JP2009108364A - 深絞り性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.030〜0.050、Si≦1.0、Mn:2.0〜3.0、P:0.005〜0.1、S≦0.01、Al:0.005〜0.5、N≦0.01、Nb:0.010〜0.30を含み、式(1)を満たし、残部Fe及び不可避的不純物からなり、面積率で50%以上のフェライト相と3%以上のマルテンサイト相を含む組織を有し、板厚方向の結晶方位分布が式(2)〜(5)を満足する1.2≦r値、1.0≦r90の深絞り性に優れた高強度鋼板;(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7・(1)、fsur〜1/4 {111}≧40%・(2)、fsur〜1/4 {110}≦5%・(3)、Δf{111}≧10%・(4)、Δf{110}≦3%・(5)、fsur〜1/4 {111}、fsur〜1/4 {110}は、表層から板厚1/4までの板厚方向4箇所で求めた{111}、{110}面が板面に平行な結晶粒の平均面積率で、f1/2 {111}、f1/2 {110}は、板厚1/2近傍2箇所で求めた{111}、{110}面が板面に平行な結晶粒の平均面積率で、Δf{111}=fsur〜1/4 {111}-f1/2 {111}、Δf{110}=fsur〜1/4 {110}-f1/2 {110}である。
【選択図】なし
Description
(i) C量とMn量を高め、かつ板厚方向の結晶方位分布を制御する、すなわち鋼板の表層から板厚1/4にわたり{111}面方位が鋼板面に平行になっている結晶粒の面積率を高めることにより、TSを500MPa以上、平均r値を1.2以上、かつr90を1.0以上にすることができる。
(ii) このように板厚方向の結晶方位分布を制御するには、熱間圧延時に少なくとも最終圧延スタンドにおける鋼板とロールの摩擦係数を0.3以上とすることが効果的である。
(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7・・・(1)
fsur〜1/4 {111}≧40% ・・・(2)
fsur〜1/4 {110}≦5% ・・・(3)
Δf{111}≧10% ・・・(4)
Δf{110}≦3% ・・・(5)
ただし、式(1)中のNb、Cは、各々の元素の含有量(質量%)を表し、fsur〜1/4 {111}、fsur〜1/4 {110}は、それぞれ鋼板の表層から板厚1/4までの板厚方向における4箇所で求めた{111}、{110}面方位が鋼板面に平行になっている結晶粒の面積率の平均値を、f1/2 {111}、f1/2 {110}は、それぞれ鋼板の板厚1/2近傍における2箇所で求めた{111}、{110}面方位が鋼板面に平行になっている結晶粒の面積率の平均値を表し、Δf{111}=fsur〜1/4 {111}-f1/2 {111}、Δf{110}=fsur〜1/4 {110}-f1/2 {110}である。
Fsur〜1/4 (110)≧30% ・・・(6)
ただし、Fsur〜1/4 (110)は、巻取り後の熱延板の表層から板厚1/4までの板厚方向における5箇所で求めた{110}面方位が鋼板面に平行になっている結晶粒の面積率の平均値を表す。
C:0.030〜0.050%
Cは、後述のNbとともに本発明における重要な元素である。Cは、フェライト相の母相中にマルテンサイト相を含む第2相を有する複合組織の形成を促進し、高強度化に寄与する。TSを500MPa以上にするためには、固溶強化元素であるSi、Mn、P等の量を調整することによって可能であるが、複合組織鋼板である本発明の高強度鋼板では、C量で調整することが必要である。すなわち、C量が0.030%未満では、TSを500MPa以上とするためのマルテンサイト形成が困難であり、0.050%を超えると、従来の低炭素鋼板の場合と同様、{111}再結晶集合組織が発達せず、高い平均r値が得られない。したがって、C量は0.030〜0.050%とする。
Siは、フェライト変態を促進させ、未変態オーステナイト中のC量を上昇させてフェライト相とマルテンサイト相からなる複合組織の形成を促進するとともに、固溶強化の効果も有する元素である。こうした効果を得るためには、Si量は0.01%以上とすることが好ましく、0.05%以上とすることがより好ましい。一方、Si量が1.0%を超えると、熱間圧延時に赤スケールと称される表面欠陥が発生し、鋼板の表面外観を悪くするため、Si量は1.0%以下、好ましくは0.5%以下とする。
Mnは、高強度化やSによる熱間割れ防止のために有効な元素であるとともに、マルテンサイト形成のための臨界冷却速度を低くできる効果を有する。そのため、要求される強度レベルや焼鈍後の冷却速度に応じてその量を適宜調整することが好ましい。しかし、TSを500MPa以上とするには、Mn量を2.0%以上とする必要がある。一方、Mn量が3.0%を超えると、r値の低下や溶接性の劣化を招くので、Mn量の上限は3.0%とする。
Pは、固溶強化の効果がある元素である。しかしながら、P量が0.005%未満では、その効果が得られないだけではなく、脱りんコストの上昇を招く。したがって、P量は0.005%以上、好ましくは0.01%以上とする。一方、P量が0.1%を超えると、Pが粒界に偏析して耐二次加工脆性や溶接性を劣化させる。また、溶融亜鉛めっき鋼板とする際には、溶融亜鉛めっき後の合金化処理時に鋼板からめっき層へのFeの拡散を抑制するため、合金化処理温度を高くする必要があり、めっき層にパウダリングやチッピング等が生じやすくなる。そのため、P量の上限は0.1%とする。
Sは、熱間割れの原因になる他、鋼中で介在物として存在し鋼板の諸特性を劣化させるので、S量は0.01%以下とするが、少ないほど好ましい。
Alは、鋼の脱酸元素として有用である他、固溶強化や固溶Nを固定して耐常温時効性を向上させる作用がある。また、Alはフェライト生成元素であり、フェライト-オーステナイト2相域の温度調整にも有効な元素である。このような作用を発揮させるためには、Al量は0.005%以上とする必要がある。一方、Al量が0.5%を超えると、合金コスト高を招くとともに、表面欠陥を誘発するので、Al量の上限は0.5%、好ましくは0.1%とする。
Nは、固溶Nとして存在すると耐常温時効性を劣化させる。そのため、その量が0.01%を超えると固溶Nを固定するために多量のAlやTi等の添加が必要となり、合金コスト高を招く。したがって、N量は0.01%以下とする必要があるが、少ないほど好ましい。
Nbは、本発明において最も重要な元素であり、熱間圧延集合組織の制御、熱延板組織の微細化および熱延板中の固溶Cの析出等の作用を介して、高r値化に寄与する元素である。このような観点から、Nb量は0.010%以上とする必要がある。一方、本発明では、焼鈍後の冷却過程でマルテンサイト形成のための固溶Cを必要とするが、Nb量が0.30%を超えると、このための固溶C量が不足するので、Nb量の上限は0.30%とする。
上記のようなNbの作用を発揮させるには、さらにNbとCの原子濃度比:(Nb/93)/(C/12)を、上記式(1)のように、すなわち
(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7・・・(1)
とする必要がある。
Tiは、Al以上に固溶Nの析出に効果がある元素であり、耐常温時効性の向上に有効である。この効果を発揮させるには、Ti量は0.005%以上とすることが好ましい。しかしながら、Ti量が0.1%を超えると、合金コスト高を招くばかりか、TiCを形成してマルテンサイト形成に必要な固溶C量を減少させる。したがって、Tiは0.1%以下とする。
{(Nb/93)+(Ti*/48)}/(C/12)=0.2〜0.7・・・(7)
(Nb/93)/(C/12)>(Ti*/48)/(C/12) ・・・(8)
ただし、Ti*=Ti−{(S/32)+(N/14)}×48であり、Ti、S、Nは各元素の含有量を表す。
CrおよびMoは、Mnと同様、マルテンサイト形成のための臨界冷却速度を低くし、焼鈍後の冷却時にマルテンサイト形成を促す元素であるとともに、高強度化に有効な元素である。こうした効果を発揮させるには、CrおよびMoのうち少なくとも1種が合計で0.05%以上含有されることが好ましい。一方、CrおよびMoのうち少なくとも1種が合計で0.5%を超えて含有されると、r値の低下や合金コスト高を招くため、CrおよびMoのうち少なくとも1種の含有量は合計で0.5%以下とする。
フェライト相の面積率:50%以上、マルテンサイト相の面積率:3%以上
本発明の高強度鋼板は、面積率で50%以上のフェライト相と面積率で3%以上のマルテンサイト相を含む、いわゆる複合組織鋼板である。これは、平均r値を1.2以上にするには、{111}再結晶集合組織の発達したフェライト相を面積率で50%以上とする必要があり、また、TSを500MPa以上にするには、マルテンサイト相を面積率で3%以上とする必要があるためである。高r値化のためには、フェライト相の面積率は70%以上とすることが好ましい。
本発明の高強度鋼板では、1.2以上の高い平均r値で、しかも1.0以上の高いr90を達成するために、板厚方向の集合組織を上記式(2)〜(5)のように、すなわち
fsur〜1/4 {111}≧40% ・・・(2)
fsur〜1/4 {110}≦5% ・・・(3)
Δf{111}≧10% ・・・(4)
Δf{110}≦3% ・・・(5)
とする必要がある。
本発明の鋼板は、上記のような成分組成を有する鋼スラブを、1000℃以上に加熱後、少なくとも最終圧延スタンドにおける鋼板とロールの摩擦係数を0.3以上とし、800〜900℃の仕上圧延出側温度で熱間圧延して熱延板とし、該熱延板を400〜720℃の巻取温度で巻取り後、冷間圧延して冷延板とし、800〜950℃の焼鈍温度で焼鈍し、次いで焼鈍温度から500℃までの温度域を5℃/s以上の平均冷却速度で冷却する方法で製造できる。
本発明の製造方法で使用する鋼スラブは、成分のマクロ偏析を防止すべく連続鋳造法で製造することが望ましいが、造塊法や薄スラブ鋳造法で製造してもよい。
こうして製造されたスラブを熱間圧延するには、従来のスラブを加熱後圧延する方法、連続鋳造後のスラブに短時間加熱処理を施して圧延する方法などで行える。
Fsur〜1/4 (110)≧30% ・・・(6)
を満足するようにすることが、冷延焼鈍後の集合組織の発達のために好ましい。
熱間圧延後の熱延板は、400〜720℃の巻取温度CTで巻取る。これは、CTが400℃未満となると、NbCの析出が起こりにくくなり、高r値化を阻害し、CTが720℃を超えると、結晶粒が粗大化し、強度低下を招くとともに、高r値化を阻害するためである。CTは550〜680℃とすることが好ましい。
巻取り後の熱延板は、酸洗などでスケールを除去した後、冷間圧延を行い冷延板とする。冷間圧延条件は、所望の寸法形状とすることができればよく、特に限定されないが、焼鈍時に{111}再結晶集合組織を発達させ、優れた深絞り性を得るには、圧下率を少なくとも40%以上とすることが好ましく、50%以上とすることがより好ましい。一方、圧下率を90%を超えると、その効果が飽和するばかりでなく、ロールへの負荷も高まるため、圧下率の上限は90%とすることが好ましい。
冷間圧延後の冷延板は、800〜950℃の焼鈍温度で焼鈍し、次いで焼鈍温度から500℃までの温度域を5℃/s以上の平均冷却速度で冷却する必要がある。焼鈍温度が800℃未満では、冷却後に十分なマルテンサイト相が形成されなかったり、再結晶が完了せず{111}再結晶集合組織が十分に発達しないため、焼鈍温度は800℃以上とする。一方、950℃を超えると、再結晶粒が著しく粗大化し、延性などの特性が著しく劣化するため、焼鈍温度は950℃以下とする。また、焼鈍温度から500℃までの温度域の平均冷却速度が5℃/s未満では、マルテンサイト形成が困難となり、フェライト単相組織となり500MPa以上のTSが得られなくなるので、平均冷却速度は5℃/s以上とする必要がある。500℃未満の温度域における冷却については、特に限定しないが、300℃までは5℃/s以上の平均冷却速度で冷却することが好ましい。なお、過時効処理を施す場合は、過時効処理温度までを平均冷却速度が5℃/s以上になるように冷却することが好ましい。
微視組織:焼鈍後の鋼板の圧延方向に平行な板厚断面で、光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡を用いて400〜10000倍で微視組織を観察し、相の種類を識別するとともに、1000〜3000倍の像から主相であるフェライト相の面積率とマルテンサイト相の面積率を求めた。
引張特性値:焼鈍後の鋼板から圧延方向に対して90°方向にJIS 5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して、クロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行い、引張強さTSおよび伸びElを求めた。
r値:焼鈍後の鋼板の圧延方向、圧延方向に対し45°方向、圧延方向に対し90°方向からJIS5号引張試験片を採取し、これらの試験片に10%の単軸引張歪を付与した時の試験片の幅歪と板厚歪を測定し、JIS Z 2254の規定に準拠して平均r値を以下の式から算出した。
平均r値=(r0+2r45+r90)/4
ここで、r0、、r45、r90は、それぞれ圧延方向、圧延方向に対し45°方向、圧延方向に対し90°方向のr値である。
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.030〜0.050%、
Si:1.0%以下、
Mn:2.0〜3.0%、
P:0.005〜0.1%、
S:0.01%以下、
Al:0.005〜0.5%、
N:0.01%以下、
Nb:0.010〜0.30%、
を含有し、
かつ下記の式(1)を満たし、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
面積率で50%以上のフェライト相と面積率で3%以上のマルテンサイト相を含む鋼組織を有するとともに、
板厚方向の結晶方位分布が下記の式(2)〜(5)を満足する、
ことを特徴とする平均r値が1.2以上であり、かつ圧延直角方向のr値r90が1.0以上である深絞り性に優れた高強度鋼板;
(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7・・・(1)
fsur〜1/4 {111}≧40% ・・・(2)
fsur〜1/4 {110}≦5% ・・・(3)
Δf{111}≧10% ・・・(4)
Δf{110}≦3% ・・・(5)
ただし、
式(1)中のNb、Cは、各々の元素の含有量(質量%)を表し、
fsur〜1/4 {111}、fsur〜1/4 {110}は、それぞれ鋼板の表層から板厚1/4までの板厚方向における4箇所で求めた{111}、{110}面方位が鋼板面に平行になっている結晶粒の面積率の平均値を、f1/2 {111}、f1/2 {110}は、それぞれ鋼板の板厚1/2近傍における2箇所で求めた{111}、{110}面方位が鋼板面に平行になっている結晶粒の面積率の平均値を表し、
Δf{111}=fsur〜1/4 {111}-f1/2 {111}、Δf{110}=fsur〜1/4 {110}-f1/2 {110}である。 - さらに、Tiを0.1質量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の平均r値が1.2以上であり、かつ圧延直角方向のr値r90が1.0以上である深絞り性に優れた高強度鋼板。
- さらに、CrおよびMoのうち少なくとも1種を合計で0.5質量%以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載の平均r値が1.2以上であり、かつ圧延直角方向のr値r90が1.0以上である深絞り性に優れた高強度鋼板。
- 請求項1から3のいずれかに1項に記載の成分組成を有する鋼スラブを、1000℃以上に加熱後、少なくとも最終圧延スタンドにおける鋼板とロールの摩擦係数を0.3以上とし、800〜900℃の仕上圧延出側温度で熱間圧延して熱延板とし、該熱延板を400〜720℃の巻取温度で巻取り後、冷間圧延して冷延板とし、800〜950℃の焼鈍温度で焼鈍し、次いで焼鈍温度から500℃までの温度域を5℃/s以上の平均冷却速度で冷却することを特徴とする平均r値が1.2以上であり、かつ圧延直角方向のr値r90が1.0以上である深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法。
- 巻取り後の熱延板の板厚方向の結晶方位分布が下記の式(6)を満足するようにすることを特徴とする請求項4に記載の平均r値が1.2以上であり、かつ圧延直角方向のr値r90が1.0以上である深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法;
Fsur〜1/4 (110)≧30% ・・・(6)
ただし、
Fsur〜1/4 (110)は、巻取り後の熱延板の表層から板厚1/4までの板厚方向における5箇所で求めた{110}面方位が鋼板面に平行になっている結晶粒の面積率の平均値を表す。
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