JP2009087473A - 磁気ディスク及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ディスク基板上に順次形成された少なくとも磁性層と保護層とを含む薄膜を有する磁気ディスクである。前記磁気ディスクの端面が表面自由エネルギーの低い物質で被覆されており、該端面の水に対する接触角が70度以上である。
【選択図】図1
Description
また、CSS方式では、停止時に磁気ディスクと磁気ヘッドとが接触吸着してしまわないように、磁気ディスク主表面上にテクスチャと呼ばれる一定の表面粗さの凹凸形状を設けることが行われている。また、CSS方式では、磁気ヘッドの接触摺動から磁気ディスクを保護するために、磁気ディスクの表面を保護層で被覆する等、されてきた。
このLUL方式では、CSS方式のように磁気ディスク面上に磁気ヘッドの接触摺動用領域を設ける必要がないため、CSS方式に比べて記録再生用領域の面積を広く確保でき、磁気ディスクの記録容量を増やせるという利点がある。
また、LUL方式では、磁気ディスクと磁気ヘッドとが接触しないので、CSS方式のようにテクスチャを設ける必要が無く磁気ディスク表面を更に平滑化できる。従って、磁気ヘッドの浮上量をCSS方式の場合よりも低下(10nm以下)させて、磁気ディスクの記録密度を高めることが出来るという利点もある。
近年の磁気ヘッドは、浮上量制御の容易なNPABスライダ(負圧スライダ)が採用されているが、浮上走行時には、スライダ面に負圧が発生するために、磁気ヘッドは、磁気ディスク面上の記録再生用領域に存在する微量な有機系、無機系の付着物等を掃除機のように徐々にスライダ面に集め濃縮し、スライダ面に堆積させてしまう傾向にある。
また、磁気抵抗効果型ヘッドは従来用いられてきた薄膜ヘッドとは異なり、記録素子と再生素子が分離している録再分離構造を有している。録再分離構造の場合、両素子間にFe−Ni系などのパーマロイ等のシールドを広く形成する必要がある。このパーマロイは腐食されやすい合金であるために、薄膜ヘッドと異なり、磁気抵抗効果型ヘッドの場合、腐食現象を厳重に防止する必要があることが判った。
ところで、近年は、HDDは大容量化、軽量化が進んでおり、特にモバイル用途として用いられることが多くなってきている。また、従来は、コンピュータの記憶装置として使用されることがほとんどであったが、最近では、携帯電話、カーナビゲーションシステム等にも搭載されるようになり、従前よりもはるかに過酷な使用環境にさらされる機会が増大している。そのため、HDDに搭載されている磁気ディスクは、様々な環境条件下でも正常に書き込みや読み取りができることが要求されている。そこで、磁気ディスクにおいて、過酷な環境条件(高温高湿)に放置するなどして信頼性試験が行われている。
すなわち、本発明は、前記課題を解決するため、以下の構成を有するものである。
(構成3)前記表面自由エネルギーの低い物質は、前記保護層の上に形成する潤滑層に用いる潤滑剤であることを特徴とする構成1又は2に記載の磁気ディスク。
(構成5)前記磁性層はコバルト(Co)合金系磁性層であることを特徴とする構成1乃至4の何れか一に記載の磁気ディスク。
また、本発明の磁気ディスクの製造方法によれば、上記効果を奏する磁気ディスクを好適に製造することができる。
本発明の一実施の形態の磁気ディスクは、ディスク基板上に順次形成された磁性層と保護層と潤滑層とを有する。ここで、保護層と潤滑層は、磁性層を腐食や磨耗、磁気ヘッドの衝撃等から保護するために設けられている。そして、本発明の磁気ディスクにおいては、前記磁気ディスクの端面が表面自由エネルギーの低い物質で被覆されており、該端面の水に対する接触角が70度以上であることを特徴とするものである。
磁気ディスクの端面に塗布する上記表面自由エネルギーの低い物質としては、本発明においては、例えば表面自由エネルギーが、30以下である物質が好適である。具体的には、潤滑層を形成するためのパーフロロポリエーテル系物質を用いることができる。従って、磁気ディスクの主表面上に潤滑層を形成するために塗布した潤滑剤と同じ潤滑剤を磁気ディスクの端面に塗布してもよい。この場合、磁気ディスクの端面が十分に(完全に)被覆されるように、主表面に塗布した潤滑剤よりも濃度の高いものを塗布するのが好適である。
磁気ディスクの主表面上に潤滑剤を塗布した後、さらに磁気ディスクの端面を十分に被覆するように、磁気ディスクの端面に表面自由エネルギーの低い物質を塗布する方法としては、適当な治具を用いて、磁気ディスクを回転させながら、その端面を上記物質に接触させる方法や、刷毛等を用いて、磁気ディスク端面に上記物質を塗布する方法などが挙げられる。
潤滑層の形成は、ディップ法、スプレイ法、スピンコート法等、公知の方法を用いることが出来る。少なくとも主表面上の潤滑層の膜厚は、本発明においては特に限定されないが、内部成分の溶出防止の観点からは、5〜20Å程度とするのが好ましい。
なお、本発明において炭素系保護層は、炭素を主成分とするダイヤモンドライク炭素保護層とすることが好ましい。炭素水素系保護層や炭素窒素系保護層においても、炭素を主成分とするダイヤモンドライク炭素保護層として形成されることが好ましい。
なお、保護層の成膜は、以上のスパッタリング法に限定されず、たとえば、バイアスを印加しながらプラズマCVD法により行うことも可能である。
このようなアルミノシリケートガラスは、化学強化することによって、ガラス基板表面に圧縮応力層を設けることができ、抗折強度や、剛性、耐衝撃性、耐振動性、耐熱性に優れ、高温環境下にあってもNaの析出がないとともに、平坦性を維持し、ヌープ硬度にも優れる。
また、ガラス基板の厚さは、0.1mm〜1.5mm程度が好ましい。
(実施例1)
本実施例では、まず、溶融ガラスから上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスにより直径66mmφ、厚さ1.5mmの円盤状のアルミノシリケートガラスからなるガラス基板を得、これに粗ラッピング工程(粗研削工程)、形状加工工程、精ラッピング工程(精研削工程)、端面鏡面加工工程、第1研磨工程、第2研磨工程を順次施すとともに、次いで化学強化を施すことにより、磁気ディスク用ガラス基板1を製造した。このガラス基板は、主表面、端面ともに鏡面研磨加工されている。
得られたガラス基板1は、図1に示すように、2つの主表面11,11と、その間に形成された端面12からなり、端面12は2つの面取面12b,12bと、その間に形成された側壁面12aとからなる。この端面は、ガラス基板1の内周側及び外周側に同様に形成されている。なお、端面の表面粗さは、Rmaxで0.8μm、Raで0.07μmであり、主表面に比べて粗かった。
付着層は、Ti系合金薄膜を膜厚100Åに形成した。
軟磁性層は、Co系合金薄膜を膜厚600Åに形成した。
第1下地層は、Pt系合金薄膜を膜厚70Åに形成した。また、第2下地層は、Ru合系合金薄膜を膜厚400Åに形成した。
磁性層は、CoPtCr合金からなり、膜厚は200Åに形成した。
次いでさらに、磁気ディスクの端面に選択的に潤滑剤を塗布した。この場合の潤滑剤は、上記パーフルオロポリエーテル液体潤滑剤で濃度を0.6g/Lに調整したものを用いた。塗布の方法は、図3に示すように、複数枚の磁気ディスク10を適当な治具(図示せず)で垂直方向に固定し、磁気ディスクの下部には、端面塗布に用いる潤滑剤等を染み込ませたスポンジ等20を設置しておき、磁気ディスクの端面が上記スポンジ等20と接するように、上記治具によって磁気ディスクの設置高さを調節する。この状態で、上記治具を回転させることにより磁気ディスクを一方向に回転させて、回転する際に磁気ディスクの端面が上記スポンジ等に接触することで、磁気ディスク端面に選択的に潤滑剤が塗布される。
得られた磁気ディスクについて、ディスク外周端面を評価したところ、ガラス基板1の側壁面12aと2つの面取面12b,12bを含む、ディスク端面102の全領域に磁性層と保護層と潤滑層が形成されていた。また、内周端面についても同様であった。そして、外周端面のうちの側壁面に載る程度の水滴を垂らして、接触角測定装置を用いて、端面(側壁面)での水に対する接触角を測定した結果、71度であった。また、外周端面の保護層の被覆率は、X線光電子分光法により測定した結果、98%であった。
〔腐食検査〕
得られた磁気ディスクを70℃80%RHの高温高湿環境下に120時間放置後、その磁気ディスクを取り出し。高輝度ハロゲンランプ下での目視検査と、50倍の倍率を有する光学顕微鏡検査とで、磁気ディスク表面の腐食発生の有無を検査した。その結果、本実施例の磁気ディスクでは、腐食の発生は観察されなかった。
〔LUL試験〕
磁気記録装置に、上記磁気ディスクと、巨大磁気抵抗効果型再生素子(GMR素子)を備えた磁気ヘッドとを装着し、磁気ヘッド浮上時の浮上量を10nmとし、磁気記録装置内の環境を70℃、80%RHの高温高湿環境下で、ヘッドのロード・アンロード動作を繰り返し行った。その結果、本実施例の磁気ディスクは、80万回のロードアンロード動作に耐久した。
本実施例の磁気ディスクについて、水に対する端面(側壁面)の接触角、腐食検査、LUL試験の結果をまとめて後記表1に示す。
磁気ディスクの端面に塗布する潤滑剤として、濃度を0.8g/Lに調整したパーフルオロポリエーテル液体潤滑剤を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の磁気ディスクを作製し、実施例1と同様の試験を行った。これらの結果はまとめて後記表1に示す。
磁気ディスクの端面に塗布する潤滑剤として、濃度を1.0g/Lに調整したパーフルオロポリエーテル液体潤滑剤を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の磁気ディスクを作製し、実施例1と同様の試験を行った。これらの結果はまとめて後記表1に示す。
保護層成膜後、上述の潤滑層の形成及び端面への潤滑剤の塗布は行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして磁気ディスクを作製し、実施例1と同様の試験を行った。これらの結果はまとめて後記表1に示す。
(比較例2)
保護層成膜後、上述の潤滑層の形成は行ったが、その後の端面への潤滑剤の塗布は行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして磁気ディスクを作製し、実施例1と同様の試験を行った。これらの結果はまとめて後記表1に示す。
これに対して、主表面、端面のいずれにも潤滑剤を塗布しない比較例1においては、水分付着を抑制できず、これを要因とする内部成分の溶出による腐食が発生し、高温高湿下で使用した場合の信頼性が得られない。また、保護層成膜後、従来行われている塗布方法で潤滑層を形成したが、その後の端面の潤滑剤塗布を行わなかった比較例2においては、端面が潤滑剤で十分に被覆されず、端面の水に対する接触角は57度と小さく高い撥水性が得られないため、特に端面での水分付着を抑制できず、これを要因とする内部成分の溶出による腐食が発生し、高温高湿下で使用した場合の信頼性が得られない。
10 磁気ディスク
11,101 主表面
12,102 端面
Claims (6)
- ディスク基板上に順次形成された少なくとも磁性層と保護層とを含む薄膜を有する磁気ディスクであって、前記磁気ディスクの端面が表面自由エネルギーの低い物質で被覆されてなり、該端面の水に対する接触角が70度以上であることを特徴とする磁気ディスク。
- 前記磁気ディスクの端面は、2つの面取面と、その間に形成された側壁面とからなり、少なくとも前記側壁面の水に対する接触角が70度以上であることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク。
- 前記表面自由エネルギーの低い物質は、前記保護層の上に形成する潤滑層に用いる潤滑剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ディスク。
- 前記保護層は炭素系保護層であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の磁気ディスク。
- 前記磁性層はコバルト(Co)合金系磁性層であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載の磁気ディスク。
- ディスク基板上に順次形成された少なくとも磁性層と保護層とを含む薄膜を有する磁気ディスクの製造方法であって、前記ディスク基板上に磁性層と保護層を順次形成し、さらに前記保護層の上に潤滑層を形成し、その後、磁気ディスクの端面に表面自由エネルギーの低い物質を塗布することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
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