JP2006257528A - 深絞り加工性に優れた純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、深絞り加工を施しても割れを生じ難く、また安価で供給し易い、深絞り加工性に優れた純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、純モリブデンまたはモリブデン合金からなる圧延素材を、一方向に温間圧延または冷間圧延することにより薄板とした後に、該薄板に対する内部応力異方性緩和処理を施す、深絞り加工性に優れた純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板の製造方法である。
【選択図】 図1
【解決手段】 本発明は、純モリブデンまたはモリブデン合金からなる圧延素材を、一方向に温間圧延または冷間圧延することにより薄板とした後に、該薄板に対する内部応力異方性緩和処理を施す、深絞り加工性に優れた純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板の製造方法である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、例えば冷陰極管に用いる電極用の材料として深絞り性に優れた純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板の製造方法に関するものである。
従来、例えば液晶表示装置のバックライトに使用される冷陰極管の電極には、純ニッケルまたはニッケル合金からなるカップ形状の部品が用いられていた。純ニッケルまたはニッケル合金は、封入ガスである水銀ガスに対する高耐食性を有しており長寿命である。また、高い仕事関数を有しており、発光効率が大きく高い輝度が得られる。
また、特開2003−151496号公報(特許文献1)は、上述の純ニッケルまたはニッケル合金よりもさらに長寿命および高輝度とすることができる、純モリブデンまたはモリブデン合金からなるカップ形状の部品を開示する。
上述のカップ形状の部品は、通常、薄板を深絞り加工することで製造される。しかしながら、純モリブデンやモリブデン合金は深絞り性が極めて悪く、深絞り加工は容易ではない。このため、純モリブデンやモリブデン合金の深絞り性の改善に関し、種々の提案がなされている。
また、特開2003−151496号公報(特許文献1)は、上述の純ニッケルまたはニッケル合金よりもさらに長寿命および高輝度とすることができる、純モリブデンまたはモリブデン合金からなるカップ形状の部品を開示する。
上述のカップ形状の部品は、通常、薄板を深絞り加工することで製造される。しかしながら、純モリブデンやモリブデン合金は深絞り性が極めて悪く、深絞り加工は容易ではない。このため、純モリブデンやモリブデン合金の深絞り性の改善に関し、種々の提案がなされている。
例えば、特開平6−158252号公報(特許文献2)は、純モリブデン板の圧延加工において、熱間圧延後に施す中間熱処理の温度および冷間圧延率を規定し、結晶方位分布を細かく制御することで深絞り性が改善できることを開示する。
また、吉田桂一郎著、クロス圧延機の開発、「鉄と鋼」1985年8月30日P.1637−P.1640(非特許文献1)は、長手方向に供給される板材を、その板材とほぼ平行ではあるが進行方向に挟まる軸を有する一対の揺動ロールの往復回転運動により、板材を幅方向に圧延しながら長手方向にも圧延する、いわゆるクロス圧延技術を開示する。そして、このクロス圧延技術を適用したクロス圧延機によって純モリブデン薄板を製造することにより、優れた深絞り性が得られることを開示する。
また、特開平3−291101号公報(特許文献3)は、上述のクロス圧延に供する純モリブデンを高純度化するで、更に深絞り性を高めることができることを開示する。
上述のように先行文献においては、純モリブデン薄板の深絞り性の向上に関し、圧延加工における結晶方位の制御や、クロス圧延による薄板内の強度異方性低減に係る提案が多くなされている。
特開2003−151496号公報
特開平6−158252号公報
特開平3−291101号公報
吉田桂一郎著、クロス圧延機の開発、「鉄と鋼」1985年8月30日、P.1637−P.1640
また、吉田桂一郎著、クロス圧延機の開発、「鉄と鋼」1985年8月30日P.1637−P.1640(非特許文献1)は、長手方向に供給される板材を、その板材とほぼ平行ではあるが進行方向に挟まる軸を有する一対の揺動ロールの往復回転運動により、板材を幅方向に圧延しながら長手方向にも圧延する、いわゆるクロス圧延技術を開示する。そして、このクロス圧延技術を適用したクロス圧延機によって純モリブデン薄板を製造することにより、優れた深絞り性が得られることを開示する。
また、特開平3−291101号公報(特許文献3)は、上述のクロス圧延に供する純モリブデンを高純度化するで、更に深絞り性を高めることができることを開示する。
上述のように先行文献においては、純モリブデン薄板の深絞り性の向上に関し、圧延加工における結晶方位の制御や、クロス圧延による薄板内の強度異方性低減に係る提案が多くなされている。
上述した特許文献2に開示される、中間熱処理の温度および冷間圧延率を規定し、結晶方位分布を細かく制御しつつ製造された純モリブデンまたはモリブデン合金薄板は、深絞りの開口部の口径に対する深絞り深さの比率が0.5程度のハロゲンランプ等に用いる反射板の加工には有利である。しかしながら、例えば冷陰極管に用いる電極のように、開口部の口径に対する深絞りの深さの比率が1.0を超えるような深絞り加工においては、高頻度で割れが発生し、純モリブデンまたはモリブデン合金からなる冷陰極間の電極を実用化する上で大きな問題となっていた。
また、非特許文献1や特許文献3に開示されるクロス圧延によって製造された純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板は、薄板内の強度異方性が低減されており、上述した開口部の面積に対する深絞り深さの比率が1.0を超えるような深絞り加工においても、割れを生じることなく成形することができる。しかしながら、クロス圧延は、板材を一方向に圧延していく圧延(以降、一方向圧延と称す)に比べ、短尺の板材を長手方向と幅方向を切替えながら往復圧延するものであり生産性が極めて悪く、供給不安定や製造コスト高騰といった不都合があった。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、深絞り加工を施しても割れを生じ難く、また安価で供給し易い、深絞り加工性に優れた純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板の製造方法を提供することである。
本発明者は、深絞り加工性に優れた純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板を、クロス圧延よりも製造コストが安価で生産性に優れた一方向圧延によって製造すること、および薄板の深絞り加工における割れ発生の問題を鋭意検討した。そして、一方向圧延によって製造した薄板の内部応力異方性を緩和させることで深絞り加工において割れ難くなることを見出し本発明に到達した。
すなわち本発明は、純モリブデンまたはモリブデン合金からなる圧延素材を、一方向に温間圧延または冷間圧延することにより薄板とした後に、該薄板に対する内部応力異方性緩和処理を施す、深絞り加工性に優れた純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板の製造方法である。また、より好ましくは一方向圧延された薄板に対し内部応力異方性緩和処理を施した後に再結晶温度未満で熱処理を施す製造方法である。
そして、薄板に対する内部応力異方性緩和処理としてはレベラー処理あるいはショットブラスト処理が好ましい。
そして、薄板に対する内部応力異方性緩和処理としてはレベラー処理あるいはショットブラスト処理が好ましい。
本発明によれば、純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板の深絞り加工性を飛躍的に改善することができ、例えば冷陰極管に用いる電極のように開口部の口径に対する深さの比率が1.0を超えるような部品においても、生産性向上や廉価化に貢献でき、工業上極めて有用な技術となる。
本発明における重要な特徴は、一方向に温間圧延または冷間圧延された純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板に対し、内部応力異方性緩和処理を施す製造方法を採用したことにある。本発明における内部応力異方性緩和処理とは、薄板の長手方向における残留応力が圧縮応力または引張応力へ偏重する状態、つまり内部応力が異方性を有する状態を解消させるか、または異方性の強さを減少させることができる処理のことをいう。
薄板の内部応力の異方性の強さは、圧延の仕方、つまり、温間であるか冷間であるか、あるいは両者の組合せやパススケジュール、圧延率などによって差異を生じる。内部応力に異方性を有する一方向圧延された薄板において、圧延方向となる長手方向において幅方向よりも延性が劣化するのは、長手方向に残留する内部応力が圧縮応力または引張応力へ強く偏重しているためであると考えられる。このように内部応力が強く偏重する薄板を塑性加工すると、塑性加工する方向によって強度差が発現し、例えば深絞り加工時には薄板の幅方向に沿って割れを生じることとなり易い。
薄板の内部応力の異方性の強さは、圧延の仕方、つまり、温間であるか冷間であるか、あるいは両者の組合せやパススケジュール、圧延率などによって差異を生じる。内部応力に異方性を有する一方向圧延された薄板において、圧延方向となる長手方向において幅方向よりも延性が劣化するのは、長手方向に残留する内部応力が圧縮応力または引張応力へ強く偏重しているためであると考えられる。このように内部応力が強く偏重する薄板を塑性加工すると、塑性加工する方向によって強度差が発現し、例えば深絞り加工時には薄板の幅方向に沿って割れを生じることとなり易い。
本発明においては、一方向圧延された薄板に対し、例えば曲げ展ばしや微小衝突により適度な圧縮応力および引張応力を繰返し付与するなどの内部応力異方性緩和処理を施すことにより、薄板に残留する内部応力の方向性を分散させ、薄板の内部応力の異方性を緩和または解消させることができる。これにより薄板は、長手方向と幅方向の延性の格差が低減して塑性加工する方向によって生じる強度差が縮小され、深絞り加工性を向上させることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における圧延素材は、純モリブデンまたはモリブデン合金からなる金属材料を温間圧延または冷間圧延に供することが可能な寸法に形成した成形体である。具体的には、純モリブデンまたはモリブデン合金からなる原料を溶解鋳造してなした鋼塊や、粉末焼結してなした焼結体などを適当な厚板状や棒状の形状とした成形体を圧延素材とすることができる。
本発明においては、延性は悪いものの、純ニッケルまたはニッケル合金よりも水銀ガスに対する耐食性に優れ、また高い仕事関数を有する純モリブデンまたはモリブデン合金にも適用できる。純モリブデンとしては純度が3Nレベル以上のものが深絞り加工性を高めることができ好適である。また、純モリブデンよりも上述の特性は劣るものの50質量%を超えるモリブデン(Mo)を含有する合金であっても適用できる。例えば、チタニウム(Ti)を約0.5%およびジルコニウム(Zr)を約0.05%添加したTZMと呼ばれるモリブデン合金なども好ましい。
本発明においては、上述の圧延素材を温間圧延または冷間圧延によって一方向圧延することで薄板に成形することができる。純モリブデンまたはモリブデン合金からなる圧延素材は粗大化した結晶粒を有することが多く、高温度下で熱間圧延などの塑性加工を施すと再結晶してしまうことがある。この再結晶粒が残存することにより、圧延において、特に冷間圧延においてはわずかな圧下であっても表面が割れたり2枚割れと称する剥離割れを生じてしまい圧延するには不都合となる。このため比較的低温度下で塑性加工する温間圧延または冷間圧延は好適であり、圧延素材における粗大化した結晶粒を再結晶させることなく繊維状組織に変化させることができる。繊維状組織は圧延性に優れ、圧延方向に沿う方向に繊維のように連なる構造形態を有する組織であり、深絞り加工性が良好とされる組織である。
本発明における一方向圧延は温間圧延だけでも繊維状組織を有する薄板とすることができる。また、温間圧延よりも加工性は劣るものの冷間圧延だけでも繊維状組織を有する薄板とすることができ、温間圧延と冷間圧延を適宜組み合せることもできる。また、クロス圧延とは異なり、長尺な圧延素材を長手方向に連続的に圧延できるため作業効率や材料歩留まりを格段に向上させることができる。より好ましくは温間圧延により略薄板となる中間圧延材とし、仕上げ圧延として中間圧延材に対し冷間圧延することで薄板となすことである。また、本発明における一方向圧延とは、被圧延材の伸展方向となる長手方向に圧延することを総称し、圧延途中で行われ圧延の向きが正反対となるリバース圧延も含む。
本発明においては、上述の一方向圧延された薄板に対し内部応力異方性緩和処理を施すことで、上述したように薄板の内部応力の異方性を解消または緩和させることができるため、深絞り加工性に優れた純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板を得ることができる。
また、一方向圧延や内部応力異方性緩和処理において、薄板は加工硬化するため硬度が上昇していることが多い。本発明においては、薄板の硬度を低下させて深絞り加工性をさらに向上させるために、上述の内部応力異方性緩和処理された薄板に対し再結晶温度未満で熱処理を施し軟化させることも好適である。
また、一方向圧延や内部応力異方性緩和処理において、薄板は加工硬化するため硬度が上昇していることが多い。本発明においては、薄板の硬度を低下させて深絞り加工性をさらに向上させるために、上述の内部応力異方性緩和処理された薄板に対し再結晶温度未満で熱処理を施し軟化させることも好適である。
次いで、本発明の製造方法を用いて深絞り加工性に優れた純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板を製造する一例を図に基づいて説明する。図1は、本発明における製造工程の一例であり、圧延素材を一方向圧延した後に内部応力異方性緩和処理を施し、さらに再結晶温度未満で熱処理を施し軟化させることで深絞り加工性に優れた純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板を製造する製造工程の流れを示している。
一方向圧延工程では、圧延素材を軟化させる熱処理である中間焼鈍を適宜施しつつ温間圧延して薄板状の中間圧延材とし、さらに冷間圧延して仕上げ寸法を有する薄板を得る。薄板を仕上げ寸法とする圧延など全ての圧延を温間圧延とすることもできるが、一般的に冷間圧延よりも製造原価が高い点で不利である。また、冷間圧延は温間圧延よりも許容し得る圧延率が小さく、冷間圧延だけでは所要の圧延パス数が増加し生産性を阻害する点で不利である。このように温間圧延と冷間圧延を適宜組み合せて施すことは生産性や製造コストを好適にできるため有利である。
上述の中間焼鈍は、温間圧延においては中間圧延材が圧延可能に軟化していれば施す必要はない。しかし、冷間圧延では内部歪みが増長されやすく、歪みを開放するために中間焼鈍を施すことが好ましい。中間焼鈍においては、温度は歪みを開放できる700℃以上で再結晶を生じない1100℃以下が好ましく、その際の時間は3分〜60分が好ましく、圧延途中に何度行っても構わない。
上述の中間焼鈍は、温間圧延においては中間圧延材が圧延可能に軟化していれば施す必要はない。しかし、冷間圧延では内部歪みが増長されやすく、歪みを開放するために中間焼鈍を施すことが好ましい。中間焼鈍においては、温度は歪みを開放できる700℃以上で再結晶を生じない1100℃以下が好ましく、その際の時間は3分〜60分が好ましく、圧延途中に何度行っても構わない。
また、一方向圧延における総圧延率については、10%未満では薄板を繊維状組織とする効果が小さく、90%を超えると繊維状組織は得られるものの温間圧延または冷間圧延の過程で純モリブデンまたはモリブデン合金の塑性加工限界に達してしまい割れを生じることがある。さらに、1回のパスで圧延率90%とすると破断などが懸念されるため最大でも30%以下とし、より好ましくは10%以下とし、その後のパスにおいて総圧延率を10〜90%とすることが好ましい。
その後、一方向圧延された薄板に対し例えばレベラー処理による内部応力異方性緩和処理を施し、深絞り加工性に優れた薄板を得る。レベラー処理とは、薄板を上下に配したローラ間に通し、上下のローラによって薄板に対し曲げ展ばしを繰返し施す処理であり、これにより薄板に対し圧縮応力および引張応力を繰返し付与することができる。
レベラー処理に用いるローラは上下に各1本でも構わないが、ローラ数が少ない場合には一度に大きな圧縮応力および引張応力を付与することとなるため曲げ展ばしの程度が過大になって薄板表面にクラックや割れを生じることがある。好ましくは上下ともに複数のローラを配し、個々のローラによって薄板に付与される圧縮応力および引張応力の程度が小さくなるように分配する構成とする。そして、ローラが多いほど個々のローラによる曲げ展ばしの程度などの調整が難しくなるため、実作業上は上側に5〜10本、下側に6〜11本程度のローラを配することが好ましい。また、レベラー処理においては、薄板に対するローラの食い込み量となる圧下量を0.1〜5.0mm程度とすることが好ましい。そして、上下のロール間を通しつつ薄板に加える張力は圧下量に応じて適宜調整すればよい。さらに、潤滑油を用いることも好ましく、曲げ展ばしの過程において生じる金属粉などによる薄板表面への疵付きを防止することができる。
レベラー処理に用いるローラは上下に各1本でも構わないが、ローラ数が少ない場合には一度に大きな圧縮応力および引張応力を付与することとなるため曲げ展ばしの程度が過大になって薄板表面にクラックや割れを生じることがある。好ましくは上下ともに複数のローラを配し、個々のローラによって薄板に付与される圧縮応力および引張応力の程度が小さくなるように分配する構成とする。そして、ローラが多いほど個々のローラによる曲げ展ばしの程度などの調整が難しくなるため、実作業上は上側に5〜10本、下側に6〜11本程度のローラを配することが好ましい。また、レベラー処理においては、薄板に対するローラの食い込み量となる圧下量を0.1〜5.0mm程度とすることが好ましい。そして、上下のロール間を通しつつ薄板に加える張力は圧下量に応じて適宜調整すればよい。さらに、潤滑油を用いることも好ましく、曲げ展ばしの過程において生じる金属粉などによる薄板表面への疵付きを防止することができる。
また、本発明においては、例えばショットブラスト処理による内部応力異方性緩和処理を採用することもできる。ショットブラスト処理とは、錆や汚れなどの付着物の除去処理として、あるいは塗装やメッキなどを剥がれ難くさせるための塗装前処理として、物品表面に対し多数の球状微小粒を繰返し衝突させる処理である。球状微小粒を繰返し衝突させると、薄板においては、球状微小粒の衝突点近傍で微視的に圧縮応力および引張応力が発現し、このため薄板に対し圧縮応力および引張応力を繰返し付与することができる。
ショットブラスト処理においては、球状微小粒の衝突エネルギーが小さすぎると付与する圧縮応力および引張応力が不足し、逆に大きすぎると薄板表面に塑性変形を生じ凹凸形状になったりクラックや割れを生じることがある。このため球状微小粒の材質や大きさ、球状微小粒の衝突速度や衝突を繰返す時間などを薄板の厚さや硬度に応じて適宜選択することとなる。好ましくは、例えば、球状微小粒として直径0.03〜1.0mm程度の鉄球やステンレス鋼球などの微小金属粒を用い、また例えば、球状微小粒の衝突速度を50〜200m/秒程度、衝突頻度を10〜500個/(秒・mm2)程度、衝突の繰返し時間を1〜30秒間程度とする。また、セラミックや樹脂からなる球状微小粒であっても、球状微小粒の比重を考慮し上述の条件などを設定することで適用できる。
ショットブラスト処理においては、球状微小粒の衝突エネルギーが小さすぎると付与する圧縮応力および引張応力が不足し、逆に大きすぎると薄板表面に塑性変形を生じ凹凸形状になったりクラックや割れを生じることがある。このため球状微小粒の材質や大きさ、球状微小粒の衝突速度や衝突を繰返す時間などを薄板の厚さや硬度に応じて適宜選択することとなる。好ましくは、例えば、球状微小粒として直径0.03〜1.0mm程度の鉄球やステンレス鋼球などの微小金属粒を用い、また例えば、球状微小粒の衝突速度を50〜200m/秒程度、衝突頻度を10〜500個/(秒・mm2)程度、衝突の繰返し時間を1〜30秒間程度とする。また、セラミックや樹脂からなる球状微小粒であっても、球状微小粒の比重を考慮し上述の条件などを設定することで適用できる。
本発明においては、上述の内部応力異方性緩和処理を施した後に、総圧延率1〜5%程度の一方向スキンパス圧延を施すことも好ましく、万が一、薄板表面の形状や平滑度が劣化していたとしても解消することができる。
また、上述の内部応力異方性緩和処理や一方向スキンパス圧延の後に再結晶温度未満の熱処理を施すことも好ましく、内部応力異方性緩和処理における加工硬化によって上昇することがある薄板の硬さを低下させ、深絞り加工性を向上させることができる。この熱処理においては、温度は軟化させ得る700℃以上で再結晶を生じない1100℃以下が好ましく、より好ましくは800〜1000℃である。そして、酸化による脆化を防ぐため非酸化雰囲気とすることが好ましく、具体的にはアルゴンガスなどの不活性ガスや水素ガス、あるいはこれらの混合ガス雰囲気中とすることが好ましい。
また、上述の内部応力異方性緩和処理や一方向スキンパス圧延の後に再結晶温度未満の熱処理を施すことも好ましく、内部応力異方性緩和処理における加工硬化によって上昇することがある薄板の硬さを低下させ、深絞り加工性を向上させることができる。この熱処理においては、温度は軟化させ得る700℃以上で再結晶を生じない1100℃以下が好ましく、より好ましくは800〜1000℃である。そして、酸化による脆化を防ぐため非酸化雰囲気とすることが好ましく、具体的にはアルゴンガスなどの不活性ガスや水素ガス、あるいはこれらの混合ガス雰囲気中とすることが好ましい。
上述した製造方法によって薄板を製造し、本発明における内部応力異方性緩和処理の効果を以下のように確認した。
薄板において内部応力の異方性が緩和されると、内部応力異方性緩和処理前後の薄板の長手方向(L方向)と幅方向(T方向)の破断伸びの格差が縮小し、破断伸びの方向比(L/T)は1に近づくと考えられる。そこで、薄板の長手方向(L方向)および幅方向(T方向)の破断伸び(%)を測定し、破断伸びの方向比(L/T)を算出することで評価した。また、従来の深絞り加工性に優れるクロス圧延ままの薄板とも比較した。その結果を表1に示す。なお、薄板の破断伸びは金属材料引張試験方法(JIS Z2241)に基づいて測定した。
薄板において内部応力の異方性が緩和されると、内部応力異方性緩和処理前後の薄板の長手方向(L方向)と幅方向(T方向)の破断伸びの格差が縮小し、破断伸びの方向比(L/T)は1に近づくと考えられる。そこで、薄板の長手方向(L方向)および幅方向(T方向)の破断伸び(%)を測定し、破断伸びの方向比(L/T)を算出することで評価した。また、従来の深絞り加工性に優れるクロス圧延ままの薄板とも比較した。その結果を表1に示す。なお、薄板の破断伸びは金属材料引張試験方法(JIS Z2241)に基づいて測定した。
表1より、内部応力異方性緩和処理を施したいずれの薄板も、一方向圧延ままの薄板よりも薄板の幅方向(T方向)の破断伸びが増大して長手方向(L方向)と幅方向(T方向)の破断伸びの格差が縮小し、方向比(L/T)は1に近づいていた。つまり、本発明における内部応力異方性緩和処理によって一方向圧延された薄板に内在していた内部応力の異方性が緩和されていることが確認できた。さらに、内部応力異方性緩和処理後に再結晶温度未満の熱処理を施したいずれの薄板についても、同様に薄板の内部応力の異方性は緩和されていた。そして、本発明の製造方法による薄板が、深絞り加工性に優れるクロス圧延による薄板に相当する破断伸びの方向比(L/T)を有することが確認できた。
また、本発明の製造方法によって純モリブデン(3N)からなる薄板(厚さ0.15mm)を製造し、さらに冷陰極管用の電極を模した形状(口径2.5mm、長さ35mm)の成形体を深絞り加工によって製作した。深絞り加工された成形体は、開口部の口径に対する深絞り深さの比率が1.0を大きく上回る14であったものの、割れ、剥離、クラックなどの不具合は認められなかった。このことから本発明の製造方法によって製造した薄板は、実用し得るに十分な深絞り加工性を有することを確認できた。
また、本発明において、圧延素材は、市販される相当品を購入しても良いが、熱間静水圧加圧(HIP)により純モリブデンまたはモリブデン合金からなる原料金属粉から製造することもできる。例えば、HIPによって原料金属粉を略厚板状の焼結体とした後、適宜加熱しつつ熱間圧延することで適当な厚板状や棒状の圧延素材とするのである。圧延素材として好ましくは一方向圧延し易い板状に成形し、板厚を1.0〜5.0mm程度とすることである。板厚が1.0mm未満の圧延素材を得ようとすると、熱間圧延の過程において圧延途中の成形体に温度の不均一(温度ムラ)を生じ易く、これにより形状が劣化することがある。また、板厚が5.0mmを超える圧延素材を得ようとすると、熱間圧延の過程において作業効率が極めて悪くなるとともに、次いで温間圧延または冷間圧延を行う場合にハンドリングなどが難しくなってしまう点が不利である。
Claims (4)
- 純モリブデンまたはモリブデン合金からなる圧延素材を、一方向に温間圧延または冷間圧延することにより薄板とした後に、該薄板に対する内部応力異方性緩和処理を施すことを特徴とする深絞り加工性に優れた純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板の製造方法。
- 薄板に対する内部応力異方性緩和処理後に、再結晶温度未満で熱処理することを特徴とする請求項1に記載の深絞り加工性に優れた純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板の製造方法。
- 薄板に対する内部応力異方性緩和処理がレベラー処理であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の深絞り加工性に優れた純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板の製造方法。
- 薄板に対する内部応力異方性緩和処理がショットブラスト処理であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の深絞り加工性に優れた純モリブデンまたはモリブデン合金からなる薄板の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008264877A (ja) * | 2007-04-20 | 2008-11-06 | Tospom Corp | 金属板材においてカップ体を加工形成する方法 |
CN103658171A (zh) * | 2012-09-24 | 2014-03-26 | 上海六晶金属科技有限公司 | 一种纯钼薄板的温轧开坯方法 |
JP2016536469A (ja) * | 2013-09-13 | 2016-11-24 | アメテック,インコーポレイティド | モリブデンストリップ又はモリブデン含有ストリップの作製方法 |
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2005
- 2005-03-18 JP JP2005080113A patent/JP2006257528A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008264877A (ja) * | 2007-04-20 | 2008-11-06 | Tospom Corp | 金属板材においてカップ体を加工形成する方法 |
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JP2016536469A (ja) * | 2013-09-13 | 2016-11-24 | アメテック,インコーポレイティド | モリブデンストリップ又はモリブデン含有ストリップの作製方法 |
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