JP5668387B2 - 中空成形体用強化ポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた中空成形体 - Google Patents

中空成形体用強化ポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた中空成形体 Download PDF

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本発明は、ポリアミド樹脂の優れた物性、特性を損なうことなく低吸水性で押出やブロー成形に適し、かつ寸法安定性に優れた中空成形体の提供が可能な強化ポリアミド樹脂組成物に関する。
ポリアミド樹脂は一般的に溶融粘度が低く、押出やブロー成形時にパリソン形体保持が困難でドローダウンが起こり易いため、ポリアミド樹脂だけで押出やブロー成形に供されることはなく、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン樹脂などのポリアミド樹脂以外の多量の樹脂が配合されてブロー成形性を改善して用いられている(例えば特許文献1、2)。このため、多量に配合されるポリアミド以外の樹脂の影響で、ポリアミド樹脂本来の機械強度、耐熱性、耐薬品性などの特性が損なわれてしまうという問題があった。
そこで、本発明者らは、非晶性ポリアミド樹脂を配合してポリアミド樹脂の含有量を高めるとともに少量のグリシジル基含有アクリル共重合体を反応せしめたポリアミド組成物を先に提案した(特許文献3)。
この方法では、ポリアミド樹脂本来の優れた強度、剛性、耐薬品性および耐熱性を保持しつつ、強化ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度と固化速度をコントロールすることができ、ブロー成形性も良好であったが、ポリアミドの欠点である比較的高い吸湿性とそれに基づく寸法変化と成形時の滞留安定性については改善の余地があるとともに、強化材のガラス繊維の配合量を、30質量%を超える量にすると、ブロー成形金型に接触しない押出やブロー成形品の内面が、ガラス繊維が毛羽立って凹凸が著しい荒れた状態になってしまうという問題があった。
特開平5−339495号公報 特公昭60−170664公報 特開2009−132908公報
そこで本発明は、より低吸水性で寸法安定性、耐薬品性、押出やブロー成形性に優れるポリアミド樹脂組成物を提供するのみならず、押出やブロー成形時の滞留安定性を改良するとともに、ガラス繊維の配合量が30質量%を超える量にしても押出やブロー成形品の内面の強化繊維の毛羽立ちに起因する凹凸発生を抑制し、平滑な内面の形成が可能な強化ポリアミド樹脂組成物を提供しようとするものである。
本発明者は、上記目的を達成するために、10Tナイロンの共重合成分として11ナイロンおよび/又は12ナイロンを特定の割合で共重合したポリアミド(以下、簡略のために単に10T11共重合ポリアミドと略記することがある。)に、グリシジル基を含有する特定のビニル系共重合体と特定の反応性官能基を有するポリオレフィン系共重合体とを併用配合すると、増粘効果が著しく向上し、押出やブロー成形性に優れるのみならず、押出やブロー成形時の滞留安定性にも優れ、低吸水性で寸法安定性、耐薬品性に優れた強化ポリアミド樹脂組成物及びその成形体を提供できることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明によれば、
(1). (a)デカンテレフタルアミド単位50〜98モル%及び(b)ウンデカンアミド単位又は/及びドデカンアミド単位50〜2モル%からなる共重合ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)を0.3〜10質量部、カルボン酸基又は/及びカルボン酸無水物基を有するオレフィン系重合体(C)を0.1〜10質量部、繊維状強化材(D)を20〜150質量部含有し、さらに下記(イ)及び(ロ)の特性を満足することを特徴とする中空成形体用強化ポリアミド樹脂組成物。
(イ)共重合ポリアミド樹脂の融点+25℃の温度で、せん断速度0.5mm/分における溶融粘度が4000〜20000Pa・sである。
(ロ)共重合ポリアミド樹脂の融点+25℃の温度で、荷重10kgにおけるメルトマスフローレイト(JIS K 7210に準拠)において、既定のメルトマスフローレイト(MFR)とメルトマスフローレイト測定時に20分間滞留させた後のメルトマスフローレイト(MFR20)との差が−1.0〜1.0の範囲内である。
(2). 共重合ポリアミド樹脂(A)が、(a)デカンテレフタルアミド単位75〜98モル%及び(b)ウンデカンアミド単位又は/及びドデカンアミド単位25〜2モル%からなる前記(1)に記載の中空成形体用強化ポリアミド系樹脂組成物。
(3). 共重合ポリアミド樹脂(A)が、(c)前記(a)の構成単位以外のジアミンとジカルボン酸から得られる構成単位、または前記(b)の構成単位以外のアミノカルボン酸もしくはラクタムから得られる構成単位を最大30モル%まで含有する前記(1)に記載の中空成形体用強化ポリアミド樹脂組成物。
(4). グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)が、1分子鎖当りの平均グリシジル基数が2〜4個である前記(1)に記載の中空成形体用強化ポリアミド樹脂組成物。
(5). グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)が、スチレン系重合体単位99〜50質量%、グリシジル基含有アクリル系重合体単位1〜30質量%、及びその他のビニル系重合体単位0〜40質量%からなる共重合体である前記(1)に記載の中空成形体用強化ポリアミド樹脂組成物。
(6). 前記(1)〜(5)のいずれかに記載の強化ポリアミド樹脂組成物を用いて得られた中空成形体。
(7). 中空成形体が、自動車関連部品である前記(6)に記載の中空成形体。
(8). 自動車関連部品が、吸気・排気系部品である前記(7)に記載の中空成形体。
(9). 吸気・排気系部品が、エアホース、エアダクト、ターボダクト、ターボホース、インテークマニホールド、またはエグゾ−ストマニホールドである前記(8)に記載の中空成形体。
(10). ダイレクトブロー、三次元シングルブロー、三次元エクスチェンジブロー、サクションブロー、三次元サクションブロー、三次元エクスチェンジサクションブロー、インジェクションストレッチブローのいずれか1種の中空成形法を用いて得られた前記(9)に記載の中空成形体。
本発明の中空成形体用強化ポリアミド系樹脂組成物は、優れた押出性やブロー成形性を有するのみならず、押出やブロー成形時の滞留安定性を改良するとともに、ガラス繊維の配合量が30質量%を超える量にしても中空成形体の内面にガラス繊維の毛羽立ちが発生せず、低吸水性で寸法安定性、耐薬品性に優れた成形体の提供が可能なポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
また、得られる中空成形体は、内面のガラス繊維の毛羽立ちが抑制できるため、毛羽が中空部を流動する流体の流動の障害になったり、脱落して流体中に混入するなどの問題発生を防止することが可能である。
成形性評価のために成形したパイプについて、上面から見た形状、寸法の概略及びパイプ肉厚の測定箇所を示した説明図(写真)である。 切断したパイプの内面を示す図(写真)であり、毛羽立ちの観察箇所を示したものである。 切断したパイプの内面で、ガラス繊維の毛羽立ちのない状態を示す図(写真)である。 切断したパイプの内面で、ガラス繊維の毛羽立ちのある状態を示す図(写真)である。
以下、本発明の中空成形体用強化ポリアミド系樹脂組成物について詳述する。
本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)は、10Tナイロンに相当する(a)成分と11ナイロンおよび/又は12ナイロンに相当する(b)成分を特定の割合で含有するものであり、10Tナイロンの欠点である成形性、耐衝撃性が改良されているのみならず、低吸水性も高度に満足するという特徴を有する。
(a)成分は、1,10−デカンジアミン(10)とテレフタル酸(T)を等量モルで縮重合させることにより得られる10Tナイロンに相当するものであり、具体的には、下記式(I)で表されるものである。
(a)成分は、本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)の主成分であり、共重合ポリアミドに優れた耐熱性、低吸水性、耐薬品性、摺動性、などを付与する役割を有する。共重合ポリアミド中の(a)成分の配合割合は、50〜98モル%であり、好ましくは50〜90モル%、さらに好ましくは55〜85モル%である。(a)成分の配合割合が上記下限未満の場合、結晶成分である10Tナイロンが共重合成分により結晶阻害を受け、成形性や高温特性の低下を招くおそれがあり、一方上記上限を超える場合、加工性や耐衝撃性が著しく低下するため好ましくない。
(b)成分は、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、ウンデカンラクタム、又はラウリルラクタムを重縮合させることにより得られる11ナイロン、12ナイロンに相当するものであり、具体的には、下記式(II)、(III)で表されるものである。これらは単独で使用しても良いし、混合物を使用することもできる。
(b)成分は、(a)成分の欠点を改良するためのものであり、共重合ポリアミドの耐衝撃性、加工性、低吸水性の全てを改善する役割を有する。共重合ポリアミド中の(b)成分の配合割合は、50〜2モル%であり、好ましくは50〜10モル%、更に好ましくは45〜15モル%である。(b)成分の配合割合が上記下限未満の場合、共重合ポリアミドの耐衝撃性が向上せず、低吸水化効果も不十分である。上記上限を超える場合、共重合ポリアミドの結晶性が大幅に低下し結晶化速度が遅くなり成形性が悪くなるだけでなく耐衝撃性が劣るおそれがあると共に、10Tナイロンに相当する(a)成分の量が少なくなり、耐熱性や摺動性が不足するおそれがあり、好ましくない。
なお、特に耐熱性が要求される場合には、共重合ポリアミド樹脂(A)が、(a)デカンテレフタルアミド単位75〜98モル%、及び(b)ウンデカンアミド単位又は/及びドデカンアミド単位25〜2モル%からなるポリアミド樹脂であることが好ましい。
本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)は、上記(a)成分及び(b)成分以外に、(c)上記(a)の構成単位以外のジアミンとジカルボン酸の等量モル塩から得られる構成単位、または上記(b)の構成単位以外のアミノカルボン酸もしくはラクタムから得られる構成単位を最大30モル%共重合しても良い。(c)成分としては、共重合ポリアミド(A)に10Tナイロンや11ナイロン、12ナイロンによっては得られない他の特性を付与したり、10Tナイロンや11ナイロン、12ナイロンによって得られる特性をさらに改良する役割を有するものである。
(c)に用いる共重合成分は具体的には以下のような共重合成分が挙げられる。アミン成分としては、1,2−エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ベンタメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、1,11−ウンデカメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、1,13−トリデカメチレンジアミン、1,16−ヘキサデカメチレンジアミン、1,18−オクタデカメチレンジアミン、2,2,4(または2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミンのような脂肪族ジアミン、ピペラジン、シクロヘキサンジアミン、ビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタン、ビス−(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタン、イソホロンジアミンのような脂環式ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族ジアミンおよびこれらの水添物等があげられる。ポリアミドの酸成分としては、以下に示す多価カルボン酸、もしくは酸無水物を使用できる。多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボンル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホン酸ナトリウムイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,18−オクタデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族や脂環族ジカルボン酸等があげられる。また、ε−カプロラクタムなどのラクタムおよびこれらが開環した構造であるアミノカルボン酸などがあげられる。
具体的な(c)成分としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ナイロンPXD6)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ナイロン4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロン5T)、ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロンM−5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン6T(H))ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ナイロンPACMT)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ナイロンPACMI)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ナイロンPACM14)などが挙げられる。
前記構成単位の中でも、好ましい(c)成分の例としては、加工性、低吸水性、耐衝撃性向上のためにポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)やポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカアミド(ナイロン1012)などが挙げられる。共重合ポリアミド中の(c)成分の配合割合は、最大30モル%までであることが好ましく、さらに好ましくは5〜20モル%である。(c)成分の割合が、上記上限を超える場合、必須成分である(a)成分や(b)成分の量が少なくなり、本発明で用いられる共重合ポリアミド(A)の本来意図される効果が十分発揮されないおそれがあり、好ましくない。
本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)は、特性上大きな差異は無いが、植物由来の原料を用いることが、低炭素社会、環境調和を目指す上で好ましい。具体的には、食用と競合しないヒマシ油由来原料を用いることが好ましく、本発明内の(a)成分中のデカンジアミン、(b)成分中としてアミノウンデカン酸、(c)成分としてセバシン酸は植物由来原料を用いることが好ましい。本発明の好ましい樹脂組成としては、これら植物原料を用い極めて高い植物由来原料比率を示すナイロン10T/11、ナイロンPA10T/1010/11が挙げられる。
本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)は220〜315℃が好ましく、より好ましくは240〜300℃である。Tmが上記上限を超える場合、共重合ポリアミドをブロー成形などにより成形する際に必要となる加工温度が極めて高くなるため、加工時に分解し、目的の物性や劣化による分子量低下が発生して良好な成形性が得られない場合がある。逆にTmが上記下限未満の場合、結晶化速度が遅くなり、いずれも成形が困難になる。また、ガラス転移温度(Tg)は50〜120℃が好ましく、より好ましくは60〜100℃である。Tgが上記上限を超える場合、共重合ポリアミドをブロー成形法などにより成形する際に、必要とされる金型温度が高くなり成形が困難になるだけでなく、ブロー成形のサイクルの中では十分に結晶化が進まない場合があり、熱変形温度が低下したり、後の使用において、高温下で結晶化が進行し二次収縮による変形などが問題となる。逆にTgが上記下限未満の場合、物性の大きな低下や、吸水後の物性が維持できないなどの問題が発生する。
本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)を製造するに際に使用する触媒としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸もしくはその金属塩やアンモニウム塩、エステルが挙げられる。金属塩の金属種としては、具体的には、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモンなどが挙げられる。エステルとしては、エチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、デシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステルなどを添加することができる。また、溶融滞留安定性向上の観点から、水酸化ナトリウムを添加することが好ましい。
本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)の96%濃硫酸中20℃で測定した相対粘度(RV)は0.4〜4.0が好ましく、より好ましくは1.0〜3.5、さらに好ましくは1.5〜3.0である。ポリアミドの相対粘度を一定範囲とする方法としては、分子量を調整する手段が挙げられる。
本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)は、アミノ基量とカルボキシル基とのモル比を調整して重縮合する方法や末端封止剤を添加する方法によって、ポリアミドの末端基量および分子量を調整することができる。アミノ基量とカルボキシル基とのモル比を一定比率で重縮合する場合には、使用する全ジアミンと全ジカルボン酸のモル比をジアミン/ジカルボン酸=1.00/1.05から1.10/1.00の範囲に調整することが好ましい。
末端封止剤を添加する時期としては、原料仕込み時、重合開始時、重合後期、または重合終了時が挙げられる。末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基またはカルボキシル基との反応性を有する単官能性の化合物であれば特に制限はないが、モノカルボン酸またはモノアミン、無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などを使用することができる。末端封止剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン等が挙げられる。
本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)の酸価およびアミン価としては、それぞれ0〜200当量/10g、0〜200当量/10gであることが好ましい。末端官能基が200当量/10g以上であると、溶融滞留時にゲル化や劣化が促進されるだけでなく、使用環境化においても、着色や加水分解等の問題を引き起こす。一方、ガラスファイバーやマレイン酸変性ポリオレフィンなどの反応性化合物をコンパウンドする際は、反応性および反応基に合わせ、酸価および/又はアミン価を5〜100当量/10gとすることが好ましい。
本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)は、従来公知の方法で製造することができるが、例えば、(a)成分の原料モノマーであるデカンジアミン、テレフタル酸、及び(b)成分である11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタム及びこれら混合物からなる群より選ばれた原料モノマー、並びに必要により(c)前記(a)の構成単位以外のジアミンとジカルボン酸の等量モル塩、または前記(b)の構成単位以外のアミノカルボン酸もしくはラクタムから得られる原料モノマーを共縮合反応させることによって容易に合成することができる。共縮重合反応の順序は特に限定されず、全ての原料モノマーを一度に反応させてもよいし、一部の原料モノマーを先に反応させ、続いて残りの原料モノマーを反応させてもよい。また、重合方法は特に限定されないが、原料仕込みからポリマー作製までを連続的な工程で進めても良いし、一度オリゴマーを作製した後、別工程で押出し機などにより重合を進める、もしくはオリゴマーを固相重合により高分子量化するなどの方法を用いても良い。原料モノマーの仕込み比率を調整することにより、合成される共重合ポリアミド中の各構成単位の割合を制御することができる。
本発明で用いられるグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)とは、グリシジル基含有アクリル系単量体及びスチレン系単量体を含有する単量体混合物を重合して得られるもの、或いはグリシジル基含有アクリル系単量体、スチレン系単量体及びその他のビニル系単量体を含有する単量体混合物を重合して得られるものである。グリシジル基含有アクリル系単量体として、例えば(メタ)アクリル酸グリシジルやシクロヘキセンオキシド構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルグリシジルエーテル等が挙げられる。グリシジル基含有アクリル系単量体として好ましいものは、反応性の高い(メタ)アクリル酸グリシジルである。スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等が用いられる。
その他のビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の炭素数が1〜22のアルキル基(アルキル基は直鎖、分岐鎖でもよい)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジアルキルアミド、酢酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アリルエーテル類等の芳香族系ビニル系単量体、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンモノマーも使用可能である。これらは、一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。
本発明におけるグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)は、スチレン系重合体単位、グリシジル基含有アクリル系重合体単位及びその他のビニル系重合体単位が各々99〜50質量%、1〜30質量%及び0〜40質量%が好ましく、95〜50質量%、5〜20質量%及び0〜40質量%がより好ましく、93〜60質量%、7〜15質量%及び0〜30質量%が更に好ましい。
スチレン系重合体単位の含有量が50質量%未満では、共重合ポリアミド(A)との混和性が劣り、ゲル化しやすくなる傾向があり、組成物の剛性を低下させる恐れがある。また、グリシジル基含有アクリル系重合体単位の含有量が30質量%を超えるとゲル化しやすくなる。
具体例としてスチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル、スチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル/(メタ)アクリル酸メチル、スチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル/(メタ)アクリル酸ブチル共重合体などを例示することが出来るが、これらに限定されるものではない。
本発明で用いられるグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)は、1分子鎖当りグリシジル基を平均で2〜4個含有することが好ましい。1分子鎖当りグリシジル基数が2未満では増粘が不十分となり、1分子鎖当りグリシジル基数が4を超えると組成物のゲル化などが起こりやすくなり組成物の滞留安定性が劣るようになる。
グリシジル基の濃度をエポキシ価で示すと、300〜1,200当量/10gであることが好ましく、より好ましくは400〜1,000当量/10gであり、さらに好ましくは500〜1,000当量/10gである。
エポキシ価が300当量/10g未満であると、ポリアミド樹脂との反応性が不足して増粘効果が不十分になることがある。一方、1,200当量/10gを超えるとゲル化等が発生し、成形品外観、成形性に悪影響をおよぼすことがある。
グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)の重量平均分子量は、500〜20,000であることが好ましく、より好ましくは700〜10,000、さらに好ましくは1000〜10,000である。重量平均分子量が500未満であると、未反応の反応基アクリル系共重合体が、成形品表面にブリードアウトし成形品表面の汚染をひきおこすことがある。一方、20,000を超えるとポリアミド樹脂との相溶性が悪くなり、相分離及びゲル化等が発生し成形品外観に悪影響をおよぼすことがある。
グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)の添加量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し0.3〜10質量部であり、1〜8質量部が好ましい。最適添加量はエポキシ価により変化し、エポキシ価が高ければ添加量は少なくてよく、エポキシ価が低ければ添加量を多くする必要がある。前記エポキシ価の範囲であれば添加量0.3質量部未満であると増粘効果が低く、10質量部を超えると部分的にゲル化等が発生し成形品外観、成形性に悪影響をおよぼしたり、押出し機内での短い時間では充分な反応が進行せず、残存したエポキシ基が成形機中で反応して粘度が変化し成形が安定しなかったりする。
本発明で用いられるカルボン酸基又は/及びカルボン酸無水物基を有するオレフィン系重合体(C)(以下、単に変性オレフィン系重合体(C)と略記することがある。)とは、カルボン酸基又は/及びカルボン酸無水物基を有する単量体を共重合やグラフト重合などによってポリマー分子鎖中に含ませたα−オレフィンの重合体または共重合体である。
オレフィン系重合体の具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリメチルペンテンなどのホモポリマー、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、イソブチレンなどのα−オレフィン、1,4−ヘキサジエンジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−エチル−2,5−ノルボルナジエン、5−(1´−プロベニル)−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンの少なくとも1種を通常の金属触媒、あるいはメタロセン系高性能触媒を用いてラジカル重合して得られるポリオレフィンを挙げることができる。
また、ジエン系エラストマとしてはビニル系芳香族炭化水素と共役ジエンとからなるA−B型またはA−B−A’型のブロック共重合弾性体であり、末端ブロックAおよびA’は同一でも異なってもよく、かつ芳香族部分が単環でも多環でもよいビニル系芳香族炭化水素から誘導された熱可塑性単独重合体または共重合体が挙げられ、かかるビニル系芳香族炭化水素の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、エチルビニルキシレン、ビニルナフタレンおよびそれらの混合物などが挙げられる。中間重合体ブロックBは共役ジエン系炭化水素からなり、例えば1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンおよびそれらの混合物から誘導された重合体などが挙げられる。本発明では、上記ブロック共重合体の中間重合体ブロックBが水添処理を受けたものも含まれる。
ポリオレフィン共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ヘキセン−1共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、未水添または水添ポリブタジエン、未水添または水添スチレン/イソプレン/スチレントリブロック共重合体、未水添または水添スチレン/ブタジエン/スチレントリブロック共重合体などが挙げられる。
カルボン酸基又は/及びカルボン酸無水物基を導入する方法は、特に制限なく、共重合せしめたり、未変性ポリオレフィンにラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。これらの官能基含有成分の導入量は、共重合の場合は、変性ポリオレフィン中のオレフィンモノマー全体に対して0.1〜20モル%、好ましくは0.5〜12モル%の範囲内、グラフトの場合は、変性ポリオレフィン質量に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜6質量%の範囲内が適当である。
官能基含有成分の導入量が上記の範囲を下回る場合は、増粘が不十分になり、上記の範囲を上回る場合は、溶融粘度の安定性が損なわれる恐れがある。
本発明で特に有用な変性ポリオレフィン系重合体(C)の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、(“g”はグラフトを表わす、以下同じ)、エチレン/メタクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/2,5−ノルボルナジエン−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/イソプレン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、などを挙げることができる。
これらの中で、ポリアミド中のアミンとの反応性が高いカルボン酸無水物基を有する重合体、共重合体が好ましい。
カルボン酸基又は/及びカルボン酸無水物基を有するオレフィン系重合体(C)の添加量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し0.1〜10質量部であり、0.3〜5質量部が好ましい。0.1質量部未満では増粘効果が小さく、10質量部を超えると高度架橋によりゲル等が発生しやすくなる。
また、高度架橋によりゲル等が発生しない範囲であれば、上記グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)、変性オレフィン系重合体(C)以外の化合物も任意に添加することができる。
上記グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)以外の化合物が持つ官能基は、溶融押出時にアミノ基あるいはカルボキシル基と反応するものであればいかなるものでも良い。また、1分子中に異なった種類の官能基を持つことも差し支えない。例えば、グリシジル基、カルボキシル基、カルボン酸金属塩、エステル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボジイミド基等の官能基、さらにはラクトン、ラクチド、ラクタム等ポリエステル末端と開環付加する官能基が挙げられる。このうち、好ましい官能基としては、反応の速さの観点から、グリシジル基あるいはカルボジイミド基が挙げられる。
本発明で用いられる繊維状強化材(D)としては、強度や剛性および耐熱性等の物性を最も効果的に改良するものであり、具体的にはガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ジルコニヤ繊維等の繊維状のもの、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等のウイスカー類、針状ワラストナイト、ミルドフィバー等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
特にガラス繊維、炭素繊維などが好ましく用いられる。これらの繊維状強化材は、有機シラン系化合物、有機チタン系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ系化合物等のカップリング剤で予め処理をしてあるものが好ましく、カルボン酸基又は/及びカルボン酸無水物基と反応しやすいものが特に好ましい。カップリング剤で処理してあるガラス繊維を配合したポリアミド系樹脂組成物では優れた機械的特性や外観特性の優れた成形品が得られるので好ましい。また 他の繊維状強化材においても、カップリング剤が未処理の場合は後添加して使用することが出来る。
ガラス繊維としては、繊維長1〜20mm程度に切断されたチョップドストランド状ものもが好ましく使用できる。ガラス繊維の断面形状としては、円形断面及び非円形断面のガラス繊維を用いることができる。ガラス繊維の断面形状としては、物性面より非円形断面のガラス繊維が好ましい。非円形断面のガラス繊維としては、繊維長の長さ方向に対して垂直な断面において略楕円系、略長円系、略繭形系であるものをも含み、偏平度が1.5〜8であることが好ましい。ここで偏平度とは、ガラス繊維の長手方向に対して垂直な断面に外接する最小面積の長方形を想定し、この長方形の長辺の長さを長径とし、短辺の長さを短径としたときの、長径/短径の比である。ガラス繊維の太さは特に限定されるものではないが、短径が1〜20μm、長径2〜100μm程度である。繊維状強化材の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリアミド(A)100質量部に対して20〜150質量部を添加することが可能であるが、配合量が150質量部を超えると溶融時の伸びが無くなりエアー吹き付け時に穴が開く場合がある。また20質量部未満では強化材の効果が充分発揮できない場合がある。
本発明の強化ポリアミド樹脂組成物は、融点より25℃高い温度で0.5mm/分の低い剪断速度で測定した溶融粘度が、4,000〜20,000Pa・sである。好ましくは5,000〜20,000Pa・s、より好ましくは、7,000〜15,000Pa・sであり、これらの範囲であることにより、成形性と生産性が優れる。
一般に押出やブロー成形時のパリソン成形は比較的低い剪断速度で押出されるため、溶融粘度が4,000Pa・s未満では、ノズルから放出したパリソンが自重でドローダウンして成形できなかったり、成形品の肉厚が不均一となる場合がある。一方、溶融粘度が20,000Pa・sを超えると溶融粘度が高すぎて成形機や押出し機モーターに負荷がかかって成形機破損の恐れがある。
また、本発明の強化ポリアミド樹脂組成物は、融点より25℃高い温度で、荷重10kgにおけるメルトフローインデックス(JIS K 7210に準拠)において、既定のメルトマスフローレイト(MFR)とメルトマスフローレイト測定時に20分間滞留させた後のメルトマスフローレイト(MFR20)との差が−1.0〜1.0の範囲内である。ここで、「既定のメルトマスフローレイト」とは、JIS K 7210に準拠して測定したことを示す。また、MFRとMFR20との差とは、(MFR−MFR20)であり、単位はg(グラム)である。
MFRとMFR20との差が、−1.0〜1.0の範囲内でないと、中空成形体の内面の毛羽立ちの抑制が不十分になる。MFRとMFR20との差は、小さければ小さい方がよく、好ましくは−0.9〜0.9の範囲内、より好ましくは−0.7〜0.7である。
本発明の強化ポリアミド樹脂組成物においては、共重合ポリアミド樹脂(A)がカルボン酸基又は/及びカルボン酸無水物基を有するオレフィン系重合体(C)と優先的に反応し、次いでグリシジル基を2個以上含有するスチレン系共重合体(B)は、芳香環を多量に有するとともにグリシジル基を2〜4個有して比較的高分子量であるため、芳香環を有する共重合ポリアミド樹脂(A)に対する混和性が良好でよく分散して、共重合ポリアミド樹脂(A)とオレフィン系重合体(C)のいずれともグリシジル基を介して反応するため、ゲルには至らない比較的ゆるやかな架橋や分岐構造が生成するため、ポリアミド系樹脂組成物の溶融粘度が高まるものと考えられる。また、共重合ポリアミド樹脂(A)、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)及びオレフィン系重合体(C)の組み合わせは、詳細な理由は不明であるが、繊維状強化材(D)との混和性が高まり、ブロー成形した時の成形品内面の繊維状強化材(D)による毛羽立ちを抑制することができると考えられる。
本発明の強化ポリアミド樹脂組成物には、上記のもの以外に、従来のポリアミド用の各種添加剤を使用することができる。添加剤としては、充填材、安定剤、衝撃改良材、難燃剤、離型剤、摺動性改良材、着色剤、可塑剤、結晶核剤、本発明で用いられる共重合ポリアミド(A)とは異なるポリアミド、ポリアミド以外の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
充填材(フィラー)としては、目的別には強化用フィラーや導電性フィラー、磁性フィラー、難燃フィラー、熱伝導フィラーなどが挙げられ、具体的にはガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスバルーン、シリカ、タルク、カオリン、ワラストナイト、マイカ、アルミナ、ハイドロタルサイト、モンモリロナイト、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、赤燐、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。これら充填材は、1種のみの単独使用だけではなく、数種を組み合わせて用いても良い。充填材の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリアミド100質量部に対して250質量部以下、好ましくは20〜150質量部の充填材を添加することが可能である。また、繊維状強化材、充填材はポリアミド樹脂との親和性を向上させるため、カップリング剤処理したもの、またはカップリング剤と併用することが好ましく、カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤のいずれを使用しても良いが、その中でも、特にアミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤が好ましい。
安定剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などの有機系酸化防止剤や熱安定剤、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、イミダゾール系等の光安定剤や紫外線吸収剤、金属不活性化剤、銅化合物などが挙げられる。銅化合物としては、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、塩化第二銅、臭化第二銅、ヨウ化第二銅、燐酸第二銅、ピロリン酸第二銅、硫化銅、硝酸銅、酢酸銅などの有機カルボン酸の銅塩などを用いることができる。さらに銅化合物以外の構成成分としては、ハロゲン化アルカリ金属化合物を含有することが好ましく、ハロゲン化アルカリ金属化合物としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウムなどが挙げられる。これら添加剤は、1種のみの単独使用だけではなく、数種を組み合わせて用いても良い。安定剤の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリアミド100質量部に対して0〜5質量部を添加することが可能である。
本発明の強化ポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲においてポリアミド以外の熱可塑性樹脂を添加しても良い。ポリアミド以外のポリマーとしては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリサルホン(PSU)、ポリアリレート(PAR)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート(PC)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、相溶性が悪い場合は、反応性化合物やブロックポリマー等の相溶化剤を添加するか、ポリアミド以外のポリマーを変性(特に酸変性が好ましい)することが重要である。これら熱可塑性樹脂は、溶融混練により、溶融状態でブレンドすることも可能であるが、熱可塑性樹脂を繊維状、粒子状にし、本発明で用いられる共重合ポリアミド樹脂(A)に分散しても良い。熱可塑性樹脂の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリアミド樹脂100質量部に対して0〜50質量部を添加することが可能である。
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤とアンチモンの組み合わせが良く、ハロゲン系難燃剤としては、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体、臭素化スチレン無水マレイン酸重合体、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、デカブロモジフェニルエーテル、デカブロモビフェニル、臭素化ポリカーボネート、パークロロシクロペンタデカン及び臭素化架橋芳香族重合体等が好ましく、アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等が好ましい。中でも、熱安定性の面よりジブロムポリスチレンと三酸化アンチモンとの組み合わせが好ましい。また、非ハロゲン系難燃剤としては、メラミンシアヌレート、赤リン、ホスフィン酸の金属塩、含窒素リン酸系の化合物が挙げられる。特に、ホスフィン酸金属塩と含窒素リン酸系化合物との組み合わせが好ましく、含窒素リン酸系化合物としては、メラミンまたは、メラム、メロンのようなメラミンの縮合物とポリリン酸の反応性生物またはそれらの混合物を含む。その際、金型等の金属腐食防止として、ハイドロタルサイト系化合物の添加が好ましい。難燃剤の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリアミド100質量部に対して0〜50質量部を添加することが可能である。
離型剤としては、長鎖脂肪酸またはそのエステルや金属塩、アマイド系化合物、ポリエチレンワックス、シリコン、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。長鎖脂肪酸としては、特に炭素数12以上が好ましく、例えばステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などが挙げられ、部分的もしくは全カルボン酸が、モノグリコールやポリグリコールによりエステル化されていてもよく、または金属塩を形成していても良い。アマイド系化合物としては、エチレンビステレフタルアミド、メチレンビスステアリルアミドなどが挙げられる。これら離型剤は、単独であるいは混合物として用いても良い。離型材の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリアミド100質量部に対して0〜5質量部を添加することが可能である。
摺動性改良材としては、高分子量ポリエチレン、酸変性高分子量ポリエチレン、フッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン、シリコン樹脂、シリコンオイル、亜鉛、グラファイト、鉱物油等が挙げられる。樹脂摺動性改良材は本発明の特性を損なわない範囲、例えば0.05〜3質量部の範囲で添加することができる。
本発明の強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、特に制限はなく、当業者に周知のいずれの方法も可能であり、単軸押出機、2軸押出機、加圧ニーダ、バンバリーミキサ等が使用することができる。なかでも2軸押出機を使用することが好ましい。
なお、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)及び変性オレフィン系重合体(C)は、重合終了後のポリアミド樹脂に対し添加することができる。例えば重合終了後の重合機内に添加する、あるいは重合機を出た直後の溶融状態のポリアミド樹脂に直接添加剤を混合混練する方法及び固体化(たとえば粉末、ペレット状など)したポリアミド樹脂に添加剤を加え、次いで溶融混練する方法などが適用できる。
前者の方法においてはポリアミド樹脂が溶融状態にあるので、添加剤の添加によりそのまま高溶融粘度化されるが、後者の方法においては添加剤を均一に分散混合されたポリアミド樹脂は高溶融粘度化のために加熱再溶融される。
2軸押出機の条件は、ポリアミド樹脂の種類、添加剤種類・量など種々の要因により異なり一義的に決められない。ポリアミド樹脂の融点は170〜320℃範囲であり、その加工温度は融点+25℃前後で温度設定をすればよい。反応時間は10分間以内、例えば1分から数分間で充分目的とする溶融粘度に到達すると考えてよい。
スクリュー構成は練りの優れるニーデングディスクを数箇所組み込むことが好ましい。この様に反応基含有アクリル系共重合体を混合溶融して作成した高溶融粘度ポリアミド樹脂は、均一で溶融状態における粘度安定性が高く、特に押出成形、ブロー成形に適した流動特性を有している。
本発明の強化ポリアミド樹脂組成物では、押出やブロー成形時に高温の溶融状態で長時間、滞留させる時はポリアミド樹脂組成物の耐熱安定性のために耐熱剤を添加することが有用である。また、120℃以上の高温環境下で有効な長期熱老化性防止剤としては、銅化合物、例えば酢酸銅、ヨウ化銅、塩化銅、臭化銅、のようなハロゲン化銅などが使用することが好ましい。銅化合物の添加量は強化ポリアミド系樹脂組成物100質量部に対して0.005〜0.5質量部が好ましく、より好ましくは0.01〜0.5質量部である。
銅化合物は、またヨウ化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウムのようなハロゲン化アルカリとの併用も効果的である。またその他の耐熱剤としては、抗酸化剤や酸化防止剤としてリン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト化合物、チオエーテル系化合物等も公知の範囲で使用することが好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例に記載された測定値は、以下の方法によって測定したものである。
(1)原料、原料の調整法及び測定法
[相対粘度]
ポリアミド樹脂0.25gを96%硫酸25mlに溶解し、オストワルド粘度計を用いて20℃で測定した。
[融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)]
105℃で15時間減圧乾燥したポリアミドをアルミニウム製パン(TA Instruments社製、品番900793.901)に10mg計量し、アルミニウム製蓋(TA Instruments社製、品番900794.901)で密封状態にして、測定試料を調製した後、示差走査熱量計DSCQ100(TA INSTRUMENTS製)を用いて室温から20℃/分で昇温し、350℃で3分間保持した後に測定試料パンを取出し、液体窒素に漬け込み、急冷させた。その後、液体窒素からサンプルを取出し、室温で30分間放置した後、再び、示差走査熱量計DSCQ100(TA INSTRUMENTS製)を用いて室温から20℃/分で昇温し、350℃で3分間保持した。その際の融解による吸熱のピーク温度を融点(Tm)とした。また、ガラス転移温度(Tg)は、2度目の昇温過程でガラス転移点以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間での最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
〔ポリアミド10T11の合成(A-1)〕
デカメチレンジアミン8.26kg、テレフタル酸7.97kg、11−アミノウンデカン酸6.43kg、触媒としてジ亜リン酸ナトリウム9g、末端調整剤として酢酸40gおよびイオン交換水17.52kgを50リットルのオートクレーブに仕込み、常圧から0.05MPaまでN2で加圧し、放圧させ、常圧に戻した。この操作を3回行い、N2置換を行った後、攪拌下135℃、0.3MPaにて均一溶解させた。その後、溶解液を送液ポンプにより、連続的に供給し、加熱配管で240℃まで昇温させ、1時間、熱を加えた。その後、加圧反応缶に反応混合物が供給され、290℃に加熱され、缶内圧を3MPaで維持するように、水の一部を留出させ、低次縮合物を得た。その後、この低次縮合物を、溶融状態を維持したまま直接二軸押出し機(スクリュー径37mm、L/D=60)に供給し、樹脂温度を330℃、3箇所のベントから水を抜きながら溶融下で重縮合を進め、共重合ポリアミドを得た。得られた共重合ポリアミドは、10T/11=60/40(モル比)の組成で融点250℃、相対粘度2.6、ガラス転移温度75℃であった。
〔ポリアミド10T11の合成(A-2)〕
デカメチレンジアミンの量を11.01kgに変更し、テレフタル酸の量を10.62kgに変更し、11−アミノウンデカン酸の量を3.22kgに変更した以外は合成例(A-1)と同様にして、共重合ポリアミドを合成した。得られた共重合ポリアミドは、10T/11=80/20(モル比)の組成で融点289℃、相対粘度2.6、ガラス転移温度93℃であった。
〔ポリアミド10T12の合成(A-3)〕
11−アミノウンデカン酸3.22kgをウンデカンラクタム2.93kgに変更した以外は合成例(A-2)と同様にして、共重合ポリアミドを合成した。得られた共重合ポリアミドは、10T/12=80/20(モル比)の組成で融点288℃、相対粘度2.4、ガラス転移温度92℃であった。
〔スチレン系重合体(B-1)の製造〕
オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器のオイルジャケット温度を、200℃に保った。一方、スチレン(以下、Stという。)89質量部、グリシジルメタクリレート(以下、GMAという。)11質量部、キシレン15質量部及び重合開始剤としてジターシャリーブチルパーオキサイド(以下、DTBPという。)0.5質量部からなる単量体混合液を原料タンクに仕込んだ。一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給し、反応器の内容液質量が約580gで一定になるように反応液を反応器の出口から連続的に抜き出した。その時の反応器内温は、約210℃に保たれた。反応器内部の温度が安定してから36分経過した後から、抜き出した反応液を減圧度30kPa、温度250℃に保った薄膜蒸発機により連続的に揮発成分除去処理して、揮発成分をほとんど含まない重合体(B-1)を回収した。
得られた重合体(B-1)は、GPC分析(ポリスチレン換算値)によると質量平均分子量8500、数平均分子量3300であった。エポキシ価は670当量/10g、エポキシ価数(1分子当りの平均エポキシ基の数)は2.2であった。
〔スチレン系重合体(B-2)の製造〕
St77質量部、GMA23質量部、キシレン15質量部、DTBP0.3質量部からなる単量体混合液を用いた以外は、重合体(B-1)の製造と同じ方法にて、重合体(B-2)を製造した。
得られた重合体(B-2)は、GPC分析(ポリスチレン換算値)による質量平均分子量9700、数平均分子量3300であった。エポキシ価は1400当量/10g、エポキシ価数(1分子当りの平均エポキシ基の数)は4.6であった。
〔オレフィン系重合体(C)〕
無水マレイン酸変性エチレン・ブテン-1共重合体(三井化学社製、タフマーMH7020)を使用した。
[繊維状強化材(D)]
ガラス繊維:日本電気硝子社製T-275H(カップリング剤:アミノシラン化合物)を用いた。
その他の添加剤として、下記のものを用いた。
[その他 添加剤]
安定剤1:臭化第二銅(ナカライテスク社製、試薬)
安定剤2:イルガノックスB1171(チバスペシャリティケミカルズ社製)
離型剤:モンタン酸エステルワックスのWE40(クラリアントジャパン社製)
黒顔料:EPC8E313(住化カラー社製)
(2)[実施例、比較例の強化ポリアミド系樹脂組成物の製造法]
実施例1〜6、比較例1〜3
上記した各原料を表1に示した配合比率(その他の添加剤は組成物に対して下記の含有率)に従い計量して、35φ二軸押出機(東芝機械社製)でシリンダ温度は、ポリアミド10T11、10T12の場合は300℃、ポリアミド6の場合は250℃に設定し、スクリュー回転数100rpmにて溶融混錬した。ガラス繊維以外の原料はあらかじめ混合しメインホッパーから投入し、ガラス繊維はベント口からサイドフィードで投入した。押出機から吐出されたストランドは水槽で冷却してストランドカッターでペレット化し、125℃にて5時間乾燥後、各種評価に供した。
その他の添加剤(安定剤1:0.06質量%、安定剤2:0.3質量%、離型剤:0.4質量%、黒顔料:0.8質量%)。
得られた強化ポリアミド樹脂組成物のペレットは、射出成形機でそれぞれの評価試料を成形し、特性を評価した。
(3)[強化ポリアミド樹脂組成物の評価法]
[評価サンプルの成形]
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダ温度は、樹脂の融点+20℃に設定した。金型は縦100mm、横100mm、厚み3mmtの平板作成用金型を使用した。金型温度は130℃に設定し射出速度50mm/秒、保圧30MPa、射出・保圧時間10秒、冷却時間15秒で成形した。
[吸水率及び寸法変化率]
95%RH吸水率の評価には、上記縦100mm、横100mm、厚み3mmの平板を作製し、これを80℃・95%RH環境下にて静置し重量の経時変化をトレースして、重量の変化がなくなった時点で平衡吸水とみなして、重量や寸法を測定し、以下の式より求めた。
95%RH吸水率(%)=(95%RH吸水時の重量−乾燥時重量)/95%RH乾燥時の重量×100
95%RH寸法変化率(%)=(95%RH吸水時の寸法−乾燥時の寸法)/乾燥時の寸法×100
ただし、95%RH、乾燥時共に寸法は、樹脂の流れ方向と反流れ方向の平均値とした。
[メルトマスフローレイト(MFR、MFR20)]
ポリアミド樹脂の融点+25℃の温度で、荷重10kgにおけるメルトマスフローレイト(JIS K 7210に準拠)において、まず、既定のメルトマスフローレイト(MFR:1分間当りの吐出質量(g)から10分間当たりの吐出重量(g)を算出した)を測定した。次いで、荷重を除いて20分間放置後に、再度荷重10kgを載せてメルトマスフローレイト(MFR20:1分間当りの吐出質量(g)から10分間当たりの吐出重量(g)を算出した)を測定した。
なお、各サンプルは水分率0.03%以下の乾燥状態で装置に装入し、水分によるMFRの変動を防止した。
[溶融粘度]
キャピラリーレオメーター(東洋精機社 キャピログラフIC)を用い、前記DSCで求めたポリアミド樹脂組成物の融点+25℃の温度で、剪断速度0.5mm/分で測定した。
[成形性評価法]
パリソンの押出賦型性およびパリソンのドローダウンは次のように測定した。
ブロー成形機(FKI社製、45φ2層式ダイレクトブロー成形機)を用い、ダイスφ32mm、マンドレルφ22mmでアキュムレーターを使用せず連続方式で図1に示す円筒形状(パイプ状)で肉厚の偏差をつけない均一の厚さのパリソンを押出し、パリソンの賦型性(固化・伸びの状態)、ドローダウンの状態及び成形品内部のガラス繊維の毛羽立ちについて以下の基準で評価した。なお、成形条件は、シリンダ温度設定は射出成形の場合と同様に設定し、金型温度は、全ての場合で130℃とした。エアーの噴きつけは、型締め3秒後に実施し、吹き付け時間は20秒間とした。
<パリソンのドローダウン>
図1に示した成形品A部とB部の肉厚差 ≦0.5mm : ○
ドローダウンが著しく、賦型できない : ×
<パリソンの押出賦型性>
吹き付け部(捨て袋)及び製品部:破れ・穴あき無し : ◎
吹き付け部(捨て袋):穴あき有り、製品部:破れ・穴あき無し : ○
吹き付け部(捨て袋)及び製品部:破れ・穴あき有り : ×
<成形品内面のガラス繊維の毛羽立ち>
成形を停止させないで連続成形した場合(滞留なし)と20分間成形停止させた直後(滞留20分)の成形品について観察した。
毛羽立ちが認められない : ○
若干の毛羽立ちが認められる : △
毛羽立ち、凹凸が顕著に認められる : ×
これらの評価結果を表1に示した。
成形品の観察箇所は、図2に示した部位である。また、実施例3の観察図(写真)を図3に、比較例3の観察図(写真)を図4に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜6の強化ポリアミド樹脂組成物は、共重合ポリアミド樹脂(A)がグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)と酸無水物基を有するオレフィン系重合体(C)とを含有しているため、両者の相乗効果が出て、少量の配合量でブロー成形に好適な溶融粘度を実現でき、しかも極めて滞留安定性に優れ、中空成形品の内面のガラス繊維の毛羽立ちを抑制できることがわかる。
比較例1のグリシジル基含有スチレン系共重合体(B)だけでは、ブロー成形に好適な溶融粘度にするためには多量の配合が必要であるとともに、滞留安定性が悪く、また、20分間滞留させた後は、中空成形品内面のガラス繊維の毛羽立ちが発生した。比較例2のオレフィン系重合体(C)だけでは、多量に配合しても増粘効果が低く、パリソンのドローダウンが著しく、所定の成形品を得ることができなかった。比較例3の共重合ポリアミド樹脂(A)を用いないポリアミド6系では、滞留によるメルトマスフローレイトの変動が小さくてもパリソンの押出賦型性が劣るとともに成形品の内面のガラス繊維の毛羽立ちが顕著であった。
本発明の強化ポリアミド樹脂組成物は、低吸水性で寸法安定性、耐薬品性に優れた押出成形品やブロー成形品を安定に製造できる。このため、自動車の吸気・排気系部品などの製造に有用である。

Claims (10)

  1. (a)デカンテレフタルアミド単位50〜98モル%及び(b)ウンデカンアミド単位又は/及びドデカンアミド単位50〜2モル%からなる共重合ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)を0.3〜10質量部、カルボン酸無水物基を有するオレフィン系重合体(C)を0.1〜10質量部、繊維状強化材(D)を20〜150質量部含有し、さらに下記(ロ)の特性を満足することを特徴とする中空成形体用強化ポリアミド樹脂組成物
    ロ)共重合ポリアミド樹脂の融点+25℃の温度で、荷重10kgにおけるメルトマスフローレイト(JIS K 7210に準拠)において、既定のメルトマスフローレイト(MFR)とメルトマスフローレイト測定時に20分間滞留させた後のメルトマスフローレイト(MFR20)との差が−1.0〜1.0の範囲内である。
  2. 共重合ポリアミド樹脂(A)が、(a)デカンテレフタルアミド単位75〜98モル%及び(b)ウンデカンアミド単位又は/及びドデカンアミド単位25〜2モル%からなる請求項1に記載の中空成形体用強化ポリアミド樹脂組成物。
  3. 共重合ポリアミド樹脂(A)が、(c)前記(a)の構成単位以外のジアミンとジカルボン酸から得られる構成単位、または前記(b)の構成単位以外のアミノカルボン酸もしくはラクタムから得られる構成単位を最大30モル%まで含有する請求項1に記載の中空成形体用強化ポリアミド樹脂組成物。
  4. グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)が、1分子鎖当りの平均グリシジル基数が2〜4個である請求項1に記載の中空成形体用強化ポリアミド樹脂組成物。
  5. グリシジル基含有スチレン系共重合体(B)が、スチレン系重合体単位99〜50質量%、グリシジル基含有アクリル系重合体単位1〜30質量%、及びその他のビニル系重合体単位0〜40質量%からなる共重合体である請求項1に記載の中空成形体用強化ポリアミド樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の強化ポリアミド樹脂組成物を用いて得られた中空成形体。
  7. 中空成形体用が、自動車関連部品である請求項6記載の中空成形体。
  8. 自動車関連部品が、吸気・排気系部品であることを特徴とする請求項7記載の中空成形体。
  9. 吸気・排気系部品が、エアホース、エアダクト、ターボダクト、ターボホース、インテークマニホールド、またはエグゾ−ストマニホールドであることを特徴とする請求項8記載の中空成形体。
  10. ダイレクトブロー、三次元シングルブロー、三次元エクスチェンジブロー、サクションブロー、三次元サクションブロー、三次元エクスチェンジサクションブロー、インジェクションストレッチブローのいずれか1種の中空成形法を用いて得られた請求項9記載の中空成形体。
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