JP6989066B1 - サクションブロー成形用繊維強化ポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、サクションブロー成形では、中空パリソンを型締めした金型の上部からキャビティへ供給しつつ、金型の下方からキャビティ内の空気を吸引して、中空パリソンをキャビティの湾曲形状に沿って金型下部まで挿入させ、その後、中空パリソンをブローするが、サクションブロー成形時、中空パリソン挿入時に中空パリソンは、中空を保持したまま金型形状に沿って金型に接触することを抑制しながら通すことが求められる。しかし、特に湾曲部ではパリソン表面と金型キャビティ表面とが接触することが避けられず、このためパリソンの固化が速められたり、中空が保持できなかったり、金型内で詰まってしまうなどの現象に至り、十分なブローが困難になることがあることが判明した。特に結晶性ポリアミド樹脂を用いる場合、この傾向が著しく、前記の改善方法でも成形品を得ることが困難であった。そこで、結晶性ポリアミド樹脂を含む繊維強化ポリアミド樹脂組成物のサクションブロー成形性を良好なものとするためには、かかる組成物からなる中空パリソンが金型と接触してもブロー成形性に影響を及ぼし難い固化特性と中空パリソンが湾曲部を通り抜けることが可能な溶融特性とが重要であり、これを最適化する条件を見出すことによって上記目的を達成し、本発明を完成するに至った。
(1)結晶性ポリアミド樹脂(A)、結晶性ポリアミド樹脂(A)より低融点であるか又は融点を有さないポリアミド樹脂(B)、繊維状強化材(C)、及び増粘剤(D)を含有するポリアミド樹脂組成物において、示差走査型熱量計(DSC)で求められるポリアミド樹脂組成物の降温結晶化温度(Tc:℃)が下記関係(i)を満足し、ポリアミド樹脂組成物のメルトフローインデックスが下記関係(ii)を満足することを特徴とするサクションブロー成形用ポリアミド樹脂組成物:
(i)TcA−G−4≦TcX≦TcA−G+4
TcA:ポリアミド樹脂(A)の降温結晶化温度(℃)
TcX:ポリアミド樹脂組成物の降温結晶化温度(℃)
G:ポリアミド樹脂組成物中の繊維状強化材(C)の含有率(質量%)
(ii)JIS K−7210に準拠して、結晶性ポリアミド樹脂(A)の融点+10℃の温度において10kgの荷重下で測定したポリアミド樹脂組成物のメルトフローインデックスが1.5〜7g/10minである。
(2)結晶性ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド66であることを特徴とする(1)に記載のサクションブロー成形用ポリアミド樹脂組成物。
(3)ポリアミド樹脂(B)が、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド6T/6I、及びポリアミド6T/6からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のサクションブロー成形用ポリアミド樹脂組成物。
(4)繊維状強化材(C)が、ガラス繊維であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のサクションブロー成形用ポリアミド樹脂組成物。
(5)増粘剤(D)が、多官能エポキシ化合物及び/又はカルボン酸基、その無水物基を有するエチレン系共重合体であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のサクションブロー成形用ポリアミド樹脂組成物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のサクションブロー成形用ポリアミド樹脂組成物を用いて得られることを特徴とするサクションブロー成形品。
(7)長尺で湾曲形状の中空成形品であり、かつ外径が25mm未満であることを特徴とする(6)に記載のサクションブロー成形品。
(i)TcA−G−4≦TcX≦TcA−G+4
TcA:ポリアミド樹脂(A)の降温結晶化温度(℃)
TcX:ポリアミド樹脂組成物の降温結晶化温度(℃)
G:ポリアミド樹脂組成物中の繊維状強化材(C)含有率(質量%)
(ii)JIS K−7210に準拠して、結晶性ポリアミド樹脂(A)の融点+10℃の温度において10kgの荷重下で測定したポリアミド樹脂組成物のメルトフローインデックスが1.5〜7g/10min、好ましくは2〜4g/10minである。
TcXが上記関係(i)に規定される範囲未満であると、ポリアミド樹脂組成物の固化が遅くなり、中空パリソンが保持できなくなる(つまり、ドローダウンが大きくなる)おそれがあり、上記関係(i)に規定される範囲を越えると、ポリアミド樹脂組成物の固化が早くなり、中空パリソンが湾曲部を通過できない(つまり、ブロー成形が困難になる)おそれがある。また、本発明者の検討によれば、ポリアミド樹脂組成物の降温結晶化温度TcXだけでなく、ポリアミド樹脂組成物のメルトフローインデックスも、ブロー成形性及びドローダウン性に影響を与えることが見出されている。即ち、メルトフローインデックスが上記関係(ii)に規定される範囲未満であると、樹脂が金型内を通過できなくなるため、ブロー成形が困難になるおそれがあり、上記関係(ii)に規定される範囲を越えると、ドローダウンが大きくなるおそれがある。
JIS K 6810に準拠して、ウベローデ粘度管を用い、20℃において96%硫酸溶液(ポリアミド樹脂濃度1g/dl)で測定した。
示差走査型熱量計(DSC)を用い、各サンプルは水分率0.03%以下の乾燥状態でDSC装置に封入し、水分による変動を防止し、窒素気流下で20℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の速度で100℃まで降温させることにより測定した。
JIS K−7210に準拠して、結晶性ポリアミド樹脂(A)の融点+10℃の温度において荷重10kgをかけ、10分間で流動した樹脂量(g)を測定した。なお、各サンプルは水分率0.03%以下の乾燥状態で装置に装入し、水分によるMIの変動を防止した。
サクションブロー成形機(ST社製:ASPI MONO 150.3 FULL OPTION)を用いて、中空パリソンから、図1に示す長尺で湾曲形状の外径15mmの中空成形品を得た。なお、成形は、ダイス径:28mm 射出時間:4mm/秒 サクション強度40% 樹脂温度:280℃ 金型温度:40℃で実施し、エアーの吹き付け時間は15秒間とした。なお、評価基準は以下の通りとした。ブロー成形性及びドローダウン性のうち、どちらか一方でも×となると、成形は不可能である。
ドローダウン性:〇=成形品が中空を保持している
×=ドローダウンが大きく、成形品が中空を保持していない
ブロー成形性 :〇=中空パリソンが金型内の湾曲部を問題なく通過できる
×=中空パリソンが金型内の湾曲部を通過できない
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダ温度を280℃、金型温度を90℃に設定した。射出速度50mm/秒、保圧30MPa、射出・保圧時間10秒、冷却時間15秒で成形した引張試験テストピース(ISOダンベル試験片)を130℃及び120℃の不凍液(トヨタ純正Long Life Coolant)に1000時間浸漬し、それぞれの強度をISO527−1,2に準拠する方法で測定した。引張強度の保持率は、熱処理なしの初期の値を100%としたときの1000時間処理した後の保持率(%)で示した。
結晶性ポリアミド樹脂(A)
・ポリアミド66:EPR34W(神馬社製、融点265℃、相対粘度3.4)
ポリアミド樹脂(B)
・ポリアミド610:RILSAN SMVO−F(アルケマ社製、融点225℃、相対粘度2.1)
・ポリアミド6:TP−6603(集盛社製、融点225℃、相対粘度3.6)
・ポリアミド6T/6I共重合ポリアミド:PH−740(東洋紡社製、非晶性ポリアミド樹脂、相対粘度2.1)
繊維状強化材(C)
・ガラス繊維:T−275H(日本電気硝子社製、11μm径)
増粘剤(D)
・多官能エポキシ化合物:ARUFON UG−4040(東亜合成社製、アクリル−グリシジル共重合体)
・カルボン酸基、その無水物基を有するエチレン系共重合体:タフマーMH−7020(三井化学社製:マレイン酸変性エチレン−ブチレン共重合体)
その他の添加剤
・離型剤:モンタン酸エステルワックスのWE40(クラリアントジャパン社製)
・黒色顔料:EPC8E313(住化カラー社製)
・耐熱安定剤:臭化第二銅(ナカライテスク社製:純度99.8%)
・酸化防止剤:イルガノックス245(BASF社製:フェノール系酸化防止剤)
Claims (5)
- 結晶性ポリアミド樹脂(A)、結晶性ポリアミド樹脂(A)より低融点であるか又は融点を有さないポリアミド樹脂(B)、繊維状強化材(C)、及び増粘剤(D)を含有するポリアミド樹脂組成物において、結晶性ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド66であること、繊維状強化材(C)が、ガラス繊維であること、ポリアミド樹脂組成物中の結晶性ポリアミド樹脂(A)の配合量が20〜80質量%であり、かつポリアミド樹脂組成物中のポリアミド樹脂(B)の配合量が10〜60質量%であること、及び示差走査型熱量計(DSC)で求められるポリアミド樹脂組成物の降温結晶化温度(Tc:℃)が下記関係(i)を満足し、ポリアミド樹脂組成物のメルトフローインデックスが下記関係(ii)を満足することを特徴とするサクションブロー成形用ポリアミド樹脂組成物:
(i)TcA−G−4≦TcX≦TcA−G+4
TcA:ポリアミド樹脂(A)の降温結晶化温度(℃)
TcX:ポリアミド樹脂組成物の降温結晶化温度(℃)
G:ポリアミド樹脂組成物中の繊維状強化材(C)の含有率(質量%)
(ii)JIS K−7210に準拠して、結晶性ポリアミド樹脂(A)の融点+10℃の温度において10kgの荷重下で測定したポリアミド樹脂組成物のメルトフローインデックスが1.5〜7g/10minである。 - ポリアミド樹脂(B)が、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド6T/6I、及びポリアミド6T/6からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のサクションブロー成形用ポリアミド樹脂組成物。
- 増粘剤(D)が、多官能エポキシ化合物及び/又はカルボン酸基、その無水物基を有するエチレン系共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のサクションブロー成形用ポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のサクションブロー成形用ポリアミド樹脂組成物を用いて得られることを特徴とするサクションブロー成形品。
- 長尺で湾曲形状の中空成形品であり、かつ外径が25mm未満であることを特徴とする請求項4に記載のサクションブロー成形品。
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