JP2009144859A - 車輪用軸受装置および外輪製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量化を図ることができる車輪用軸受装置およびこのような車輪用軸受装置に用いることが最適な転がり軸受の外輪を製造することが可能な外輪製造方法を提供する。
【解決手段】車輪用軸受装置は、転がり軸受2の外輪25が冷間ローリングにて成形されて、外輪25の外径面50の軸方向中央部に環状凹部51が形成される。転動体30の荷重作用線の延長線L1、L2が、外輪25の環状凹部51とナックルNの内径面80とで構成される空隙部Kに対してずれている。冷間ローリングは、周方向溝35を外径面に有する外輪粗加工品36を成形する粗加工を行う第1の冷間ローリング加工と、外輪粗加工品36の周方向溝35を縮小させて環状凹部51を形成する環状凹部形成工程を行う。
【選択図】図1
【解決手段】車輪用軸受装置は、転がり軸受2の外輪25が冷間ローリングにて成形されて、外輪25の外径面50の軸方向中央部に環状凹部51が形成される。転動体30の荷重作用線の延長線L1、L2が、外輪25の環状凹部51とナックルNの内径面80とで構成される空隙部Kに対してずれている。冷間ローリングは、周方向溝35を外径面に有する外輪粗加工品36を成形する粗加工を行う第1の冷間ローリング加工と、外輪粗加工品36の周方向溝35を縮小させて環状凹部51を形成する環状凹部形成工程を行う。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車等の車両において車輪を車体に対して回転自在に支持するための車輪用軸受装置および車輪用軸受装置に用いる外輪の製造方法に関する。
車輪用軸受装置には、第1世代と称される複列の転がり軸受を単独に使用する構造から、外方部材に車体取付フランジを一体に有する第2世代に進化し、さらに、車輪取付フランジを一体に有するハブ輪の外周に複列の転がり軸受の一方の内側転走面が一体に形成された第3世代、さらには、ハブ輪に等速自在継手が一体化され、この等速自在継手を構成する外側継手部材の外周に複列の転がり軸受の他方の内側転走面が一体に形成された第4世代のものまで開発されている。
第1世代の車輪用軸受装置では、車体側のナックルに圧入する必要があり、組立や交換に工数が必要となる。しかしながら、第1世代の車輪用軸受装置は、第2世代や第3世代の車輪用軸受装置よりも安価に製造できるため、主に軽自動車や小型車用に使用される場合が多い。
第1世代と呼ばれる車輪用軸受装置(例えば、特許文献1)は、図11に示すように、外径方向に延びるフランジ101を有するハブ輪102と、このハブ輪102に外側継手部材103が固定される等速自在継手104と、ハブ輪102の外周側に配設される軸受100とを備える。
等速自在継手104は、前記外側継手部材103と、外側継手部材103に配設される内側継手部材(図示省略)と、この内側継手部材と外側継手部材103との間に配設されるボール(図示省略)と、このボールを保持する保持器(図示省略)とを備える。外側継手部材103は、内側継手部材が収納される椀形のマウス部107と、このマウス部107から突設される軸部(ステム部)123とからなる。
また、ハブ輪102は、筒部113と前記フランジ101とを有し、フランジ101の外端面114(反継手側の端面)には、大径の第1部115aと小径の第2部115bとが形成され、第1部115aにブレーキロータ140が外嵌され、第2部115bにホイール(図示省略)が外嵌される。
軸受100は、図12に示すように、内周に複列の外側転走面120、121が形成された外輪105と、外周に外側転走面に対向する内側転走面118、119が形成された一対の内輪108,109と、外輪105の外側転走面120、121と内輪108,109の内側転走面118、119との間に転動自在に収容された複列の転動体122とを備える。図11に示すように、ハブ輪102の筒部113の外周面に小径円筒部116が設けられ、この小径円筒部116に内輪108、109が嵌合されている。また、ハブ輪102のフランジ101にはボルト装着孔112が設けられて、ホイールおよびブレーキロータ140をこのフランジ101に固定するためのハブボルト141がこのボルト装着孔112に装着される。
ハブ輪102の筒部113に外側継手部材103の軸部123が挿入される。軸部123は、その反マウス部の端部にねじ部124が形成され、このねじ部124とマウス部107との間にスプライン部125が形成されている。また、ハブ輪102の筒部113の内周面(内径面)にスプライン部126が形成され、この軸部123がハブ輪102の筒部113に挿入された際には、軸部123側のスプライン部125とハブ輪102側のスプライン部126とが係合する。
そして、筒部113から突出した軸部123のねじ部124にナット部材127が螺着され、ハブ輪102と外側継手部材103とが連結される。この際、ナット部材127の内端面(裏面)128と筒部113の外端面129とが当接するとともに、マウス部107の軸部側の端面130と内輪109の端面131とが当接する。すなわち、ナット部材127を締付けることによって、ハブ輪102が内輪108,109を介してナット部材127とマウス部107とで挟持される。この際、ハブ輪102の肩端面132と、内輪108の端面133とが当接するとともに、マウス部107の端面130と内輪109の端面131とが当接した状態で、内輪108,109の突合面135,136が突き合される。この場合、外輪105の外径面が嵌合面105aとなって、車体側のナックル145の内径面145aに圧入される。
近年では、軽量化及びコスト低減化を図るために、内外輪をローリング加工にて成形した軸受(複列アンギュラ軸受)が提案されている(特許文献2)。ここで、冷間ローリング(冷間転造)とは、熱を加えずに冷たいまま(常温)で素材(ブランク)を回転させながら圧延していく加工方法である。すなわち、内外径がワーク(加工後の完成品)より小さな、基本的に内外径ストレートなブランク(素材)を、加工したい形状に設計された2つの治具(内径用と外径用)にはさんで回転させながら圧延(転造)し、ワークを形成する加工方法である。
特許文献2に記載の複列アンギュラ軸受は図13に示すように、複列の軌道151、152を有するプレス鋼板製の外輪153と、外輪153の複列の軌道151、152の各々に対応する軌道154、155を有する内輪156,157と、外輪153の複列の軌道151、152と内輪156,157の軌道154、155との間に配置される複列の転動体158とを有するものである。図13に示す軸受では、外輪153の外周面の軸方向中央部に凹部161を形成することによって、軌道151,152を成形することになる。
具体的には、冷間ローリング加工機は、図15に示すように、内径用のマンドレル175と、外径用の成形ロール176とを備える。そして、マンドレル175に素材170を外嵌し、マンドレル175と成形ロール176とで素材170を挟んだ状態で、成形ロール176をその軸心廻りに矢印Aのように回転させる。
ところで、図14(b)に示すような形状の外輪153を成形する場合、内径面の開口部にシール装着溝165、166が形成されているため、外輪素材170として、図14(a)に示すような形状の素材を成形する。この外輪素材170は、その内径面が軸方向中間部の小径部171aと、小径部171aの両側に配設される中径部171bと、開口側の大径部171cとからなる円筒状体である。
外輪素材170を冷間ローリングにて外輪153を成形すれば、素材170の中径部171bが軌道151、152を構成し、開口側の大径部171c、171cがシール装着溝165、166を構成する。
特開2007−120771号公報
実開平6−1835号公報
図14(b)に示す軸受では、外輪153の外周面の軸方向中央部に凹部161を形成することによって、軌道151,152を成形することになる。このような軸受を、図11に示す車輪用軸受装置に使用した場合、ナックルの内径面との間にこの凹部161によって空隙172(図12参照)が形成される。
このような場合、転動体の荷重作用線L1、L2(図12参照)が前記空隙172に交わることになる。このため、所定の外輪強度あるいは剛性を得るためには、荷重作用線上の部位、延いては外輪全体の肉厚を厚くする必要がある。しかしながら、肉厚を厚くすれば、車輪用軸受装置の軽量化と加工性を阻害することになる。
本発明は、上記課題に鑑みて、軽量化を図ることができる車輪用軸受装置およびこのような車輪用軸受装置に用いることが最適な転がり軸受の外輪を製造することが可能な外輪製造方法を提供する。
本発明の車輪用軸受装置は、外径面に内側転走面を有する一対の内輪と、内径面に複列の外側転走面を有する外輪と、外輪の外側転走面と内輪の内側転走面との間に転動自在に収容された転動体とを備え、少なくとも外輪が冷間ローリングにて成形されて、外輪の外径面の軸方向中央部に環状凹部が形成された車輪用軸受装置であって、転動体の荷重作用線の延長線が、外輪の環状凹部とナックルの内径面とで構成される空隙部に対してずれているものである。ここで、冷間ローリング(冷間転造)とは、熱を加えずに冷たいまま(常温)で素材(ブランク)を回転させながら圧延していく加工方法である。すなわち、内外径がワーク(加工後の完成品)より小さな、基本的に内外径ストレートなブランク(素材)を、加工したい形状に設計された2つの治具(内径用と外径用)にはさんで回転させながら圧延(転造)し、ワークを形成する加工方法である。
本発明の車輪用軸受装置は、冷間ローリングにて成形された外輪等の材料の歩溜まりの向上等を図ることができる。すなわち、冷間ローリングは、素材の余計な部分を削り落としていく切削加工とは異なり、製品外径より細い素材を盛り上げて成形することができ、材料のムダが生じない。また、加工時間が短いことと、工具が長寿命であることなどから、切削加工と比べて生産性が高くなる。さらに、使用する工具(ダイス)は加工品に応じて取り替える必要があるが、安定した加工精度を得ることができる。さらには、切削加工とは異なり、ファイバーフロー(繊維状金属組織)が切断されず、塑性変形によって被加工面が加工硬化する。そのため、加工製品は強い強度を得ることができる。
本発明では、転動体の荷重作用線の延長線が、外輪の環状凹部とナックルの内径面とで構成される空隙部に対してずれているので、環状凹部の底壁を構成する部位に対して、転動体からの荷重が作用しない。このため、この環状凹部の底壁を構成する部位の肉厚を厚くすることなく、外輪の強度及び剛性を確保することができる。この時、前記延長線は、同じく空隙部に対して、好ましくは、軸受に対する外力(例えば、車両旋回時の曲げモーメント力)が作用する範囲において、常にずれていることが望ましいが、少なくとも無負荷の状態で、ずれていれば、一定の効果を発揮することができる。
本発明の第1の外輪製造方法は、内径面に複列の外側転走面を有し、外径面の軸方向中央部に環状凹部が形成された車輪用軸受装置用の外輪を製造する外輪製造方法であって、第1の冷間ローリング加工にて、周方向溝を外径面に有する外輪粗加工品を成形する粗加工を行い、その後、第2の冷間ローリング加工にて、前記外輪粗加工品の周方向溝を縮小させて環状凹部を形成する環状凹部形成工程を含む仕上げ加工を行うものである。
本発明の第1の外輪製造方法によれば、第1の冷間ローリング加工にて、周方向溝を外径面に有する外輪粗加工品を成形することができる。この外輪粗加工品としては、この種の冷間ローリング加工にて成形される従来品と同様の形状に加工される。第2の冷間ローリング加工にて周方向溝を縮小する工程を行うことによって、転動体の荷重作用線の延長線が、外輪の環状凹部とナックルの内径面とで構成される空隙部に対してずれている外輪を成形することができる。
本発明の第2の外輪製造方法は、内径面に複列の外側転走面を有し、外径面の軸方向中央部に環状凹部が形成された車輪用軸受装置用の外輪を製造する外輪製造方法であって、第1の冷間ローリング加工にて、周方向溝を外径面に有する外輪粗加工品を成形する粗加工を行い、その後、第2の冷間ローリング加工にて、転走面の肩高さを増大させる増大工程を含む仕上げ加工を行うものである。
本発明の第2の外輪製造方法によれば、第1の冷間ローリング加工にて、周方向溝を外径面に有する外輪粗加工品を成形することができる。この外輪粗加工品としては、この種の冷間ローリング加工にて成形される従来品と同様の形状に加工される。第2の冷間ローリング加工にて、転走面の肩高さを増大させる増大工程を行うので、転動体が肩部に乗り上がりにくい外輪を製造することができる。
本発明の第3の外輪製造方法は、内径面に複列の外側転走面を有し、外径面の軸方向中央部に環状凹部が形成された車輪用軸受装置用の外輪を製造する外輪製造方法であって、外径面が軸方向中央部において最大外径となるクラウニング形状の筒体からなる外輪素材を用い、第1の冷間ローリング加工にて、周方向溝を外径面に有する外輪粗加工品を成形する粗加工を行い、その後、第2の冷間ローリング加工にて、前記外輪粗加工品の周方向溝を縮小させて環状凹部を形成する環状凹部形成工程及び転走面の肩高さを増大させる増大工程の仕上げ加工を行うものである。
本発明の第3の外輪製造方法によれば、第1の冷間ローリング加工にて、周方向溝を外径面に有する外輪粗加工品を成形することができる。この外輪粗加工品としては、この種の冷間ローリング加工にて成形される従来品と同様の形状に加工される。第2の冷間ローリング加工にて環状凹部を形成する環状凹部形成工程及び転走面の肩高さを増大させる増大工程を行うことによって、転動体の荷重作用線の延長線が、外輪の環状凹部とナックルの内径面とで構成される空隙部に対してずれているとともに、転動体が肩部に乗り上がりに くい外輪を成形することができる。
外輪素材(ブランク)としては、外径面が軸方向中央部において最大外径となるクラウニング形状の筒体を採用することができる。
外輪素材がSUJ2のズブ焼入れ品であっても、SUJ2の高周波焼入れ品であっても、炭素0.40〜0.80重量%を含む中高炭素鋼の高周波焼入れ品であってもよい。ここで、ズブ焼入れとは、品物全体(深部まで)を電気炉などで必要な温度まで高め,急冷して品物全体を堅い組織にする方法である。高周波焼入れとは、高周波電流の通じているコイルの間に品物を入れ、その表面に生じる渦電流に伴うジュール熱によって表面を加熱した後、急冷して表面のみ堅い組織にする方法である。
また、第1の冷間ローリング工程後、第2の冷間ローリング工程前に焼なまし工程を行うものであってもよい。ここで、焼なましとは、適切な温度に加熱及び灼熱した後、室温に戻ったときに、平衡に近い組織状態になるような条件で冷却することからなる熱処理である。焼なましには、軟化焼なまし、応力除去焼なまし等の種々のものがある。軟化焼なましとは、鉄鋼製品の硬さを所定の水準まで低下させる目的でAcl変態点近傍の温度に加熱する熱処理である。軟化焼なましは、塑性加工、切削加工の前処理に最適であり、応力除去焼なましは、残留応力の除去に最適である。応力除去焼なましとは、本質的に組織を変えることなく、内部応力を減らすために、適切な温度へ加熱又は灼熱した後、適切な温度で冷却する熱処理である。
本発明の車輪用軸受装置では、冷間ローリング成形にて外輪が成形されるので、製品の歩溜まり及び生産性の向上を図ることができて、コスト低減を達成できる。しかも、外輪は安定した加工精度及び強い強度を得ることができ、軸受の品質向上を達成できる。また、外輪の軽量化を図ることができて、低燃料化を達成できる。
また、環状凹部を構成する部位の肉厚を厚くすることなく、外輪の強度及び剛性を確保することができる。このため、軸受装置の軽量化及びコンパクト化を図ることができる。
本発明の第1の外輪製造方法では、転動体の荷重作用線の延長線が、外輪の環状凹部とナックルの内径面とで構成される空隙部に対してずれている外輪を成形することができる。このため、強度及び剛性に優れた外輪を成形することができる。
本発明の第2の外輪製造方法では、転動体が肩部に乗り上がりにくい外輪を成形することができ、この外輪を使用した軸受は安定した機能を発揮することができる。
本発明の第3の外輪製造方法では、強度及び剛性に優れるとともに、動体が肩部に乗り上がりにくい外輪を成形することができ、この外輪を使用した軸受は安定した機能を発揮することができる。
このように、本発明の外輪製造方法では、第1の冷間ローリング加工と第2の冷間ローリング加工とを行うものであり、各工程を無理なく滑らかに行うことができる。このため、各冷間ローリング加工機は負担が少ない加工を行うことができ、耐用寿命を延ばすことができる。
第1の冷間ローリング工程は、従来のこの種の外輪を成形する冷間ローリング工程と同様であり、外輪粗加工品を成形する冷間ローリング加工機を従来の既存のものを使用でき、コスト低減を図ることができる。
外輪素材(ブランク)としては、外径面が軸方向中央部において最大外径となるクラウニング形状の筒体を採用することができる。このようなブランクでは軸方向中央部において厚さ寸法が大となっており、周方向溝を縮小させる縮小工程及び肩高さを増大させる増大工程の容易化を図ることができる。
外輪素材がSUJ2のズブ焼入れ品であっても、SUJ2の高周波焼入れ品であっても、炭素0.40〜0.80重量%を含む中高炭素鋼の高周波焼入れ品であってもよく、この種の外輪に一般的に用いられる素材を使用することができる。このため、コスト低減を図ることができる。
第1の冷間ローリング加工工程後、第2の冷間ローリング加工前に焼なまし工程を行うものでは、加工性の向上を図ることができ、高品質の製品を提供できる。
以下本発明の実施の形態を図1〜図10に基づいて説明する。図2に第1実施形態の複列アンギュラ軸受を用いた車輪用軸受装置(駆動車輪用軸受装置)を示し、この車輪用軸受装置は、ハブ輪1と、本発明に係る複列アンギュラ軸受2と、等速自在継手3とが一体化されてなる。
等速自在継手3は、外側継手部材としての外輪5と、外輪5の内側に配された内側継手部材としての内輪6と、外輪5と内輪6との間に介在してトルクを伝達する複数のボール7と、外輪5と内輪6との間に介在してボール7を保持するケージ8とを主要な部材として構成される。内輪6はその軸孔内径6aに図示省略のシャフトの端部を圧入することによりスプライン嵌合してシャフトとトルク伝達可能に結合されている。
外輪5はマウス部11とステム部(軸部)12とからなり、マウス部11は一端にて開口した椀状で、その内球面13に、軸方向に延びた複数のトラック溝14が円周方向等間隔に形成されている。そのトラック溝14はマウス部11の開口端まで延びている。内輪6は、その外球面15に、軸方向に延びた複数のトラック溝16が円周方向等間隔に形成されている。
外輪5のトラック溝14と内輪6のトラック溝16とは対をなし、各対のトラック溝14,16で構成されるボールトラックに1個ずつ、トルク伝達要素としてのボール7が転動可能に組み込んである。ボール7は外輪5のトラック溝14と内輪6のトラック溝16との間に介在してトルクを伝達する。この場合の等速自在継手は、ツェパー型を示しているが、各トラック溝の溝底に直線状のストレート部を有するアンダーカットフリー型等の他の等速自在継手であってもよい。
等速自在継手3の外輪5及び内輪6は、例えば、S53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中炭素鋼からなり、トラック溝14、16及び外輪5のマウス部11の肩部(底壁外面11a)から軸部12の外周面(外径面)に高周波焼入れ等によって硬さが58〜64HRC程度となる硬化処理が施されている。
ハブ輪1は、筒部20と、筒部20の反継手側の端部に設けられるフランジ部21とを有する。また、ハブ輪1の筒部20の孔部22に外輪5の軸部12が挿入される。軸部12は、その反マウス部の端部にねじ部40が形成され、このねじ部40とマウス部11との間にスプライン部41が形成されている。また、ハブ輪1の筒部20の内周面(内径面)にスプライン部42が形成され、この軸部12がハブ輪1の筒部20に挿入された際には、軸部12側のスプライン部41とハブ輪1側のスプライン部42とが係合する。
そして、筒部20から突出した軸部12のねじ部40にナット部材43が螺着され、ハブ輪1と外輪5とが連結される。この際、ハブ輪1のフランジ部21にはボルト装着孔32が設けられて、ハブボルト33がボルト装着孔32に装着される。なお、ハブ輪1は、例えば、S53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中炭素鋼からなり、少なくとも小径円筒部の底面乃至端面70に高周波焼入れ等によって硬さが58〜64HRC程度となる硬化処理が施されている。
転がり軸受2は、図1に示すように、内周に複列の外側転走面26,27が形成された外輪25と、外周に外輪25の外側転走面26,27に対向する内側転走面28,29が形成された一対の内輪24A、24Bと、外輪25の外側転走面26,27と内輪24A、24Bの内側転走面28,29との間に転動自在に収容された複列の転動体30とを備える。転動体30は外輪25と内輪24A、24Bとの間に介在される保持器31に保持される。転がり軸受2の両開口部(外輪25と内輪24A、24Bとの間の開口部)にはシール部材SおよびS1が装着されている。
外輪25は、外径面50の軸方向中央部に環状凹部51が形成され、これに対応して内径面52の軸方向中央部に周方向凸部(膨出部)53が設けられている。そして、この周方向凸部53の両側に外側転走面26,27が形成され、さらに、外側転走面26,27の外側にシール装着溝54,55が形成されている。外輪25の外径面50のうち環状凹部51を省いた部位が、後述するように、ナックルNに圧入される嵌合面50a,50aとなる。
アウトボード側の内輪24Aと、インボード側の内輪24Bとは共通の部品にて構成できる。なお、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウトボード側(図面左側)と呼び、中央寄りをインボード側(図面右側)と呼ぶ。
内輪24(24A,24B)は、図6に示すように、大径部60と、小径部61と、大径部60と小径部61との間のテーパ状部62とからなる。この場合、大径部60の外径面がシール装着面63となり、テーパ状部62の外径面が転走面28(29)となる。また、小径部61の内径面がハブ輪嵌合面64となる。
次にこの転がり軸受2の外輪25の製造方法を説明する。この外輪製造方法は、図3に示すように、第1の冷間ローリング工程17と、第2の冷間ローリング工程18とを備える。ここで、冷間ローリング(冷間転造)とは、熱を加えずに冷たいまま(常温)で素材(ブランク)を回転させながら圧延していく加工方法である。すなわち、内外径がワーク(加工後の完成品)より小さな、基本的に内外径ストレートなブランク(素材)を、加工したい形状に設計された2つの治具(内径用と外径用)にはさんで回転させながら圧延(転造)し、ワークを形成する加工方法である。
第1の冷間ローリング工程17は、図4(b)に示すように周方向溝35を外径面に有する外輪粗加工品36を成形する粗加工を行うものである。また、第2の冷間ローリング加工18は、図4(c)に示すように外輪粗加工品36の周方向溝35を縮小させて環状凹部51を形成する環状凹部形成工程を含む仕上げ加工を行うものである。
この場合のブランク(外輪素材)34は図4(a)に示すように、その外径面34aが軸方向中央部が最大外径となるクラウニング形状の短円筒体からなる。また、このブランク34の内径面34bは、軸方向中央部の小径部37と、この小径部37の軸方向両側の中径部38a、38bと、開口部側の大径部39a、39bとを備える。
外輪素材34がSUJ2のズブ焼入れ品であっても、SUJ2の高周波焼入れ品であっても、炭素0.40〜0.80重量%を含む中高炭素鋼の高周波焼入れ品であってもよい。ここで、ズブ焼入れとは、品物全体(深部まで)を電気炉などで必要な温度まで高め,急冷して品物全体を堅い組織にする方法である。高周波焼入れとは、高周波電流の通じているコイルの間に品物を入れ、その表面に生じる渦電流に伴うジュール熱によって表面を加熱した後、急冷して表面のみ硬い組織にする方法である。
第1の冷間ローリング工程17では、図5(a)に示すようなローリング装置にて冷間ローリング加工を行う。ローリング装置は、内径用のマンドレル47と、外径用の成形ロール48とを備える。マンドレル47の外周面に、外輪25の内径面を成形する外輪内径面成形部67が形成され、成形ロール48の外径面に、外輪25の外径面を成形する外輪外径面成形部68が形成されている。
外輪内径面成形部67は、転走面形成部67a,67aと、シール溝形成部67b,67bとを備える。また、外輪外径面成形部68は、環状凹部形成部68aと、シール装着部位68b、68bとを備える。
この場合、マンドレル47に素材34を外嵌し、マンドレル47と成形ロール48とで素材34を挟んだ状態で、成形ロール48をその軸心廻りに回転させる。これによって、図4(b)に示すような外輪粗加工品36を成形することができる。
第2の冷間ローリング工程18では、図5(b)に示すようなローリング装置にて冷間ローリング加工を行う。ローリング装置は、内径用のマンドレル82と、外径用の成形ロール83とを備える。マンドレル82の外周面に、外輪25の内径面を成形する外輪内径面成形部98が形成され、成形ロール83の外径面に、外輪25の外径面を成形する外輪外径面成形部99が形成されている。
外輪内径面成形部98は、転走面形成部98a,98aと、シール溝形成部98b,98bとを備える。また、外輪外径面成形部99は、環状凹部形成部部99aと、嵌合面形成部99b,99bとを備える。
この場合、マンドレル82に素材(外輪粗加工品)36を外嵌し、マンドレル82と成形ロール83とで外輪粗加工品36を挟んだ状態で、成形ロール83をその軸心廻りに回転させる。これによって、図4(c)に示すような外輪25を成形することができる。
このように、外輪製造方法は、まず図4(a)に示す素材34を成形した後、図3に示すように、第1の冷間ローリング工程17を行って、図4(b)に示すような外輪粗加工品36を成形する。その後、第2の冷間ローリング工程18を行って、図4(c)に示すような外輪25を成形することになる。
すなわち、素材34の中径部38a,38aが転走面26、27となり、素材34の大径部39a、39aがシール装着溝54、55となる。また、素材34の外径面の軸方向中央部に外輪粗加工品36の周方向溝35が形成され、この周方向溝35が外輪25の環状凹部51となる。また、外輪粗加工品36の開口部の肉厚をt1とし、外輪25の開口部の肉厚をt2とした場合、t1>t2である。外輪粗加工品36の肩高さをd1とし、外輪25の肩高さをd2とした場合、d1<d2である。外輪粗加工品36の外径寸法をD1とし、外輪25の外径寸法をD2とした場合、D1<D2である。外輪粗加工品36の周方向溝形成部の肉厚をT1とし、外輪25の環状凹部形成部の肉厚をT2とした場合、T1<T2である。すなわち、外輪粗加工品36と外輪25とを比べた場合、外輪25の環状凹部形成部25cの肉厚T2が外輪粗加工品36の周方向溝形成部36cの肉厚T1よりも大きくなって、外輪25の他の肉厚が外輪粗加工品36の他の肉厚よりも小さくなっている。また、外輪25の肩高さd2が外輪粗加工品36の肩高さd1よりも大きくなっている。
このように、第2の冷間ローリング工程18では、外輪粗加工品36の周方向溝35を縮小させて環状凹部51を形成する環状凹部形成工程及び転走面26、27の肩高さを増大させる増大工程の仕上げ加工を行うことになる。
このため、外輪粗加工品36では、転動体の荷重作用線L1、L2が周方向溝35の底面に交差するのに対して、外輪25では、転動体の荷重作用線L1、L2の外径面の交点が環状凹部51外に位置する。このため、図2に示すように、この外輪25が使用された軸受をナックルNに圧入した際に形成される空隙部Kに、転動体の荷重作用線L1、L2が交差しないことになる。
内輪24も、ほぼ内輪24の形状となった素形状の内輪素材を、冷間ローリングにより成形する。この素材を、加熱炉等で焼入して表面硬化させた後、切削加工を行う。すなわち、焼入鋼切削を行う。この場合、図6の破線で示すように、ハブ輪嵌合面64、両端面65,66、シール装着面63、及び転走面28(29)が焼入鋼切削される。内輪24の材質も、外輪25と同様のものが使用される。この場合の内輪素材(ブランク)は、前記外輪素材と同様、球状化焼鈍を行って、硬度をHRC30以下、好ましくはHRC25以下としたものである。
ところで、内輪24は、例えば、図7に示すように、まず、中空の軸受鋼材を冷間ローリングにて内輪構成素材73(一対の内輪が一体連結された形状のもの)を成形する。すなわち、この内輪構成素材73は、軸方向中央の円筒状の本体部74と、この本体部74の両端にテーパ部75a、75bを介して連設される端部大径部76a,76bとを有する円筒体から構成される。この場合の内輪構成素材73も球状化焼鈍を行って、硬度をHRC30以下、好ましくはHRC25以下としたものである。
このように構成した内輪構成素材73をその軸方向中央で切断して、一対の内輪24(24A)、24(24B)を成形する。すなわち、中央線Lに沿って内輪構成素材73を切断することになる。この際、内輪構成素材73を、加熱炉等で焼入して表面硬化させた後、切断及び切削加工を行う。端部大径部76aが内輪24の大径部60となり、小径の本体部74が内輪24の小径部61となり、テーパ部75aの外径面が内輪24の転走面28(29)となる。また、ハブ輪嵌合面64、両端面65,66、シール装着面63、及び転走面28(29)が焼入鋼切削される。なお、内輪構成素材73を2つに切断する作業は、熱処理前であっても熱処理後であってもよい。
内輪構成素材73としては、図8に示すような形状のものであってもよい。図8に示す内輪構成素材73は、軸方向中央部の大径部77と、この大径部77の両端にテーパ部78a、78bを介して連設される端部大径部79a,79bとを有する円筒体から構成される。
中央線Lに沿って内輪構成素材73を切断することになる。この際、内輪構成素材73を、加熱炉等で焼入して表面硬化させた後、切断及び切削加工を行う。なお、図7に示す内輪構成素材73では、その切断端面が小径側の端面66となるのに対して、図8に示す内輪構成素材73では、その切断端面が大径側の端面65となる。
次に、前記のように構成される車輪用軸受装置の組立方法を説明する。まず、図2に示すように、ハブ輪1に軸受2が組み込まれたユニット体を構成する。すなわち、組立てられた状態の軸受2の内輪24A,24Bの嵌合面64,64をハブ輪1の筒部20の外径面20aに圧入する。この際、内輪24Aの端面65がハブ輪1のボス部端面70に当接する。
このように組立てられたユニット体と、等速自在継手3の外輪5とを連結する。この際、外輪5のステム軸部12をハブ輪1の孔部22に挿入し、孔部22からアウトボード側に突出したねじ部40にナット部材43を螺着する。これによって、マウス部11の底壁外面11aがインボード側の内輪24Bの端面65に当接する。この際、ナット部材43の座面がハブ輪1のアウトボード側の端面45の凹窪面46に当接する。
このため、一対の内輪24A、24Bが、その端面(突合面)66が突合わされた状態で、ボス部端面70とマウス部11の底壁外面11aとの間に挟まれ、内輪24A、24Bに予圧を付与することができる。
このように構成された車輪用軸受装置は、転がり軸受2の外輪25のナックル嵌合面50aを、ナックルNの内径面80に圧入することになる。この場合、ナックル嵌合面50aの外径寸法D11を、ナックルNの内径面80の内径寸法D10よりも僅かに大きく設定する。すなわち、ナックル嵌合面50aとナックル内径面80との締代によって、ナックルNと外輪25との相対的な軸方向及び周方向のずれを規制するように設定する。
この場合、例えば、外輪25とナックルNとの間のハメアイ面圧/ハメアイ面積をハメアイ荷重としたときに、このハメアイ荷重をこの転がり軸受の等価ラジアル荷重で割った値をクリープ発生限界係数とし、このクリープ発生限界係数を予め考慮して、外輪25の設計仕様が設定される。
このため、ナックル嵌合面50aとナックル内径面80との締代によって、外輪25の軸方向の抜け及び周方向のクリープを防止できる。ここで、クリープとは、嵌合締代の不足や嵌合面の加工精度不良等により軸受が周方向に微動して嵌合面が鏡面化し、場合によってはかじりを伴い焼き付きや溶着することをいう。
また、ナックル内径面80に、内径側に突出する膨出部81が設けられ、アウトボード側から軸受2を圧入することによって、外輪25のインボード側の端面25aが膨出部81に当接している。
図2に示すように、ハブ輪1にはブレーキロータ90が装着される。ブレーキロータ90は、軸心孔91を有する短円筒状の中心装着部92を備え、この中心装着部92がハブ輪1のフランジ部21に嵌合する。
中心装着部92は、貫孔を有する円盤部92aと、この円盤部92aの外径部からインボード側へ延びる短円筒状部92bとを有する。円盤部92aの貫孔の周縁部には、アウトボード側へ延びる外鍔部93が設けられ、この外鍔部93の内径孔と円盤部92aの貫孔でもって、前記軸心孔91が構成される。
この場合、ハブ輪1のアウトボード側の端面(筒部20のアウトボード側の端面45と、これに連続して同一平面上に配設されるフランジ部21のアウトボード側の端面とで構成されるハブ輪端面)に円盤部92aが当接するとともに、ハブ輪1のフランジ部21の外径部21aに短円筒状部92bの円盤部92a側の内径面が当接する。すなわち、ハブ輪1のフランジ部21の外径部21aが、このブレーキロータ90を案内するブレーキパイロット部95を構成する。なお、円盤部92aには、ハブボルト33が挿通される貫通孔96が設けられている。
このように、ブレーキロータ90が装着されることによって、外鍔部93の外径面が、図示省略のホイールの内周に嵌合するホイールパイロット部97を構成することになる。
本発明の車輪用軸受装置は、冷間ローリング成形にて外輪25が成形されるので、製品の歩溜まり及び生産性の向上を図ることができて、コスト低減を達成できる。しかも、外輪25は安定した加工精度及び強い強度を得ることができ、軸受2の品質向上を達成できる。また、外輪25の軽量化を図ることができて、低燃費化を達成できる。
また、環状凹部51の底壁を構成する部位の肉厚を厚くすることなく、外輪25の強度及び剛性を確保することができる。このため、軸受装置の軽量化及びコンパクト化を図ることができる。
前記外輪製造方法では、転動体30の荷重作用線の延長線L1、L2が、環状凹部51とナックルNの内径面80とで構成される空隙部Kに対してずれている外輪25を成形することができる。このため、強度及び剛性に優れた外輪を成形することができる。
また、この外輪製造方法では、第1の冷間ローリング加工17と第2の冷間ローリング加工18とを行うものであり、各工程を無理なく滑らかに行うことができる。このため、各冷間ローリング加工機は負担が少ない加工を行うことができ、耐用寿命を延ばすことができる。
第1の冷間ローリング工程17は、従来のこの種の外輪を成形する冷間ローリング工程と同様であり、外輪粗加工品36を成形する冷間ローリング加工機を従来の既存のものを使用でき、コスト低減を図ることができる。しかも、第2の冷間ローリング工程18では、転走面26、27の肩高さを増大させる増大工程を行うので、この転走面26、27での転動体30の肩乗り上げを防止でき、この外輪25を使用した軸受2は安定した機能を発揮することができる。
実施形態のように、外輪素材(ブランク)34としては、外径面が軸方向中央部において最大外径となるクラウニング形状の筒体を採用すれば、このようなブランク34では軸方向中央部において厚さ寸法が大となっており、周方向溝35を縮小させる縮小工程及び肩高さを増大させる増大工程の容易化を図ることができる。
外輪素材がSUJ2のズブ焼入れ品であっても、SUJ2の高周波焼入れ品であっても、炭素0.40〜0.80重量%を含む中高炭素鋼の高周波焼入れ品であってもよく、この種の外輪に一般的に用いられる素材を使用することができる。このため、コスト低減を図ることができる。
前記第2の冷間ローリング工程18では、外輪粗加工品36の周方向溝35を縮小させて環状凹部51を形成する環状凹部形成工程及び転走面26、27の肩高さを増大させる増大工程を行っていたが、他の実施形態として、転走面26、27の肩高さを増大させる増大工程を行わないものであってもよい。
ところで、外輪製造方法において、図9に示すように、第1の冷間ローリング工程17後に、第2の冷間ローリング工程18前に焼なまし工程19を行ってもよい。ここで、焼なましとは、適切な温度に加熱及び灼熱した後、室温に戻ったときに、平衡に近い組織状態になるような条件で冷却することからなる熱処理である。焼なましには、軟化焼なまし、応力除去焼なまし等の種々のものがある。軟化焼なましとは、鉄鋼製品の硬さを所定の水準まで低下させる目的でAc1変態点近傍の温度に加熱する熱処理である。応力除去焼なましとは、本質的に組織を変えることなく、内部応力を減らすために、適切な温度へ加熱又は灼熱した後、適切な温度で冷却する熱処理である。軟化焼なましは、塑性加工、切削加工の前処理に最適であり、応力除去焼なましは、残留応力の除去に最適である。
次に、図10は他の車輪用軸受装置の軸受2の断面拡大図を示し、この場合、内輪が冷間ローリング加工にて成形しない、図11に示す従来の車輪用軸受装置の軸受の内輪と同様、旋削工程等によって成形している。この内輪24C、24Dは、厚肉部85と薄肉部86とを有する短円筒体からなり、厚肉部85と薄肉部86との間の外径面に転走面28(29)が形成される。
また、この図10に示す軸受2の外輪25は、図1に示す外輪25と同様、第1の冷間ローリング工程17と第2の冷間ローリング工程18と行うこと、または、第1の冷間ローリング工程17後、第2の第1の冷間ローリング工程18前に焼なまし工程19を行うことによって成形される。このため、組立られた状態では、小径部86の端面86a,86aが突合され、アウトボード側の内輪24Aの大径部85の端面85aが、ハブ輪1の端面70に当接するとともに、インボード側の内輪24Bの大径部85の端面85aが、等速自在継手3の外輪5の底壁外面11aに当接する。
図10に示す軸受2を使用する車輪用軸受装置の他の構成は、図2に示す車輪用軸受装置と同様であるので、同一部材については図1と図2と同一の符号を附してそれらの説明を省略する。このため、図10に示す車輪用軸受装置も、図2に示す車輪用軸受装置と同様の作用効果を奏する。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、前記実施形態では、軸受2のトルク伝達手段としての転動体をボール30にて構成したが、円錐ころを使用するものであってもよい。外輪粗加工品36として、前記実施形態では、図4(a)に示すように、外径面が軸方向中央部において最大外径となるクラウニング形状の筒体であったが、このようなクラウニング形状の筒体に限るものではない。また、前記実施形態では、突合面が突合わされた状態で一対の内輪が装着されるものであったが、ハブ輪の外径面に外輪の外側転走面が対向する内側転走面が形成されるとともに、ハブ輪の外径面のインボード側に段付部が形成されて、この段付部に、外周に外側転走面に対向する内側転走面が形成された内輪を嵌合させたものであってもよい。さらに、ハブ輪と複列の転がり軸受と等速自在継手とがユニット化された車輪用軸受装置であって、ハブ輪の外径面に、外輪の第1外側転走面が対向する第1内側転走面が形成されるとともに、等速自在継手の外側継手部材の外径面に、外輪の第2外側転走面が対向する第2内側転走面が形成されたものであってもよい。
24A,24B 内輪
25 外輪
26,27 外側転走面
28,29 内側転走面
30 転動体
34 ブランク(外輪素材)
35 周方向溝
36 外輪粗加工品
51 環状凹部
80 ナックル内径面
K 空隙
N ナックル
25 外輪
26,27 外側転走面
28,29 内側転走面
30 転動体
34 ブランク(外輪素材)
35 周方向溝
36 外輪粗加工品
51 環状凹部
80 ナックル内径面
K 空隙
N ナックル
Claims (8)
- 外径面に内側転走面を有する一対の内輪と、内径面に複列の外側転走面を有する外輪と、外輪の外側転走面と内輪の内側転走面との間に転動自在に収容された転動体とを備え、少なくとも外輪が冷間ローリングにて成形されて、外輪の外径面の軸方向中央部に環状凹部が形成された車輪用軸受装置であって、
転動体の荷重作用線の延長線が、外輪の環状凹部とナックルの内径面とで構成される空隙部に対してずれていることを特徴とする車輪用軸受装置。 - 内径面に複列の外側転走面を有し、外径面の軸方向中央部に環状凹部が形成された車輪用軸受装置用の外輪を製造する外輪製造方法であって、
第1の冷間ローリング加工にて、周方向溝を外径面に有する外輪粗加工品を成形する粗加工を行い、その後、第2の冷間ローリング加工にて、前記外輪粗加工品の周方向溝を縮小させて環状凹部を形成する環状凹部形成工程を含む仕上げ加工を行うことを特徴とする外輪製造方法。 - 内径面に複列の外側転走面を有し、外径面の軸方向中央部に環状凹部が形成された車輪用軸受装置用の外輪を製造する外輪製造方法であって、
第1の冷間ローリング加工にて、周方向溝を外径面に有する外輪粗加工品を成形する粗加工を行い、その後、第2の冷間ローリング加工にて、転走面の肩高さを増大させる増大工程を含む仕上げ加工を行うことを特徴とする外輪製造方法。 - 内径面に複列の外側転走面を有し、外径面の軸方向中央部に環状凹部が形成された車輪用軸受装置用の外輪を製造する外輪製造方法であって、
外径面が軸方向中央部において最大外径となるクラウニング形状の筒体からなる外輪素材を用い、第1の冷間ローリング加工にて、周方向溝を外径面に有する外輪粗加工品を成形する粗加工を行い、その後、第2の冷間ローリング加工にて、前記外輪粗加工品の周方向溝を縮小させて環状凹部を形成する環状凹部形成工程及び転走面の肩高さを増大させる増大工程の仕上げ加工を行うことを特徴とする外輪製造方法。 - 外輪素材がSUJ2のズブ焼入れ品であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の外輪製造方法。
- 外輪素材がSUJ2の高周波焼入れ品であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の外輪製造方法。
- 外輪素材が炭素0.40〜0.80重量%を含む中高炭素鋼の高周波焼入れ品であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の外輪製造方法。
- 第1の冷間ローリング工程後、第2の冷間ローリング工程前に焼なまし工程を行うことを特徴とする請求項2〜請求項7のいずれか1項に記載の外輪製造方法。
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