JP2009097060A - チタン材ならびにチタン材製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 表面層と、該表面層に内側から接する内面層との少なくとも2層の積層構造を有する表面皮膜が形成されており、前記表面層がチタンの酸化物によって形成され、前記表面層の硬度が5GPa〜20GPaのいずれかであり、前記内面層がチタンの炭化物および/または窒化物を含有する層であることを特徴とするチタン材を提供する。
【選択図】 図1
Description
このような多方面にわたって使用されることからチタンが用いられたチタン材には、その表面が均質で美麗であることが求められるようになってきている。
したがって、このチタン材の製造においても、その表面特性を厳密に制御することが求められるようになってきている。
例えば、箔などの薄板製品は、鋳塊をスラブ鍛造し、次いで熱間圧延によって数mm厚さのホットコイルとした後に冷間圧延工程を経て製造されている。
この冷間圧延工程では、通常、長尺のコイルに対して圧延と焼鈍とを繰り返して実施することにより所望の厚みと強度とが確保されている。
また、プレス成型などの加工に供されるチタン板においては、焼鈍仕上げの状態に形成されたりしている。
そして、チタン材は、この酸化物を主体とした層によって表面皮膜が形成されていることから優れた耐食性を有している。
なお、チタンは、酸素以外の炭素、窒素、あるいは、水素などとも化合物を形成しやすく、チタンの炭化物、窒化物、あるいは、水素化物が表面に形成されるとチタン材の表面特性が大きく変化する。
特に、チタン箔などの薄板製品においては、これらの影響が顕著に現れる。
この表面皮膜の形成を制御するプロセスとして、従来、焼鈍酸洗法、真空焼鈍法、あるいは光輝焼鈍法などが実施されたりしている。
この焼鈍酸洗法では、加熱時に厚い酸化スケールが形成され、該酸化スケールを酸洗によって地金を溶解しながら除去することから歩留まりロスが大きく、チタン箔のような薄板製品においては特に歩留まりロスが大きなものとなる。
このようなことからチタン箔のようなチタン材形成する際の加工方法として適しているといえる。
特に光輝焼鈍法は、長尺コイルを継ぎ足しながら連続焼鈍することができるので経済性にも優れている。
一方、チタンは高温においては窒素や水素と反応して窒素化物や水素化物を形成してしまい、チタン材の特性を低下させるおそれがあることから非酸化性ガスとしては、アルゴンガスが用いられたりしている。
また、冷間圧延されたチタンコイルの表面には、圧延油に起因する炭素成分が残留していることから、チタン箔などにおいては、表面に炭化物や窒化物などが形成されるおそれを有している。
また、この窒素や炭素の混入を完全に防止することは困難であり、窒化物や炭化物の形成を制御することは困難である。
例えば、特許文献1には、チタンの炭化物を表面から除去して耐食性を向上させるべく、チタン材の表面を機械的もしくは化学的に1μm以上除去することが記載されている。
また、特許文献2には、チタン材を硝酸に浸漬させるか、あるいは、チタン材に硝酸を塗布するかして表面に酸化物の層を形成させることが記載されている。
しかし、このような特許文献に記載されているチタン材の製造方法は、表面から所定深さの間における炭素含有量を所定以下とさせるべく上記のような表面除去処理が実施されておりチタンの窒化物などは、表面層に不可避的に形成されやすい方法である。
したがって、このような特許文献に記載されているチタン材の製造方法は、チタン材の特性を低下させるおそれが十分低減されたものとはなっていない。
そのため、例えば、表面にチタンの炭化物や窒化物が形成されたチタン板をプレス加工するとこれら炭化物や窒化物がせん断を受けてプレス後の成型品の表面に傷を発生させるおそれがある。
また、金型表面にこれら炭化物や窒化物が付着して成型品に押し込み疵を発生させるおそれを有する。
さらに、チタン材には、耐食性や導電性といった表面特性のさらなる向上、あるいは、美観のさらなる向上を目的としてコーティングやめっきが施される場合がある。
このようなコーティングやめっきの前処理として酸性液体による表面のエッチングが実施される場合があるが、チタン材の表面にチタンの炭化物や窒化物が形成されているとエッチングによる表面状態にバラツキが生じ、コーティング皮膜やめっき皮膜の密着性を低下させるおそれがある。
また、そのようなチタン材を効率よく作製するチタン材製造方法についても、従来、十分な検討がなされておらず、確立されてはいない。
なお、このような問題は、チタン箔などの薄板製品のみならず厚板状、棒状、線状、管状などの種々の形態のチタン材に共通する問題である。
また、“チタンの炭化物および/または窒化物を含有する”との用語は、“チタンの炭化物か、チタンの窒化物かのいずれか一方のみを含有する場合”と“チタンの炭化物とチタンの窒化物との両方を含有する場合”とを包含する意味で用いている。
すなわち、柔軟な表面層と硬質な内面層とを有することから、チタン材を表面潤滑性に優れた状態とさせ得る。
しかも、表面層がチタンの酸化物により形成されていることからチタン材を、表面が均質で耐食性に優れたものとし得る。
すなわち、本発明によれば、表面特性に優れたチタン材を提供し得る。
したがって、例えば、光輝焼鈍などを実施した後に、機械的に表面を研磨したり、硝酸などに長時間浸漬させたりすることなく、電解酸洗の実施のみで、チタンの酸化物によって形成された表面層を形成させうる。
しかも、電解酸洗によって表面層を形成することからコーティング皮膜やめっき皮膜などの密着性を向上させうる均質な表面層を形成させうる。
また、チタンの酸化物による均質な表面層が形成されることで耐食性に優れたチタン材を製造し得る。
さらには、チタンの炭化物および/または窒化物を含有し前記表面層に内側から接する内面層との積層構造を有する表面皮膜をチタン材の表面に形成させ、しかも、前記表面層の硬度が5GPa〜20GPaのいずれかとなるように形成されることから表面潤滑性に優れたチタン材を製造し得る。
すなわち、本発明によれば、表面特性に優れたチタン材を簡便に製造し得る。
本実施形態のチタン箔は、通常、0.05mm〜0.5mmの厚みに形成されている。
このチタン箔にはチタンの酸化物により形成された表面層と該表面層に内側から接する内面層との二層構造の表面皮膜が形成されている。
なお、この表面層は、厚みが100nm以上の状態となるとチタン材の外観に干渉色を呈するようになることから、チタン本来の美観をチタン材に付与させる場合や、表面にコーティング皮膜を形成させて、該コーティング皮膜によってチタン材の審美性を向上させる場合などにおいては表面層の厚みを100nm未満とすることが好適である。
より具体的には、Hysitron社製の「Triboscope」を使用して、室温、大気雰囲気下で、先端角度が90度のダイヤモンド探針をチタン材の表面に400μN/秒の荷重変化となる速度で押し込み、荷重が100μNに達した時点で、同じ荷重変化で除荷した際の荷重(P)と探針の接触部の投影面積(A)とを測定し、得られた値から、硬さ(H)を下記式(1)により計算で求めることができる。
H=P/A ・・・(1)
なお、本明細書中における、ナノインデンテーション法による硬さ(以下「硬度」ともいう)は、特段の記載がない限りにおいて上記方法により測定された硬さを意図している。
この内面層が前記表面層よりも硬質に形成されていることについては、例えば、ビッカース硬度計を用いて、測定荷重を変化させて押し込み深さを変えた硬度測定を実施した場合に、表面からの押し込み深さがある程度の深さとなるまではビッカース硬度の値が上昇し、その後、下降することなどで確認することができる。
しかも、この軟質な表面層がチタンの酸化物により形成されていることからチタン箔を、耐食性に優れたものとし得る。
まず、工業用純チタンを熱間圧延して板状の一次半製品を作製する。
次いで、この一次半製品に、冷間圧延、燃焼ガス雰囲気中での焼鈍、酸洗を繰り返して実施して0.5mm厚み程度の二次半製品を作製する。
さらに、この二次半製品に冷間圧延、焼鈍、電解酸洗の順に処理を施して、例えば、0.2mm厚み程度のチタン箔を作製する。
この二次半製品に対する焼鈍の条件や、電解酸洗の条件を適宜選択することにより、チタンの酸化物で形成された表面層の内側にチタンの炭化物や窒化物を残留させた層を形成させて前記内面層を形成させる。
また、酸化剤を含有する中性水溶液としては、硝酸イオン、クロムイオン(Cr6+)、過酸化水素、オゾンなどを含んだ酸化剤を含有する中性水溶液を例示し得る。
なお、これらの中でも、廃液処理が容易で経済的にも安価であることから硝酸水溶液を単独使用することが好適である。
また、その際の温度については、常温から60℃までのいずれかの温度で使用することが好ましく、常温から40℃までのいずれかの温度で使用することがさらに好ましい。
この電解酸洗は、図5に示すような、電解液3(例えば、前記酸性水溶液)などを貯留する槽2(電解槽2)内にチタン箔1を通過させる連続ラインを用いることができ、例えば、酸性水溶液3中に浸漬させた状態で、上下に配した電極4間を通過させて間接通電させる設備(図5(a))や、通電ロール5を用いてチタン箔1に直接通電する設備(図5(b))を用いて実施させ得る。
この電解酸洗における陽極電解は、通常、電位または電流のいずれかで制御され得る。
電位制御においては、チタンの炭化物の溶解電位である1.56Vを超える電位に設定されることが重要であり、1.6V以上の電位となるように制御することが好適である。
また、交番電解においては、陰極電解と陽極電解とを繰り返すうちに、陽極電解における電位が1.6V以上の電位となるように制御することが好適である。
前記電流制御の場合には、通常、陽極電解時のクーロン量(電流密度と電解時間の積)が、1C/dm2〜100C/dm2のいずれかとなるように制御される。
また、交番電解においては、通常、陰極電解と陽極電解とを繰り返すうちに、陽極電解におけるクーロン量が1C/dm2〜100C/dm2のいずれかとなるように制御される。
なお、本実施形態においては、表面積が大きく美観の低下が視認されやすい点、酸洗などによる歩留まりロスがより顕著である点などにおいて、本発明の効果がより顕著に発揮されることから、チタン箔を例示しているが、本発明においてはチタン材をチタン箔に限定するものではなく、線状、管状など種々の形態のチタン材にもチタン箔と同様に本発明の効果を発揮させ得る。
次いで、焼鈍酸洗を実施して冷間圧延により0.2mm厚みを有するチタン箔を製造した。
この0.2mm厚みのチタン箔をアルゴンガス100%、露点−40℃の光輝焼鈍炉中で720℃、在炉2分間の光輝焼鈍を実施した。
この光輝焼鈍後に、6重量%硝酸水溶液(25℃)中でクーロン量20C/dm2となる条件での電解酸洗を実施して実施例1のチタン箔を作製した。
また、クーロン量が80C/dm2となる条件で電解酸洗した以外は、上記実施例1と同様にして実施例2のチタン箔を作製した。
上記の0.2mm厚みのチタン箔に光輝焼鈍のみを実施し、電解酸洗を実施しなかったこと以外は実施例1と同様にして比較例1のチタン箔を作製した。
光輝焼鈍に代えて、焼鈍酸洗(焼鈍、ソルト処理、ふっ硝酸酸洗)のみを実施したこと以外は比較例1と同様に比較例2のチタン箔を作製した。
上記の0.2mm厚みのチタン箔の表面を1200番のエメリー紙で乾式研磨して参考例1のチタン箔を製造した。
実施例1、比較例2、3、参考例1のチタン箔を5重量%硫酸水溶液中に浸漬させて自然電位の経時変化を測定した。結果を図1に示す。
この図1からは、比較例1(図1中の「1」)のチタン箔は、測定開始後30秒程度で急激な電位低下が認められることから、酸によって溶けやすい成分が表面に存在し、表面が組成的に不均一な状態であることがわかる。
また、参考例1(図1中の「2」)、比較例2(図1中の「3」)のチタン箔は、測定初期からマイナス電位を示しており、これらの表面皮膜が耐食性に劣っていることがわかる。
一方で、実施例1(図1中の「4」)は、測定初期から安定したプラス電位を示しており、表面が組成的に均一で、耐食性に優れた表面皮膜が形成されていることがわかる
実施例1、比較例1のチタン箔の表面に対し、X線光電子分光分析(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)を実施した。
このESCA分析は、アルバック・ファイ社製「Quantera SXM」を使用しX線源として、mono−AlKα線、ビーム径約φ200μmで実施した。
なお、この場合の検出深さは数nmである。
この実施例1、比較例1のチタン箔のESCA分析により得られたチャートの内の特徴部分を拡大して図2(a)〜(c)に示す。
光輝焼鈍仕上げの比較例1のチャートにおいては、TiO2の存在を示す459eV付近のピークとともに、TiCの存在を示す282eV付近のピーク、TiNの存在を示す397eV付近のピーク、および、TiCならびにTiNの存在を示す455eV付近のピークがそれぞれ明瞭に観察され表面が組成的に不均質であることがわかる。
一方で、実施例1のチタン箔のチャートにはTiO2の存在を示すピーク以外には、285eV付近に有機系炭素の存在を示す弱いピークと、400eV付近に有機系窒素の存在を示すピークが観察されるのみである。
しかも285eV、400eVこれらは付着物などコンタミによるものと認められることから、表面皮膜は、チタンの酸化物により均質に形成されていると認められる。
実施例1、2、比較例1、2のチタン箔(厚み0.2mm、幅500mm、長さ1300m)に対して、2%クロム鍛鋼製ワークロールを使用して厚みが0.1mmとなるようにさらに冷間圧延を実施した。
その際、1パス目(圧下率約15%)における圧延荷重の計測を実施した。
また、その際にワークロール表面への凝着物の有無を目視にて観察した。
さらに、ワークロールの磨耗量を測定した。なお、磨耗量は、圧延前後のワークロールの直径を測定し、その差に1/2を乗じた値とした。
また、厚みが0.1mmとなった後のチタン箔に、磨耗粉の発生がないかどうかを目視にて観察した。
これらの評価結果を表1に示す。
なお、圧延を実施する前の実施例1、2、比較例1、2のチタン箔に対してナノインデンテーション法による硬度測定を実施した結果を併せて表1に示す。
さらに、ロール表面には、凝着物が多数観察され、圧延後のチタン箔にも多数の傷が観察された。
この比較例1のチタン箔は、25GPaもの表面硬度を有しており、そのために圧延中にワークロールの表面が徐々に削り取られたものと考えられる。
また、ワークロール表面の凝着物は、圧延中に表面皮膜の一部が剥離して付着したものと推察され、表面が不均一な組織で形成されていることによる局所的な移着が生じたものと考えられる。
また、比較例2のチタン箔の圧延においては、ロールへの凝着物やロールの磨耗は全く発生しなかったものの圧延荷重が著しく大きく、さらに、圧延後のチタン箔の表面が黒く汚れた状態となって美観が著しく損なわれる結果となった。
この場合、比較例1のチタン箔とは逆に、表面硬度が低すぎて、圧延の際にチタン箔表面の一部が剥離して生成した磨耗粉がワークロール表面全体に堆積して、ロールとチタン箔との摩擦を増大させて圧延荷重が増大したと考えられる。
また、この磨耗粉が圧延油中に混入してチタン箔表面に際付着したため黒い汚れが形成されたものと考えられる。
一方で、実施例1、2のチタン箔は、圧延荷重が低く、ロールへの凝着物も認められない上にロール磨耗量が大幅に低減されている。
さらに、圧延後のチタン箔の外観も良好であり磨耗粉などの発生が生じていない事もわかる。
すなわち、本発明によれば、チタン箔を表面潤滑性に優れたものとさせることができ、ワークロールならびにチタン箔のいずれの表面をも削られることがなく、終始安定した加工性をチタン箔に付与させうることがわかる。
電解酸洗を電位制御とし、チタンの炭化物の溶解電位(1.56V)よりも低い+1.0Vの電位で実施して、表面硬度が20GPaを超える状態でチタン箔を製造した以外は、実施例1と同様にして比較例3のチタン箔を作製した。
+1.6Vの電位で電解酸洗を実施した以外は比較例3と同様に実施例3のチタン箔を作製した。
+2.0Vの電位で電解酸洗を実施した以外は実施例3と同様に実施例4のチタン箔を作製した。なお、この実施例4のチタン箔の表面の硬度をナノインデンテーション法により測定したところ約18GPaであることが確認された。
クーロン量が5C/dm2となる条件で、交番電解による電解酸洗を実施した以外は、実施例1と同様に実施例5のチタン箔を作製した。
なお、この実施例5のチタン箔の表面の硬度をナノインデンテーション法により測定したところ約20GPaであることが確認された。
図3に比較例1、3、実施例3乃至5、参考例1の各チタン箔について6重量%の硝酸水溶液中で+1.2V〜+1.8Vの領域におけるアノード分極測定を実施した結果を示す。
光輝焼鈍のみの比較例1(図3中の「1」)には、1.56V(飽和カロメル電極基準、以下同様)に電流ピークが認められるが、参考例には認められない。
すなわち、このピークは光輝焼鈍によって表面に形成される皮膜に特有のものであると認められる。
このことは、先述のESCAによる元素分析の結果において述べた通りである。
次いで、比較例3(図3中の「3」)では、比較例1の測定結果と同様に1.56Vに電流ピークが見られたが、実施例3(図3中の「4」)のチタン箔は電流ピークが比較例1、3よりも高電位側にシフトしており、実施例4(図3中の「5」)および、実施例5(図3中の「6」)のチタン箔は、明瞭なピークが認められない点において参考例1(図3中の「2」)のチタン箔と類似する状態であった。
次いで、比較例1、2、実施例5のチタン箔に対して、ビッカース硬度計を用いて、測定荷重を0.05kgfから1kgfにまで連続的に変化させて硬さの測定を実施した。
各荷重におけるダイヤモンド製圧子の押し込み深さとビッカース硬さとの関係を、図4に示す。
比較例1(図4中の「1」)のチタン箔においては表面に近づくほど(押し込み深さが浅いほど)硬度が高くなっており、最表面側では約200(Hv)となっている。
このことからも、焼鈍によって表面に硬質層が形成されていることがわかる。
一方、実施例5(図4中の「2」)のチタン箔においては、最表面から3μm深さにおいて硬度のピーク値が認められ、その前後で硬度の低下が見られる。
そして、実施例5のチタン箔においては最表面側の硬さが約140(Hv)となっていることもわかる。
さらに、比較例2(図4中の「3」)のチタン箔においては実施例5のチタン箔と同様に二層構造を有する表面皮膜が形成されているものと認められるが、表1の結果にも現れているように硬度が小さく、このビッカース硬さ試験でも約110(Hv)の硬さが観察された。
すなわち、ナノインデンテーション法による表面の硬度が5GPa未満の場合には、チタン材に十分な表面潤滑性を付与することができずに圧延などの加工時に多大な圧延荷重が必要となるばかりでなく、磨耗粉の発生により加工後の外観を美麗なものとすることができなくなるおそれがある。
一方で、20GPaを超える場合にもチタン材に十分な表面潤滑性を付与することができずに、ワークロールの磨耗を発生させたり、チタン材の表面の一部が剥離して加工後の表面に傷などが形成されたりするおそれがある。
また、本実施形態のチタン材製造方法によれば、電解酸洗という簡便なプロセスによって、チタンの酸化物による均質表面をチタン材に付与させることができ、特に、コーティングやめっきなど処理が施されるチタン材を製造する場合に好適な製造方法であるといえる。
Claims (2)
- 表面層と、該表面層に内側から接する内面層との少なくとも2層の積層構造を有する表面皮膜が形成されており、前記表面層がチタンの酸化物によって形成され、前記表面層の硬度が5GPa〜20GPaのいずれかであり、前記内面層がチタンの炭化物および/または窒化物を含有する層であることを特徴とするチタン材。
- 表面皮膜が形成されており、該表面皮膜にチタンの酸化物によって形成された表面層が備えられているチタン材を製造するチタン材製造方法であって、
表面にチタンの炭化物および/または窒化物を含有する層が形成されたチタン材を作製した後に、該チタン材に、酸性水溶液もしくは酸化剤を含有する中性水溶液中での電解酸洗を実施してチタンの炭化物および/または窒化物を含有する層の一部を溶解しつつ表面にチタンの酸化物からなる層を形成させることにより、前記表面層と、該表面層に内側から接しチタンの炭化物および/または窒化物を含有する内面層との積層構造を有する表面皮膜を形成し、しかも、前記表面層の硬度が5GPa〜20GPaのいずれかとなるように表面皮膜を形成させることを特徴とするチタン材製造方法。
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