JP2009100710A - 食感改良剤及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】幅広い物性の飲食品、特に低粘度の飲食品に対し混合可能である流動状〜ペースト状の食感改良剤、及び、該食感改良剤を簡単に安定して得るための製造方法を提供すること。
【解決手段】下記成分(A)を0.2〜20.0質量%及び下記成分(B)を含有し、それらの含有量の比が質量基準で0.1<(B)/(A)≦10であり、水分含量が20〜98質量%であることを特徴とする食感改良剤、及び、下記成分(A)を0.2〜20.0質量%及び下記成分(B)を含有し、それらの含有量の比が質量基準で0.1<(B)/(A)≦10であり、水分含量が20〜98質量%である混合液を、均質化することを特徴とする食感改良剤の製造方法。
(A)アルギン酸及び/又はアルギン酸塩
(B)カルシウム
【選択図】なし

Description

本発明は、液状〜固形状の幅広い物性の飲食品に対し混合可能である食感改良剤、該食感改良剤を含有してなる飲食品、及び該食感改良剤の製造方法に関する。
飲食品の食感の改良する目的で、飲食品に添加することで、食味を大きく変化させることなく、例えば、食感がソフトに、歯切れよくなる、ノド越しがよくなる、サクサク感を付与する、口溶けがよくなる等の食感改良効果を発揮することのできる食感改良剤が、最近注目されている。
これらの食感改良剤は、幅広い物性の飲食品に添加・混合するためには、粉末状か流動状〜ペースト状である必要があった。これは、食感改良剤が粘性の低い液状であると、高粘度〜固体状の飲食品に添加した場合に混合性が悪い(均質に分散しない)問題があり、反対に、固形状であると液状〜低粘度の飲食品に添加した場合に混合性が悪い問題があるからである。
このような食感改良の目的のためには、増粘剤やゲル化剤が使用されることが多く、中でもアルギン酸、アルギン酸塩、アルギン酸エステル等のアルギン酸類は、二価金属イオンと反応して熱不可逆性の硬いゲルを形成するため、これらのアルギン酸類は飲食品の食感改良の目的で各種飲食品に添加して使用されてきた。
しかし、アルギン酸類と二価金属イオンの反応は極めて速く、瞬時にゲルを生成するため、アルギン酸類を粉末の状態で飲食品に均質に分散させてからゲル化させるのは難しく、そのため、アルギン酸類をゲル化したもの(以下、アルギン酸類ゲルという)を飲食品に添加する方法が行なわれるようになってきた。
一般にアルギン酸類は分子量の大きなものほど、その水溶液の粘度は高く、得られるゲルはゲル強度が高く、食感改良効果も高い。そこで、高い食感改良効果を得るために、分子量の大きなアルギン酸類(高粘性アルギン酸類)を用いたり、アルギン酸類の添加量を増やすと、アルギン酸類ゲルの硬さが硬くなりすぎてしまい、飲食品に添加する場合は、特に低粘度の飲食品等では均一に混ざり難いという問題があった。これとは逆に、口中分散性を良くするため、又は、低粘度の飲食品に混ざり易くするために、分子量の小さなアルギン酸類(低粘性アルギン酸類)を用いたり、アルギン酸類の添加量を減じたり、ゲル化を阻害する物質を多く添加すると、ゲル化しなかったり、食感の改良効果が著しく弱くなるという問題があった。
また、上述のとおり、アルギン酸類と二価金属イオンの反応は極めて速く、瞬時にゲルを生成するため、均質なアルギン酸類ゲルの製造は難しかった。
このような扱いにくいアルギン酸類ゲルを簡単な方法で製造し、飲食品に食感改良の目的で使用した例としては、いったんゲル化したアルギン酸類ゲルをホモミキサー等でせん断加工した流動ゲルを使用する方法(例えば特許文献1参照)や、アルギン酸ナトリウムを塩析した後、カルシウムイオン存在下に破砕、ゲル化した水中油型乳化型食品(例えば特許文献2参照)等がある。
しかし、特許文献1に記載の方法は、ゲルが極めて微細にせん断加工されているため、飲食品に食感改良効果を付与することができない上に、製造工程でゲル化と破砕の2段階が必要なため、製造が煩雑で時間がかかる問題があった。また、特許文献2に記載の水中油型乳化型食品は、塩析によりゲル強度が極めて弱いものとなっているため、これを他の飲食品に添加したとしても食感改良効果を付与できるものではなかった。さらに、塩析に多量の食塩が必要であるため、塩味の強い飲食品にしか使用できない問題もあった。
一方、低粘性のアルギン酸類を飲食品の改良剤として使用した例としては、金属イオン封鎖剤を低粘性アルギン酸塩類で代替し、HTST殺菌やUHT殺菌(超高温瞬間殺菌)処理時に生じるタンパク質の熱変性による凝集や焦げ付きを抑制して風味を改善する方法(例えば特許文献3参照)、低粘性アルギン酸塩類や中粘性アルギン酸塩類を使用してpHを特定範囲とした水中油型乳化物(例えば特許文献4参照)等があった。
しかし、特許文献3、4に記載の飲食品は、水中油型乳化食品の製造と、低粘性アルギン酸類のゲル化を同時に行なうものであるため、広く一般的な飲食品に適用できるものではなく、また、低粘性アルギン酸類のゲル強度は極めて低いため、これを他の飲食品に添加したとしても食感改良効果を付与できるものではなかった。さらに、特許文献3に記載の方法は、金属イオン封鎖剤に由来する苦味や嫌味を低減することで飲食品の風味を改良するものであり、特許文献4に記載の水中油型乳化物も、製造時や保管時の物性の安定化を目的としたもので、食感を改良するものではなかった。
また、ゲル組成物に特定のたんぱく質を併用したり、複数のゲル化剤を併用することでゲル組成物の物性を改善し、該ゲル組成物を食感改良剤として使用する試みも行なわれており、例えば、特定の乳たんぱく質とゲル化剤と水からなる複合体を添加したホットケーキ(例えば特許文献5参照)、特定の2種のゲル化剤を添加した澱粉ゲル食品(例えば特許文献6参照)、ジェランガムとタマリンド種子多糖類を使用した食品等の増粘・ゲル化法(例えば特許文献7参照)等が紹介されている。
しかし、特許文献5に記載の複合体は、低粘度の飲食品に対しての混合性がやや劣るという問題があり、また、特許文献6に記載のゲル化剤は粉末状で添加するため、食品生地中でダマになって残ってしまうため、混合性が極めて悪く、さらに、特許文献7に記載のゲルは、2つの低粘度の溶液を混合してゲル化しつつせん断した流動ゲルであり、ゲルが極めて微細にせん断加工されているため、飲食品に食感改良効果を付与することができない上、安定して製造することが困難であった。
すなわち、上述の特許文献1〜7に記載の各種の組成物は、様々な硬さや物性を示す広範な飲食品への良好な混合性を有するものではなく、また、十分な食感改良効果を食品に付与するものではなかった。
特開平5−3767号公報 特開平7−51023号公報 特開2001−321075号公報 特開2004−357699号公報 特開2005−304373号公報 特開2000−83590号公報 特開平01−266179号公報
従って、本発明の目的は、幅広い物性の飲食品、特に低粘度の飲食品に対し混合可能である流動状〜ペースト状の食感改良剤、及び、該食感改良剤を簡単に安定して得るための製造方法を提供することにある。
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、アルギン酸類ゲルを製造する際に、使用するカルシウム量を増加させていくと、ある一定の量を超えた時点でゲル強度が急激に低下して流動状〜ペースト状となること、さらに、そのようなカルシウム添加量のアルギン酸類ゲルを飲食品に添加した場合、流動状〜ペースト状でありながら、食品生地に添加した場合の食感改良効果が極めて高いことを知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、下記成分(A)を0.2〜20.0質量%及び下記成分(B)を含有し、それらの含有量の比が質量基準で0.1<(B)/(A)≦10であり、水分含量が20〜98質量%であることを特徴とする食感改良剤を提供するものである。
(A)アルギン酸及び/又はアルギン酸塩
(B)カルシウム
また、本発明は、上記成分(A)を0.2〜20.0質量%及び上記成分(B)を含有し、それらの含有量の比が質量基準で0.1<(B)/(A)≦10であり、水分含量が20〜98質量%である混合液を、均質化することを特徴とする食感改良剤の製造方法を提供するものである。
本発明の食感改良剤は、幅広い物性の飲食品に対し均質に混合可能であり、特に低粘度の飲食品に対する混合性が高い。また、飲食品に添加した場合、食感がソフトに、歯切れよくなる、ノド越しがよくなる、サクサク感を付与する、口溶けがよくなる等の食感改良効果を、それぞれあるいは複合的に発揮して食感を改良することができる。
以下、本発明の食感改良剤の好ましい実施形態について詳述する。
本発明の食感改良剤は、下記成分(A)及び成分(B)を含有する。
(A)アルギン酸及び/又はアルギン酸塩
(B)カルシウム
上記アルギン酸としては、例えば、コンブやワカメに代表される褐藻類から抽出された多糖類に含まれているものを用いることができる。上記アルギン酸塩としては、該アルギン酸の塩であって、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、さらには鉄、スズ等の金属塩等が可能であるが、本発明の食感改良剤は食品に用いるものであることから、食品添加物である塩を選んで使用し、好ましくは、水への溶解度が高いこと、後述のナトリウムの給源としても使用可能な点から、ナトリウム塩を使用する。
本発明の食感改良剤において、上記(A)アルギン酸及び/又はアルギン酸塩の含有量は、0.2〜20.0質量%であり、好ましくは0.4〜10.0質量%、さらに好ましくは0.6〜6.0質量%である。
また、上記成分(A)が下記の成分(A1)及び成分(A2)の混合物であると、低粘度の飲食品への混合性が特に優れる点で好ましい。
(A1)高粘性アルギン酸及び/又は高粘性アルギン酸塩
(A2)低粘性アルギン酸及び/又は低粘性アルギン酸塩
本発明の食感改良剤において上記成分(A1)と上記成分(A2)との質量比率は、好ましくは(A1):(A2)=99:1〜20:80、より好ましくは99:1〜30:70、さらに好ましくは99:1〜40:60とする。(A1):(A2)において(A2)の質量比率が1よりも少ないとゲルが硬くなりすぎるおそれがあり、(A1):(A2)において(A2)の質量比率が80よりも多いと、ゲルが形成されないおそれがある。
ここで、上記(A1)高粘性アルギン酸及び/又は高粘性アルギン酸塩(以下高粘性アルギン酸類ということもある)とは、B型粘度計で、pH7、25℃及び30rpmの条件下で測定したとき、その1質量%水溶液の粘度が、好ましくは10mPa・sを超えるもの、さらに好ましくは100mPa・sを超えるものである。
また、上記(A2)低粘性アルギン酸及び/又は低粘性アルギン酸塩(以下低粘性アルギン酸類ということもある)とは、B型粘度計で、pH7、25℃及び30rpmの条件下で測定したとき、その10質量%水溶液の粘度が、好ましくは1〜700mPa・s、さらに好ましくは1〜100mPa・s、最も好ましくは1〜60mPa・sのものである。
また、上記(A2)低粘性アルギン酸類は、上記と同じ条件下で粘度を測定したとき、その1質量%水溶液の粘度が、好ましくは1mPa・s以上10mPa・s未満、さらに好ましくは1mPa・s以上8mPa・s以下、最も好ましくは1mPa・s以上7mPa・s以下のものである。
ここで、上記低粘性アルギン酸としては、高粘性アルギン酸より分子量の少ないアルギン酸や、構成糖類においてグルロン酸よりマンニュロン酸の比率が高いアルギン酸が挙げられる。上記低粘性アルギン酸塩としては、低粘性アルギン酸の塩であって、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、さらには鉄、スズ等の金属塩等が可能であるが、本発明の食感改良剤は食品に用いるものであることから、食品添加物である塩を選んで使用し、好ましくは、水への溶解度が高いこと、後述の(C)ナトリウムの給源としても使用可能な点から、ナトリウム塩である。
なお、低粘性アルギン酸類のみでゲルを形成することは極めて困難であり、たとえ得られたとしても、得られるゲルの強度は極めて弱いものである。
本発明の食感改良剤に(B)カルシウムを含有させるには、その給源として、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グルタミン酸ンカルシウム等の各種カルシウム製剤のほか、牛乳、脱脂乳、脱脂粉乳、全粉乳、カゼイン、ホエイ、ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物、蛋白質濃縮ホエイパウダー、ミルクカルシウム、乳清カルシウム、乳清ミネラル等のカルシウムを含有する乳製品や、鶏卵殻粉末等の、カルシウムを含有する食品を使用することができ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。
本発明の食感改良剤では、上記の中でも、カルシウムの徐放性の点から、食感改良剤製造時の混合液の増粘を考慮することなく、安定して製造可能な点、さらには、上記(A)アルギン酸及び/又はアルギン酸塩を多く配合することが可能な点で、カルシウムを含有する食品を使用することが好ましく、特に、風味が良好である点で、牛乳、脱脂乳、脱脂粉乳、全粉乳、カゼイン、ホエイ、ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物、蛋白質濃縮ホエイパウダー、ミルクカルシウム、乳清カルシウム、乳清ミネラル等の、カルシウムを含有する乳製品を使用することが好ましい。
本発明の食感改良剤において、(B)カルシウムの含有量は、上記成分(A)の含有量と密接な関係があり、質量基準で0.1<(B)/(A)≦10、好ましくは0.1<(B)/(A)≦1、さらに好ましくは0.1<(B)/(A)≦0.5である。(B)/(A)が0.1以下であると、硬いゲルがいったん生成し、それが破砕された流動ゲルとなるため、十分な食感改良効果の食感改良剤が得られない。また、10を超えると、食感改良効果が得られなくなることに加え、得られる飲食品の風味が悪化するおそれがある。
なお、上記(B)カルシウムの含有量には、後述の「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料」又は「その他の材料」として、カルシウムを含有するものを用いた場合は、それらに含まれるカルシウム分も含める。
また、(B)カルシウムの含有量は、上記成分(A)の含有量との比が上記範囲内であれば特に制限はないが、風味が良好である点で、本発明の食感改良剤中において好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.03〜2質量%とする。
本発明の食感改良剤には、さらに(C)ナトリウムを含有させると、より食感改良効果が高くなる点で好ましい。
本発明の食感改良剤で使用できる(C)ナトリウムの給源としては、上記成分(A)として使用できるアルギン酸ナトリウムや、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、パントテン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム等の各種ナトリウム製剤のほか、牛乳、脱脂粉乳、全粉乳、カゼイン、ホエイ、ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物、蛋白質濃縮ホエイパウダー、乳清ミネラル、その他乳製品、また、食塩、岩塩、その他ナトリウムを含有する食品素材等が挙げられる。本発明の食感改良剤では、アルギン酸ナトリウムと食塩とを併用することが、風味が良好であり、広く各種食品に適用可能な点で好ましい。
本発明の食感改良剤において、(C)ナトリウムの含有量は、上記成分(A)の含有量との比が、質量基準で好ましくは0.01≦(C)/(A)≦1.0、より好ましくは0.03≦(C)/(A)≦0.8、さらに好ましくは0.05≦(C)/(A)≦0.5となる量である。また、(C)ナトリウムの含有量は、本発明の食感改良剤中において好ましくは0.01〜2質量%、特に0.05〜0.8質量%の範囲から、上記成分(A)の含有量との比が上記範囲内となるように選択することが一層好ましい。
本発明の食感改良剤では、「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料」(以下、乳原料ともいう)を使用すると、より広い範囲の飲食品への混合性を高めることが可能な点、また、本発明の食感改良剤が油脂を含む場合にその乳化安定性を高めることが可能な点で好ましい。該乳原料としては、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、該固形分を基準として、3質量%以上である乳原料を使用することが好ましく、さらに好ましくは4質量%以上、最も好ましくは5〜40質量%である乳原料を使用する。
上記乳由来の固形分中のリン脂質とは、乳由来の固形分中に含まれる乳由来のリン脂質のことを指す。
また、上記乳原料は、液体状でも、粉末状でも、濃縮物でも構わない。但し、溶剤を用いて乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上となるように濃縮した乳原料は、風味上の問題から、本発明においては、上記乳原料として用いないのが好ましい。
乳由来のリン脂質を含有する乳原料の固形分中のリン脂質の定量方法としては、例えば下記の定量方法が挙げられる。但し、抽出方法等については乳原料の形態等によって適正な方法が異なるため、下記の定量方法に限定されるものではない。
まず、乳由来のリン脂質を含有する乳原料の脂質を、Folch法を用いて抽出する。次いで、抽出した脂質溶液を湿式分解法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000.2.1食品成分試験法に記載の湿式分解法に準じる)にて分解した後、モリブデンブルー吸光度法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000.2.1食品成分試験法に記載のリンのモリブデン酸による定量に準じる)によりリン量を求める。求められたリン量から、以下の計算式を用いて、乳由来のリン脂質を含有する乳原料の固形分100g中のリン脂質の含有量(g)を求める。
リン脂質(g/100g)=〔リン量(μg)/(乳由来のリン脂質を含有する乳原料−乳由来のリン脂質を含有する乳原料の水分(g))〕×25.4×(0.1/1000)
上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料」としては、例えば、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分が挙げられる。該クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、通常のクリームからバターを製造する際に生じるいわゆるバターミルクとは組成が大きく異なり、リン脂質を多量に含有しているという特徴がある。バターミルクは、その製法の違いによって大きく異なるが、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、通常0.5〜1.5質量%程度であるのに対して、上記クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、大凡2〜15質量%であり、多量のリン脂質を含有している。
本発明の食感改良剤において、上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料」として、通常のクリームからバターを製造する際に生じるいわゆるバターミルクそのものを用いることはできないが、バターミルクを乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上となるように濃縮した濃縮物、あるいはその乾燥物を用いることは可能である。
クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる上記水相成分の製造方法の一例を以下に説明する。
上記クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。
先ず、牛乳を遠心分離して得られる脂肪濃度30〜40質量%のクリームをプレートで加温し、遠心分離機によってクリームの脂肪濃度を70〜95質量%まで高める。次いで、乳化破壊機で乳化を破壊し、再び遠心分離機で処理することによってバターオイルが得られる。本発明の食感改良剤で用いることができる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。
一方、上記バターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。
先ず、バターを溶解機で溶解し、熱交換機で加温する。これを遠心分離機で分離することによってバターオイルが得られる。本発明の食感改良剤で用いることができる上記水相成分は、遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。該バターオイルの製造に用いられるバターとしては、通常のものが用いられる。
クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる上記水相成分としては、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上であれば、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分をそのまま用いてもよく、また、噴霧乾燥、濃縮、冷凍等の処理を施したものを用いてもよい。
但し、乳由来のリン脂質は、高温加熱するとその機能が低下するため、上記加温処理や上記濃縮処理中あるいは殺菌等により加熱する際の温度は、100℃未満であることが好ましい。
また、本発明では、上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料」として、上記乳原料中のリン脂質の一部又は全部がリゾ化されたリゾ化物を使用することもできる。該リゾ化物は、上記乳原料をそのままリゾ化したものであってもよく、また上記乳原料を濃縮した後にリゾ化したものであってもよい。また、得られたリゾ化物に、さらに濃縮あるいは噴霧乾燥処理等を施してもよい。
上記乳原料の一部又は全部として、上記リゾ化物を本発明で用いることにより、本発明の食感改良剤の混合性をさらに高めることができ、また、本発明の食感改良剤が油脂を含む場合にその乳化安定性をより高めることができることに加え、より食感改良効果の高い食感改良剤を得ることができる。
「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料」中のリン脂質をリゾ化するには、ホスホリパーゼAで処理すればよい。ホスホリパーゼAは、リン脂質分子のグリセロール部分と脂肪酸残基とを結びつけている結合を切断し、この脂肪酸残基を水酸基で置換する作用を有する酵素である。ホスホリパーゼAは、作用する部位の違いによってホスホリパーゼA1とホスホリパーゼA2とに分かれるが、ホスホリパーゼA2が好ましい。ホスホリパーゼA2の場合、リン脂質分子のグリセロール部分の2位の脂肪酸残基が選択的に切り離される。
本発明の食感改良剤は、上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料」を、固形分として、好ましくは0.1〜8質量%、さらに好ましくは0.5〜7質量%、最も好ましくは1〜4質量%含有する。
上記乳原料の起源となる乳としては、牛乳、ヤギ乳、ヒツジ乳、人乳等の乳を例示することができるが、特に牛乳が好ましい。
本発明の食感改良剤は、油脂を、好ましくは1〜60質量%、さらに好ましくは5〜30質量%、最も好ましくは10〜25質量%含有することにより、食感改良効果、特にソフト性の改良効果に一層優れたものとなる。
本発明の食感改良剤で用いることのできる油脂としては、特に限定されないが、例えばパーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、カカオ油、サフラワー油、乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の各種の植物油脂、動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換処理から一又は二以上の処理を行った加工油脂や、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、全脂粉乳、加糖全脂粉乳等の油脂を含有する食品素材が挙げられる。本発明の食感改良剤では、これらの油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
本発明の食感改良剤は、油脂を含有する場合、水中油型乳化の形態で含有することが好ましく、その際の油脂粒径は、油滴の体積基準のメディアン径が好ましくは10マイクロメートル以下、更に好ましくは5マイクロメートル以下、より好ましくは3マイクロメートルである。10マイクロメートルを越えると、保存時の乳化安定性が低下してしまうおそれがある。
本発明の食感改良剤において、水分含量は、20〜98質量%、好ましくは35〜90質量%、さらに好ましくは40〜90質量%である。水分含量が20質量%より少ないか、98質量%より多いと、流動状〜ペースト状にならず、幅広い物性の飲食品、特に低粘度の飲食品に対し均質に混合することができない。また、水分含量が98質量%より多いと、保存中に水分離が生じやすくなる問題もある。なお、ここでいう水には、水道水や天然水等の配合水に加え、牛乳、液糖等の各種原料に含まれる水分も含める。
本発明の食感改良剤には、必要に応じ、その他の材料を配合してもよい。その他の材料としては、上記(A)アルギン酸及び/又はアルギン酸塩以外のゲル化剤や安定剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤、糖類・甘味料、澱粉類、(B)カルシウム又は(C)ナトリウムの給源として挙げたカルシウム又はナトリウムを含有する乳製品及び上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料」以外の乳や乳製品、卵製品、穀類、無機塩、有機酸塩、キモシン等の蛋白質分解酵素、トランスグルタミナーゼ、ラクターゼ(β−ガラクトシダーゼ)、α―アミラーゼ、グルコアミラーゼ等の糖質分解酵素、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、果汁、濃縮果汁、果汁パウダー、乾燥果実、果肉、野菜、野菜汁、香辛料、香辛料抽出物、ハーブ、直鎖デキストリン・分枝デキストン・環状デキストン等のデキストリン類、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材、着香料、苦味料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、強化剤等が挙げられる。
上記(A)アルギン酸及び/又はアルギン酸塩以外のゲル化剤や安定剤としては、ペクチン、LMペクチン、HMペクチン、海藻抽出物、海藻エキス、寒天、グルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ジェランガム、タラガントガム、キサンタンガム、カラギーナン、カードラン、タマリンドシードガム、カラヤガム、タラガム、トラガントガム、アラビアガム、カシアガムの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記(A)アルギン酸及び/又はアルギン酸塩以外のゲル化剤や安定剤の含有量は、好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下とする。上記アルギン酸類以外のゲル化剤や安定剤の含有量が4質量%よりも多いと、食感改良効果が得られなかったり、更には、食感改良剤を添加した飲食品が高い粘性を呈したりする等、食感に違和感を呈しやすいので好ましくない。
上記乳化剤は、食感改良剤が油脂を含有する場合や、また、飲食品に老化防止やさらに高い食感改良効果(特にソフト性・歯切れ)等の効果を付加する場合に、必要に応じ添加するものであり、その具体例としては、レシチン、酵素処理レシチン等の天然乳化剤、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の合成乳化剤が挙げられる。本発明の食感改良剤では、風味や、消費者の間に広まっている天然志向に応える観点から、上記乳化剤のうち、合成乳化剤を用いないことが好ましく、さらに好ましくは上記の天然乳化剤や合成乳化剤等の乳化剤を用いないのが好ましい。
上記金属イオン封鎖剤は、一般にアルギン酸ゲルを製造する際に、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン等の二価の金属イオンを封鎖するために添加するものであり、本発明の食感改良剤では、(B)カルシウムを被包して、アルギン酸類との反応を制御するために、必要に応じ使用するものである。その具体例としては、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ウルトラポリリン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム等の各種リン酸塩、並びにクエン酸、酒石酸等の有機酸塩類、及び炭酸塩等の無機塩類、さらには、これらの金属イオン封鎖剤を含有する食品素材が挙げられる。
本発明の食感改良剤では、これらの各種金属イオン封鎖剤の中から選ばれた1種又は2種以上を、目的に応じて用いることができるが、本発明の食感改良剤は金属イオン封鎖剤を使用せずとも製造可能であること、また、風味の面から、金属イオン封鎖剤を使用しないことが好ましい。
上記pH調整剤は、(B)カルシウムとして、カルシウムを含有する食品を用いた場合等に、カルシウムを水相中に溶出させるために、必要に応じ使用するものであり、その具体例としては、クエン酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、氷酢酸、フィチン酸、アジピン酸、コハク酸、グルコノデルタラクトン、アスコルビン酸が挙げられる。また、これらのpH調整剤を含有する食品素材の形で本発明の食感改良剤に含有させてもよい。本発明では、これらの各種pH調整剤の中から選ばれた1種又は2種以上を、目的に応じて用いることができる。
上記pH調整剤を用いる場合、その含有量は、本発明の食感改良剤中、好ましくは0.01〜1質量%である。
上記糖類は、飲食品に甘味を付与する場合や、また、飲食品に老化防止やさらに高い食感改良効果(とくにソフト性・歯切れ)等の効果を付加する場合に、必要に応じ添加するものであり、その具体例としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。また、上記甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、アスパルテーム等が挙げられる。これらの糖類及び甘味料は、単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記糖類及び上記甘味料の含有量は、固形分として好ましくは0〜50質量%であり、含有させる場合には、さらに好ましくは1〜30質量%、最も好ましくは5〜20質量%である。
なお、上記その他の原料は、合計として、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、最も好ましくは20質量%以下とする。30質量%、特に60質量%を超えると、食感改良効果を付与することができなくなる恐れがあり、また、求められない食味や物性を飲食品に付与してしまう恐れがあるからである。
本発明の食感改良剤は、上記成分(A)を特定量含有し、上記成分(B)を上記成分(A)に対して特定比で含有し、水分含量を特定含量とすることで、ペースト状〜流動状の物性を示す。
本発明の食感改良剤の好ましい粘度は、B型粘度計で、25℃及び30rpmの条件下で測定したとき、好ましくは1〜1000mPa・s、さらに好ましくは1〜300mPa・s、最も好ましくは1〜100mPa・sである。
次に、本発明の食感改良剤の好ましい製造方法について述べる。
本発明の食感改良剤は、下記成分(A)を0.2〜20.0質量%及び下記成分(B)を含有し、それらの含有量の比が質量基準で0.1<(B)/(A)≦10であり、水分含量が20〜98質量%である混合液を、均質化することにより得ることができる。
(A)アルギン酸及び/又はアルギン酸塩
(B)カルシウム
油脂を含有する食感改良剤を製造する場合には、水相に油相を添加し、水中油型に乳化して上記混合液としての乳化物を作製した後、該乳化物を均質化することが好ましい。この場合、上記成分(A)アルギン酸及び/又はアルギン酸塩は、油相中に分散させてから水相に添加することが、ダマにならず均一に分散する点で好ましい。なお、上記水中油型とは水中油中水型を含むものである。
また、pH調整剤や(C)ナトリウムを使用する場合は、上記成分(A)アルギン酸及び/又はアルギン酸塩を添加する前の水相にあらかじめ溶解しておくことが好ましい。
さらに、上記混合液は、均質化前に必要に応じて加熱殺菌を行なうことができる。該加熱殺菌の方法としては、インジェクション式、インフュージョン式、マイクロ波等の直接加熱方式、又は、バッチ式、プレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式があり、UHT、HTST、LTLT等の60〜160℃の加熱処理を行なえば良い。
上記均質化は均質化機を用いて行なうことができ、該均質化機としては、例えば、ケトル型チーズ乳化釜、ステファンミキサーの様な高速せん断乳化釜、スタティックミキサー、インラインミキサー、ホモゲナイザー、コロイドミル、ディスパーミル等が挙げられ、好ましくは1〜200MPa、さらに好ましくは5〜150MPa、最も好ましくは10〜100MPaの均質化圧力にて均質化を行なう。この均質化処理は、2段バルブ式ホモゲナイザーを用いて、例えば、1段目10〜100MPa、2段目0〜10MPaの均質化圧力にて行なっても良い。
また、得られた本発明の食感改良剤は、必要に応じて冷却しても良い。冷却方法は、例えば、適当な容器に充填した後に、水浴、氷浴、冷蔵庫、冷凍庫等で冷却する方法が挙げられる。
次に、本発明の食感改良剤の用途について説明する。
本発明の食感改良剤は、食感改良のために飲食品に添加・混合される。その添加方法としては、飲食品製造時の生地に添加・混合する方法でも、また、飲食品に添加・混合する方法でもよい。
ここで、なぜ、本発明の食感改良剤が、流動状〜ペースト状であるにもかかわらず、食感改良効果が高いのかは定かではないが、おそらく、飲食品に混合した際に急激にカルシウム濃度が下がるため、その時点でゲル強度を増し、食感改良効果が生じるためと考えられる。
また、本発明の食感改良剤は、流動状〜ペースト状であることから、一般的な油脂代替品としても使用することも可能である。
本発明の食感改良剤を含有する飲食品は、食感が改良され、また、耐熱性(保管温度が高い場合でも形崩れしない、また、加熱調理する食品にあっては、加熱調理時に形崩れしない)についても改良されているものである。
本発明の食感改良剤の飲食品に対する添加量は、飲食品の種類、あるいは求められる食感改良効果により、適宜設定可能であるが、含有させる飲食品又は飲食品の生地100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、さらに好ましくは0.5〜15質量部、最も好ましくは0.5〜12質量部である。
本発明でいうところの飲食品としては、特に限定されるものではなく、例えば、味噌、醤油、めんつゆ、たれ、だし、パスタソース、ドレッシング、マヨネーズ、トマトケチャップ、ウスターソース、とんかつソース、ふりかけ等の調味料、味噌汁、お吸い物、コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類、焼肉、ハンバーグ、ミートボール、肉団子、ミートローフ、ミートパテ、チキンナゲット、ミートコロッケ、メンチカツ、つくね、ハム、ソーセージ、ウインナー等の畜産加工品、かまぼこ、干物、塩辛、佃煮、珍味等の水産加工品、ポテトチップス、コーンスナック、煎餅等のスナック類、食パン、菓子パン、デニッシュ・ペストリー、バラエティーブレッド、バターロール、ソフトロール、ハードロール、スイートロール、米菓、蒸しパン、蒸しケーキ、パイ、どら焼、今川焼き、ホットケーキ、クレープ、バターケーキ、スポンジケーキ、クッキー、ビスケット、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツエル、カットパン、ウェハース、サブレ、マカロン、シュー、ドーナツ、ワッフル、スコーン、発酵菓子、ピザ生地、中華饅頭等等のベーカリー食品類、煮物、揚げ物、焼き物、カレー、シチュー、グラタン、ごはん、おかゆ、おにぎり等の調理食品、パスタ、うどん、ラーメン等の麺類食品、マーガリン、流動ショートニング、ショートニング、ファットスプレッド、風味ファットスプレッド等の油脂加工食品、フラワーペースト、餡等の製菓製パン用素材、チョコレート、キャンディ、ゼリー、アイスクリーム、ガム等の菓子類、饅頭、カステラ等の和菓子類、コーヒー、コーヒー牛乳、紅茶、ミルクティー、豆乳、栄養ドリンク、野菜飲料、食酢飲料、ジュース、コーラ、ミネラルウォーター、スポーツドリンク等の飲料、ビール、ワイン、カクテル、サワー等のアルコール飲料類、牛乳、ヨーグルト、チーズ等の乳や乳製品等が挙げられる。
本発明の食感改良剤は、流動状〜ペースト状であり、低粘度の飲食品に対する混合性に優れ、且つ、その食感改良効果が高いことから、上記飲食品の中でも、味噌、醤油、めんつゆ、たれ、だし、パスタソース、ドレッシング、マヨネーズ、トマトケチャップ、ウスターソース、とんかつソース、味噌汁、お吸い物、コンソメスープ、ポタージュスープ、カレー、シチュー、グラタン、流動ショートニング、コーヒー、コーヒー牛乳、紅茶、ミルクティー、豆乳、栄養ドリンク、野菜飲料、食酢飲料、ジュース、コーラ、ミネラルウォーター、スポーツドリンク、ビール、ワイン、カクテル、サワー、牛乳等の低粘度の流動状〜ペースト状である飲食品や、ハンバーグ、ミートボール、肉団子、ミートコロッケ、メンチカツ、つくね、ハム、ソーセージ、ウインナー、蒸しパン、蒸しケーキ、どら焼、今川焼き、ホットケーキ、クレープ、バターケーキ、スポンジケーキ、クッキー、ビスケット、ウェハース、サブレ、マカロン、シュー、ドーナツ、ワッフル、フラワーペースト、餡、チョコレート、キャンディ、ゼリー、アイスクリーム、ガム、饅頭、カステラ等の製造時の生地が低粘度の流動状〜ペースト状である飲食品の生地に混合するのに特に適している。また、本発明の食感改良剤は、フライ食品に使用するバッター液に使用することもできる。
本発明の食感改良剤により改良される食感とは、具体的には下記のようなものである。
調味料では、粘り、糸引きが解消され、ノド越しの良さが増強されたものとなる。
スープ類では、粘り、糸引きが解消され、ノド越しの良さが増強されたものとなる。
畜産加工品では、ソフト性、歯切れの良さが増強され、ドリップが解消されたものとなる。
水産加工品では、粘りが解消され、歯切れの良さが増強されたものとなる。
スナック類では、歯切れの良さが増強され、ねちゃつき感が解消されたものとなる。
ベーカリー食品類では、ソフト性、口溶けの良さ、歯切れの良さが増強され、ねちゃつき感や油性感が解消されたものとなる。また、電子レンジ、オーブントースターで再加熱した際のソフト性、歯切れの良さも増強されたものとなる。
調理食品では、粘りが解消され、ノド越しの良さが増強されたものとなる。
麺類食品では、ソフト性、歯切れの良さ、ノド越しの良さが増強されたものとなる。
油脂加工食品では、粘りが解消され、ノド越しの良さが増強されたものとなる。
製菓製パン用素材では、ソフト性、歯切れの良さが増強され、ねちゃつき感が解消されたものとなる。
菓子類では、歯切れの良さが増強されたものとなる。
和菓子類では、ソフト性、歯切れの良さが増強されたものとなる。
飲料類では、ノド越しの良さが増強されたものとなる。
アルコール飲料類では、ノド越しの良さが増強されたものとなる。
乳や乳製品では、粘り、糸引きが解消され、ノド越しの良さが増強されたものとなる。
また、フライ食品のバッター液に使用した場合は、フライ食品を長時間保管した際のサクサク感、歯切れの消失が防止されたものとなる。
次に、実施例及び比較例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を何ら制限するものではない。
<食感改良剤の製造>
〔実施例1〕
乳清カルシウム(カルシウム含量25質量%)0.8質量部、ホエイパウダー(カルシウム含量0.6質量%、ナトリウム含量0.4質量%)4質量部、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量4.89質量%、カルシウム含量0.35質量%、ナトリウム含量0.2質量%)5.5質量部を水67質量部に溶解した。さらに乳酸0.1質量部、食塩(ナトリウム含量39質量%)0.5質量部、乳糖10質量部を添加し、十分に撹拌して水相を得た。
一方、パーム油12質量部に、高粘性アルギン酸ナトリウム(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、150mPa・s;ナトリウム含量9.7質量%)0.5質量部、高粘性アルギン酸(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、50mPa・s)0.3質量部、低粘性アルギン酸ナトリウム(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、50mPa・s、且つ、10質量%水溶液の粘度が500mPa・s;ナトリウム含量9.7質量%)0.5質量部、低粘性アルギン酸(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、50mPa・s、且つ、10質量%水溶液の粘度が500mPa・s)0.4質量部を添加、分散し、油相を調製した。
上記水相に上記油相を添加、乳化し水中油型乳化組成物とし、これを掻取式熱交換器にて90℃で1分間加熱殺菌し、掻取式熱交換器にて60℃に冷却した。次いでイズミフードマシナリー製2段式ホモゲナイザーにて均質化後、ポリエチレン袋に密封し、20℃まで24時間かけて冷却しゲル化させて、本発明の食感改良剤を得た。
得られた本発明の食感改良剤は、(B)カルシウムとして、カルシウム製剤とカルシウムを含有する食品を併用し、「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料」を5.5質量%含有し、油脂を12質量%含有し、水分を70.5質量%含有し、金属イオン封鎖剤を含有しないものであった。
また、得られた本発明の食感改良剤は、成分(A)を1.7質量%、成分(A1)を0.8質量%、成分(A2)を0.9質量%、(B)カルシウムを0.24質量%、(C)ナトリウムを0.319質量%含有し、且つ、それらの含有量の比が質量基準で、(A1):(A2)=47:53、(B)/(A)=0.143、(C)/(A)=0.188であり、B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの粘度が、100mPa・sであった。
〔実施例2〕
アルギン酸類として、高粘性アルギン酸ナトリウム(B型粘度計でpH7、25℃及び30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、150mPa・s)1.5質量部のみを使用し、水を69.2質量部とした以外は、実施例1と同様の配合、製法で、実施例2の食感改良剤を得た。
得られた実施例2の食感改良剤は、成分(A)を1.5質量%、成分(A1)を1.5質量%、成分(A2)を0質量%、(B)カルシウムを0.24質量%、(C)ナトリウムを0.364質量%含有し、且つ、それらの含有量の比が質量基準で、(B)/(A)=0.16、(C)/(A)=0.242であり、B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの粘度が、100mPa・sであった。
なお、水分含量は72.7質量%であった。
〔実施例3〕
乳清カルシウム(カルシウム含量25質量%)0.8質量部、ホエイパウダー(カルシウム含量0.6質量%、ナトリウム含量0.4質量%)4質量部、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(固形38質量%、固形分中のリン脂質の含有量4.89質量%、カルシウム含量0.35質量%、ナトリウム含量0.2質量%)5.5質量部を水67質量部に溶解した。さらに乳酸0.1質量部、食塩(ナトリウム含量39質量%)0.5質量部、乳糖20質量部を添加し、十分に撹拌した。
さらにここへ、高粘性アルギン酸ナトリウム(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、150mPa・s;ナトリウム含量9.7質量%)0.1質量部、高粘性アルギン酸(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、50mPa・s)0.3質量部、低粘性アルギン酸ナトリウム(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、50mPa・s、且つ、10質量%水溶液の粘度が500mPa・s;ナトリウム含量9.7質量%)1.1質量部、低粘性アルギン酸(B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、50mPa・s、且つ、10質量%水溶液の粘度が500mPa・s)0.2質量部を添加し、撹拌、分散させて混合液を得た。
この混合液を掻取式熱交換器にて90℃で1分間加熱殺菌し、掻取式熱交換器にて60℃に冷却した。次いでイズミフードマシナリー製2段式ホモゲナイザーにて均質化後、ポリエチレン袋に密封し、20℃まで24時間かけて冷却しゲル化させて、本発明の食感改良剤を得た。
得られた本発明の食感改良剤は、(B)カルシウムとして、カルシウム製剤とカルシウムを含有する食品を併用し、「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料」を5.5質量%含有し、水分を70.5質量%含有し、金属イオン封鎖剤を含有しないものであった。
また、得られた本発明の食感改良剤は、成分(A)を1.7質量%、成分(A1)を0.4質量%、成分(A2)を1.3質量%、(B)カルシウムを0.24質量%、(C)ナトリウムを0.319質量%含有し、且つ、それらの含有量の比が質量基準で、(A1):(A2)=24:76、(B)/(A)=0.143、(C)/(A)=0.188であり、B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの粘度が、100mPa・sであった。
〔比較例1〕
乳清カルシウムの添加量を0.2質量部に変更し、アルギン酸類として、高粘性アルギン酸ナトリウム(B型粘度計でpH7、25℃及び30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、150mPa・s)1.5質量部のみを使用し、水を69.2質量部とした以外は、実施例1と同様の配合、製法で、比較例1の食感改良剤を得た。
得られた比較例1の食感改良剤は、成分(A)を1.5質量%、成分(A1)を1.5質量%、成分(A2)を0質量%、(B)カルシウムを0.093質量%、(C)ナトリウムを0.364質量%含有し、且つ、その含有量の比が質量基準で、(B)/(A)=0.062、(C)/(A)=0.242であり、B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの粘度が、150mPa・sであった。
なお、水分含量は72.7質量%であった。
〔比較例2〕
乳清カルシウムの添加量を0.2質量部に変更し、アルギン酸類として、高粘性アルギン酸ナトリウム(B型粘度計でpH7、25℃及び30rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が、150mPa・s)1.5質量部のみを使用し、水を69.2質量部とした以外は、実施例1と同様の配合、製法で、アルギン酸類ゲルを製造した。このアルギン酸類ゲルを、ホモジナイザーを用いて、高速で2分破砕し、流動ゲルである比較例2の食感改良剤を得た。
得られた比較例2の食感改良剤は、成分(A)を1.5質量%、成分(A1)を1.5質量%、成分(A2)を0質量%、(B)カルシウムを0.093質量%、(C)ナトリウムを0.364質量%含有し、且つ、その含有量の比が質量基準で、(B)/(A)=0.062、(C)/(A)=0.242であり、B型粘度計でpH7、25℃、30rpmの条件下で測定したときの粘度が、150mPa・sであった。
なお、水分含量は72.7質量%であった。
<スポンジケーキの製造>
〔実施例4〕
全卵(正味)180質量部、砂糖110質量部、転化糖液糖20質量部、牛乳20質量部、水25質量部、ナタネ油10質量部、ケーキ用起泡性乳化脂15質量部(商品名:トルテ、株式会社ADEKA製)、及び、薄力粉100質量部とベーキングパウダー1質量部を混合して篩っておいたものをミキサーボウルに順に投入し、卓上ミキサーでワイヤーホイッパーを使用して低速で1分、高速で3分ホイップし、ここへ実施例1で得られた食感改良剤20質量部を添加し、低速で1分混合し、実施例4のスポンジケーキ生地を得た。なお、該スポンジケーキ生地は上記食感改良剤を4.8質量%含有するものであった。
得られたスポンジケーキ生地を、底紙と側紙を敷いた6号のケーキ型に入れ、170℃に設定した固定オーブンで30分間焼成して、スポンジケーキを得た。
〔実施例5〕
実施例1で得られた食感改良剤に代えて実施例2で得られた食感改良剤を使用した以外は実施例4と同様の配合と製法により実施例5のスポンジケーキ生地を得て、同様に170℃に設定した固定オーブンで30分間焼成して、スポンジケーキを得た。
〔実施例6〕
実施例1で得られた食感改良剤に代えて実施例3で得られた食感改良剤を使用した以外は実施例4と同様の配合と製法により実施例6のスポンジケーキ生地を得て、同様に170℃に設定した固定オーブンで30分間焼成して、スポンジケーキを得た。
〔比較例3〕
実施例1で得られた食感改良剤に代えて比較例1で得られた食感改良剤を使用した以外は実施例4と同様の配合と製法により比較例3のスポンジケーキ生地を得て、同様に170℃に設定した固定オーブンで30分間焼成して、スポンジケーキを得た。
〔比較例4〕
実施例1で得られた食感改良剤に代えて比較例2で得られた食感改良剤を使用した以外は実施例4と同様の配合と製法により比較例4のスポンジケーキ生地を得て、同様に170℃に設定した固定オーブンで30分間焼成して、スポンジケーキを得た。
〔比較例5〕
食感改良剤を全く使用しない以外は、実施例4と同様の配合と製法により比較例5のスポンジケーキ生地を得て、同様に170℃に設定した固定オーブンで30分間焼成して、スポンジケーキを得た。
(食感の評価試験)
得られたスポンジケーキを、室温(25℃)で60分放冷し、次いで袋に密封して25℃で24時間保管した後、食感(ソフト性・歯切れ性)についてパネルテストを行なった。
パネルテストにおいては、11人のパネラーにスポンジケーキを試食させ、スポンジケーキのソフト性・歯切れ感について、以下の5段階にて評価させた。その結果を表1に記載した。
◎:ソフトで歯切れ感が極めて良好な食感であった。
○:ソフトで歯切れ感が良好な食感であった。
△:ソフトであるが歯切れ感が不良であった。
×:ソフト性、歯切れ感共に不良であり、ねちゃつく食感であった。
××:ダマが残り、不均一な食感であった。
Figure 2009100710
表1の結果からわかるとおり、実施例1〜3の本発明の食感改良剤を使用した実施例4〜6の本発明のスポンジケーキは、ソフト性、歯切れ感とも良好であり、食感改良剤を使用しない比較例5のスポンジケーキに比べ、ソフト性、歯切れ感とも大きく改良されていた。
また、(B)/(A)が0.1未満である比較例1の食感改良剤は、混合性が悪かったため生地にダマが残り、そのため、得られた比較例3のスポンジケーキは、不均一な不良な食感であった。
また、流動ゲルである比較例2の食感改良剤を使用して得られた比較例4のスポンジケーキは、ソフト性は良好であるが、歯切れ感が不良であった。
<バターケーキの製造>
〔実施例7〕
バター100質量部及び上白糖100質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーでビーターを使用して低速で1分、高速で5分クリーミングした。次いで低速でミキシングしながら、全卵(正味)90質量部及び液糖10質量部を2分かけてゆっくり加え、さらに低速で1分ミキシングした。ここに、薄力粉100質量部とベーキングパウダー1質量部、及び、実施例1で得られた食感改良剤20質量部を添加し、低速で1分混合し、実施例7のバターケーキ生地を得た。なお、該バターケーキ生地は上記食感改良剤を4.8質量%含有するものであった。
得られたバターケーキ生地を、底紙と側紙を敷いたパウンド型に流し込み、上火180℃、下火170℃で30分間焼成して、バターケーキを得た。
〔実施例8〕
実施例1で得られた食感改良剤に代えて実施例2で得られた食感改良剤を使用した以外は実施例4と同様の配合と製法により実施例8のバターケーキ生地を得て、同様に上火180℃、下火170℃で30分間焼成して、バターケーキを得た。
〔実施例9〕
実施例1で得られた食感改良剤に代えて実施例3で得られた食感改良剤を使用した以外は実施例4と同様の配合と製法により実施例9のバターケーキ生地を得て、同様に上火180℃、下火170℃で30分間焼成して、バターケーキを得た。
〔比較例6〕
実施例1で得られた食感改良剤に代えて比較例1で得られた食感改良剤を使用した以外は実施例4と同様の配合と製法により比較例6のバターケーキ生地を得て、同様に上火180℃、下火170℃で30分間焼成して、バターケーキを得た。
〔比較例7〕
実施例1で得られた食感改良剤に代えて比較例2で得られた食感改良剤を使用した以外は実施例4と同様の配合と製法により比較例7のバターケーキ生地を得て、同様に上火180℃、下火170℃で30分間焼成して、バターケーキを得た。
〔比較例8〕
食感改良剤を全く使用しない以外は、実施例4と同様の配合と製法により比較例8のバターケーキ生地を得て、同様に上火180℃、下火170℃で30分間焼成して、バターケーキを得た。
(食感の評価試験)
得られたバターケーキを袋に詰めて25℃で7日静置した後、厚さ15mmにスライスし、食感(ソフト性・歯切れ性)についてパネルテストを行なった。
パネルテストにおいては、11人のパネラーにバターケーキを試食させ、バターケーキのソフト性・歯切れ感について、以下の5段階にて評価させた。その結果を表2に記載した。
◎:ソフトで歯切れ感が極めて良好な食感であった。
○:ソフトで歯切れ感が良好な食感であった。
△:ソフトであるが歯切れ感が不良であった。
×:ソフト性、歯切れ感共に不良であり、ねちゃつく食感であった。
××:ダマが残り、不均一な食感であった。
Figure 2009100710
表2の結果からわかるとおり、実施例1〜3の本発明の食感改良剤を使用した実施例7〜9の本発明のバターケーキは、食感(ソフト性、歯切れ感)が良好であり、食感改良剤を使用しない比較例8のバターケーキに比べ、食感が改良されていた。
また、(B)/(A)が0.1未満である比較例1の食感改良剤は、混合性が悪かったため生地にダマが残り、そのため、得られた比較例6のバターケーキは、不均一な不良な食感であった。
また、流動ゲルである比較例2の食感改良剤を使用して得られた比較例7のバターケーキは、ソフト性は良好であるが、歯切れ感が不良であった。
<バッター液及びフライ食品の調製>
〔実施例10〕
1,000ml容のステンレスビーカーに水600gを入れ、撹拌羽根を使用して泡立たないように400rpmで撹拌しながら、ここへ実施例1で得られた食感改良剤100gを一度に添加し、さらに400rpmで2分混合・分散させた。次いで小麦粉300gを投入してさらに2分混合・分散させ、バッター液を調製した。このバッター液に白身魚(タラ)の切り身10gを浸漬し、パン粉を付着させた後、急速冷凍し、−20℃で1週間冷凍保管した。この冷凍魚フライを冷凍のまま180℃のフライ油(菜種油使用)で4分間フライしてフライ食品を得た。
〔実施例11〕
実施例1で得られた食感改良剤に代えて実施例2で得られた食感改良剤を使用した以外は実施例10と同様の配合と製法により実施例11のバッター液を得て、さらに同様にフライ食品を得た。
〔実施例12〕
実施例1で得られた食感改良剤に代えて実施例3で得られた食感改良剤を使用した以外は実施例10と同様の配合と製法により実施例12のバッター液を得て、さらに同様にフライ食品を得た。
〔比較例9〕
実施例1で得られた食感改良剤に代えて比較例1で得られた食感改良剤を使用した以外は実施例10と同様の配合と製法により比較例9のバッター液を得て、さらに同様にフライ食品を得た。
〔比較例10〕
実施例1で得られた食感改良剤に代えて比較例2で得られた食感改良剤を使用した以外は実施例10と同様の配合と製法により比較例10のバッター液を得て、さらに同様にフライ食品を得た。
〔比較例11〕
食感改良剤を全く使用しない以外は、実施例10と同様の配合と製法により比較例11のバッター液を得て、さらに同様にフライ食品を得た。
(食感の評価試験)
得られたフライ食品のフライ5時間後の食感(サクサク感、歯切れ)についてパネルテストを行なった。
パネルテストにおいては、15人のパネラーにフライ食品を試食させ、その衣部分の食感(サクサク感、歯切れ)について、それぞれ以下の5段階にて評価をさせた。その結果を表3に記載する。
・食感(サクサク感)
◎:非常にサクサクしていて、極めて良好な食感である
○:サクサクした箇所が部分的に残っており、ほぼ良好な食感である
△:しんなりしていて、食感がやや不良である
×:べたついていて、食感が不良である
××:不均一な食感である
・食感(歯切れ)
◎:極めて良好な歯切れである
○:ほぼ良好な歯切れである
△:歯切れが、やや不良である
×:歯切れが、不良である
××:不均一な食感である
Figure 2009100710
上記表3からわかるとおり、実施例1〜3の本発明の食感改良剤を含有するバッター液を使用して得られた実施例10〜12のフライ食品は、食感(サクサク感、歯切れ感)が良好であった。
それに対し、食感改良剤をまったく使用しない比較例11のフライ食品は、食感(サクサク感、歯切れ感)が不良であった。
また、(B)/(A)が0.1未満である比較例1の食感改良剤は、混合性が悪かったため、バッター液にダマが残り、そのため、得られた比較例9のフライ食品は不均一な食感であった。
また、流動ゲルである比較例2の食感改良剤を使用して得られた比較例10のフライ食品はサクサク感も歯切れもやや不良であった。

Claims (8)

  1. 下記成分(A)を0.2〜20.0質量%及び下記成分(B)を含有し、それらの含有量の比が質量基準で0.1<(B)/(A)≦10であり、水分含量が20〜98質量%であることを特徴とする食感改良剤。
    (A)アルギン酸及び/又はアルギン酸塩
    (B)カルシウム
  2. 上記成分(A)が下記の成分(A1)及び成分(A2)の混合物であり、両者の比〔成分(A1):成分(A2)〕が質量基準で99:1〜20:80であることを特徴とする請求項1記載の食感改良剤。
    (A1)高粘性アルギン酸及び/又は高粘性アルギン酸塩
    (A2)低粘性アルギン酸及び/又は低粘性アルギン酸塩
  3. さらに(C)ナトリウムを含有し、該(C)ナトリウムの含有量と上記成分(A)の含有量との比が質量基準で0.01≦(C)/(A)≦1.0であることを特徴とする請求項1又は2記載の食感改良剤。
  4. さらに、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料を、固形分として0.1〜8質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の食感改良剤。
  5. 上記(B)カルシウムの給源として、カルシウムを含有する食品を使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の食感改良剤。
  6. さらに油脂を1〜60質量%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の食感改良剤。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の食感改良剤を含有することを特徴とする飲食品。
  8. 下記成分(A)を0.2〜20.0質量%及び下記成分(B)を含有し、それらの含有量の比が質量基準で0.1<(B)/(A)≦10であり、水分含量が20〜98質量%である混合液を、均質化することを特徴とする食感改良剤の製造方法。
    (A)アルギン酸及び/又はアルギン酸塩
    (B)カルシウム
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