JP2009155135A - 複合金属酸化物焼成体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】噴霧造粒体を焼成過程で多孔化することで、スムーズなLiの移動が可能となり、正極を形成する際に成形性に優れ、かつ高速放電特性に優れた正極活物質となる複合金属酸化物焼成体の製造方法を提供する。
【解決手段】遷移金属酸化物等の金属酸化物(a)、及びアルカリ金属化合物等の金属化合物(b)、並びに溶媒を含有するスラリーを噴霧造粒して造粒体を得る噴霧造粒工程と、前記造粒体を金属化合物(b)の分解温度±200℃で加熱する保温工程と、保温工程後に前記造粒体を焼成して多孔性の複合金属酸化物の焼成体を得る焼成工程とを含む粒子状の複合金属酸化物焼成体の製造方法であって、以下の(I)及び(II)を満たす粒子状の複合金属酸化物焼成体の製造方法。(I)前記金属酸化物(a)、及び前記金属化合物(b)は、前記溶媒に難溶である。(II)前記金属化合物(b)は、少なくとも前記保温工程で脱離する非金属元素成分を含有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、遷移金属等とアルカリ金属等とを含む複合金属酸化物焼成体の製造方法に関し、特に、リチウム電池の正極活物質として好適に使用することができる複合金属酸化物焼成体の製造方法等に関する。
非水電解質二次電池は、従来のニッケルカドミウム二次電池などに比べて作動電圧が高く、かつエネルギー密度が高いという特徴を有し、電子機器の電源として広く利用されている。この非水電解質二次電池の正極活物質としてはLiCoO、LiNiO、LiMn等に代表されるリチウム遷移金属複合酸化物が用いられている。
なかでもLiMnやMnの一部が他の金属で置換されたもの(以下、まとめてマンガン酸リチウムともいう)は、構成元素であるマンガンが資源として多量に存在するため、原料が安価に入手しやすく、環境に対する負荷も少ないという利点を有する。かかる利点を活用すべく、マンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池は、従来、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラ等に代表されるモバイル電子機器の用途に用いられてきている。
近年、モバイル電子機器は、さまざまな機能が付与される等の高機能化や、高温や低温での使用等のため、要求特性がより一層厳しいものとなっている。また、電気自動車用バッテリー等の電源への応用が期待されており、自動車の急発進急加速に追随できる高出力高速放電が可能な電池が望まれている。
そのため、Liのスムーズな挿入・脱離が行えるマンガン酸リチウムの開発が望まれており、それを具現化するひとつの粒子設計として、マンガン酸リチウムの一次粒子を微細化する方法があると考えられる。
マンガン酸リチウムの一次粒子を微細化する手法としては、例えば、特許文献1に記載されているように、乾式ビーズミル等を用いてマンガン酸リチウム等を粉砕する手法がある。
また、特許文献2には、噴霧熱分解法などの手法により、球状表面に一次粒子が集合した二次粒子からなる球状の中空粒子が提案されている。その際、噴霧熱分解法としては、硝酸リチウムと硝酸マンガンの溶液(スラリーではない)を縦型熱分解炉内へ霧状に吹き込んで熱分解させ、複合酸化物の粉末を得た後、所定温度でアニールする方法が開示されている。
更に、特許文献3のように、球形状のマンガン化合物を、その形状を維持させながらリチウム化合物と混合し、この混合物を熱処理する方法で、球状粒子内部まで活物質が詰まった密度の高い活物質を得る製造方法が提案されている。
また、特許文献4には、リチウムと遷移金属を主体とする非水電解液二次電池用活物質の製造法であって、リチウム化合物と遷移金属化合物とを液体媒体中で粉砕し、固体の平均粒径を2μm以下とし、次いで、得られた固液混合物を回転円盤型のアトマイザー、又はノズルアトマイザーを備えた噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥し、さらに、乾燥により得られる粉末固体を酸素の存在下に焼成する非水電解液二次電池用活物質の製造法が開示されている。ここで、リチウム化合物としては、液体媒体である水に溶解性のものが好ましい例として記載され、また焼成工程として、噴霧乾燥により得られる粉末固体をそのまま焼成する方法が記載されている。
特開2003−48719号公報 特開平10−83816号公報 特開2002−151079号公報 特開平10−106562号公報
しかしながら、前述した先行技術によって得られるマンガン酸リチウムは、いずれも十分な高機能化がなされていない。
つまり、特許文献1のようにマンガン酸リチウムを粉砕する手法では、粉砕形態によっては、結晶性の低下を引き起こす場合があり、また、粒子が非常に細かくなるために、例えば、非水電解質二次電池(以下、単に電池ともいう)用の正極を形成する際に成形性が悪くなり易い。
一方、特許文献2のように、一次粒子が集合した二次粒子からなる中空粒子が提案されているが、二次粒子が中空で十分な密度のものが得られず、エネルギー密度の低い電極になってしまう。
また、これを改良する特許文献3のように、球状粒子内部まで活物質材料が詰まった密度の高い活物質では、高密度なゆえに、Liが活物質内部へ拡散する速度が遅くなるため、結果的に高速放電特性が低いものとなることが明らかとなった。
更に、特許文献4に記載された製造方法では、焼成後に得られた焼成体に適当な大きさの微細孔が形成されておらず、正極活物質としての高速放電特性が不十分になることが明らかとなった。
そこで、本発明は、噴霧造粒体を焼成過程で多孔化することで、スムーズなLiの移動が可能となり、正極を形成する際に成形性に優れ、かつ高速放電特性に優れた正極活物質となる複合金属酸化物焼成体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、遷移金属酸化物等、及びアルカリ金属塩等の金属化合物が溶媒に分散したスラリーを噴霧造粒した後、造粒体を特定の温度で加熱した後に焼成して、多孔化することで、スムーズなLiの移動が可能な正極活物質が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の複合金属酸化物焼成体の製造方法は、遷移金属酸化物、並びに周期表の3B、4B、及び5Bに属する金属の酸化物からなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物(a)、及びアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物からなる群から選ばれる1種以上の金属化合物(b)、並びに溶媒を含有するスラリーを噴霧造粒して造粒体を得る噴霧造粒工程と、前記造粒体を金属化合物(b)の分解温度±200℃で加熱する保温工程と、保温工程後に前記造粒体を焼成して多孔性の複合金属酸化物の焼成体を得る焼成工程とを含む粒子状の複合金属酸化物焼成体の製造方法であって、以下の(I)及び(II)を満たすものである。
(I)前記金属酸化物(a)、及び前記金属化合物(b)は、前記溶媒に難溶である。
(II)前記金属化合物(b)は、少なくとも前記保温工程で脱離する非金属元素成分を含有する。
本発明の複合金属酸化物焼成体の製造方法によれば、噴霧造粒体を特定の温度で加熱した後に焼成して多孔化することで、スムーズなLiの移動が可能となると考えられ、正極を形成する際に成形性に優れ、かつ高速放電特性に優れた正極活物質となる複合金属酸化物焼成体を製造することができる。
本発明の複合金属酸化物焼成体の製造方法は、上記の(I)及び(II)を満たす金属酸化物(a)、及び金属化合物(b)を含むスラリーを噴霧造粒して造粒体を得る噴霧造粒工程と、前記造粒体を金属化合物(b)の分解温度±200℃で加熱する保温工程と、保温工程後に前記造粒体を焼成して多孔性の複合金属酸化物の焼成体を得る焼成工程とを含むものである。本発明では、噴霧造粒体から焼成体が得られるため、粒子状の複合金属酸化物焼成体が得られる(以下これを「粒状焼成体」と略称する場合がある)。この複合金属酸化物焼成体は、前記焼成下で金属酸化物(a)と金属化合物(b)とが反応して生成した複数の一次粒子が凝集した凝集粒子である。
本発明の製造方法によって得られる複合金属酸化物焼成体の平均一次粒子径は、原料である金属酸化物(a)の平均粒径により決定される傾向にある。従って、原料金属酸化物(a)を粉砕などにより所望の粒径まで粒度調整することにより、本発明で得られる粒状焼成体の一次粒子径を制御できる。
本発明において、一次粒子とは、電子顕微鏡で観察した場合に粒子状として確認できる最小単位のものである。「平均一次粒子径」は、電子顕微鏡で観察される一次粒子の数平均粒径を指す。なお、本発明における各種の物性値は、具体的には実施例に記載の方法で測定される値である。
また、凝集粒子とは、一次粒子が強固により集まってできた粒子の集合体で、本発明に係る金属酸化物(a)、金属化合物(b)又は複合金属酸化物焼成体等を水等の溶媒中で超音波照射したり、ホモジナイザーなどでせん断力などの外力を加えてもほぐれない粒子のことである。この粒子の粒径の平均値を平均凝集粒子径と称すが、平均凝集粒子径の具体的な測定方法は、後述する。
本発明の製造方法によって得られる複合金属酸化物焼成体の平均凝集粒子径は、噴霧造粒法の噴霧条件等によって制御できる。噴霧造粒は、スプレーノズルより原料スラリーを噴霧し、それを熱風などにより乾燥させる手法により、形状が球形状で比較的粒度分布がシャープな粒子を製造する方法である。噴霧により生成する液滴の大きさを制御することで、本発明の粒状焼成体の平均凝集粒子径が制御できる。
スラリーに含まれる金属酸化物(a)、及び金属化合物(b)としては、スラリーの溶媒に難溶な物質を用いる。こうすることで噴霧造粒によって内部まで固体がつまった中実な粒状焼成体が得られる。すなわち、溶媒に溶解性の物質を用いた場合、噴霧造粒により発生した液滴が乾燥してゆく過程で、溶媒が造粒粒子中心部から外側の表層部へと移動しながら蒸発してゆく。その際、溶媒に溶解している物質は、溶媒の移動とともに粒子表面に移動し濃縮され、その結果、中心部が中空の粒子となる。一方、溶媒に難溶な物質を用いれば、成分原料の粒子表層の濃縮がおこらず、中実な粒子が得られると考えられる。
本発明で得られる粒状焼成体は、微細孔があいた多孔構造をとっている。微細孔は、金属化合物(b)の非金属元素成分が少なくとも保温工程段階で脱離し、金属化合物(b)の残部と金属酸化物(a)とが反応していく過程で形成されると考えられる。すなわち噴霧造粒後、保温工程で金属化合物(b)が消失することにより、金属化合物(b)が占有していた場所に、空孔が形成されると考えられる(以下、本発明で多孔性とはこのように形成された空孔を有する状態をいう)。従って、得られる空孔は、金属化合物(b)の平均粒径によって決定される傾向にあるため、その平均粒子径を制御することによって細孔径を制御することができる。つまり、本発明では、下記の条件(II)を満足する必要がある。
(II)前記金属化合物(b)は、少なくとも前記保温工程で脱離する非金属元素成分を含有する。
ここで、「少なくとも保温工程で脱離する非金属元素成分」とは、金属化合物(b)に含有される非金属元素成分であって、少なくとも後述する保温工程で金属化合物(b)から分解、昇華等を伴って脱離するものを指す。このような非金属元素成分としては、例えば金属化合物である炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、硫化物、塩化物、酢酸塩、シュウ酸塩等に含有される炭素、窒素、水素、酸素、硫黄、塩素などの元素成分が挙げられる。即ち、二酸化炭素等の脱離を起こす炭酸塩やシュウ酸塩等、あるいは水等の脱離を起こす水酸化物等の金属化合物が、金属化合物(b)として用いられる。
本発明では、粒状焼成体の全細孔容量をより大きく確保する観点から、金属酸化物(a)及び金属化合物(b)以外の物質で、スラリー溶媒に難溶で、噴霧造粒時には熱分解せず、少なくとも噴霧造粒後の焼成により熱分解(例えば酸化分解)する物質(c)を、スラリーに添加することが好ましい。物質(c)は、スラリーを用いて噴霧造粒した後、焼成するまでの間、造粒体の収縮を抑制し、粒状焼成体の全細孔容量を大きく確保できると考えられる。中実な粒状焼成体を得る観点から、物質(c)の平均凝集粒子径は、目的の粒状焼成体の平均凝集粒子径の50%以下が好ましく、より好ましくは40%以下である。同様の観点から、物質(c)のスラリー中の含有量は、金属酸化物(a)と金属化合物(b)の合計量に対し、30重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、20重量%以下がさらに好ましい。なお、本発明で得られる粒状焼成体の全細孔容量をより大きく確保する観点に加え、本発明で得られる粒状焼成体中において不純物の残留を防ぐ観点から、物質(c)は、噴霧造粒されるまでは熱分解せず、少なくとも焼成の時に熱分解するものであれば使用できる。
物質(c)としては、例えば、カーボン類、ポリスチレン類(ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等)、ポリオレフィン類(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、含フッ素樹脂類(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ(メタ)アクリロニトリル類、ポリ(メタ)アクリルアミド類やこれらの共重合体等の有機高分子(好ましくは熱可塑性樹脂)が挙げられる。さらにウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂やエラストマー、あるいはフッ化ビニリデン、フッ化エチレン、アクリロニトリル、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、メタクリル酸メチル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等の単独又は共重合体を用いることができる。さらに、ポリアミド、アクリル、アセテート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの有機短繊維又は有機ポリマー粒子を用いることもできる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を指す。(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドも同様である。
以上のように、本発明では、粒状焼成体を作るために噴霧造粒という手法を用いることから、原料を溶媒に分散させ、スラリー化する工程が必要となる。そして、得られる粒状焼成体の平均一次粒子径と細孔径を決定する因子として、原料となる金属酸化物(a)及び金属化合物(b)の粒子径が重要であることから、これらの平均粒径が変化するのを抑制する観点から、両者はともに溶媒に難溶であることが必要である。さらに中実な粒状焼成体を形成するうえでも、原料が溶媒に難溶であることが必要である。なお、原料が溶媒に難溶とは、溶媒100gに対する原料の20℃での溶解度が5g以下、好ましくは3g以下、より好ましくは2g以下であることをいう。なお、以下では前記20℃での溶解度を単に溶解度ともいう。つまり、本発明では、条件(I)を満足する必要がある。
(I)前記金属酸化物(a)、及び前記金属化合物(b)は、前記溶媒に難溶である。
本発明で得られる複合金属酸化物焼成体の形状は、噴霧造粒で得られうる粒子形態であれば何れでもよいが、電池用正極を形成する際の成形性の観点から、噴霧造粒で通常得られる球状が好ましい。ここで球状とは、必ずしも真球状のもののみを指すわけではなく、粒子表面に多少凸凹があるもの、球全体が多少歪んだもの、一部がへこんだものや、欠けたもの、球状粒子がいくつか合体して凝集したものなどを含む概念である。
また、電極のエネルギー密度を高くする観点から、得られる多孔性の焼成体が、中実であることが好ましい。ここで、「中実」とは、金属化合物(b)、又は金属化合物(b)および物質(c)の消失により形成された空孔以外の中空部が実質的に存在しない構造を指す。
本発明における金属酸化物(a)は、遷移金属酸化物、並びに周期表の3B、4B、及び5Bに属する金属の酸化物からなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物であり、周期表の3A、4A、5A、6A、7A、8、1B、2Bに帰属される遷移金属の酸化物、及び/又は3B、4B、5Bに帰属される少なくとも1種の金属の酸化物または2種以上の複合酸化物が挙げられる。このうち水やエタノールに難溶なものが特に好ましい。
特に、複合金属酸化物焼成体を電池、好ましくはリチウム電池の材料に用いる場合、金属酸化物(a)がMn、Fe、Co、及びNiからなる群から選ばれる1種以上の金属の酸化物であることが好ましい。
本発明における金属化合物(b)は、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物からなる群から選ばれる1種以上の金属化合物である。金属化合物(b)の具体例としては、周期表の1A、2Aに帰属される元素の炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、硫化物、塩化物、あるいは酢酸塩、シュウ酸塩の有機低分子カルボン酸塩等の一種のまたは2種以上の金属化合物が挙げられる。このうち水又はエタノールに不溶もしくは難溶なものが好ましく、600℃以下の熱処理で金属酸化物以外の成分が残らないものが好ましい。具体的には、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物が好ましく、水やエタノールに不溶なものがより好ましい。
本発明の製造方法は、焼成により得られる機能性材料の製造に好適である。例えば、誘電材料であるBaTiO、磁性材料であるフェライト(MgFe)、圧電素子であるNb、熱伝変換素子であるNaCoO、固体電解質であるSrZrO、レーザー素子であるLiNbO,非水電解質二次電池材料(リチウム電池材料)であるLiMn、LiCoO、LiNiO、LiFeOなどが例示される。このうちリチウム電池材料である、LiM等のマンガン酸リチウムの製造に、より好適に用いられる。従って、本発明では、金属酸化物(a)がMn、Fe、Co、及びNiからなる群から選ばれる1種以上の金属の酸化物であり、金属化合物(b)がリチウム塩であることが好ましい。
本発明で得られるマンガン酸リチウム(厳密には「リチウム・含マンガン金属複合酸化物」を指す)は、一般式LiMn2−x(但し、Mは、Mn以外の元素を示し、0≦x≦0.3である。)で表されるものが代表的であり、Mn以外の置換元素を含むものでもよい。
置換元素Mの量は、初期の充放電特性を向上させる観点から、x=0が好ましく、繰り返し充放電特性(サイクル特性)を向上させる観点からは、0<x≦0.3が好ましい。
置換元素Mは、マンガン酸リチウムのMnと置換し、電解液中へのMnの溶出を抑えるのに有効な元素として働き、電池性能やレート特性を改善する効果のある元素が好ましく、具体的には、Li、K、Ca、Mg、Ba、Fe、Ni、Zn、Co、Cr、Al、B、V、Si、Sn、P、Sb、Nb、Ta、Mo、及びW、F、Ti、Cu、Zr、Pb、Ga、Sc、Sr、Y、In、La、Ce、Nd、S、Biからなる群より選択される少なくとも一種の元素が好ましい。このうち特にMg、Al、Co、Fe、Cr、Ni、Zn、Bなどがより好ましく用いられる。
得られるマンガン酸リチウムの結晶相は、スピネル型が好ましく、具体的には、JCPDS(Joint committee on powder diffraction standards):No.35−782に示されるように、X線回折測定により得られる主たるピークについて、d=4.764±0.030に対応する回折強度を100としたときの他のdに対応する相対回折強度が同等であればよく、d=2.487±0.030に対応する相対回折強度が20〜50、d=2.062±0.030に対応する相対回折強度が20〜50であることが好ましい。
スラリー中における金属酸化物(a)の平均凝集粒子径は、得られる粒状焼成体に好適な平均一次粒子径を生成させる観点から、0.03〜2.5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがより好ましく、0.1〜1.8μmであることが更に好ましい。
スラリー中における金属化合物(b)の平均凝集粒子径は、得られる粒状焼成体に好適な多孔性を付与する観点から、0.1〜10μmであることが好ましく、0.2〜5μmであることがより好ましく、0.2〜3μmであることが更に好ましい。
従って、上記の観点から、スラリー中における金属酸化物(a)の平均凝集粒子径と金属化合物(b)の平均凝集粒子径とは、どちらも上記の好ましい範囲であることが好ましい。
本発明では、金属酸化物(a)及び金属化合物(b)(例えば複合金属酸化物焼成体としてマンガン酸リチウムを製造する場合、金属酸化物(a)としてMn酸化物(Mn源)、及び金属化合物(b)としてLi塩(Li源))を粉砕等の手法により、所望の粒子径まで粉砕し、粉砕物を溶解させない溶媒と混合しスラリー化を行うスラリー化工程によってスラリーを調製することができる。粉砕は金属酸化物(a)と金属化合物(b)とを混合して行ってもよいが、粉砕後の粒径を適正に制御する観点から、別々に粉砕することが好ましい。このスラリーを噴霧造粒して造粒体を得る噴霧造粒工程と、前記造粒体を金属化合物(b)の分解温度±200℃の範囲内で加熱する保温工程、及び保温工程後に前記造粒体を焼成して多孔性の複合金属酸化物焼成体を得る焼成工程とを経ることにより、粒子状の複合酸化物(例えば、マンガン酸リチウム)焼成体が製造される。
本発明で粒子状のマンガン酸リチウムを製造する場合、電池のサイクル特性を向上させるために添加する元素Mは、Li源あるいはMn源を粉砕する際に添加するか、Li源とMn源のスラリーを混合する際に添加することが好ましい。M元素の添加形態としては、M元素を含む塩を溶媒に溶かして添加してもよいし、M元素の塩が不溶性の場合は湿式粉砕の際に添加しても良いし、溶液または0.5μm以下の微粒子の形で、Li源を添加する際に一緒に添加してもよい。
得られるマンガン酸リチウムの平均一次粒子径は、Mn源の平均凝集粒子径により決定される傾向がある。すなわち、Mn源の一次粒子の凝集体(凝集粒子)が、焼成過程でLi源を取り込みながら焼結し、マンガン酸リチウムの一次粒子へと変化していくと考えられる。従って、Mn源の平均凝集粒子径を湿式粉砕などにより制御することで、生成するマンガン酸リチウムの一次粒子を制御できる。
Mn源としては、MnO,Mn,Mn、MnOの1種または2種以上が好ましく用いられ、このうち、MnOやMnがより好適に用いられる。
Li源としては、炭酸リチウム、水酸化リチウム、酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、硫酸リチウムなどのリチウム化合物が好ましく、このうちマンガン酸リチウムの一次粒子制御のしやすさと、好ましい溶媒である水への溶解性が低いという観点から炭酸リチウムが好ましく用いられる。
本発明では、粉砕前の金属酸化物(a)の平均一次粒子径は、とくに制限はないが、所望の粒径までの粉砕の容易さの観点から、0.01〜0.5μmが好ましく、0.01〜0.1μmがより好ましく、0.01〜0.05μmが更に好ましい。また、粉砕前の平均凝集粒子径は、湿式粉砕のしやすさの観点から、0.03〜100μmが好ましく、0.03〜50μmがより好ましい。
本発明では、粉砕前の金属化合物(b)の平均一次粒子径は、とくに制限はないが、金属酸化物(a)との反応性の観点から、0.01〜10μmが好ましい。また、粉砕前の平均凝集粒子径は、金属酸化物(a)との反応性の観点から0.03〜100μmが好ましく、0.03〜50μmがより好ましい。
本発明では、平均凝集粒子径の制御は、分級、粉砕などの方法で行うことができるが、後工程でのスラリー化を考慮すると、湿式分級や湿式粉砕が好ましく、生産性の観点から、湿式粉砕が好ましい。湿式粉砕は、湿式ビーズミル、ボールミル、アトライター、振動ミルなど、ボール媒体式ミルが好ましく用いられる。また、溶媒に溶解しない金属化合物(b)を用いる場合は、別途金属化合物(b)を湿式粉砕してもよいし、金属酸化物(a)とともに粉砕してもよい。但し、それぞれの凝集粒子径の制御のし易さの観点から、金属酸化物(a)と金属化合物(b)とは別々に湿式粉砕することが好ましい。
湿式粉砕等による粉砕の際に、平均凝集粒子径を制御する方法としては、粉砕時間を調節する方法、ビーズ等の粉砕媒体の粒径を変える方法、粉砕エネルギーを調節する方法、これらを組み合わせる方法などを採用することができる。
用いる溶媒は、噴霧乾燥によって除去する際の乾燥の容易さの観点から、沸点が、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは120℃以下で、取扱いの観点から、沸点が70℃〜120℃のものがさらにより好ましい。このような溶媒の具体的なものとして、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、沸点202℃)、ジメチルホルムアミド(DMF、沸点153℃)、ジメチルアセトアミド(沸点165℃)、トルエン(沸点110.8℃)、水(沸点100℃)、メチルエチルケトン(沸点79.5℃)、エタノール(沸点78.3℃)、酢酸エチル(沸点76.8℃)、アセトン(沸点56.3℃)、テトラヒドロフラン(沸点66℃)などが例示される。このうち、取扱いの容易さの観点から好ましい溶媒は、水やエタノールであり、水がより好ましい。
粉砕後、すなわち噴霧造粒工程で使用されるスラリー中の金属酸化物(a)の平均凝集粒子径は、本発明に係る複合金属酸化物焼成体に好適な平均一次粒子径を生成させる観点と本発明で得られる複合金属酸化物焼成体に0.05〜0.5μmのピーク細孔径を確保する観点から0.03μm〜2.5μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましく、0.05〜1.7μmが更に好ましい。また、噴霧造粒工程で使用される金属酸化物(a)の平均一次粒子径は、同様の観点から、0.01〜2.5μmが好ましく、0.03〜2μmがより好ましく、0.05〜1.7μmが更に好ましい。
湿式粉砕時の濃度としては、生産性の観点から金属酸化物(a)と金属化合物(b)との固形分合計量が、スラリー総量の1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、5重量%以上が更に好ましい。また、スラリーの粉砕効率の観点から好ましくは、70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、30重量%以下が特に好ましい。これらの観点を総合すると、1〜70重量%が好ましく、2〜50重量%がより好ましく、5〜30重量%が更に好ましい。
また、湿式粉砕時の粉砕効率を高める観点から分散剤を添加することが好ましい。分散剤を使用する場合、分散剤としてはアニオン性、ノニオン性もしくはカチオン性界面活性剤、または高分子分散剤を用いることが出来るが、分散性能の点から高分子分散剤の使用が好ましい。また、本発明の粒状焼成物の純度を高く保つ観点から、焼成後に完全に分解して、残渣が残留しない高分子分散剤がより好ましい。
高分子分散剤としては種々の化合物を使用することができるが、分子内に複数のカルボキシル基を有するポリカルボン酸系高分子分散剤、分子内に複数のアミノ基を有するポリアミン系高分子分散剤、分子内に複数のアミド基を有する高分子分散剤や分子内に複数の多環式芳香族化合物を含有する高分子分散剤が好ましい。
ポリカルボン酸系高分子分散剤としてはポリ(メタ)アクリル酸とその誘導体が挙げられる。その誘導体の具体例としては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、(メタ)アクリル酸と無水マレイン酸との共重合体、更にはそのアミド化物やエステル化物、(メタ)アクリル酸とマレイン酸との共重合体、および(メタ)アクリル酸ユニットを持つくし型ポリマー等を挙げることができる。
ポリアミン系高分子分散剤としてはポリアルキレンアミンおよびその誘導体、ポリアリルアミンおよびその誘導体、ポリジアリルアミンおよびその誘導体、ポリN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびその誘導体、更には上記ポリアミンにポリエステルをグラフトさせたくし型ポリマー等を挙げることができる。
分子内に複数のアミド基を有する高分子分散剤としては、縮合反応によって得られるポリアミドおよびその誘導体やポリビニルピロリドンおよびその誘導体やポリN,N−ジメチルアクリルアミドおよびその誘導体、更にはこれらポリアミドにポリエステルやポリアルキレングリコールをグラフトさせたくし型ポリマー等を挙げることができる。
多環式芳香族化合物を含有する高分子分散剤としては、ピレンやキナクリドン骨格を有するビニルモノマーと各種モノマーとの共重合体を挙げることが出来る。
これらの分散剤は単独で、あるいは二種以上の分散剤を混合して用いることができる。分散剤を用いる場合の好適な添加量は、スラリーに対して0.05〜20重量%である。また、焼成後の残渣の残留を防ぐ観点から、より好ましくは0.05〜10重量%である。
本発明では、金属酸化物(a)と金属化合物(b)の粒径は、粒状焼成体の平均一次粒子径と細孔径を決定するファクターであるため、それぞれ別々に粒度調整することが好ましい。その場合、各々所望の粒度に調整されたスラリーを混合し噴霧造粒を行うが、その際に用いる混合機は、特に制限されるわけではなく、スラリーが均一に混合可能なパドル式攪拌機、ディスパー、ホモミキサー等の分散機を用いて混合するのが好ましい。
本発明の製造方法は、上記のようなスラリーを噴霧造粒して造粒体を得る噴霧造粒工程を含む。噴霧造粒工程では、混合した原料スラリーをスプレーノズルから噴霧することで微粒化した液滴を形成し、それを乾燥させることで、球状の粉末を形成することができる。
微粒化した液滴は、径が10μmを超える場合をスプレー、径が10μm以下の場合をミストと区別するのが通常であるが、後者のミストとすることが好ましい。つまり、本発明における噴霧造粒工程では、液滴径が10μm以下となるように、スラリーを噴霧することが好ましく、液滴径が0.1〜10μmとなるように、スラリーを噴霧することがより好ましい。
スラリーの液滴化は、回転円盤(回転数の変化)、加圧ノズル(液体圧力)、二流体ノズル(気体圧力)、四流体ノズル(気体圧力)などを用いて行うことができる。
これらの中でも、圧縮空気を利用したノズルの1種である二流体ノズルや四流体ノズルが、液滴をミストとして噴霧することができるので好ましい。
乾燥方法は、凍結乾燥、噴霧乾燥、噴霧熱分解法などの手法で行うことができるが、製造コストを低くする観点から、噴霧乾燥することが好ましい。乾燥温度は細孔径制御の観点から、乾燥装置の入口の熱風温度が溶媒の沸点から800℃までの範囲が好ましく、溶媒の沸点から50℃〜350℃の範囲がより好ましい。
本発明において、粒子状の複合金属酸化物焼成体の微細孔は、噴霧造粒に続く保温工程で金属化合物(b)が消失することで生成すると考えられる。金属化合物(b)の分解温度は、通常、金属酸化物(a)の結晶化温度よりも低いため、焼成温度まで急激に昇温する方法では、生成した空孔が消滅してしまう場合がある。
従って、本発明では、所望の微細孔を形成する観点から、保温工程での昇温を金属化合物(b)の分解温度付近で止めて、分解温度±200℃の範囲内で加熱する必要がある。つまり、本発明における焼成工程では、上記焼成温度での加熱処理に先立って、これより低い温度領域で加熱温度を保持する加熱処理(保温工程)を行う必要がある。この加熱温度の上限温度としては、同様の観点から、好ましくは分解温度+150℃、より好ましくは分解温度+100℃、更に好ましくは分解温度+80℃の範囲内である。また、この加熱温度の下限温度としては、同様の観点から、好ましくは分解温度−150℃、より好ましくは分解温度−100℃、更に好ましくは分解温度−80℃の範囲内である。ここで、例えば、金属化合物(b)の分解温度±200℃の範囲内に保持するとは、一定又は略一定に温度を保持する場合と、一定の温度領域内に温度を保持する場合(昇温速度が小さい場合も含む)との両者を含む概念である。さらに、同様の観点から、保持時間は、0.5〜5時間が好ましく、0.8〜4時間がより好ましく、1〜3時間が更に好ましい。
保温工程までの好適な平均昇温速度は、好ましくは100〜400℃/時間、より好ましくは150〜300℃/時間である。
本発明の製造方法は、上記のような噴霧造粒工程で得られた造粒体(顆粒、粉末等)を保温した後、焼成して多孔性の複合金属酸化物焼成体を得る焼成工程を含む。焼成により、金属酸化物(a)(例えばMn源)と金属化合物(b)(例えばLi源)を反応させ、多孔性の複合金属酸化物焼成体(例えば、マンガン酸リチウム)の結晶を生成させることができ、また金属化合物(b)を分解させることにより空孔をつくることが可能になると考えられる。
本発明では、「焼成」とは、保温工程を経た噴霧造粒体が焼結するまで加熱処理する(焼きなます)ことをいい、これにより、複合金属酸化物の結晶性が向上して、例えば電池用正極に使用すると高速放電特性が向上する。このような焼成によって、多孔質状態で硬化した正極活物質を得ることができる。ここに、焼結とは、混合鉱物粉体の集合体が加熱されることにより、固体間の純固相あるいは一部液相を交えた結合反応によって粉体粒子間が結合するとき、前記結合反応のことをいう(化学大辞典4(共立出版、昭和56年10月15日発行)より)。本発明では、焼成工程により、以下の何れか1つの状態になっていることが好ましい。
(1)粒状焼成体のマンガン酸リチウムに帰属される(111)面のX線回折ピークの半値幅が2.5以下である。
(2)粒状焼成体を空気中で600℃1時間加熱したときの重量減少が1%未満である。
保温工程を経た噴霧造粒体を入れた炉内を、平均昇温速度t℃/時間でT℃に到達後、T℃でH時間焼成する場合、好適な焼成条件としては、高速放電特性の観点と、結晶性を向上させる観点から、t、T、及びHが以下を満たすことである。
即ち、好ましくは、
t=200〜800、T=650〜1200、H=[4000/10(1+T/273)]〜[204000/10(1+T/273)]であり、より好ましくは、
t=300〜700、T=650〜1000、H=[4000/10(1+T/273)]〜[180000/10(1+T/273)]であり、更に好ましくは、
t=300〜600、T=700〜900、H=[8500/10(1+T/273)]〜[128000/10(1+T/273)]であり、より更に好ましくは、
t=300〜500、T=700〜850、H=[17000/10(1+T/273)]〜[85000/10(1+T/273)]である。
また、生産性を確保する観点から、Hは、20を超えないことが好ましく、10を超えないことがより好ましく、6を超えないことが更に好ましい。
なお、活物質の焼成性は、Tが低い場合は、Hを大きくすることが好ましく、Tが高い場合は、Hが小さくても十分確保できることが経験上知られている。本発明者等は、そのようなTとHの関係が、積[10(1+T/273)]×Hによって好適に与えられ、当該積の好適な範囲を満たすことで、一定のTに対する好適なHを得ることができる。
例えば、t=200〜800、T=650〜1200では、当該積=4000〜204000を満たすHを選択することで、良好な焼結状態を得ることができる。
焼成工程では、空気、酸素、窒素など、焼成工程で発生するガスを除去すると共に、ガスを焼成雰囲気内に供給しながら焼成を行うことが可能である。
以上のようにして得られた焼成体は、粒子同士の固着はほとんどなく、噴霧造粒時の粒径を保持しており、正極活物質として使用できるが、粉体の流動性を向上させるために、篩による分級などを行っても良い。
また、前記焼成工程で得られる焼成体(複合金属酸化物焼成体)は多孔性であり、水銀ポロシメーターで測定した細孔分布において、少なくとも0.05〜0.5μm(好ましくは0.2〜0.4μm)の範囲および0.5μmを超えて10μm以下の範囲に、それぞれピーク細孔径を有することが好ましい。0.05〜0.5μm(好ましくは0.2〜0.4μm)の微細孔は、金属化合物(b)、又は金属化合物(b)及び物質(c)の消失にともない形成された、凝集粒子である焼成体の内部の細孔である。焼成体がマンガン酸リチウムの場合で、電池用正極に使用したときに、この細孔にLiイオンが進入することでLiイオンの挿入・脱離がスムーズに行えると考えられる。また、0.5μmを超える孔は、凝集粒子である焼成体間の間隙により生じる孔であると考えられる。この孔は、焼成体がマンガン酸リチウムの場合で、電池用正極に使用したときに、カーボンブラックなどの導電補助剤が詰まる孔に相当し、電子の流れをスムーズにし、電極の抵抗を低減させる役割をはたすものに相当すると考えられる。以上の細孔により、高速放電特性に優れた特性を発現できると考えられる。
以下、本発明の粒状焼成体の用途として最も好ましい応用例であるマンガン酸リチウム(LiMn)の具体的な製造方法について説明する。
前記粉砕後、すなわち噴霧造粒工程で使用されるLi源の平均凝集粒子径は、得られるマンガン酸リチウムに好適な多孔性を付与する観点から、0.1〜10μmが好ましく、0.1〜5μmがより好ましい。また、噴霧造粒工程で使用されるLi源の平均一次粒子径は、同様の観点から、0.01〜10μmが好ましく、0.01〜5μmがより好ましい。
混合割合(Li/Mnモル比)は、好ましくは0.5〜1.1、より好ましくは0.55〜1.02の範囲である。なお、置換元素Mを含有させる場合、Li/(Mn+M)のモル比を、上記範囲とするのが好ましい。
噴霧造粒される造粒体の粒子サイズは、噴霧の際の液滴サイズおよび原料粒子の粒子径により制御することが可能であるが、造粒体の粒子サイズは、焼成後に得られるマンガン酸リチウム、即ち焼成工程で得られる焼成体の平均凝集粒子径に対応して決定するものである。
得られたマンガン酸リチウムの平均凝集粒子径としては、電池の正極を形成する際の塗膜の平滑性を維持し、かつLiの挿入・脱離能を向上させる観点から、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、更に好ましくは8μm以下である。また、上記塗膜を作製する際に、バインダーの量を減らす観点から、0.7μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。以上の観点を総合すると、マンガン酸リチウムの平均凝集粒子径としては、0.7〜15μmが好ましく、1〜10μmがより好ましく、1〜8μmが更に好ましい。
マンガン酸リチウムの平均一次粒子径は、電解液へのMnの溶出を抑制し、及び高速放電特性(レート特性)を安定に確保する観点から、0.03〜3μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。
マンガン酸リチウムのBET比表面積、即ち前記焼成工程で得られる粒状焼成体のBET比表面積は、電解液の浸透性の観点から、1m/g以上が好ましく、1.5m/g以上がより好ましく、正極を作製する際のバインダー量低減の観点から40m/g以下が好ましく、20m/g以下がより好ましく、10m/g以下が更に好ましい。以上の観点を総合すると、マンガン酸リチウムのBET比表面積としては、1〜40m/gが好ましく、1.5〜20m/gがより好ましく、1.5〜10m/gが更に好ましい。
マンガン酸リチウム、即ち前記焼成工程で得られる焼成体は、水銀ポロシメーターで測定した細孔分布において、少なくとも0.05〜0.5μm(好ましくは0.2〜0.4μm)の範囲および0.5μmを超えて10μm以下の範囲に、それぞれピーク細孔径を有することが好ましい。
更に、マンガン酸リチウムは、Liの移動に必要なポロシティーとエネルギー密度のバランスの観点から、水銀ポロシメーターで測定した全細孔容量が、0.6〜2ml/gが好ましく、0.6〜1.4ml/gがより好ましく、0.6〜1ml/gが更に好ましい。
また、マンガン酸リチウムのX線回折スペクトル(XRD)の最強ピーク強度は、高速放電特性の観点から、実施例記載の方法によって得られた値が10000〜50000が好ましい。
本発明によって得られるマンガン酸リチウムは、中実な多孔性粒子であることから、実施例に記載された測定方法で測定された圧縮密度が、エネルギー密度を高める観点から、好ましくは1.92以上、より好ましくは、1.95以上、更に好ましくは2.0以上である。また、Liイオンの移動を促すためのポロシティーを確保する観点から、好ましくは、2.4以下、より好ましくは2.3以下、更に好ましくは2.2以下である。
本発明によって得られるマンガン酸リチウムは、リチウム電池の正極活物質として好適に使用することができる。マンガン酸リチウムを正極活物質として使用する場合、例えば正極活物質、カーボンブラック等の導電性物質、バインダー、及び溶剤を混合したスラリーを集電体となる金属箔に塗布・乾燥することにより正極を作製し、負極、セパレータと共に積層して、電解質液を注入することによって、リチウム電池が製造される。
本発明によって得られるマンガン酸リチウムを用いて作製したリチウム電池は、高速放電特性に優れたものとなる。高速放電特性は、後述する電池特性評価で定義される高速放電特性が、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上である。
本発明の製造方法では、特定の平均凝集粒子径の酸化マンガンを用いると、焼成後に適度な平均一次粒子径を有するマンガン酸リチウムが得られ易く、Liの挿入・脱離がスムーズに行われると考えられる。また、噴霧造粒により、微細な一次粒子を集合させ、平均凝集粒子径を0.7〜15μmにすると、正極を形成するための塗膜形成性も良好となり、表面平滑性の高いものが得られる。さらに溶媒に難溶の原料を使うことで、中実な粒子が得られ、焼成時にLi源の消失箇所に細孔が形成されるため、電解液の活物質内部への浸透がスムーズで、Liの挿入・脱離機能が発現し易くなるものが得られると考えられる。その結果、従来のマンガン酸リチウムに比べて、特にリチウム電池内での高速放電特性に優れたマンガン酸リチウムを提供することができると考えられる。
本発明の製造方法により得られるマンガン酸リチウムは、以上で説明したように、従来のマンガン酸リチウムに比べて、特にリチウム電池内での高速放電特性に優れたものとなる。
マンガン酸リチウムを用いた電池の用途は、特に限定されないが、例えばノートパソコン、電子ブックプレーヤー、DVDプレーヤー、携帯オーディオプレーヤー、ビデオムービー、携帯テレビ、携帯電話などの電子機器に使用できるほか、コードレス掃除機やコードレス電動工具、電気自動車、ハイブリッドカーなどのバッテリー、燃料電池車の補助電源などの民生用機器に使用できる。このうち特に高出力が求められる自動車用バッテリーとして好適に用いられる。
以下、本発明を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
(1)分解温度
金属酸化物(a)、金属化合物(b)、並びに溶媒を含有するスラリーを噴霧造粒して造粒体を得る噴霧造粒工程を経て得られた粒子を、示差熱天秤Thermo Plus 2(リガク製)を用いて、空気フロー下、30℃から10℃/minの昇温速度で1000℃まで熱重量分析を行った際に、100℃以上で最初に認められる、TGの減量を伴う吸熱もしくは発熱ピークのピークトップ温度を分解温度とした。
(2)平均凝集粒子径
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA920(堀場製作所製)を用い、スラリーの場合は、スラリーと同一の分散媒とし、それ以外は水を分散媒として装置のメモリ1で超音波1分照射後の粒度分布を相対屈折率1.5で測定した。
(3)平均一次粒子径
電界放出形走査電子顕微鏡S−4000(日立製作所製)を用いて、一次粒子が凝集した凝集粒子のうち、平均凝集粒子径±(平均凝集粒子径×0.2)の凝集粒子を選び、当該凝集粒子を上記顕微鏡で観察し、顕微鏡視野に、一次粒子の二次元SEM画像(以下、一次粒子画像という)が50〜100個入る倍率でのSEM像を撮影した。そして、撮影された一次粒子画像から50個の一次粒子画像を抽出し、そのフェレー(Feret)径を測定し、当該50個についてのフェレー径の平均値を平均一次粒子径とした。なお、抽出された上記50個のうちの1つの一次粒子画像のフェレー径とは、上記1つの一次粒子画像を通過(接することを含む)する任意の直線Lに平行な直線群の中で、最も距離の離れた2本の平行線の間の距離を指す。ただし、2本の平行線の間の距離とは、当該2本の平行線に垂直な直線が、当該2本の平行線に切り取られる線分の長さをいう。なお、サンプルがスラリーの場合、溶媒を除去したものを観察した。
(4)BET比表面積
比表面積測定装置フローソーブIII2305(島津製作所製)を用いてBET比表面積を測定した。なお、サンプルがスラリーの場合、溶媒を除去したものを用いて測定した。
(5)ピーク細孔径および全細孔容量
水銀圧入式細孔分布測定装置ポアサイザー9320(島津製作所製)を用いて、0.008μm〜200μmの範囲の細孔容量を測定し、得られた値を全細孔容量とした。また、測定により得られた細孔分布のピークのうち、細孔径0.05〜0.5μmの範囲に現れる最大のピーク細孔径を微細ピーク細孔径とした。また、0.5μmを超える範囲で最大の細孔径を粒子間ピーク細孔径とした。
(6)圧縮密度
16mmΦの円筒型金型に、粉末約1.5gを添加し、1tの圧力でプレスした。そして、上記粉末質量を得られた成形体の体積で割った値を圧縮密度とした。
(7)マンガン酸リチウムのXRD最強ピーク強度
サンプルをX線回折装置RINT2500VPC(リガク製)を用いて、出力120kV、40mA、スキャン速度10°/min、サンプリング0.01°で測定した際のd=4.7付近の回折ピークの強度をXRD最強ピーク強度とした。
(8)電池の作製
マンガン酸リチウム40重量部に対して、カーボンブラック5重量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)粉末5重量部、Nメチル−2−ピロリドン75重量部を均一に混合し、塗工用ペーストを調製した。当該ペーストをコーター(YBA型べーカーアプリケーター)にて集電体として用いたアルミニウム箔(厚さ20μm)上に均一に塗工し、140℃にて10分以上かけて乾燥した。乾燥後、プレス機で均一膜厚に成型した後、所定の大きさ(20×15mm)に切断し、試験用正極とした。このときの電極活物質層の厚さは25μmとした。上記の試験用正極を用いて試験セルを作製した。負極電極には金属リチウム箔を所定の大きさに切断して使用し、セパレータはセルガード#2400(セルガード製)を使用した。電解液は1mol/L LiPF/エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート(1:1vol%)を用いた。試験セルの組み立てはアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で行った。試験セルの組み立て後、25℃にて24時間放置後、高速放電特性評価を行った。
(9)高速放電特性評価
上限電圧4.2V、下限電圧2.0Vの条件で、試験セルに0.2CAにて定電流充放電を行った後、(1)0.5CAで定電流充電し、次いで1CAで定電流放電された容量(A)と、さらに(2)0.5CAで定電流充電した後、60CAで定電流放電された容量(B)との比を高速放電特性とした。
高速放電特性(%)=B/A×100
実施例1
平均一次粒子径0.03μm、平均凝集粒子径34μmのMnO420gを水2580gに混合し、分散剤ポイズ532A(花王製)7gを添加し、ダイノーミルMULTI LAB型(シンマルエンタープライゼス製:容量0.6L、0.2mmジルコニアビーズ1836g充填)を用いて下記の条件で湿式粉砕し、平均一次粒子径が0.03μm、平均凝集粒子径が0.2μmのMnOのスラリーを得た。次に平均一次粒子径25μm、平均凝集粒子径84μmの炭酸リチウム420gを水2380gに混合し、分散剤ポイズ532A(花王製)20gを添加し、ダイノーミルMULTI LAB型(シンマルエンタープライゼス製:容量0.6L、0.2mmジルコニアビーズ1836g充填)を用いて下記の条件で湿式粉砕し、平均一次粒子径0.06μm、平均凝集粒子径0.4μmの炭酸リチウムのスラリーを得た。得られたMnOスラリー100重量部と炭酸リチウムスラリー21.8重量部をディスパーで混合したのち、噴霧乾燥機SD−1000(東京理化器械製)を用いて、熱風供給温度約135℃、乾燥機の出口温度約80℃の条件で噴霧乾燥した。
<MnOの粉砕条件>
ディスク周速:14m/s、流量:160g/min、時間:150分
<炭酸リチウムの粉砕条件>
ディスク周速:14m/s、流量:160g/min、時間:60分
得られた粉末を、昇温速度200℃/Hrで450℃まで昇温し450℃で2時間保持した。その後、200℃/Hrで800℃まで昇温し800℃で5時間焼成した。得られた粉末の物性を表1に示す。また、粉末X線回折測定の結果、JCPDS No.35−782記載のスピネル構造のLiMnに相当していた。この際の、X線回折結果を図1に示す。なお、粉末X線回折で評価する際は、図1のチャートから2θ(deg)の数値を読み取り、結晶の面間隔dを以下の計算式により求めた。ただし、以下の式においてλは使用したX線波長であり、本実施例ではCuKα線を使用したので、1.5405Åとした。
d=λ/2sin((θ/360)×2π)
実施例2
実施例1と同様にして平均一次粒子径が0.03μm、平均凝集粒子径が0.2μmのMnOのスラリーを得た。また、実施例1において粉砕時間を15分としたこと以外は同様にして、平均一次粒子径0.8μm、平均凝集粒子径2.7μmの炭酸リチウムのスラリーを得た。得られたMnOスラリー100重量部と炭酸リチウムスラリー21.8重量部をディスパーで混合したのち、実施例1と同条件にて噴霧乾燥及び焼成を行い、粉末を得た。得られた粉末の物性を表1に示す。また、粉末X線回折測定の結果、JCPDS No.35−782記載のスピネル構造のLiMnに相当していた。
実施例3
実施例1において粉砕時間を調整したこと以外は同様にして平均凝集粒子径が1.1μmのMnOのスラリーを得た。また、実施例1において粉砕時間を調整したこと以外は同様にして平均凝集粒子径が1.4μmの炭酸リチウムのスラリーを得た。得られたMnOスラリー100重量部と炭酸リチウムスラリー21.8重量部をディスパーで混合したのち、実施例1と同条件にて噴霧乾燥及び焼成を行い、粉末を得た。得られた粉末の物性を表1に示す。また、粉末X線回折測定の結果、JCPDS No.35−782記載のスピネル構造のLiMnに相当していた。
実施例4
実施例1において粉砕時間を調整したこと以外は同様にして平均凝集粒子径が1.7μmのMnOのスラリーを得た。また、実施例1において粉砕時間を調整したこと以外は同様にして平均凝集粒子径が1.4μmの炭酸リチウムのスラリーを得た。得られたMnOスラリー100重量部と炭酸リチウムスラリー21.8重量部をディスパーで混合したのち、実施例1と同条件にて噴霧乾燥及び焼成を行い、粉末を得た。得られた粉末の物性を表1に示す。また、粉末X線回折測定の結果、JCPDS No.35−782記載のスピネル構造のLiMnに相当していた。
実施例5
実施例1と同様にして得られた噴霧乾燥粉末を、昇温速度200℃/Hrで300℃まで昇温し300℃で2時間保持した。その後、200℃/Hrで800℃まで昇温し800℃で5時間焼成した。得られた粉末の物性を表1に示す。また、粉末X線回折測定の結果、JCPDS No.35−782記載のスピネル構造のLiMnに相当していた。
実施例6
実施例1と同様にして得られた噴霧乾燥粉末を、昇温速度200℃/Hrで600℃まで昇温し600℃で2時間保持した。その後、200℃/Hrで800℃まで昇温し800℃で5時間焼成した。得られた粉末の物性を表1に示す。また、粉末X線回折測定の結果、JCPDS No.35−782記載のスピネル構造のLiMnに相当していた。
実施例7
実施例1と同様にして得られたMnOスラリー100重量部と、炭酸リチウムスラリー21.8重量部と、2μm径のアクリル粒子(物質(c):空孔形成剤)1.38重量部とをディスパーで混合したのち、実施例1と同条件にて噴霧乾燥粉末を得た。次いで、この粉末を、昇温速度200℃/Hrで450℃まで昇温し450℃で2時間保持した。その後、200℃/Hrで800℃まで昇温し800℃で5時間焼成した。得られた粉末の物性を表1に示す。また、粉末X線回折測定の結果、JCPDS No.35−782記載のスピネル構造のLiMnに相当していた。
実施例8
実施例1において粉砕時間を調整したこと以外は同様にして平均凝集粒子径が2.7μmのMnOのスラリーを得た。また、実施例1において粉砕時間を調整したこと以外は同様にして平均凝集粒子径が1.8μmの炭酸リチウムのスラリーを得た。得られたMnOスラリー100重量部と炭酸リチウムスラリー21.8重量部をディスパーで混合したのち、実施例1と同条件にて噴霧乾燥及び焼成を行い、粉末を得た。得られた粉末の物性を表1に示す。また、粉末X線回折測定の結果、JCPDS No.35−782記載のスピネル構造のLiMnに相当していた。
比較例1
実施例1で得られたMnOスラリー100重量部と炭酸リチウムスラリー21.8重量部をディスパーで混合したのちロータリーエバポレーターで蒸発乾固した。得られた粉末を乳鉢で粉砕したあと、昇温速度200℃/Hrで450℃まで昇温し450℃で2時間保持した。その後、200℃/Hrで800℃まで昇温し800℃で5時間焼成した。得られた粉末をロータースピードミル(P−14フリッチチュ製)で乾式粉砕して、平均一次粒子径0.8μm、平均凝集粒子径1.2μmの粉末を得た。得られた粉末の物性を表1に示す。また、粉末X線回折測定の結果、JCPDS No.35−782記載のスピネル構造のLiMnに相当していた。
比較例2
水100重量部にLiNO4.06重量部を溶解させた。次に30.72重量部のMn(NO・6HOを添加して攪拌し、Li源とMn源が混ざった水溶液を得た。この水溶液を、噴霧乾燥機SD−1000(東京理化器械製)を用いて、熱風供給温度約135℃、乾燥機の出口温度約80℃の条件で噴霧乾燥した。得られた粉末を、昇温速度200℃/Hrで450℃まで昇温し450℃で2時間保持した。その後、200℃/Hrで800℃まで昇温し800℃で5時間焼成した。得られた粉末の物性を表1に示す。
比較例3
粒径10μmの球状MnO100重量部と粒径8μmのLiCO18.95重量部を水300重量部に混合し、得られたスラリーをロータリーエバポレーターで蒸発乾固した。得られた粉末を直径13cmのメノウ乳鉢を用いて手動で3分間粉砕し、昇温速度200℃/Hrで450℃まで昇温し450℃で2時間保持したのち、200℃/Hrで800℃まで昇温し800℃で5時間焼成した。得られた粉末の物性を表1に示す。また、粉末X線回折測定の結果、JCPDS No.35−782記載のスピネル構造のLiMnに相当していた。
比較例4
実施例1で噴霧乾燥して得られた粉末を、保温工程を行わずに、室温から昇温速度200℃/Hrで800℃まで昇温し800℃で5時間焼成した。得られた粉末の物性を表1に示す。
Figure 2009155135
表1の結果が示すように、実施例1〜8の粒子は、比較例1〜4の粒子に比べ、優れた高速放電特性を示した。なかでも実施例1〜7の粒子は、0.05〜0.5μmの範囲に微細な細孔が形成されたため、電池の放電時にLiイオンの移動がスムーズになり、優れた高速放電特性が得られたと考えられる。また、実施例1〜7の粒子では、金属酸化物(a)の平均凝集粒子径が0.03〜2.5μmであることから、実施例8に比べ微細な細孔が形成されたため、実施例8よりも優れた高速放電特性が得られたと考えられる。なお、実施例1〜7の粒子は、0.5μmを超えて10μm以下の範囲にもピーク細孔径(粒子間ピーク細孔径)を有していた。
比較例1では、噴霧造粒をしていないことから、微細孔が生成しなかったため高い高速放電特性が得られなかったものと考えられる。比較例2は、微細な細孔が空いていないため、高い高速放電特性が得られなかったものと考えられる。また粒子が中空であるため密度が低いことも高速放電特性が低い原因の1つであると考えられる。比較例3は密度が高い粒子ではあるが、微細孔がないことから、高速放電特性が本発明のものよりも低い結果となったものと考えられる。比較例4では、Li源の分解温度±200℃の範囲内で温度を保持しなかった結果、微細孔が得られず、高速放電特性が本発明のものよりも低い結果となったものと考えられる。
実施例1のX線回折結果を示すチャートである。

Claims (8)

  1. 遷移金属酸化物、並びに周期表の3B、4B、及び5Bに属する金属の酸化物からなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物(a)、及びアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物からなる群から選ばれる1種以上の金属化合物(b)、並びに溶媒を含有するスラリーを噴霧造粒して造粒体を得る噴霧造粒工程と、前記造粒体を金属化合物(b)の分解温度±200℃で加熱する保温工程と、保温工程後に前記造粒体を焼成して多孔性の複合金属酸化物の焼成体を得る焼成工程とを含む粒子状の複合金属酸化物焼成体の製造方法であって、以下の(I)及び(II)を満たす粒子状の複合金属酸化物焼成体の製造方法。
    (I)前記金属酸化物(a)、及び前記金属化合物(b)は、前記溶媒に難溶である。
    (II)前記金属化合物(b)は、少なくとも前記保温工程で脱離する非金属元素成分を含有する。
  2. 前記金属酸化物(a)がMn、Fe、Co、及びNiからなる群から選ばれる1種以上の金属の酸化物であり、前記金属化合物(b)がリチウム塩である請求項1記載の複合金属酸化物焼成体の製造方法。
  3. 前記スラリー中における前記金属酸化物(a)の平均凝集粒子径が0.03〜2.5μm、金属化合物(b)の平均凝集粒子径が0.1〜10μmである請求項1又は2記載の複合金属酸化物焼成体の製造方法。
  4. 前記焼成工程で得られる焼成体の平均凝集粒子径が0.7〜15μmである請求項1〜3いずれか記載の複合金属酸化物焼成体の製造方法。
  5. 前記焼成工程で得られる焼成体は、水銀ポロシメーターで測定した細孔分布において、少なくとも0.05〜0.5μmの範囲および0.5μmを超えて10μm以下の範囲に、それぞれピーク細孔径を有する請求項1〜4いずれか記載の複合金属酸化物焼成体の製造方法。
  6. 前記焼成工程で得られる焼成体のBET比表面積が1〜40m/gである請求項1〜5いずれか記載の複合金属酸化物焼成体の製造方法。
  7. 得られる複合金属酸化物焼成体が、非水電解質二次電池正極活物質に使用されるものである請求項1〜6いずれか記載の複合金属酸化物焼成体の製造方法。
  8. 前記スラリーは、前記金属酸化物(a)及び前記金属化合物(b)とは異なる物質(c)をさらに含有し、
    前記物質(c)は、前記溶媒に難溶であり、かつ前記噴霧造粒時には熱分解せず、その後の少なくとも前記焼成により熱分解する物質である請求項1〜7いずれか記載の複合金属酸化物焼成体の製造方法。
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