JP2009132680A - フラーレン誘導体の製造方法及びフラーレン誘導体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フラーレン類と、周期律表8、9又は10族中の少なくとも1種の金属化合物と、H−R−X(X=F、Cl、Br、I)で表される化合物を作用させることにより、フラーレン骨格に置換基R´を4つ以上付加する。ここで、R(置換基を有する場合を含む)はアリーレン基又はアルキレン基を、Hは水素を、R´はR、RH、又はRXを示す。そして、金属化合物の量は、フラーレン類のモル量に対して0.01〜1000モル量の範囲にあり、H−R−Xで表される化合物の量は、フラーレン類のモル量に対して0.01〜1000モル量の範囲にあるのが好ましい。
【選択図】図1
Description
フラーレン類の合成方法としては、アーク放電法、抵抗加熱法、レーザー蒸発法、燃焼法、熱分解法などが知られており、いずれの製造方法においてもフラーレン類を含有する煤が生成する。有機溶媒に可溶なC60、C70、C76、C78、C82、C84などのフラーレン類は、煤を有機溶媒で抽出することによって得られる。さらにこれらのフラーレン類を化学修飾することにより、有機溶媒あるいは水への溶解性を向上させることが可能である。
そして、非特許文献3には、フラーレン骨格にアリール基を付加する反応として、グリニャール(Grignard)試薬等の有機金属化合物を用いる方法がある。更に、特許文献1には酸素等の酸化剤の存在下でフラーレン骨格に2個の有機基を付加した二重付加誘導体を製造することが提案されている。
また、特許文献1に記載の方法においては、酸素ガスを使用するので、フラーレン骨格が酸化されて生成物の生成比率が下がる傾向がある。このため、その濃度を調整することが好ましく、更には少なすぎると、2重付加体の選択的な生成反応が十分に促進されないという課題がある。
また、本発明のフラーレン誘導体の製造方法において、前記金属化合物は少なくとも1のハロゲン原子を含むもの(例えば、金属ハロゲン化物)が好ましい。
特に、このフラーレン誘導体の製造方法においては、n=4〜12、k=1又は2、p=1又は2の範囲のフラーレン誘導体がこの実施の形態に係る方法を用いて容易に合成できる。
該金属化合物として、好ましくは入手の容易さとコスト面で有利である第4周期の金属化合物、例えば、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、塩化ルテニウム(III)などに代表される求電子性を有する金属化合物であるのが好ましい。より好ましくは塩化鉄(III)、臭化鉄(III)といった鉄の化合物を使用するのが好ましく、これによって、より効率的に(例えば、常温、常圧下又はそれに近い状態で)フラーレン類の骨格にアリール基又はアルキル基、アリーレン基又はアルキレン基(更に水素又はハロゲンを付加している場合もある)を付加できる。
H−R−Xで表される化合物は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を任意の比率及び組合せで用いてもよい。
有機溶媒としては、フラーレン誘導体が可溶である溶媒、例えば芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等が適しており、それらは環式、非環式いずれでもよく、また、これらの溶媒を単独又は2種類以上を任意の割合で用いてもよい。
これらの溶媒は、1種単独としても、あるいは2種以上の混合溶媒としても使用することができる。
なお、実施する雰囲気は特に限定されないが、酸素によりフラーレン類あるいはフラーレン誘導体が酸化される副反応を抑制するため、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気で実施するのが好適である。
上記構造式(1)で表される本発明に係るフラーレン誘導体は、フラーレン類の極性が良好であり、かつ溶解度が高く、しかも溶解度の調整も可能なので、このフラーレン誘導体を種々の反応の中間体として利用すること等が可能となる。なお、上記構造式(1)で表されるフラーレン誘導体は、上述した本発明のフラーレン誘導体の製造方法により、製造可能である。
501mgのC60を25mLのクロロベンゼンに溶解させ、25℃で攪拌しながら塩化鉄(III)を1.3g(C60に対して12当量)添加した。2時間後、HPLC分析によりC60が完全に反応したことを確認した。19時間後、付加反応がさらに進行していた。反応を停止し、反応液をシリカショートパスすることで不溶分を除去し、エバポレーターにて濃縮後、アセトン300mLを滴下して晶析を行い、803mgの茶褐色固体を得た。NMR分析及びMS分析により、これらのフラーレン誘導体はC60(4−Cl−C6H4)n(Cl)k、C60(4−Cl−C6H4)n(H)kの混合物であり、n=5〜12、k=1〜3であることが分析で確認された。図2にこのフラーレン誘導体の典型例を示す。ここで、メジャー(主生成物)はn=5、マイナー(副生成物)はn=6〜12であった。
理論値(C90H20Cl16):C 82.28%、H 1.53%、Cl 16.19%; 測定値:C 81.90%、H 1.66%、Cl 16.34%
(2)APPI−MS測定
理論値m/z(C90H20Cl5[M−Cl]−):1278.4; 測定値:1279.0
(3)1H−NMR(400MHz、CDCl3)測定
δ 7.02−7.08(m,4H,C6H4),7.23(d,J=8.8Hz,4H,C6H4),7.30(d,J=8.8Hz,4H,C6H4),7.40−7.49(m,4H,C6H4),7.61−7.80(m,4H,C6H4).
(4)13C−NMR(100MHz、CDCl3)測定
δ 57.28,59.96,62.65,75.85,128.06,128.94,129.00,129.36,129.49,130.85,133.90,134.33,134.36,134.99,136.50,141.13,142.58,142.62,142.86,143.01,143.34,143.36,144.12,144.18,144.28,144.44,144.56,144.71,145.75,146.95,147.09,147.61,148.07,148.25,148.43,148.53,148.54,148.57,149.41,150.26,151.90,153.19,155.23,155.81.
(5)単結晶X線構造解析
主生成分の単結晶のX線構造解析を行うことにより、この構造は、C60骨格のひとつのシクロペンタジエン環にCl基が結合し、シクロペンタジエン環に隣接した炭素にアリール基が5つ、パラ置換体の形で結合していることが判明した。
(1)〜(5)の結果より、単離した主生成物は図2に示すようなC60(4−Cl−C6H4)5Clの構造を有することが判明した。
203mgのC60を4mLのブロモベンゼンに溶解させ、25℃で攪拌しながら塩化鉄(III)を456mg(C60に対して10当量)を添加した。1時間後、HPLC分析により反応の進行を確認した(C60が0.2面積%残存)。11時間後、付加反応がさらに進行し、C60が完全に反応したことを確認した。反応を停止し、反応液をシリカショートパスすることで不溶分を除去し、エバポレーターにて濃縮後、メタノール200mLを滴下して晶析を行い、555mgの茶褐色固体を得た。NMR分析及びMS分析により、これらはC60(4−Br−C6H4)5H及びその他の5付加体、それ以上の多付加体を含む混合物であった。
1.00gのC60を50mLの1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解させ、25℃で攪拌しながら塩化鉄(III)を11.3g(C60に対して50当量)、1−クロロナフタレンを1.78g(C60に対して10当量)添加した。1時間後、HPLC分析により反応の進行を確認した(C60が9.3面積%残存)。21時間後、付加反応がさらに進行し、C60が完全に反応したことを確認した。
200mgのC60を4mLの1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解させ、25℃で攪拌しながら塩化鉄(III)を457mg(C60に対して10当量)、p−クロロアニソールを400mg(C60に対して10当量)添加した。1時間後、HPLC分析により反応の進行を確認した(C60が3.4面積%残存)。72時間後、付加反応がさらに進行したことを確認した(C60が2.3面積%残存)。反応を停止し、反応液をシリカショートパスすることで不溶分を除去し、エバポレーターにて濃縮後、ヘキサン300mLを滴下して晶析を行い、265mgの褐色固体を得た。NMR分析及びMS分析により、これらのフラーレン誘導体はC60(4−OMe−C6H4)n(Cl)k、C60(4−OMe−C6H4)n(H)k、C60(C6H3OMeCl)n(Cl)k、C60(C6H3OMeCl)n(H)k、及びこれらの異性体を含む混合物であり、n=4〜12、k=1〜3であることが分析で確認された。
1.00gのC60を50mLの1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解させ、25℃で攪拌しながら塩化鉄(III)を2.25g(C60に対して10当量)、m−クロロアニソールを3.96g(C60に対して20当量)添加した。2時間後、HPLC分析により反応の進行を確認した(C60が20.3面積%残存)。4時間後、HPLC分析を行ったが、これ以上反応は進行していなかった。
2.00gのC60を100mLの1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解させ、25℃で攪拌しながら塩化鉄(III)を4.50g(C60に対して10当量)、o−クロロアニソールを7.91g(C60に対して20当量)添加した。2時間後、HPLC分析により反応の進行を確認した(C60が17.8面積%残存)。24時間後、付加反応がさらに進行したことを確認した(C60が6.3面積%残存)。
1.00gのC60を50mLの1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解させ、25℃で攪拌しながら塩化鉄(III)を11.3g(C60に対して50当量)、o−クロロアニソールを1.98g(C60に対して10当量)添加した。1時間後、HPLC分析により反応の進行を確認した(C60が0.3面積%残存)。
500mgの混合フラーレン(C60を61.3重量%、C70を22.6重量%、高次フラーレン類を15.9重量%含む混合物)を25mLのクロロベンゼンに溶解させ、25℃で攪拌しながら塩化鉄(III)を1.30g(C60に対して19当量)を添加した。24時間後、C60およびC70が完全に反応したことを確認した。反応を停止し、反応液をシリカショートパスすることで不溶分を除去し、エバポレーターにて濃縮後、メタノール400mLを滴下して晶析を行い、696mgの茶褐色固体を得た。NMR分析及びMS分析により、これらはC60(4−Cl−C6H4)n(Cl)k、C60(4−Cl−C6H4)n(H)k、及びこれらの異性体を含む混合物C70(4−Cl−C6H4)m(Cl)j、C70(4−Cl−C6H4)m(H)j、及びこれらの異性体を含む混合物であり、n=4〜12、k=1〜3、m=1〜5、j=1〜2であることが確認された。
50mgのC60を4mLのトルエンに溶解させ、25℃で攪拌しながら塩化鉄(III)を100mg(C60に対して8.8当量)を添加した。2時間攪拌しても、未反応のC60が大量に残存していた。HPLC分析によりC60の残存率は82面積%であった。以上の実施例1〜7、比較例を含む実験例を表1に示す。
また、本発明方法によって製造されたフラーレン誘導体は加水分解反応等により、更に修飾が可能なため、任意の機能を付加することや、各種溶媒に対する溶解度をコントロールできる。これにより、反応中間体としても様々な用途に利用できる。
従来、フォトレジストは、被膜形成成分として(メタ)アクリル系、ポリヒドロキシスチレン系又はノボラック系の樹脂等の樹脂成分と、露光により酸を発生する酸発生剤や感光剤とを組み合わせた組成物が広く用いられている。本手法にて製造されたフラーレン誘導体は有機溶媒への溶解度が高いことにより、より高濃度でフォトレジストに複合化が可能である。また、フラーレン誘導体単独でもレジスト膜を形成することが可能である。
半導体製造等の分野では、例えば500μm以下の微細パターンを生産効率良く形成する方法としてナノインプリント法が検討されている。ナノインプリント法とは、微細パターンを有するモールドのパターンを転写層に転写する微細パターンの形成方法である。
このように本手法にて調整されたフラーレン誘導体をナノインプリント法に用いることにより、転写層の機械的強度、耐熱性及びエッチング耐性を向上させることが可能であることから、従来のナノインプリント材料の特性を大幅に改善することが可能となる。
近年、コンピュータの中央処理装置(CPU)用回路基盤には、樹脂薄膜を層間絶縁膜とする高密度かつ微細な多層配線に適した樹脂薄膜配線が適用されるようになってきた。将来のより高速な処理能力を有するコンピュータを実現するには、高密度かつ繊細な多層配線を活かし、かつ信号の高速伝播に適した低誘電率絶縁材料の開発が求められている。本手法にて製造されたフラーレン誘導体は溶解度を高く維持できることにより、より高濃度で他の材料と複合化することが可能である。また、フラーレン誘導体単独で成膜することも可能である。この際、本発明の製造方法で製造されたフラーレン誘導体は、フラーレン構造が本質的に有する高抵抗、低誘電率の性質を保持しており、複合化して用いる際にはフィラーとしての機械的強度の向上効果を有することができ、これにより、従来にない優れた性能の低誘電率の層間絶縁膜の実現が可能となる。
有機太陽電池への応用も可能である。この分野においては、シリコン系の無機太陽電池と比較して、優位な点が多数あるもののエネルギー変換効率が低く、実用レベルに十分には達していないことが多い。この点を克服するためのものとして、最近、電子供与体である導電性高分子と、電子受容体であるフラーレン並びにフラーレン誘導体とを混合した活性層を有するバルクヘテロ接合型有機太陽電池が提案されている。このバルクヘテロ接合型有機太陽電池では、導電性高分子とフラーレン誘導体それぞれとが分子レベルで混じり合い、その結果非常に大きな界面を作り出すことに成功し、変換効率の大幅な向上が実現されている。
さらにこの高溶解性を利用し、本手法にて製造されたフラーレン誘導体は、導電性高分子等を含有した電子供与体層との層分離制御や、誘導体分子の整列配向性及び細密充填性などのモルフォロジー制御などを可能にし、これにより特性の向上が実現できる上、デバイス設計において高い柔軟性を与える。また、本手法にて製造されたフラーレン誘導体を用いれば、製造上も通常の印刷法やインクジェットによる印刷、更にはスプレー法等により、低コストで容易に大面積化を実現する事が可能である。
光センサー、整流素子等への応用が期待できる電界効果トランジスタの有機材料として、フラーレン及びフラーレン誘導体を使用することが研究されている。一般的にフラーレン及びフラーレン誘導体を半導体に用いて電界効果トランジスタを作製した場合、当該電界効果トランジスタはn型のトランジスタとして機能することが知られている。本手法にて製造されたフラーレン誘導体は、上記用途で使用される有機溶媒への溶解度が高いことにより、塗布による成膜が容易であり、また、n型半導体としてのフラーレンの本質的な性質は保持している。これにより、本手法にて製造されたフラーレン誘導体は、低コスト、高性能な有機半導体として期待できる。
Claims (8)
- フラーレン類と、周期律表8、9又は10族中の少なくとも1種の金属化合物と、H−R−X(Xは、F、Cl、Br、Iからなる群から選択されるいずれか1)で表される化合物を作用させることにより、フラーレン骨格に置換基R´を4つ以上付加することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
ここで、R(置換基を有する場合を含む)はアリーレン基又はアルキレン基を、Hは水素を、R´はR、RH、又はRXを示す。 - 請求項1記載のフラーレン誘導体の製造方法において、前記金属化合物が鉄化合物であることを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
- 請求項1又は2記載のフラーレン誘導体の製造方法において、前記金属化合物が少なくとも1のハロゲン原子を含むことを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体の製造方法において、前記金属化合物の量は、前記フラーレン類のモル量に対して0.01〜1000モル量の範囲にあることを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体の製造方法において、前記H−R−Xで表される化合物の量は、前記フラーレン類のモル量に対して0.01〜1000モル量の範囲にあることを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体の製造方法において、前記フラーレン類は予め溶媒に溶かした状態で、前記金属化合物と、前記H−R−Xで表される化合物を作用させることを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体の製造方法において、前記フラーレン類に前記金属化合物、及び前記H−R−Xで表される化合物を作用させる際の温度が、−30℃〜200℃の範囲にあることを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
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