以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施の形態における液封入式防振装置100の断面図である。
この液封入式防振装置100は、自動車のエンジンを支持固定し、そのエンジンから車体フレームへ伝達される振動を低減するための防振装置であり、図1に示すように、エンジン側に取り付けられる第1取付け金具1と、エンジン下方の車体フレーム側に取付けられる筒状の第2取付け金具2と、これらを連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体3とを主に備えている。
第1取付け金具1は、アルミニウム合金などから略円柱状に形成され、図1に示すように、その上面(図1上側面)には、エンジン側の取付けボルトが締結される締結孔1aが凹設されている。また、締結孔1aの側方には、位置決め凸部1bが凸設されている。また、第1取付け金具1の下方部分は、外径方向にフランジ状に張り出して形成されており、この張り出し部分は、防振基体3内に埋設されている。
第2取付け金具2は、防振基体3が加硫成形される筒状金具6と、その筒状金具6の下方に取着される底金具7とを備えて構成されている。図1に示すように、筒状金具6は上広がりの開口を有する筒状に、底金具7は底部が傾斜したカップ状に、それぞれ鉄鋼材料から構成されている。
なお、底金具7の底部には、取付けボルト5と位置決め凸部7aとが凸設されている。また、底金具7の側部には、後述する駆動装置60の電力供給線Lを挿通するための挿通孔7bが穿設されている。この挿通孔7bには、電力供給線Lが挿通された状態で封止剤が充填され、底金具7内が密閉空間とされている。
挿通孔7bは、底部から開口までの高さ寸法(図1上下方向寸法)が最大となる側部に穿設されている。これにより、挿通孔7aを穿設加工する際の加工性と電力供給線Lを挿通する際の作業性とを高効率化することができる。また、電力供給線Lを収容する空間として、固定部材19と底金具7の底面との間の空間を利用することもできる。
防振基体3は、図1に示すように、ゴム状弾性体から断面略円錐台形状に形成され、第1取付け金具1の下面側と筒状金具6の上端開口部との間に加硫接着されている。また、防振基体3の下端部には、筒状金具6の内周面を覆うゴム膜3aが連なっており、このゴム膜3aには、後述するオリフィス金具30のオリフィス形成壁31,32が密着されている。
防振基体3の上端部(図1上側)は、図1に示すように、第1取付け金具1の張り出し部分を覆う覆設部3bを備えており、この覆設部3bがスタビライザ金具8に当接することで、大変位時のストッパ作用が得られるように構成されている。なお、スタビライザ金具8は、筒状金具6の上側端部にかしめ固定されている。
ダイヤフラム9は、ゴム状弾性体から蛇腹形状を有するゴム膜状に形成されるものであり、図1に示すように、第2取付け金具2(筒状金具6と底金具7との間)に取着されている。その結果、このダイヤフラム9の上面側と防振基体3の下面側との間には、液体封入室11が形成されている。
この液体封入室11には、エチレングリコールなどの不凍性の液体(図示せず)が封入される。図1に示すように、液体封入室11は、後述する仕切り体20によって、防振基体3側(図1上側)の主液室11Aと、ダイヤフラム9側(図1下側)の副液室11Bとの2室に仕切られている。
なお、ダイヤフラム9は、上面視ドーナツ状の取付け板10に加硫接着されており(図7参照)、図1に示すように、その取付け板10が筒状金具6と底金具7との間でかしめ固定されることにより、第2取付け金具2に取着されている。
仕切り体20は、図1に示すように、底面側(図1下側)に開口を有する略円筒状に構成されるオリフィス金具30と、そのオリフィス金具30の底面側開口から内嵌される円盤状の底板金具40とを備えて構成されている。なお、これらオリフィス金具30と底板金具40は、アルミ合金から構成されている。
ここで、防振基体3は、図1に示すように、下面側(図1下側)の全周にわたる段部として形成される仕切り体受け段部3cを備え、この仕切り体受け段部3cが仕切り体20(オリフィス金具30)の上端面を係止している。液封入式防振装置100の組み立て状態においては、仕切り体受け段部3cが圧縮変形されており、この仕切り体受け段部3cの弾性復元力が仕切り体20に保持力として作用している。これにより、仕切り体20を強固かつ安定的に挟持固定することができる。
なお、仕切り体20(オリフィス金具30)は、図1に示すように、その下面側が挟持部材18の上面に当接されており、挟持部材18は、その外縁部が第2取付け金具2(筒状金具6と底金具7との間)にかしめ固定されているので、仕切り体20を挟持部材18と防振基体3の仕切り体受け段部3cとの間に強固に保持することができる。その結果、大振幅や高周波数の振幅が入力された場合などでも、各部材のびびりを抑制することができるので、各部材の位置ずれや共振などに起因する動特性への影響を回避することができる。
仕切り体20には、図1に示すように、第1オリフィス21と第2オリフィス22との2本の流路が形成されている。これら第1オリフィス21及び第2オリフィス22は、主液室11Aと副液室11Bとを連通させるオリフィス流路であり、第1オリフィス21に対しては、切替装置50による切り替え制御が行われる。
即ち、液封入式防振装置100は、アイドル時には、第1オリフィス21を連通状態として(図16及び図17参照)、第1オリフィス21と第2オリフィス22との2本の流路を利用して、アイドル領域(f=f−I、図20参照)における低動ばね特性を得る一方で(図20参照)、シェイク時には、第1オリフィス21を遮断状態として(図18及び図19参照)、第2オリフィス22のみを流路として利用することで、液柱共振周波数を変更して、シェイク領域(f=f−S、図20参照)における高減衰特性を得る(図20参照)。
切替装置50は、上述したように、ダイヤフラム9を仕切り体20へ押圧する又は仕切り体20から離脱させることで、第1オリフィス21(主液室11Aと副液室11Bとの間)の連通状態を切り替えるための装置であり、図1に示すように、回転軸61を有しその回転軸61を回転駆動する駆動装置60と、その駆動装置60の回転軸61に固着され外周面におねじ72が形成される回転おねじ部70と、その回転おねじ部70のおねじ72に螺合可能なめねじ80bが内周面に形成される直動めねじ部80と、その直動めねじ部80をねじの軸線方向(図1上下方向)へ案内する案内部としての案内溝63とを備える。
切替装置50の駆動装置60は、図1に示すように、有底筒状に構成された固定部材19の底部19a(図8参照)に締結固定されている。固定部材19は、張出平板部19c(図8参照)が筒状金具6と底金具7との間にかしめられ、第2取付け金具2に対して固定されているので、切替装置50は、回転おねじ部70を仕切り体20に対して固定位置(一定位置)で回転させることができる。
この切替装置50によれば、駆動装置60が回転軸61を回転駆動して回転おねじ部70を固定位置で回転させると、かかる回転おねじ部70のおねじ72と直動めねじ部80のめねじ80bとの螺合により、直動めねじ部80に回転が与えられると共に、この回転が与えられた直動めねじ部80が、案内部(案内溝63)により回転が規制されつつねじの軸線方向(図1上下方向)に案内され、仕切り体20に対して前進又は後退される。
これにより、回転おねじ部70を逆回転方向へ回転させ、直動めねじ部80を仕切り体20へ近接する方向(図1上方)へ移動(前進)させることで、直動めねじ部80によりダイヤフラム9を仕切り体20へ押圧して、第1オリフィス21を閉塞すると共に、回転おねじ部70を正回転方向へ回転させ、直動めねじ部80を仕切り体20から離間する方向(図1下方)へ移動(後退)させることで、ダイヤフラム9を仕切り体20から離脱させ、第1オリフィス21を開放することができる(図16〜図19参照)。なお、切替装置50の詳細構成については、図9から図13を参照して後述する。
このように、本実施の形態によれば、案内部63によって、直動めねじ部80の回転を規制して直動(直進運動)のみを許容する構成であるので、直動めねじ部80に押圧されるダイヤフラム9がねじれることを回避することができる。
次いで、図2から図4を参照して、仕切り体20を構成するオリフィス金具30について説明する。図2(a)は、オリフィス金具30の上面図であり、図2(b)は、オリフィス金具30の底面図である。
図3(a)は、図2(a)のIIIa−IIIa線におけるオリフィス金具30の断面図であり、図3(b)は、図2(a)のIIIb−IIIb線におけるオリフィス金具30の断面図であり、図3(c)は、図2(a)のIIIc−IIIc線におけるオリフィス金具30の断面図である。また、図4は、オリフィス金具30の斜視図である。
オリフィス金具30は、後述する底板金具40と共に仕切り体20を構成する部材であり、図2から図4に示すように、アルミニウム合金などの金属材料から軸芯Oを有する略円筒状に形成されている。
オリフィス金具30の軸方向(図3上下方向)上下端には、略フランジ状のオリフィス形成壁31,32がそれぞれ径方向外方へ向けて張り出して形成されており、図3(a)から図3(b)に示すように、それらオリフィス形成壁31,32の対向面間に第2オリフィス22が形成されている。
なお、上述したように、オリフィス形成壁31,32は、筒状金具6の内周を覆うゴム膜3aに密着することで、断面略矩形状の第2オリフィス22を形成する(図1参照)。また、オリフィス金具30の外周面には、図2から図4に示すように、オリフィス形成壁31,32を連結する縦壁33が形成されており、この縦壁33により第2オリフィス22が分断されている。
また、上下のオリフィス形成壁31,32は、図2から図4に示すように、周方向の一部を切り欠いて形成される切欠き31a,32aを備えている。これら切欠き31a,32aは、主液室11A及び副液室11Bにおける第2オリフィス22の出入り口となる開口である。即ち、第2オリフィス22の一端は、切欠き31aを介して第1液室11Aに連通し、第2オリフィス22の他端は、切欠き32aを介して第2液室11Bに連通する(図1参照)。
オリフィス金具30は、図2から図4に示すように、その内周側に蓋部34が設けられており、かかる蓋部34により上面側(図3上側)開口が閉塞されている。この蓋部34は、板厚方向(図3(a)上下方向)に穿設される開口部34aを備える。
開口部34aは、主液室11A側における第1オリフィス21(図1参照)の出入り口となる開口であり、後述する底板金具40がオリフィス金具30の底面側開口から内嵌された場合に、その底板金具40の上面に凹設された凹溝41の始端(底板金具40の上面視において時計周り方向の終端、図5(a)参照)に一致する位置に配設される(図1参照)。
次いで、図5を参照して、仕切り体20を構成する底板金具40について説明する。図5(a)は、底板金具40の上面図であり、図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線における底板金具40の断面図である。
底板金具40は、上述したように、オリフィス金具30の底面側開口から内嵌され、そのオリフィス金具30と共に仕切り体20を構成する部材である。この底板金具40は、図5(a)及び図5(b)に示すように、アルミ合金から軸心Oを有する円盤状に構成され、上面に凹設される凹溝41と、軸心Oに沿って穿設される貫通孔42とを備える。
凹溝41は、上述したオリフィス金具30の蓋部34との間に第1オリフィス21を形成するための凹溝であり(図1参照)、図5(a)に示すように、底板金具40の上面(図5(a)紙面手前側面)において、軸心Oを中心とする円弧状に湾曲して延設されており、終端(底板金具40の上面視において時計周り方向の始端)が貫通孔42に連通されている。なお、凹溝41は、図5(b)に示すように、断面略矩形の溝形状に構成されている。
オリフィス金具30の底面開口から底板金具40が内嵌され、オリフィス金具30(蓋部34)の底面が底板金具40の上面に覆蓋されると(図1参照)、第1オリフィス21の一部を構成する湾曲した流路(凹溝41)が蓋部34と底板金具40との間に形成される。なお、上述したように、この場合には、流路(凹溝41)の始端側に蓋部34の開口部34aが位置して、主液室11A側に第1オリフィス21が連通される。
貫通孔42、上述した凹溝42と共に第1オリフィス21を構成する流路であり、図5(a)及び図5(b)に示すように、凹溝41の終端(底板金具40の上面視において時計周り方向の始端)に連通されると共に、底板金具40を軸心Oに沿って直線状に貫通する貫通孔(即ち、軸心Oに沿って断面積が一定の貫通孔)として形成されている。なお、貫通孔42の断面形状は、図5(a)に示すように、軸心Oを中心とする円形に形成される。
上述したようにオリフィス金具30(蓋部34)の底面が底板金具40の上面に覆蓋されると(図1参照)、貫通孔42の上側(図5(b)上側)開口が蓋部34によって閉塞され、第1オリフィス21の一部を構成する直線状の流路(貫通孔42)が形成される。その結果、第1オリフィス21は、その一端が開口部34aを介して第1液室11Aに連通され、他端が貫通孔42の下側(図5(b)下側)開口を介して第2液室11Bに連通される(図1参照)。
次いで、図6を参照して、挟持部材18について説明する。図6(a)は、挟持部材18の上面図であり、図6(b)は、図6(a)のVIb−VIb線における挟持部材18の断面図である。
挟持部材18は、仕切り体20を仕切り体受け段部3cとの間で挟持するための部材であり(図1参照)、図6(a)及び図6(b)に示すように、鉄鋼材料から軸心Oを有する多段の円筒状に構成されている。
即ち、挟持部材18は、図6(a)及び図6(b)に示すように、上面視円環状の外周平板部18aと、その外周平板部18aの内周側から立設される筒状の第1筒部18bと、その第1筒部18bの上端に連結される上面視円環状の内周平板部18cと、その内周平板部18cの内周側から立設される筒状の第2筒部18dとを備える。
外周平板部18aは、第2取付け金具2(筒状金具6と底金具7との間)にかしめ固定される部位であり、第1筒部18bは、ゴム膜3aの下端部に密着してシールする部位である。また、内周平板部18cは、仕切り体20(オリフィス金具30)の下端面を押圧して保持するための部位であり、その上面側(図6(b)上側)は、オリフィス金具30の下端面に対応する(密着する)平坦面として構成されている。
内周平板部18cには、図6(b)に示すように、板厚方向(図6(b)上下方向)に穿設される開口部18c1を備える。開口部18c1は、副液室11B側における第2オリフィス22(図1参照)の出入り口となる開口であり、図6(a)に示すように、軸心Oを中心として湾曲する上面視長穴形状に形成されている。
ここで、液封入式防振装置100の組み立て時には、挟持部材18の開口部18c1がオリフィス金具30のオリフィス形成壁32に形成された切欠き32a(図2から図4参照)と重なる(一致する位置となる)ように、オリフィス金具30に対する挟持部材18の相対的な周方向位置の位置決めが行われる。
第2筒部18dは、挟持部材18の剛性を高めるための部位であり、図6(b)に示すように、上端が内側(軸心O側)へ折り曲げ形成されている。なお、第2筒部18dの上端には、開口部が開口されている。これにより、ダイヤフラム9との干渉を回避することができる。また、第2筒部18dの外径は、オリフィス金具30の内径よりも若干小さくされ、両者の間に隙間が形成されるように構成されている(図1参照)。これにより、組み立て作業を効率化することができる。
次いで、図7を参照して、ダイヤフラム9について説明する。図7(a)は、ダイヤフラム9の上面図であり、図7(b)は、図7(a)のVIIb−VIIb線におけるダイヤフラム9の断面図である。
ダイヤフラム9は、防振基体3との間に液体封入室11を形成すると共に第1オリフィス21を開閉する役割を担う部位であり(図1及び図17参照)、図7(a)及び図7(b)に示すように、ゴム状弾性体から蛇腹形状を有するゴム膜として形成されると共に、軸心Oに対称な形状に形成されている。
なお、ダイヤフラム9は、鉄鋼材料から上面視円環状に構成される取付け板10に加硫接着されており、上述したように、この取付け板10が筒状金具6と底金具7との間にかしめ固定されることで、第2取付け金具2に取着されている(図1参照)。
ダイヤフラム9は、図7(b)に示すように、断面蛇腹形状のゴム膜として形成され取付け板10側に位置する蛇腹膜部12と、その蛇腹膜部12に連接され軸心O側に位置する押圧膜部13とを備える。
蛇腹膜部12は、主液室11A及び副液室11Bの間で流体が流動する際に弾性変形することで、副液室11Bの体積を変化させる弾性膜である(図16から図19参照)。一方、押圧膜部13は、上述した弾性膜としての機能に加え、第1オリフィス21を開閉する役割を担っている(図16から図19参照)。
押圧膜部13は、切替装置50の直動めねじ部80により仕切り体20の底板金具40に押圧され、その底板金具40の下面における貫通孔42周囲部に当接される部位であり(図1参照)、図7(a)及び図7(b)に示すように、蛇腹膜部12よりも肉厚の円盤状に構成されている。
押圧膜部13は、図7(a)及び図7(b)に示すように、閉塞面13aと、被押圧面13bとを備える。閉塞面13aは、底板金具40の下面における貫通孔42周囲部に当接される平坦面であり(図19参照)、図7(a)に示すように、軸心Oに垂直な面として構成されると共に、貫通孔42よりも大径(略3倍)の円形に構成されている。そのため、押圧膜部13が偏芯した場合でも、貫通孔42の周囲部で不足なく底板金具40に当接できる。
閉塞面13aには、図7(a)及び図7(b)に示すように、中央部に突出部13a1が突設されている。突出部13a1は、貫通孔42に対する閉塞面13aの横ずれを防止するための部位であり、軸心Oを中心とする先細の円柱状に形成されている。押圧膜部13は、この突出部13a1が底板金具40の貫通孔42に嵌り込んだ状態で上下に移動して、第1オリフィス21を開閉する(図16から図19参照)。
被押圧面13bは、切替装置50の直動めねじ部80により押圧される平坦面であり(図16から図19参照)、閉塞面13aと平行な面として構成されている。図7(b)に示すように、被押圧面13bは、直動めねじ部80の押圧面82aより若干小径の円形に構成されると共に、被押圧面13bの外周縁には、蛇腹膜部12が下方へ垂下した状態で接続されている。
これにより、直動めねじ部80の上端部を蛇腹膜部12によって保持できるので(図16から図19参照)、液の流動圧がダイヤフラム9に作用した場合でも、直動めねじ部80からダイヤフラム9が脱落することを抑制して、貫通孔42(第1オリフィス21)を押圧膜部13によって確実に閉塞することができる。
被押圧面13bには、図7(b)に示すように、中央部に凹設部13b1が凹設されている。凹設部13b1は、後述する直動めねじ部80の凸設部82bを受け入れて、押圧面82aに対する被押圧面13bの横ずれを防止するための部位であり、軸心Oを中心とする断面台形の円錐状に形成されている。
即ち、凹設部13b1は、底部(図7(b)上側)が開口部(図7(b)下側)よりも小径の円形に構成されることで、開口部から底部へ向けて傾斜する傾斜面14を備えている。なお、凹設部13b1の底部は、直動めねじ部80に突設される凸設部82b(図13参照)の先端面と略同径の円形とされている。
このように、凹設部13b1は、開口部から底部へ向けて傾斜する傾斜面14を備える構成であるので、直動めねじ部80の押圧面82a(図13参照)がダイヤフラム9を仕切り体20へ押圧する場合には、直動めねじ部80の凸設部82bを凹設部13b1の傾斜面14によって底部へ案内することができる。
これにより、ダイヤフラム9が副液室11B内における液体の流動圧により直動めねじ部80から浮き上がって大きく横ずれした場合でも、直動めねじ部80の凸設部82bがダイヤフラム9の凹設部82bに受け入れられていれば、直動めねじ部80を仕切り体20へ向けて移動(直動)させることで、凸設部82bを凹設部13b1の傾斜面14を利用して底部へ案内して、直動めねじ部80に対するダイヤフラム9の芯出しを行うことができる。
その結果、直動めねじ部80とダイヤフラム9との位置関係を維持することができるので、ダイヤフラム9により第1オリフィス21を確実に閉塞して、所望の特性(流体流動効果)を安定して得ることができる。また、ダイヤフラム9の被押圧面13b以外の部位(蛇腹膜部12)が直動めねじ部80に押圧されて、ダイヤフラム9が破損等することを抑制することができる。
ここで、押圧膜部13の閉塞面13aには、上述したように、軸心Oを中心とする円柱状の突出部13a1が突設されている。即ち、凹設部13b1に対応する位置に突出部13a1が形成されている。これにより、被押圧面13bに凹設部13b1を凹設した場合でも、かかる凹設部13b1により押圧膜部13の一部が局所的に薄肉となることを回避して、押圧膜部13の耐久性の向上を図ることができる。
次いで、図8を参照して、固定部材19について説明する。図8(a)は、固定部材19の上面図であり、図8(b)は、図8(a)のVIIIb−VIIIb線における固定部材19の断面図である。
固定部材19は、切替装置50を定位置に固定するための部材であり(図1参照)、図8(a)及び図8(b)に示すように、鉄鋼材料から軸心Oを有する有底の円筒状に構成されている。
即ち、固定部材19は、図7(a)及び図7(b)に示すように、上面視円形の底部19aと、その底部19aの外周縁から立設される筒状の筒部19bと、その筒部19bの上端に連結される径方向外方へ張り出す張出平板部19cとを備える。
底部19aには、軸心Oを中心として周方向等間隔に分散配置される複数(本実施の形態では3個)の取付け穴19a1と、それら複数の取付け穴19a1の内の一の取付け穴19a1と軸心Oを挟んで対向配置される挿通穴19a2とを備える。
切替装置50の駆動装置60は、取付け穴19a1から挿通された締結ボルトにより底部19aに締結固定され、また、駆動措置60の電力供給線Lは、挿通孔19a2を介して外部へ展開される(図1参照)。
張出平板部19cは、筒状金具6と底金具7との間にかしめ固定される部位である(図1参照)。上述したように、切替装置50の駆動装置60は、張出平板部19cを介して、第2取付け金具2に固定されることで、回転おねじ部70を仕切り体20に対して固定位置(一定位置)で回転させることができる(図1参照)。
このように、固定部材19を有底筒状に構成し、その底部19aに切替装置50(駆動装置60)を締結固定しつつ、電力供給線Lを底部の挿通孔19a2から外部に展開すると共に、後述するように、固定部材19の張出平板部19cを第2取付け具2に固定する構成としたので、これらを一のユニット(切替ユニット)として取り扱うことができる。よって、液封入式防振装置100を組み立てる際(後述するかしめ工程)の作業効率の向上を図ることができる。また、切替装置50を仕切り体20に対して一定位置に固定する構造を簡素化して、製品コストの削減を図ることができる。
次いで、図9から図13を参照して、切替装置50について説明する。図9は、切替装置50の部分断面斜視図である。
切替装置50は、上述したように、ダイヤフラム9を仕切り体20へ押圧する又は仕切り体20から離脱させることで、第1オリフィス21(主液室11Aと副液室11Bとの間)の連通状態を切り替えるための装置であり(図16から図19参照)、図9に示すように、回転軸61を有しその回転軸61を回転駆動する駆動装置60と、その駆動装置60の回転軸61に固着され外周面におねじ72が形成される回転おねじ部70と、その回転おねじ部70のおねじ72に螺合可能なめねじ80bが内周面に形成される直動めねじ部80と、その直動めねじ部80をねじの軸線方向(図9上下方向)へ案内する案内部(案内溝63)とを備えている。
図10(a)は、駆動装置60の上面図であり、図10(b)は、駆動装置60の側面図である。駆動装置60は、電動モータ60a(図14参照)と、その電動モータ60aの回転軸61と、それら各部材を収容し駆動装置60の外形を構成するケース部62とを主に備えている。なお、電動モータ60aの詳細構成は後述する(図14参照)。
回転軸61は、電動モータ60a(図14参照)の回転軸として構成される部材であり、図10(a)及び図10(b)に示すように、鉄鋼材料から円柱状に構成され、ケース部62の上面に開口された開口部から突出されている。この回転軸61の回転中心は、後述する回転おねじ部70及び直動めねじ部80のねじの軸線と同心に構成されている。
ケース部62は、図10(a)及び図10(b)に示すように、樹脂材料から中空の円柱状に形成され、その円柱状体の内部に電動モータ60a(図14参照)を収容すると共に、側面(外周面)の複数箇所(本実施の形態では、周方向等間隔となる4箇所)に案内溝63が凹設されている。
なお、ケース部62は、上面(図10(a)紙面手前側面)と側面とを形成するカップ状の部材と、そのカップ状の部材の下面開口(図10(b)下側)を閉封する板状の部材とを備え、これらがねじにより締結固定されている。
案内溝63は、直動めねじ部80(図9参照)をねじの軸線方向(図10(b)上下方向)へ案内するための案内部であり、図10(a)及び図10(b)に示すように、一対の側壁63aが所定間隔を隔てつつ対向配置されると共に回転軸61の軸心方向(図10(b)上下方向)へ直線状に延設されている。
一対の側壁63aの対向間隔W1は、直動めねじ部80における係合爪84の幅寸法W2(図12(b)参照)と同等か若干大きな寸法値に設定されているので、切替装置50の組み立て状態においては、案内溝63に係合爪84を係合させることができる(図9参照)。
これにより、回転おねじ部70の回転により、直動めねじ部80に回転が与えられた場合には、案内溝63と係合爪84との係合によって、直動めねじ部80の回転を規制しつつ、かかる直動めねじ部80をねじの軸線方向(例えば、図9上下方向)に案内することができる。
なお、案内溝63は、図10(a)に示すように、軸心O方向視において、ケース部63の外形に沿う円環形状の一部を切り出した形状、即ち、軸心Oを中心として円弧状に湾曲した形状に形成されている。後述する直動めねじ部80の系合爪83もこの形状に対応して形成されることで、案内溝63に係合爪83を収容して、限られたスペースを有効に活用することができる。その結果、切替装置50の小型化を図ることができる。
図11(a)は、回転おねじ部70の上面図であり、図11(b)は、回転おねじ部70の側面図であり、図11(c)は、図11(a)のXIc−XIc線における回転おねじ部70の断面図である。
回転おねじ部70は、駆動装置60の回転軸61に固着され、その回転軸61の回転を直動めねじ部80へ伝達するための部材であり(図9参照)、図11(a)から図11(c)に示すように、樹脂材料から軸心Oを有する筒状体として構成されている。
この回転おねじ部70は、固定孔71と、おねじ72と、締結孔73とを備えて構成される。固定孔71は、駆動装置60の回転軸61が内嵌される部位であり、軸心Oに沿って穿設されると共に回転軸61の外径に対応した内径を有する断面円形の貫通孔として構成されている。
おねじ72は、図11(a)から図11(c)に示すように、回転おねじ部70の外面(外周面)に形成されるねじであり、ねじの軸線が軸心Oと一致して構成されている。なお、おねじ72は、上述したように、直動めねじ部80のめねじ80bに螺合され、かかる螺合を介して、回転おねじ部70の回転が直動めねじ部80に伝達される(図9参照)。
締結孔73は、固定孔71に挿通された回転軸61を固定するための六角穴付き止めねじ74が締結されるねじ穴であり、図11(c)に示すように、回転おねじ部70の外面側と固定孔71の内面側とを連通し、軸心Oに直交する貫通孔として構成されている。
よって、六角穴付き止めねじ74が締結孔73に締結され、回転軸61の外面が六角穴付き止めねじ74の先端に押圧されることで、回転軸61が回転おねじ部70に対して固定される。
図12(a)は、直動めねじ部80の上面図であり、図12(b)は、直動めねじ部80の下面図である。また、図13は、図12(a)のXIII−XIII線における直動めねじ部80の断面図である。
直動めねじ部80は、ダイヤフラム9を仕切り体20へ押圧するための部材であり(図1参照)、図12及び図13に示すように、本体部81と、蓋板82と、張出壁83と、係合爪84とを主に備えると共にこれらが樹脂材料から一体に構成されている。
本体部81は、図12及び図13に示すように、軸線Oを有する円筒状に構成される部材であり、めねじ81aを備える。めねじ81aは、図13に示すように、本体部81の内面(内周面)に形成されるねじであり、ねじの軸線が軸心Oと一致して構成されている。
なお、本体部81の肉厚(図13左右方向寸法)は、後述する張出壁83及び係合爪84とほぼ同じか若干厚く(例えば、50%増し)されている。めねじ81aには、上述したように、回転おねじ部70のおねじ72が螺合され、かかる螺合を介して、回転おねじ部70の回転が直動めねじ部80に伝達される(図9参照)。
蓋板82は、図12及び図13に示すように、本体部81の軸心O方向一端側(図13上側)を閉塞する円盤状の部材であり、押圧面82aと、凸設部82bとを備える。押圧面82aは、ダイヤフラム9を押圧するための平坦面であり、軸心Oに直交し上面視円形の面として蓋板82の上面側(図13上側)に形成されている。
凸設部82bは、ダイヤフラム9の被押圧面13bに凹設された凹設部13b1に嵌り込む部位であり(図1参照)、図12(a)及び図13に示すように、押圧面82aから凸設されると共に軸心Oを有する円柱状に形成されている。
なお、凸設部82bは、図13に示すように、押圧面82aから離間するに従って断面積が減少する先細の円柱状に形成されると共に、凸設部82bの先端(図13上側)は、上述した凹設部13b1の底部と同径の円形に構成されている。
上述したように、ダイヤフラム9の被押圧面13bには、凸設部82bを受け入れる凹設部13b1が凹設されているので(図7参照)、主液室11Aから副液室11Bへ流入する液体の流れや副液室11Bから主液室11Aへ流出する液体の流れが流動圧としてダイヤフラム9に作用した場合でも、直動めねじ部80の凸設部82bがダイヤフラム9の凹設部13b1に受け入れられていることで、ダイヤフラム9の横ずれを抑制することができる。
その結果、直動めねじ部80とダイヤフラム9との位置関係を維持することができるので、ダイヤフラム9により第1オリフィス21を確実に閉塞して、所望の特性(流体流動効果)を安定して得ることができる。また、ダイヤフラム9の被押圧面13b以外の部位(即ち、蛇腹膜部12)が直動めねじ部80に押圧されて、ダイヤフラム9が破損等することを抑制することができる。
また、上述したように、ダイヤフラム9の凹設部13b1は、開口部から底部へ向けて傾斜する傾斜面14を備える構成であるので(図7参照)、直動めねじ部80の押圧面82aがダイヤフラム9を仕切り体20へ押圧する場合には、直動めねじ部80の凸設部82bを凹設部13b1の傾斜面14によって底部へ案内することができる。
これにより、ダイヤフラム9が副液室11B内における液体の流動圧により直動めねじ部80から浮き上がって大きく横ずれした場合でも、直動めねじ部80の凸設部82bがダイヤフラム9の凹設部82bに受け入れられていれば、直動めねじ部80を仕切り体20へ向けて移動(直動)させることで、凸設部82bを凹設部13b1の傾斜面14を利用して底部へ案内して、直動めねじ部80に対するダイヤフラム9の芯出しを行うことができる。
その結果、直動めねじ部80とダイヤフラム9との位置関係を維持することができるので、ダイヤフラム9により第1オリフィス21を確実に閉塞して、所望の特性(流体流動効果)を安定して得ることができる。また、ダイヤフラム9の被押圧面13b以外の部位(蛇腹膜部12)が直動めねじ部80に押圧されて、ダイヤフラム9が破損等することを抑制することができる。
更に、本発明によれば、ダイヤフラムの凹設部は、開口部が直動めねじ部の凸設部の外径よりも大径に構成されると共に、底部が開口部よりも小径に構成されることで、開口部から底部へ向けて傾斜する傾斜面を備える構成であるので、直動めねじ部の押圧面がダイヤフラムを仕切り体へ押圧する場合には、直動めねじ部の凸設部を凹設部の傾斜面によって底部へ案内することができる。
これにより、ダイヤフラムが上述した流動圧により直動めねじ部から浮き上がって大きく横ずれした場合でも、直動めねじ部の凸設部がダイヤフラムの凹設部に受け入れられていれば、直動めねじ部を仕切り体へ向けて移動(直動)させることで、凸設部を凹設部の傾斜面を利用して底部へ案内して、直動めねじ部に対するダイヤフラムの芯出しを行うことができるという効果がある。
その結果、直動めねじ部とダイヤフラムとの位置関係を維持することができるので、ダイヤフラムにより第1オリフィスを確実に閉塞して、所望の特性(流体流動効果)を安定して得ることができる。また、ダイヤフラムの被押圧面以外の部位が直動めねじ部に押圧されて、ダイヤフラムが破損等することを抑制することができる。
張出壁83は、本体部81の軸心O方向他端側(即ち、蓋板82と反対側、図13下側)から径方向外方へ向けて張り出す板状の部材であり、図12(a)及び図12(b)に示すように、軸心Oを中心として周方向等間隔となる4か所に形成されている。なお、張出壁83の張り出し方向は、軸心Oに直交する方向(図13左右方向)である。
係合爪84は、直動めねじ部80をねじの軸線方向(図13上下方向)へ案内するために案内部63に係合される部位であり、図12(b)及び図13に示すように、張出壁83からケース部62側(図13下側、図9参照)へ向けて軸線Oと平行に垂下(延設)されている。
係合爪84の幅寸法W2は、上述したように、案内部63における一対の側壁63aの対向間隔W1と同等か若干小さな寸法値に設定されているので、切替装置50の組み立て状態においては(図9参照)、係合爪84が案内溝63に係合されることで、直動めねじ部80の回転が規制され、かかる直動めねじ部80がねじの軸線方向(例えば、図9上下方向)に案内される。
なお、係合爪84は、図12bに示すように、軸心O方向視において,
直動めねじ部80の外形に沿う円環形状の一部を切り出した形状、即ち、軸心Oを中心として円弧上に湾曲した形状に形成されている。上述したように、ケース部63の案内溝63もこの形状に対応して形成されているので、案内溝63に係合爪83を収容して、限られたスペースを有効に活用することができる。その結果、切替装置50の小型化を図ることができる。
ここで、図9に戻って説明する。本実施の形態における液封入式防振装置100によれば、切替装置50は、ケース部62の外周面に凹設されねじの軸線方向に沿って延びる案内溝63を案内部とする構成なので、駆動装置60の構成部品(電動モータ60aなど)を収容する部材と、直動めねじ部80を案内(回転を規制しつつ、ねじの軸線方向に案内)する部材との二つの部材をケース部62に兼用させることができる。よって、部品点数を削減することができ、その分、部品コスト・製造コストの削減を図ることができると共に、液封入式防振装置100全体としての小型化を図ることができる。
また、本実施の形態における液封入式防振装置100によれば、切替装置50は、直動めねじ部80が、円筒状の本体部81と、その本体部81のねじの軸線方向他端側(図9下側)からケース部62の上面に沿って外方へ張り出す板状の張出壁83と、その張出壁83からケース部62へ向けて延設される係合爪84とを備え、その係合爪84を案内溝63に係合させる構成である。
よって、直動めねじ部80をねじの軸線方向へ案内可能としつつ、本体部81の外周側(即ち、仕切り体20と張出壁83との対向間)にスペースを十分に形成することができる。即ち、液封入式防振装置100の限られた内部空間を有効に活用して、ダイヤフラム9が変位するためのスペース(空間)を確保することができ、その結果、ダイヤフラム9が他部材と接触して、破損等することを抑制することができる。
また、直動めねじ部80を案内(回転を規制しつつ、ねじの軸線方向へ案内)するための部材は、第2取付け具2(例えば、底金具7の内面)に形成したり装着するなど別途設けることも可能であるが、この場合には、部品点数が増加して構造が複雑化することで、組み立て作業が煩雑になり、製造コストが増加するという問題がある。
これに対して、本実施の形態では、かかる案内のための部材を、上述したように、駆動装置60のケース部62が兼用する構成であるので、駆動装置60と回転おねじ部70と直動めねじ部80とが一体化された一のユニット(切替ユニット)として切替装置50を構成することができる。よって、液封入式防振装置100の組み立て作業においては、切替装置50を予め組み立てておき、一のユニットとして組み込むことができるので、組み立て作業を簡素化して、製造コストの削減を図ることができる。
また、ここで、切替手段50は、本実施の形態の場合とは逆に、めねじ側を固定位置で回転させ、おねじ側を直動させる構成も可能であるが、めねじを固定位置で回転させることは、その軸受け構造や駆動構造が複雑となり、部品コスト・製造コストの増加や信頼性の低下を招く。
これに対し、本実施の形態における切替装置50によれば、図9に示すように、おねじ側(回転おねじ部70)を固定位置で回転させ、めねじ側(直動めねじ部80)を直動させる構成であるので、おねじ72を固定位置で回転させるための構造を簡素化して、その分、部品コスト・製造コストの削減と信頼性の向上とを図ることができる。
また、本実施の形態における切替装置50によれば、おねじ72とめねじ81aとの螺合を利用して、おねじ72(回転おねじ部70)の回転運動をめねじ81a(直動めねじ部80)の直進運動に変換する場合に、直進運動するめねじ81a(直動めねじ部80)の一端側に押圧面82aを設けてダイヤフラム9を押圧する構成であるので、直線運動する部材と、ダイヤフラム9を押圧する部材との二つの部材を直動めねじ部80に兼用させることができる。
よって、直進運動する部材とダイヤフラム9を押圧する部材との間に直進運動を伝達するための機構を別部材として設ける必要がないので、部品点数を削減することができ、その分、部品コスト・製造コストの削減を図ることができると共に、液封入式防振装置100全体としての小型化を図ることができる。
次いで、図14を参照して、制御装置110について説明する。図14は、制御装置110の電気的構成を示したブロック図である。制御装置110は、図14に示すように、CPU111、ROM112及びRAM1173を備え、これらはバスライン114を介して入出力ポート115に接続されている。また、入出力ポート115には、回転数検出装置120等の複数の装置が接続されている。
CPU111は、バスライン114により接続された各部を制御する演算装置である。ROM112は、CPU111により実行される制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリであり、RAM113は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。
なお、ROM112には、図20に図示されるフローチャート(切替制御処理)のプログラムが格納されている。また、RAM113には、閉塞フラグ113aが設けられている。
閉塞フラグ113aは、第1オリフィス21が閉塞されているか否かを示すフラグである。即ち、閉塞フラグ113aは、直動めねじ部80がダイヤフラム9を仕切り体20に押圧して、第1オリフィス21が閉塞された場合(閉塞状態、図18及び図19参照)にオンされる一方(図15のS11)、ダイヤフラム9(直動めねじ部80)が仕切り体20から離間して、第1オリフィス21が開放された場合(開放状態、図16及び図19参照)にオフされる(図15のS6)。
回転数検出装置120は、エンジン(図示せず)の回転数を検出すると共に、その検出結果をCPU111に出力するための装置であり、回転数検出センサ(図示せず)と、その回転数検出センサの検出結果を処理してCPU111に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
車速検出装置130は、路面に対する車両の対地速度を検出すると共に、その検出結果をCPU111に出力するための装置であり、車速検出センサ(図示せず)と、その車速検出センサの検出結果を処理してCPU111に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
駆動装置60は、上述したように、回転おねじ部70に回転駆動力を付与するための装置であり、回転おねじ部70(即ち、回転軸61)に回転駆動力を付与する電動モータ60aと、その電動モータ60aの回転数を検出するロータリーエンコーダ60bと、そのロータリーエンコーダ60bの検出結果を処理してCPU111に出力すると共にモータ60aをCPU111からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを備えている。
ここで、駆動装置60は、電動モータ60aの回転軸61にロータリーエンコーダ60bを接続することで、いわゆるエンコーダ付モータを構成し、ロータリーエンコーダ60bの検出信号に基づいて、回転軸61の絶対的な位置(即ち、原点)の検出と、その原点からの回転数(回転量)の制御とを行うことができるように構成されている。
即ち、回転軸61の回転位置を、原点と、その原点から必要回転数(本実施の形態では3回転)だけ回転した位置(以下、「閉塞位置」と称す。)との2位置に位置させることができるように構成されている。
なお、本実施の形態では、回転軸61の回転位置を原点に位置させると、ダイヤフラム9(直動めねじ部80)を仕切り体20から離間させて、第1オリフィス21が開放された開放状態(図16及び図17参照)を形成すると共に、回転軸61の回転位置を閉塞位置に位置させると、直動めねじ部80がダイヤフラム9を仕切り体20に押圧して、第1オリフィス21が閉塞された閉塞状態(図18及び図19参照)を形成するように構成されている。
よって、CPU111は、後述するように(図15参照)、第1オリフィス21を開放する必要があると判断した場合には、回転軸61の回転位置を原点に位置させると共に(S4:Yes及びS5)、第1オリフィス21を閉塞させる必要があると判断した場合には、回転軸61の回転位置を閉塞位置に位置させる(S9:Yes及びS10)。
なお、本実施の形態では、回転軸61の回転位置を原点から閉塞位置へ位置させる際の回転方向を逆回転方向と定義し、その逆回転方向と反対の回転方向、即ち、回転軸61の回転位置を閉塞位置から原点へ位置させる際の回転方向を正回転方向と定義する。
よって、請求項1に記載した「回転おねじ部を正回転方向又は逆回転方向へ回転させる」ことは、本実施の形態では、回転軸61を逆回転方向へ回転させることに対応し、請求項1に記載した「回転おねじ部を逆回転方向又は正回転方向へ回転させる」ことは、回転軸61を正回転方向へ回転させることに対応する。
次いで、図15を参照して、切替制御処理について説明する。図15は、切替制御処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置100の電源が投入されている間、CPU111によって繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理であり、切替装置50を制御することで、直動めねじ部80によるダイヤフラム9の押圧状態を変更して、主液室11Aと副液室11Bとの間の連通状態を切り替えることで、アイドル特性とシェイク特性との2つの動的特性の両立を図る。
なお、この切替制御処理(図15)の説明に際しては、主液室11Aと副液室11Bとの間の連通状態およびアイドル特性とシェイク特性との2つの動的特性を説明するために、図16から図20を適宜参照する。
図16は、液室11の連通状態を模式的に示す液封入式防振装置100の模式図であり、図17は、液封入式防振装置100の部分拡大断面図である。なお、図16では、仕切り体20と直動めねじ部80との間に介在するダイヤフラム9の図示を省略している。
これら図16及び図17に示す状態は、回転軸61の回転位置が原点に位置することで、ダイヤフラム9(直動めねじ部80)が仕切り体20から離間した位置にあり、第1オリフィス21が開放された状態に対応する。従って、主液室11Aと副液室11Bとの間は、第1オリフィス21及び第2オリフィス22の2本の流動経路A,Bにより連通された状態となる。
なお、図16において、符号Aで示す2点鎖線は、第2オリフィス22を介して主液室11Aから副液室11Bへ(又はその逆へ)流動する流体の流動経路を示し、符号Bで示す2点鎖線は、第1オリフィス21を介して主液室11Aから副液室11Bへ(又はその逆へ)流動する流体の流動経路を示している。
図18は、液室11の連通状態を模式的に示す液封入式防振装置100の模式図であり、図19は、液封入式防振装置100の部分拡大断面図である。なお、図18では、図16の場合と同様に、仕切り体20と直動めねじ部80との間に介在するダイヤフラム9の図示を省略している。
これら図18及び図19に示す状態は、回転軸61の回転位置が閉塞位置に位置することで、直動めねじ部80がダイヤフラム9を仕切り体20へ押圧する位置にあり、第1オリフィス21が閉塞(遮断)された状態に対応する。従って、主液室11Aと副液室11Bとの間は、第2オリフィス22の1本の流動経路Aのみにより連通された状態となる。
なお、図18において、符号Aで示す2点鎖線は、第2オリフィス22を介して主液室11Aから副液室11Bへ(又はその逆へ)流動する流体の流動経路を示し、符号Bで示す2点鎖線は、第1オリフィス21を介して主液室11Aから副液室11Bへ流動する流体の流動経路を示している。但し、図18では、第1オリフィス21が遮断されているため、主液室11Aと副液室11Bとの間は第2オリフィス22(流動経路A)を介してのみ連通されている。
このように、図16及び図17に示す状態では、第1オリフィス21及び第2オリフィス22の2本の流動経路A,Bが利用されるのに対し、図18及び図19に示す状態では、流動経路が第2オリフィス22による1本の流動経路Aのみとなり、流動経路全体としての断面積と流路長さとが異なるため、これら両状態(連通状態と遮断状態と)における液柱共振を異なる周波数領域で発生させることができる(図20参照)。
図20は、液封入式防振装置100の動的特性を示すグラフであり、横軸が入力振動の周波数fに、縦軸が貯蔵ばね定数Kd及び減衰係数Cに、それぞれ対応する。
なお、図20において、一点鎖線で図示し符号「A+B」で示す貯蔵ばね定数Kd−I及び減衰係数C−Iは、主液室11Aと副液室11Bとが第1オリフィス21及び第2オリフィス22の2本の流動経路A,Bにより連通された状態(即ち、ダイヤフラム9(直動めねじ部80)が仕切り体20から離間した図16及び図17の状態)での動的特性(アイドル状態を想定し、入力振幅を±0.05mmに固定し周波数を変化させた時の貯蔵ばね定数Kd及び減衰係数C)に対応する。
一方、図20において、実線で図示し符号「A」で示す貯蔵ばね定数Kd−S及び減衰係数C−Sは、主液室11Aと副液室11Bとが第2オリフィス22の1本の流動経路Aのみにより連通された状態(即ち、直動めねじ部80がダイヤフラム9を仕切り体20に押圧する図18及び図19の状態)での動的特性(シェイク状態を想定し、入力振幅を±0.5mmに固定し周波数を変化させた時の貯蔵ばね定数Kd及び減衰係数C)に対応する。
図15に戻って説明する。CPU111は、切替制御処理に関し、まず、エンジン回転数が閾値以上であるかを判断する(S1)。なお、エンジン回転数が閾値以上であるか否かは、回転数検出装置120(図14参照)から入力される検出結果と、ROM112(図14参照)に記憶される基準回転数とに基づいて判断する。
また、ROM112に記憶される基準回転数は、アイドル時におけるエンジン回転数に所定の変動分(例えば、エアコン用コンプレッサーのオン・オフに起因する変動分など)を考加算したエンジン回転数であり、本実施の形態では、基準回転数が700rpm(=アイドリング時回転数600rpm+変動分回転数100rpm)に設定されている。CPU111は、S1の処理により、車両の状態がアイドル中であるか否かを判断することができる。
ここで、図20を参照して、液封入式防振装置100に要求される防振性能(動的特性)について説明する。アイドル振動の入力(一般的には、20Hz〜40Hzの周波数領域における入力振幅±0.05mm程度の振動であり、本実施の形態では、周波数f−I=30Hz)には低動ばね特性(即ち、貯蔵ばね定数Kdの値が小さいこと)が要求される一方、シェイク振動の入力(一般的には、10Hz〜20Hzの周波数領域における入力振幅±0.5mm程度の振動であり、本実施の形態では、f−S=15Hz)には高減衰特性(即ち、減衰係数Cの値が大きいこと)が要求される。
本実施の形態では、第1オリフィス21及び第2オリフィス22の2本のオリフィスを設け、アイドル振動の入力に対しては、第1オリフィス21及び第2オリフィス22の2本の流動経路A,Bにおける液体流動効果(液柱共振)を利用して(図16及び図17参照)、アイドル領域(f−I=30Hz)における貯蔵ばね定数Kd−Iの値を小さくする(低動ばね特性とする)ことで(図20の「A+B」)、アイドル時の振動の伝達を下げる。
一方、シェイク振動の入力に対しては、第1オリフィス21の流動経路Bは遮断状態とし、第2オリフィス22の流動経路Aにおける液体流動効果(液柱共振)のみを利用して(図18及び図19参照)、シェイク領域(f−S=15Hz)における減衰係数C−Sの値を大きくする(高減衰特性とする)ことで(図20の「A」)、シェイク時の振動を減衰させる。
そこで、本実施の形態では、後述するように、アイドル時には、第1オリフィス21が連通状態となるようにダイヤフラム9(直動めねじ部80)を仕切り体20から離間した位置に配置して、アイドル時(f=f−I)において低動ばね特性を得る一方で、アイドルが終了すると(即ち、車両の走行中は)、第1オリフィス21が遮断状態となるように直動めねじ部80でダイヤフラム9を仕切り体20へ押圧して、シェイク時(f=f−S)の高減衰特性を得る。
図15に戻って説明する。S1の処理において、エンジン回転数が閾値以上ではないと判断される場合には(S1:No)、車両は走行しておらず、アイドル中と判断できるので、アイドル領域(f=f−I)における低動ばね特性を得る(貯蔵ばね定数Kdの値を下げる)べく、第1オリフィス21及び第2オリフィス22の2本の流動経路A,Bで主液室11A及び副液室11Bを連通させる。
即ち、この場合(S1:No)には、まず、第1オリフィス21の開閉状態を確認するべく、閉塞フラグ113a(図14参照)がオフであるかを判断する(S2)。なお、上述したように、閉塞フラグ113aは、第1オリフィス21が閉塞された場合(閉塞状態、図18及び図19参照)にオンされる一方、第1オリフィス21が開放された場合(開放状態、図16及び図19参照)にオフされる。
よって、S2の処理において、閉塞フラグ113aがオフであると判断される場合には(S2:Yes)、第1オリフィス21が既に開放された状態にあり(即ち、第1オリフィス21及び第2オリフィス22の2本の流動経路A,Bが開放状態にある)、切替装置50を駆動して、主液室11A及び副液室11Bの間の連通状態(即ち、第1オリフィス21の開閉状態)を切り替える必要がない。従って、この場合(S2:Yes)には、この切替制御処理を終了する。
一方、S2の処理において、閉塞フラグ113aがオフではない(即ち、オンである)と判断される場合には(S2:No)、第1オリフィス21が閉塞された状態にあり、第2オリフィス22による1本の流動経路Aのみが開放状態にあるため、第1オリフィス21及び第2オリフィス22の2本の流動経路A,Bが開放された状態とするべく、第1オリフィス21を開放状態に切り替える必要がある。
よって、この場合(S2:No)には、切替装置50における駆動装置60(図9参照)を駆動制御して、第1オリフィス21を開放状態に切り替える。
なお、上述したように、駆動装置60は、回転軸61の回転位置を閉塞位置に位置させることで、直動めねじ部80でダイヤフラム9を仕切り体20に押圧して、第1オリフィス21が閉塞された閉塞状態(図18及び図19参照)を形成すると共に、回転軸61の回転位置を原点(閉塞位置から正回転方向へ必要回転数(3回転)だけ回転した位置)に位置させることで、ダイヤフラム9(直動めねじ部80)を仕切り体20から離間させて、第1オリフィス21が開放された開放状態(図16及び図17参照)を形成するように構成されている。
今回は、第1オリフィス21を開放する必要があると判断された場合(S2:No)であるので、CPU111は、閉塞位置にある回転軸61を原点に位置させるべく、まず、電動モータ60aの正回転方向への駆動を開始し(S3)、回転軸61の回転位置が原点に位置するまで待機する(S4:No)。
そして、回転軸61の回転位置が原点に位置したと判断した場合に(S4:Yes)、電動モータ60aの駆動を停止する(S5)。これにより、ダイヤフラム9(直動めねじ部80)を仕切り体20から離間させて、第1オリフィス21が開放された開放状態(図16及び図17参照)を形成することができる。
よって、主液室11Aと副液室11Bとが第1オリフィス21と第2オリフィス22との2本の流動経路A,Bを介して連通されるので、かかる2本の流動経路A,Bによる液体流動効果(液柱共振)を利用して、図20に示すように、アイドル領域(f=f−I)における貯蔵ばね定数Kd−Iの値を小さくする(低動ばね特性とする)ことができる。その結果、アイドル時の振動の伝達を下げることができる。
S5の処理の後は、閉塞フラグ113aをオフして、第1オリフィス21が開放状態にあることを示した後、この切替制御処理を終了する。
一方、S1の処理において、エンジン回転数が閾値以上であると判断される場合には(S1:Yes)、車両はアイドル中ではなく、走行中であると判断できるので、シェイク領域(f=f−S)における高減衰特性を得る(減衰係数Cの値を大きくする)べく、第1オリフィス21を閉塞して、第2オリフィス22による1本の流動経路Aのみで主液室11A及び副液室11Bを連通させる。
即ち、この場合(S1:Yes)には、まず、第1オリフィス21の開閉状態を確認するべく、閉塞フラグ113aがオンであるかを判断する(S7)。なお、上述したように、閉塞フラグ113aは、第1オリフィス21が閉塞された場合(閉塞状態、図18及び図19参照)にオンされる一方、第1オリフィス21が開放された場合(開放状態、図16及び図19参照)にオフされる。
よって、S7の処理において、閉塞フラグ113aがオンであると判断される場合には(S7:Yes)、第1オリフィス21が既に閉塞された状態にあり(即ち、第2オリフィス22による1本の流動経路Aのみが開放状態にある)、切替装置50を駆動して、主液室11A及び副液室11Bの間の連通状態(即ち、第1オリフィス21の開閉状態)を切り替える必要がない。従って、この場合(S7:Yes)には、この切替制御処理を終了する。
一方、S7の処理において、閉塞フラグ113aがオンではない(即ち、オフである)と判断される場合には(S7:No)、第1オリフィス21が開放された状態にあり、第1オリフィス21及び第2オリフィス22の2本の流動経路A,Bが開放状態にあるため、第2オリフィス22による1本の流動経路Aのみが開放された状態とするべく、第1オリフィス21を閉塞状態に切り替える必要がある。
よって、この場合(S7:No)には、切替装置50における駆動装置60(図9参照)を駆動制御して、第1オリフィス21を閉塞状態に切り替える。
なお、上述したように、駆動装置60は、回転軸61の回転位置を原点に位置させることで、第1オリフィス21が開放された開放状態(図16及び図17参照)を形成すると共に、回転軸61の回転位置を閉塞位置(原点から逆回転方向へ必要回転数(3回転)だけ回転した位置)に位置させることで、直動めねじ部80でダイヤフラム9を仕切り体20に押圧して、第1オリフィス21が閉塞された閉塞状態(図18及び図19参照)を形成するように構成されている。
今回は、第1オリフィス21を閉塞する必要があると判断された場合(S7:No)であるので、CPU111は、原点にある回転軸61を閉塞位置に位置させるべく、まず、電動モータ60aの逆回転方向への駆動を開始し(S8)、回転軸61の回転位置が閉塞位置に位置するまで待機する(S9:No)。
そして、回転軸61の回転位置が閉塞位置に位置したと判断した場合には(S9:Yes)、電動モータ60aの駆動を停止する(S10)。これにより、直動めねじ部80がダイヤフラム9を仕切り体20に押圧して、第1オリフィス21が閉塞された閉塞状態(図16及び図17参照)を形成することができる。
よって、主液室11Aと副液室11Bとが第2オリフィス22による1本の流動経路Aのみを介して連通されるので、かかる流動経路A(第2オリフィス21)による液体流動効果(液柱共振)を利用して、図20に示すように、シェイク領域(f=f−S)における減衰係数C−Sの値を大きくする(高減衰特性とする)ことができる。その結果、車両走行に伴う振動の減衰を図ることができる。
S11の処理の後は、閉塞フラグ113aをオンして、第1オリフィス21が閉塞状態にあることを示した後、この切替制御処理を終了する。
以上のように、本実施の形態における液封入式防振装置100によれば、駆動装置60(回転おねじ部70)の回転運動を直動めねじ部80の直進運動(直動)に変換して、かかる直動めねじ部80の押圧面82aによりダイヤフラム9の押圧膜部13を仕切り体20(底板金具40)へ押圧すると共に(図19参照)、直動めねじ部80を後退させてダイヤフラム9の押圧膜部13を仕切り体20(底板金具40)から離脱させる構成であるので、従来品のようにダイヤフラム9を仕切り体20へ押圧するための付勢部材(弾性ばね)を不要とすることができる。よって、従来品のように付勢部材の付勢に抗してダイヤフラム9を仕切り体20から離脱させる必要がないので、駆動装置60に必要とされる駆動力を抑制して、その分、駆動装置60を小型化(低容量化)することができる。
また、このように、本実施の形態における液封入式防振装置100によれば、回転おねじ部70のおねじ72と直動めねじ部80のめねじ81aとのねじの螺合を利用する構成であるので、回転運動を直進運動に変換して、直動めねじ部80をねじの軸線方向へ移動(前進及び後退)させることができるだけでなく、ねじのくさび力を利用して、その力を押圧力として発揮させることができるので、駆動装置60が小型のもの(出力が小さいもの)であっても、直動めねじ部80の押圧面82でダイヤフラム9の押圧膜部13を仕切り体20(底板金具40)へ強固に押圧することができる。
その結果、振動入力時の液圧によってダイヤフラム9を仕切り体20から押し戻す力が発生した場合でも、かかるダイヤフラム9を仕切り体20に強固に押圧して、第1オリフィス21が閉塞された状態を確実に維持することができる。
即ち、本実施の形態における液封入式防振装置100によれば、振動入力時の液圧により、ダイヤフラム9が押し戻されて、第1オリフィス21が不用意に開放されることを回避することができるので、シェイク時における所望の特性(シェイク領域(f=f−S)における高減衰特性)を確実に発揮させることができる(図20)。また、シェイク領域は、大振幅の振動が入力され、液圧が高圧となる領域であるので、第1オリフィス21の閉塞状態を確実に維持できる上記の構成が特に有効となる。
また、直動めねじ部80は、案内部63により回転が規制され直動(直進運動)のみが許容される構成であるので、上述のように、回転運動を直進運動に変換して、ねじのくさび効果を利用した高い押圧力を確保しつつも、直動めねじ部80が回転しないので、かかる直動めねじ部80に押圧されるダイヤフラム9がねじれることを回避することができる。
これにより、ダイヤフラム9にしわが形成されて、その耐久性の低下を招くという不具合や、仕切り体20に押圧された際にしわの分だけ隙間が形成されて、第1オリフィス21を確実に閉塞することができず、所望の動的特性が得られなくなるという不具合を抑制することができる。
なお、従来品では、使用による経年劣化により、付勢部材(弾性ばね)のばね定数が低下して、ダイヤフラムを仕切り体へ強固に押圧することができなくなる恐れがあるところ、上述のように、本実施の形態における液封入式防振装置100によれば、回転おねじ部70と直動めねじ部80とのねじの螺合を利用する構成であるので、ダイヤフラム9を仕切り体20へ押圧する押圧力を長期にわたって安定して発揮することができる。
次いで、上述のように構成された液封入式防振装置100の組み立て方法について、図1から図19の各図を参照して説明する。液封入式防振装置100の組み立ては、まず、第1取付け金具1及び筒状金具6が配置された加硫型内で防振基体3を加硫成形することで、これら各金具1,6が防振基体3によって連結された加硫部品(図1参照)を成形する(加硫工程)。
また、加硫工程とは別の工程として、オリフィス金具30(図2から図4参照)及び底板金具40(図5参照)を液中に沈め、これら両金具30,40の空気(エア)抜きを行った後、オリフィス金具30の下側開口(図3(a)下側開口)から底板金具40を内嵌圧入することで、仕切り体20を組み立てる(仕切り体組立工程)。
そして、仕切り体組立工程において組み立てた仕切り体20を、液中において、加硫工程で加硫成形した加硫部品の内部へ筒金具6の下側開口から(図1下側開口)から挿入する(液中組立工程)。
更に、液中組立工程においては、液中において、オリフィス金具30の切欠き32a(図2から図4参照)に対して開口部18c1を位置合わせした状態で挟持部材18(図6参照)を配置すると共に、ダイヤフラム9(図7参照)を配置する(図1参照)。
また、これら各工程とは別の工程として、駆動装置60の回転軸61に回転おねじ部70を六角穴付き止めねじ74により固着させ、その回転おねじ部70を回転駆動して直動めねじ部80内へ螺進させることで、直動めねじ部80を装着して、切替装置50を組み立てると共に(図9から図13参照)、固定部材19(図8参照)に駆動装置60を締結固定して、切替装置50と固定部材19とが一体化された切替ユニットを組み立てる(切替ユニット組立工程)。
上述したように、本実施の形態における液封入式防振装置100によれば、直動めねじ部80を案内する案内部をケース部62が兼用する構成であるので(図9参照)、切替装置50を一のユニットとして構成することができる。よって、後述するかしめ工程においては、切替装置50を予め組み立てておき、一のユニット(固定部材19と一体化された切替ユニット)として組み込むことができるので、組み立て作業を簡素化して、製造コストの削減を図ることができる。
なお、切替ユニット組立工程内では、電動モータ60aの回転軸61を回転不能となる位置(即ち、回転おねじ部70の上面が直動めねじ部80の蓋板82に当接する位置)まで逆回転方向へ一旦回転させた後、正回転方向へ所定回転だけ回転させ、回転軸61の回転位置を原点に位置させる位置決め行程を行う。
そして、液中組立工程において組み立てた第1組立品を液外に取り出し、切替ユニット組立工程において組み立てた切替ユニットを第1組立品に対して配置すると共に、底金具7を配置し、その底金具7の挿通孔7bに電力供給線Lを挿通させた後、筒金具6の端部のかしめ加工を行う(かしめ工程)。
なお、上述したように、切替ユニット組立工程では、回転軸61を原点に位置させる位置決め行程を行っているので、かしめ工程では、直動めねじ部80の突出量が小さい状態で切替ユニットを第1組立品に対して配置することができるので、副液室11Bへの空気(エア)の侵入を防止できる。即ち、直動めねじ部80の突出量が大きい状態で第1組立品に対して配置すると、その直動めねじ部80がダイヤフラム9を押圧して、ダイヤフラム9の位置ずれを引き起こし、副液室11Bへの空気の侵入を招く。これに対し、上述の構成により、ダイヤフラム9の位置ずれを抑制して、空気の侵入を抑制できる。
かしめ工程の後は、かしめ加工後の組み立て品に対して、スタビライザ金具8を筒金具6にかしめ固定することで、液封入式防振装置100の組み立てが完了する(図1参照)。なお、底金具7の挿通孔7bには、電力供給線Lの挿通後であって、かしめ工程の前または後に、封止剤が充填される。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法・角度など)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
また、上記実施の形態で上げた材質は一例であり、他の材質を採用することは当然可能である。例えば、樹脂材料から構成される上述した各部品をアルミ合金により構成しても良く、或るいは、アルミ合金から構成される上述した各部品を樹脂材料から構成しても良い。
上記実施の形態では、切替機構50の制御(即ち、第1オリフィス21の開閉状態の切り替え)をエンジンの回転数に基づいて実行する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の状態に基づいて実行することは当然可能である。他の状態としては、例えば、車速が例示される。即ち、車速検出装置130(図14参照)により検出される車速が時速0km又は所定の基準値以下であれば、上述したアイドル時と判断して、第1オリフィス21を開放状態とし、車速が所定の基準値を超えていれば、上述したシェイク時と判断して、第1オリフィス21を閉塞させるように切り替えても良い。
上記実施の形態では、電動モータ60aの回転軸61に回転おねじ部70を直接接続する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものでなく、電動モータ60aの回転軸61と回転おねじ部70との間に減速機構を介設することは当然可能である。減速機構を介設させることで、ダイヤフラム9を仕切り体20へ押圧する押圧力をより強くすることができる。なお、本実施の形態のように、回転軸61に回転おねじ部70を直接接続する構成であれば、第1オリフィス21を開閉する際の応答速度を高速化することができる。
上記実施の形態では、ダイヤフラム9の被押圧面13bと直動めねじ部80の押圧面82aとが分離可能に構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これら被押圧面13bと押圧面82aとを接着剤により接着して構成しても良い。これにより、直動めねじ部80からダイヤフラム9が脱落することを防止して、ダイヤフラム9が横ずれして蛇腹膜部12が押圧面82aにより仕切り体20に押圧されるという不具合を抑制することができる。なお、被押圧面13bと押圧面82aとの間を非接着とする本実施の形態における構成であれば、接着に要する工数や材料を削減して、その分、製品コストを削減することができる。
上記実施の形態では、ダイヤフラム9と底金具7との間に形成される空間(空気室)を密閉空間として構成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、外部と連通する開放型の空間として構成することは当然可能である。
上記実施の形態では、駆動装置60における電動モータ60aの制御を回転数(ロータリーエンコーダ60bの検出結果)に基づいて行う場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の制御方法を採用することは当然可能である。他の制御方法としては、駆動時間で制御するものや、駆動トルクで制御するものが例示される。
例えば、駆動時間で制御する場合には、S3又はS8の処理において電動モータ60aの駆動を開始した後に計時を開始し、S4又はS9の処理において所定時間が経過するまで待機しつつ所定時間が経過した後に、直動めねじ部80が上下方向の可動限界位置まで移動した(即ち、直動おねじ部80がダイヤフラム9を仕切り体20に押圧した又は直動おねじ部80が仕切り体20から所定間隔だけ離間した)と仮定して、S5又はS10の処理において電動モータ60aの駆動を停止するように構成すれば良い。これにより、ロータリーエンコーダ60bを省略して、製品コストの削減を図ることができる。
また、例えば、駆動トルクで制御する場合には、トルクセンサを回転軸61に設け、S3又はS8の処理において電動モータ60aの駆動を開始した後に、S4又はS9の処理において駆動トルクが所定トルクに達するまで待機しつつ所定トルクに達した後に、直動めねじ部80が上下方向の可動限界位置まで移動した(即ち、直動おねじ部80がダイヤフラム9を仕切り体20に押圧した又は直動おねじ部80が回転おねじ部70かケース部63に当接した)と仮定して、S5又はS10の処理において電動モータ60aの駆動を停止するように構成すれば良い。これにより、直動めねじ部80がダイヤフラム9を仕切り体20に十分に押圧する前や仕切り体20から十分に離間する前に電動モータ60aの駆動が停止されることを回避して、第1オリフィス21の開放又は閉塞を不足なく確実に行うことができる。
上記実施の形態では説明を省略したが、直動めねじ部80における凸設部82bの凸設高さをダイヤフラム9における凹設部13b1の凹設深さよりも大きな寸法値に構成しても良い。具体的には、凸設部82bが押圧面82aから軸心O方向(図13上下方向)へ凸設される凸設高さを、凹設部13b1が被押圧面13bに軸心O方向(図7(b)上下方向)に凹設される凹設深さよりも大きくする。
これにより、直動めねじ部80の押圧面82aが、ダイヤフラム9の被押圧面13bに当接されて、かかるダイヤフラム9の押圧膜部13を仕切り体20との間で挟持して押圧する場合には、凸設部82bが凹設部13b1の底部を上方(仕切り体20側)へ押し上げて、押圧膜部13の一部を第1オリフィス21(貫通孔42)内へ押し込むので、押圧膜部13の閉塞面13aを第1オリフィス21(貫通孔42)の周縁に沿って密着させることができる。その結果、第1オリフィス21の閉塞の確実化を図ることができる。