以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施の形態における液封入式防振装置100の断面図である。
この液封入式防振装置100は、自動車のエンジンを支持固定し、そのエンジンから車体フレームへ伝達される振動を低減するための防振装置であり、図1に示すように、エンジン側に取り付けられる第1取付け金具1と、エンジン下方の車体フレーム側に取付けられる筒状の第2取付け金具2と、これらを連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体3とを主に備えている。
第1取付け金具1は、アルミニウム合金などから略円柱状に形成され、図1に示すように、その上面(図1上側面)には、エンジン側の取付けボルトが締結される締結孔1aが凹設されている。また、締結孔1aの側方には、位置決め凸部1bが凸設されている。また、第1取付け金具1の下方部分は、外径方向にフランジ状に張り出して形成されており、この張り出し部分は、防振基体3内に埋設されている。
第2取付け金具2は、防振基体3が加硫成形される筒状金具6と、その筒状金具6の下方に取着される底金具7とを備えて構成されている。図1に示すように、筒状金具6は上広がりの開口を有する筒状に、底金具7は底部が傾斜したカップ状に、それぞれ鉄鋼材料から構成されている。なお、底金具7の底部には、取付けボルト5と位置決め凸部7aとが凸設されている。
防振基体3は、図1に示すように、ゴム状弾性体から断面略円錐台形状に形成され、第1取付け金具1の下面側と筒状金具6の上端開口部との間に加硫接着されている。また、防振基体3の下端部には、筒状金具6の内周面を覆うゴム膜3aが連なっており、このゴム膜3aには、後述する仕切り体20の外周部が密着されている。
防振基体3の上端部(図1上側)は、図1に示すように、第1取付け金具1の張り出し部分を覆う覆設部3bを備えており、この覆設部3bがスタビライザー金具8に当接することで、大変位時のストッパ作用が得られるように構成されている。なお、スタビライザー金具8は、筒状金具6の端部にかしめ固定されている。また、スタビライザー金具8の上面側には、ゴム状弾性体から構成されるカバー部材13が装着されている。
ダイヤフラム9は、ゴム状弾性体から部分球状を有するゴム膜状に形成されるものであり、図1に示すように、第2取付け金具2(筒状金具6と底金具7との間)に取着されている。その結果、このダイヤフラム9の上面側と防振基体3の下面側との間には、液体封入室11が形成されている。
この液体封入室11には、エチレングリコールなどの不凍性の液体(図示せず)が封入される。図1に示すように、液体封入室11は、後述する仕切り体20によって、防振基体3側(図1上側)の主液室11Aと、ダイヤフラム9側(図1下側)の副液室11Bとの2室に仕切られている。
なお、ダイヤフラム9は、上面視ドーナツ状の取付け板10に加硫接着されており、図1に示すように、その取付け板10が筒状金具6と底金具7との間でかしめ固定されることにより、第2取付け金具2に取着されている。
仕切り体20は、図1に示すように、鉄鋼材料から略円形板状に構成され蓋板部30と、樹脂材料から円柱状に構成されると共に蓋板部30により上面(図1上側面)が覆蓋される本体部40とを備えて構成されている。
ここで、仕切り体受け段部3cは、図1に示すように、防振基体3の下面側の全周にわたる段部として形成され、仕切り体20(蓋板部30)の上端面を係止する。液封入式防振装置100の組み立て状態においては、仕切り体受け部3cが圧縮変形されており、この仕切り体受け部3cの弾性復元力が仕切り体20に保持力として作用している。これにより、仕切り体20を強固かつ安定的に挟持固定することができる。
なお、仕切り体20(本体部40)は、図1に示すように、その下面側が挟持部材18の上面に当接され、挟持部材18は、その外縁部が第2取付け金具2(筒状金具6と底金具7との間)にかしめ固定されているので、仕切り体20を挟持部材18と防振期待3の仕切り体受け段部3cとの間に強固に保持することができる。その結果、大振幅や高周波数の振幅が入力された場合などでも、各部材のびびりを抑制することができるので、各部材の位置ずれや共振などに起因する動特性への影響を回避することができる。
仕切り体20には、図1に示すように、その内部に第1オリフィス21と第2オリフィス22との2本の流路が形成されている。これら第1オリフィス21及び第2オリフィス22は、主液室11Aと副液室11Bとを連通させるオリフィス流路であり、第1オリフィス21に対しては、切替装置50による切り替え制御が行われる。
即ち、液封入式防振装置100は、アイドル時には、第1オリフィス21を連通状態として(図20参照)、第1オリフィス21と第2オリフィス22との2本の流路を利用して、アイドル領域(f=f−I、図25参照)における低動ばね特性を得る一方で(図25参照)、シェイク時には、第1オリフィス21を遮断状態として(図20参照)、第2オリフィス22のみを流路として利用することで、液柱共振周波数を変更して、シェイク領域(f=f−S、図25参照)における高減衰特性を得る(図25参照)。
切替装置50は、上述したように、第1オリフィス21(主液室11Aと副液室11Bとの間)の連通状態を切り替えるための機構であり、図1に示すように、第1オリフィス21の流路中に配設されるロータ51と、そのロータ51に回転駆動力を付与して遮断位置(図23及び図24参照)に位置させるアクチュエータ装置60と、ロータ51を弾性部材の弾性復元力により遮断位置から連通位置(図21及び図22参照)に復帰させる付勢装置70とを備えている。なお、切替装置50の詳細構成については、図11から図18を参照して後述する。
次いで、図2を参照して、仕切り体20を構成する蓋板部30について説明する。図2(a)は、蓋板部30の上面図であり、図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線における蓋板部30の断面図である。
蓋板部30は、後述する本体部40と共に仕切り体20を構成する部材であり、本体部40の上面側に配置される(図1参照)。この蓋板部30は、図2(a)及び図2(b)に示すように、鉄鋼材料から軸心Oを有する略円板状に構成され、板厚方向(図2(b)上下方向)に穿設されると共に板面上に分散して配置される複数の開口部(第1開口部31、第2開口部32、位置決め穴30a,30b)を備える。
第1開口部31は、主液室11A側における第1オリフィス21(図1参照)の出入り口となる開口であり、第2開口部32は、主液室11A側における第2オリフィス22(図1参照)の出入り口となる開口である。図2(a)に示すように、第1開口部31は上面視円形に、第2開口部32は軸心Oを中心として湾曲する上面視長穴形状に、それぞれ形成されている。なお、第1開口部31の開口面積は、図2(a)に示すように、第2開口部32の開口面積よりも小さくされている。
位置決め穴30a,30bは、蓋板部30と本体部40との相対位置を位置決めするための開口であり、図2(a)に示すように、上面視円形に形成されている。この位置決め穴30a,30bは、本体部40の上面に突設される位置決めピン部40a,40b(図3から図6参照)を受け入れ可能な内径を有すると共に、それら位置決めピン部40a,40bの突出位置に対応する位置に穿設されている。
これにより、蓋板部30を本体部40の上面に覆蓋して、仕切り体20を組み立てる際には、位置決め穴30a,30bに位置決めピン部40a,40bをそれぞれ挿通させることで、蓋板部30と本体部40との相対回転位置を位置決めすることができる。この場合、第1開口部31及び第2開口部32は、本体部40の上面に凹設された第1凹溝41と第2凹溝42との始端(本体部40の上面視において時計周り方向の終端、図3(a)参照)にそれぞれ一致する位置に配設される(図21及び図23参照)。
なお、第1開口部31の開口面積は、後述する第1凹溝41(図4参照)の断面積よりも大きくされ、第2開口部32の開口面積は、後述する第2凹溝42(図4参照)の断面積よりも大きくされている。よって、第1オリフィス21及び第2オリフィス22の流路断面積は、第1凹溝41及び第2凹溝42の断面積により決定される。
ここで、位置決め穴30a,30bは、図2(a)に示すように、軸心Oを挟んで対向する位置(周方向に180度ずれた位置)に配設され、かつ、軸心Oまでの距離が互いに異なる距離となる位置に配設されている。これにより、蓋板部30に裏表の方向性を持たせることができるので、仕切り体20の組み立て作業において、蓋板部40の裏表が間違って組み立てられることを防止することができる。
次いで、図3から図6を参照して、仕切り体20を構成する本体部40について説明する。図3(a)は、本体部40の上面図であり、図3(b)は、本体部40の下面図である。図4(a)は、図3(a)のIVa−IVa線における本体部40の断面図であり、図4(b)は、図3(a)のIVb−IVb線における本体部40の断面図である。図5は、図4(a)のV−V線における本体部40の断面図である。また、図6(a)は、図4(a)の矢印VIa方向から視た本体部40の側面図であり、図6(b)は、図4(a)の矢印VIb方向から視た本体部40の側面図である。
本体部40は、上述した蓋板部30と共に仕切り体20を構成する部材であり、上面側が蓋板部30によって覆蓋される(図1参照)。この本体部40は、図3から図6に示すように、樹脂材料(本実施の形態では、PPA)から軸心Oを有する円柱状に構成され、上面に形成される複数の凹溝(第1凹溝41、第2凹溝42)及び突起(位置決めピン部40a,40b)と、内部に形成される複数の貫通孔(第1直線流路43、第2直線流路44、収納室45)とを備える。
第1凹溝41は、上述した蓋板部30との間に第1オリフィス21(第1凹溝流路21a)を形成するための凹溝であり、第2凹溝42は、上述した蓋板部30との間に第2オリフィス21(第2凹溝流路22a)を形成するための凹溝である。
これら第1凹溝41及び第2凹溝42は、図3(a)に示すように、本体部40の上面(図3(a)紙面手前側面)において、軸心Oを中心とする円弧状に延設されている。また、図4(a)及び図4(b)に示すように、第1凹溝41は断面略矩形の溝形状に、第2凹溝42は断面略半円の溝形状に、それぞれ形成されている。
なお、第1凹溝41は、図3(a)に示す上面視において、第2凹溝42よりも小径の(即ち、軸心O側に位置する)円弧状に延設されている。よって、第1凹溝41の延設長さは、第2凹溝42の延設長さよりも短に長さに設定されている。また、第1凹溝41の断面積は、図4(a)及び図4(b)に示すように、第2凹溝42の断面積よりも小さくされている。
蓋板部30と本体部40とにより仕切り体20が組み立てられ(図1参照)、第1凹溝41及び第2凹溝42に蓋板部30が覆蓋されることで、第1オリフィス21の一部を構成する第1凹溝流路21aと、第2オリフィス22の一部を構成する第2凹溝流路22aとが、それぞれ形成される(図21及び図23参照)。
位置決めピン部40a,40bは、蓋板部30と本体部40との相対位置を位置決めするための突設ピンであり、図3(a)に示すように、上面視円形に形成されている。この位置決めピン部40a,40bは、上述した蓋板部30に穿設される位置決め穴30a,30b(図2参照)に挿通可能な外径を有すると共に、それら位置決め穴30a,30bの穿設位置に対応する位置に突設されている。
第1直線流路43は、上述した第1凹溝流路21aと共に第1オリフィス21を構成する流路であり、第2直線流路44は、上述した第2凹溝流路22aと共に第2オリフィス21を形成するための流路である(図21及び図23参照)。
第1直線流路43は、図3(a)及び図4(a)に示すように、第1凹溝41の終端(本体部40の上面視において反時計周り方向の終端)に連通されると共に、その第1凹溝41(第1凹溝流路21a、図21及び図23参照)との連通部を本体部40の下面(例えば、図3紙面手前側面)に連通させる流路として形成されている。
即ち、第1直線流路44は、図4(a)及び図4(b)に示すように、本体部40を軸心Oに沿って直線状に貫通する貫通孔として形成されている。また、第1直線流路43の断面形状は、図3及び図5に示すように、軸心Oを中心とする円形(即ち、図3に示すように、本体部40の外形に同心の円形)に形成されている。
なお、図4及び図5に示すように、第1直線流路43の流路中には、収納室45(切替室46)が介設されている。この収納室45(切替室46)に収納されたロータ51(図22及び図24参照)の回転により、第1直線流路43が連通状態と遮断状態とに切り替えられる。なお、収納室45及びロータ51の詳細構成については後述する。
第2直線流路44は、図3(a)に示すように、第2凹溝42の終端(本体部40の上面視において反時計周り方向の終端)に連通され、その第2凹溝42(第2凹溝流路22a、図21及び図23参照)との連通部を本体部40の下面側(例えば、図3紙面手前側面)に連通させる流路として形成されている。
即ち、第2直線流路44は、図4(b)に示すように、本体部40を軸心Oに沿って直線状に貫通する貫通孔として形成されている。また、第2直線流路44の断面形状は、図3及び図5に示すように、軸心Oを中心として湾曲する長円形状(即ち、図3(a)に示すように、第2凹溝42の上面視形状と一致する形状)に形成されている。なお、第1直線流路43の断面積は、図3から図5に示すように、第2直線流路44の断面積よりも大きくされている。
収納室45は、後述する切替装置50の構成要素の一部と付勢装置70とを収納するための空間であり、図4から図6に示すように、切替室46と、駆動室47と、付勢室48とを備えると共に、これら各室46〜48が互いに連通することで、軸心Lを有し本体部40の周側面に両端を開口させる貫通孔(空間)として構成されている。なお、軸心Lは、図4及び図5に示すように、軸心Oと直交する。
切替室46は、後述するロータ51(図12参照)が回転可能に収容される空間であり、図4に示すように、第1直線流路43の流路中に介設されると共に、図4及び図5に示すように、軸心Lに沿って一定の断面積を有する断面円形のストレート穴として構成されている。
駆動室47は、後述するアクチュエータ装置60(図11参照)の駆動軸61が挿入される空間であり(図1参照)、図4から図6に示すように、軸心Lに沿って一定の断面積を有する断面円形のストレート穴として構成されると共に、その一端側(図4(a)左側)を本体部40の周側面に開口させて形成されている。なお、駆動室47は、後述するシール室49を介して、切替室46と連通されている。
付勢室48は、後述する後述する付勢装置70(図17及び図18参照)が収容される空間であり(図1参照)、図4(a)及び図5に示すように、上述した駆動室47(シール室49)との間に切替室46を挟んで位置し、一端側(図4(a)左側)を切替室46に連通させると共に、他端側(駆動室47の開口と反対側、図4(a)右側)を本体部40の周側面に開口させて形成されている。
この付勢室48は、図4(a)及び図5に示すように、軸心Lを有すると共に切替室46側(図4(a)左側)から開口側(図4(a)右側)へ向かうに従って断面積が漸増する断面円形のテーパ穴として構成されている。
なお、ロータ51は、付勢室48の開口側(図4(a)右側)から本体部40(付勢室48内)に挿入されると共に、付勢室48を介して、切替室46内に挿入されることで、切替室46内に収容される。
また、付勢室48は、図4(a)及び図5に示すように、軸心Lに沿って一定の断面積を有する断面円形の嵌合壁48a,48bを備え、切替室46側及び開口側の端部がストレート穴として構成されている。これら嵌合壁48a,48bには、後述する抜け止め環80(図15参照)及び付勢装置70の外筒部72が内嵌される(図22及び図24参照)。
なお、嵌合壁48bは、図5及び図6(b)に示すように、位置決め凹部48b1を備える。この位置決め凹部48b1は、嵌合壁48bに後述する付勢装置70の外筒部72が内嵌される際に、その外筒部72の外周面に凸設された位置決め凸部72bが嵌合される凹部であり、嵌合壁48bの内周面に凹設されている。
シール室49は、上述したように、切替室46と駆動室47とを連通するための空間であり、図4から図6に示すように、軸心Lに沿って一定の断面積を有する断面円形のストレート穴として構成され、その一端側(図4(a)左側)を駆動室47に開口させると共に、他端側(図4(a)右側)を切替室46に開口させて形成されている。
ここで、シール室49の内径は、図4(a)及び図5に示すように、切替室46及び駆動室47の内径よりも小径とされている。これにより、切替室46及び駆動室47には、シール室49側に、軸心Lに直交する平坦面として形成される係合面46a,47aが配設されている。
なお、切替室46の係合面46aは、ロータ51に当接してそのロータ51の軸心L方向への移動を規制する規制面として機能する部位であり、駆動室47の係合面47aは、後述するダストシール90と密着してシール面として機能する部位である(いずれも図22及び図24参照)。
次いで、図7を参照して、挟持部材18について説明する。図7(a)は、挟持部材18の上面図であり、図7(b)は、図7(a)のVIIb−VIIb線における挟持部材18の断面図である。
挟持部材18は、仕切り体20を仕切り体受け段部3cとの間で挟持するための部材であり(図1参照)、本体部40の下面側を支持する(図1参照)。この挟持部材18は、図7(a)及び図7(b)に示すように、鉄鋼材料から軸心Oを有する略円板状に構成され、板厚方向(図7(b)上下方向)に穿設されると共に板面上に分散して配置される複数の開口部(第1開口部18a、第2開口部18b)を備える。
第1開口部18aは、副液室11B側における第1オリフィス21(図1参照)の出入り口となる開口であり、第2開口部18bは、副液室11B側における第2オリフィス22(図1参照)の出入り口となる開口である。図7(a)に示すように、第1開口部18は軸心Oを中心とする上面視円形に、第2開口部18bは軸心Oを中心として湾曲する上面視長穴形状に、それぞれ形成されている。
ここで、液封入式防振装置100の組み立て時には、挟持部材18の第2開口部18bが本体部40の下面に開口する第2直線流路44(図3(b)及び図4(b)参照)と重なる(一致する位置となる)ように、本体部40に対する挟持部材18の相対的な周方向位置の位置決めが行われる。
なお、第1開口部18aの開口面積は、上述した第1直線流路43(図3参照)の断面積よりも大きくされ、第2開口部18bの開口面積は、後述する第2直線流路44(図3参照)の断面積よりも大きくされている。よって、上述したように、第1オリフィス21及び第2オリフィス22の流路断面積は、第1凹溝41及び第2凹溝42の断面積により決定される(図4参照)。
次いで、図8から図10を参照して、筒状金具6について説明する。図8は、筒状金具6の断面図であり、図9は、図8の矢印IX方向から視た筒状金具6の側面図である。また、図10は、図9のX−X線における筒状金具6の断面図である。
なお、図8及び図9では、第1取付け金具1と筒状金具6との間に防振基体3が加硫接着された状態が図示されている。また、図8は、図1に示す筒状金具6の断面形状に対応する。
図8から図10に示すように、筒状金具6は、開口部6aと、取着受け部6bとを備えている。開口部6aは、後述するアクチュエータ装置60の駆動軸61及び押圧筒62を挿通するための開口であり、図8及び図10に示すように、周側面(図8左側面)を板厚方向(図8左右方向)に貫通して形成される共に、図9に示すように、正面視円形に形成されている。
なお、上述したように、筒状金具6は、その内周面がゴム膜3aに覆われているが、このゴム膜3aにも、図8及び図10に示すように、開口部6aと同形状の開口部3a1が対応する位置に開口されている。
取着受け部6bは、後述するアクチュエータ装置60の取着板63がボルトBにより締結固定される部位であり、図9及び図10に示すように、ボルトBと締結可能なナットNを備え、開口部6aの両側(図9左右側)に一対が取着されている。この取着受け部6bは、その取り付け面(図10下側面)が、図10に示すように、開口部6a側がアクチュエータ装置60側へ突出する向きに傾斜して形成されている。
次いで、図11を参照して、切替装置50を構成するアクチュエータ装置60について説明する。図11(a)は、アクチュエータ装置60の上面図であり、図11(b)は、アクチュエータ装置60の正面図であり、図11(c)は、アクチュエータ装置60の側面図である。
アクチュエータ装置60は、ロータ51に回転駆動力を付与するための駆動装置であり、図11(a)から図11(c)に示すように、駆動軸61と、押圧筒62と、取着板63と、ケースCとを主に備えている。
駆動軸61は、鉄鋼材料から軸状に構成され、電動モータ60a(図19参照)の回転駆動力をロータ51へ伝達するための軸状部材であり、基部側がケースC内に収納された電動モータ60a(図19参照)に接続されると共に、図11(a)から図11(c)に示すように、ケースCの正面(図11(a)下側、図11(c)右側)から前方へ向けて突出して配置されている。
駆動軸61の突出端には、図11(a)から図11(c)に示すように、内挿板部61aが形成されている。この内挿板部61aは、駆動軸61の互いに対向する側の周側面を面取り加工して板状に形成されており、ロータ51の被駆動軸53に設けられた被内挿凹部53a内に内挿される(図12参照)。この内挿により、駆動軸61がロータ51に連結され、電動モータ60a(図19参照)の回転駆動力を、駆動軸61を介して、ロータ51(被駆動軸53)に伝達することができる。
押圧筒62は、樹脂材料から筒状に構成される部材であり、図11(a)から図11(c)に示すように、駆動軸61の外周側に間隔を隔てて同心状に配置されると共に、ケースCの正面側(図11(a)下側、図11(c)右側)から突出されている。後述するように、この押圧筒62の先端面(図11(a)下側面、図11(c)右側面)がダストシール90(フランジ部93、図16参照)を係合面47aに押圧することで(図22及び図24参照)、駆動室47内が気密にされる。
取着板63は、アクチュエータ装置60を筒状金具6に固定する際の取り付け部となる部位であり(図10参照)、図11(a)から図11(c)に示すように、鉄鋼材料から板状に構成されると共に、ケースCの正面側(図11(a)下側、図11(c)右側)から一対がハの字状に傾斜しつつ延設されている。
ケースCは、樹脂材料から内部に空間を有する直方体状に構成され箱状の部材であり、その内部空間には、電動モータ60a(図19参照)やその制御回路などが格納されている。
なお、ケースC内には、駆動軸61の回転範囲を規制する規制装置(図示せず)が格納されている。この規制装置は、駆動軸61に連結された連結部と、ケース側に固定された一対の固定部とを備え、駆動軸61の正方向への回転に伴って連結部が一の方向へ移動されると、その連結部が一対の固定部の内の一方に当接されることで、駆動軸61の回転が規制される。同様に、駆動軸61の逆方向への回転に伴って連結部が他の方向へ移動されると、その連結部が一対の固定部の内の他方に当接されることで、駆動軸61の回転が規制される。その結果、駆動軸61の回転範囲が90度に規制される。
このように、本実施の形態では、アクチュエータ装置60に規制装置を設ける構成であるので、本体部40とロータ51とに規制部を設ける場合と比較して、仕切り体20の構造を簡素化することができる。よって、本体部40やロータ51の製造時における歩留まりの向上を図ることができる。また、形状が簡素化されることで、寸法精度のばらつきを抑制して、動的特性の向上を図ることができる。
次いで、図12及び図13を参照して、切替装置50を構成するロータ51について説明する。図12(a)は、ロータ51の上面図であり、図12(b)は、図12(a)のXIIa−XIIa線におけるロータ51の断面図である。また、図13(a)は、図12(b)の矢印XIIIa方向から視たロータ51の側面図であり、図13(b)は、図12(b)の矢印XIIIb方向から視たロータ51の側面図である。
ロータ51は、第1オリフィス21(第1直線流路43)を連通状態と遮断状態とに切り替えるための軸状部材であり(図22及び図24参照)、樹脂材料(本実施の形態では、PPA)から構成されると共に、回転本体52と、被駆動軸53と、被付勢軸54とを備えて構成されている。
回転本体52は、切替室46(図4(a)及び図5参照)内に回転可能に収容される部材であり、図12及び図13に示すように、軸心Lに沿って一定の断面積を有する断面円形の円柱状体に構成されている。この回転本体52(円柱状体)の外径寸法は、切替室46の内径寸法より若干小さい寸法値(本実施の形態では、直径で0.4mm小さい寸法値)に設定されている。
また、回転本体52は、図12に示すように、接続流路52aを備える。この接続流路52aは、回転本体52の一方の周側面(図12(b)上側面)から他方の周側面(図12(b)下側面)へ向けて直線状に貫通して形成され、その貫通方向(図12(b)上下方向)に沿って一定の断面積を有する断面円形のストレート穴として構成されている。
なお、接続流路52aは、その内径が第1直線流路43の内径と同じ寸法値に設定されると共に、回転本体52が切替室46内に収容された状態で、第1直線流路43に対応する位置に配置されている(図22参照)。また、接続流路52aの軸心mは、図12に示すように、回転本体52の軸心Lに直交する。
ロータ51は、接続流路52aの両端開口が第1直線流路43中に位置することで、接続流路52aを介して、第1直線流路43を連通させると共に(図22参照)、その回転位置から90度だけ回転され、回転本体部52の周側面(即ち、接続流路52aが開口されていない非開口面)が第1直線流路43中に位置することで、第1直線流路43を回転本体52の周側面で遮断する(図24参照)。これにより、第1オリフィス21を連通状態と遮断状態とに切り替えることができる(図21及び図23参照)。
被駆動軸53は、アクチュエータ装置60の回転駆動力が入力される部位であり、回転本体52の一端面側(図12(a)左側)から突出され、軸心Lに沿って一定の断面積を有する断面円形の円柱状体に構成されている。この被駆動軸53(円柱状体)の外径寸法は、回転本体52の外径寸法よりも小さい寸法値に設定されている。
これにより、図12及び図13(a)に示すように、回転本体52の一端面側(図12(a)左側)には、軸心Lに直行する平坦面として形成される係合面52bが配設されている。回転本体52が切替室46内に収容された場合には、回転本体52の係合面52bが切替室46の係合面46aに当接されることで、ロータ51の軸心L方向への移動が規制される(図22及び図24参照)。
ここで、被駆動軸53は、被内挿凹部53aと、円環溝53bを備える。被内挿凹部53aは、アクチュエータ装置60の駆動軸61に形成された内挿板部61a(図11参照)が内挿される部位であり、図12(b)及び図13(a)に示すように、被駆動軸53の先端面(図12(b)左側面)から回転本体52へ向けて所定幅のスリットが延設されることで、所定間隔を隔てて対向する一対の対向面として形成されている。
駆動軸61に形成された内挿板部61a(図11参照)が、この被内挿凹部53aに内挿されることで、駆動軸61と被駆動軸53とがアクチュエータ装置60の回転駆動力を回転本体52へ伝達可能に接続される(図22及び図24参照)。
なお、被内挿凹部53aは、その一対の対向面が互いに平行に形成されると共に、それら一対の対向面が上述した接続流路52aの軸心mに対して垂直な平面として構成されている。これにより、ロータ51の方向性を無くし、組み立て作業時の作業性の向上を図ることができる。
円環溝53bは、オーリングRを保持するための断面矩形状の保持溝であり、図12に示すように、被駆動軸53の外周面全周にわたって連続して凹設される円環状の凹溝として形成されている。本実施の形態では、この円環溝53bが被駆動軸53の外周面の2ヶ所に配設されている。ここで、図14を参照して、オーリングRを使用したシール室49のシール構造について説明する。
図14は、本体部40及びロータ51の部分拡大断面図であり、切替室46内にロータ51が収容された状態が図示されている。なお、オーリングRは、ゴム状弾性体から線材断面が円形の線輪として構成されるシール部材であり、上述したように、被駆動軸53の円環溝53bに装着(保持)されている。
図14に示すように、シール室49内は、被駆動軸53の円環溝53bに保持されたオーリングRがシール室49の内周面に押圧され所定の潰れ代で潰されることで、切替室46側と駆動室47(図4(a)参照)側とに気密状態で区画され、これにより、切替室46内の流体が駆動室47へ漏出することが防止されている。
なお、被駆動軸53の外径寸法D1は、図14に示すように、シール室49の内径寸法D2よりも若干小さい寸法値に設定されている。この内外径の差(D2−D1)は、0.3mm〜0.5mmの範囲内に設定されることが好ましく、この場合、オーリングRの圧縮代は、線形断面の外径(図14上下寸法)が15%〜25%縮小する値に設定されることが好ましい。これにより、寸法公差が大きくても、シール性を確保しつつ、ロータ51をスムーズに回転させることができるからである。本実施の形態では、上記内外径の差が0.4mmに設定されると共に(D2−D1=0.4mm)、上記圧縮代が20%に設定されている。
図12及び図13に戻って説明する。被付勢軸54は、後述する付勢装置70の付勢力(回転駆動力)が入力される部位であり、回転本体52の他端面側(図12(a)右側)から突出され、軸心Lに沿って一定の断面積を有する断面円形の円柱状体に構成されている。この被付勢軸54(円柱状体)の外径寸法は、回転本体52の外径寸法よりも小さい寸法値に設定されている。
これにより、図12及び図13(a)に示すように、回転本体52の他端面側(図12(a)右側)には、軸心Lに直行する平坦面として形成される係合面52cが配設されている。回転本体52が切替室46内に収容され、抜け止め環80で抜け止めされた場合には、回転本体52の係合面52cが抜け止め環80に当接されることで、ロータ51の軸心L方向への移動が規制される(図22及び図24参照)。その結果、ロータ51の接続流路52aを第1直線流路43に対して軸心L方向に位置決めすることができる。
ここで、被付勢軸54の突出端には、図12及び図13(b)に示すように、内挿板部54aが形成されている。この内挿板部54aは、被付勢軸54の互いに対向する側の周側面を面取り加工して板状に形成されており、付勢装置70の内筒部71に設けられた被内挿凹部71a内に内挿される(図17参照)。この内挿により、被付勢軸54がロータ51に連結され、ねじりコイルバネ73(図17参照)の回転駆動力を、内筒部71(図17参照)を介して、ロータ51(被付勢軸54)へ伝達することができる。
なお、内挿板部54aは、その板状部の板面(図12(b)上側面及び下側面)が互いに平行に形成されると共に、それら一対の板面が上述した接続流路52aの軸心mに対して垂直な平面として構成されている。これにより、ロータ51の方向性を無くし、組み立て作業時の作業性の向上を図ることができる。
次いで、図15を参照して、抜け止め環80について説明する。図15(a)は、抜け止め環80の上面図であり、図15(b)は、図15(a)のXIIIb−XIIIb線における抜け止め環80の断面図である。
抜け止め環80は、ロータ51(回転本体52)の抜け止めを行うための部品であり(図22及び図24参照)、図15(a)及び図15(b)に示すように、鉄鋼材料から軸心Lを有する略円板状に構成されると共に、中央部には、軸心Lを中心とする円形の開口部80aを備えている。
なお、抜け止め環80の外径は、本体部40の付勢室48における嵌合壁48a(図4(a)及び図5参照)の内径よりも若干大きな寸法値に設定されている。これにより、抜け止め環80を付勢室48の嵌合壁48aに内嵌して保持することができる(図22及び図24参照)。
また、抜け止め環80の開口部80aの内径は、ロータ51の被付勢軸54(図12参照)の外径よりも大きな寸法値とされ、かつ、ロータ51の回転本体52(図12参照)の外径よりも小さな寸法値に設定されている。これにより、抜け止め環80が嵌合壁48aに内嵌保持されることで、抜け止め環80の側面によりロータ51(回転本体52)の係合面52c(図12参照)を係合して、その抜け止めを行うことができる。
次いで、図16を参照して、ダストシール90について説明する。図16(a)は、ダストシール90の上面図であり、図16(b)は、ダストシール90の部分断面図である。なお、図16(a)は、図16(b)の矢印XVIa方向視に対応する。
ダストシール90は、シール室49や駆動軸61とロータ51との接続部に外部から埃や水分などの異物が侵入することを防止するためのシール部材であり、(図22及び図24参照)、図16(a)及び図16(b)に示すように、ゴム状弾性体から軸心Lを有する略円筒状に構成され、筒部91と、外嵌部92と、フランジ部93とを備える。
筒部91は、図16(b)に示すように、軸心Lに沿って一定の内径及び外径を有する筒状に構成さている。なお、筒部91の外径は、アクチュエータ装置60の押圧筒62(図11参照)の内径より若干小さな寸法値に設定されている。また、筒部91の内径は、ロータ51の被駆動軸53(図12参照)の外径よりも若干大きな寸法値に設定されている。
外嵌部92は、アクチュエータ装置60の駆動軸61に外嵌される部位であり、筒部91の一端側(図16(b)左側)において内周側に張り出して形成されている。なお、外嵌部92の内径は、アクチュエータ装置60の駆動軸61(図11参照)の外径よりも若干大きな寸法値に設定されている。
フランジ部93は、駆動室47の係合面47a(図4(a)参照)とアクチュエータ装置60の押圧筒62(図11参照)との間で狭圧保持される部位であり、筒部91の他端側(図16(b)右側)において径方向外方へ張り出して形成されている。
なお、フランジ部93の外径は、アクチュエータ装置60の押圧筒62(図11参照)の外径よりも大きく、かつ、本体部40の駆動室47(図4(a)参照)の内径よりも小さい寸法値に設定されている(図22及び図24参照)。
これにより、アクチュエータ装置60を筒金具6に締結固定することで、押圧筒62の先端面でフランジ部93を係合面47aへ向けて押圧し、かかるフランジ部93を所定の潰れ代を圧縮変形させることで、シール室49や駆動軸61とロータ51との接続部に外部から埃や水分などの異物が侵入することを防止することができる。
次いで、図17及び図18を参照して、付勢装置70について説明する。図17は、付勢装置70の断面図であり、図18(a)は、図17の矢印XIIIa方向から視た付勢装置70の側面図であり、図18(b)は、図17の矢印XIIIb方向から視た付勢装置70の側面図である。
付勢装置70は、ねじりコイルバネ73の弾性復元力によりロータ51を一の回転方向へ向けて付勢するためのものであり、図17及び図18に示すように、内筒部71と、外筒部72と、ねじりコイルバネ73とを備えて構成されている。
内筒部71は、ねじりコイルバネ73の一端側を保持する部位であり、図17及び図18に示すように、軸心Lを有する円柱状に構成されると共に、その円柱状体の一側(図17左側)の端面にねじりコイルバネ73の一端(図17左側端)が埋入固定されている。
ここで、内筒部71は、図17及び図18(a)に示すように、被内挿凹部71aを備える。被内挿凹部71aは、ロータ51の被付勢軸54に形成された内挿板部54a(図12参照)が内挿される部位であり、内筒部71の一端面側(図17左側)から他端面側(図17右側)へ向けて所定幅のスリットが延設されることで、所定間隔を隔てて対向する一対の対向面として形成されている。
被付勢軸54に形成された内挿板部54a(図12参照)が内挿されることで、被付勢軸54と内筒部71とが付勢装置70の付勢力(回転駆動力)を回転本体52へ伝達可能に接続される(図22及び図24参照)。
外筒部72は、ねじりコイルバネ73の他端側を保持する部位であり、図17及び図18に示すように、軸心Lを有する円柱状に構成されると共に、その円柱状体の一側(図17右側)の端面にねじりコイルバネ73の他端(図17右側端)が埋入固定されている。
ここで、外筒部72は、図17及び図18(b)に示すように、凹溝72aと、位置決め凸部72bとを備える。凹溝72aは、ねじりコイルバネ73を受け入れるための空間を形成する部位であり、外筒72の一側(図17右側)の端面において内周面側から外周面側まで連続する断面コ字状の凹溝として延設されている。この凹溝72aにより、外筒72の一側の端面からねじりコイルバネ73が突出されることを回避できる。
位置決め凸部72bは、上述した本体部40の付勢室48における嵌合壁48b(図4から図6参照)に外筒部72を内嵌する際に、その付勢室48の嵌合壁48bの内周面に凹設された位置決め凹部48b1に嵌合される凸部であり、図18に示すように、外筒部72の外周面に凸設されている。これにより、本体部40に対する付勢装置70の位置決めを行うことができる。
ねじりコイルバネ73は、内筒部71及び外筒部72の相対回転に応じた弾性復元力を発揮する自己復帰バネであり、図17及び図18に示すように、軸心Lに沿って螺旋状に巻回されると共に、一端及び他端が内筒部71及び外筒部72の端面にそれぞれ埋入されることで、これら内筒部71及び外筒部72の間に取着されている。
連通位置(図21及び図22参照)に配置されたロータ51へアクチュエータ装置60の回転駆動力が付与されると、その回転駆動力により、ロータ51が、付勢装置70の付勢力に抗しつつ、軸心L周りに正回転され、遮断位置(図23及び図24参照)に配置される。なお、遮断位置では、付勢装置70のねじりコイルバネ73が弾性的にねじり変形された状態となる。
一方、ロータ51が遮断位置(図23及び図24参照)に配置された後、アクチュエータ装置60の駆動がオフされ、その回転駆動力が付与されなくなると、付勢装置70のねじりコイルバネ73の弾性復元力(付勢力)がロータ51へ付与され、その付勢力により、ロータ51が軸心L周りに逆回転され、遮断位置から連通位置(図21及び図22参照)に復帰される。
ここで、内筒部71は、図17に示すように、外筒部72よりも軸心L方向長さが長く形成されると共に、被内挿凹部71aが形成される一端面側が外筒の端面(ねじりコイルバネ73の他端が埋入される端面と反対側の端面)よりも軸心L方向に突出して位置している。
これにより、付勢装置70の外筒部72を本体部40の付勢室48(嵌合壁48b)に内嵌する場合には、ロータ51の被付勢軸54(内挿板部54a)へ付勢装置70の内筒部71(被内挿凹部71a)を嵌合させた後に、付勢装置70の外筒部72を本体部40の付勢室48(嵌合壁48b)に内嵌させることができるので、付勢装置70を本体部40に装着する際の作業性の向上を図ることができる。
次いで、図19を参照して、制御装置110の詳細構成について説明する。図19は、制御装置110の電気的構成を示したブロック図である。制御装置110は、図19に示すように、CPU111、ROM112及びRAM1173を備え、これらはバスライン114を介して入出力ポート115に接続されている。また、入出力ポート115には、回転数検出装置120等の複数の装置が接続されている。
CPU111は、バスライン114により接続された各部を制御する演算装置である。ROM112は、CPU111により実行される制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリであり、RAM113は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。なお、ROM112内には、図20に図示されるフローチャート(切替制御処理)のプログラムが格納されている。
回転数検出装置120は、エンジン(図示せず)の回転数を検出すると共に、その検出結果をCPU111に出力するための装置であり、回転数検出センサ(図示せず)と、その回転数検出センサの検出結果を処理してCPU111に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
車速検出装置130は、路面に対する車両の対地速度を検出すると共に、その検出結果をCPU111に出力するための装置であり、車速検出センサ(図示せず)と、その車速検出センサの検出結果を処理してCPU111に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
アクチュエータ装置60は、上述したように、ロータ51に回転駆動力を付与するための装置であり、ロータ51に回転駆動力を付与する電動モータ60aと、そのモータ60aをCPU111からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを備えている。
なお、アクチュエータ装置60は、CPU111からオンの指示を受けると(図20のS3参照)、電動モータ60aの駆動軸を90度だけ正回転させ維持する。一方、CPU111からオフの指示を受けると(図20のS2参照)、電動モータ60aの駆動制御を解除して、電動モータ60aから回転駆動力が発生しない状態(電動モータ60aの駆動軸が外力で回転する状態)とする。
この場合、電動モータ60aの正回転への回転により、ロータ51が遮断位置に配置される一方(図23及び図24参照)、電動モータ60aの駆動制御の解除に伴って、ロータ51が、付勢装置70の付勢力により、連通位置に復帰される(図21及び図22参照)。
このように、本実施の形態では、付勢装置70の付勢力によりロータ51を遮断位置へ復帰させる構成であるので、アクチュエータ装置60を正逆2方向で制御する必要がなく、オン・オフのみを制御すれば良い。よって、アクチュエータ装置60の制御を簡素化することができ、その分、制御コストの削減と信頼性の向上とを図ることができる。
次いで、図20を参照して、切替制御処理について説明する。図20は、切替制御処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置100の電源が投入されている間、CPU111によって繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理であり、切替装置50を制御することで、ロータ51の回転位置を変更して、主液室11Aと副液室11Bとの間の連通状態を切り替えることで、アイドル特性とシェイク特性との2つの動的特性の両立を図る。
なお、この切替制御処理(図20)の説明に際しては、主液室11Aと副液室11Bとの間の連通状態およびアイドル特性とシェイク特性との2つの動的特性を説明するために、図21から図25を適宜参照する。
図21は、液室11の連通状態を模式的に示す液封入式防振装置100の模式図であり、図22は、液封入式防振装置100の部分拡大断面図である。これら図21及び図22に示す状態は、ロータ51が連通位置にあり、第1オリフィス21が連通された状態に対応する。従って、主液室11Aと副液室11Bとの間は、第1オリフィス21及び第2オリフィス22の2本の流通経路により連通された状態となる。
なお、図21において、符号Aで示す2点鎖線は、第2オリフィス22を介して主液室11Aから副液室11Bへ流動する流体の流動経路を示し、符号Bで示す2点鎖線は、第1オリフィス21を介して主液室11Aから副液室11Bへ流動する流体の流動経路を示している。
図23は、液室11の連通状態を模式的に示す液封入式防振装置100の模式図であり、図24は、液封入式防振装置100の部分拡大断面図である。これら図23及び図24に示す状態は、ロータ51が遮断位置にあり、第1オリフィス21が遮断された状態に対応する。
なお、図23において、符号Aで示す2点鎖線は、第2オリフィス22を介して主液室11Aから副液室11Bへ流動する流体の流動経路を示し、符号Bで示す2点鎖線は、第1オリフィス21を介して主液室11Aから副液室11Bへ流動する流体の流動経路を示している。但し、図23では、ロータ51が遮断位置にあり、第1オリフィス21が遮断されているため、主液室11Aと副液室11Bとの間は第2オリフィス22を介してのみ連通されている。
このように、図21及び図22に示す連通状態では、第1オリフィス21及び第2オリフィス22の2本の流通経路が利用されるのに対し、図23及び図24に示す遮断状態では、流通経路が第2オリフィス22の1本のみとなり、流通経路全体としての断面積と流路長さとが異なるため、連通状態と遮断状態とにおける液柱共振を異なる周波数領域で発生させることができる(図25参照)。
図25は、液封入式防振装置100の動的特性を示すグラフであり、横軸が入力振動の周波数fに、縦軸が貯蔵ばね定数Kd及び減衰係数Cに、それぞれ対応する。
なお、図25において、一点鎖線で図示し符号「A+B」で示す貯蔵ばね定数Kd−I及び減衰係数C−Iは、主液室11Aと副液室11Bとが第1オリフィス21及び第2オリフィス22の2つの流動経路により連通された状態(即ち、ロータ51が連通位置にある図21及び図22の状態)での動的特性(アイドル状態を想定し、入力振幅を±0.05mmに固定し周波数を変化させた時の貯蔵ばね定数Kd及び減衰係数C)に対応する。
一方、図25において、実線で図示し符号「A」で示す貯蔵ばね定数Kd−S及び減衰係数C−Sは、主液室11Aと副液室11Bとが第2オリフィス22のみの流動経路により連通された状態(即ち、ロータ51が遮断位置にある図23及び図24の状態)での動的特性(シェイク状態を想定し、入力振幅を±0.5mmに固定し周波数を変化させた時の貯蔵ばね定数Kd及び減衰係数C)に対応する。
図20に戻って説明する。CPU111は、切替制御処理に関し、まず、エンジン回転数が閾値以上であるかを判断する(S1)。なお、エンジン回転数が閾値以上であるか否かは、回転数検出装置120(図19参照)から入力される検出結果と、ROM112(図19参照)に記憶される基準回転数とに基づいて判断する。
また、ROM112に記憶される基準回転数は、アイドル時におけるエンジン回転数に所定の変動分(例えば、エアコン用コンプレッサーのオン・オフに起因する変動分など)を考加算したエンジン回転数であり、本実施の形態では、基準回転数が700rpm(=アイドリング時回転数600rpm+変動分回転数100rpm)に設定されている。CPU111は、S1の処理により、車両の状態がアイドル中であるか否かを判断することができる。
ここで、図25を参照して、液封入式防振装置100に要求される防振性能(動的特性)について説明する。アイドル振動の入力(一般的には、20Hz〜40Hzの周波数領域における入力振幅±0.05mm程度の振動であり、本実施の形態では、周波数f−I=30Hz)には低動ばね特性(即ち、貯蔵ばね定数Kdの値が小さいこと)が要求される一方、シェイク振動の入力(一般的には、10Hz〜20Hzの周波数領域における入力振幅±0.5mm程度の振動であり、本実施の形態では、f−S=15Hz)には高減衰特性(即ち、減衰係数Cの値が大きいこと)が要求される。
本実施の形態では、第1オリフィス21及び第2オリフィス22の2本のオリフィスを設け、アイドル振動の入力に対しては、第1オリフィス21及び第2オリフィス22の2本の流通経路における液体流動効果(液柱共振)を利用して(図21及び図22参照)、アイドル領域(f−I=30Hz)における貯蔵ばね定数Kd−Iの値を小さくする(低動ばね特性とする)ことで(図25の「A+B」)、アイドル時の振動の伝達を下げる。
一方、シェイク振動の入力に対しては、第1オリフィス21の流通経路は遮断状態とし、第2オリフィス22における液体流動効果(液柱共振)のみを利用して(図23及び図24参照)、シェイク領域(f−S=15Hz)における減衰係数C−Sの値を大きくする(高減衰特性とする)ことで(図25の「A」)、シェイク時の振動を減衰させる。
そこで、本実施の形態では、後述するように(図20のS2及びS3参照)、アイドル時には、第1オリフィス21が連通状態となるようにロータ51を連通位置に配置して、アイドル時(f=f−I)において低動ばね特性を得る一方で、アイドルが終了すると(即ち、車両の走行中は)、第1オリフィス21が遮断状態となるようにロータ51を遮断位置に配置して、シェイク時(f=f−S)の高減衰特性を得る。
図20に戻って説明する。S1の処理において、エンジン回転数が閾値以上ではないと判断される場合には(S1:No)、車両は走行しておらず、アイドル中と判断できるので、アイドル領域(f=f−I)における低動ばね特性を得る(貯蔵ばね定数Kdの値を下げる)べく、アクチュエータ装置60をオフして、ロータ51を連通位置に配置する(S2)。
即ち、ロータ51が図23及び図24に示す遮断位置に配置された状態から、アクチュエータ装置60の駆動がオフされ、その回転駆動力が付与されなくなると、付勢装置70のねじりコイルバネ73の弾性復元力(付勢力)がロータ51へ付与され、その付勢力により、ロータ51が軸心L周りに逆回転されることで、図21及び図22に示すように、ロータ51が連通位置に配置される。
これにより、図21に示すように、第1オリフィス21が連通状態とされ、主液室11Aと副液室11Bとが第1オリフィス21と第2オリフィス22とを介して連通されるので、かかる第1オリフィス21と第2オリフィス22との液体流動効果(液柱共振)を利用して、図25に示すように、アイドル領域(f=f−I)における貯蔵ばね定数Kd−Iの値を小さくする(低動ばね特性とする)ことができる。その結果、アイドル時の振動の伝達を下げることができる。
一方、S1の処理において、エンジン回転数が閾値以上であると判断される場合には(S1:Yes)、車両はアイドル中ではなく、走行中であると判断できるので、シェイク領域(f=f−S)における高減衰特性を得る(減衰係数Cの値を大きくする)べく、アクチュエータ装置60をオンして、ロータ51を遮断位置に配置する(S3)。
即ち、ロータ51が図21及び図22に示す連通位置に配置された状態から、アクチュエータ装置60がオンされ、その回転駆動力がロータ51へ付与されると、ロータ51が、付勢装置70の付勢力に抗しつつ、軸心L周りに正回転されることで、図23及び図24に示すように、ロータ51が遮断位置に配置される。
これにより、図23に示すように、第1オリフィス21が遮断状態とされ、主液室11Aと副液室11Bとが第2オリフィス22のみを介して連通されるので、かかる第2オリフィス21の液体流動効果(液柱共振)を利用して、図25に示すように、シェイク領域(f=f−S)における減衰係数C−Sの値を大きくする(高減衰特性とする)ことができる。その結果、車両走行に伴う振動の減衰を図ることができる。
なお、S2又はS3の処理の実行後は、S1の処理へ復帰して、上述した各処理を繰り返し実行する。
次いで、上述のように構成された液封入式防振装置100の組み立て方法について、図1から図24の各図を参照して説明する。液封入式防振装置100の組み立ては、まず、第1取付け金具1及び筒状金具6が配置された加硫型内で防振基体3を加硫成形することで、これら各金具1,6が防振基体3によって連結された図8から図10に示す加硫部品を成形する。
また、蓋板部30、本体部40、ロータ51、抜け止め環80及び付勢装置70を液中に沈め、これらの空気(エア)抜きを行った後、本体部40の収納室45内へ付勢室48側からロータ51を挿入し、付勢室48の奥側の嵌合壁48aに抜け止め環80を内嵌することで、収納室45内に収納されたロータ51の抜け止めを行う。
次いで、本体部40の付勢室48内に付勢装置70を収納する。この場合、ロータ51の被付勢軸54(内挿板部54a)を付勢装置70の内筒部71(被内挿凹部71a)内に内挿しつつ、付勢装置70の外筒部72を本体部40の付勢室48(手前側の嵌合壁48b)内に内嵌する。
なお、付勢装置70は、その位置決め凸部72bが付勢室48の位置決め凹部48b1に嵌合されることで、本体部40に対する回転位置が位置決めされる。これにより、ロータ51は、内挿板部54aと被内挿凹部71aとの嵌合により、付勢装置70に対する回転位置が位置決めされ、図21及び図22に図示される連通位置に配置される。
本体部40にロータ51及び付勢装置70が装着された後は、液中において、蓋板部30を本体部40の上面側に覆設して仕切り体20を組み立てると共に、この仕切り体20を図8から図10に示す加硫部品の内部へ挿入する。この場合、筒部6の開口部6aと仕切り体20(本体部40)の駆動室47との位置を一致させる。
仕切り体20を加硫部品内へ挿入した後は、第1及び第2開口部18a,18bを第1及び第2直線流路43,44に位置合わせした状態で挟持部材18を配置すると共に、ダイヤフラム9を配置する。そして、これらを液外に取り出して、底金具7を配置した後、筒金具6の端部のかしめ加工を行う。
このかしめ加工後の組み立て品に対して、ダストシール90を、筒金具6の開口部6aを介して、ロータ51の被駆動軸53に装着すると共に、アクチュエータ装置60の駆動軸61(内挿板部61a)をロータ51の被駆動軸53(被内挿凹部53a)に嵌合しつつ、アクチュエータ送致60の取着板63を取着受け部6bに締結固定する。併せて、スタビライザ金具8を筒金具6にかしめ固定することで、液封入式防振装置100の組み立てが完了する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法・角度など)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記実施の形態では、被駆動軸53の外径寸法D1とシール室49の内径寸法D2との差(D2−D1)が0.3mm〜0.5mmの範囲内に設定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、この範囲外の値(例えば、0.1mm〜0.3mmなど)を採用することは当然可能である。
また、上記実施の形態で上げた材質は一例であり、他の材質を採用することは当然可能である。例えば、本体部40をアルミダイキャストから構成しても良い。
上記実施の形態では、切替機構50の制御(即ち、ロータ51の回転位置の切り替え)をエンジンの回転数に基づいて実行する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の状態に基づいて実行することは当然可能である。他の状態としては、例えば、車速が例示される。即ち、車速検出装置130(図19参照)により検出される車速が時速0km又は所定の基準値以下であれば、ロータ51を連通位置に位置させる共に、車速が時速0km又は所定の基準値を超えていれば、ロータ51を遮断位置に位置させるように切り替えても良い。
上記実施の形態では、ロータ51の被駆動軸53に円環溝53bを2ヶ所に設け、この2ヶ所の円環溝53bに共通する構成のオーリングRをそれぞれ配設する場合を説明した。これにより、一方が破損した場合でもシール機能を確保することができる。但し、円環溝53bを3か所以上に設けることは当然可能である。
上記実施の形態では、アクチュエータ装置60の回転駆動力によりロータ51を遮断位置に位置させると共に、付勢装置70の付勢力(回転力)によりロータ51を遮断位置から連通位置に復帰させる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、逆の構成(アクチュエータ装置60の回転駆動力によりロータ51を連通位置に位置させると共に、付勢装置70の付勢力(回転力)によりロータ51を連通位置から遮断位置に復帰させる構成)とすることは当然可能である。この場合には、上記実施の形態で説明した各構成に対し、ロータ51の回転本体52に穿設する接続流路52aの形成位置を軸心L周りに90度ずらせば良い。
上記実施の形態では、位置決め穴30a,30bをそれぞれ蓋板部30の1か所ずつに設ける場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、位置決め穴30a,30bに対して軸心Oからそれぞれ同距離となる位置決め穴を追加で複数個所に更に設けて蓋板部30を構成しても良い。
上述したように、第1凹溝41及び第2凹溝42は軸心Oを中心とする円弧状に延設されているので、位置決めピン部40a,40bが挿通される位置決め穴を複数の位置決め穴の中から適宜選択変更することで、蓋板部30を本体部40に対して相対回転させ、第1凹溝41及び第2凹溝42に対する第1開口31及び第2開口32の連通位置を調整して、第1オリフィス21及び第2オリフィス22のオリフィス長さを変更することができる。即ち、要求特性毎に複数種類の蓋板部30を準備する必要がなく、1の蓋板部30によって、特性違い品(液封入式防振装置100)を得ることができる。