JP2009114366A - 高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 簡便な方法で高溶融粘度化でき、かつ射出成形、異形押出成形、Tダイ押出成形、ブロー成形などの成形性に優れ、特にブロー成形に好適な高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】 ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、ビニル芳香族モノマー20〜99質量%、グリシジルアルキル(メタ)アクリレート1〜80質量%及びアルキル(メタ)アクリレート0〜70質量%の割合でこれらを共重合して得られた反応基含有アクリル系共重合体(B)を0.5〜10質量部含有させてなることを特徴とする高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物に関するものである。より詳細には、耐薬品性・耐熱性に優れ、射出成形、特に異形押出成形、Tダイ押出成形、ブロー成形に好適な高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物に関するものである。
高溶融粘度ポリアミド樹脂を得る方法として、溶融重合で重合温度および減圧度を高めて保持すれば平衡論的には高溶融粘度ポリアミド樹脂は得られるはずであるが、重合に長時間を要し重合体の熱分解による変質を伴いやすいなど工業的方法として有利ではない。また、ポリアミド樹脂を融点以下の温度でいわゆる固相重合を行う方法(例えば、特許文献1)が提案されているが充分な高溶融粘度を得るためにはさらに長時間の加熱処理が必要であり、経済的にも品質の面においても良い方法とは言い難い。さらに無機あるいは有機リン化合物を包含せしめてポリアミド樹脂の融点以上あるいは以下の温度で加熱する方法(例えば、特許文献2)も知られている。しかし、これら方法で得られたポリアミド樹脂は、分子量は著しく向上しているものの、ポリアミドの溶融粘度のせん断速度依存性は改良されてはおらず、低せん断領域の溶融粘度は向上されにくい。そのため、特にブロー成形や押し出し成形などの低せん断速度下の粘度は著しく向上されず、パリソンがドローダウンし安定な形状が保持できなかったり、加工温度や押し出し速度の条件幅が著しく狭く、安定生産しにくい問題があった。
また、ポリアミド樹脂にエポキシ化合物等の添加物を加え化学的にポリアミド分子を結合させ、その溶融粘度を向上させる方法(例えば、特許文献3)も知られている。しかし、これらの方法であれば高溶融粘度化が不十分であったり、高溶融粘度化を達成しても、部分的にゲル化し均一性の点で問題があり成形品表面にいわゆる「はだ荒れ現象」を生じやすい欠点を有する。
さらに、ポリアミド樹脂に酸変性ポリオレフィン、エポキシ変性ポリオレフィン、エチレン系アイオノマー等によるポリマーアロイによる溶融粘度を向上させる方法(例えば、特許文献4、5)も知られている。この手法を用いれば、ポリアミド樹脂の低せん断領域の溶融粘度を著しく向上させることができる。
しかし、ブロー成形や押し出し成形可能な領域に増粘するためには大量のオレフィン樹脂を添加する必要があり、これら方法で得られた高溶融粘度ポリアミド樹脂は、耐熱性・耐薬品性(耐ガソリン性)が低下する欠点を有し、例えば高い耐熱性と薬品性が求められる自動車部品や、燃料系部品には適用できない。また、押し出し成形やブロー成形の様に、比較的長く成形機内に滞留する成形方法では、ポリアミド樹脂の加工温度で長く滞留するために、オレフィンの分解が発生して著しく粘度が低下したり、成形時のガスが多くなり、成形性に影響が出たり出来上がった成形品の外観を損ねたりする問題もあった。
特公昭52−8943号公報 特公昭48−38797号各公報 特表2003−525993号公報 特開平10−81819号 特開平11−245927号公報
本発明の目的とするところは、上記従来技術の問題点を解決し、耐熱性・耐薬品性・成形品外観が優れ、かつ成形安定性、耐熱性に優れ、射出成形、異形押出成形、Tダイ押出成形、ブロー成形に適した高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリアミド樹脂に特定の反応基含有アクリル系共重合体を少量配合することによりこの目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の構成を採用するものである。
(1)ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、ビニル芳香族モノマー20〜99質量%、グリシジルアルキル(メタ)アクリレート1〜80質量%及びアルキル(メタ)アクリレート0〜70質量%からなる反応基含有アクリル系共重合体(B)を0.5〜10質量部含有させてなることを特徴とする高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物。
(2)反応基含有アクリル系共重合体(B)が、エポキシ価が800〜6000当量/10gで、かつ質量平均分子量が500〜100000である前記(1)に記載の高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物。
(3)ポリアミド樹脂(A)が、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6T/6、ナイロンMXD−6、ナイロン11、ナイロン12及びこれらの混合物又は共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(1)又は(2)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(4)ポリアミド樹脂(A)、反応基含有アクリル系共重合体(B)及び(A)以外の非晶性ポリアミド樹脂(C)を含有する高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物であって、該樹脂組成物中の組成が、ポリアミド樹脂(A)80〜97質量%、反応基含有アクリル系共重合体(B)0.5〜10質量%及び(A)以外の非晶性ポリアミド樹脂(C)を3〜20質量%含み、かつ該樹脂組成物の示差走査型熱量計(DSC)により測定した降温結晶化温度TCN(℃)と、(C)を含まない樹脂組成物の降温結晶化温度TCM(℃)とが、以下の関係を満たす、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物。
TCM(℃)−TCN(℃) ≧ 5(℃)
(5)ポリアミド樹脂(A)以外の樹脂と反応基含有アクリル系共重合体(B)とを溶融混練させて得た樹脂組成物とポリアミド樹脂(A)とを、溶融混練することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
本発明は、ポリアミド樹脂に、少量の特定の反応基含有アクリル系共重合体を溶融混練させたものであり、少量の特定の反応基含有アクリル系共重合体を溶融混練させるだけで、ポリアミド樹脂を容易に高溶融粘度化することができ、しかも、ポリアミド樹脂は粘度安定性が高い。このため、特に押出成形、ブロー成形に適した流動特性を有している。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明におけるポリアミド樹脂(A)とは、分子中にアミド結合(―CO・NH―)を有するものであり、ε−カプロラクタム、6−アミノカプロン酸、ω−エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸、α−ピロリドン、α−ピペリジンなどから得られる重合体または共重合体もしくはこれらのブレンド物である。
また、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカンメチレンジアミン、ドデカンメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどのジアミンとテレルタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸などのジカルボン酸とを重縮合して得られる重合体または共重合体もしくはこれらのブレンド物などを例示することができるがこれらに限定されるものではない。
更に具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン4・6、ナイロン6・10、ナイロンMXD−6、ナイロン6/ナイロン66共重合体、ナイロン6T/ナイロン66共重合体、ナイロン6T/ナイロン6共重合体、ナイロン6T/ナイロン6I共重合体等を例示することができるがこれらに限定されるものではない。しかし、本発明においてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン66/ナイロン6共重合体、ナイロン66/6I共重合体が好ましい。
本発明で使用するポリアミド樹脂(A)の粘度は、特に限定する必要はなく、射出成形可能なものであれば何れにても良く、相対粘度(96%硫酸法)2.5〜3.8のものが使用可能であり、特に低粘度であっても本発明における反応基含有アクリル系共重合体(B)を溶融混練することにより高粘度化が可能である。しかし、相対粘度が2.5より低い場合では、増粘剤を大量に添加しても充分増粘するのが難しく好ましくない。一方、相対粘度が3.8より大きい場合では溶融重合では得られにくく固相重合が必要であり経済的でない。
ポリアミド樹脂(A)のアミノ末端基およびカルボキシル末端基は、反応基含有アクリル系共重合体(B)の反応基と反応して高溶融粘度化するため、アミノ末端基量およびカルボキシル末端基量は、ある程度必要であるが特に限定されるものでは無く、各々10〜90当量/10g程度でよい。
本発明における反応基含有アクリル系共重合体(B)は、ビニル芳香族モノマー(X)20〜99質量%、グリシジルアルキル(メタ)アクリレート(Y)1〜80質量%、アルキル(メタ)アクリレート(Z)0〜70質量%の割合でこれらを共重合させて得られた共重合体である。
共重合体組成は、好ましくは(X)が20〜99質量%、(Y)が1〜80質量%、(Z)が0〜40質量%、さらに好ましくは、(X)が25〜90質量%、(Y)が10〜75質量%、(Z)が0〜35質量%、最も好ましくは、(X)が30〜85質量%、(Y)が15〜70質量%、(Z)が0〜30質量%からなる共重合体である。これらの組成は、ポリアミド系樹脂(A)との反応に寄与する官能基濃度に影響するため、上述のように適切に制御する必要がある。上述の組成から外れる場合、ポリアミド樹脂(A)との反応性が低下し、成形加工性の低下する虞がある。なお、(Z)の下限は5質量%が好ましい。
ビニル芳香族モノマー(X)としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3級ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、p−メチルスチレン、クロルスチレンなどを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができるが、中でもスチレンが好ましい。
グリシジルアルキル(メタ)アクリレート(Y)としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルエチル(メタ)アクリレート、グリシジルブチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができるが、中でもグリシジルメタクリレートが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレート(Z)としては、メチル(メタ)クリレート、エチル(メタ)クリレート、ブチル(メタ)クリレートなどを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができるが、中でもメチルメタクリレートが好ましい。
好ましい具体例として、スチレン/グリシジルメタクリレート/メチルメタクリレート、スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体を例示することが出来るが、これらに限定されるものではない。
また、反応基含有アクリル系共重合体(B)の反応基であるグリシジル基の濃度は極めて重要である。
反応基含有アクリル系共重合体(B)のエポキシ価は、好ましくは800〜6000当量/10gであり、より好ましくは1000〜4500当量/10gであり、さらに好ましくは1100〜4000当量/10である。エポキシ価が800当量/10g未満であると、ポリアミド樹脂(A)との反応性が不足しており増粘効果が不十分である。一方、6000当量/10を超えるとゲル化等が発生し成形品外観、成形性に悪影響をおよぼすことがある。
反応基含有アクリル系共重合体(B)の質量平均分子量は、500〜100000であることが好ましく、より好ましくは700〜50000であり、さらに好ましくは900〜20000である。質量平均分子量が500未満であると未反応の反応基含有アクリル系共重合体(B)が、成形品表面にブリードアウトし成形品表面の汚染をひきおこす。一方、100000を超えるとポリアミド樹脂(A)との相溶性が悪くなり、相分離及びゲル化等が発生し成形品外観に悪影響をおよぼすことがある。
なお、本発明における反応基含有アクリル系共重合体(B)の製造方法は特に限定されず、従来から提案されている当業者周知の方法により製造することができ、高温に保たれた反応容器内にビニル単量体を連続的に供給して重合させる高温連続重合法は、短時間でビニル重合体を得ることができる効率的方法によって製造することもできる(特表昭57−502171号公報、特開昭59−6207号公報、同60−215007号公報、特開2002−3504号など参照)。
反応基含有アクリル系共重合体(B)のポリアミド樹脂(A)に対する配合量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して0.5〜10質量部である。最適配合量はエポキシ価により変化し、エポキシ価が高ければ添加量は少なくてよく、エポキシ価が低ければ配合量を多くする必要がある。前記エポキシ価の範囲であれば配合量0.5質量部未満であれば増粘効果が低く、10質量部を超えると部分的にゲル化等が発生し成形品外観、成形性に悪影響をおよぼすことがある。
本発明における反応基含有アクリル系共重合体(B)は、重合終了後のポリアミド樹脂(A)に対し配合することができる。例えば重合終了後の重合機内に配合する、あるいは重合機を出た直後の溶融状態のポリアミド樹脂(A)に直接混合混練する方法、固体化(たとえば粉末、ペレット状など)したポリアミド樹脂(A)に混合し、次いで溶融混練する方法などが適用できる。
前者の方法においてはポリアミド樹脂(A)が溶融状態にあるので、添加によりそのまま高溶融粘度化されるが、後者の方法においては、反応基含有アクリル系共重合体(B)が分散混合されたポリアミド樹脂(A)との混合物は、高溶融粘度化のために加熱再溶融される。
加熱再溶融方法には特に制限はなく、当業者に周知のいずれの方法も可能であり、単軸押出機、2軸押出機、加圧ニーダ、バンバリミキサー等が使用することができる。なかでも2軸押出機を使用することが好ましい。2軸押出機の条件は、ポリアミド樹脂(A)の種類、添加剤種類・量など種々の要因により異なり一義的に決められない。ポリアミド樹脂(A)の融点は170〜320℃範囲であり、その加工温度は融点+25℃前後で温度設定をすればよい。反応時間は10分以内、例えば1分から数分で充分目的とする溶融粘度に到達すると考えてよい。
スクリュー構成は、練りの優れるニーディングディスクを数箇所組み込んだほうが好ましい。この様に反応基含有アクリル系共重合体を混合溶融して作成した高溶融粘度ポリアミド樹脂は均一で溶融状態における粘度安定性が高く、特に押出成形、ブロー成形に適した流動特性を有している。
また、本発明においては、上記組成に加えて、ポリアミド樹脂(A)以外の非晶性ポリアミド樹脂(C)を配合することがナイロン樹脂の結晶化速度を遅延させ、ブロー成形時にノズルから空気中に放出されたパリソンが固化しにくく、複雑な形状であっても付与することができるため好ましい。
この場合の好ましい組成は、ポリアミド樹脂(A)80〜97質量%、反応基含有アクリル系共重合体(B)0.5〜10質量%及び(A)以外の非晶性ポリアミド樹脂(C)を3〜20質量%含むポリアミド樹脂組成物である。
上記組成における非晶性ポリアミド樹脂(C)とは、分子中に酸アミド結合(−CONH―)を有し、融点が観測されず、ガラス転移点のみ観測されるポリアミド樹脂である。具体的には、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等より重縮合によって得られる重合体および共重合体である。 更に具体的には ナイロン6T/ナイロン66共重合体、ナイロン6T/ナイロン6共重合体、ナイロン6T/ナイロン6I共重合体、ナイロンTMD−T/ナイロン6共重合体およびナイロン6I重合体等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
また、ポリアミド樹脂のアミノ末端基、およびカルボキシル末端基は(B)成分の反応基と反応し高溶融粘度化するため、アミノ末端基量、およびカルボキシル末端量はある程度必要であるが特に限定されるものでは無く、各々10〜90当量/10g程度でよい。
これらの非晶性ポリアミド樹脂の相対粘度は1.8〜3.8であり、好ましくは2.0〜3.5である。相対粘度が1.8より小さい場合は組成物全体の溶融粘度を低下させて好ましくない。一方3.8より大きい場合は溶融重合で得られず、固相重合が必要であり、経済的でない。非晶性ポリアミド樹脂の配合量は3〜20質量%である。配合量が3質量%以下では組成物のTc2を充分効果的に下げることが出来ない。また20質量%以上では組成物全体の結晶化度が低下し好ましくない。
ポリアミド樹脂(A)80〜97質量%、反応基含有アクリル系共重合体(B)0.5〜10質量%及び(A)以外の非晶性ポリアミド樹脂(C)を3〜20質量%含む場合、該樹脂組成物の示差走査型熱量計(DSC)により測定した降温結晶化温度TCN(℃)と、(C)を含まない樹脂組成物の降温結晶化温度TCM(℃)とが、以下の関係を満たすことが好ましい。
TCM(℃)−TCN(℃) ≧ 5(℃)
すなわち、非晶性ポリアミド樹脂(C)を添加しない場合の樹脂組成物のTc2M (℃)から、非晶性ポリアミド樹脂(C)を添加した場合の樹脂組成物Tc2 N(℃)を差し引いた時の差が5℃以上であることが好ましい。
複雑な形状の三次元ブロー成形時には「長いパリソン」必要であるが、ポリアミド系樹脂組成物のTc2N(℃)とTc2M(℃)の差が5℃未満であると、「長いパリソン」の成形工程の途中で固化が起こり始め、良好な成形品を得ることが極めて難しくなる。また金型温度を極めて高温にすることで、仮にブロー成形が出来たとしても、成形品の表面外観が良好な成形品を製造することが出来ない。
Tc2N (℃)に関与する重要な因子は非晶性ポリアミド樹脂(C)であり、結晶性ポリアミド樹脂(A)とアミド交換反応によって分子相容することにより、結晶性ポリアミド樹脂の結晶化速度をコントロールして成形時の固化速度をコントロールすることができ、Tc2N (℃)を低下させてポリアミド系樹脂組成物の Tc2M(℃)−Tc2N(℃) ≧5℃が達成でき、複雑な形状の三次元ブロー成形が容易になる。
本発明のポリアミド樹脂組成物に対して、衝撃性、寸法安定性、表面平滑性、その他機械特性等を改良するために、さらに、以下のような樹脂を添加することができる。
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂、または、エラストマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−ポリイソプレン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−イソプレン共重合体などの共役ジエン系重合体;該共役ジエン系重合体の水素添加物;エチレン−プロピレン共重合体などのオレフィン系ゴム;ポリアクリル酸エステルなどのアクリル酸ゴム;ポリオルガノシロキサン;熱可塑性エラストマー;エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基等を有する熱可塑性エラストマー;エチレン系アイオノマー共重合体などが挙げられ、これらは1種または、2種以上で使用される。中でも、アクリル系ゴム、共役ジエン系共重合体または共役ジエン系共重合体の水素添加物が好ましい。さらには、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−1、4−ヘキサジエン共重合体、エチレン−ブテン−1−ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン−ブテン−1−1、4−ヘキサジエン共重合体、アクリロニトリル−クロロプレン共重合体(NCR)、スチレン−クロロプレン共重合体(SCR)、ブタジエン−スチレン共重合体(BS)、エチレン−プロピレンエチリデン共重合体、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−エチレン共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)共重合体(α−MES−B−α−MES)、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)共重合体等の樹脂または、エラストマーをポリアミド樹脂組成物に添加することもできる。
これらの樹脂は、ポリアミド樹脂(A)、さらには、必要により非晶性ポリアミド樹脂(C)と反応基含有アクリル系共重合体(B)とは、溶融混練時に同時に混練してもよいが、これらの樹脂と反応基含有アクリル系共重合体(B)とを予め溶融混練させてマスターペレット化して溶融混練することができる。この場合、分散性が向上するので好ましい。また、この場合の樹脂は、反応基含有アクリル系共重合体(B)と反応性がないものが好ましい。
さらに、上述の樹脂は、ポリアミド樹脂組成物との相溶性を高めるために、カルボン酸、エポキシ基等の官能基を含有したものであれば、さらに好ましく溶融混合することができる。また、上述の樹脂に対する官能基は、ポリアミド樹脂末端基と反応する官能基であれば、限定されるものではなく、任意で使用することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物の溶融粘度は、キャピラリーレオメータで測定(測定条件:剪断速度 0.5mm/分、測定温度:ナイロン6の場合は250℃、ナイロン66の場合は285℃で実施。他のナイロン樹脂の場合は融点より25℃高い温度で実施。ノズル形状:穴の直径=0.5mm、穴の長さ=5mm)した場合、1500〜20000Pa・sであることが好ましい。
溶融粘度が1500Pa・s未満であるとドローダウンにより成形が出来ない場合があり、20000Pa・sを超えると溶融粘度が高すぎて成形機への負荷が大きく、破損する恐れがある。またブロー成形の場合、粘度が高すぎてパリソンの放出が難しく、肉厚の制御がうまく出来ない場合がある。
溶融粘度は、好ましくは2000〜18000Pa・s、より好ましくは2500〜15000Pa・sである。
本発明の高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物には、製造時にガラス繊維、ミルドファイバー、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維等の繊維状のもの、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等のウイスカー類、ワラストナイト、タルク、マイカ、クレー、ガラスビーズ、ガラスフレーク、モンモリロナイト、膨潤性フッソ雲母などの強化材を加えてもよい。これらの中で特にガラス繊維が良い。その他、一般的によく用いられている酸化防止剤、耐候剤、離型剤、難燃剤、顔料などの各種の添加剤を使用用途により添加することができる。
ポリアミド樹脂(A)と反応基含有アクリル系共重合体(B)との本発明の樹脂組成物の加工法としては、上述した射出成型、押出成形、異形押出成形、ブロー成形以外の方法においても特に制限はなく、カレンダー成形、熱成形(真空・圧空成形を含む)、反応射出成形、発泡成形、圧縮成形、粉末成形(回転・延伸成形を含む)、積層成形、注型、溶融紡糸等を挙げることができる。
以下に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。
なお、実施例、比較例において使用した原料は下記の物である。
(1)ポリアミド樹脂
・ナイロン6:東洋紡ナイロン、銘柄=T−850、相対粘度:3.5
キャピログラフ せん断速度:0.5mm/分、溶融粘度:1650Pa・s、
(以下、A-1と記載することがある。)
・ナイロン66:東洋紡ナイロン 銘柄=T−662 相対粘度=2.8
キャピログラフ せん断速度:0.5mm/分、溶融粘度:950Pa・s、
(以下、A-2と記載することがある。)
・ナイロン6T/6I:東洋紡ナイロン 銘柄T−714E 相対粘度:2.0、
(以下、Cと記載することがある。)
なお、ポリアミド樹脂の相対粘度はウベローデ粘度管を用い、20℃において96%硫酸溶液(ポリアミド樹脂濃度1g/dl)で測定した。
(2)反応基含有アクリル系共重合体
(1)反応基含有アクリル系共重合体(B-1)の合成:
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器にメチルエチルケトン50部を入れ70℃に昇温した後、スチレン34.5質量部、グリシジルメタクリレート44.5質量部、メチルメタクリレート21.0質量部の混合物と、アゾビスジメチルバレロニトリル2部を50部のメチルエチルケトンに滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。その後、減圧することにより、メチルエチルケトンを反応器中から除去し、反応化合物(B-1)を得た。
得られた反応化合物(B-1)のNMR分析結果は、スチレン/グリシジルメタクリレート/メチルメタクリレート=38/37/25(質量%)の組成であった。ガラス転移温度は51℃、重量平均分子量は1200であった。エポキシ価は2626当量/10gであった。
(2)反応基含有アクリル系共重合体(B-2)の合成:
撹拌機、冷却器および加熱マントルを具備した1.5リットルの丸底フラスコ中で乳化重合によって製造した。フラスコには最初に脱イオン水900質量部、酢酸0.2質量部、FeSO 0.005質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩二水和物0.06質量部からなる溶液を仕込んだ。溶液に窒素ガスを散布して75℃に加熱した。75℃において、水75質量部中でドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.7質量部を用いて乳化させたスチレン182質量部、グリシジルメタクリレート48.4質量部およびブチルメタクリレートモノマー25.8質量部をフラスコに加え、次に過硫酸ナトリム0.22質量部を開始剤として加えた。次に反応をそのまま約2時間、または固形物含有量の調査によってモノマーの99.9%以上が置換されるまで進行させた。反応遂行後にエマルジョンを室温に冷却し次いで噴霧乾燥して白色の粉末を得た。
得られた反応化合物(B-2)のNMR分析結果は、スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルブチルメタクリレート=71/19/10(質量%)の組成であった。ガラス転移温度は55℃、重量平均分子量は10000であった。エポキシ価は1330当量/10gであった。
なお、エポキシ価は下記のように測定した。
・エポキシ価の測定法:
100mlのエレンマイヤーフラスコにサンプルを秤量し、10〜15mlのメチレンクロライドを加えて、マグネチックスターラーにて撹拌溶解した。10mlのテトラエチルアンモニュウムブロマイド試薬を加え、0.1規定パークロリック酸で滴定した。終点は青から緑に変色して2分間安定な点とした。滴定に要したパークロリック酸の量(ml)を読み取って、以下の式によって算出した。
エポキシ価(当量/10g)=(N×A×1000)/W
W:サンプルの質量(g)
A:滴定に要したパークロリック酸の量(ml)
N:パークロリック酸の規定度
(3)その他の添加剤
・マレイン酸変性ハイデンシティエチレン(HDPE):
アドテックス社製、DH−0200(以下、D-1と記載することあり。)
・未変性HDPE:
プライムポリマー社製、ハイゼックス6203B(以下、D-2と記載することあり。)
・ガラス繊維:オーウェンスコーニング社製、銘柄:MA411
・離型剤:ステアリン酸マグネシウム(以下、Eと記載することあり。)
・酸化防止剤:塩化第二銅(以下、Fと記載することあり。)
ヨウ化カリウム(以下、Gと記載することあり。)
(4)溶融粘度測定法
キャピラリーレオメータ使用:東洋精機(株)製品名=キャピログラフ1B
測定条件:剪断速度 0.5mm/分
測定温度:ナイロン6は250℃、ナイロン66は285℃で実施。
ノズル形状:穴の直径=0.5mm、穴の長さ=5mm
(5)降温結晶化温度(TC)(℃)測定法
示差走査型熱量計(DSC)を用い窒素ガス雰囲気下、昇温速度20℃/分で300℃まで昇温して5分間保持し、降温速度10℃/分で降温させ、得られたサーモグラムの降温結晶化時の発熱ピーク温度から降温結晶化温度TCM(℃)、TCN(℃)を求めた。
(6)溶融混練法
実施例、比較例の高溶融粘度ポリアミド樹脂の製造法は、表1に示した配合比率に従い計量して、2軸押出機(東芝機械社製 TEM35φ)を使用し、ナイロン6の場合、シリンダ温度250℃、ナイロン66の場合、シリンダ温度280℃に設定し、スクリュー回転数=100rpmにて溶融混練した。ポリアミド樹脂、反応基含有アクリル系共重合体、離型剤、酸化防止剤は混合しポッパーより投入し、ガラス繊維はベント口からサイドフィードで投入した。
(7)射出成形による樹脂組成物の評価法
射出成形機(東芝IS−100E:型締力100トン)にてナイロン6の場合、シリンダ温度250℃、金型温度70℃、背圧20kg/cm、射出圧力150MPaの条件で物性試験用のISOダンベル試験片を作製した。これを用いて成形品バリレベル、耐衝撃性、耐熱性評価を行った。
・成形品バリレベル:
縦100mm、横100mm、厚さ2mmの平板用金型(フィルムゲート)を用いて、上述の成形条件により平板を成形し、成形品バリレベルを以下の基準に従って評価した。
◎:バリ確認無し。
○:成形品の一部に1mm長のバリが発生。
×:成形品に1mm長以上のバリが発生。
・耐衝撃性試験:
ノッチ付きシャルピー衝撃強度をISO 179−1−eAに準じて試験を行った。試験温度は23℃で行った。
・耐ガソリン性:
JIS−Z 0208に準じたカップ法によるガソリンバリア性(g・mm/m2・day)の評価を行なった。
テスト溶液として、トルエン:イソオクタン=1:1溶液(容量比)90Vol%と、エタノール10Vol%を含む混合溶液を使用した。測定は40℃で行なった。
・耐熱性:
熱変形温度をISO 75−1.2に準じて測定した。
(8)異形押出し成形による評価
シリンダ温度を220〜265℃に設定し、単軸押出機(L/D=25、フルフライトスクリュー、スクリュー径65mm)に前記の平板成形品を製造するダイリップを取り付け、次に冷却水槽の先端に異形押出製品の最終寸法を決定するサイジング金型を取り付け、水槽を経由して、引取機を装備した異形押出成形設備により成形し、その成形品のサイジング金型加工状況、製品寸法精度を評価した。
なお、サイジング金型加工状況と製品精度、表面平滑性の評価基準は以下に従った。
・サイジング金型加工状況(連続生産性):
○:「サイジング金型内での樹脂の付着性もなく加工性はスムーズなものであり、ダイ〜サイジング間での成形品のエッジ形状精度が高いものであった。」
×:「サイジング金型内での樹脂付着が生じ、サイジング工程へ移ることができなかった。または、サイジング工程で加工性が悪く、成形品のエッジ精度が低く、連続生産性を悪化させる」とした。
・製品寸法精度:
前記の平板成形品を製造するダイリップを取り付けた異形押出成形をし、その成形品の製品寸法精度を評価した。
○:製品の寸法が設計通りである。
△:製品の寸法が設計値から0.3mm未満ですれる。
×:製品の寸法が設計値より0.5mm以上ずれる。
(9)Tダイ押出しシート成形による評価
混練した樹脂組成物を、Tダイ押出成形機(単軸押出機:L/D=25、フルフライトスクリュー、スクリュー径65mm)のシリンダ温度を220〜265℃に設定し、幅30cm、厚さ400μmのシートを製造した。その際の巻き取りロールまでの樹脂のたれを目視で観察することにより、シートの引取り性を評価した。また、その際のロールからのシート剥離性も評価した。なお、評価基準は以下の通りである。
・シート剥離性:
○:ロールからの剥離性良好
△:ロールへの粘着性が強く、時折剥離困難となるため、安定して量産できない。
×:ロールへの粘着性が強く、剥離が困難で、正常なシートが採取できない。
・シート引取り性:
◎:たれが全く生じない。
○:わずかにたれが生じるが実用上差し支えない。
×:溶融シートが自重でたれてしまい、正常なシートが採取できない。
(10)ダイレクトブロー成形による評価
ダイレクトブロー成型機(単軸押出し機:L/D=25、フルフライトスクリュー、スクリュー径65mm)のシリンダ温度を220〜265℃に設定し、図1に示すダイレクトブロー成形蛇腹成形品を製造した。シリンダ先端には、パリソン形成用ダイリップを取り付け、金型内でブローエアーを封入し、蛇腹成形品を連続生産した。このときの、パリソン保持状態、製品寸法精度を以下の基準により評価した。
・パリソン保持状態:
○:ノズルから5cm以上垂れない。
△:ノズルから20cm以上垂れるが、ブロー可能。
×:ノズルから大きく垂れすぎて、パリソン計量ができず、ブロー不可能。
・製品肉厚精度:
○:断面の肉厚ムラが0.3mm以内
×:断面の肉厚ムラが0.3mm以上
<実施例1>
ナイロン6(A-1)を100質量部、反応基含有アクリル系共重合体(B-1)1質量部、離型剤としてステアリン酸マグネシウム(E)0.2質量部、酸化防止剤としてヨウ化銅(F)0.02質量部、ヨウ化カリウム(G)0.15質量部を混合し、該混合物を、二軸押出機(東芝機械社製 TEM35φ)を使用し、スクリュー回転数100rpm、シリンダ温度250℃に設定して溶融混練した。
得られた樹脂組成物について、上記の各種成型を行い、上記の各評価を実施した。その結果を表1に示した。
<実施例2>
ナイロン6T/6I共重合非晶性ナイロン(東洋紡ナイロンT−714E)(C)を80質量部、反応基含有アクリル系共重合体(B-1)20質量部、離型剤としてステアリン酸マグネシウム(E)2質量部、酸化防止剤としてヨウ化銅(F)0.2質量部、ヨウ化カリウム(G)1.5質量部を混合し、該混合物を、二軸押出機(東芝機械社製 TEM35φ)を使用し、スクリュー回転数100rpm、バレル温度230〜245℃にて溶融混練して改質用マスターペレット(α)を作製した。
次いで、得られた改質用マスターペレット5質量部と、ナイロン6(A-1)95質量部を成形機ホッパー内でドライブレンドして、射出成形機(東芝IS−100E:型締力100トン)にてシリンダ温度250℃、金型温度70℃、背圧20kg/cmの条件で物性試験用の試験片を作製し、これを用いて、成形品バリレベル、耐衝撃性、耐熱性評価を実施例1と同様に行った。
また、その他の成形についても実施例1と同様条件にて実施し、各項目の評価を行った。その結果を表1に示した。
<実施例3>
実施例1と同じ原料組成に、さらにガラス繊維25質量部を混合して、実施例1と同様に溶融混練した。得られた樹脂組成物について、各種成型を行い、上記の各評価を実施した。その結果を表1に示した。
<実施例4>
ナイロン6(A-1)をナイロン66(A-2)に代え、反応基含有アクリル系共重合体(B-1)1質量部を反応基含有アクリル系共重合体(B-2)4質量部に代え、シリンダ温度を280℃に設定した以外は、実施例1と同様に溶融混練した。得られた樹脂組成物について、射出成形285℃、異形押出成形260〜305℃、Tダイ押出シート成形260〜305℃、ダイレクトブロー成形285℃にシリンダ温度設定し、その他の条件については、実施例1と同様の条件にて成形し、各種評価を実施した。その結果を表1に示した。
<実施例5>
実施例2と同様にして、未変性HDPE樹脂(D-2)50質量部、反応基含有アクリル系共重合体(B-1)50質量部、離型剤としてステアリン酸マグネシウム(E)2質量部、酸化防止剤としてヨウ化銅(F)0.2質量部、ヨウ化カリウム(G) 1.5質量部を混合し、予め200〜230℃にて溶融混練して改質用マスターペレット(β)を作製した。次に、得られた改質用マスターペレット3質量部と、ナイロン6(A-1)97質量部をドライブレンドして、実施例2と同様の条件下にて、射出成形、異形押出成形、Tダイ押出シート成形、ダイレクトブロー成形して各種評価を行った。その結果を表1に示した。
<実施例6>
ナイロン6(A-1)を89質量部、反応基含有アクリル系共重合体(B-1)1質量部、ナイロン6T/6I共重合非晶性ナイロン(東洋紡ナイロンT−714E)(C)10質量部、離型剤としてステアリン酸マグネシウム(E)0.2質量部、酸化防止剤としてヨウ化銅(F)0.02質量部、ヨウ化カリウム(G)0.15質量部を混合し、該混合物を、二軸押出機(東芝機械社製 TEM35φ)を使用し、スクリュー回転数100rpm、シリンダ温度250℃に設定して溶融混練した。
得られた樹脂組成物について、上記の各種成型を行い、上記の各評価を実施した。その結果を表1に示した。
<比較例1〜7>
比較例1、3、4、6、7は、実施例1と同様に、ナイロン樹脂(A)100質量部に対して、必要により反応基含有アクリル系共重合体(B)各必要質量部、離型剤としてステアリン酸マグネシウム(E)0.2質量部、酸化防止剤としてヨウ化銅(F)0.02質量部、ヨウ化カリウム(G)0.15質量部を混合し、ナイロン6樹脂の場合は、シリンダ温度250℃、ナイロン66樹脂の場合は、シリンダ温度280℃に設定して溶融混練した。
比較例2に関しては、上記に原料に加えて、さらにガラス繊維25質量部混合して、溶融混練した。また、比較例5に関しては、上記原料(但し、ナイロン6樹脂は70質量部)に、マレイン酸変性HDPE(D -1)30質量部を混合し溶融混練した。
得られた樹脂組成物を用いて、ナイロン6樹脂の場合は、実施例1と同様の条件下にて、ナイロン66樹脂の場合は、実施例4と同様の条件下にて、射出成形、異形押出成形、Tダイ押出シート成形、ダイレクトブロー成形して各種評価を行った。その結果を表2に示した。
Figure 2009114366
Figure 2009114366
表1及び2から分かるように、実施例1〜6は改質前のポリアミドの比較例1〜3、及び固相重合したポリアミドの比較例4と比べて、射出成形性のバリ発生レベルの改良、耐熱性、耐衝撃性を維持した機械的物性の改良が実現しており、異形押出し加工性についてはサイジング金型加工性の改良、異形押出製品の寸法精度向上させることに優れている。
Tダイ押出成形では、本発明の樹脂組成物の溶融強度が大幅に向上するため、ロールからのシート剥離性、およびシート引取り性を改善する事ができる。
ダイレクトブロー成形では、パリソンの保持が優れており、さらに製品精度が良好となるため、連続生産時の安定性、および良品生産率が大幅に向上する。さらに、実施例2、6においては、空気中に放出されたパリソンがより固化しにくく、より複雑な形状であっても形状付与が容易である。
一方、比較例1〜5は、反応基含有アクリル共重合体(B)を含んでいないため、本発明の範囲外である。比較例5は、溶融強度を大幅に向上させるためマレイン酸変性HDPEが配合されているが、熱変形温度が大きく低下したり、ポリアミドの成形温度設定におけるオレフィンの滞留安定性が悪く、ブロー成形製品の肉厚ムラが大きい等、課題が多い。
また、ガソリン透過性が大きく増加しており、燃料系部品には適合できない結果である。また、比較例6、7は反応基含有アクリル共重合体の配合量が、本発明の範囲外である。比較例6は、反応基含有アクリル共重合体(B)の配合量が、0.005%と少なすぎるため充分増粘できておらず、特にブロー成形時のパリソン保持状態が悪い。また、比較例7は、反応基含有アクリル共重合体(B)の配合量が、15%と多すぎるため、特にブロー成形時において、パリソン保持状態は良好であるが、反応性が高すぎて、溶融粘度が安定せず、パリソン肉厚が変動してしまい好ましくない。また、粘度が余りにも高すぎるため、成形機のトルク限界値に非常に近い状態にあり、しばしば機械が停止してしまい、連続生産性が非常に悪い結果であった。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、耐熱性・耐薬品性に優れ、射出成形、異形押出成形、Tダイ押出成形、ブロー成形ができるため、広い分野の成形品として利用可能である。特に、ブロー成形性に優れているので、例えば、耐熱性ダクト、ホース、カバーなどの自動車エンジンルーム内の自動車関連部品への適用が可能であり、産業界への寄与が大である。
ブロー成形評価に用いた成形品の概略図である。
符号の説明
L・・・成形品長さ(金型寸法:230mm)
W0・・底面直径(金型寸法:57mm)
W1・・蛇腹谷部直径(金型寸法:47mm)
W2・・蛇腹山部直径(金型寸法:63mm)

Claims (5)

  1. ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、ビニル芳香族モノマー20〜99質量%、グリシジルアルキル(メタ)アクリレート1〜80質量%及びアルキル(メタ)アクリレート0〜70質量%からなる反応基含有アクリル系共重合体(B)を0.5〜10質量部含有させてなることを特徴とする高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物。
  2. 反応基含有アクリル系共重合体(B)が、エポキシ価が800〜6000当量/10gで、かつ質量平均分子量が500〜100000である請求項1に記載の高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物。
  3. ポリアミド樹脂(A)が、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6T/6、ナイロンMXD−6、ナイロン11、ナイロン12及びこれらの混合物又は共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物。
  4. ポリアミド樹脂(A)、反応基含有アクリル系共重合体(B)及び(A)以外の非晶性ポリアミド樹脂(C)を含有する高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物であって、該樹脂組成物中の組成が、ポリアミド樹脂(A)80〜97質量%、反応基含有アクリル系共重合体(B)0.5〜10質量%及び(A)以外の非晶性ポリアミド樹脂(C)を3〜20質量%含み、かつ該樹脂組成物の示差走査型熱量計(DSC)により測定した降温結晶化温度TCN(℃)と、(C)を含まない樹脂組成物の降温結晶化温度TCM(℃)とが、以下の関係を満たす、請求項1〜3のいずれかに記載の高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物。
    TCM(℃)−TCN(℃) ≧ 5(℃)
  5. ポリアミド樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂と反応基含有アクリル系共重合体(B)とを溶融混練させて得た樹脂組成物とポリアミド樹脂(A)とを、溶融混練することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高溶融粘度ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
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