JP6853536B2 - 水素バリア機能を有するステンレス鋼及びその製造方法 - Google Patents

水素バリア機能を有するステンレス鋼及びその製造方法 Download PDF

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本願発明は、水素バリア機能を有するステンレス鋼及びその製造方法に関する。特に、ウエットプロセスにより形成した金属酸化物皮膜からなる水素バリア機能膜で被覆した水素バリア機能を有するステンレス鋼及びその製造方法に関する。
環境負荷の少ない次世代エネルギー源として水素を活用する水素社会の実現への取り組みがなされている。水素社会を実現するためには、水素の安定供給に向けた貯蔵・輸送技術の開発が必要である。
水素を貯蔵する高圧貯蔵容器、水素を輸送する高圧パイプラインには金属材料が用いられている。特に、高圧水素環境下では、金属材料中へ水素が侵入することにより引き起こされる水素脆化の問題があり、水素脆化の起こりにくいステンレス鋼(例、SUS316L)、アルミ合金(例、A6061−T6)が用いられている(非特許文献1)。しかしながら、経年耐久性を有する金属材料はなく、金属材料表面に水素バリア機能を有する皮膜を形成することが行われている。
金属材料表面に皮膜を形成する方法としては、水溶液を用いないドライプロセス(乾式処理法)と水溶液を用いるウエットプロセス(湿式処理法)がある。ドライプロセスとしては、真空蒸着(VE)、気相中で物質の表面に物理的手法により目的とする物質の薄膜を堆積する物理気相蒸着(PVD)、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基板表面あるいは気相での化学反応により膜を堆積する化学気相蒸着(CVD)がある。
一方、ウエットプロセスとしては、電解メッキ、無電解メッキ、陽極酸化、化成処理、電着塗装がある。ウエットプロセスは、ドライプロセスに比べて、大面積の処理が可能であり、量産性が高く、処理コストが安価であること、また大気開放系であり、装置構造が単純であり、設備コストが安価であること、という2つの大きな特徴がある。
金属材料表面に形成される緻密な酸化物、窒化物は水素バリア性に優れていることが知られている。このため、金属材料(ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼)の表面にクロム酸窒化物皮膜とセラミック皮膜を積層した水素バリア機能を有する皮膜をVE、PVDを用いて形成すること(特許文献1)、ステンレス鋼を大気圧の純酸素雰囲気下で200〜400℃に加熱して表面に酸化物皮膜を形成すること(特許文献2)、金属材料表面に酸化アルミニウム(Al23)皮膜をスパッタ法により、窒化シリコン(Si34)皮膜をプラズマCVD法により形成すること(特許文献3)がそれぞれ開示されている。しかしながら、上述したようにドライプロセスによる酸化物皮膜、窒化物皮膜の形成には皮膜形成物質を気化、イオン化する必要があるため処理コストが高く、量産化が難しく生産性が劣るという問題がある。また、密閉系プロセスであるため装置構造が複雑で設備コストが高くコスト優位性に劣るという問題がある。
一方、ウエットプロセスは、皮膜形成物質を含む水溶液に金属材料を浸漬する方法であるため、ドライプロセスに比べ生産性、コスト優位性のいずれも高いというメリットがある。しかしながら、ウエットプロセスにより水素バリア機能を有する皮膜を形成する方法に関しては、水素ガスに接触する鋼材の表面に、ニッケルメッキ、亜鉛メッキ、銅メッキにより厚み0.10μm〜50μmのニッケル、亜鉛、銅の皮膜を電気メッキにより形成することが開示されている(特許文献4)のみで、ウエットプロセスにより水素バリア機能を有する緻密な酸化物皮膜を形成すること関しては開示されていない。
特開2014−214336号公報 特開平04−157149号公報 特開2016− 53209号公報 特開2016− 65313号公報
田村元紀,柴田浩司著:「日本金属学会誌」,69巻,12号(2005),P.1039−1048
本願発明は、大面積の処理が可能であり、量産性が高く、処理コストが安価で生産性が高く、また大気開放系であり、装置構造が単純であり、設備コストが安価でコスト優位性が高いウエットプロセスにより形成した金属酸化物皮膜からなる水素バリア機能膜で被覆した水素バリア機能を有するステンレス鋼及びその製造方法を提案するものである。
本願発明の課題は、以下の態様により解決できる。具体的には、
(態様1) 電解研磨処理されたステンレス鋼表面に、不動態化した皮膜を被覆した差圧400kPa、300℃条件下での水素透過率比(処理品/未処理品)が0.49×10−2以上1.76×10−2以下の水素バリア機能を有するステンレス鋼である。ステンレス鋼表面を電解研磨処理することで、ステンレス鋼表面が平滑化し、平滑化したステンレス鋼表面に形成された皮膜厚みが均一となり、水素バリア機能が低下する原因となる皮膜が薄い部分や皮膜欠損(ピンホール)が生じないからである。
(態様2) 電解研磨処理されたステンレス鋼表面に、金属酸化物皮膜を不動態化した皮膜を被覆した差圧400kPa、300℃条件下での水素透過率比(処理品/未処理品)が0.56×10−2以上3.5×10−2以下の水素バリア機能を有するステンレス鋼である。ステンレス鋼表面を電解研磨処理することでステンレス鋼表面が平滑化し、ウエットプロセスにより形成した金属酸化物を不動態化した皮膜のステンレス鋼表面への皮膜密着性が向上するからである。また、平滑化したステンレス鋼表面に形成された皮膜厚みが均一となり、水素バリア機能が低下する原因となる皮膜が薄い部分や皮膜欠損(ピンホール)が生じないからである。
(態様3) 前記金属酸化物を不動態化した皮膜が、酸化クロム皮膜を不動態化した皮膜であることを特徴とする(態様2)に記載した水素バリア機能を有するステンレス鋼である。水素バリア機能を高めるためには、水素バリア性が高い金属酸化物で形成される皮膜をステンレス鋼表面に密着性と均一性を保持して形成する必要がある。クロム酸と硫酸の混合溶液からなる処理液を用いたインコ法により形成された酸化クロム皮膜は、水素バリア性の高い酸化クロム層をステンレス鋼表面に密着性と均一性を保持して形成でき、ステンレス鋼表面に発色皮膜を形成するインコ法は、簡易かつ低コストで量産できる皮膜形成法だからである。
(態様4) ステンレス鋼表面を電解研磨する研磨処理工程、研磨処理工程で研磨処理したステンレス鋼表面を不動態化剤からなる処理液に浸漬して、不動態化する不動態化処理工程、とからなる不動態膜を被覆した差圧400kPa、300℃条件下での水素透過率比(処理品/未処理品)が0.49×10−2以上1.76×10−2以下の水素バリア機能を有するステンレス鋼の製造方法である。ステンレス鋼表面を電解研磨処理することで、ステンレス鋼表面が平滑化し、平滑化したステンレス鋼表面に形成された皮膜厚みが均一となり、水素バリア機能が低下する原因となる皮膜が薄い部分や皮膜欠損(ピンホール)が生じないからである。そして、不動態化したステンレス表面に形成される不動態化皮膜の水素バリア機能が強化されるからである。また、すべて工程をウエットプロセスとすることで、大面積の処理が可能であり、量産性が高く、処理コストが安価で生産性が高くなる。また、装置構造も単純であり、設備コストも安価であるため、コスト優位性が高く処理コストが安い水素バリア機能を有するステンレス鋼を製造することができるからである。
(態様5) ステンレス鋼表面を電解研磨する研磨処理工程、研磨処理されたステンレス鋼を、クロム酸と硫酸の混合溶液からなる処理液に浸漬して、ステンレス鋼表面に酸化クロム皮膜をする形成する皮膜形成工程、皮膜形成工程で形成された酸化クロム皮膜を、クロム酸とリン酸の混合溶液からなる処理液に浸漬して、酸化クロム皮膜を硬化する硬化処理工程、硬化処理工程で硬化した酸化クロム皮膜を不動態化剤からなる処理液に浸漬して、酸化クロム皮膜を不動態化する不動態化処理工程、とからなる水素バリア機能膜で被覆した差圧400kPa、300℃条件下での水素透過率比(処理品/未処理品)が0.56×10−2以上3.5×10−2以下の水素バリア機能を有するステンレス鋼の製造方法である。ステンレス鋼表面を電解研磨処理、皮膜形成処理、硬化処理、不動態化処理を逐次行うことにより、ステンレス鋼表面に形成される金属酸化物皮膜の水素バリア機能が強化されるからである。また、すべて工程をウエットプロセスとすることで、大面積の処理が可能であり、量産性が高く、処理コストが安価で生産性が高くなる。また、装置構造も単純であり、設備コストも安価であるため、コスト優位性が高く処理コストが安い水素バリア機能を有するステンレス鋼を製造することができるからである。
本願発明によれば、大面積の処理が可能であり、量産性が高く、処理コストが安価で生産性が高く、また大気開放系であり、装置構造が単純であり、設備コストが安価でコスト優位性が高いウエットプロセスにより形成した金属酸化物皮膜からなる水素バリア機能膜で被覆した水素バリア機能を有するステンレス鋼及びその製造方法を提案できる。
本願発明のステンレス鋼表面に水素バリア機能膜をウエットプロセスにより形成する工程の流れを示す工程図である。 本願発明の第1の水素バリア機能膜の形成方法で製作した水素バリア機能膜で被覆したステンレス鋼のSSRT試験(1.1MPa水素雰囲気下,1.1MPa窒素雰囲気下)後の破断面SEM写真である。 本願発明の水素バリア機能膜を被覆していないステンレス鋼のSSRT試験(1.1MPa水素雰囲気下)後の破断面SEM写真である。 本願発明の第2の水素バリア機能膜の形成方法で製作した水素バリア機能膜で被覆したステンレス鋼のSSRT試験(1.1MPa水素雰囲気下,1.1MPa窒素雰囲気下)後の破断面SEM写真である。 本願発明の第2の水素バリア機能膜の形成方法で製作した(重クロム酸添加)水素バリア機能膜で被覆したステンレス鋼のSSRT試験(1.1MPa水素雰囲気下,1.1MPa窒素雰囲気下)後の破断面SEM写真である。
本願発明は、電解研磨処理したステンレス鋼表面に、ウエットプロセスにより形成された水素バリア機能膜を被覆した水素バリア機能を有するステンレス鋼である。ウエットプロセスとは、ステンレス鋼の表面に水素バリア機能膜を形成するプロセスにおいて、ステンレス鋼を水溶液に浸漬した状態(湿式)で行うことをいう。水素バリア機能膜の形成方法としては、具体的には、図1に示すようにステンレス鋼の表面を電解研磨する研磨処理工程、ステンレス鋼の表面に金属酸化物皮膜を形成する皮膜形成工程、金属酸化物皮膜を硬化させる硬化処理、硬化させた金属酸化物皮膜を酸化剤により不動態化させる不動態化処理工程、とからなる第1の水素バリア機能膜の形成方法と、ステンレス鋼の表面に化学発色法による金属酸化物皮膜を形成することなく、ステンレス鋼の表面を電解研磨処理した後、電解研磨処理したステンレス鋼表面を酸化剤により不動態化させる第2の水素バリア機能の膜形成方法がある。
以下、本願発明について、ステンレス鋼、研磨処理工程、皮膜形成工程、硬化処理工程、不動態化処理工程、水素バリア機能評価、耐食性評価(孔食電位)の順に説明する。なお、本願発明は以下の発明を実施するための態様に限定されるものではない。
1.ステンレス鋼
本願発明の電解研磨処理に供するステンレス鋼としては、水素を貯蔵する高圧貯蔵容器、水素を輸送する高圧パイプラインに使用されるステンレス鋼を好適に用いることができる。具体的には、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼がある。耐食性や高強度が要求される高圧貯蔵容器や高圧パイプラインには、マルテンサイト系ステンレス鋼(例えば、410C、420、430、440C、440B)、オーステナイト系ステンレス鋼(例えば、304、304L、321、347、316L)が好適に用いることができる。特に、オーステナイト系ステンレス鋼316Lが採用されている。
2.研磨処理工程
研磨処理工程は、ステンレス材料表面の酸化皮膜や不純物(非金属介在物)、加工変質層等の表面欠陥を除去または低減して、ステンレス鋼表面に均一で緻密な水素バリア機能を有する金属酸化物皮膜を形成する前処理としての役割を担う。
(2−1)電解研磨
研磨処理工程には、電解研磨を採用することができる。電解研磨は、外部電源により、電解研磨溶液中で、金属をアノード(陽極)として直流電流を流して、微細な凹凸のある金属表面の凸部分の溶解により金属表面を平滑化し光沢化する研磨方法である。バフ研磨などの物理的研磨と異なり加工変質や加工硬化層を作らず、研磨面に不純物や汚染が少ないため研磨面が清浄となるという長所がある。
電解研磨浴における陽極分極曲線(Jacquet曲線)では、電位に依存しない一定電流(限界電流)範囲が存在する。この限界電流範囲において、アノード被研磨金属近傍には濃厚な粘性の高い陽極液層(Jacquet層)が形成される。この液層は溶出カチオンの拡散を抑制し、これによって研磨が行われると考えられる。すなわち、アノード金属表面状の凹凸により、粘性液層中の濃度勾配に差異を生じ、拡散電流が影響して凸部に電流が集中するようになり、表面の凹凸が消失して研磨が行われる。
(2−2)電解研磨溶液
電解研磨に利用される研磨液は、過塩素酸系、リン酸−硫酸−クロム酸系、リン酸−硫酸−有機物系、の3つに分類され、リン酸−硫酸−クロム酸系、リン酸−硫酸−有機物系、が広く採用されている。氷酪酸,燐酸,硫酸,硝酸,クロム酸,重クロム酸ソーダ等の単独または混合酸性水溶液で構成され、有機物(添加剤)としてエチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノブチルエステルやグリセリンを使用することができる。これら添加剤は電解液を安定化させ、濃度変化、経時変化、使用による劣化に対して適正電解範囲を広げる効果がある。
具体的には、40〜80vol%リン酸、5〜30vol%硫酸、15〜20vol%水、0〜35vol%エチレングリコールからなる電解液中で、40〜70℃、3〜10min、直流(10〜30V、3〜60A/dm)で行うことができる。
(2−3)表面粗さ
電解研磨処理により、ステンレス鋼材の表面粗さを0.1μm未満、好ましくは0.08μm以下に抑える必要がある。表面粗さは、後述する皮膜形成工程に影響するからである。ここで、「表面粗さ」とは、JIS B 0601に規定する算術平均粗さ(Ra)をいう。
3.皮膜形成工程
皮膜形成工程は、水素バリア機能を有する金属酸化物皮膜をステンレス鋼表面に形成して、ステンレス鋼に水素バリア機能を付与する役割を担う。
(3−1)皮膜形成
水素バリア機能を担う金属酸化物皮膜の形成には、ステンレス発色技術を採用する。ステンレス発色技術とは、ステンレス鋼表面に形成される陽極酸化膜の干渉色によりステンレス鋼を発色させる技術をいう。形成される陽極酸化膜の厚さは陽極と参照極との電位差(発色電位)に関連する。クロム酸と硫酸混合溶液中で酸化クロム皮膜を形成する、いわゆるインコ法(特開昭48−011243号公報参照)が広く採用される。
(3−2)皮膜形成速度
水素バリア機能膜を担う金属酸化物の形成速度(以下、「皮膜形成速度」という。)を制御することで、皮膜の密着性、均一性を高めて水素バリア機能が低下する原因となる皮膜が薄い部分や皮膜欠損(ピンホール)の発生を抑制できる。
皮膜形成速度は、発色液組成と温度で制御できる。発色液組成としては、硫酸とクロム酸の混合比(クロム酸/硫酸)は、クロム酸15〜30wt/v%に対し、硫酸40〜50wt/v%が好適である。クロム酸濃度を低減することで、水素バリア機能膜の形成速度を低くすることができ、発色皮膜の生成厚みを精密に制御できるからである。
皮膜形成速度は、電位速度(mV/sec)で制御することができる。電位速度は、0.02〜0.08mV/sec、好ましくは0.050〜0.065mV/secである。電位速度が0.02mV/sec未満であると発色皮膜の生成が遅れ生産性が低下するからである。電位速度が0.08mV/secを超えると形成された水素バリア機能膜の厚みが不均一となり、水素バリア機能が低下する原因となる塗膜が薄い部分や塗膜欠損(ピンホール)が生じるからである。
(3−3)発色液
発色液組成としては、クロム酸と硫酸の混合比(クロム酸/硫酸)は、クロム酸15〜30wt/vl%に対し、硫酸40〜50wt/vl%が好適である。クロム酸濃度を低減することで、水素バリア機能膜の形成速度を低くすることができ、発色皮膜の生成厚みを精密に制御できるからである。発色液の温度は、60〜90℃である。
(3−4)マンガンイオン
発色液中のクロム酸濃度の低減に伴う水素バリア機能膜の形成I速度を補うために、マンガンイオン(Mn2+)を添加することができる。メッキ液に用いるマンガン塩としては、塩化マンガン(MnCl2)、硫酸マンガン(MnSO4)、硝酸マンガン(Mn(NO3)2)などがあり、これらの中の1種または2種以上を用いることができる。メッキ液中のマンガンイオン(Mn2+)濃度は、0.5〜300mmol/Lが好ましく、5〜150mmol/Lがより好ましい。マンガンイオン(Mn2+)濃度が0.5mmol/L未満では、水素バリア機能膜の形成を促す効果がなく、マンガンイオン(Mn2+)濃度が300mmol/Lを超えると不溶な部分が残って、水素バリア機能膜の形成に影響を及ぼすからである。
4.硬化処理工程
硬化処理工程は、ステンレス鋼表面に形成された水素バリア機能を有する金属酸化物皮膜を硬化させて強固にする役割を担う。
(4−1)硬化処理工程
硬化処理工程は、皮膜形成工程により水素バリア機能を有する金属酸化物皮膜が形成されたステンレス鋼を陰極とし、陰極電解により皮膜を硬化させる。皮膜形成工程により形成された水素バリア機能を有する金属酸化物皮膜は、10〜20nmの空孔が1cm2当たり1011個程度分布している。この空孔は、水素バリア機能を低下させる原因となるものであり、硬化処理により空孔を封じることができる。また、ルーズな皮膜を強固にすることもできる。
(4−2)硬化処理液
硬化処理液としては、クロム酸とリン酸の混合比(クロム酸/リン酸)は、クロム酸15〜30wt/v%に対し、反応促進剤としてリン酸0.2〜0.3wt/v%が好適である。電流密度0.2〜1.0A/dm2で、5〜10min行う。
5.不動態化処理工程
不働態化処理工程は、硬化処理された水素バリア機能を有する金属酸化物皮膜にさらに保護皮膜を形成する役割を担う。
(5−1)不動態化処理
不働態化とは、金属または半導体の表面に保護皮膜を生成させることをいう。一般に、金属は環境の酸化性が高くなると腐食反応が進むが、ステンレス鋼においては酸化性がある程度以上高くなると保護皮膜の形成により腐食反応が抑制される。
ステンレス鋼の不動態化処理方法としては、(a)硝酸その他強力な酸化剤を含む溶液に浸漬する方法、(b)酸化剤を含む溶液中でのアノード分極による方法、(c)酸素または清浄な空気中における低温加熱による方法、などがある。本願発明はウエットプロセスであるため(a)または(b)の方法を採用することができる。この不動態化処理により極めて薄い保護膜(10〜100nm)が形成される。
(5−2)不動態化処理液
不働態化処理液は、不動態化させる能力のある酸化剤(以下、「不動態化剤」という。)を含む水溶液中で行う。不動態化剤としては、硝酸、クロム酸、過マンガン酸、モリブデン酸、亜硝酸がある。不動態化剤として硝酸を用いる場合は、硝酸15〜30v/v%が好適である。
また、重クロム酸ナトリウムを添加すると後述する孔食電位が貴となり、耐孔食性が向上する。添加する重クロム酸ナトリウムは1.5〜3.5wt%が好適である。
6.水素バリア機能評価
水素バリア機能評価は、水素環境下での加速試験(SSRT試験)によるステンレス鋼の遅れ破壊(水素脆化)と水素透過防止性で評価する。
(6−1)SSRT試験
水素を貯蔵する高圧貯蔵容器、水素を輸送する高圧パイプラインに使用される金属材料は高強度化が指向されている。このため、遅れ破壊(水素脆化)の感受性が増大する。SSRT(Slow Strain Rate Technique)試験は、低歪み速度による応力負荷により強制破断させるため、原理的に試験環境によらず遅れ破壊感受性を高感度に迅速評価することができる。
(6−2)破断面形態観察
SSRT試験後の試験品の破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察を行う。
(6−3)水素透過防止性評価
水素バリア機能膜の水素透過性防止性の評価は、JIS K7126−1(差圧法)に準じた差圧式のガスクロ法で、試験片を境に、一方を加圧、他方(透過側)を減圧にして行う。透過したガス(水素)をガスクロマトグラフにて分離し、熱伝導度検出器(TCD)により、時間当たりのガス透過量を求めることで、透過度を算出する。
7.耐孔食性評価(孔食電位)
孔食電位はJIS G0577(2014年、ステンレス鋼の孔食電位測定方法)に準拠する方法で測定した。3.5wt%NaCl溶液(293K)中のアノード分極曲線から電流密度0.1mA・cm-2に対応する電位(V´c100)を測定した。
次に本願発明の効果を奏する実施態様を実施例として示す。また、そのまとめを表1及び表2に示す。
Figure 0006853536
Figure 0006853536
1.試験サンプル作製
<実施例1>
以下の電解研磨処理、皮膜形成処理、硬化処理、不動態化処理を逐次行って、本願発明の試験サンプルを作製した(以下、「実施例1品」という。)。
(1)電解研磨処理
ステンレス鋼試験片、SSRT試験用(SUS304、φ4mm×20mm)及び水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm)に電極(+)を取り付け、以下の処理条件で電解研磨を行い、研磨処理品を作製した。
[電解研磨処理条件]
・電解研磨液組成 リン酸70ml/L、硫酸20ml/L、エチレングリコール0.2ml/L
・処理温度 70℃
・処理時間 5min
・電流密度 10A/dm
(2)表面粗さ計測
研磨処理品の算術平均粗さ(Ra)を表面粗さ測定機(テーラーホブソン製、フォームタリサーフPGI―PLS)計測した。表面粗さは、0.08μmであった。
(3)皮膜形成処理
研磨処理品を以下の条件で皮膜形成処理(発色処理)を行い、皮膜形成品を作製した。
〔皮膜形成処理条件〕
・発色液組成 酸化クロム250g/L、硫酸500g/L、硫酸マンガン6.3g/L
・処理温度 80℃
・処理時間 8min
・発色電位速度 0.053mV/sec
(4)硬化処理
皮膜形成品を以下の条件で硬化処理を行い、硬化処理品を作製した。
〔硬化処理条件〕
・硬化液組成 酸化クロム250g/L、リン酸2.5g/L
・処理温度 25℃
・処理時間 10min
・電流密度 0.5A/dm2
(5)不動態化処理
硬化処理品を以下の条件で不動態化処理を行い、不動態化処理品を作製した。
〔不動態化処理条件〕
・不動態化液組成 硝酸25vol%
・処理温度 50℃
・処理時間 60min
<比較例1>
実施例記載の処理を行わないステンレス鋼試験片、SSRT試験用(SUS304、φ4mm×20mm)及び水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm)を比較例1とした(以下、「比較例1品」という。)。
<実施例2−1>
以下の電解研磨処理、皮膜形成処理、硬化処理、不動態化処理を逐次行って、本願発明の試験サンプル(水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm))を作製した(以下、「実施例2−1品」という。)。
(1)電解研磨処理
ステンレス鋼試験片、水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm)に電極(+)を取り付け、以下の処理条件で電解研磨を行い、研磨処理品を作製した。
[電解研磨処理条件]
・電解研磨液組成 リン酸70ml/L、硫酸20ml/L、エチレングリコール0.2ml/L
・処理温度 70℃
・処理時間 5min
・電流密度 10A/dm
(2)皮膜形成処理
研磨処理品を以下の条件で皮膜形成処理(発色処理)を行い、皮膜形成品を作製した。
〔皮膜形成処理条件〕
・発色液組成 酸化クロム250g/L、硫酸500g/L、硫酸マンガン6.3g/L
・処理温度 65℃
・処理時間 20min
・発色電位速度 0.003mV/sec
(3)硬化処理
皮膜形成品を以下の条件で硬化処理を行い、硬化処理品を作製した。
〔硬化処理条件〕
・硬化液組成 酸化クロム250g/L、リン酸2.5g/L
・処理温度 25℃
・処理時間 10min
・電流密度 0.5A/dm2
(4)不動態化処理
硬化処理品を以下の条件で不動態化処理を行い、不動態化処理品を作製した。
〔不動態化処理条件〕
・不動態化液組成 硝酸20vol%
・処理温度 50℃
・処理時間 60min
<実施例2−2>
不動態化処理を以下の条件に変更したことを除き、<実施例2−1>と同じ条件で、本発明の試験サンプル(水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm))を作製した(以下、「実施例2−2品」という。)。
〔不動態化処理条件〕
・不動態化液組成 硝酸25vol%
・処理温度 50℃
・処理時間 60min
<実施例2−3>
皮膜形成処理を以下の条件に変更したことを除き、<実施例2−1>と同じ条件で、本発明の試験サンプル(水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm))を作製した(以下、「実施例2−3品」という。)。
〔皮膜形成処理条件〕
・発色液組成 酸化クロム250g/L、硫酸500g/L、硫酸マンガン6.3g/L
・処理温度 65℃
・処理時間 35min
・発色電位速度 0.011mV/sec
<実施例2−4>
不動態化処理を以下の条件に変更したことを除き、<実施例2−3>と同じ条件で、本発明の試験サンプル(SSRT試験用(SUS304、φ4mm×20mm)及び水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm))を作製した(以下、「実施例2−4品」という。)。
〔不動態化処理条件〕
・不動態化液組成 硝酸25vol%
・処理温度 50℃
・処理時間 60min
<実施例3−1>
以下の電解研磨処理、皮膜形成処理、硬化処理、不動態化処理を逐次行って、本願発明の試験サンプル(水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm))を作製した(以下、「実施例3−1品」という。)。
(1)電解研磨処理
ステンレス鋼試験片、水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm)に電極(+)を取り付け、以下の処理条件で電解研磨を行い、研磨処理品を作製した。
[電解研磨処理条件]
・電解研磨液組成 リン酸70ml/L、硫酸20ml/L、エチレングリコール0.2ml/L
・処理温度 70℃
・処理時間 5min
・電流密度 10A/dm
(2)皮膜形成処理
研磨処理品を以下の条件で皮膜形成処理(発色処理)を行い、皮膜形成品を作製した。
〔皮膜形成処理条件〕
・発色液組成 酸化クロム250g/L、硫酸500g/L、硫酸マンガン6.3g/L
・処理温度 65℃
・処理時間 20min
・発色電位速度 0.003mV/sec
(3)硬化処理
皮膜形成品を以下の条件で硬化処理を行い、硬化処理品を作製した。
〔硬化処理条件〕
・硬化液組成 酸化クロム250g/L、リン酸2.5g/L
・処理温度 25℃
・処理時間 10min
・電流密度 0.5A/dm2
(4)不動態化処理
硬化処理品を以下の条件で不動態化処理を行い、不動態化処理品を作製した。
〔不動態化処理条件〕
・不動態化液組成 硝酸20vol%、重クロム酸ナトリウム2.5wt%
・処理温度 25℃
・処理時間 10min
<実施例3−2>
不動態化処理を以下の条件に変更したことを除き、<実施例3−1>と同じ条件で、本発明の試験サンプル(水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm))を作製した(以下、「実施例3−2品」という。)。
〔不動態化処理条件〕
・不動態化液組成 硝酸25vol%、重クロム酸ナトリウム2.5wt%
・処理温度 25℃
・処理時間 10min
<実施例3−3>
皮膜形成処理を以下の条件に変更したことを除き、<実施例3−1>と同じ条件で、本発明の試験サンプル(水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm))を作製した(以下、「実施例3−3品」という。)。
〔皮膜形成処理条件〕
・発色液組成 酸化クロム250g/L、硫酸500g/L、硫酸マンガン6.3g/L
・処理温度 65℃
・処理時間 35min
・発色電位速度 0.011mV/sec
<実施例3−4>
不動態化処理を以下の条件に変更したことを除き、<実施例3−3>と同じ条件で、本発明の試験サンプル(水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm))を作製した(以下、「実施例3−4品」という。)。
〔不動態化処理条件〕
・不動態化液組成 硝酸25vol%、重クロム酸ナトリウム2.5wt%
・処理温度 25℃
・処理時間 10min
<実施例4−1>
以下の電解研磨処理、不動態化処理を逐次行って、本願発明の試験サンプル(水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm))を作製した(以下、「実施例4−1品」という。)。
(1)電解研磨処理
ステンレス鋼試験片、水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm)に電極(+)を取り付け、以下の処理条件で電解研磨を行い、研磨処理品を作製した。
[電解研磨処理条件]
・電解研磨液組成 リン酸70ml/L、硫酸20ml/L、エチレングリコール0.2ml/L
・処理温度 70℃
・処理時間 5min
・電流密度 10A/dm
〔不動態化処理条件〕
・不動態化液組成 硝酸20vol%
・処理温度 50℃
・処理時間 60min
<実施例4−2>
不動態化処理を以下の条件に変更したことを除き、<実施例4−1>と同じ条件で、本発明の試験サンプル(水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm))を作製した(以下、「実施例4−2品」という。)。
〔不動態化処理条件〕
・不動態化液組成 硝酸25vol%
・処理温度 50℃
・処理時間 60min
<実施例5−1>
不動態化処理を以下の条件に変更したことを除き、<実施例4−1>と同じ条件で、本発明の試験サンプル(水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm))を作製した(以下、「実施例5−1品」という。)。
〔不動態化処理条件〕
・不動態化液組成 硝酸20vol%、重クロム酸ナトリウム2.5wt%
・処理温度 25℃
・処理時間 10min
<実施例5−2>
不動態化処理を以下の条件に変更したことを除き、<実施例5−1>と同じ条件で、本発明の試験サンプル(水素透過防止性評価用(SUS316L、φ35mm、厚さ0.1mm))を作製した(以下、「実施例5−1品」という。)。
〔不動態化処理条件〕
・不動態化液組成 硝酸25vol%、重クロム酸ナトリウム2.5wt%
・処理温度 25℃
・処理時間 10min
2.水素バリア機能評価
(1)SSRT試験
実施例1品、実施例2−4品、実施例4−2品、実施例5−2品及び比較例1品について、水素脆化評価を行うためにSSRT試験(1.1MPa水素下及び1.1MPa窒素下)により断面絞り(%)を測定した。ここで、断面絞りとは、くびれ破断した箇所の断面積の原断面積に対する比率をいう。
1.1MPa水素下での断面絞りは、実施例1品と実施例2−4品はいずれも77%、実施例4−2品は74%、実施例5−2品は76%、比較例1品は63%であった。
水素脆性の尺度は断面絞りの相対値(水素下での断面絞りを不活性ガス下での断面絞りで除した値)で示される。実施例品は、いずれも1.0であり、水素による脆化は認められなかった。
〔試験条件〕
・歪み速度 4.17×10-5/sec
・試験温度 16℃
(2)破断面SEM観察
SSRT試験に供した実施例品と比較例品2について破断面をSEM観察した。
図2は、実施例1品のSSRT試験(1.1MPa水素雰囲気下,1.1MPa窒素雰囲気下)後の破断面SEM写真である((a):破断面の全体写真、(b):破断面中央部拡大写真、(c):破断面表層部拡大写真)。
図3は、比較例1品のSSRT試験(1.1MPa水素雰囲気下)後の破断面SEM写真である((a):破断面の全体写真、(b):破断面中央部拡大写真、(c):破断面表層部拡大写真)。
実施例1品の破断面の全体写真(a)は、いずれも均一なくびれがあり、破断面の拡大写真(b)、(c)も延性的なディンプル破断面であり、水素脆化による形態的差異は認められなかった。
一方、比較例1品の破断面の全体写真(a)では、破断面のくびれは均一でなく、表面から水素脆化の影響による亀裂の進展が認められる。また、破断面の拡大写真(c)には、亀裂の起点のある脆性的な粒内破断面が認められる。これらは、水素脆化による形態的差異である。
図4は、実施例4−2品のSSRT試験(1.1MPa水素雰囲気下,1.1MPa窒素雰囲気下)後の破断面SEM写真である((a):破断面の全体写真、(b):破断面中央部拡大写真、(c):破断面表層部拡大写真)。
図5は、実施例5−2品のSSRT試験(1.1MPa水素雰囲気下,1.1MPa窒素雰囲気下)後の破断面SEM写真である((a):破断面の全体写真、(b):破断面中央部拡大写真、(c):破断面表層部拡大写真)。
実施例4−2品及び実施例5−2品のいずれも実施例1品と同様に破断面の全体写真(a)は、いずれも均一なくびれがあり、破断面の拡大写真(b)、(c)も延性的なディンプル破断面であり、水素脆化による形態的差異は認められなかった。
(3)水素透過防止性評価
実施例品(実施例1〜実施例5−2)、比較例1品について、JIS K7126−1(差圧法)に準じた差圧式のガスクロ法で、高温水素透過試験を行い、水素透過率比(実施例品/比較例1品)を求めた。
実施例1品は、温度条件(300℃、400℃、500℃)のいずれにおいても、水素透過率比は1以下であり、水素バリア性が高いことが認められる。
他の実施例品(実施例2−1〜実施例5−2)のいずれも、温度条件(300℃)水素透過率比は1以下であり、水素バリア性が高いことが認められる。
〔試験条件〕
・試験用サンプル(φ35mm,厚さ0.1mm)
・差圧 400kPa
・温度 300℃、400℃、500℃
(4)耐孔食性評価(孔食電位)
実施例品(実施例1〜実施例5−2)、比較例1品についてJIS G0577(2014年、ステンレス鋼の孔食電位測定方法)に準拠する方法で測定した。結果は表2に示すとおりである。実施例品の孔食電位はいずれも比較例1品(0.30V,SCE)に比べて有意に高い。
また電解研磨処理と不動態化処理の実施品(実施例4−1〜実施例5−2)では、孔食電位と水素透過防止性との相関が認められ、孔食電位測定により、水素透過防止性を予測できることが示唆される。水素透過防止性評価は測定に時間を要することから、孔食電位測定が基準以上(例えば、1.0V,SCE)とすることで、水素透過防止性の高い(水素バリア性の優れる)製品を製造できる。
本願発明により、環境負荷の少ない次世代エネルギー源として水素を活用する水素社会を実現するための水素の安定供給に向けた貯蔵・輸送技術に供する水素を貯蔵する高圧貯蔵容器、水素を輸送する高圧パイプラインに使用できるステンレス鋼を提供できる。

Claims (5)

  1. 電解研磨処理されたステンレス鋼表面に、不動態化した皮膜を被覆した差圧400kPa、300℃条件下での水素透過率比(処理品/未処理品)が0.49×10−2以上1.76×10−2以下の水素バリア機能を有するステンレス鋼。
  2. 電解研磨処理されたステンレス鋼表面に、金属酸化物皮膜を不動態化した皮膜を被覆した差圧400kPa、300℃条件下での水素透過率比(処理品/未処理品)が0.56×10−2以上3.5×10−2以下の水素バリア機能を有するステンレス鋼。
  3. 前記金属酸化物皮膜を不動態化した皮膜が、酸化クロム皮膜を不動態化した皮膜であることを特徴とする請求項2に記載した水素バリア機能を有するステンレス鋼。
  4. ステンレス鋼表面を電解研磨する研磨処理工程、
    研磨処理工程で研磨処理したステンレス鋼表面を不動態化剤からなる処理液に浸漬して、不動態化する不動態化処理工程、
    とからなる不動態膜を被覆した差圧400kPa、300℃条件下での水素透過率比(処理品/未処理品)が0.49×10−2以上1.76×10−2以下の水素バリア機能を有するステンレス鋼の製造方法。
  5. ステンレス鋼表面を電解研磨する研磨処理工程、
    研磨処理されたステンレス鋼を、クロム酸と硫酸の混合溶液からなる処理液に浸漬して、ステンレス鋼表面に酸化クロム皮膜をする形成する皮膜形成工程、
    皮膜形成工程で形成された酸化クロム皮膜を、クロム酸とリン酸の混合溶液からなる処理液に浸漬して、酸化クロム皮膜を硬化する硬化処理工程、
    硬化処理工程で硬化した酸化クロム皮膜を不動態化剤からなる処理液に浸漬して、酸化クロム皮膜を不動態化する不動態化処理工程、
    とからなる不動態膜を被覆した差圧400kPa、300℃条件下での水素透過率比(処理品/未処理品)が0.56×10−2以上3.5×10−2以下の水素バリア機能を有するステンレス鋼の製造方法。
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