桁毎に分割して設置される(図2参照)。また吸音パネル材間に滑り構造(図3参照)を設けたので、主桁の伸縮に円滑に追従できる。
上記の耐水性吸音パネル材は、共同出願人の一社が独自に開発し本願とは別に特許出願(特願2007-292904号)したもので、ハニカム材のセルに連通気泡を有する発泡体を充填した芯材の一方の面に金属繊維マットを、他の面に非通気面材を配置し、かつ金属繊維マット面を防水用の極薄(20μm)フィルムにより、フィルム面に垂直の方向を音響振動自在に緩く保持して覆い、さらにその上を開口部を有する保護板で保護する。この吸音パネル材の400Hz以上の周波数帯の吸音率は高く(図7参照)、厚さは34mmで重量は8kg/m2と軽い。JISL1092スプレー法による散水試験後も試験体の重量増加はなく十分な耐水性が確認された。
本発明の請求項2に係る発明は、前記2組の棚において、背板と底板とが曲面を介して一体に連結されている、橋梁伸縮装置部の防音構造体である。
背板と底板とを曲面を介して一体に連結することにより、製造過程においては背板と底板とを一工程で製造することができ、現場施工の部品点数を減らすことができる。この形状の吸音パネル材は図4〜図6に示されている。
本発明の請求項3に係る発明は、前記2組の棚の一方が曲面で一体に連結される背板と底板を有し、他方は垂直な背板の下端に底板を水平に取り付ける、橋梁伸縮装置部の防音構造体である。
請求項3の発明における2組の棚は、曲面を含む吸音パネル材と曲面を含まない吸音パネル材との組み合わせからなる。この組み合わせは、跳ね上げ蓋と吸音パネル材間の滑り構造の形成の都合で採用される場合がある。図5は請求項3の発明の一実施例である。
本発明の請求項4に係る発明は、設置作業を簡便にするため予め桁端面に取り付けられた、ボルト、フック、磁石又は接着剤から選ばれるいずれか一の手段により、前記各背板が桁端面に止着される、橋梁伸縮装置部の防音構造体である。
防音構造体は橋梁下部の狭隘なスペースに設置されるため、現場の設置作業はできるだけ簡便なことが望ましい。そのため、設置先である桁端部へ、ボルト、フック、磁石又は接着剤のどれかを予め取り付けておき、その後に吸音パネル材を桁端部へ当てがうだけで背板の止着が完了するようにする。
図6(A)はボルト又はフック、同(B)は磁石、同(C)は接着剤を使用する例である。各図ともJ字形の背板の曲り角部分を支えるL字形アングル材が桁端部に取り付けられ、クッション材を介して背板を受けている。なお図6(B)には落下に備える鎖が描かれている。
本発明の請求項5に係る発明は、前記各背板を隔てる空間にスプリングを具えた切梁を挿入して各背板を桁端部へ押圧する、橋梁伸縮装置部の防音構造体である。
この発明も現場の設置作業を簡便にする工夫の一部である。向かい合う背板の間にスプリングを具えた切梁(又は横梁)を挿入し、各背板を桁端部へ押し付けることで止着状態をより強固にする。このような趣旨から、請求項4と5は組み合せて使うことができる。図6(C)は偶々接着剤と切梁との組み合せを図示しているが、図6(A)のボルト又はフック、図6(B)の磁石の場合にも、切梁を併用することができる。
本発明の請求項6に係る発明は、点検を容易にするため、前記上になる底板の一部を切り離してヒンジにより開閉を可能にし、当該開閉部分を水平に戻した位置で他方の底板と摺動自在に重なり合う、橋梁伸縮装置部の防音構造体である。
防音構造体を設けると床版の遊間下面開口部が隠されてしまう。しかし、遊間及びその下面の開口部付近は車両の振動が伝わって床版コンクリートのヒビ割れや剥離が起き易い箇所であるから、点検が欠かせない。そのため防音構造体の底面に、目視点検を容易にできる構造を設ける必要がある。この発明は、吸音パネル材間の滑り構造を利用して点検用の跳ね上げ蓋を設ける構成を述べたものである。図4は二重の跳ね上げ蓋を、図5は一重の跳ね上げ蓋を示す。
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
(1)吸音パネル材を箱型にして騒音源となる遊間下面開口部を一定距離を隔てて包み込むので、箱内空気の弾性をバネとして吸音パネル材が共震し、突発騒音に対する吸音作用が効果的に発揮される。また使用した吸音パネル材は400Hz以上の周波数帯の吸音率が優れているので、特に伸縮装置金属部における高周波騒音を十分に吸収・減殺することができる。
(2)吸音パネル材を2組の側板付き棚状に組み立ててその間に滑り構造を設けたので、主桁の伸縮に円滑に追従できると共に、側板により橋軸直角方向への騒音漏出を有効に阻止できる。
(3)使用した吸音パネル材は耐水性を有するので、伸縮装置部から侵入する雨水によって吸音性能が損なわれることがない。
(4)使用した吸音パネル材は34mmと薄く8kg/m2と軽いので、橋梁下部の狭隘な設置場所でほとんど機械力を用いず速く容易に且つ経済的に施工できる。また、しばしば劣化が見られる既設のコンクリート部分に負担を掛けないので落下・破損のおそれがない。
(5)本構造体は開閉が可能な構造にしたので、設置後の点検が容易である。
(6)本構造体は設置後の解体・撤去が容易なので、橋梁塗替工事等に容易に対応できる。
以下、本発明を図示する一実施形態に基づいて説明する。この実施形態は、高架道路や道路橋における橋桁と橋桁の伸縮装置部に適用される。
図1は、本発明の防音構造体100の基本構造を示している。床版3の下の、主桁端部2に挟まれた空間において、線状騒音源となる遊間4の下面開口部6を、耐水性吸音パネル材11により開口部6から吸音面を一定距離離して箱状に覆い、かつ吸音パネル材11間に滑り構造を設けたことを特徴とする。なお、耐水性吸音パネル材11は単純な平面として描かれているが、実際には後述するように各種の変形が存在する。
図2は、橋梁への防音構造体100の配置を示す橋梁断面図(A)と同側面図(B)である。防音構造体100は、断面図(A)に示されるように主桁1の各支間に分割して配置され、4主桁橋においては3個の防音構造体100が配置される。側面図(B)は図1と同一の角度から同一部分を見た図である。
図3は、防音構造体100における耐水性吸音パネル材間の滑り構造を説明する斜視図である。耐水性吸音パネル材11は2組の棚10、10を形成し、各棚は桁端部に止着される背板7、背板の下端から水平に延びる底板8及び底板の両端で直立し背板と結合する側板9、9を有する。各棚は桁端部空間の橋軸直交面に沿う中央部で対向し、各組の底・側板の前縁部同士の一方が上・内、他方が下・外となって互いに摺動自在に重なり合い、主桁1の伸縮に追従する。
図4及び図5は、図1に示す基本形の変形として、点検容易な構造を有する防音構造体100の2つの例を示す。
図4の場合は、図3における背板7と底板8は曲面を介して一体に連結されたJ字形材12となり、2個のJ字形材12、12が向き合う。そして各J字形材12の水平部分の一部を切り離し、ヒンジ21を介して点検用の跳ね上げ蓋15とする。2枚の跳ね上げ蓋15、15は、閉じられた状態では互いに摺動自在に重なり合う。
図5の場合は、図4における2枚のJ字形材12のうちの一方がI字形材13と水平材14の組み合せにより置き換えられる。
図6(A)及び(B)は、図4又は図5に示す防音構造体100を組み立てる中間工程として1枚のJ字形材12を桁端部空間の片側に取付けた状態を示す。取付け手段はボルト16、フック23又は磁石17である。磁石17の場合は落下防止用の鎖24が併用されている。これらの取付け手段を設置先である桁端部2へ予め設置しておき、その後にJ字形材12を当てがえば止着が完了する。現場での設置作業を簡略化するためである。
図6(C)は、図6(A)及び(B)と同様な設置作業を、1枚のJ字形材12と1枚のI字形材13に対して行った状態である。この場合は取付け手段として接着剤18とスプリング切梁20が例示される。スプリング切梁20はJ字形材12とI字形材13の間に挿入され、各材を桁端部2へ押しつけて止着状態をより強固にする。スプリング切梁20は図6(A)及び(B)の場合にも併用することができる。各図共通に、J字形材の曲り角部分を支えるL字形アングル材19が桁端部2に取り付けられ、クッション材22を介して背板7を支える。
(防音構造体設置手順)
図4〜図6を参照しつつ、桁端部空間に防音構造体100を設置する手順を述べる。
先ず設置先現場の寸法を採取し、防音構造体100の分割寸法及び取付け方法・順序・手段を決定(第1工程)。第1工程での決定に従って各部材を工場生産(第2工程)。第1工程で決定した取付け方法に従って設置先現場に取付け手段(ボルト16、フック23、磁石17又は接着剤18、及び支持アングル材19、クッション材22、鎖24)を設置(第3工程)。各部材の現場搬入(第4工程)。第1工程で決定した順序に従って各部材を現場で組立て・取り付け、要すればスプリング切梁20を挿入(第5工程)。なお上記設置工事完了後に騒音改善状況の計測と報告を行う。
本発明の防音構造体の基本構造を説明する概念図である。 橋梁への本防音構造体の配置を示す橋梁断面図(A)及び同側面図(B)である。 本防音構造体の滑り構造を説明する斜視図である。 点検を容易にする防音構造体の一例である。 点検を容易にする防音構造体の他の例である。 桁端部への吸音パネル材の止着手段3例を示す概念図である。 本防音構造体に使用した吸音パネル材の吸音率を示すグラフである。 従来行われてきた伸縮装置部騒音対策の例を説明する図である
符号の説明
1 主桁
2 桁端部(端横桁)
3 床版
4 遊間
5 伸縮装置
6 遊間下面開口部
7 背板
8 底板
9 側板
10 棚
11 吸音パネル材
12 J字形材
13 I字形材
14 水平材
15 跳ね上げ蓋
16 ボルト
17 磁石
18 接着剤
19 支持アングル材
20 スプリング切梁
21 ヒンジ
22 クッション材
23 フック
24 鎖
30 弾性シール材
100 防音構造体

Claims (6)

  1. 橋梁伸縮装置部の主桁端部空間において、線状騒音源となる床版遊間下面の開口部を、耐水性吸音パネル材により、当該開口部からパネル材の吸音面を一定距離離して箱状に覆い、
    前記吸音パネル材が、桁端部に止着される背板と、背板下端から水平に延びる底板と、底板の両端で直立し背板と結合する側板とを有して向かい合う2組の棚に分かれ、前記2組の棚の底・側板前縁部同士が、前記空間の橋軸直交面に沿う中央部で、一方が上と内、他方が下と外になって互いに摺動自在に重なり合い桁の伸縮に追従する、橋梁伸縮装置部の防音構造体。
  2. 前記2組の棚における背板と底板とが、曲面を介して一体に連結される請求項1記載の防音構造体。
  3. 前記2組の棚の一方が曲面で一体に連結された背板と底板を有し、他方は垂直な背板の下端に底板を水平に取り付けるものである、請求項1記載の防音構造体。
  4. 設置作業を簡便にするため予め桁端面に取り付けられた、ボルト、フック、磁石又は接着剤から選ばれるいずれか一の手段により、前記各背板が桁端面に止着される、請求項1乃至3に記載の防音構造体。
  5. 前記各背板を隔てる空間にスプリングを具えた切梁を挿入して各背板を桁端面へ押圧する、請求項4記載の防音装置。
  6. 伸縮装置部の点検を容易にするため、前記上になる底板の一部を切り離してヒンジにより開閉を可能にし、当該開閉部分を水平に戻した位置で他方の底板と摺動自在に重なり合う、請求項1乃至5に記載の防音構造体。
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