JP2009107306A - インキ追従体組成物 - Google Patents
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Abstract
高温下や長期間保存しても基材の分離現象(離油)がない経時安定性の優れたインキ追従体組成物を得る事を目的とする。
【解決手段】 難揮発性有機液体と揮発性液体と成膜性樹脂とより少なくともなるインキ追従体組成物において、前記の難揮発性有機液体と揮発性液体の沸点の差が30℃以上であるインキ追従体組成物。
【選択図】 なし
Description
しかしながら、インキタンクの内径が2.8mmを越えるような大径のものの場合やインキの粘度が50〜数千mPa・sと低い場合には、衝撃が加わった際はインキの自重以上の力がインキに付与されることになり、また、高温の環境下に置かれた際にはインキ自身の流動性が増す場合があることから、インキ漏れが懸念される。
そこで、ワセリン、シリコーングリス、シリコーンオイル又は流動パラフィンとワセリンとの混合物などをインキのペン先と反対側の界面位置に層状に配置し、この層の移動し難さによってインキの逆流防止を図ろうとしたものが知られてる。
この層は筆記によるインキ容量の減少に伴うインキ界面の移動に追従して、インキ界面と接触した層として得られるものであり、インキ逆流防止体組成物、インキ追従体組成物、インキフォロワー組成物などと称されている。また、主溶剤に水を用いた水性インキの場合、インキの蒸発乾燥防止や、使用時のインキ収納筒内面へのインキ付着防止の目的でインキ追従体組成物を使用しているものが知られている。
水性インキにおけるインキ追従体組成物にはワセリン(特許文献1参照)、シリコーンオイル(特許文献2参照)、ポリブテン(特許文献3、4参照)、α−オレフィンオリゴマー(特許文献4参照)、エチレン−α−オレフィンオリゴマー(特許文献5参照)、ジベンジリデンソルビトール(特許文献6参照)などの難揮発性有機液体に粘稠性を付与したものが知られている。
筆記具のインキ追従体組成物に離油が起きると、大気との界面やインキ収納部内壁との界面で粘度の低い液状物が発生する。この液状物は流動しやすい為、インキ収容部の開放口より外へ漏れ出したりしてインキ追従体組成物の体積が減少する。また、その場合、インキ追従体組成物に含有する基材の量が減少してしまい、インキ追従体組成物の粘度が上昇する。離油がインキ追従体組成物と大気の界面で発生した場合、粘度が高くなったインキ追従体組成物がインキ収納部の内壁に強く付着してしまい、筆記にともなうインキの移動に対する抵抗になり、インキの追従性が悪くなったりし、また、インキ収納部内壁との界面で発生した場合には、低粘度の液状物の流れ出した隙間をインキが通り抜けてインキ漏れが発生したりする等の不具合を生じる場合があった。
この成膜性樹脂を含有する液体は、液体分が揮発した場合に樹脂の皮膜を形成する性質を持つものである。そのため、筆記具のインキ収容部に充填されたインキの、ペン先と反対側の界面位置に本発明のインキ追従体を層状に配置した状態で長期間放置した場合に、インキ収容部の開放口側のインキ追従体の界面に存在する成膜性樹脂を含有する揮発性液体から液体成分が蒸発し、開放口側のインキ追従体界面の全面を覆う樹脂の薄い膜を形成することができる。この樹脂被膜が、粘度の低い液体成分がインキ追従体組成物より分離するのを防ぐ働きをする。そのため、インキ追従体組成物としての機能を長期間維持することができるのである。
2種類以上含有する液体成分のうち、蒸気圧が低い方の液体は、インキ追従体組成物の基材として用いるものである。本発明のインキ追従体組成物は、インキと直接接触するように使用するため、インキとは化学的に反応せず、溶解あるいは混入懸濁といったことが起こりにくい必要がある。また、インキとインキ追従体組成物の比重差に起因する浮力によりインキとインキ追従体組成物の位置が逆転することを防止するため、インキとインキ追従体組成物の比重差は小さい方が好ましい。そのため、水性インキを用いた製品に用いるインキ追従体組成物の基材となる液体は、比重が0.8〜1.2の範囲の非水溶性有機液体より選択することが好ましい。具体的には、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(比重0.99)、フタル酸ジブチル(比重1.05)といったフタル酸エステル類、リン酸トリクレジル(比重1.175)といったリン酸エステル類、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(比重0.93)やアジピン酸イソデシル(比重0.92)といったアジピン酸エステル類、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(比重0.92)といったセバシン酸エステル類、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(比重0.99)といったトリメリット酸エステル類、クエン酸トリエチル(比重1.14)やアセチルクエン酸トリブチル(比重1.04)といったクエン酸エステル類、エポキシ化大豆油(比重0.99)やエポキシ化アマニ油(比重1.04)といったエポキシ化植物油やエポキシ化脂肪酸エステル(比重0.92〜0.97)、ポリエステル系可塑剤(比重1.02〜1.12)のような可塑剤が挙げられる。また、ポリブテンLV−7、同LV−10、同LV−25、同LV−50、同LV−100、同HV−15、同HV−35、同HV−35、同HV−50、同HV−100、同HV−300(以上、新日本石油化学(株)製)、ポリブテン0H、同5H、同10H−T、同15H、同300H、同15R、同35R、同100R、同100R、同300R(以上、出光石油化学(株)製)等の液状ポリブテン類(比重0.82〜0.90)、ポリブタジエン(比重0.90)、IPソルベント2835(出光石油化学(株)製)、NAS−5H(日本油脂(株)製)、コスモSP10、同SP15、同SP32、同SP52、同SP83(以上、コスモ石油ルブリカンツ製)等の流動パラフィン類(比重0.85〜0.90)、α−オレフィンオリゴマー(比重0.82〜0.85)といった液状オリゴマーや液状ゴム類、ポリジメチルシリコーン(比重0.75〜1.00)、ポリエーテル変性シリコーン(比重1.00〜1.10)などのシリコーンオイル類、パラフィン系・ナフテン系・アロマ系プロセスオイル(比重0.85〜1.05)やワセリン、エクステンダーオイル等の鉱物油、植物油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の油脂類などが挙げられる。これらの液体は1種もしくは2種以上を混合して使用することが出来る。
更に、この液体の沸点が低いとインキ追従体中で液体の気化による泡の発生の原因となり、また、沸点が高いとインキ収容部の開放口側界面で樹脂を溶解及び/または分散した液体の媒質が蒸発し難くく、インキ追従体を酸化から保護する樹脂膜を形成できない。そのため、筆記具に用いるインキ追従体組成物に用いる蒸気圧の高い液体としては、沸点が65℃以上120℃以下の範囲より選択することが好ましい。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、第2ブチルアルコール、第2アミルアルコール、第3アミルアルコール、ジエチルカルビノールなどの炭素数5以下のアルコール類や、水等が使用できる。
更に、本発明のインキ追従体組成物は、筆記具内においてインキの外気との接触部分となり得る境界部分を封じる様に配置される為、インキ追従体組成物を構成する基材は外気に対して容易に揮発し難い液体であり、またインキ追従体のインキ収容部の開放口側界面に樹脂による乾燥保護膜を形成するためには、樹脂成分を溶解及び/または分散する液体が外気に対して容易に揮発する必要がある。これらの関係をインキ追従体組成物で両立するには、蒸気圧の差が5mmHg以上ある2種類以上の液体を組み合わせて使用することが必要である。蒸気圧の差が5mmHgよりも小さいと、インキ追従体の開放口側界面に樹脂による膜が形成され難いため、分離した基材の流出を防ぐことができず、インキ漏れや、筆記に対する追従不良などの不具合が発生する傾向がある。
本発明で使用する成膜性樹脂は、インキ追従体組成物に使用する液体に完全に溶解する溶解性樹脂と、微細なポリマー粒子を液体に分散した分散性樹脂である。
溶解性樹脂としてはカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルギン酸、アラビアゴム、ゼラチン等の天然高分子化合物やその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル系樹脂、無水マレイン酸系樹脂、フタル酸系樹脂、エポキシ化合物、ポリエステル、ケトンアルデヒド樹脂、ポリアミン等の合成高分子化合物やその共重合体やその塩があげられる。本発明では、これらの樹脂を液体に溶解して使用する。
また、分散性樹脂としては、ポリ酢酸ビニルや、酢酸ビニル−アクリル酸エステル、酢酸ビニル−マレイン酸ジブチル、酢酸ブチル−エチレン等の酢酸ビニルコポリマーや、アクリル酸エステル−メタクリル酸メチル、アクリル酸エステル−スチレン等のアクリル酸エステルコポリマー、塩化ビニルコポリマー等の合成樹脂を液体に分散したり、乳化重合により得られる、樹脂エマルションをそのまま用いたりすることができる。更に、これらの分散性樹脂は、分散媒の蒸発にともない樹脂の粒子が融着することで皮膜を形成するため、筆記具に使用するインキ追従体組成物に用いる場合は、常温で成膜することが必要である。そのためには、造膜温度が60℃以下であるものを使用することが好ましい。
本発明では、これらの溶解性樹脂や分散性樹脂を、単独及び/または2種以上を混合して使用することができる。また、これらの樹脂は、インキ追従体組成物に加える前に、揮発性液体の全量または一部と予め混合して溶解及び/または分散して、均一な状態にしておくことがインキ追従体を製造する上で好ましい。
また、液体と成膜性樹脂を合わせた量は、インキ追従体組成物の全量に対して5重量%以上30重量%以下であることが好ましい。液体と成膜性樹脂を合わせた量が5重量%に満たないとインキ収容部の開放口側界面で基材の流出を防ぐのに充分な樹脂膜を形成することができず、基材が離油するのを抑制することができない。また30重量%を超えると、ゲル化剤がネットワーク構造を作るのを阻害してインキ追従体組成物が粘稠な状態を形成しにくくなったり、インキの溶剤との親和性が増してインキとインキ追従体組成物の界面で混ざり合い、インキ追従体としての機能を果たさなくなる等の問題が発生する。
更に、樹脂の量は、インキ追従体組成物に含まれる揮発性液体の量に対して5重量%以上50重量%以下が好ましい。水性樹脂の量が揮発性液体の5重量%に満たないと、インキ収容部の開放口側界面で基材の流出を防ぐのに充分な樹脂膜を形成することができない。
また、50重量%を超えると樹脂を含有した液相中で成膜性樹脂が析出したり、インキ収容部の内面への親和性が増して吸着し、筆記によるインキの移動に対する抵抗が増して追従し難くなるなどの不具合が生じる傾向がある。
(実施例1)
スペクトラシン100(基材、ポリα−オレフィン、20℃の蒸気圧0.1mmHg以下の液体、モービル石油(株)製) 67.3重量部
アエロジルR972(ゲル化剤、シリカ、日本アエロジル(株)製) 3.0重量部
レオパールKL(ゲル化剤、デキストリンパルミチン酸エステル、千葉製粉(株)製)
2.5重量部
水(20℃の蒸気圧17.5mmHgの液体、沸点100℃) 20.0重量部
水酸化ナトリウム(成膜性樹脂の可溶化剤) 0.2重量部
ジョンクリル67(成膜性樹脂、スチレン−アクリル酸共重合樹脂、BASFジャパン(株)製) 7.0重量部
先ず、上記成分のうち、水と水酸化ナトリウムとジョンクリル67を混合、攪拌して溶解し、樹脂溶液(A)とする。
次に、残された各成分を混合し、150℃まで加熱攪拌し、温度を維持しながら更に3時間攪拌を行う。その後、液温が30℃以下になるまで徐冷し、三本ロールミルに2回通す。更に、再度加熱攪拌を行い、液温が90℃に達したら予め調整した樹脂溶液(A)を加えて30分間温度を維持しながら攪拌する。過熱攪拌終了後、室温まで徐冷させてインキ追従体組成物1を得た。
ポリブテンHV−15(基材、ポリブテン、20℃の蒸気圧0.5mmHg以下の液体、新日本石油化学(株)製) 64.5重量部
アエロジルR974(ゲル化剤、シリカ、日本アエロジル(株)製) 4.0重量部
レオパールKE(ゲル化剤、デキストリンパルミチン酸エステル、千葉製粉(株)製)
1.5重量部
ジョンクリル711(成膜性樹脂、アクリル樹脂の水分散液(水58重量%、樹脂分40重量%)、BASFジャパン(株)製) 30.0重量部
上記成分のうち、ポリブテンHV−15と、アエロジルR974と、レオパールKEを混合して150℃まで加熱攪拌し、温度を維持しながら更に2時間攪拌を行う。その後、液温が30℃以下になるまで徐冷し、三本ロールミルに2回通す。更に、再度加熱攪拌を行い、液温が90℃に達したら上記のジョンクリル711を加えて30分間温度を維持しながら攪拌する。過熱攪拌終了後、室温まで徐冷させてインキ追従体組成物2を得た。
ルーカントHC−100(基材、エチレン−α−オレフィンコポリマー、20℃の蒸気圧0.5mmHg以下の液体三井石油化学(株)製) 60.0重量部
ルーカントHC−40(基材、エチレン−α−オレフィンコポリマー、三井石油化学(株)製) 17.5重量部
アルミニウムステアレート#600(ゲル化剤、アルミニウム石けん、日本油脂(株)製)
1.5重量部
エタノール(20℃の蒸気圧43.6mmHg以下の液体、沸点78.3℃)
15.0重量部
PVP−K30(成膜性樹脂、ポリビニルピロリドン、アイエスピージャパン(株)製)
3.0重量部
先ず、上記成分のうち、エタノールとPVP−K30を混合、攪拌して溶解し、樹脂溶液(B)とする。
次に、残された各成分を混合し、140℃まで加熱攪拌し、温度を維持しながら更に3時間攪拌を行う。その後、液温が30℃以下になるまで徐冷し、三本ロールミルに2回通す。三本ロールミル処理後の液体に予め調整した樹脂溶液(B)を加え、ニーダーで1時間混合して、インキ追従体組成物3を得た。
実施例1の成分から、水と水酸化ナトリウムとジョンクリル67を除き、スペクトラシン100の量を94.1重量部に、レオパールKLの量を2.9重量部に変更した。
各成分を混合し、150℃まで加熱攪拌し、温度を維持しながら更に3時間攪拌を行う。その後、液温が30℃以下になるまで徐冷し、三本ロールミルに2回通してインキ追従体組成物4を得た。
実施例2の成分から、ジョンクリル711を除き、ポリブテンHV−15の量を93.7重量部に、アエロジルR974の量を4.8重量部に変更した。
各成分を混合し、150℃まで加熱攪拌し、温度を維持しながら更に2時間攪拌を行う。その後、液温が30℃以下になるまで徐冷し、三本ロールミルに2回通してインキ追従体組成物5を得た。
実施例3の成分から、PVP−K30を除き、その分をエタノールに置き換えた以外は実施例3同様にしてインキ追従体組成物6を得た。
試験前後のインキ追従体組成物のボールペン長手方向の高さを比較して、インキ追従体組成物の減量を確認し、また、目視で基材漏れの有無を確認した。
結果を表1に示す。
カーボンブラック#850(着色剤、カーボンブラック、三菱化成工業(株)製)
11.5重量部
エマルゲンA−60(分散剤、界面活性剤、花王(株)製) 1.0重量部
プロピレングリコール(保湿溶剤) 11.0重量部
グリセリン(保湿溶剤) 8.0重量部
プライマルAC−33(定着向上剤、アクリル樹脂エマルション、ローム・アンド・ハース・ジャパン(株)製) 10.0重量部
TBZ・FL25(防腐剤、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾールの25%分散液、三愛石油(株)製) 0.2重量部
ケルザン(増粘剤、キサンタンガム、三晶(株)製) 0.3重量部
モノエタノールアミン(pH調整剤) 1.0重量部
イオン交換水 57.0重量部
上記各成分のうちケルザンとプライマルAC−33を除いた各成分を混合し、攪拌機で2時間攪拌し、更にボールミルで5時間分散を行った後、プライマルAC−33とケルザンを加えて2時間攪拌し、最後に480メッシュのナイロンメッシュを通過させて粗大粒子を除去してボールペン用水性黒色インキを得た。
Claims (7)
- 2種類以上の液体と、この液体の少なくとも一つに分散、混合又は溶解可能な成膜性樹脂とより少なくともなるインキ追従体組成物において、前記2種以上の液体中に20℃における蒸気圧の差が5mmHg以上である液体の組み合わせを少なくとも1組以上有するインキ追従体組成物。
- 前記の液体のうち、蒸気圧の低い液体が、α−オレフィンオリゴマー、エチレン−α−オレフィンコポリマー、ポリブテン、鉱物油から選ばれる1種類もしくは2種以上の混合物を含む請求項1記載のインキ追従体組成物。
- 前記の液体のうち、少なくとも1種類が、炭素数が5以下のアルコール類及び/又は水より選ばれる1種類もしくは2種以上の混合物を含む請求項1又は請求項2に記載のインキ追従体組成物。
- 前記の成膜性樹脂の量が、インキ追従体組成物の全量に対して1重量%以上30重量%以下である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインキ追従体組成物。
- 前記のインキ追従体組成物が、ゲル化剤を含む請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のインキ追従体組成物。
- 前記ゲル化剤が、微粒子シリカ、変性デキストリン、金属石けん、粘土鉱物から選ばれる1種類もしくは2種以上である請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のインキ追従体組成物。
- 前記ゲル化剤の総量が、インキ追従体全量に対して1.0重量%以上10.0重量%以下である請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のインキ追従体組成物。
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