JP2009132947A - スパッタリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】既存装置の大幅な設計変更を必要とせず、同装置の製造コストが抑えられ、それと共に平行状態にできるシート状の電子ビームの傾き角度の範囲が大きく、且つシート状への変形領域の幅が小さくならないスパッタリング装置を提供する。
【解決手段】対の棒磁石11A、11Bで変形初期のシート状プラズマ12を、輸送中心P1を軸として傾け、ターゲット14等に対応する位置でのシート状プラズマ12が当該ターゲット14等と平行状態となるようにする。
【選択図】図5

Description

本発明は、スパッタリング装置に関し、特にターゲットに対してシート状プラズマを平行状態に調整できるスパッタリング装置に関する。
円柱状のプラズマを、同じ磁極同士を互いに対応させて強力な反発磁界を発生するような対の永久磁石で挟むことで、均一且つ高密度のシート状プラズマを形成できることが知られている。
また、シート状プラズマをターゲットと基板との間の成膜空間に導いて、シート状プラズマ中の荷電粒子を用いたスパッタリングによりスパッタ粒子を叩きだし、そのスパッタ粒子をシート状プラズマに通して電離させ、基板に堆積させるといったスパッタリング技術が開発されている。
成膜速度増加等のために、プラズマ中を流れる電流を増加させると、この電流により発生する磁場の影響で、シート状プラズマが移動軸を中心として捻られる。シート状プラズマが捻られると、ターゲット等に対応する位置で当該ターゲット等に対して非平行状態となり、基板上の膜厚分布が偏ってしまうという問題がある。その対策として、特許文献1では、シート状プラズマの両端部を挟むように輸送空間の長手方向に沿う長尺の磁石を配置することで当該シート状プラズマの捻れを低減している。
また、特許文献2では、電子ビームをシート状に変形させる対の永久磁石を、互いに逆方向にずらすことで、電子ビームのシート面の傾きを変え、ウエハの位置において電子ビームのシート面がほぼ水平となるようにしている。
特開平3−61364号公報 特許第3095614号公報
スパッタリング装置には、上記ターゲットや、スパッタ粒子が堆積される基板が設けられているため、特許文献1のような長尺の磁石を配置する場合、同磁石とターゲット等との干渉を避けなければならない。そのため、既存装置の大幅な設計変更が必要となってしまうという問題がある。更に、長尺の磁石は高価であるため、装置の製造コストが嵩むという問題もある。また、特許文献2のように永久磁石を、互いに逆方向にずらす場合には、平行状態にできるシート状の電子ビームの傾き角度の範囲が小さく、更に、二つの永久磁石を互いにずらす寸法が大きくなればなる程、当該二つの永久磁石の互いに対向するオーバーラップ範囲が小さくなり、それと共にシート状への変形領域の幅が小さくなってしまう。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、既存装置の大幅な設計変更を必要とせず、同装置の製造コストが抑えられ、それと共に平行状態にできるシート状の電子ビームの傾き角度の範囲が大きく、且つシート状への変形領域の幅が小さくならないスパッタリング装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じた。
すなわち本発明のスパッタリング装置は、円柱状プラズマを放電により形成して、輸送方向に向けて放出するプラズマガンと、前記プラズマガンに連通し、前記円柱状プラズマが前記輸送方向に移動する輸送空間を有するプラズマ形成室と、前記輸送空間を前記輸送方向に対して交差する向きに同極同士が向き合うように挟み、前記円柱状プラズマを磁界によりシート状に変形させてシート状プラズマとする対の磁石と、前記対の磁石を同極同士が向き合うように保持する磁石保持部と、前記輸送空間に連通する開口を通じて前記シート状プラズマが導入される真空成膜室と、前記真空成膜室内に配置されたターゲットを、前記輸送方向に沿った向きに挟み、互いに異極同士が向き合った対をなす電磁コイルと、前記ターゲットにバイアス電圧を印加する電源と、を備え、前記磁石保持部は、前記輸送中心を傾動軸として前記対の磁石を傾ける傾動機構を有していることを特徴とする。
上記本発明のスパッタリング装置によれば、シート状プラズマに輸送中心を軸とした捻れが生じる場合であっても、傾動機構で磁石を傾動させることで、ターゲットに対応する位置でのシート状プラズマを当該ターゲットと平行状態とすることができる。従って、基板上の膜厚分布が偏ってしまうことがないため、従来のように輸送空間の長手方向に沿う長尺の磁石を配置する必要がない。これにより、既存装置の大幅な設計変更を必要とせず、高価な長尺の磁石を用いる必要もない。
更に、シート状プラズマの傾き角度に対の磁石の傾き角度を追随させることができるので、シート状プラズマの傾き角度が大きい場合であっても当該シート状プラズマをターゲットに対して平行状態に変化させることができる。また、二つの永久磁石をどのような角度に傾けても、当該二つの永久磁石の互いに対向するオーバーラップ範囲が小さくなることはないため、シート状への変形領域の幅が小さくなってしまうことがない。
また、前記傾動機構は、前記輸送中心を第1傾動軸とすると共に、前記第1傾動軸に直交する軸を第2傾動軸とし且つ前記第1及び第2傾動軸に直交する軸を第3傾動軸とした三つの傾動軸で、前記対の磁石を傾けるように構成されていることが好ましい。
この場合、ターゲットに対応する位置でのシート状プラズマを平行状態とし、それと共に磁石の磁力のばらつきにより磁場に偏りが生じた際に、磁石を傾けてその偏りの修正を行うことができる。
また、前記輸送空間の終端部に、前記シート状プラズマを収束させる収束用磁石を更に備えていることが好ましい。
この場合、収束用磁石の磁界作用によりシート状プラズマを収束させると共に、対の磁石と連携して、ターゲットに対応する位置でのシート状プラズマを平行状態に誘導することができる。
また、前記輸送中心を傾動軸として前記収束用磁石を傾ける他の傾動機構を更に設けてもよい。
この場合、傾動機構により収束用磁石を傾けることができるので、対の磁石を傾け易くなりシート状プラズマを平行状態に誘導しやすくなる。
上記の通り、本発明によれば、長尺の磁石を配置しなくても、基板上の膜厚分布が偏ってしまうことがないので、既存装置の大幅な設計変更を必要とせず、且つ同装置の製造コストを抑えることができる。更に、本発明によれば、シート状プラズマの傾き角度が大きい場合であっても、その角度に対の磁石の傾き角度を追随させることができるので、平行状態にできるシート状の電子ビームの傾き角度の範囲が大きく、且つ二つの永久磁石の互いに対向するオーバーラップ範囲が小さくなることはないため、シート状への変形領域の幅が小さくなってしまうことがない。
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るスパッタリング装置1の一実施形態(第1実施形態)の概略を示す模式図である。なお、以下の説明において、プラズマの輸送方向である図1紙面左右方向をZ方向とし、このZ方向に直交する図1紙面上下方向をY方向とし、Z方向に直交する図1紙面貫通方向をX方向とする。
本実施形態のスパッタリング装置1は、Z方向に沿って図1右側から順に、プラズマを高密度に生成してZ方向に放出するプラズマガン2と、Z方向の軸心を中心とした円筒状に形成された非磁性材料からなるプラズマ形成室3と、Y方向を軸心とする円筒状に形成された非磁性材料からなる真空成膜室4とを備える。これらプラズマガン2、プラズマ形成室3、及び真空成膜室4は、気密状態を保った状態で互いに連通されている。
プラズマガン2は、減圧可能な図示しない放電空間を有しており、当該プラズマガン2の一端には、当該放電空間を塞ぐフランジ5(カソードマウント)が設けられている。このフランジ5には、プラズマ放電誘発用の熱電子を放出するカソード6と、プラズマ放電により電離される放電ガスとしてのアルゴンガスを上記放電空間に導く図示しないガス導入部とが設けられている。
上記放電空間の適所には、カソード6との間でプラズマ放電を維持するため、直流電源と抵抗の組み合わせにより所定のプラス電圧を印加された一対のグリッド電極G1、G2(中間電極)が配置されている。このようなプラズマ放電により、プラズマガン2の放電空間には、荷電粒子の集合体としてのプラズマが形成される。なお、直流電源に基づく低電圧且つ大電流の直流アーク放電により、カソード6と後述のアノード7との間に高密度のプラズマ放電を可能とする公知の圧力勾配型のプラズマガンが採用されている。
磁束密度のZ方向の勾配により、プラズマを構成する荷電粒子は、上記放電空間からZ方向に運動するよう、磁力線の回りを旋回しながら進む。そして、これら荷電粒子の集合体としてのプラズマが、Z方向の輸送中心に対して略等密度分布する円柱状のプラズマ(以下、円柱状プラズマという)として、プラズマガン2のZ方向の端部とプラズマ形成室3の端部との間に介在する図示しない通路を介して当該プラズマ形成室3へ引き出される。
プラズマ形成室3は、Z方向の軸を中心とした円柱状の減圧可能な輸送空間10を有している。プラズマ形成室3の周囲には、円柱状プラズマ8のZ方向の推進力を発生する円環状の第1電磁コイル9(空心コイル)が配設されている。なお、第1電磁コイル9の巻線には、カソード6側をS極、アノード7側をN極とする向きの電流が通電されている。また、第1電磁コイル9のZ方向の前方側(アノードAに近い側)には、プラズマ形成室3(輸送空間10)をY方向の向きに挟み、互いに同極(ここではN極)が対向する対の角形の棒磁石11A、11B(対の磁石)が、Y方向に所定の間隔を隔てて配設されている。
上記第1電磁コイル9の巻線に電流を流すと、プラズマ形成室3の輸送空間10に作られるコイル磁界と、棒磁石11A、11Bによりこの輸送空間10に作られる磁石磁界との相互作用により、円柱状プラズマ8が、輸送空間10をZ方向に移動する間に、シート状に変形されたシート状プラズマ12となる。このシート状プラズマ12は、輸送中心Pを含むXZ平面(以下、「主面S」という)に沿って均一に拡がっている。
以下、第1電磁コイル9および対の棒磁石11A、11Bによる磁界相互作用に基づいて、円柱状プラズマ8がシート状プラズマ12となることについて、図2を参照して説明する。
図2(a)、(b)は、シート状プラズマ12の形成法の概略を説明する模式図であり、図2(a)は、棒磁石11A、11BのZ方向略中央付近のXY平面に平行な断面の模式図であり、図2(b)は、棒磁石11A、11BのX方向略中央付近のYZ平面に平行な断面の模式図である。なお、同図中の符号Bx、ByおよびBzは各々、図1中のX方向、Y方向およびZ方向の磁束密度ベクトル成分を表している。
図2(b)から理解されるとおり、第1電磁コイル9のコイル磁界により、棒磁石11A、11Bに到達する前の円柱状プラズマ8のZ方向に作用する初期の磁束密度成分Bz0が形成されている。このとき、初期の磁束密度成分Bz0と、対の棒磁石11A、11Bが作るZ方向の磁束密度成分Bzとの間の大小関係を適正に保つように、第1電磁コイル9の配置やその巻線に流す電流量を設定する必要がある。両者間の適正な関係を保たなければ、円柱状プラズマ8をシート状プラズマ12に変形する際の、プラズマの形態が乱れて、主面Sに沿って、円柱状プラズマ8を均一に拡げ難くなると考えられている。
次に、図2(a)から理解されるとおり、XY平面上には、一対の棒磁石11A、11BのN極面から互いに輸送中心P1に近づく磁束密度のY方向成分Byの対が形成されるとともに、これらの棒磁石11A、11BのN極面と平行に輸送中心P1から互いに離れる、磁束密度のX方向成分Bxの対が形成されている。
磁束密度のY方向成分Byの対については、棒磁石11A、11BのN極面を互いに対向配置させていることから、これらのN極面から輸送中心P1に近づくに連れて、そのY方向成分に互いに相殺され、これらの磁束密度のY成分に適宜のマイナス勾配を持たせることができる。
このような磁束密度のY方向成分Byの勾配は、図2(a)の矢印で示す如く、輸送中心P1に向かってY方向に円柱状プラズマ8を圧縮する方向に荷電粒子を運動させ、これにより、円柱状プラズマ8中の荷電粒子は、磁力線の回りを旋回しながら輸送中心P1の方向に進む。
一方、磁束密度のX方向成分Bxの対については、棒磁石11A、11Bの配置やその磁場強度の適切な設計により、輸送中心P1からX方向に離れるに連れて、これらの磁束密度のX成分に適宜のマイナス勾配を持たせるように調整できる。
このような磁束密度のX方向成分Bxの勾配は、図2(a)の矢印で示す如く、円柱状プラズマ8を主面S(XZ平面)に沿って拡げる方向に荷電粒子を運動させ、円柱状プラズマ8中の荷電粒子は、磁力線の回りを旋回しながら輸送中心Pから離れる方向に進む。
こうして、円柱状プラズマ8は、プラズマ形成室3をZ方向に移動する間に、第1電磁コイル9および棒磁石11A、11Bによる磁界相互作用に基づいて、主面Sに沿ったシート状プラズマ12に均一に変形される。なお、シート状プラズマ12の幅、厚みおよび荷電粒子密度分布等は、これらの磁束密度Bx、By、Bz、Bz0を適宜変更することにより、調整可能である。
このようにして変形されたシート状プラズマ12は、図1に示すように、シート状プラズマ形成室3のZ方向の他端と真空成膜室4の側壁との間に介在する、ボトルネック部13を介して真空成膜室4へ引き出される。なお、ボトルネック部13の間隔(Y方向寸法)および厚み(Z方向寸法)並びに幅(X方向寸法)は、シート状プラズマ12を適切に通過するように設計されている。
真空成膜室4としては、例えば、シート状プラズマ12中のAr+の衝突エネルギにより平板状のターゲット14のCu材料をスパッタ粒子として叩き出す真空スパッタリング装置が採用されている。
真空成膜室4は、Y方向の軸を中心とした円柱状の減圧可能な、スパッタリングプロセス用の成膜空間16を有している。この成膜空間16は、バルブ17により開閉可能な排気口から真空ポンプ18(例えばターボポンプ)により真空引きされる。当該成膜空間16はスパッタリングプロセス可能なレベルの真空度にまで速やかに減圧されると共に、プラズマ形成室3の輸送空間10が円柱状プラズマを輸送可能なレベルの真空度まで速やかに減圧される。
成膜空間16は、その機能上、上下方向(Y方向)において、ボトルネック部13の間隔に対応する水平面(XZ平面)に沿った中央空間を境にして、板状の銅製のターゲット14を格納する囲い部により区画されたターゲット空間と、板状の基板15を格納する囲い部により区画された基板空間と、に区分けされる。
つまり、ターゲット14は、ターゲットホルダ19に装着された状態でターゲット空間内に格納され、図示しないアクチュエータによりターゲット空間内を上下(Y方向)に移動可能に構成されている。一方、基板15は、基板ホルダ20に装着された状態で基板空間内に格納され、図示しないアクチュエータにより基板空間内を上下(Y方向)に移動可能に構成されている。
このようにして、ターゲット14および基板15は互いに、シート状プラズマ12の厚み方向(Y方向)に一定の好適な間隔を隔てるようにして、このシート状プラズマ12を挟み、成膜空間16内に対向して配置されている。
また、スパッタリングプロセス中、ターゲット14には、直流電源V3により数百ボルトの範囲内で変更可能な可変バイアス電圧(マイナス電圧)が印加される。これにより、シート状プラズマ12中のAr+がターゲット14に向かって引き付けられる。その結果、Ar+とターゲット14との間の衝突エネルギによりターゲット14のスパッタ粒子(例えばCu粒子)が、ターゲット14から基板15に向かって叩き出される。
また、基板15には、直流電源V2により数百ボルトの範囲内で変更可能な直流の可変バイアス電圧が基板ホルダ20を介して印加されており、シート状プラズマ12により電子を剥ぎ取られて電離されたスパッタ粒子(例えばCuイオン)が、基板15に向かって加速され当該基板15に対し付着強度を高めて堆積される。
次に、ボトルネック部13から見て、Z方向に対向する位置の真空成膜室4の周辺構成を説明する。真空成膜室4の側壁にはアノード7が配置され、この側壁とアノード7との間には、プラズマ通過用の通路21が設けられている。
アノード7は、カソード6との間で適宜のプラス電圧(例えば100V)を印加され、カソード6およびアノード7の間の直流アーク放電によるシート状プラズマ12中の荷電粒子(特に電子)を回収する役割を担っている。
また、アノード7の裏側には、アノード7側をS極、大気側をN極とした永久磁石(収束用磁石)22が配置されている。このため、この永久磁石22のN極から出てS極に入るXZ平面に沿った磁力線により、アノード7に向かうシート状プラズマ12が幅方向に収束され、シート状プラズマ12の荷電粒子が、アノード7に適切に回収され得る。
図1に示すように、上記永久磁石22をプラズマの輸送中心P1を傾動軸として傾ける収束磁石用の傾動機構50(他の傾動機構)が設けられている。この収束磁石用の傾動機構50は、アノード7の裏側に配置された永久磁石22の近傍に配置されている。傾動機構50は、永久磁石22を挟んで保持する保持部51と、この保持部51を輸送中心P1を傾動軸として傾ける回転部52と、回転部52に設けられた手動で操作するためのレバー53とを備え、更に、回転部52には、永久磁石22の傾きを読みとれる目盛りが設けられている。これにより、永久磁石22を所望の角度まで簡単に傾けることができる。なお、当該傾動機構50には、永久磁石22を保持し且つ傾ける構成のものであれば、公知の機構を採用することができる。例えば、他の傾動機構50の構成として、角度値を入力すれば回転部を自動で傾けるための駆動部及び制御部を設けて、永久磁石22をその角度に傾けるようにしてもよい。
円環状の第2、及び第3の電磁コイル23、24(空心コイル)が、互いに対をなして、真空成膜室4の側壁を臨むようにして、成膜空間16内のターゲット14および基板15をZ方向の向きに挟んで配置されている。
第2の電磁コイル23は、その巻線が対の棒磁石11A、11Bと真空成膜室4との間のZ方向の適所を取り囲むよう配置されている。第3の電磁コイル24は、その巻線が真空成膜室4の側壁とアノード7との間のZ方向の適所を取り囲むよう配置されている。
このような第2及び第3の電磁コイル23、24の対の巻線に電流を流すことにより作られるコイル磁界(例えば10G〜300G程度のミラー磁界)により、シートプラズマ12の幅方向(X方向)の形状が、当該シート状プラズマ27中の荷電粒子の拡散を適切に抑えるように整形される。
図3は、対の棒磁石11A、11Bを同極同士が向き合うように保持する磁石保持部25(傾動機構26)の模式図である。プラズマ形成室3の周囲を取り囲むように、Z方向から見て矩形状の内枠体27が設けられている。この内枠体27は、プラズマ形成室3よりの幅広の上壁部27aと、この上壁部27aの両端からプラズマ形成室3の下側まで延びる左右の両側壁部27bと、この両側壁部27bの下端に繋がり且つ上壁部27aに対向する下壁部27cとからなる。
上壁部27aの下面には、棒磁石11Aが固定されており、下壁部27cの上面には、棒磁石11Bが固定されている。当該内枠体27には、Z方向に向かってプラズマ形成室3が貫通している。両側壁部27bは、当該両側壁部27bの上下方向中央よりも上側の位置で二つに分割されている。つまり内枠体27は、上枠部27Aと下枠部27Bとからなることで上下に分割できるようになっている。また、分割部分には、取付具28が設けられており、上枠部27Aと下枠部27Bとが互いに取り付け、及び取り外し可能となっている。
上記両側壁27bの外側面には、当該外側面から外方(X方向)へ延びる横軸29が固定されている。また、上記内枠体27の外側には、下方から当該内枠体27を囲むように構成された外枠体30が設けられている。この外枠体30は、内枠体27の下壁部27cの下側に位置する底壁部30aと、この底壁部30aの両端から内枠体27の上下方向中途部まで延びる外壁部30bからなり、Z方向から見て凹形状に構成されている。
両外壁部30bの内面には、上記横軸29が図示しない軸受を介して回転可能に取り付けられている。これにより、両棒磁石11A、11Bは、位置決めされた外枠体30に対してプラズマの輸送中心P1に直交するX方向に沿う軸P2を傾動軸(第2傾動軸)として傾けられる。また、両外壁部30bは、当該両外壁部30bの上下方向略中央で分割されている。つまり、外枠体30は、上側の上壁部30Aと下本体部30Bとからなることで、当該上壁部30Aが位置決めされた状態で当該下本体部30Bのみを切り離せるようになっている。また、その分割部分に取付具31が設けられており、上壁部30Aと下本体部30Bとが、互いに取り付け、及び取り外し可能となっている。
外枠体30の底壁部30aの下面には、当該下面から下方へ延びる縦軸32が固定されている。一方、プラズマ形成室3の下側に位置する載置面33上には、X方向に長い台座34が固定されている。この台座34は、凹湾曲状に形成された上湾曲面35aを有する下台35と、当該上湾曲面35aに合わさる凸湾曲状に形成された下湾曲面36aを有する上台36とで主に構成されている。
上台36は、Z方向の移動が規制されており、且つ上湾曲面35aと下湾曲面36aとが互いに摺動することで、当該上湾曲面35aに沿ってプラズマの輸送中心P1(Z方向に沿う軸)を傾動軸(第1傾動軸)としてスライドするようになっている。また、上台36の上面36bには、縦軸32の下端が図示しない軸受を介して回転可能に取り付けられている。
台座34に回転可能に取り付けられた当該縦軸32により、外枠体30は、プラズマの輸送中心P1に直交するY方向に沿う軸P3を傾動軸(第3傾動軸)として傾けられる。このように、磁石保持部25には、棒磁石11A、11Bを、プラズマの輸送中心P1を傾動軸として傾けると共に、プラズマの輸送中心P1に直交するX方向に沿う軸P2を傾動軸として傾け、且つプラズマの輸送中心P1に直交するY方向の沿う軸P3を傾動軸として傾ける傾動機構26が構成されている。また、各傾動軸を中心とする傾動は、適宜な駆動手段(図示せず)によって行われる。
次に、シート状プラズマ12をターゲット14及び基板15に対応する位置で当該ターゲット14等に対して平行状態とすることについて説明する。成膜速度増加等のために、プラズマ中を流れる電流を増加させると、この電流により発生する磁場の影響で、シート状プラズマ12が輸送中心を軸として捻られる。シート状プラズマ12が捻られると、ターゲット14等に対応する位置で当該ターゲット14等に対して非平行状態となり、基板15上の膜厚分布が偏ってしまうという問題があった。本実施形態では、上記傾動機構26で、棒磁石11A、11Bをターゲット14等と非平行状態に傾けておくことで、捻られたシート状プラズマ12がターゲット14等に対応する位置で当該ターゲット14等と平行状態となることを見いだした。
図4は、対の棒磁石11A、11Bを水平状態(ターゲット14等と平行状態)とした場合の、図1のA部、B部、C部、D部、E部における、シート状プラズマ12を表すXY断面図である。同図のC部からわかるように、対の棒磁石11A、11Bを水平状態としたままでは、ターゲット14等に対応する位置のシート状プラズマ12は、当該ターゲット14等に対して平行状態ではなくなっている。以下、平行状態というときは、シート状プラズマ12がターゲット14等と平行となっている状態をいうものとする。このような場合には、基板15上の膜厚分布は、偏ったものとなる。具体的には、基板15上の中央部から同基板15上の周縁に向かう膜厚減少度合いが場所によって異なってしまう。
図5は、傾動機構26で対の棒磁石11A、11Bを+10°傾けた場合の、図1のA部、B部、C部、D部、E部における、シート状プラズマ12を表すXY断面図である。A部から分かるように、変形初期のシート状プラズマ12は、対の棒磁石11A、11Bにより輸送軸P1を軸として当該対の棒磁石11A、11Bと同じだけ傾けられている。B部では、シート状プラズマ12の傾きが少なくなり、シート状プラズマ12がX方向に沿う水平状態に近づいている。
C部では、シート状プラズマ12の傾きがなくなり、シート状プラズマ12がX方向に沿う平行状態となる。D部では、シート状プラズマ12の傾きが再び現れ、シート状プラズマ12が平行状態ではなくなる。E部では、シート状プラズマ12の傾きがD部より大きくなる。また、E部で示すように、アノード7の裏側に配置した永久磁石22を傾けておくことで、捻られたシート状プラズマ12をシート状のまま収束させることができる。
このように、対の棒磁石11A、11Bをターゲット14等と非平行状態に傾けておくことで、シート状プラズマ12はターゲット14等に対応する位置で平行状態となる。図6は、対の棒磁石11A、11Bを+10°傾けた場合における、基板15上の膜厚分布グラフである。同図に示すように、基板15上の中央部から同基板15上の周縁に向かう膜厚減少度合いが均一となっており、基板15上の膜厚分布が偏っていない。
なお、本実施形態のスパッタリング装置1では、対の棒磁石11A、11Bとアノード間の距離が約2m、放電電流が20A以下となっており、シート状プラズマ12の捻れ程度との関係から、対の棒磁石11A、11Bの傾き角度は、±45°(図5に表すものが+に傾けられた状態であり、これと逆が−に傾けられた状態である)を限度として調整可能となっている。対の棒磁石11A、11Bの傾き角度は、ターゲット14等に対応する位置でのシート状プラズマ12の捻れ度合いに応じて変更すればよい。
本実施形態のスパッタリング装置1によれば、シート状プラズマ12に、輸送中心P1を軸とした捻れが生じる場合であっても、対の棒磁石11A、11Bで変形初期のシート状プラズマ12を予め傾けておくことで、ターゲット14等に対応する位置でシート状プラズマ12を当該ターゲット14等に対して平行状態とすることができる。従って、基板15上の膜厚分布が偏ってしまうことがないため、輸送空間10の長手方向に沿う長尺の磁石を配置する必要がない。これにより、既存装置の大幅な設計変更を必要とせず、高価な長尺の磁石を用いる必要もない。
更に、シート状プラズマ12の傾き角度に対の棒磁石11A、11Bの傾き角度を追随させることができるので、シート状プラズマ12の傾き角度が大きい場合であっても当該シート状プラズマ12をターゲット14等に対して平行状態に変化させることができる。つまり、平行状態にできるシート状の電子ビームの傾き角度の範囲が大きい。また、対の棒磁石11A、11Bをどのような角度に傾けても、当該対の棒磁石11A、11Bの互いに対向するオーバーラップ範囲が小さくなることはないため、シート状プラズマ12への変形領域の幅が小さくなってしまうことがない。
更に、傾動機構26のうち、内枠体27が互いに取り付け及び取り外し可能な上枠部27Aと下枠部27Bとからなり、且つ外枠体30が互いに取り付け及び取り外し可能な上壁部30Aと下本体部30Bとからなるので、プラズマ形成室3等を設置した状態のままで、傾動機構26を分解して当該傾動機構26のメンテナンスを行うことができる。
また、アノード7の裏側に永久磁石22(収束用磁石)が配置されているので、その磁界作用によりシート状プラズマ12が収束させられると共に、対の棒磁石11A、11Bと連携させて、ターゲット14等に対応する位置でのシート状プラズマ12を平行状態に誘導することができる。また、図1に示す永久磁石22の傾動機構50を設けることにより、永久磁石22を傾け易くなりシート状プラズマ12を平行状態に誘導しやすくなる。
また、傾動機構26により、対の棒磁石11A、11Bを三つの傾動軸で傾けることができるので、ターゲット14等に対応する位置でのシート状プラズマ12を平行状態とし、それと共に対の棒磁石11A、11Bの磁力のばらつきにより磁場に偏りが生じた際に、磁石を適宜傾けてその偏りの修正を行うことができる。
図7は、本発明の第2実施形態に係る図示しないスパッタリング装置で形成したシート状プラズマ40の、図1のA部、B部、C部、D部、E部に対応する位置でのXY断面図である。本実施形態のスパッタリング装置が上記第1実施形態と異なる点は、アノード7の裏側に永久磁石が配置されていない点である。
A部では、変形初期のシート状プラズマ40は、対の棒磁石11A、11Bにより輸送中心P1を軸として傾けられている。B部では、シート状プラズマ40の傾きが少なくなり、シート状プラズマ40がX方向に沿う水平状態に近づいている。C部では、シート状プラズマ40の傾きがなくなり、シート状プラズマ40が平行状態となる。D部では、シート状プラズマ40の傾きが再び現れ、シート状プラズマ40が平行状態ではなくなる。このD部でのシート状プラズマ40の傾きは、アノード7の裏側に永久磁石22が配置された図5に示す場合の逆となっている。E部では、シート状プラズマ40の傾きがD部より大きくなっている。
なお、上記実施形態は例示であり制限的なものではなく、本発明はあらゆる種類のスパッタリング装置に適用することができる。
本発明は、例えばスパッタリング装置に適用することができる。
本発明の一実施形態に係るスパッタリング装置の概略を示す模式図である。 (a)及び(b)は、シート状プラズマの形成方法の概略を説明する模式図である。 磁石保持部(傾動機構)の模式図である。 対の棒磁石を傾けていない場合の、図1のA部、B部、C部、D部、E部における、シート状プラズマを表すXY断面図である。 対の棒磁石を+10°傾けた場合の、図1のA部、B部、C部、D部、E部におけるシート状プラズマを表すXY断面図である。 対の棒磁石を+10°傾けた場合における基板上の膜厚分布グラフである。 本発明の第2実施形態に係るスパッタリング装置で、対の棒磁石を+10°傾けた場合の、図1のA部、B部、C部、D部、E部におけるシート状プラズマを表すXY断面図である。
符号の説明
1 スパッタリング装置
2 プラズマガン
8 円柱プラズマ
10 輸送空間
11A 棒磁石
11B 棒磁石
12 シート状プラズマ
14 ターゲット
15 基板
22 永久磁石
25 磁石保持部
26 傾動機構

Claims (4)

  1. 円柱状プラズマを放電により形成して、輸送方向に向けて放出するプラズマガンと、
    前記プラズマガンに連通し、前記円柱状プラズマが前記輸送方向に移動する輸送空間を有するプラズマ形成室と、
    前記輸送空間を前記輸送方向に対して交差する向きに同極同士が向き合うように挟み、前記円柱状プラズマを磁界によりシート状に変形させてシート状プラズマとする対の磁石と、
    前記対の磁石を同極同士が向き合うように保持する磁石保持部と、
    前記輸送空間に連通する開口を通じて前記シート状プラズマが導入される真空成膜室と、
    前記真空成膜室内に配置されたターゲットを、前記輸送方向に沿った向きに挟み、互いに異極同士が向き合った対をなす電磁コイルと、
    前記ターゲットにバイアス電圧を印加する電源と、を備え、
    前記磁石保持部は、前記輸送中心を傾動軸として前記対の磁石を傾ける傾動機構を有していることを特徴とするスパッタリング装置。
  2. 前記傾動機構は、前記輸送中心を第1傾動軸とすると共に、前記第1傾動軸に直交する軸を第2傾動軸とし且つ前記第1及び第2傾動軸に直交する軸を第3傾動軸とした三つの傾動軸で、前記対の磁石を傾けるように構成されている請求項1に記載のスパッタリング装置。
  3. 前記輸送空間の終端部に、前記シート状プラズマを収束させる収束用磁石を更に備えている請求項1又は2に記載のスパッタリング装置。
  4. 前記輸送中心を傾動軸として前記収束用磁石を傾ける他の傾動機構を更に備えている請求項3に記載のスパッタリング装置。
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