JP4984413B2 - リチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法、並びに、リチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法、並びに、リチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法、並びに、それにより得られるリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池に関する。
近年、携帯用電子機器、通信機器の小型化、軽量化に伴い、その電源として、また、自動車用動力源として、高出力、高エネルギー密度であるリチウム二次電池が注目されている。リチウム二次電池の正極活物質としては、標準組成がLiCoO2、LiNiO2、LiMn24等のリチウム遷移金属複合酸化物が好ましいことが知られている。
さらに、安全性や原料コストの観点から、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属の一部を他の遷移金属で置換したLiNi1-xMnx2(ここで、xは0<x<1を満たす数を表わす)、LiNi1-x-yMnxCoy2(ここで、x、yは、それぞれ、0<x<1、0<y<1、及び、0<x+y<1を満たす数を表わす)等のLiCoO2やLiNiO2と同じ層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が注目されている。
また、これらリチウム遷移金属複合酸化物の製造法として多くの方法が知られているが、例えば、ニッケル原料、コバルト原料、マンガン原料等の遷移金属系原料を含み、所望により更に少量のリチウム原料を含むスラリーを噴霧乾燥して造粒粒子とし、これに所望の組成比となるように更にリチウム原料を乾式混合した後焼成する方法(特許文献1)や、ニッケル、コバルト、マンガンを、例えば炭酸塩として共沈させて得られる複合炭酸塩を焼成して脱炭酸し、得られた造粒粒子とリチウム原料を乾式混合した後焼成する方法(特許文献2)などが用いられている。
特開2003−267732号公報 特開平10−134811号公報
特許文献1,2に記載された従来の製造方法においては、噴霧乾燥や共沈などにより得られた造粒粒子は、リチウム原料と混合されて、そのまま焼成が行われていた。この場合、同じロットの造粒粒子全体での組成は制御できても、一つ一つの粒子における粒子内の組成の均一性が不十分である可能性があり、その結果、焼成後に得られるリチウム遷移金属複合酸化物の組成に偏析が見られたり、焼成後に得られるリチウム遷移金属複合酸化物の結晶性が不十分であったりする。このため、このリチウム遷移金属複合酸化物を電池の正極活物質として用いた場合、その電池は、サイクル前後の低温抵抗特性変化などの電池特性が不十分であった。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、サイクル前後の低温抵抗特性変化という電池特性に優れたリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物を高い分級収率で得る製造方法、及び、それにより製造されるリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、異なる組成を持つ二つ以上の焼成前駆体用原料が共存する焼成前駆体を、上記焼成前駆体のメジアン径の10倍以上の目開きのメッシュで篩い、上記焼成前駆体を焼成することにより、サイクル前後の低温抵抗特性変化という電池特性が優れたリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物を得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、異なる組成を持つ二つ以上の焼成前駆体用原料が共存する焼成前駆体を、上記焼成前駆体のメジアン径の10倍以上の目開きのメッシュで篩う工程と、上記焼成前駆体を焼成する工程とを備え、得られるリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の組成が、下記式(1)で表わされる
Figure 0004984413
{式(1)中、MはNi及びMnのサイトの一部を置換する金属元素を表わす。また、a、b、c及びdは、0.2≦a≦0.85、0≦b≦0.8、0.1≦c≦0.4、0≦d≦0.4、及びa+b+c+d=1を満たす数を表わす。さらに、xは0.7≦x≦1.3を満たす数を表わし、δは−0.1<δ<0.1を満たす数を表わす。}
ことを特徴とする、リチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法に存する(請求項1)。
本発明の別の要旨は、異なる組成を持つ二つ以上の焼成前駆体用原料が共存する焼成前駆体を、上記焼成前駆体のメジアン径の10倍以上の目開きのメッシュで篩う工程と、上記焼成前駆体を焼成する工程とを備え、得られるリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の組成が、下記式(2)で表わされる
Figure 0004984413
{式(2)中、g、h及びiは、0<g≦0.8、0<h≦0.6、0≦i≦0.5、及びg+h+i=1を満たす数を表わし、yは0≦y≦0.2を満たす数を表わし、δは−0.1<δ<0.1を満たす数を表わす。}
ことを特徴とする、リチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法に存する(請求項2)。
また、このとき、上記焼成前駆体のメジアン径が1μm以上50μm以下であることが好ましい(請求項)。
さらに、上記焼成前駆体用原料は、遷移金属を含む造粒粒子と、リチウム原料の粒子とを含むことが好ましい(請求項)。
本発明の別の要旨は、上記のリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法で得られることを特徴とする、リチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物に存する(請求項)。
さらに、本発明の更に別の要旨は、リチウム二次電池に用いられる正極であって、上記のリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物を含有することを特徴とする、リチウム二次電池用正極に存する(請求項)。
また、本発明の更に別の要旨は、リチウムを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに、電解質を備えたリチウム二次電池であって、該正極が、上記のリチウム二次電池用正極であることを特徴とする、リチウム二次電池に存する(請求項)。
本発明のリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法、並びに、リチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池によれば、リチウム二次電池のサイクル前後の低温抵抗特性変化を改善することができる。また、リチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物を分級した際の分級収率が高くすることができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
[1.リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法]
本発明のリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法(以下適宜、「本発明の製造方法」という)は、異なる組成を持つ二つ以上の焼成前駆体用原料が共存する焼成前駆体を、上記焼成前駆体のメジアン径の10倍以上の目開きのメッシュで篩う工程(以下適宜、「篩い工程」という)と、上記焼成前駆体を焼成する工程(以下適宜、「焼成工程」という)とを備える。
また、本発明の製造方法により製造されるリチウム遷移金属複合酸化物(以下適宜、「本発明のリチウム遷移金属複合酸化物」という)に特に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない範囲において任意のものを製造することができる。
[1−1.原料]
原料に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、任意のものを用いることができる。
[1−1−1.焼成前駆体用原料]
遷移金属原料をそのまま、もしくは遷移金属を含む造粒粒子として、焼成前駆体用原料とすることができる。焼成前駆体用の組成は本発明のリチウム遷移金属複合酸化物の組成に応じて任意に設定することができる。例えば、リチウム、マンガン、ニッケル、コバルトや、この他の元素(以下適宜、「置換元素」という)などのを含んだ任意の物質を用いることができる。
また、焼成前駆体用原料は、例えば、酸化物;水酸化物;ハロゲン化物;炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩等の有機酸塩など、リチウム遷移金属複合酸化物の原料として用いうることが知られているものにより適宜形成させることができる。
焼成前駆体用原料の具体例を挙げると、リチウムを含む原料(以下適宜、「リチウム原料」という)としては、例えば、水酸化リチウム一水和物、無水水酸化リチウム、炭酸リチウムなどが挙げられる。
さらに、マンガンを含む原料(以下適宜、「マンガン原料」という)としては、例えば、Mn23、MnO2、Mn34等のマンガン酸化物、MnCO3、Mn(NO32、MnSO4、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガン等のマンガン塩、オキシ水酸化物、ハロゲン化物等が挙げられる。また、Mn23として、MnCO3やMnO2などの化合物を熱処理して製造したものを用いてもよい。
これらの中でも好ましくは、Mn23、Mn34、MnO2などの酸化物、Mn(OH)2等の水酸化物等が用いられる。
また、ニッケルを含む原料(以下適宜、「ニッケル原料」という)としては、例えば、NiO、NiO2等の酸化物;Ni(OH)2などの水酸化物;NiOOHなどのオキシ水酸化物;NiCl2などのハロゲン化物、NiCO3等が挙げられる。
これらの中でも好ましくは、NiOなどの酸化物、Ni(OH)2などの水酸化物等が用いられる。
さらに、コバルトを含む原料(以下適宜、「コバルト原料」という)としては、例えば、Co(OH)2などの水酸化物;CoOOHなどのオキシ水酸化物;CoO、Co23などの酸化物;CoCl2などのハロゲン化物;Co(NO32・6H2Oなどの硝酸塩、Co(SO42・7H2Oなどの硫酸塩等が挙げられる。
これらの中でも好ましくは、Co34などの酸化物、Co(OH)2などの水酸化物、オキシ水酸化コバルト、炭酸コバルト等が用いられる。
また、このほか、置換元素を含む原料(以下適宜、「置換元素原料」という)を用いてもよい。これらの置換元素としては、例えば、Fe、Cr、V、Ti、Cu、Ga、Bi、Sn、Zn、Mg、Ge、Nb、Ta、Be、Ca、Sc、Al、B、などが挙げられる。これらの中でも好ましいのは、Al、Bi、B、V、Mg、Nbなどである。
また、置換元素原料の組成は、リチウム遷移金属複合酸化物の原料として用いうることが知られている物質から適宜選択して用いればよい。具体例としては、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、ジカルボン酸塩、脂肪酸塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
さらに、焼成前駆体用原料は、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物に含有させる元素のうち、2種以上の金属元素を含むようにしてもよい。このような焼成前駆体用原料は、例えば、後述する造粒工程を行なうことにより、造粒粒子として得ることができる。
ただし、いずれの場合も、焼成前駆体中に含まれる焼成前駆体用原料は、それぞれ均一な組成の粒子として焼成に供するようにすることが望ましい。
[1−1−2.造粒粒子]
本発明のリチウム遷移金属複合酸化物に含まれる元素のうちの1種のみをそれぞれ含む焼成前駆体用原料を用いて焼成前駆体を調製することも可能であるが、上記の焼成前駆体用原料の一部を2種以上、単一の複合粒子内に含有させた造粒粒子を形成し、それにより得られた造粒粒子に、造粒粒子ではない他の焼成前駆体用原料を混合したものを焼成前駆体として用いるようにすることが好ましい。
造粒粒子の組成は、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物の組成に応じて任意に設定することができる。
なお、以下適宜、造粒粒子の原料を「造粒用原料」という。
造粒用原料に制限はなく任意であるが、例えば、焼成前駆体用原料の組成として上述したものと同様のものを用いることができる。また、造粒用原料として上記のニッケル、マンガン、コバルト、置換元素などを含む遷移金属原料を用いた場合、ニッケル、マンガン、コバルト、置換元素などを含む造粒粒子を調製し、この造粒粒子を焼成前駆体用原料として得ることができる。
造粒の方法に制限はなく任意であるが、例えば、造粒用原料を含有させたスラリーを噴霧乾燥して造粒粒子を作製する方法(噴霧乾燥法)や、造粒用原料を含有する溶液から溶質を沈殿させて造粒粒子を作製する方法(共沈法)などを用いることができる。これらの造粒を行なうことにより、単一の粒子内に遷移金属が均一に共存した造粒粒子を得ることができる。また、造粒粒子の中でも、遷移金属原料を噴霧乾燥してえられる噴霧乾燥粒子を用いると、焼成時にリチウム原料との反応性が高いという利点が得られ、好ましい。
以下、噴霧乾燥法による造粒方法について説明する。
噴霧乾燥法による造粒では、まず、造粒用原料を混合・粉砕する。この際、造粒用原料の組成は、目的とする本発明のリチウム遷移金属複合酸化物の組成に応じて適宜調節することが望ましい。したがって、ニッケル、マンガン、コバルト、置換元素などを含む造粒粒子を造粒する場合には、これらの配合比は、目的とする本発明のリチウム遷移金属複合酸化物の組成に合致するように設定することが望ましい。
この際、混合・粉砕方法は、特に限定されるものではなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
したがって、混合・粉砕は、湿式で行なっても良く、また、乾式で行なっても良い。
さらに、混合・粉砕に用いる装置も任意であり、例えば、ビーズミル、ボールミル等を用いることができる。
また、粉砕の程度も制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、粉砕後の造粒用原料のメジアン径が、通常2μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下になるまで行なうことが望ましい。メジアン径が大きすぎると、焼成工程における原料同士の反応性が低下する虞がある。また、必要以上に小粒径化することは、粉砕のコストアップに繋がるので、平均粒径が、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上となるように粉砕すればよい。
粉砕された造粒用原料は、溶媒とともに混合してスラリーとする。スラリーの調製に用いる溶媒に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。例えば、有機溶媒、水性溶媒などが挙げられるが、中でも、水がコストの点で好ましい。
また、スラリーの濃度は特に限定されず本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上である。スラリー濃度が低すぎると生産性が低下しやすいためである。また、スラリー濃度の上限は、通常50重量%以下、好ましくは45重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。スラリー濃度が高すぎるとスラリーの粘度が高くなり、後述する噴霧工程にてノズルで噴霧できなくなる虞がある。
さらに、スラリーの粘度も特に制限はなく本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100mPs・s以上、好ましくは300mPs・s以上であり、また、通常2000mPs・s以下、好ましくは1500mPs・s以下である。スラリーの粘度が低すぎると後述する噴霧工程にて噴霧した際にきれいな球状粒子を形成できなくなりやすく、また、高すぎるとノズルで噴霧できなくなる虞がある。
噴霧乾燥法では、得られたスラリーを乾燥して造粒粒子(噴霧乾燥粒子)を得る。乾燥の方法は特に限定されないが、生成する造粒粒子の均一性や粉体流動性、粉体ハンドリング性能、二次粒子を効率よく形成できる等の観点から噴霧乾燥が好ましい。噴霧乾燥は、公知の方法により行なえばよい。例えば、ノズルの先端に気体流とスラリーとを流入させることによってノズルからスラリーを液滴として吐出させ、乾燥ガスと接触させて液滴を迅速に乾燥させる方法を用いることができる。
なお、噴霧乾燥法で造粒粒子を製造する場合、得られる造粒粒子の粒子径は、噴霧形式、加圧気体流供給速度、スラリー供給速度、乾燥温度等を適宜選定することによって制御することができる。
また、噴霧乾燥時の条件に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、乾燥雰囲気は通常大気であるが、窒素などの不活性雰囲気下でもよい。また、乾燥用ガスの温度も任意であるが、通常は、80〜300℃で噴霧装置に導入し、45〜250℃で装置から排出することが好ましい。
[1−1−3.焼成前駆体用原料の粒径]
上記の造粒粒子を含め、焼成前駆体用原料の粒径に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、メジアン径を、通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは70μm以下、とすることが望ましい。この範囲の下限を下回るような小粒径粒子を得るのは難しく、上限を上回ると組成が不均一となる虞がある。
中でも、上記の造粒粒子は、そのメジアン径を、通常50μm以下、特に40μm以下となるようにすることが好ましい。また、噴霧乾燥では小さな粒径は得にくい傾向にあるので、メジアン径は通常1μm以上、好ましくは3μm以上である。
また、焼成前駆体用原料の中でも、リチウム原料の粒子は、出力30W、周波数22.5kHzの超音波発振器で1分間分散処理した試料をレーザー回折法により粒度分布を測定したときのメジアン径が、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、また、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。リチウム原料の粒子はメジアン径が小さいほど空気中の水分や二酸化炭素を吸収しやすく、保存安定性に劣る傾向がある。一方、リチウム原料の粒子のメジアン径が大きすぎると、得られるリチウム遷移金属複合酸化物の平均粒径が大きく、組成が不均一になりやすく、リチウム遷移金属複合酸化物を電池の正極活物質として使用した際に出力特性等の電池特性が不良となる虞がある。
なお、上記のリチウム原料の粒子のメジアン径は、室温で、JIS Z 8825−1に基づいてレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定した値である。測定に用いる分散媒としては、水酸化リチウムを飽和溶解したエチルアルコールを用いる。エチルアルコールに水酸化リチウムを飽和溶解させておくことで、水酸化リチウムの測定中の溶解を防ぐことができる。また、測定に当たっては、リチウム原料を投入したエチルアルコールは、出力30W、周波数22.5kHzの超音波発振器で1分間分散処理を行なう。測定に使用する屈折率は、1.14a000i(実数部1.14、虚数部0.00)である。
[1−2.焼成前駆体]
焼成前駆体は、異なる組成を持つ二つ以上の焼成前駆体用原料が共存するものであり、すなわち、少なくとも2種の焼成前駆体用原料が共存してなる混合体である。通常、上記の焼成前駆体用原料のうち、2種以上を混合して調製される。
また、後述するように、本発明の効果は、焼成時に組成が異なる少なくとも2種の焼成前駆体用原料同士が適切な粒径となっていることが発明の利点を得るための要素の一つであると推察されるため、焼成時に組成が異なる焼成前駆体用原料が2種以上存在しない場合には効果が得られないと考えられる。
焼成前駆体中に共存させる焼成前駆体用原料の組み合わせに制限はなく、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物の組成に応じて任意に設定できるが、例えば、以下のような組み合わせが挙げられる。
(i)噴霧乾燥法によって得られた造粒粒子と、リチウム原料の粒子。
(ii)共沈法によって得られた造粒粒子と、リチウム原料の粒子。
(iii)1種あるいは複数種の遷移金属原料の粒子と、リチウム原料の粒子。(固相法)
上記の組み合わせの中でも、焼成前駆体用原料として、遷移金属を含む造粒粒子と、リチウムの原料の粒子とを含むもの、すなわち(i)および(ii)が、得られる遷移金属複合酸化物の粉体特性が良好なものが容易に得られるので好ましく、中でも、噴霧乾燥による造粒粒子とリチウム原料の粒子とを含むものを用いると、焼成の際のリチウム原料の反応性が高いという利点が得られるためより好ましい。
焼成前駆体を調製する際には、異なる組成を有する2種以上の焼成前駆体用原料を混合する。混合方法は特に限定されないが、混合度合いの観点から、羽根が回転して粉体を混合するミキサータイプの混合装置を用いることが好ましい。 このような混合装置の具体例としては、ハイスピードミキサー(深江パウテック社製)、アキシャルミキサー(杉山重工社製)、レディゲミキサー(マツボー社製)などが挙げられる。
また、混合する際の雰囲気にも制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常は、不活性雰囲気中で実施することが好ましい。不活性雰囲気の具体例としては、窒素ガス、アルゴンガス、脱炭酸空気ガス、などが挙げられる。
さらに、造粒粒子を含め、焼成前駆体用原料の混合割合は、所望するリチウム遷移金属複合酸化物の組成に応じて任意に設定することができる。
また、少なくとも2種の焼成前駆体用原料の混合体としての焼成前駆体のメジアン径は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において任意であるが、通常1μm以上、3μm以上、好ましくは5μm以上、また、通常50μm以下、好ましく30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは12μm以下である。この範囲の下限を下回ると造粒などにより目的とするリチウム遷移金属複合酸化物の粒子が得難く、上限を上回ると多くの造粒粒子が纏まっている状態となり、焼成後の段階で組成の偏析に繋がる可能性がある。
さらに、焼成前駆体の最大粒径にも制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない範囲において任意であるが、通常20μm以上、好ましくは25μm以上、より好ましくは30μm以上、また、通常70μm以下、好ましくは50μm以下である。この範囲の下限を下回ると目的とするリチウム遷移金属複合酸化物の粒子が得難く、上限を上回ると多くの造粒粒子が纏まっている状態となり、焼成後の段階で組成の偏析に繋がる可能性がある。
なお、上記の焼成前駆体用原料の粒子のメジアン径及び最大粒径は、室温で、JIS Z 8825−1に基づいてレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定した値である。測定に用いる分散媒としては、水酸化リチウムを飽和溶解したエチルアルコールを用いる。エチルアルコールに水酸化リチウムを飽和溶解させておくことで、水酸化リチウムの測定中の溶解を防ぐことができる。また、測定に当たっては、焼成前駆体用原料の粒子を投入したエチルアルコールは、出力30W、周波数22.5kHzの超音波発振器で1分間分散処理を行なう。測定に使用する屈折率は、1.14a000i(実数部1.14、虚数部0.00)である。
[1−3.篩い工程]
本発明の製造方法においては、上記の焼成前駆体を、所定の目開きのメッシュで篩う篩い工程を行なう。
焼成前駆体を篩うメッシュの目開きは、上記焼成前駆体のメジアン径の、通常10倍以上、好ましくは14倍以上のものを用いる。また、メッシュの目開きの上限は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、上記焼成前駆体のメジアン径の通常100倍以下、好ましくは50倍以下である。
メッシュの目開きが上記範囲の下限を下回ると分級収率が低下しやすく、さらには、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物の組成が所望の値からずれたり、篩い工程後に焼成前駆体中に含まれる焼成前駆体用原料の再凝集が生じて本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を用いたリチウム二次電池の低温抵抗が大きくなりやすくなったりする虞がある。また、メッシュの目開きが上記範囲の上限を上回ると、本発明の効果が得られにくい。
また、篩い工程で用いるメッシュの目開きは、焼成前駆体の最大粒径の通常1倍以上、好ましくは2倍以上が、解砕が適度に行われ、望ましい。また、上限に特に制限はないが、焼成前駆体の最大粒径の通常10倍以下、好ましくが5倍以下が望ましい。この範囲の下限を下回ると分級収率が低下しやすく、さらには、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物の組成が所望の値からずれたり、篩い工程後に焼成前駆体中に含まれる焼成前駆体用原料の再凝集が生じて本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を用いたリチウム二次電池の低温抵抗が大きくなりやすくなったりする虞がある。また、メッシュの目開きが上記範囲の上限を上回ると、本発明の効果が得られにくい。
さらに、篩い工程における篩い方式に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、振動篩(ボールあり、なし)、手動篩いなどにより、篩うことができる。
また、篩いの強さにも制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意である。
さらに、篩いを行なう時間にも制限はない。
ここで、篩い工程を行なうことにより、本発明の製造方法で得られるリチウム遷移金属複合酸化物を用いたリチウム二次電池が優れた電池特性を発揮しうるのは、以下の理由によるものと推察される。即ち、焼成前駆体を篩いにかけることで、凝集していたものが解砕されるたり、大きな塊が篩いから落ちないことで、大きな塊(即ち、メッシュの目開きより大きい粒径の粒子)が存在しない状態で焼成を行なうことができるようになり、このため、微細なスケールで見た場合でも組成が均一なリチウム遷移金属複合酸化物を得ることができるようになって、このリチウム遷移金属複合酸化物を電池の正極活物質として使用した際に電池特性の優れたリチウム遷移金属複合酸化物が得られると考えられる。
[1−4.焼成工程]
得られた焼成前駆体を焼成し、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を得ることができる。
焼成温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常500℃以上、好ましくは550℃以上であり、また通常1200℃以下、好ましくは1050℃以下である。焼成温度が低すぎると、結晶性の良いリチウム遷移金属複合酸化物が得難い。また、焼成温度が高すぎると、目的とするリチウム遷移金属複合酸化物以外の相が生成するか、或いは欠陥が多いリチウム遷移金属複合酸化物を生成する事がある。
また、常温から上記の焼成温度まで温度を昇温させて上記の焼成を行なう際には、焼成をより均一におこなう為に、例えば毎分5℃以下の温度で徐々に昇温するか、或いは途中で一旦昇温を停止し、一定温度での保持して全体の温度が均一となるようにするのが好ましい。
さらに、焼成時間も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上であり、通常100時間以下、好ましくは50時間以下である。焼成時間が短すぎると結晶性の良い層状リチウム遷移金属複合酸化物が得難く、逆に長すぎる反応時間は工業的に無意味である。
また、焼成雰囲気も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常は空気中で行なう。また、他の酸素含有ガス中で行うことも可能である。なお、空気中で焼成する場合には、二酸化炭素を予め除去した空気を用いるのが好ましい。
さらに、欠陥の少ないリチウム遷移金属複合酸化物を得るためには、上記の焼成後、ゆっくり冷却する事が好ましく、通常600℃、好ましくは400℃迄は、毎分5℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。
また、焼成に使用する加熱装置は、上記の温度、雰囲気を達成できるものであれば特に制限は無く、遷移金属の種類に関係なく、例えば箱形炉、管状炉、トンネル炉、ロータリーキルン等を使用することができる。
この焼成工程を行なうことにより、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を得ることができる。
[1−5.その他の工程]
本発明の製造方法においては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記の篩い工程や焼成工程以外の工程を行なうようにしても良い。
例えば、焼成により得られたリチウム遷移金属複合酸化物を粉砕する粉砕工程や、得られたリチウム遷移金属複合酸化物を篩分する分級工程などを行なうようにしても良い。本発明のリチウム遷移金属複合酸化物をリチウム二次電池の正極且つ物質として用いる際には、通常は、これらの粉砕工程及び分級工程を行なってから、正極活物質として用いられる。
さらに、例えば、焼成前駆体に、その含有元素の割合を調整するため、原料を一部追加したり、或いは取り除いたりしても良い。
また、例えば、焼成前駆体のメジアン径や最大粒径を上述した範囲内に収めるため、適宜、粉砕などを行なうようにしても良い。
[2.リチウム遷移金属複合酸化物]
本発明の製造方法により、サイクル前後の低温抵抗特性変化に優れたリチウム遷移金属複合酸化物を得ることができる。
[2−1.リチウム遷移金属複合酸化物の組成]
本発明のリチウム遷移金属複合酸化物の組成に制限はなく、リチウム二次電池の正極活物質として利用できる限り任意であるが、六方晶層状岩塩構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物であることが好ましい。
具体的には、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物は、下記の式(1)で表わされる組成を有することが好ましい。
Figure 0004984413
式(1)中、MはNi及びMnのサイトの一部を置換する金属元素を表わす。Mの具体例を挙げると、上記置換元素と同様のものが挙げられる。
また、式(1)において、a、b、c及びdは、0.2≦a≦0.85、0≦b≦0.8、0.1≦c≦0.4、0≦d≦0.4、及びa+b+c+d=1を満たす数を表わす。さらに、xは0.7≦x≦1.3を満たす数を表わし、δは−0.1<δ<0.1を満たす数を表わす。
また、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物は、下記の式(2)で表されるニッケル、マンガン、及びコバルトを含むリチウム遷移金属複合酸化物、式(3)で表されるニッケル、コバルト、及びアルミニウムを含むリチウム遷移金属複合酸化物等であっても好ましい。なかでも、式(2)で表わされるものが好ましい。
Figure 0004984413
式(2)中、yは化学量論比以上のLiのモル過剰量を示し、通常0以上、好ましくは0.02以上であり、また、通常0.2以下、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下の数である。yがこの範囲外であると、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物の結晶構造が不安定化したり、これを用いたリチウム二次電池の性能低下を招く虞がある。
また、式(2)において、gは、通常0より大きく、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、また、通常0.8以下、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下の数である。
さらに、式(2)において、hは、通常0より大きく、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、また、通常0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下の数である。
また、式(2)において、iは、通常0以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、また、通常0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下の数である。
さらに、g、h及びiは、g+h+i=1を満たす数である。
g、h及びiが、上記の範囲を外れると、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を用いたリチウム二次電池の容量が低下する虞がある。
さらに、式(2)において、δは、式(1)と同様に、通常−0.1より大きく、また、通常0.1より小さい数を表わす。
Figure 0004984413
式(3)において、zは化学量論比以上のLiのモル過剰量を示し、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、また、通常0.2以下、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下の数である。zがこの範囲外であると、リチウム遷移金属複合酸化物結晶構造が不安定化したり、これを用いたリチウム二次電池の性能低下を招く虞がある。
また、式(3)において、eは、通常0より大きく、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上であり、また、通常0.4以下、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下の数である。
さらに、式(3)において、fは、通常0以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.04以上であり、また、通常0.3以下、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.2以下の数である。
e、fが小さ過ぎると、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物の化学的安定性が不十分となる虞があり、eが大き過ぎるとコストが上昇し、fが大き過ぎると本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を用いたリチウム二次電池の容量が低下する虞がある。
さらに、式(3)において、δは、式(2)と同様の値を表わす。
[2−2.リチウム遷移金属複合酸化物の粒径]
本発明のリチウム遷移金属複合酸化物の粒径に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意である。
ただし、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物は、超音波発振器による分散処理を行わない試料をレーザー回折法により粒度分布を測定したときのメジアン径が、通常20μm以下、好ましくは15μm以下であることが望ましい。メジアン径が上限を上回ると、そのリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として正極板を作製する際、塗布工程においてスジ引きの原因となる虞があり、また、組成が偏析する虞もある。
一方、上記メジアン径の下限は、通常1μm以上、好ましくは3μm以上である。メジアン径が上記下限を下回ると、微粉が増加して本発明のリチウム遷移金属複合酸化物の粒子同士が凝集する虞がある。
なお、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物のメジアン径は、JIS Z 8825−1に基づいて公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定した値を採用することができる。また、測定の際に用いる分散媒としては、0.1重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用いる。さらに、測定時に使用する屈折率は、1.60a010i(実数部1.60、虚数部0.10)である。ただし、焼成前駆体に含有される粒子は溶媒中で超音波発振器による分散処理を行なうと凝集が解かれるので、凝集の度合いの指標とするために、この測定を行う際には、測定試料を分散媒に投入した後、超音波発振器による分散処理は行わずに測定を行なう。
[3.リチウム二次電池用正極]
本発明のリチウム遷移金属複合酸化物は、リチウム二次電池用正極(以下適宜、単に「正極」という)の正極活物質として用いられる。
以下、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を用いたリチウム二次電池用の正極の実施
形態について説明する。ただし、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を用いた正極の具体的な構成は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、以下の実施形態に限定されるものではない。
リチウム二次電池用正極は、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として含有してなるものであり、通常、正極活物質、バインダー及び導電剤を含有する正極活物質層を集電体上に形成してなる。本実施形態において、正極活物質は、上述した本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を用いる。なお、正極活物質として、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物のほか、公知の任意の正極活物質を併用しても良い。
活物質層は、通常、上記構成成分を含有するスラリーを調製し、これを集電体上に塗布・乾燥することで得ることができる。
正極活物質層中のリチウム遷移金属複合酸化物の割合は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であり、通常99.9重量%以下、好ましくは99重量%以下である。正極活物質層中に正極活物質が多すぎると正極の強度が不足する傾向にあり、少なすぎると容量の面で不十分となることがある。
また、正極に使用される導電剤に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に用いることができる。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等を挙げることができる。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
活物質層中の導電剤の割合に制限はないが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。導電剤が多すぎると容量の面で不十分となることがあり、少なすぎると電気導電性が不十分になることがある。
さらに、正極に使用されるバインダーにも制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、フッ素ゴム等のフッ素系高分子の外、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等を挙げることができる。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
活物質層中のバインダーの割合にも制限はないが、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上であり、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下である。多すぎると容量の面で不十分となることがあり、少なすぎると強度が不十分になることがある。
また、正極活物質層を形成するためのスラリーを調製する際に使用する溶媒にも制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常は、結着剤を溶解あるいは分散する有機溶剤が使用される。例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加えてSBR等のラテックスでスラリー化する場合もある。
なお、上記の溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、正極活物質層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、適宜、任意の添加剤を含有させてもよい。
さらに、正極活物質層の厚さにも制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10〜200μm程度である。
また、正極に使用する集電体の材質にも制限はなく本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属が用いられ、好ましくはアルミニウムである。
なお、塗布・乾燥によって得られた活物質層は、電極材料の充填密度を上げるため、ローラープレス等により圧密されるのが好ましい。
[4.リチウム二次電池]
本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を、正極活物質として用い、リチウム二次電池を作製することができる。
以下、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を用いたリチウム二次電池の実施形態について説明する。ただし、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を用いたリチウム二次電池の具体的な構成は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態のリチウム二次電池は、通常、リチウムを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに、電解質を備える。また、リチウム二次電池は、適宜、セパレータなどのその他の部材を備えて構成される。
[4−1.正極]
正極としては、上述した、本発明のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質に用いたリチウム二次電池用正極を用いる。
[4−2.負極]
負極は、リチウム金属そのものや、リチウムアルミニウム合金等のリチウム合金を負極として用いることもできるが、通常は、負極活物質、バインダー及び必要に応じて導電剤を含有する負極活物質層を集電体上に形成してなる。
負極活物質に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常は、炭素材料を使用するのが好ましい。このような炭素材料としては、天然ないし人造の黒鉛、石油系コークス、石炭系コークス、石油系ピッチの炭化物、石炭系ピッチの炭化物、フェノール樹脂・結晶セルロース等樹脂の炭化物およびこれらを一部炭化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維などが挙げられる。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、負極に使用できるバインダーや導電剤は、正極に使用するものと同様である。
さらに、負極活物質層にも、本発明の効果を著しく損なわない限り、適宜、任意の添加剤を含有させてもよい。
さらに、負極活物質層の厚さにも制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10〜200μm程度である。
また、負極の活物質層の形成は、前記正極の活物質層の形成方法と同様に行なうことができる。
さらに、負極の集電体の材質にも制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属が用いられ、好ましくは銅である。
[4−3.電解質]
本発明のリチウム二次電池に使用できる電解質としては、電解液、高分子固体電解質、半固体状電解質等が挙げられる。
電解液としては、好ましくは非水系電解液が挙げられる。非水系電解液としては、各種の電解塩を非水系溶媒に溶解したものを挙げることができる。なお、電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
非水系溶媒としては、例えばカーボネート類、エーテル類、ケトン類、スルホラン系化合物、ラクトン類、ニトリル類、ハロゲン化炭化水素類、アミン類、エステル類、アミド類、燐酸エステル化合物等を使用することができる。これらの代表的なものを列挙すると、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、4−メチル−2−ペンタノン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、1,2−ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、燐酸トリメチル、燐酸トリエチルなどが挙げられる。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
上述の非水系溶媒の中でも、電解塩を解離させるために高誘電率溶媒を使用するのが好ましい。高誘電率溶媒とは、概ね25℃における比誘電率が20以上の化合物を意味する。高誘電率溶媒の中で、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びそれらの水素原子をハロゲン等の他の元素またはアルキル基等で置換した化合物が電解液中に含まれることが好ましい。
このような高誘電率溶媒を使用する場合、高誘電率溶媒の電解液中に占める割合は、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上が望ましい。高誘電率溶媒の含有量が少ないと、所望の電池特性が得られない場合があるためである。
また、電解塩としては、従来公知のいずれもが使用でき、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C654、LiCl、LiBr、LiCH3SO3Li、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiC(SO2CF33、LiN(SO3CF32等のリチウム塩が挙げられる。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、CO2、N2O、CO、SO2等のガスやポリサルファイドSx2-、ビニレンカーボネート、カテコールカーボネートなど、負極表面にリチウムイオンの効率よい充放電を可能にする良好な皮膜を生成する添加剤を、任意の割合で、電解液中に存在させてもよい。
また、電解液の代わりに、リチウムイオン等のアルカリ金属カチオンの導電体である高分子固体電解質を用いることもできる。
さらに、上記電解液を、高分子によって非流動化して半固体状電解質を用いることもできる。
本発明にかかるリチウム二次電池においては、正極と負極との間に、上記のような様々な材料によって電解質層を設けることができる。
[4−4.セパレータ]
正極と負極との間には、通常、セパレーターが設けられる。
セパレータとしては、例えば、微多孔性の高分子フィルムが用いられ、その材質としては、ナイロン、ポリエステル、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンや、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等のポリオレフィン系高分子を挙げることができる。
また、ガラス繊維等の不織布フィルター、さらにはガラス繊維と高分子繊維の複合不織布フィルター等も、セパレーターとして用いることができる。
セパレータの化学的及び電気化学安定性は重要な因子であり、この点から材質としては、ポリオレフィン系高分子が好ましく、特に、電池セパレータの目的の一つである自己閉塞温度の点からポリエチレン製であることが好ましい。
ポリエチレン製セパレータの場合、高温形状維持性の点から超高分子量ポリエチレンであることが好ましく、その分子量の下限は好ましくは50万以上、更に好ましくは100万以上、最も好ましくは150万以上である。他方、分子量の上限は、好ましくは500万以下、更に好ましくは400万以下、最も好ましくは300万以下である。分子量が大きすぎると、流動性が低すぎて加熱されたときセパレータの孔が閉塞しない場合があるからである。
[5.効果]
本発明の製造方法で製造されたリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いて正極を作製し、その正極を用いてリチウム二次電池を構成すれば、従来のリチウム二次電池と比較して、サイクル前後の低温抵抗特性変化に優れたリチウム二次電池を得ることができる。また、リチウム遷移金属複合酸化物を分級した際の分級収率を高くすることができる。
以下、本発明について実施例を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
なお、以下の実施例で登場する1Cとは、電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表わす。
<焼成品の分級効率評価>
焼成後のリチウム遷移金属複合酸化物を以下の手法にて、分級を行ない、篩下回収率にて分級し易さの指標とした。分級には振動篩装置(レッチェ社製AS200型)を使用し、振動の強さを一定に保って実施した。この篩下回収率が多い方がより分級効率が高く、工業的に有利であることになる。
なお、分級条件は以下のとおりとした。
分級条件 : 焼成品投入量 5g
使用篩目開き 45μm
振動印加時間 1分
(アルミナ製12mmタッピングボール20個使用)
<電池の評価>
1.レート評価
1−1.電池作製
実施例及び比較例で得られたリチウム遷移金属複合酸化物(正極活物質)75重量部、アセチレンブラック20重量部及びポリテトラフルオロエチレンパウダー5重量部を乳鉢で十分混合し、薄くシート状にしたものを9mmφに打ち抜いた。これをアルミニウムのエキスパンドメタルに圧着して正極とした。
また、負極としては、直径12mm、厚さ1mmのリチウム金属を用いた。
さらに、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの重量比3:7の混合溶媒に、六弗化燐酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルとなるように溶解させ、電解液を調製した。
正極缶の中に電解液を浸した上記の正極、電解液を浸した多孔性ポリエチレンフィルム製のセパレータを置いた後、ポリプロピレン製ガスケットを載せて押さえた。さらに上記の負極及びスペーサーを入れ、最後に負極缶をかぶせて封口し、コイン型電池を作製した。
1−2.レート評価
以上のようにして作製した電池について、測定条件として3.0V〜4.2Vの電圧範囲で充放電を実施した。
充電時0.2mA/cm2、放電時11mA/cm2の電流密度で充放電試験を実施し、その際の正極活物質単位重量当たりの初期放電容量(mAh/g)を測定してレート評価とした。
2.抵抗評価
2−1.電池作製
実施例及び比較例で得られたリチウム遷移金属複合酸化物(正極活物質)75重量部、アセチレンブラック20重量部及びポリテトラフルオロエチレンパウダー5重量部を乳鉢で十分混合し、薄くシート状にしたものを12mmφに打ち抜いた。これをAlのエキスパンドメタルに圧着して正極とした。
また、粒径約8〜10μmの黒鉛粉末92.5重量部と、ポリフッ化ビニリデン7.5重量部とを混合し、これにN−メチルピロリドンを加えてスラリーとした。銅箔の片面にこのスラリーを塗布し、乾燥させた。これを12mmφに打ち抜き、更に0.5ton/cm2でプレス処理して負極とした。
さらに、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの重量比3:7の混合溶媒に、六弗化燐酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルとなるように溶解させ、電解液を調整した。
正極缶の中に電解液を浸した上記の正極、電解液を浸した多孔性ポリエチレンフィルム製のセパレータを置いた後、ポリプロピレン製ガスケットを載せて押さえた。さらに、電解液を浸した上記の負極及びスペーサーを入れ、最後に負極缶をかぶせて封口し、コイン型電池を作製した。
2−2.低温抵抗評価
後述する「2−3.サイクル負荷試験」の前後に、以下に説明する低温抵抗の評価を行なった。
作製したコイン型電池を、1/3Cの定電流で4.1Vになるまで充電した後、下限電圧3.0Vとして1/3Cの定電流充放電を行ない、充電深度40%に調整した。このコイン型電池を−30℃の低温雰囲気に1時間保持した後、1/4Cで10秒間放電を行なった。放電時の電流値(I)、放電直前のOCV1(Open Circuit Voltage)及び放電後のOCV2を測定した。OCV1とOCV2との差をΔVとし、次式より抵抗(R)を算出した。
Figure 0004984413
2−3.サイクル負荷試験
まず、作製したコイン型電池に対して、25℃で定電流0.2C、充電上限電圧4.1V、放電下限電源3.0Vで充放電を2サイクル行なった。次に、60℃で、定電流1C、充電上限電圧4.1V、放電下限電圧3.0Vで充放電を100サイクル繰り返した。
2−4.サイクル維持率評価
上記コイン型電池に対し、「2−3.サイクル負荷試験」の前の放電容量Qh(1)と、「2−3.サイクル負荷試験」の後の放電容量Qh(100)とを測定し、次式によりサイクル維持率P[%]を求めた。
Figure 0004984413
<実施例1>
LiOH・H2O、NiO、Co(OH)2、及びMn34をLi:Ni:Co:Mn=0.05:0.33:0.33:0.33のモル比になるように混合し、これに水を加えて固形分濃度20重量%のスラリーを調製した。このスラリーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕機を用いて、スラリー中の固形分の平均粒径が0.2μm以下になるまで粉砕した。このスラリーをスプレードライヤーにより噴霧乾燥し、メジアン径約7μmのほぼ球状の造粒粒子(焼成前駆体用原料)を得た。また、噴霧乾燥時の乾燥ガスとしては空気を用い、乾燥ガス入口温度は140℃とした。
噴霧乾燥により得られた造粒粒子と無水LiOH粉砕品(メジアン径約8μm;リチウム原料,焼成前駆体用原料)とを、モル比がLi:(Ni+Co+Mn)=1.05:1.00となるように秤量し、ミキサー型混合機にて60分混合し、混合粉である焼成前駆体を得た。
JIS Z 8825−1に基づいて、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって、得られた焼成前駆体のメジアン径及び最大粒径を測定した。測定の際に、用いる分散媒としては水酸化リチウムを飽和溶解したエチルアルコールを用いた。エチルアルコールに水酸化リチウムを飽和溶解させておくことで、水酸化リチウムの測定中の溶解を防ぐことができる。また、測定に当たっては、焼成前駆体用原料の粒子を投入したエチルアルコールは、出力30W、周波数22.5kHzの超音波発振器で1分間分散処理を行なった。測定に使用する屈折率は、1.14a000i(実数部1.14、虚数部0.00)であった。測定の結果、焼成前駆体の、メジアン径は7.5μmで、最大粒径は35μmであった。
この焼成前駆体を、網目(目開き)300μmの篩(メッシュ)を用いて手動にて篩分を実施した。この焼成前駆体を、空気雰囲気下、200℃で3時間保持後、5℃/分で960℃まで昇温し、その後960℃で15時間焼成し、リチウム二次電池用正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を得た。
<実施例2>
焼成前駆体を網目(目開き)106μmの篩を用いて篩分して焼成を行なった以外は、実施例1と同様の手法にて、リチウム二次電池用正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を得た。
<比較例1>
焼成前駆体を篩分せずに焼成を行なった以外は、実施例1と同様の手法にて、リチウム二次電池用正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を得た。
<比較例2>
焼成前駆体を網目(目開き)45μmの篩を用いて篩分して焼成を行なった以外は、実施例1と同様の手法にて、リチウム二次電池用正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を得た。
<評価>
上記の実施例1,2及び比較例1,2で得られた各リチウム遷移金属複合酸化物について、上述した<焼成品の分級効率評価>を実施した。結果を表−1に示す。
Figure 0004984413
表−1から、一定の条件下で篩網目を変化させて焼成前駆体を分級した結果、実施例2(106μm分級)が最も高い分級収率を示すこと、及び、比較例2(45μm)まで小さい目開きにすると逆に分級収率が低下することが判った。
また、上記の実施例1,2及び比較例1,2で得られたリチウム遷移金属複合酸化物を用いて、上述した<電池の評価>にしたがい、コイン型セルを作製し、レート評価及び抵抗評価を行なった。結果を表−2に示す。
Figure 0004984413
表−2から判るように、実施例1,2及び比較例1,2について、高い電流値(mA/cm2)での放電容量を確認したところ、実施例1、実施例2及び比較例1についてはほぼ同等の結果が得られたのに対して、比較例2は容量が低い結果となった。
また、サイクル前後の低温抵抗結果についても、実施例1、実施例2及び比較例1に対して比較例2のみ絶対値が高い結果となった。ただし、サイクル前後の抵抗増加倍率については、篩目開きが小さくなるのに伴い、低くなることが判った。
さらに、サイクル負荷試験についても、実施例1、実施例2及び比較例1に対して比較例2のみ維持率が低い。
また、比較例1のように焼成前駆体の分級をしなかった場合は、表−1に示されているとおり、リチウム遷移金属複合酸化物の分級収率が低い。また、表−2に示すように、サイクル前後の抵抗増加倍率が非常に大きくなる。
以上をまとめると、焼成前駆体のメジアン径の10倍以上のメッシュで焼成前駆体を焼成前に分級することで、分級しない場合と比較し、焼成後の分級収率が向上し、さらにサイクル前後での低温抵抗増加倍率が改善されることが判る。
また、比較例2のように小さい目開き篩で分級を実施した場合には、組成ズレ、分級後の再凝集の影響で、分級収率が低下し、さらにはレート評価、低温抵抗、サイクル維持率、等の電池特性に劣ることが判る。
したがって、本発明のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法により、従来よりも優れた電池特性を有するリチウム二次電池用正極活物質を得られることが確認された。
本発明の適用分野は特に限定されず、公知の各種の用途に用いることが可能であり、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等に用いて好適である。

Claims (7)

  1. 異なる組成を持つ二つ以上の焼成前駆体用原料が共存する焼成前駆体を、上記焼成前駆体のメジアン径の10倍以上の目開きのメッシュで篩う工程と、
    上記焼成前駆体を焼成する工程とを備え
    得られるリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の組成が、下記式(1)で表わされる
    Figure 0004984413
    {式(1)中、MはNi及びMnのサイトの一部を置換する金属元素を表わす。また、a、b、c及びdは、0.2≦a≦0.85、0≦b≦0.8、0.1≦c≦0.4、0≦d≦0.4、及びa+b+c+d=1を満たす数を表わす。さらに、xは0.7≦x≦1.3を満たす数を表わし、δは−0.1<δ<0.1を満たす数を表わす。}
    ことを特徴とする、リチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
  2. 異なる組成を持つ二つ以上の焼成前駆体用原料が共存する焼成前駆体を、上記焼成前駆体のメジアン径の10倍以上の目開きのメッシュで篩う工程と、
    上記焼成前駆体を焼成する工程とを備え、
    得られるリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の組成が、下記式(2)で表わされる
    Figure 0004984413
    {式(2)中、g、h及びiは、0<g≦0.8、0<h≦0.6、0≦i≦0.5、及びg+h+i=1を満たす数を表わし、yは0≦y≦0.2を満たす数を表わし、δは−0.1<δ<0.1を満たす数を表わす。}
    ことを特徴とする、リチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
  3. 上記焼成前駆体のメジアン径が1μm以上50μm以下である
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
  4. 上記焼成前駆体用原料が、遷移金属を含む造粒粒子と、リチウム原料の粒子とを含む
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法で得られる
    ことを特徴とする、リチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物。
  6. リチウム二次電池に用いられる正極であって、
    請求項に記載のリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物を含有する
    ことを特徴とする、リチウム二次電池用正極。
  7. リチウムを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに、電解質を備えたリチウム二次電池であって、
    該正極が、請求項6に記載のリチウム二次電池用正極である
    ことを特徴とする、リチウム二次電池。
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