JP2009088121A - 希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】希土類元素、Fe、MnおよびNから実質的に構成され、かつその中のNの含有量が全体に対して3.5質量%以上である、平均粒径が10μm以上で、保磁力が400kA/m以上である希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末であって、希土類元素、Fe、MnおよびNを成分とする菱面体晶または六方晶の結晶構造を有する相からなる主相と、該主相の内部でc軸に略平行に成長し、かつ主相に比べてMnおよびNの濃度が高くかつ直径が20nm以下で長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相とを含む構造形態を有することを特徴とする希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末によって提供する。
【選択図】図1
Description
このとき生成するM化合物には、R−M系、R−T−M系、M−T系があり、窒化中に析出する場合は、それらの窒化物を生成することもある。また、既に析出していたM化合物が窒化処理中に窒化されることもある。一方、M濃度の異なる2つ以上の相に分離する場合も、相によって窒素濃度が変化することがあるとされている。
しかし、マンガンを含む粉末では、Sm2([Fe,Co],Mn)17あたりNが3個を越えて増加すると、Nは格子間に侵入するため結晶格子が広がり、不安定な状態を経て、ついに、N濃度分布に濃淡が生じ、結晶格子が崩れた部分や崩れかけた部分が生じる。さらに、合金組成や窒素量、窒化条件や窒化後の焼鈍条件によっては、菱面体晶又は六方晶の結晶構造を有する強磁性相の周りをN濃度の高い結晶格子の崩れた或いは崩れかけた部分が取り囲む、セルのような構造(以下、単に「セル構造」と略称する場合もある。)が生じるとされている(例えば、特許文献5参照)。そして、このようなセル構造が生じる一例として、Sm8.5Fe65.0Mn3.5N23.0材料の微構造をTEM(透過電子顕微鏡)により観察した結果が示され、そこでは、10〜200nmの結晶粒子径を有したセル構造が生じているのが確認できる。
しかし、これにMnが共存した場合には、高窒化領域での保磁力が大きく増加するとされている。例えば、30μm程度の粗粉体Sm−Fe−N3元系では、上述のように保磁力の最大値が2kOe程度であるのに対して、Mnが共存すると、保磁力は9〜12kOeまで増加する。Mnの役割については不明であるが、N濃度の高い部分、または、結晶格子の崩れた或いは崩れかけた部分にMnが存在することにより、磁化反転をくい止める効果が生じるものと考えられている。
また、Mnの組成比にもよるが、Sm2([Fe,Co],Mn)17あたりのNの数が4個から6個程度までの材料について、磁気曲線の立ち上がりや保磁力の着磁磁場依存性などが調べられ、この材料は、ピンニング型の磁化反転機構を示すとされている。この傾向はCoを含む、含まないにかかわらず同様と見られている。
特許文献5に記載された実施例によれば、例えば飽和磁化134emu/g(134Am2/kg)で固有保磁力4.1kOe(328kA/m)の磁石粉末や飽和磁化が102emu/g(102Am2/kg)で固有保磁力が9.3kOe(744kA/m)の粉末が得られ、これらの粉末は、110℃の温度に200時間さらした後も、初期値の98%以上の優れた保磁力を維持するとしている。
こうした中で、本出願人は、希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末に関し、主相の内部に、MnおよびNの濃度が高く長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムに存在するという新規な構造形態をもち、それに伴い良好な保磁力と優れた角形性とをバランスよく有する希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末を提案した(特許文献8参照)。ただし、良好な保磁力と優れた角形性とをバランスよく有するためにはアモルファス相の制御が重要であるということ以外、詳細なメカニズムは解明されていない。
本発明の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末は、希土類元素、Fe、MnおよびNから実質的に構成され、かつその中のNの含有量が全体に対して3.5質量%以上である、平均粒径が10μm以上で、保磁力が500kA/m以上である希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末であって、希土類元素、Fe、MnおよびNを成分とする菱面体晶または六方晶の結晶構造を有する相からなる主相と、該主相の内部でc軸に略平行に成長し、かつ主相に比べてMnおよびNの濃度が高くかつ直径が20nm以下で長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相とを含む構造形態を有することを特徴とする。
残部はFeであるが、その一部をCoで置換することができる。Feの20質量%以下をCoで置換するとキュリー温度が上昇し、磁化や磁化の温度係数を改善できる。
また、この磁石粉末は、優れた保磁力を有し、少なくとも500kA/m以上の性能を発揮する。好ましい保磁力は、600kA/m以上、より好ましくは750kA/m以上であり、製造条件を最適化することで800kA/mを超えるものも得ることができる。本発明の磁石粉末が、このような優れた力を有するのは、ワイヤー状形態を有するアモルファス相が、単結晶内部に存在しているので、「セル構造」よりも非磁性相が少ない分、より大きな磁化が得られ、また、アモルファス相は単結晶内部にワイヤー状に存在するため単結晶の構造を変化させることがないためと考えられる。
図1の(a)は、Sm2(Fe0.95Mn0.05)17N5.0粉末の明視野像であり、右上は回折図形である。この回折図形から試料面内にc軸(磁化容易軸)が存在することが分かる。(b)は006反射を用いて得た暗視野像である。矢印で示した暗い部分は、c軸にほぼ垂直であることが分かる。またこのような暗い部分が見えることは、主相の内部に別な相が存在することを暗示している。条件が整っていないためかコントラストは十分でないが、黒いラインに垂直にアモルファス相と思われる筋が見える。(c)は焦点をはずして得たローレンツ顕微鏡像であり、白と黒の線は磁壁に対応する。ここで、磁壁はc軸(磁化容易軸)にほぼ平行に伸びていることが分かる。すなわち、Th2Zn17型結晶構造を有する相は、希土類元素、Fe、MnおよびNを成分とする菱面体晶または六方晶の結晶構造を有する相からなる主相であって、該主相の内部に、主相に比べてMnおよびNの濃度が高く、かつ直径が20nm以下で長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がc軸(磁化容易軸)にほぼ平行に存在した構造形態を有することが分かる。
本発明において、略平行とは、これらのように、ワイヤー状形態をしたアモルファス相がc軸(磁化容易軸)が完全に平行な状態だけでなく、わずかに傾いた状態、例えばc軸に対する傾斜度が20度以内、好ましくは10度以内である状態をも含むものとする。
これは、Sm2Fe17の場合、Sm2([Fe,Co],Mn)17あたり3個を越えるように窒素を導入すると、Nは格子間に侵入するため結晶格子が広がり、不安定な状態を経て、ついに、N濃度分布に濃淡が生じ、結晶格子が崩れた或いは崩れかけた部分が生じ、さらに、合金組成や窒素量、窒化条件や窒化後の焼鈍条件によっては、菱面体晶又は六方晶の結晶構造を有する強磁性相の周りをN濃度の高い結晶格子の崩れた、或いは崩れかけた部分が取り囲むようになるとされている。
ところが、アモルファス相が単結晶内部に生成して微細な主相を取り巻く「セル構造」を形成するためには、微細な主相の比表面積に相当する量のアモルファス相が必要となるため、非磁性相の割合が多くなり、磁化の減少を引き起こすことになる。また、「セル構造」を構築することで微細な主相間に格子上の繋がりがなくなり、微細な主相間の磁気的な結合を介して主相間の結晶方位が変動し、等方的になり磁化が減少するという問題がある。
本発明において希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末を製造する方法は、特に限定されず、その母合金を熔融鋳造法で製造することも可能であるが、次に例示するような還元拡散法を利用することが好ましい。
本発明においては、希土類−鉄−マンガン系母合金粉末を製造するために、磁石原料粉末として希土類酸化物粉末、鉄粉末、マンガン粉末および/またはマンガン酸化物粉末を用いる。
ここで鉄粉末の30質量%までを鉄酸化物粉末として投入し、還元拡散反応の発熱量を調整することもできる。また、マンガン量の全部または一部を鉄−マンガン合金粉末の形で投入することもできる。
さらに、Feの20質量%以下をCoで置換した組成の希土類−鉄−コバルト−マンガン−窒素系磁石粉末を製造する場合には、Co源としてコバルト粉末および/またはコバルト酸化物粉末および/または鉄−コバルト−マンガン合金粉末を用いる。
マンガン酸化物としては、たとえば酸化マンガンや二酸化マンガン、これらの混合物で、上記粒度を持つものが使用できる。また、コバルト酸化物としては、たとえば酸化第一コバルトや四三酸化コバルト、これらの混合物で、上記粒度を持つものが使用できる。
本発明においては、次に上記の磁石原料粉末を不活性ガス雰囲気中、所定の温度で熱処理し、還元拡散法でTh2Zn17型結晶構造を有する希土類−鉄−マンガン系母合金粉末を製造する。
還元拡散法は、例えば特開昭61−295308号公報に記載されているように、希土類酸化物粉末と、他の金属の粉末と、Caなどの還元剤との混合物を、不活性ガス雰囲気中などで加熱した後、反応生成物を湿式処理して副生したCaOおよび残留Caなどの還元剤成分を除去することによって、直接合金粉末を得る方法である。
ここで各原料粉末は、それぞれの粉体特性差によって分離しないように均一に混合することが重要である。混合方法としては、たとえばリボンブレンダー、タンブラー、S字ブレンダー、V字ブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ハイスピードミキサー、ボールミル、振動ミル、アトライター、ジェットミルなどが使用できる。
還元剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびこれらの水素化物などが使用でき、取り扱いの安全性とコストの点で、目開き4.00mm以下に篩い分級した粒状金属カルシウムが好ましい。還元剤は上記原料粉末と混合するか、カルシウム蒸気が原料粉末と接触しうるよう分離しておくが、混合して還元拡散させれば、反応生成物が多孔質となり、引き続き行われる窒化処理を効率的に行うことができる。
熱処理温度は、900〜1200°C、特に1050〜1150℃の範囲とすることが望ましい。900°C未満では鉄粉末に対して、マンガン、希土類元素、コバルトの拡散が不均一となり、また、微細な単結晶で構成される等方性の多結晶粒子になるため、得られる希土類−鉄(−コバルト)−マンガン−窒素系磁石粉末の磁化や角形性が低下する。一方、1200°Cを超えると、生成する希土類−鉄(−コバルト)−マンガン母合金粉末が粒成長を起こすとともに互いに焼結するため、均一に窒化することが困難になり磁石粉末の残留磁束密度と角形性が低下する。加熱処理時間は特に制約されないが、還元反応を均一に行うためには、通常、1〜10時間とすることがよい。
本発明では、還元拡散反応後、反応生成物の雰囲気ガスを不活性ガスとしたまま変えずに、300°C以下に冷却する。
冷却後に、反応生成物の温度が300℃以下になるようにしなければならない。冷却後に反応生成物が300°Cを超えていると、Feリッチ相を増加させることがあるので、好ましくは250°C以下とする。これは、300°Cを超える温度では、活性な反応生成物が急激に窒化されるためにTh2Zn17型結晶構造を有する金属間化合物がFeリッチ相とSmNとに分解されるためであると推測される。
水素ガスの置換は、炉内にある不活性ガスを脱気して、真空に引いてから水素ガスを導入した方が短時間で水素ガスに完全に置換ができるので好ましい。このときの真空度は、大気圧に対して−30kPa以下が好ましく、−100kPa以下がさらに好ましい。アルゴンガスは、水素ガスよりも比重が大きいため反応生成物の底部まで完全に水素ガスで置換しきれないと、水素処理が効果的に行えず水素処理後も大きな塊のまま存在することがあるから、注意を要する。次に、水素を含む雰囲気ガスで置換後、水素の吸蔵を促進するために炉内の圧力を大気圧に対して+5kPa以上に加圧しておくことが好ましい。加圧は大気圧に対して+10〜50kPaがより好ましい。加圧した状態で放置し、反応生成物が水素を吸蔵していくと、初期加圧圧力から徐々に低下していくことで水素吸蔵が進行していくことが確認できる。
取り出した崩壊物の粒径が10mm以下、好ましくは1mm以下になるように反応温度と時間を設定することが好ましい。崩壊物の粒径が10mmを越える状態では、窒化処理工程で均一な窒化が困難になり磁気特性の角形が低下してしまい、水素処理の効果がない。
ところが、本発明に係る水素処理を行い水素吸蔵させた反応生成物は、該水素処理後、容器から取り出した時点で既に崩壊しており、引き続き行われる窒化工程での崩壊性も向上している。そのため生成した主相であるSm2Fe17相磁性粉末の凝集が小さく崩壊して、該磁性粉末の表面が活性となっており、その後の窒化処理において該磁性粉末合金内の窒素の分布が均一になり、結果として、微粉砕して得られる希土類−鉄−窒素系磁石粉末の減磁曲線の角形性が良好なものとなる。また、このように水素処理で崩壊した後窒化処理して得られる希土類−鉄−窒素系粗磁石粉末は、窒素の分布が均一となるので、磁気特性を低下させる希土類−鉄−窒素系磁石粉末が少なくなるので収率が高くなる。
そして、冷却後に、多孔質の塊状混合物(反応生成物)を湿式処理しないで次の窒化工程に移る。このとき反応生成物が大気中に曝されると、反応生成物中の活性な希土類−鉄(−コバルト)−マンガン母合金粉末が酸化されて失活して、窒化の度合いをばらつかせるので、大気(酸素)に曝されることのないように窒化工程に持ち込むことが望ましい。
このように、本発明においては、不活性雰囲気中での加熱(900〜1200℃)により、希土類−遷移金属系合金が多孔質塊状で得られる。その後、この合金塊を急速に冷却し、必要により、水素を吸蔵して崩壊させて、機械的な粉砕工程を経ることなく、窒化ガスにより窒化する。
窒化処理では、少なくともアンモニアと水素とを含有する混合ガス雰囲気で熱処理(300〜600℃)を行うことにより、上記合金中に窒素を均一に導入して窒化を行い、引き続いて湿式処理を行うことにより、希土類−遷移金属−窒素系合金の粉末を得るようにする。
窒化熱処理の保持時間は、窒化温度にもよるが、200〜600分、好ましくは、300〜550分とする。200分未満では、窒化が不十分になり、一方、600分を超えると窒化が進みすぎるので好ましくない。
ところが、このような条件の中には、良好な飽和磁化と保磁力が得られても、減磁曲線の角形性が悪くなる部分があり、また一定の条件で磁石粉末を製造しても高い磁気特性を再現性よく得ることができない。それは、主相中に好ましい形態でアモルファス相が存在していないためと判断される。
最後に、本発明では、窒化処理後の反応生成物に含まれている還元剤成分の副生成物(酸化カルシウムや窒化カルシウムなど)を、湿式処理して希土類−鉄(−コバルト)−マンガン−窒素系磁石粉末から分離除去する。
窒化後に反応生成物を長期間大気中に放置すると、炭酸カルシウムなどの還元剤成分の炭酸化物が生成し除去しにくくなり、磁石粉末の磁化の低下が起こったり、配向不良によって角形性が低下したりする。したがって、大気中に放置された反応生成物は、反応器から取り出してから2週間以内に湿式処理するのがよい。
湿式処理は、まず崩壊した生成物を水中に投入し、デカンテーション−注水−デカンテーションを繰り返し行い、生成したCa(OH)2の多くを除去する。さらに必要に応じて、残留するCa(OH)2を除去するために、酢酸および/または塩酸を用いて酸洗浄する。pH3〜6、好ましくはpH4〜5の範囲で酸洗浄することによって完全に除去される。
上記処理終了後には、例えば水洗し、アルコールあるいはアセトン等の有機溶媒で脱水し、不活性ガス雰囲気中または真空中で乾燥することで希土類−鉄(−コバルト)−マンガン−窒素系磁石粉末を得ることができる。
前記の通り、反応生成物を急速に冷却すると、反応生成物の希土類元素、Fe、MnおよびNを成分とする菱面体晶または六方晶の結晶構造を有する相からなる主相に何らかの構造欠陥が生じ、これを起点として、その後の窒化により、主相内部でアモルファス相がワイヤー状形態となってc軸に略平行に成長するものと考えられる。本発明では、このように主相に何らかの構造欠陥を生じさせることが必要であり、そのための手段は、反応生成物の急冷に限定されない。例えば、反応生成物を徐冷する途中に一定温度で長時間保持すること、圧力や冷却雰囲気を急変させること、冷却された合金が急速に水素を吸収する条件で水素処理することでも同様な効果が得られるものと考えられる。
このうち、水素処理の条件としては、例えば、炉内にある不活性ガス(アルゴンガス)を真空に引いてから、迅速に水素ガスを導入する方法、また、その後、水素ガスに置換後は、炉内の圧力や温度を急激に上昇させ、合金への水素の吸蔵を促進する方法などが挙げられる。圧力は、例えば、大気圧に対して+5kPa以上、特に大気圧に対して+10〜50kPaとすることが好ましく、加熱速度は、50℃/hを超えるようにし、特に100℃/h以上とすることが好ましい。このような条件とすることで、合金内部に構造欠陥の数が増え、アモルファス相が主相内に成長する起点が多くなって、ワイヤー状のアモルファス相がc軸と平行になりやすくなるものと考えられる。
純度99.5質量%、粒度325メッシュ(タイラ−標準、以下同じ)以下の電解鉄粉1.2kgと、純度99.4質量%、平均粒度325メッシュの酸化サマリウム粉末0.50kgと、純度99.5質量%、平均粒度325メッシュの二酸化マンガン0.1kgと、純度99.3質量%の粒状金属カルシウム0.32kgとを、Vブレンダーで混合した。
これをステンレス製容器に入れ、アルゴンガス雰囲気下、1150℃で4時間加熱処理した後、800℃まで100℃/hで冷却し、その後100℃まで14時間かけて降下させた後に、反応容器内を水素ガスで置換して、多孔質塊状の希土類−遷移金属系合金を含む反応生成物に水素を吸収させて崩壊させ、その後、水素とアンモニアの混合ガス雰囲気下で、430℃で470分の窒化処理を行った。
反応生成物を冷却して、水中に投じて崩壊させ、水素イオン濃度が8以下になるまで攪拌−デカンテーションを繰り返し、最終的に真空中40℃で10時間乾燥することで水分を除去して、約1.6kgの合金粉を得た。
こうして得られた希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末の組織を透過型電子顕微鏡で観察した。結果は図1に示すとおりであった。図1の(a)は、Sm2(Fe0.95Mn0.05)17N5.0粉末の明視野像である。右上は回折図形である。この回折図形から試料面内にc軸(磁化容易軸)が存在することが分かる。(b)は006反射を用いて得た暗視野像である。やや不鮮明ではあるが、矢印で示した暗い部分はc軸にほぼ垂直であることが分かる。またこのような暗い部分が見えることは、主相の内部に別な相が存在することを暗示している。(c)は焦点をはずして得たローレンツ顕微鏡像であり、白と黒の線は磁壁に対応する。ここで、磁壁はc軸(磁化容易軸)にほぼ平行に伸びていることが分かる。
この合金粉の組成は、Smが22.8質量%、Feが68.4質量%、Mnが3.5質量%、Nが5.3質量%、Oが0.11質量%であった。また、この合金粉の磁気測定を行ったところ、残留磁束密度1.12T、保磁力805kA/m、最大エネルギー積190kJ/m3となった。
アモルファス相が主相のc軸に略平行に成長し、かつ主相に比べてMnおよびNの濃度が高くかつ直径が20nm以下で長短のあるワイヤー状形態をしているため、優れた磁気特性を有することが分かる。
純度99.5質量%、粒度325メッシュ(タイラ−標準、以下同じ)以下の電解鉄粉1.2kgと、純度99.4質量%、平均粒度325メッシュの酸化サマリウム粉末0.50kgと、純度99.5質量%、平均粒度325メッシュの二酸化マンガン0.1kgと、純度99.3質量%の粒状金属カルシウム0.32kgとを、Vブレンダーで混合した。
これをステンレス製容器に入れ、アルゴンガス雰囲気下、1150℃で4時間加熱処理した後、600℃まで100℃/hで冷却し、その後100℃まで10時間かけて降下させた後に、反応容器内を水素ガスで置換して、多孔質塊状の希土類−遷移金属系合金を含む反応生成物に水素を吸収させて崩壊させ、その後、水素とアンモニアの混合ガス雰囲気下で、430℃で470分の窒化処理を行った。
反応生成物を冷却して、水中に投じて崩壊させ、水素イオン濃度が8以下になるまで攪拌−デカンテーションを繰り返し、最終的に真空中40℃で10時間乾燥することで水分を除去して、約1.6kgの合金粉を得た。
こうして得られた希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末の組織を透過型電子顕微鏡で観察した。結果は図2に示すとおりであった。図2の(a)にはアモルファス相が見え、(b)では、磁壁が、アモルファス相に沿って存在することが確認できる。(c)で見られる矢印で示していない暗い線は、アモルファス相であり主相のc軸にほぼ平行になっている。(d)は(c)の矢印で示した暗い部分を拡大したものである。この図で、矢印で示したアモルファス相は暗い部分にあるアモルファス相と繋がって見えるが、主相のc軸にほぼ平行に成長していることが分かる。暗い部分の詳しいことはまだ不明であるが、アモルファス相が主相のc軸に平行になっているわけではなく、主相部分よりも多めにアモルファス相が生成している。
この合金粉の組成は、Smが22.8質量%、Feが68.4質量%、Mnが3.5質量%、Nが5.3質量%、Oが0.11質量%であった。この合金粉の磁気測定を行ったところ、残留磁束密度1.11T、保磁力798kA/m、最大エネルギー積185kJ/m3となった。
アモルファス相が主相のc軸に略平行に成長し、かつ主相に比べてMnおよびNの濃度が高くかつ直径が20nm以下で長短のあるワイヤー状形態をしているため、磁気特性が優れていることが分かる。
合金組成としてSmが24.7質量%、Feが72.5質量%、Cuが2.8質量%(原子%で、Sm11.0Fe87.0Cu3.0)の組成となるように高周波誘導炉を用いて溶解、鋳造し合金インゴットを得た。
該インゴットをAr雰囲気中で1100℃、24時間の溶体化処理、続いて800℃で1時間の時効処理を行った。ここで溶体化熱処理後、室温までガス急冷して時効熱処理し、時効熱処理後は炉冷した。
XRDにより溶体化後はSm2Fe17相単相であることを確認した。また時効後の試料をTEM観察したところ、Sm2Fe17相内に数十nm程度の非常に微細な粒状のCu化合物の析出相が存在しているのが認められた。
この合金をジョークラッシャーにより粉砕し、次いで窒素雰囲気中ローターミルでさらに粉砕した後、ふるいで粒度を調整して、平均粒径約50μmの粉体を得た。このSm−Fe−Mn合金粉体を横型管状炉に仕込み、465℃ において、アンモニア分圧0. 35atm、水素ガス0.65atmの混合気流中で4時間加熱処理し、続いてアルゴン気流中で1時間焼鈍したのち、平均粒径約30μmに調整した。窒化後の試料をTEM観察したところ、結晶相内に数十nm程度の非常に微細な粒状のCu化合物の析出相が同様に存在しているのが認められた。
この合金粉の磁気測定を行ったところ、残留磁束密度1.00T、保磁力415kA/m、最大エネルギー積100kJ/m3となった。
純度99.9%のSm、純度99.9%のFe及び純度99.9%のMnを用いてアルゴンガス雰囲気下、高周波溶解炉で溶解混合し、さらにアルゴン雰囲気中、1150℃で20時間焼鈍し徐冷することにより、Sm11.2Fe84.2Mn4.6組成の合金を調製した。この合金をジョークラッシャーにより粉砕し、次いで窒素雰囲気中ローターミルでさらに粉砕した後、ふるいで粒度を調整して、平均粒径約50μmの粉体を得た。このSm−Fe−Mn合金粉体を横型管状炉に仕込み、465℃ において、アンモニア分圧0. 35atm、水素ガス0.65atmの混合気流中で4時間加熱処理し、続いてアルゴン気流中で1時間焼鈍したのち、平均粒径約30μmに調整した。
得られたSm−Fe−Mn−N合金粉体をTEM観察したところ、主相の周りをアモルファス相が取り巻きセル構造を形成していることが観察された。この合金粉の磁気測定を行ったところ、残留磁束密度0.80T、保磁力528kA/m、最大エネルギー積88.8kJ/m3となった。
純度99.5質量%、粒度325メッシュ(タイラ−標準、以下同じ)以下の電解鉄粉1.2kgと、純度99.4質量%、平均粒度325メッシュの酸化サマリウム粉末0.50kgと、純度99.5質量%、平均粒度325メッシュの二酸化マンガン0.1kgと、純度99.3質量%の粒状金属カルシウム0.32kgとを、Vブレンダーで混合した。
これをステンレス製容器に入れ、アルゴンガス雰囲気下、1150℃で4時間加熱処理した後、100℃まで50℃/hで冷却し、反応容器内を水素ガスで置換して、多孔質塊状の希土類−遷移金属系合金を含む反応生成物に水素を吸収させて崩壊させ、その後、水素とアンモニアの混合ガス雰囲気下で、430℃で470分の窒化処理を行った。
反応生成物を冷却して、水中に投じて崩壊させ、水素イオン濃度が8以下になるまで攪拌−デカンテーションを繰り返し、最終的に真空中40℃で10時間乾燥することで水分を除去して、約1.6kgの合金粉を得た。この合金粉の組成は、Smが23.8質量%、Feが68.2質量%、Mnが3.59質量%、Nが4.5質量%、Oが0.13質量%であった。
こうして得られた希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末の組織を透過型電子顕微鏡で観察した。主相の結晶中にワイヤー状の形態でアモルファス相が存在していたが、アモルファス相は、主相のc軸に平行になっているものもあったが、実施例1と比べると、大半がランダムな方向を向いていることが分かった。
この合金粉の磁気測定を行ったところ、残留磁束密度1.02T、保磁力755kA/m、最大エネルギー積160kJ/m3となった。
実施例1、2により、得られた磁石合金粉は、アモルファス相が主相の結晶中に該主相のc軸に略平行に成長し、ワイヤー状の形態で存在しているため、優れた磁気特性を有することが分かる。
これに対して、比較例1は、主相中に微細な析出相の存在が認められたが、粒状であってワイヤー状の形態ではないため、所望の磁気特性が得られていない。また、比較例2は、主相の周りをアモルファス相が取り巻き、セル構造を形成しており、アモルファス相がワイヤー状の形態ではないことから所望の磁気特性が得られておらず、特に、セル構造を形成していることから非磁性相の割合が多くなり磁化が低下しているものと考えられる。また、比較例3はアモルファス相が主相の結晶中にワイヤー状の形態で存在しているとは言え、ランダムな配置であるため実施例1、2に比べて磁気特性は劣る。
Claims (6)
- 希土類元素、Fe、MnおよびNから実質的に構成され、かつその中のNの含有量が全体に対して3.5質量%以上である、平均粒径が10μm以上で、保磁力が500kA/m以上である希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末であって、
希土類元素、Fe、MnおよびNを成分とする菱面体晶または六方晶の結晶構造を有する相からなる主相と、該主相の内部でc軸に略平行に成長し、主相に比べてMnおよびNの濃度が高くかつ直径が20nm以下で長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相とを含む構造形態を有することを特徴とする希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末。 - 前記アモルファス相の存在割合は、主相に対して0.05〜1容量%であることを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末。
- 前記アモルファス相をなすワイヤー状形態のアスペクト比は、10〜1000であることを特徴とする請求項1に記載の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末。
- 前記アモルファス相をなすワイヤー状形態の直径は、5〜10nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末。
- 各成分元素の存在量は、希土類元素が22〜27質量%、Mnが5質量%以下、Nが3.5〜6.0質量%、及び残部がFeであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末。
- 前記Nの含有量は、4.0〜5.5質量%であることを特徴とする請求項5に記載の希土類−鉄−マンガン−窒素系磁石粉末。
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