JP2009125894A - 研磨パッドの製造方法 - Google Patents

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【課題】スラリ保持性を確保しつつ開孔の目詰まりを抑制し寿命性能を向上させることができる研磨パッドの製造方法を提供する。
【解決手段】研磨パッドは、主成分のプレポリマと、予めポリオール化合物に水を分散希釈させた分散液と、ポリアミン化合物とをそれぞれ準備する準備工程、プレポリマ、分散液、ポリアミン化合物、および、非反応性の気体を混合した混合液を調製する混合工程、混合液を型枠に注型する注型工程、型枠内で発泡、硬化させて発泡体を形成する硬化成型工程、発泡体をシート状にスライスして研磨パッドを形成するスライス工程を経て製造される。準備するプレポリマの温度50℃における粘度を3000〜30000mPa・sに設定する。非反応性気体を0.2〜0.8MPaの圧力で供給する。混合液中に大気泡が生じやすくなり、発泡体形成時に発泡の移動が抑制される。
【選択図】なし

Description

本発明は研磨パッドの製造方法に係り、特に、イソシアネート基含有化合物を主成分とした研磨パッドの製造方法に関する。
半導体ウェハや液晶ディスプレイ用ガラス基板等の材料(被研磨物)では、表面の平坦性が求められるため、研磨パッドを使用した研磨加工が行われている。半導体ウェハでは、半導体回路の集積度が急激に増大するにつれて高密度化を目的とした微細化や多層配線化が進み、表面を一層高度に平坦化する技術が重要となっている。一方、液晶ディスプレイ用ガラス基板では、液晶ディスプレイの大型化に伴い、表面のより高度な平坦性が要求されている。
半導体ウェハやガラス基板の表面を平坦化する方法としては、一般的に化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Planarization、以下、CMPと略記する。)法が用いられている。CMP法では、被研磨物の表面(加工面)が研磨パッドに押し付けられた状態で、研磨粒子をアルカリ溶液に分散させたスラリが供給され加工面が研磨される。スラリ中の研磨粒子による機械的作用と、アルカリ溶液による化学的作用とで研磨される。加工面に要求される平坦性の高度化に伴い、CMP法に求められる研磨精度、換言すれば、研磨パッドに要求される性能も高まっている。
CMP法では、研磨パッドとして硬質発泡ポリウレタンが広く使用されている。このような研磨パッドの製造では、通常、イソシアネート基含有化合物を含むプレポリマと、活性水素化合物を含む硬化剤とが反応により硬化されて発泡体が成型される。得られた発泡体がシート状にスライスされ研磨パッドが形成される。発泡体内部に発泡が形成されるため、スライスにより形成される研磨パッドの表面には、研磨加工時にスラリを保持することができる開孔が形成される。
硬質発泡ポリウレタンの発泡体を成型するときに内部に発泡を形成するために、成型時に水を添加することで発泡を形成する技術が開示されている。例えば、発泡径400μm未満の小発泡の平均径を20〜100μmとし、発泡径400〜1000μmの大発泡を10〜100個/100cm形成してスラリ保持性能を向上させた研磨パッドの技術が開示されている(特許文献1参照)。この研磨パッドでは、大発泡が形成されているため、スラリ保持性の向上が期待できる。
特開2006−210657号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、水の添加により発泡径の異なる2種類の発泡が形成されるものの、水のみの添加では水の分散状態を均等化することが難しい、という問題がある。このため、発泡体内部で発泡に偏りが生じやすく、とりわけ、大発泡の形成にバラツキ(配置ムラ)が生じる。1つの発泡体をスライスすることで複数の研磨パッドが形成されることを考えると、各研磨パッド間で研磨性能にバラツキが生じることとなる。また、小発泡では研磨加工時にスラリや研磨屑で目詰まりが生じやすいため、研磨性能にバラツキが生じ研磨パッドの寿命低下を招くこととなる。目詰まりを解消するために、研磨加工を中断して表面をドレッシング(表面サンディング)することもできるが、研磨の作業性が低下することとなる。
本発明は上記事案に鑑み、スラリ保持性を確保しつつ開孔の目詰まりを抑制し寿命性能を向上させることができる研磨パッドの製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、イソシアネート基含有化合物を主成分とした研磨パッドの製造方法であって、イソシアネート基含有化合物と、予めポリオール化合物に水を1重量%〜6重量%の割合で分散希釈させた分散液と、ポリアミン化合物とをそれぞれ準備する準備ステップと、前記イソシアネート基含有化合物、前記分散液および前記ポリアミン化合物に対して非反応性の気体を供給して前記イソシアネート基含有化合物、分散液、ポリアミン化合物および非反応性の気体を混合した混合液を調製し、前記混合液から発泡体を形成する発泡体形成ステップと、前記発泡体をスライスして研磨パッドを形成するスライスステップと、を含み、前記準備ステップで準備するイソシアネート基含有化合物の温度50℃における粘度が3000mPa・s〜30000mPa・sであり、前記発泡体形成ステップで前記非反応性の気体を0.2MPa〜0.8MPaの圧力で供給することを特徴とする。
本発明では、発泡体形成ステップで非反応性の気体を0.2MPa〜0.8MPaの圧力で供給することで、混合液中で大気泡が生じると共に、微小な気泡が生じることで分散液中の水が混合液中で略均等に分散してイソシアネート基含有化合物と反応することにより小発泡が略均等に生じ、準備ステップで準備されるイソシアネート基含有化合物の温度50℃における粘度が3000mPa・s〜30000mPa・sに設定することで、混合液中で生じた大気泡および小発泡の移動が抑制され、発泡体の内部に大気泡および小発泡の空隙が略均等に分散して形成されるので、スライスステップで発泡体をスライスすることにより研磨パッドの表面に大きさの異なる開孔が略均等に形成されることから、研磨加工時にスラリ保持性を確保しつつ開孔の目詰まりを抑制できるため、寿命を向上させることができる。
本発明において、イソシアネート基含有化合物が平均分子量1000以上の長鎖ジオール化合物および平均分子量500以下の短鎖ジオール化合物と、ジイソシアネート化合物との反応生成物であり、短鎖ジオール化合物が分子中に分岐を有しているものを含んでいることが好ましい。このとき、長鎖ジオール化合物および短鎖ジオール化合物がモル比5/1〜1/5の割合で配合されていてもよい。また、分散液中のポリオール化合物をポリプロピレングリコールとすれば、研磨パッドの耐湿熱性を向上させることができる。準備ステップで分散液中に分散希釈させる水の量をイソシアネート基含有化合物の重量1kgに対して0.5g〜6gの割合とすれば、水の量が制限されるため、水による大きな発泡の形成や偏りを抑制することができる。
また、本発明において、非反応性の気体がイソシアネート基含有化合物、分散液およびポリアミン化合物の合計重量1kgに対して0.5L〜3.4Lの割合で混合液に混合されるようにすれば、混合液中の気体の量が制限されるため、極端に大きな発泡の形成を抑制することができる。発泡体形成ステップにおいて、剪断速度7,000〜55,000/秒、剪断回数300〜10,000回の条件で混合液を調製することが好ましい。また、スライスステップで複数枚の研磨パッドが形成され、各研磨パッドの表面に、開孔径が500μmより小さく平均開孔径が30μm〜200μmの小開孔が形成され、かつ、開孔径が500μm以上の大開孔が5個/cm以上形成されてもよい。また、スライスステップで形成される研磨パッドが、いずれも温度20℃の水に一定時間浸漬したときの硬度に対する、温度70℃の水に同じ一定時間浸漬したときの硬度の割合を80%以上とすれば、スラリを使用した研磨加工時に摩擦等で発熱しても湿潤状態での硬度が変化しにくいため、研磨性能の低下を抑制することができる。
本発明によれば、発泡体形成ステップで非反応性の気体を0.2MPa〜0.8MPaの圧力で供給することで、混合液中で大気泡が生じると共に、微小な気泡が生じることで分散液中の水が混合液中で略均等に分散してイソシアネート基含有化合物と反応することにより小発泡が略均等に生じ、準備ステップで準備されるイソシアネート基含有化合物の温度50℃における粘度が3000mPa・s〜30000mPa・sに設定することで、混合液中で生じた大気泡および小発泡の移動が抑制され、発泡体の内部に大気泡および小発泡の空隙が略均等に分散して形成されるので、スライスステップで発泡体をスライスすることにより研磨パッドの表面に大きさの異なる開孔が略均等に形成されることから、研磨加工時にスラリ保持性を確保しつつ開孔の目詰まりを抑制できるため、寿命を向上させることができる、という効果を得ることができる。
以下、図面を参照して、本発明を適用した研磨パッドの実施の形態について説明する。
(研磨パッド)
図1に示すように、研磨パッド1は、硬質発泡タイプのポリウレタンシートであり、イソシアネート基含有化合物を主成分としている。研磨パッド1は、研磨加工時に被研磨物の加工面に研磨液(スラリ)を介して当接する研磨面Pを有している。研磨パッド1は、イソシアネート基含有化合物と、予めポリオール化合物に水を分散希釈させた分散液と、ポリアミン化合物と、イソシアネート基含有化合物、分散液およびポリアミン化合物に対して非反応性の気体と、を混合した混合液を型枠に注型し硬化させた発泡体をスライスすることで形成されている。すなわち、研磨パッド1は、乾式成型で形成されている。
研磨パッド1の内部には、乾式成型時に混合された分散液中の水と、イソシアネート基含有化合物、分散液およびポリアミン化合物に対して非反応性の気体とにより、断面略円形状の小発泡3と、小発泡3より孔径の大きい大発泡5とが略均等に分散して形成されている。研磨パッド1が発泡体のスライスで形成されているため、研磨面Pでは小発泡3の一部および大発泡5の一部が開孔しており、それぞれ開孔4、開孔6が形成されている。研磨面Pに形成された開孔4は、開孔径の平均値が30〜200μmの範囲に調整されている。一方、開孔6は、開孔径が500μm以上の大開孔であり、開孔数が5個/cm以上形成されるように調整されている。研磨パッド1の厚さは、1.0〜2.5mmの範囲に設定されている。この研磨パッド1は、温度20℃の水に一定時間浸漬したときの硬度に対する、温度70℃の水(熱湯)に同じ一定時間浸漬したときの硬度の割合で定義される湿潤硬度保持率が85%以上に設定されている。また、研磨パッド1は、A硬度が85度以上、かさ密度が0.45〜0.55g/cmに設定されている。
また、研磨パッド1は、研磨面Pと反対側の面に、研磨機に研磨パッド1を装着するための両面テープが貼り合わされている。両面テープは、基材7の両面に図示を省略した接着剤層が塗着されている。一面側の接着剤層が研磨パッド1に貼り合わされており、他面側(図1の最下面側)が剥離紙8で覆われている。基材7には、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製フィルムが使用されている。
(研磨パッドの製造)
研磨パッド1は、図2に示す各工程を経て製造される。すなわち、イソシアネート基含有化合物と、分散液と、ポリアミン化合物とをそれぞれ準備する準備工程(準備ステップ)、イソシアネート基含有化合物、分散液、ポリアミン化合物、および、これら各成分に対して非反応性の気体を混合して混合液を調製する混合工程(発泡体形成ステップの一部)、混合液を型枠に注型する注型工程(発泡体形成ステップの一部)、型枠内で発泡、硬化させて発泡体を形成する硬化成型工程(発泡体形成ステップの一部)、発泡体をシート状にスライスして複数枚の研磨パッド1を形成するスライス工程(スライスステップ)、研磨パッド1と両面テープとを貼り合わせるラミネート工程を経て製造される。以下、工程順に説明する。
(準備工程)
準備工程では、イソシアネート基含有化合物と、分散液と、ポリアミン化合物とをそれぞれ準備する。
イソシアネート基含有化合物としては、分子内に2つの水酸基を有する平均分子量1000以上の長鎖ジオール化合物および平均分子量500以下の短鎖ジオール化合物と、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物とを反応させることで生成したイソシアネート末端ウレタンプレポリマ(以下、単に、プレポリマと略記する。)を用いることが好ましく、短鎖ジオール化合物が分子中に分岐を有しているものを含んでいることが好ましい。分岐を有する短鎖ジオール化合物を含むことで、イソシアネート基含有化合物の粘度を高粘度化することができる。分岐構造としては、フェニル基やアルキル基等を挙げることができる。長鎖ジオール化合物および短鎖ジオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させるときに、イソシアネート基の総モル量を水酸基の総モル量より大きくすることで、プレポリマを得ることができる。生成したプレポリマの末端イソシアネート基が分散液中の水と反応して生じるガスにより小発泡3が形成される。
得られるプレポリマのイソシアネート基当量(以下、NCO当量と略記する。)は、300に満たないと混合工程での反応が早くなり過ぎて、注型工程への送液中に硬化してしまうおそれがあり、反対に700を超えると逆に反応が遅くなり過ぎて、硬化成型工程で気泡形成に偏りが生じてしまう。このため、長鎖ジオール化合物および短鎖ジオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させるときの配合量を調整することで、NCO当量を300〜700に設定することが好ましい。また、プレポリマの粘度が高すぎると、流動性が悪くなり混合工程で略均一に混合することが難しくなる。温度を上昇させて粘度を低くするとポットライフが短くなり、却って混合斑が生じ、得られる発泡体に形成される小発泡3、大発泡5の大きさにバラツキが生じる。反対にプレポリマの粘度が低すぎると混合液中で気泡が移動してしまい、得られる発泡体に略均等に分散した小発泡3、大発泡5を形成することが難しくなる。このため、プレポリマは、温度50℃における粘度を高粘度領域である3000〜30000mPa・s(3〜30Pa・s)の範囲に設定することが好ましく、4000〜27000mPa・s(4〜27Pa・s)の範囲に設定することがより好ましく、5000〜25000mPa・s(5〜25Pa・s)の範囲に設定することが更に好ましい。このことは、例えば、プレポリマの分子量(重合度)を変えることで粘度を設定することができる。プレポリマは加熱され流動可能な状態で使用される。
プレポリマの生成に用いられるジイソシアネート化合物としては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(以下、2,6−TDIと略記する。)、2,4−トリレンジイソシアネート(以下、2,4−TDIと略記する。)、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン−1,4−ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等を挙げることができる。また、これらのジイソシアネート化合物の二種以上を併用してもよい。
プレポリマの生成に用いられる長鎖ジオール化合物としては、ポリプロピレングリコール(以下、PPGと略記する。)、ポリテトラメチレングリコール(以下、PTMGと略記する。)等を挙げることができ、これらの二種以上を併用してもよいが、プレポリマの粘度調整を考慮すれば、平均分子量1000以上の長鎖ジオール化合物が好ましく、特に平均分子量を1500〜2500の範囲とすることがより好ましい。一方、プレポリマの生成に用いられる短鎖ジオール化合物としては、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等を挙げることができ、これらの二種以上を併用してもよいが、本発明の所望の効果を得るには、平均分子量500以下の短鎖ジオール化合物であって、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の分岐を有する短鎖ジオール化合物を用いることが好ましい。分岐を有する短鎖ジオール化合物を用いることで、プレポリマの生成過程で重合斑が生じにくく、プレポリマの凝集性を抑制でき、プレポリマがより高重合度となり、強固な三次元構造を呈するため、混合工程で生じた気泡を保持しやすくすることができる。このとき、長鎖ジオール化合物および短鎖ジオール化合物の配合割合は、プレポリマの粘度、NCO当量を上述した範囲に設定するため、モル比で5/1〜1/5とすることが好ましい。
また、分散液の調製に用いられるポリオール化合物としては、ジオール化合物、トリオール化合物等の化合物であればよく、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール等の低分子量のポリオール化合物、PTMG、ポリエチレングリコール、PPG等の高分子量のポリオール化合物のいずれも使用することができる。プレポリマやポリアミン化合物の溶液の粘度と同程度にすることで混合工程において水を均一に分散させやすくなるため、数平均分子量500〜2000のポリオール化合物を用いることが好ましく、特に、数平均分子量1000〜2000のPPGが分散性や得られる研磨パッドの耐熱性の面からより好ましい。本例では、数平均分子量約2000のPPGを使用し、これに水を0.5〜6重量%の割合で分散希釈させて分散液を調製する。分散液の調製時には、一般的な攪拌装置を使用して攪拌混合すればよく、水が略均等に分散希釈されていればよい。使用する水としては、特に制限はないが、不純物等の混入を回避するため、蒸留水を使用することが好ましい。また、分散液の量は、次工程の混合工程で混合するプレポリマの重量1kgに対して水の量が0.5〜6gの割合となるように準備することが好ましい。水の量が少なすぎると得られる発泡体に形成される発泡の大きさが小さすぎることとなり、反対に多すぎると極端に大きな発泡が形成されることとなる。
準備工程で準備するポリアミン化合物としては、脂肪族や芳香族のポリアミン化合物を使用することができるが、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(以下、MOCAと略記する。)またはMOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物を使用することが好ましい。MOCAまたはMOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物は、約120℃以上に加熱し溶融させた状態で用いられるが、必要に応じて、上述したポリオール化合物にMOCAまたはMOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物を溶解させて、MOCAまたはMOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物の融点より低い温度で用いてもよい。また、MOCAおよびMOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物を、任意の割合で混合して用いてもよい。
(混合工程、注型工程、硬化成型工程)
図2に示すように、混合工程では、準備工程で準備したプレポリマ、分散液およびポリアミン化合物のMOCAを混合すると同時に、プレポリマ、分散液およびMOCAに対して非反応性の気体(以下、非反応性気体と略記する。)を吹き込み、混合液を調製する。注型工程では混合工程で調製された混合液を型枠に注型し、硬化成型工程では型枠内で発泡、硬化させて発泡体を成型する。本例では、混合工程、注型工程、硬化成型工程を連続して行う。
図3に示すように、混合工程では混合機20で混合液が調製され、注型工程では調製された混合液が混合機20から連続して型枠25に注型され、硬化成型工程で硬化させることにより発泡体が成型される。混合機20は、攪拌翼14が内蔵された混合槽12を備えている。混合槽12の上流側には、第1成分としてプレポリマ、第2成分としてMOCA、第3成分として分散液をそれぞれ収容した供給槽、および、混合槽12内に非反応性気体を供給する供給装置16が配置されている。各供給槽からの供給口は混合槽12の上流端部に接続されており、供給装置16からの非反応性気体の供給口は混合槽12の全体の長さに対して上流端部からおよそ1/3の位置に接続されている。攪拌翼14は混合槽12内の略中央部で上流側から下流側までにわたって配置された回転軸に固定されている。回転軸の回転に伴い攪拌翼14が回転し、第1成分、第2成分、第3成分および非反応性気体を剪断するようにして混合する。得られた混合液は混合槽12の下流端部に配置された排出口から型枠25に注型される。型枠25の大きさは、本例では、1050mm(長さ)×1050mm(幅)×50mm(厚さ)に設定されている。
第1成分のプレポリマ、第2成分のMOCAに代表されるポリアミン化合物の多くがいずれも常温で固体または流動しにくい状態のため、それぞれの供給槽は各成分が流動可能となるように加温されている。また、非反応性気体中に含まれる水分が混合槽12内の反応に関与することを防止するため、供給装置16からの非反応性気体は図示しない水分除去装置で水分が除去されている。この非反応性気体は圧力が0.2〜0.8MPaに調整されて混合槽12に供給される。圧力が0.2MPaに満たないと大発泡5を形成することができなくなり、反対に0.8MPaを超えると混合液を混合槽12から排出し型枠25に注型するときに混合液が飛散してしまうこととなる。非反応性気体を上述した圧力に調整することで、混合液中に孔径500μm以上の大気泡が生じる。また、供給された非反応性気体の一部が混合槽12内で攪拌翼14の回転により分散されて微細な気泡となり、この気泡が水を含む分散液を混合液中で略均等に分散させるバブリング効果を発揮する。非反応性気体の供給量が少なすぎるとバブリング効果が不十分となり水の分散状態に偏りが生じやすくなり、反対に多すぎると極端に大きな気泡が生じてしまう。このため、非反応性気体の供給量は、プレポリマ、分散液、ポリアミン化合物の合計重量1kgに対して0.5〜3.4Lの割合となるように調整することが好ましい。非反応性気体としては、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等を挙げることができる。
第1成分、第2成分、第3成分が混合槽12に供給され、攪拌翼14によりある程度混合された段階で非反応性気体が供給される。攪拌翼14の剪断速度、剪断回数を調整することで、各成分および非反応性気体が略均等に混合され混合液が調製される。攪拌翼14の剪断速度が小さすぎると、発泡体中に形成される小発泡3の大きさが大きくなりすぎる。反対に剪断速度が大きすぎると、攪拌翼14および混合液間の摩擦による発熱で温度が上昇し粘度が低下するため、混合液中の気泡が(成型中に)移動してしまい、発泡体中に形成される小発泡3、大発泡5の分散状態にバラツキが生じやすくなる。一方、剪断回数が少なすぎると生じる気泡の大きさにムラ(バラツキ)が生じやすく、反対に多すぎると温度上昇で粘度が低下し、小発泡3、大発泡5が略均等に形成されなくなる。また、剪断速度が大きすぎるときや剪断回数が多すぎるときには、大発泡5の大きさが小さくなってしまう。このため、混合工程では、剪断速度を7,000〜55,000/秒の範囲、剪断回数を300〜10,000回の範囲に設定し、混合する。混合機20での混合時間(滞留時間)は、混合液の流量(最大1リットル/sec)にもよるが、およそ1秒程度であり、例えば、注液工程で100kg程度の型枠25に混合液を注液するのに要する時間はおよそ1〜2分程度となる。なお、剪断速度、剪断回数は次式により求めることができる。すなわち、剪断速度(/秒)=攪拌翼14の翼先端の直径(mm)×円周率×攪拌翼14の回転数(rpm)÷60÷攪拌翼14の翼先端と混合槽12の内壁とのクリアランス(mm)、剪断回数(回)=攪拌翼14の回転数(rpm)÷60×混合槽12中での混合液の滞留時間(秒)×攪拌翼14の翼の数、によりそれぞれ求めることができる。
注液工程で、型枠25に混合液を注液するときは、混合機20からの混合液を混合槽12の排出口から排出し、例えばフレキシブルパイプを通じて、型枠25の対向する2辺間(例えば、図3の左右間)を往復移動する断面三角状の不図示の注液口に導液する。注液口を往復移動させながら、排出口の端部(フレキシブルパイプの端部)を注液口の移動方向と交差する方向に往復移動させる。混合液は、型枠25に略均等に注液される。
硬化成型工程では、注液された混合液を型枠25内で反応させ発泡体を形成させる。このとき、プレポリマとMOCAとの反応によりプレポリマが架橋硬化する。この架橋硬化の進行と同時に、プレポリマのイソシアネート基と分散液に分散希釈された水とが反応することで、二酸化炭素が発生する。架橋硬化が進行しているため、発生した二酸化炭素が外部に抜け出すことなく、非反応性気体と共に小発泡3を形成する。また、混合液中には、混合工程で供給した非反応性気体により生じた孔径500μm以上の大気泡が包含されている。プレポリマの架橋硬化の進行速度が速く、粘度が高く設定されていることから、大気泡が外部に抜け出すことなく、発泡体中に大発泡5を形成する。なお、小発泡3、大発泡5は、断面形状が、円形状、楕円形状等の種々の形状で形成される。
(スライス工程)
図2に示すように、スライス工程では、硬化成型工程で得られた発泡体をシート状にスライスして複数枚の研磨パッド1を形成する。スライスには、一般的なスライス機を使用することができる。スライス時には発泡体の下層部分を保持し、上層部から順に所定厚さにスライスする。スライスする厚さは、本例では、1.0〜2.5mmの範囲に設定されている。また、本例で用いた厚さが50mmの型枠25で成型した発泡体では、例えば、発泡体の上層部および下層部の約10mm分をキズ等の関係から使用せず、中央部の約30mm分から10〜25枚の研磨パッド1を形成する。硬化成型工程で内部に小発泡3、大発泡5が略均等に形成された発泡体が得られるため、スライス工程で形成される複数枚の研磨パッド1では、平均開孔径の異なる2種類の開孔4、開孔6が形成される。開孔4はいずれも開孔径が500μmに満たない開孔で、平均開孔径がいずれも30〜200μmの範囲となり、開孔6は開孔径が500μm以上の大開孔で、開孔数が5個/cm以上となる。開孔4の平均開孔径が30μmを下回ると、研磨加工時に開孔が目詰まりしやすくなるため、研磨パッドの寿命低下を招きやすく、反対に200μmを上回ると、略均一な開孔径の制御が難しくなる。開孔4の平均開孔径は、50〜180μmの範囲がより好ましい。一方、開孔6の開孔数が5個/cmに満たないと、研磨加工時のスラリ循環性能を低下させ研磨効率を低下させ、開孔4が目詰まりしやすくなる。研磨パッド1の硬度やかさ密度を上述した範囲に設定することを考慮すれば、開孔6の開孔数を10〜30個/cmとすることが好ましい。
(ラミネート工程)
ラミネート工程では、スライス工程で形成された研磨パッド1と両面テープとが貼り合わされる。そして、円形等の所望の形状、サイズに裁断した後、汚れや異物等の付着がないことを確認する等の検査が行われる。
被研磨物の研磨加工を行うときは、研磨機の研磨定盤に研磨パッド1を装着する。研磨定盤に研磨パッド1を装着するときは、剥離紙8を取り除き、露出した接着剤層で研磨定盤に接着固定する。被研磨物を加圧し、研磨粒子を含む研磨液(スラリ)を供給しながら研磨定盤を回転させることで、被研磨物の加工面(被研磨面)が研磨加工される。
(作用等)
次に、本実施形態の研磨パッド1および研磨パッド1の製造方法の作用等について説明する。
本実施形態では、混合工程で、非反応性気体が供給されてプレポリマ、分散液、ポリアミン化合物および非反応性気体が混合された混合液が調製される。このとき、プレポリマの温度80℃における粘度が3000〜30000mPa・sに設定されており、非反応性気体が0.2〜0.8MPaの圧力で供給される。非反応性気体により混合液中で微細気泡が生じ、この微細気泡のバブリング効果により分散液中の水が混合液中で略均等に分散される。換言すれば、分散液中のポリオール化合物は、混合液中で水を分散させやすくする役割を果たしている。予め水をポリオール化合物に分散希釈しておくと共に、非反応性気体により生じた微細気泡で分散液が混合液中に分散されるため、混合液中の水の分散状態を均等化することができる。このため、水とプレポリマのイソシアネート基とが反応して発生する二酸化炭素も略均等に分散される。また、非反応性気体が上述した圧力で供給されるため、混合液中に大気泡が生じやすくなる。この大気泡が上述した微細気泡のバブリング効果により略均等に分散される。更に、プレポリマが上述した粘度に設定されているため、発泡体形成時に小発泡3、大発泡5の移動が抑制される。従って、得られる発泡体の内部には、大きさが制御され略均等に分散した小発泡3、大発泡5を形成することができる。この発泡体をスライス工程でスライスすることにより表面に平均開孔径の異なる開孔4、開孔6が略均等に形成された複数枚の研磨パッド1を得ることができる。得られた複数の研磨パッド1では、いずれも、研磨加工時にスラリ保持性が確保されつつ開孔の目詰まりが抑制されるので、長期にわたり研磨性能を維持して寿命を向上させることができる。
また、本実施形態では、プレポリマを構成する短鎖ジオール化合物が分子中に分岐を有しているものを含んでもよい。分岐を有する短鎖ジオール化合物を含むことで、プレポリマの生成過程で重合斑が生じにくく、プレポリマの凝集性を抑制でき、プレポリマがより高重合度となるので、強固な三次元構造を呈することから、混合工程で生じた気泡を保持しやすくすることができる。更に、本実施形態では、ジオール化合物として、長鎖ジオール化合物および短鎖ジオール化合物が配合されている。長鎖ジオール化合物と短鎖ジオール化合物とをモル比で5/1〜1/5の割合で配合することにより、プレポリマの粘度やNCO当量を上述した範囲に設定することができる。
更に、本実施形態では、混合工程、注型工程、硬化成型工程が連続して行われるため、混合液中に略均等に分散された水および非反応性気体により形成される発泡が再凝集等で不均一となる前に硬化反応が進行する。このため、得られる発泡体内部に小発泡3、大発泡5を略均等に分散させて形成することができる。
また更に、本実施形態では、分散液中の水の量がプレポリマの重量1kgに対して0.5〜6gの割合に設定される。このため、混合液中に分散される水の量が制限されるので、極端に大きな発泡の形成や偏りを抑制することができる。これにより、スライスされた複数の研磨パッド1では、開孔4、開孔6の平均開孔径をいずれも上述した範囲とすることができる。従って、開孔4で研磨加工時にスラリが保持されると共に、開孔6では研磨屑を効率よく排出できるので、研磨効率の向上を図ることができる。とりわけ、平均開孔径が500μm以上の開孔6ではスラリの循環量が増大するので、研磨効率を向上させることができる。このような研磨パッド1は、平坦性の向上を目指す二次(仕上げ)研磨加工に比べて、研磨効率の向上を目指す一次(粗)研磨加工に好適に使用することができる。
更にまた、混合工程で混合槽12に供給される非反応性気体の量をプレポリマ、分散液およびポリアミン化合物の合計重量1kgに対して0.5〜3.4Lの割合とすることで、混合液中の非反応性気体の量が制限されるので、得られる発泡体の内部で極端に大きな発泡の形成を抑制することができる。更に、混合工程で剪断速度、剪断回数を上述した条件に設定することで、分散液中の水が略均等に分散されることから、小発泡3の分散状態を均等化することができる。
また、本実施形態では、内部に小発泡3、大発泡5が略均等に形成された発泡体が得られる。このため、スライス工程で形成される複数枚の研磨パッド1では、それぞれの表面に形成された開孔4の平均開孔径の差、開孔6の開孔数の差、および、かさ(見掛け)密度の差をいずれも平均値に対し±3%の範囲内とすることができる。開孔径や開孔数のバラツキが大きくなると、研磨加工時にスラリ中の研磨粒子や研磨屑等が開孔4内に堆積することで局所的に目詰まりが発生しやすくなり、被研磨物の平坦性を低下させる。また、かさ密度が小さくなると硬度が小さく(柔らかく)なりすぎるため、被研磨物の平坦性を向上させることが難しくなる。反対にかさ密度が大きくなると硬度が高くなりすぎるため、被研磨物にキズが発生しやすくなり、研磨効率が低下する。本実施形態では、開孔4の平均開孔径、開孔6の開孔数が各研磨パッド1でそれぞれ同等となるので、局所的な目詰まりを抑制することができる。また、各研磨パッド1中で発泡の占める空間の割合や硬度が同等となるので、研磨性能にバラツキが生じることを抑制することができる。
更に、分散液に配合されたポリオール化合物は、混合液中で水を分散させやすくする役割を果たすが、混合液中に存在しているため、ポリオール化合物の水酸基がプレポリマのイソシアネート基と反応してウレタン結合を形成することで、湿潤状態における発泡体の硬度変化を生じにくくする役割も果たす。このため、得られる複数枚の研磨パッド1では、いずれも湿潤硬度保持率が85%以上となる。特に、ポリオール化合物としてポリプロピレングリコールを用いることで、湿潤硬度保持率を向上させることができる。従って、湿潤状態での熱安定性が向上するので、研磨加工時に摩擦等で発熱しても研磨パッド1の硬度変化が抑制され、研磨性能の安定化を図ることができる。
また更に、研磨パッド1が、上述したとおり、小発泡3、大発泡5の分散状態を均等化させて成型した発泡体をスライスして形成されるため、研磨効率を向上させることができ、熱安定性(湿潤硬度保持率)にも優れ、目詰まりしにくく寿命も向上させることができる。このため、発泡体の大きさを大きくする(型枠25を大きくする)ことで、大型化(面積、厚さ)の要求に対して容易に対応することができる。
なお、本実施形態では、プレポリマとして、長鎖ジオール化合物および短鎖ジオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させたイソシアネート末端ウレタンプレポリマを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、長鎖ジオール化合物、短鎖ジオール化合物に代えて水酸基やアミノ基等を有する活性水素化合物を用い、ジイソシアネート化合物に代えてポリイソシアネート化合物やその誘導体を用い、これらを反応させることで得るようにしてもよい。また、多種のイソシアネート末端プレポリマが市販されていることから、市販のものを使用することも可能である。また、本実施形態では、長鎖ジオール化合物および短鎖ジオール化合物を配合して用いる例を示したが、長鎖ジオール化合物のみ、短鎖ジオール化合物のみを用いてもよい。プレポリマの粘性や反応性を調整することを考慮すれば、長鎖および短鎖のジオール化合物を配合して用いることが好ましい。特に、分子中に分岐を有する短鎖ジオール化合物を用いることで、プレポリマの生成過程で重合斑が生じにくく、プレポリマの凝集性を抑制できるため、プレポリマがより高重合度となる。これにより、プレポリマが強固な三次元構造を呈するため、混合工程で生じた気泡を保持しやすくすることができる。
また、本実施形態では、ポリオール化合物に水を分散希釈した分散液を調製する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、分散液がポリオール化合物および水以外に、例えば、硬化成型に際し必要な添加剤等の成分を含むようにしてもよい。更に、本実施形態では、非反応性気体を混合槽12に供給する例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、予め非反応性気体をプレポリマと混合しておき、混合槽12に供給するようにしてもよい。このことは、供給装置16から第1成分の供給槽に非反応性気体を供給するようにすることで実現することができる。また、非反応性気体をプレポリマと混合しながら混合槽12に供給するようにしてもよい。更に、本実施形態では、イソシアネート基含有化合物、分散液、ポリアミン化合物および非反応性気体を混合した混合液を用いているが、必要に応じ、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等のフィラー、顔料、界面活性剤、触媒等の添加剤を適宜加えてもよい。
更に、本実施形態では、特に言及していないが、スラリの供給や研磨屑の排出を促進することを考慮して、研磨パッド1の研磨面Pに溝加工を施すようにしてもよい。溝の形状については、放射状、格子状、螺旋状等のいずれでもよく、断面形状についても矩形状、U字状、V字状、半円状のいずれでもよい。溝のピッチ、幅、深さについては、研磨屑の排出やスラリの移動が可能であればよく、特に制限されるものではない。
また更に、本実施形態では、混合工程で混合機20、スライス工程でスライス機を使用する例を示したが、混合機やスライス機には特に制限はなく、通常使用される混合機、スライス機を使用することができる。また、本実施形態では、直方体状の型枠25を例示したが、本発明は型枠の形状や大きさに制限されるものではない。例えば、円柱状等の型枠を使用してもよく、混合液の粘性を考慮すれば、型枠を使用せずに発泡体を形成するようにしてもよい。
以下、本実施形態に従い作製した研磨パッドの実施例について説明する。なお、比較のために作製した比較例についても併記する。
(実施例1)
実施例1では、プレポリマを生成するための長鎖ジオール化合物として平均分子量約2000のPTMGと、短鎖ジオール化合物としてプロピレングリコールとをモル比1/3で混合して用いた。また、ジイソシアネート化合物として、2,4−TDIと2,6−TDIとをモル比7/3で混合して用いた。これらのジオール化合物およびジイソシアネート化合物を反応させることで、温度50℃における粘度が5500mPa・s、NCO当量が549の第1成分のプレポリマを得た。このプレポリマを55℃に加熱し減圧下で脱泡して用いた。第2成分のMOCAは120℃で溶解させ、減圧下で脱泡した。第3成分の分散液は、数平均分子量約2000のPPGの50部に、水の2部、触媒(トヨキャットET、東ソー株式会社製)の1部、シリコン系界面活性剤(SH−193、東レ・ダウコーニング株式会社製)の5部をそれぞれ添加し攪拌混合した後、減圧下で脱泡した。第1成分:第2成分:第3成分を重量比で100部:22.8部:5.3部の割合で混合槽12に供給した。混合工程では、攪拌条件を剪断回数1689回、剪断速度9425/秒に設定した。このとき、混合槽12内に空気を0.6MPaの圧力で供給した。得られた混合液を型枠25に注型し硬化させた後、形成された発泡体を型枠25から抜き出した。この発泡体を、厚さ1.3mmにスライスし研磨パッド1を作製した。
(比較例1、比較例2)
比較例1では、混合工程で空気を0.15MPaの圧力で供給した以外は実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。比較例2では、長鎖ジオール化合物として平均分子量約800のPTMGと、短鎖ジオール化合物としてジエチレングリコールとをモル比1/1で混合して用いた。また、ジイソシアネート化合物として、2,4−TDIと2,6−TDIとをモル比3/1で混合して用いた。これらのジオール化合物およびジイソシアネート化合物を反応させることで、温度50℃における粘度が660mPa・s、NCO当量が543のプレポリマを調製し、混合工程にこのプレポリマを用いた以外は実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。
(評価)
実施例および比較例について、硬化成型した発泡体の上層部、中央部、下層部からスライスして得られた研磨パッド1のかさ密度と開孔径を測定した。密度は、所定サイズの大きさに切り出した試料の重量を測定し、サイズから求めた体積から算出した。開孔径は、マイクロスコープ(KEYENCE製、VH−6300)で約1.3mm四方の範囲を175倍に拡大して観察し、得られた画像を画像処理ソフト(Image Analyzer V20LAB Ver.1.3)により処理した。このとき、開孔径500μm未満の開孔の平均開孔径と、開孔径500μm以上の開孔の開孔数とを算出した。また、中央部から得られた研磨パッド1について、湿潤(WET)硬度および硬度保持率を測定した。湿潤硬度は、研磨パッド1を温度20℃の水に30分間浸漬した後、硬度として、日本工業規格(JIS K 7311)に準じてショアA硬度を測定した。同じ研磨パッド1を温度70℃の熱湯に30分間浸漬した後、ショアA硬度を同様に測定し、20℃のときの硬度に対する70℃のときの硬度の割合を百分率で求めた。また、スライス工程でのスライスのしやすさをスライス性として評価した。評価は、○:均一なスライスができるもの、×:均一なスライスができないもの、の2段階とした。密度および平均開孔径の結果を下表1に示し、湿潤硬度、硬度保持率およびスライス性の結果を下表2に示す。
Figure 2009125894
表1に示すように、空気を0.15MPaの圧力で供給して形成した比較例1は、開孔径が500μm以上の開孔が見られなかった。また、プレポリマを低粘度に設定した比較例2は、開孔径が500μm未満の開孔の平均開孔径にバラツキが認められている。さらには、上層、中央部、下層のかさ密度にバラツキがあることから、発泡の分散状態に偏りがあることが考えられる。これに対して、プレポリマの粘度を5500mPa・sとし、混合時に供給する空気の圧力を0.6MPaに設定して形成した実施例1では、上層部、中央部、下層部で、かさ密度が略均一(平均値に対し±3%の範囲内)であることが判明した。また、開孔径が500μm未満の開孔の平均開孔径ではバラツキが小さく、開孔径が500μm以上の開孔も10個/cm以上認められた。このことから、平均開孔径のことなる開孔4、開孔6が形成された研磨パッド1では、研磨加工時にスラリ保持性を確保して研磨効率の向上を図ることが期待できると共に、目詰まりを抑制して寿命向上を図ることが期待できる。
Figure 2009125894
表2に示すように、比較例1では、発泡が不十分でかさ密度と硬度が高くなってしまった。このため、スライス工程でのスライスが非常に難しくなり、平坦な表面を持つ研磨パッドを得ることができなかった。比較例2では、スライス工程でのスライスに問題はなかったが、湿潤硬度が温度70℃で低下しており、硬度保持率が82.6%であった。これに対して、実施例1では、硬度保持率が85%以上を示した。このことから、実施例1の研磨パッド1では、研磨加工中に摩擦等で発熱しても硬度変化が抑制されるため、研磨性能のバラツキを抑制することが期待できる。
以上の結果から、空気を供給してプレポリマ、分散液、MOCAおよび空気を混合した混合液を調製するときに、プレポリマの粘度および供給する空気の圧力を調整することで、発泡体の内部に大きさが制御され略均等に分散した小発泡3、大発泡5が形成されることが判った。得られた発泡体をスライスすることで、表面に平均開孔径の異なる開孔4、開孔6が略均等に形成された研磨パッド1を得ることができることが判明した。従って、スラリ保持性を確保しつつ開孔の目詰まりを抑制し寿命性能を向上させることができる研磨パッド1を得ることができ、1つの発泡体から得られる複数の研磨パッドによる研磨加工で研磨性能のバラツキを抑制することができることが明らかとなった。
本発明はスラリ保持性を確保しつつ開孔の目詰まりを抑制し寿命性能を向上させることができる研磨パッドの製造方法を提供するため、研磨パッドの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
本発明を適用した実施形態の研磨パッドを示す断面図である。 実施形態の研磨パッドの製造方法の要部を示す工程図である。 実施形態の研磨パッドの製造に用いた混合機および型枠の概略を示すブロック図である。
符号の説明
1 研磨パッド
3 小発泡
4 開孔
5 大発泡
6 開孔
P 研磨面
20 混合機

Claims (9)

  1. イソシアネート基含有化合物を主成分とした研磨パッドの製造方法であって、
    イソシアネート基含有化合物と、予めポリオール化合物に水を1重量%〜6重量%の割合で分散希釈させた分散液と、ポリアミン化合物とをそれぞれ準備する準備ステップと、
    前記イソシアネート基含有化合物、前記分散液および前記ポリアミン化合物に対して非反応性の気体を供給して前記イソシアネート基含有化合物、分散液、ポリアミン化合物および非反応性の気体を混合した混合液を調製し、前記混合液から発泡体を形成する発泡体形成ステップと、
    前記発泡体をスライスして研磨パッドを形成するスライスステップと、
    を含み、
    前記準備ステップで準備するイソシアネート基含有化合物の温度50℃における粘度が3000mPa・s〜30000mPa・sであり、前記発泡体形成ステップで前記非反応性の気体を0.2MPa〜0.8MPaの圧力で供給することを特徴とする製造方法。
  2. 前記イソシアネート基含有化合物は、平均分子量1000以上の長鎖ジオール化合物および平均分子量500以下の短鎖ジオール化合物と、ジイソシアネート化合物との反応生成物であり、前記短鎖ジオール化合物が分子中に分岐を有しているものを含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記長鎖ジオール化合物および前記短鎖ジオール化合物は、モル比5/1〜1/5の割合で配合されていることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記分散液中のポリオール化合物は、ポリプロピレングリコールであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  5. 前記準備ステップで前記分散液中に分散希釈させる水の量は、前記イソシアネート基含有化合物の重量1kgに対して0.5g〜6gの割合であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  6. 前記非反応性の気体は、前記イソシアネート基含有化合物、分散液およびポリアミン化合物の合計重量1kgに対して0.5L〜3.4Lの割合で前記混合液に混合されることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記発泡体形成ステップにおいて、剪断速度7,000〜55,000/秒、剪断回数300〜10,000回の条件で前記混合液を調製することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  8. 前記スライスステップで複数枚の研磨パッドが形成され、各研磨パッドの表面に、開孔径が500μmより小さく平均開孔径が30μm〜200μmの小開孔が形成され、かつ、開孔径が500μm以上の大開孔が5個/cm以上形成されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  9. 前記スライスステップで形成される研磨パッドは、いずれも温度20℃の水に一定時間浸漬したときの硬度に対する、温度70℃の水に前記一定時間浸漬したときの硬度の割合が80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
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