JP6536076B2 - チタン板とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、より高強度化が要求されている分野に広く使用される成形性に優れたチタン板に関する。
純チタンやチタン合金は、鉄やその合金などの鉄系金属材料に比べて、軽量で強度が高いことからスポーツ・レジャー用具、医療器具、各種プラント用部材、航空・宇宙関係機器などに広く用いられている。また、優れた耐食性を有するため、例えばプレート式熱交換器のプレート材や、自動二輪車用マフラー部材などにも用いられたりしている。
このような製品を製造する場合には、曲げ加工、絞り加工、プレス加工などといった塑性変形を伴う種々の加工が施される。したがって、このような各種の用途に供すべく、チタン板には、絞り加工などの加工時における成形性に優れたものが求められる。
しかし、最近では、チタン材の所要量を低減するため薄肉化が要求され、現状より高強度化が求められている。つまり、成形性と強度というトレードオフの関係にある材料特性を同時に満足させるチタン板の開発が必要となる。
純チタンに関してJISにおいては、チタン以外の鉄(Fe)や酸素(O)の含有量により、JIS1種、JIS2種、JIS3種、JIS4種などが規定されている。この純チタンの材料特性としては、Feなどの含有量が少ないJIS1種が最も低強度で成形性に優れ、JIS2種、JIS3種となるにしたがって高強度となることが知られている。しかし一方で、JIS2種、JIS3種、となるほどに成形性が低下し、これらを用いて絞り加工などを実施させることは容易ではない。
従来では、チタン材の強度を増加させる手法としてFeやOなどを添加する固溶強化、結晶粒微細化強化が行なわれてきた。しかしながら前述のように、これでは強度の増加とともに延性が損なわれ、それに伴い成形性が劣化する。
特許文献1、2、3及び4では、Fe含有量が0.1%を超える、またはFeと同様のβ相安定化元素であるNi含有量が多いため、α相結晶粒が小さくなる恐れがあり十分な成形性が得られない可能性がある。
特許文献5では、Fe:1.0質量%以下とされているが、実施例ではα相粒径は20μmに至っておらず、結晶粒径が小さいため十分な成形性が得られない。
さらに、特許文献6、7では、実施例での記載にて結晶粒径が30μmに満たない場合があり、結晶粒径が30μmよりも小さいと成形性が低下するおそれがある。また、酸素含有量が0.05質量%未満の場合、十分な強度が得られない。
特許文献8では、焼鈍後に仕上げ冷間加工を3.4〜5.8%行い、r値の異方性を低減している。しかしながら、冷間加工量が多いため、成形性が低下するおそれがある。
特許文献9では、β相の面積率を3〜20%とすることで張出し性が高度に維持され高強度のチタン合金板材が製造されると記述されているが、β相の面積率が3%を超えると塑性変形時にボイドが発生しやすくなり、これに起因して成形性が低下するおそれがある。
一方、特許文献10では、表層の窒素濃度と表面粗さを制御した成形性と潤滑性に優れたチタン板が提案されているが、表面に非常に硬質なチタン化合物が形成されているため、大きなひずみが付与されるプレス成形などにおいては割れの起点となるおそれがある。
特許文献11では酸化皮膜が3〜15nmを形成させて極表層のみ硬化させ、さらに表面硬度をコントロールし、プレス成形加工などで優れた成形性を発揮するとしている。また、表面の粗さ(算術平均粗さ(Ra))を0.25μm以下とすることで洗浄性を高めている。
純チタンは、熱間加工、焼鈍などの熱処理によって、表面に緻密な酸化スケールが形成される。純チタン薄板を大気中で焼鈍した後は、一般に、NaOHを主成分としたソルトに浸漬(ソルト処理)することによって、難水溶性の酸化スケールを水溶性のNaTiOに改質し、硝酸とふっ酸の混合液(硝ふっ酸)で酸洗して脱スケールし、次いで、水洗し、乾燥する。この酸洗方法についてさまざまな方法が提案されている。
特許文献12では、酸洗速度を向上させる目的で硝酸やふっ酸の濃度などの酸洗条件が種々検討されている。
特許文献13では、ソルト浴での脱スケール中にスパークの発生を防止するため、チタン材を溶融アルカリ塩浴に浸漬した後、電解質水溶液中で陽極電解と交番電解の一方又は双方の電解を行い、さらに硝ふっ酸酸洗液に浸漬する方法が提案されている。
特許文献14では、ステンレス熱延鋼帯において、ショットブラストによる微小な凹部の発生を防止するため、回転ブラシで熱延スケールを研削し、酸洗する方法が提案されている。
特許第1696795号公報 特許第1593477号公報 特開2004−285457号公報 特開2007−162070号公報 特開2009−215601号公報 特開2011−25269号公報 特開2011−26649号公報 特開平9−216004号公報 特開2008−127633号公報 特開2004−244671号公報 特開2011−020135号公報 特開2009−256736号公報 特開平11−200078号公報 特開平7−051728号公報
特許文献1〜9に記載されたチタン板は添加元素や金属組織をコントロールして強度と成形性の両立が試みられているが、強度と成形性はトレードオフの関係にあり、強度を増加させると十分な成形性が得られないという問題があった。
このため、成形性を向上させる目的で特許文献10、11のように表面性状に着目した発明も見られる。特許文献10では表面硬度を増大させる目的で表面に化合物が形成されている。これは、耐焼つき、潤滑性向上には有利であるが、過酷なプレス成形など行なうと脆い化合物が割れの起点となるおそれがある。
特許文献11では、化合物は極薄くコントロールされているが表面粗さが小さく、この場合は十分な量の潤滑剤を塗布することができず、プレス成形に不利である。
高強度と高成形性を両立させるには、元素添加や金属組織および表面特性のコントロールが必要となる。特に、成形性に大きな影響を与える表面特性の因子である表面硬度と表面粗さのコントロールが重要である。このため、本発明者らは、従来の製造方法にとらわれず、化合物を形成させずに表面硬度を増大させる製造方法、潤滑剤が最も有効に作用する表面粗さとなる製造方法を検討する必要があると考えた。
本発明は、上記の事情に鑑み、成形性を低下させず強度を増加させた、強度と成形性に優れるチタン薄板を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために、化合物を形成させずに表面硬度を増大させる製造方法、潤滑剤が有効に作用する表面粗さについて鋭意研究を重ねた。
その結果、チタン板を大気焼鈍して生成した酸化スケールをソルト浸漬で完全に改質した後、ブラシによりこの改質層を除去できる程度の研削能力で研磨することにより、表面粗さを所定の値とし、チタン板の表層のみを変形双晶によって加工硬化させることで、強度と成形性のバランスが大きく向上することを見出し、本発明を完成した。その要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、鉄の含有量が0.01〜0.1%、酸素の含有量が0.02〜0.15%、炭素の含有量が0.015%以下、窒素の含有量が0.015%以下、水素の含有量が0.015%以下であり、残部がチタン及び不可避不純物であり、L方向の算術平均粗さ(Ra)が0.2〜0.8μmであり、T方向の算術平均粗さがL方向の1.1倍以上2倍以下であり、板厚をtとするとき、表層0.05t〜0.2tの範囲に変形双晶が存在し、表面における測定荷重0.25Nでのビッカース硬さが170以上、表面における測定荷重9.8Nでのビッカース硬さが90〜180であり、上記測定荷重0.25Nでのビッカース硬さが、上記測定荷重9.8Nでのビッカース硬さよりも1.5倍以上高いことを特徴とするチタン板。
(2)前記(1)のチタン板の製造方法であって、チタン材を冷間圧延し、冷間圧延されたチタン板を大気中で焼鈍し、焼鈍後のチタン板を質量%でNaOHが75〜95%、520〜550℃のソルト浴に15〜60s浸漬し、研削ブラシで上記浸漬後のチタン板の表層1〜3μmを除去することを特徴とするチタン板の製造方法。
ここで、L方向とは最終圧延方向、T方向とはL方向に直交する方向のことである。
本発明では、元素を過剰に添加しないため成形性を低下させず、ブラシ研磨で酸洗を代替するため歩留の低下を大きく抑制することができ、ブラシ研磨による表層の加工硬化により、強度を増加させることができ、強度と成形性に優れるチタン薄板が得られる。
本発明のチタン板の表面の双晶を示す図である。 実施例において、球頭張出し試験に用いた試験片の形状を示す図である。 大気焼鈍、ソルト処理をして酸洗処理をしたチタン板の表層を示す図である。 大気焼鈍、ソルト処理をしてブラシ研磨をしたチタン板の表層を示す図である。 本発明材の強度延性バランスを示す図である。
本発明のチタン板は、質量%で、0.01〜0.1%の鉄を含有する。鉄の含有量を0.01%未満とするには、鉄の含有量の少ない高価なスポンジチタンしか使えない。また、形成されるチタン板に十分な強度を付与することができない。鉄の含有量は、好ましくは0.015%以上であり、より好ましくは0.02%以上である。
一方、鉄の含有量が0.1%を越えると、結晶粒径が小さくなりすぎ、チタン材料中の酸素含有量を所定の値としても延性の低下が生じ、チタン板の成形性が低下する。また、熱延や熱処理工程を経ると水素吸収が容易なβ相が多く生成するため、耐食性の低下も懸念される。したがって、鉄含有量は、0.1%以下とする。より好ましくは0.09%以下である。
本発明のチタン板は、質量%で0.02〜0.15%の酸素を含有する。酸素の含有量が0.02%未満とするには、高純度なスポンジチタンが必要となるため、一般的な原料の使用が困難となるだけでなく、チタン材の強度が著しく低下する。酸素の含有量は、好ましくは0.03%以上である。
酸素の含有量が0.15%を超えると、強度が大きくなりすぎ、成形性が芳しくないチタン板となる。酸素の含有量は、好ましくは0.14%以下である。
また、炭素、窒素、水素は、成形加工における良好なる成形性を確保する目的からJIS2種に相当する含有量以下とする必要がある。より具体的には、炭素、窒素、水素の含有量は、それぞれ、質量%で0.015%以下とする必要がある。
好ましくは、炭素の含有量を0.01%以下、窒素の含有量を0.01%以下、水素の含有量を0.01%以下とする。
チタン板の成形性の観点からは、上記炭素、窒素、水素の含有量に下限を定めるものではないが、これらの含有量を極端に低下させようとするとチタン板の製造コストを大幅に増大させるおそれがある。このコストアップ抑制の観点からは、炭素を0.0005%以上、窒素を0.0005%以上、水素を0.0005%以上とすることが好ましい。
プレス加工で金型との潤滑性を向上させる目的で、表面を硬くするためにTiC、TiN、酸化皮膜TiOなどの化合物層を表面に形成する手法が採られることがある。しかしながら、これら化合物層は硬く変形能が低いためプレス加工時に割れが生じやすいという問題がある。そのため、本発明のチタン板では、表面に化合物を存在させせず(自然に生成する不動態皮膜は除く)、チタン材そのものの表層を板中心部より硬くさせるため、表層0.05t〜0.2t(tは板厚)に変形双晶を分布させる。本発明のチタン板の模式図を図1に示す。
表層にのみ変形双晶を分布させる方法として、本発明ではブラシ研磨を行なう。これによって、表層にのみ双晶が導入され、表層の硬度のみを高め、成形性を向上さることができる。双晶層が表層0.05tより小さいと、加工硬化している表層領域が少なすぎるため、成形時に表層にもひずみが導入され、表層の加工硬化が進み、割れの起点となるため、成形性は低下する。双晶層が表層0.2tより大きいと、表層と板内部の硬度差が小さく、成形時に表層にもひずみが導入され、表層の加工硬化が進み、割れの起点となるため、成形性は低下する。
表面粗さもプレス成形などに大きな影響を与える因子である。表面粗さが小さすぎると潤滑剤が十分に塗布できず、成形時に潤滑剤が不足する問題がある。表面粗さが大きすぎると潤滑剤は多く塗布できるが、凹部の奥に入り込んだ潤滑剤は成形加工時に金型と接触せず潤滑剤が供給されない可能性がある。
チタン材料の薄板は、変形時に幅縮みする単純引張とは異なる幅縮みせずに変形する成形加工では、T方向のほうが変形能は高い。例えば2軸方向に引張変形するエリクセン試験において、破断時にはL方向へ伸びる方向に割れる。つまり、成形加工ではL方向のほうが変形能は劣るということを意味する。したがって、L方向に優先的に潤滑剤が供給されれば、全体的に変形能が増加するということになる。しかしながら、これまで、表面粗さの大きさ自体に着目した発明は見られたが、表面粗さの異方性に着目することは試みられなかった。
本発明者らは鋭意研究を重ね、潤滑剤を十分塗布することができ、成形加工時に潤滑剤が十分供給される表面粗さの条件を見出した。それが、ソルト処理後のブラシ研磨であり、それによる表面粗さは、L方向の算術平均粗さ(Ra)が0.2〜0.8μmであり、T方向のRaはL方向の1.1倍以上2倍以下である。
L方向の算術平均粗さ(Ra)が0.2μm以下では潤滑剤が十分塗布できない。好ましくは0.3μm以上である。0.8μmを超えると凹凸が大きすぎて、成形時には凹部の奥に入り込んだ潤滑剤が供給されず、十分な成形性が得られない。好ましくは0.7μm以下である。
T方向のRaがL方向の1.1倍より小さい場合は、L方向に伸びるほうに潤滑剤が供給されず、十分な成形性が得られない。T方向のRaは、好ましくはL方向の1.2倍以上である。T方向のRaがL方向の2倍を越えるとT方向に潤滑剤が供給されにくくなり十分な成形性が得られない。T方向にL方向の1.1倍以上2倍以下の凹凸があることでT方向よりL方向への潤滑剤の供給が優先され、L方向の変形能が向上することによって、優れた成形性が得られる。
本発明では、ブラシ研磨後の表面における測定荷重0.25Nでのビッカース硬さが170以上、測定荷重9.8Nでのビッカース硬さが90〜180であり、測定荷重0.25Nでのビッカース硬さが測定荷重9.8Nでのビッカース硬さよりも1.5倍以上高い。この場合、表層が板内部より十分硬いため、成形時には潤滑性の向上により、軟質な内部に優先的にひずみが均一に導入される。また、表面は、化合物とは異なり、塑性変形が可能なチタン材のため、割れが生じにくくなる。以上から、表面の塑性変形可能な高硬度化により、割れが生じにくい潤滑性の向上によるひずみの均一性により成形性が向上する。
測定荷重0.25Nでのビッカース硬さが170に満たない場合、成形時に表層にもひずみが導入され、表層の加工硬化が進み割れの起点となるため、成形性は低下する。
測定荷重9.8Nでのビッカース硬さが90より小さいと強度が不十分となる。好ましくは100以上である。180を超えると強度が高すぎて成形性が劣化する。好ましくは170以下、より好ましくは160以下である。
測定荷重0.25Nでのビッカース硬さが、測定荷重9.8Nでのビッカース硬さの1.5倍に満たない場合、表層と板内部の硬度差が小さく、成形時に表層にもひずみが導入されてしまい、表層の加工硬化が進み割れの起点となるため、成形性は低下する。
表層の硬度分布を形成させるブラシ研磨で使用するブラシについては、特に限定しないが、ソルト改質層が除去できる研磨能力は必要である。一方、研磨能力が高すぎると、表面に疵が発生するので、過剰な研磨能力を有するブラシでの研磨は避けるべきである。前述のように、表層1/5t(tは板厚)に変形双晶が存在するように研磨すればよい。
ブラシでの研磨量については、特に限定しないが、冷延板の焼鈍で生成する酸化スケールの厚さは一般的に2μm以下であるため、片面3μm程度研磨すれば、ソルト処理による改質層は除去される。
本発明のチタン板の製造方法では、冷間圧延した後の大気中での焼鈍後、質量%でNaOHが75%以上95%以下、520℃以上550℃以下のソルトに15s以上浸漬し、研削ブラシで、表層1μm以上3μm以下を除去する。
このとき重要なのは、表面に疵などの欠陥が生じないよう、かつスケールを完全に除去できるよう、ソルトで完全改質し、ブラシ研磨を適正に行なうことである。ソルト処理後に行なう理由を以下に記載する。
酸洗後に、ブラシ研磨すると、表面が軟質なため、内部深くまでひずみが掛かり加工硬化し、本発明で規定する硬度分布が得られず、成形性が劣化する。また、チタンの新生面が露出するため、活性なチタンの表面が焼きつくおそれがある。そもそも、酸洗を行なうと、チタン母材も溶解するため、歩留が大きく低下する。
一方、焼鈍によって生成したスケールが付着したままブラシ研磨した場合では、スケールを除去するために研磨能力の高いブラシの使用や大きな圧下量が必要となり、チタン表面に大きな負荷が掛かるため研磨疵が残り、プレス成形での割れの起点となるおそれがある。また、スケールは難水溶性で容易に除去できないため、完全除去には時間がかかる。このため、スケールが残らないようソルト浴に浸漬してスケールを水溶性のソルト改質層に完全に改質することが必須となる。
冷延、焼鈍後に行なわれるソルトでのスケール改質において、ソルト浴に含まれるNaOHは質量%で75%以上95%以下である。
NaOHが75%未満の場合、スケールを完全に改質することが困難で、改質に長時間を要する。連続ラインでは長時間浸漬することは難しいため、ブラシ研磨でスケールが残存する可能性がある。このスケールを除去しようとブラシ研磨能力を増大させると、表面疵が生じるおそれがある。このような観点からソルト浴に含まれるNaOHは75%以上とする必要がある。好ましくは80%以上である。
NaOHが95%を超えると、ソルトに含有されるNaNOの濃度が低くなり、ソルトの粘性が低下し、ソルト持出し量が多くなってソルトの減りが速くなり、経済的に芳しくない。ソルト浴に含まれるNaOHは、より好ましくは90%以下である。
ソルト浴の温度は520℃以上550℃である。520℃未満では、スケールの改質が不十分となり、ブラシ研磨でスケールが残存する可能性がある。550℃以上では、ソルトと過剰に反応して表面に軟質なチタン母材が露出する。その結果、表層のみならず板内部まで過剰にひずみが導入され、表層と板内部の硬度差が小さくなり、成形時に表層にもひずみが導入され、表層の加工硬化が進み割れの起点となり、成形性が低下する。また、露出した母材がロールと接触することによって電位差が生じ、スパークが発生して欠陥となる。さらに、チタンとソルトとの反応により水素が発生し、水素化物の生成により脆化し、成形性が低下する。
ソルト処理時間は15s以上60s以下である。15s未満では、スケールの改質が不十分で、ブラシ研磨でスケールが残存する可能性がある。60s超では、ソルトとスケールが過剰に反応し、表面に軟質なチタン母材が露出し、上記の理由で成形性が低下する。
さらに、より強度と成形性のバランスを高める方法として、焼鈍温度、時間を調整することができる。
焼鈍温度は750℃以上820℃以下とするのがよい。焼鈍温度が750℃未満では、結晶粒が成長しにくく、成形性が低下することがある。820℃を超える温度にすると、β相が生成し結晶粒成長を抑制するため、双晶変形が活発となる結晶粒径である数十μm以上とするのに長時間を要する。
焼鈍時間は60s以上600s以下とするのがよい。焼鈍時間が60s未満では結晶粒が十分に成長しないことがある。焼鈍時間が600sを超えて焼鈍を実施すると、酸化スケールが厚くなりすぎ、ソルトで改質してもスケール残りが生じることがある。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。以下に示す実施例は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
(試験片作製)
アーク溶解により鉄量、酸素量を調整したチタン鋳塊を作製し、該鋳塊を1150℃に加熱後、鍛造してスラブを作製した。
作製したスラブを850℃で厚さ4mmまで熱延した後、ショットブラスト、硝ふっ酸酸洗にて表面のスケールを除去した。さらに冷延して厚さ0.5mmのチタン薄板を作製した。
冷延後のチタン薄板に対して、700〜850℃の温度で、30〜1000sの焼鈍を大気中で行った。
焼鈍後のチタン薄板に対して、NaOHが60〜95%のソルトを480〜560℃の温度とし、10s〜90sソルト処理(浸漬)し、スケールの改質を行なった。
ソルト処理後のチタン薄板に対して、ナイロン製の研削ブラシを用い、60℃の温水を噴きつけながら研磨することで、ソルト改質層の除去を行なった。このとき、疵が入らないよう表面を研磨した。
また、ブラシ研磨で得られるチタン薄板の特性と比較するため、40℃にした10質量%の硝酸と3質量%ふっ酸の混合液にソルト改質した後のチタン薄板を浸漬し、脱スケールを行なった。
また、表面のスケールを除去した試料の鉄含有量をJIS H 1614に準じて測定し、酸素含有量をJIS H 1620に準じて測定した。表1に、鉄及び酸素含有量、ソルト処理条件、脱スケール方法を記載する。
(引張試験)
平行部6.25×32mm、標点間25mm、チャック部15mm幅、全長100mmの引張試験片を作製し、0.2%耐力測定までは標点間0.5%/minで、耐力測定後は20%/minの引張速度で引張試験を行った。ここでは、圧延幅方向(T方向)の引張強度を評価した。
(球頭張出し試験)
深絞り試験機にてφ40の球頭ポンチを用いて、若干幅拡がりする平面歪変形(不等二軸変形)となるように、図2の形状に調整し張出し成形を行った。張出し成形は、日本工作油(株)製高粘性油(#660)を塗布し、ポンチ上昇速度を8mm/minで行った。このときの試験片の張出し高さを比較評価した。この張出し高さの合格基準は、過酷な成形加工が可能である18mmとした。
(表面における硬度測定)
20mm角の試験片を作製し、マイクロビッカース硬度計を用いて、測定荷重0.25Nおよび9.8Nでの表面における硬度測定を行なった。
(表面粗さ)
JIS B 0601に準じて、算術平均粗さRa(μm)を測定した。表2に、各製造方法で製造したチタン板の特性を示す。表1と表2の実施例Noはお互いに対応している。
大気焼鈍、ソルト処理、酸洗した後のチタン板の表層付近のミクロ組織を図3に、待機焼鈍、ソルト処理、ブラシ研磨した後のチタン板の表層付近のミクロ組織を図4に示す。図4では、ブラシ研磨により変形双晶が導入されたことがわかる。
発明例のNo.2、4、6〜8、10、12、13、17〜20、22、23は、請求項1、2、3で定めた鉄含有量と酸素含有量、ソルト処理温度、ソルト処理時間、NaOH濃度、ブラシ研磨量、表面硬度を満足しており、強度と成形性のバランスに優れたチタン板である。
比較例のNo.1は、発明例No.2、4と鉄含有量、酸素含有量が同一であるが、ソルト温度が低く、完全に改質されず、ブラシ研磨してもスケールが残っているため、張出し高さが合格基準の18mmに満たない。
比較例のNo.3は、発明例No.2、4と鉄含有量、酸素含有量が同一であるが、ブラシ研磨していないため、表面硬度が低く、ブラシ研磨ほどの強度が得られない。
比較例のNo.5は、発明例No.6〜8と鉄含有量、酸素含有量が同一であるが、ソルト処理時間が短く、完全に改質されず、ブラシ研磨してもスケールが残っているため、張出し高さが合格基準の18mmに満たない。
比較例のNo.9は、発明例No.6〜8と鉄含有量、酸素含有量が同一であるが、ブラシ研磨していないため、表面硬度が低く、ブラシ研磨ほどの強度が得られない。
比較例のNo.11は、発明例No.10、12、13と鉄含有量、酸素含有量が同一であるが、ブラシ研磨していないため、表面硬度が低く、ブラシ研磨ほどの強度が得られない。
比較例のNo.14は、発明例No.17〜20と鉄含有量、酸素含有量が同一であるが、ソルト温度が低く、完全に改質されず、ブラシ研磨してもスケールが残っているため、張出し高さが合格基準の18mmに満たない。
比較例のNo.15は、発明例No.17〜20と鉄含有量、酸素含有量が同一であるが、ソルト温度が低く、完全に改質されず、ブラシ研磨してもスケールが残っているため、張出し高さが合格基準の18mmに満たない。
比較例のNo.16は、発明例No.17〜20と鉄含有量、酸素含有量が同一であるが、ソルト処理時間が短く、完全に改質されず、ブラシ研磨してもスケールが残っているため、張出し高さが合格基準の18mmに満たない。
比較例のNo.21は、発明例No.22及び23と鉄含有量、酸素含有量が同一であるが、ソルト処理時間が短く、完全に改質されず、ブラシ研磨してもスケールが残っているため、張出し高さが合格基準の18mmに満たない。
比較例のNo.24は、ソルト処理時間が短く、完全に改質されず、ブラシ研磨してもスケールが残っているため、張出し高さが合格基準の18mmに満たない。
比較例のNo.26は、ソルト処理時間が長く、表面に金属チタンが露出したため、ブラシ研磨すると板内部までひずみが導入され、表層と板内部の硬度差が小さくなり、張出し高さが合格基準の18mmに満たない。
比較例のNo.27は、表層がチタン地金の状態でブラシ研磨しているため、板内部までひずみが導入され、表層と板内部の硬度差が小さくなり、張出し高さが合格基準の18mmに満たない。
比較例のNo.30は、酸素含有量が多いため、張出し高さが合格基準の18mmに満たない。
比較例のNo.31は、鉄含有量が多いため、張出し高さが合格基準の18mmに満たない。
比較例のNo.32は、ソルト処理せずブラシ研削しているため、スケールが残留し、張出し高さが合格基準の18mmに満たない。
発明例と比較例の引張強度と張出し高さのバランスを図5に示す。発明例は比較例より該バランスに優れることが分かる。

Claims (2)

  1. 質量%で、鉄の含有量が0.01〜0.1%、酸素の含有量が0.02〜0.15%、炭素の含有量が0.015%以下、窒素の含有量が0.015%以下、水素の含有量が0.015%以下であり、残部がチタン及び不可避不純物であり、
    L方向の算術平均粗さ(Ra)が0.2〜0.8μmであり、
    T方向の算術平均粗さがL方向の1.1倍以上2倍以下であり、
    板厚をtとするとき、表層0.05t〜0.2tの範囲に変形双晶が存在し、
    表面における測定荷重0.25Nでのビッカース硬さが170以上、
    表面における測定荷重9.8Nでのビッカース硬さが90〜180であり、
    上記測定荷重0.25Nでのビッカース硬さが、上記測定荷重9.8Nでのビッカース硬さよりも1.5倍以上高い
    ことを特徴とするチタン板。
  2. 請求項1に記載のチタン板の製造方法であって、
    チタン材を冷間圧延し、
    冷間圧延されたチタン板を大気中で焼鈍し、
    焼鈍後のチタン板を質量%でNaOHが75〜95%、520〜550℃のソルト浴に15〜60s浸漬し、
    研削ブラシで上記浸漬後のチタン板の表層1〜3μmを除去する
    ことを特徴とするチタン板の製造方法。
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